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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】引戸装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 5/02 20060101AFI20220519BHJP
   E05F 3/14 20060101ALI20220519BHJP
   E05F 5/06 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
E05F5/02 C
E05F3/14
E05F5/06
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018201016
(22)【出願日】2018-10-25
(65)【公開番号】P2020066945
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 則良
(72)【発明者】
【氏名】木下 知也
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-002647(JP,A)
【文献】特開2012-246653(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0240280(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015200567(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/16
E05F 3/14
E05F 5/00-5/12
E06B 3/42-3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠と、引戸とを備え、枠と引戸の間に引戸の開閉方向の移動量を検知するトリガーが設けてあり、引戸は、スパイラルロッドと、ダンパーと、スパイラルロッド規制部と、ダンパー規制部とを備え、
スパイラルロッドは、引戸の開閉方向に設けたものであり、
ダンパーは、スパイラルロッドが回転自在に挿通するものであり、
スパイラルロッド規制部は、引戸の開閉方向の所定位置に設けられており、スパイラルロッドの回転を規制するものであり、
ダンパー規制部は、引戸の開閉方向の所定位置に設けられており、ダンパーの回転を規制するものであり、
引戸が開閉方向の一方向に所定量X1移動したときに、スパイラルロッド規制部がスパイラルロッドの回転を規制すると共に、ダンパー規制部がダンパーの回転を規制することで、スパイラルロッドが回転できなくなって、引戸の移動が制動され、
引戸が所定量X1より開閉方向の一方向に移動しようとしたときに、スパイラルロッド規制部がスパイラルロッドの回転規制を解除することでダンパーに対してスパイラルロッドが相対的に回転自在となり、若しくはダンパー規制部がダンパーの回転規制を解除することでスパイラルロッド規制部に対してスパイラルロッドが相対的に回転自在となり、引戸の制動が解除されることを特徴とする引戸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、障子と枠との間にダンパーを設けて、障子を閉じるときにブレーキをかけることが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】第45頁「住宅建材/インテリア LiVERNO/リヴェルノ」カタログNo.STJ1388B 三協立山株式会社 三協アルミ社 2018年4月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、非特許文献1の技術では、引戸を閉じたり開くとき、ダンパーによって常に引戸が動く方向と逆方向の抵抗がかかるため、確実に閉じ切る又は開き切るときの力を大きくする必要があるため、小さな力で確実に閉じ切る又は開き切るものが求められていた。
【0005】
そこで、本発明は、小さな力で確実に閉じ切る又は開き切ることができる引戸装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、 枠と、引戸とを備え、枠と引戸の間に引戸の開閉方向の移動量を検知するトリガーが設けてあり、引戸は、スパイラルロッドと、ダンパーと、スパイラルロッド規制部と、ダンパー規制部とを備え、スパイラルロッドは、引戸の開閉方向に設けたものであり、ダンパーは、スパイラルロッドが回転自在に挿通するものであり、スパイラルロッド規制部は、引戸の開閉方向の所定位置に設けられており、スパイラルロッドの回転を規制するものであり、ダンパー規制部は、引戸の開閉方向の所定位置に設けられており、ダンパーの回転を規制するものであり、引戸が開閉方向の一方向に所定量X1移動したときに、スパイラルロッド規制部がスパイラルロッドの回転を規制すると共に、ダンパー規制部がダンパーの回転を規制することで、スパイラルロッドが回転できなくなって、引戸の移動が制動され、引戸が所定量X1より開閉方向の一方向に移動しようとしたときに、スパイラルロッド規制部がスパイラルロッドの回転規制を解除することでダンパーに対してスパイラルロッドが相対的に回転自在となり、若しくはダンパー規制部がダンパーの回転規制を解除することでスパイラルロッド規制部に対してスパイラルロッドが相対的に回転自在となり、引戸の制動が解除されることを特徴とする引戸装置である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、スパイラルロッドやダンパーの回転を規制したり規制の解除を切り替えることで、引戸が開閉方向一方に所定量(X1)動いたときにダンパーが作動したり、所定量(X1)より開閉方向一方に移動しようとしたときはダンパーが作動しないようにすることができる。
これにより、引戸を閉じ切る直前又は開き切る直前にはブレーキを作用させながら、小さな力で確実に閉じ切り又は開き切ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態にかかる引戸装置の図であって、(a)は図7に示すE-E断面の概略図、(b)は図7に示すF-F断面の概略図であり、(c)は図1(b)に示す戸先側ガイドエンドを抜き出して示す正面図、(d)は図1(b)に示す戸尻側ガイドエンドを抜き出して示す正面図である。
図2図1に示すダンパー規制部が規制解錠位置にあるときの概略構成を示す図であり、(a)は室内側から見た正面図、(b)は(a)に示すA-A断面図であり、(c)は他方のダンパー規制部とダンパー側端部との関係を示した側面図である。
図3図1に示すダンパー規制部が規制位置にあるときの概略構成を示す図であり、(a)は室内側から見た正面図、(b)は(a)に示すA-A断面図である。
図4】ダンパー規制部及びスパイラルロッド規制部を構成する各部品の正面図であり、(a)~(c)は一方のダンパー規制部の部品であり、(a)は第1スライダー、(b)は第2スライダー、(c)は第3スライダー、(d)~(f)は一方のスパイラルロッド規制部の部品であり、(d)は第1スライダー、(e)は第2スライダー、(f)は第3スライダーである。
図5】本実施の形態にかかる引戸装置を全閉状態から開動作の各状態を示す側面図であって、(a)は全閉時、(b)は半開時、(c)は開方向にX1移動したときの図である。
図6】本実施の形態にかかる引戸装置を全開状態から閉動作の各状態を示す側面図であって、(d)は全開時、(e)は半開時、(f)は閉方向にX1移動したきの図である。
図7図9のG-G断面図であって、ハンドルを除いて示す図である。
図8図9のH-H断面図であって、ハンドルを除いて示す図である。
図9】本発明の実施の形態にかかる引戸装置を室外側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図8及び図9に示すように、本発明の実施形態にかかる引戸装置1は、枠3と引戸5とを備えており、引戸5は枠3に対して開閉方向にスライド自在である。図8及び図9に示す状態では、引戸5は閉じた状態である。枠3は、上枠3aと、戸先枠3bと、戸尻枠3cとを備えている。
図1に示すように、上枠(枠)3aと引戸5との間には、引戸5の開閉方向の移動量を検知する戸先側トリガー7a、戸尻側トリガー7bが設けてある。各トリガー7a、7bは、上枠3aに取り付けてあり、引戸5側に向けて突設してある。図9に示すように、戸先側トリガー7aは、引戸5を閉じ方向にX1移動した位置に設けてあり、戸尻側トリガー7bは、引戸5を開き方向にX1移動した位置に設けてある。X1は、任意の数値mmである。
更に、図1に示すように、上枠3aと引戸5との間には、スパイラルロッド9と、ダンパー11と、スパイラルロッド規制部13a、13bと、ダンパー規制部15a、15bとが設けられている。
スパイラルロッド規制部13a、13bは、一方のスパイラルロッド規制部13aと他方のスパイラルロッド規制部13bである。同様に、ダンパー規制部15a、15bは、一方のダンパー規制部15aと、他方のダンパー規制部15bである。
【0010】
上枠3aと引戸5との間に設けた上記構成部材のうち、ダンパー11と、一方のダンパー規制部15aは戸先側に配置したダンパー規制ユニット2aに配置されており、スパイラルロッド9の戸尻側端部9aと他方のスパイラルロッド規制部13bは戸尻側に設けたロッド規制ユニット2bに配置されている。他方のダンパー規制部15bと他方のスパイラルロッド規制部13bは引戸5の上端に固定されており、スパイラルロッド9はダンパー規制ユニット2aとロッド規制ユニット2bとに亘って長く配置されている。また、他方のダンパー規制部15bの戸先側には戸先側ガイドエンド24aが引戸5の上端に固定されており、他方のスパイラルロッド規制部13bの戸尻側には戸尻側ガイドエンド24bが引戸5の上端に固定されている。
図1(c)(d)に示すように、各ガイドエンド24a、24bには、それぞれ対応するフック22a、22b(後述する)のピン26が係止する係止部38が形成されている。
【0011】
ダンパー規制ユニット2aとロッド規制ユニット2bとは、互いに相対的に移動自在であると共に、上枠3a及び引戸5とに対しても相対的に移動自在である。
図2に示すように、更にダンパー規制ユニット2aには、戸先側フック22aが設けてあり、戸先側フック22aは、一端部が第1スライダー17(後述する)に軸41を介して回動自在に連結されており、他端部にはピン26が固定してある。戸先側フック22aの軸41は第1スライダー17(後述する)に形成されている長孔42を上下に移動自在になっている。
図1に示すように、ロッド規制ユニット2bには、戸尻側フック22b及び付勢部材35が設けてある。ロッド規制ユニット2bの戸尻側フック22bは、一端部がロッド規制ユニット2bに軸41を介して回動自在に連結されており、他端部にはピン26が固定してある。戸尻側フック22bの軸41はロッド規制ユニット2bに形成されている長孔42を上下に移動自在になっている。
図5(a)(b)に示すように、引戸5の上端には上方に突設した側板5aが設けてあり、側板5aは開閉方向に所定長さを有している。この側板5aの上端に、戸先側フック22a及び戸尻側フック22bのピン26が載置されており、各ピン26は側板5aの上端をスライド自在としてある。そして、各フック22a、22bのピン26が側板5aから外れると、軸41を中心にして下方に回動する。
【0012】
スパイラルロッド9は、螺旋状に形成した棒部材であって、引戸5の開閉方向に移動自在且つ回転自在に設けてある。スパイラルロッド9の戸尻側端部9aには、ダンパー11の筐体aと同様な形状のロッド端部材33(後述する)が固定されている。
図2に示すように、ダンパー11は、スパイラルロッド9が回転自在に挿通するものであり、一方の端部11aと、他方の端部11bと、一方及び他方の端部11a、11b間に設けた中間部11cとからなる筐体aと、筐体aの内部でスパイラルロッド9に係合する筐体bを有している。筐体bは円筒形状であり、筐体bには、スパイラルロッド9のスパイラル溝内に挿入される突起が上下に合計2箇所に設けてある。筐体aと筐体bとの間には油が封入されており、筐体bは筐体aに対して油圧により回転を制動するようになっている。
図2(b)に示すように、一方及び他方の端部11a、11bは、外形が四角筒形状を成し、中間部11cは円筒形状である。尚、一方及び他方の端部11a、11bは回転が規制されていないときには、筐体aと筐体bとは一緒に回転する。
【0013】
次に、一方及び他方のスパイラルロッド規制部13a、13bと、一方及び他方のダンパー規制部15a、15bについて説明するが、先に、一方及び他方のダンパー規制部15a、15bについて説明する。
一方及び他方のダンパー規制部15a、15bは、夫々ダンパー11の回転を規制するものである。
まず、一方のダンパー規制部15aについて説明する。
図2及び図4(a)~(c)に示すように、一方のダンパー規制部15aは、第1スライダー17、第2スライダー18、第3スライダー19で構成されている。尚、図4において、(a)~(c)が一方のダンパ規制部15aを構成する部品であり、(d)~(f)は一方のスパイラルロッド規制部13aを構成する部品である。
図4(a)に示すように、第1スライダー17は、上部17b(図2(b)参照)と、上部17bの室内側と室外側で、それぞれ引戸の開閉方向の一方及び他方に延出する側部17aを有し、各側部17aはダンパー11を挟んだ室外側と室内側とに設けてある。各側部17aには、軸21(図2参照)がスライド自在な一対の第1軸案内孔23が形成されている。第1軸案内孔23は長孔であり、正面視で右側を上にして傾斜されている。
図4(b)に示すように、第2スライダー18は、ダンパー11の下方に位置する下部18b(図2(b)参照)と、それぞれ開閉方向の一方と他方に延出する側部18aを有し、各側部18aは、ダンパー11を挟んだ室外側と室内側とに設けてある。下部18bと側部18aとは連結部18cで連結されている。各側部17aには、軸21(図2参照)がスライド自在な一対の第2軸案内孔25が形成されており、第2軸案内孔25は長孔であり、正面視で右側を下にして傾斜されている。
図4(c)及び図2に示すように、第3スライダー19は、戸先側に向けて突設する突設部19aと、バネ係止部19cと、突設部19aとバネ係止部19cとの間で開閉方向に延出する側部19bを有し、側部19bは、ダンパー11を挟んだ室外側と室内側とに設けてある。側部19bには、軸21、21がそれぞれ挿通される軸挿通孔29が形成されている。
図2(b)に示すように、第2スライダー18の室内側及び室外側に配置された側部18a、18a間に第1スライダー17の側部17a、17aが配置してあり、第1スライダー17の側部17a、17a間に第3スライダー19の側部19b、19bが位置し、各軸21は第1スライダー17の第1軸案内孔23、第2スライダー18の第2軸案内孔25及び第3スライダー19の軸挿通孔29に挿通されている。
【0014】
図2(a)(b)に示すように、一方のダンパー規制部15aが開放状態にあるときには、図2(a)に示すように、軸21は第1軸案内孔23の下方位置と第2軸案内孔25の上方位置とに位置し、図2(b)に示すように、第3スライダー19に対して、第2スライダー18は相対的に下方に位置し、第1スライダー17は相対的に上方に位置している。この状態では、第1スライダー17の上部17bと第2スライダー18の下部18bとの間隔が、ダンパー11の他方の端部11bの四角形の対角線の寸法よりも広く、ダンパー11の一方及び他方の端部11a、11bは第1スライダー17の上部17bと第2スライダー18の下部18bとの間で自由に回転自在である。
また、第3スライダー19のバネ係止部19cには、バネ31が係止してあり、第3スライダー19を常時戸先側に付勢している。ダンパー開放状態では、第3スライダー19の突設部19aは、トリガー7との間に隙間を空けた位置にある。
【0015】
図3(a)(b)に示すように、一方のダンパー規制部15aが規制状態にあるときには、図3(a)に示すように、第3スライダー19はその突設部19aがバネ31の付勢力に抗して、戸先側トリガー7aに押されて第3スライダー19が戸尻側に移動し、これにより軸21を、戸尻側に移動することで、第3スライダー19に対して相対的に第2スライダー18が上方に移動し、第1スライダー17が相対的に下方に移動する。
その結果、図3(b)に示すように、第1スライダー17の上部17bと第2スライダー18の下部18bとの間隔が、ダンパー11の一方の端部11aの四角形の対角線の寸法よりも狭くなり、ダンパー11の筐体aの回転が規制される。
【0016】
図2(a)及び図2(c)に示すように、他方のダンパー規制部15bは、断面コ字形状を成し、コ字の開口を上にして引戸5の戸先側で引戸5の上端に固定されている。コ字状の他方のダンパー規制部15bは対向する壁部16a、16a間の寸法が、ダンパー11の他方の端部11bの四角形の対角線の寸法よりも狭くしてあるので、他方のダンパー規制部15bの対向する壁部16a、16a間にダンパー11の他方の端部11bが入り込むと、ダンパー11の筐体aの回転が規制される。
【0017】
次に、一方のスパイラルロッド規制部13aと他方のスパイラルロッド規制部13bについて説明するが、一方のスパイラルロッド規制部13aは上述した一方のダンパー規制部15aと略同様の構成であり、他方のスパイラルロッド規制部13bは他方のダンパー規制部15bと略同様の構成であるから、同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付して、その部分の詳細な説明を省略し、主に異なる点について説明する。
まず、スパイラルロッド規制部13a、13bが規制する被規制部について説明する。図1に示すように、スパイラルロッド9の戸尻側端部には、ロッド端部が固定されたロッド端部材(被規制部)33が設けてあり、ロッド端部材33はその戸先側に一方の端部33aが、戸尻側に他方の端部33bが固定されている。一方及び他方の端部33a、33bは、ダンパー11の一方及び他方の端部11a、11bと同様に側面視四角形状を成している(図2(c)参照)。
【0018】
一方のスパイラルロッド規制部13aは、上述した一方のダンパー規制部15aと同様に、第1スライダー17、第2スライダー18及び第3スライダー19を組合わせて構成されており(図4(d)~(f)参照)、第3スライダー19は、その戸尻側端がバネ31により、戸尻側に常時付勢されている。第3スライダー-19の突設部19aが戸尻側に突設してあることが、一方のダンパー規制部15aの第3スライダー19と異なっており、その他の構成は、一方のダンパー規制部15aと同一の構成である。尚、図4(d)に示すように一方のスパイラルロッド規制部13aを構成する第1スライダー17には付勢部材35が取り付けるようになっており、また、図4(d)(e)に示すように、第1スライダー17及び第2スライダー18では各第1挿入孔23及び第2挿入孔25の傾斜の向きが、一方のダンパー規制部15aを構成する第1スライダー17及び第2スライダー18(図4(a)(b)参照)と異なっている。また、図4(f)で示す第3スライダー19は突設部19aの形状が図4(c)に示す第3スライダー19と異なっている。
この一方のスパイラルロッド規制部13aによれば、一方のダンパー規制部15aと同様に、図5(c)に示すように、戸尻側トリガー7bに第3スライダー19の突設部19aが押されると、図5(c)の(ウ)に示すように、第1スライダー17の上部17bと第2スライダー18の下部18bとの間隔が狭められて、スパイラルロッド9のロッド端部材33の回転が規制される。
図1及び図2(c)に示すように、他方のスパイラルロッド規制部13bは、他方のダンパー規制部15bと同様に、縦断面コ字形状を成し、コ字の開口を上にして引戸の戸尻側で引戸5の上端に固定されている。他方のスパイラルロッド規制部13bは他方のダンパー規制部15bと同様に対向する壁部16a、16a間の寸法が、ロッド端部材33の一方の端部33aの対角線の寸法よりも狭くしてあるので、他方のスパイラルロッド規制部13bは、他方のスパイラルロッド規制部13bの対向する壁部16a、16a間に、ロッド端部材33の他方の端部33bが入り込むと、ロッド端部材33と固定されたスパイラルロッド9の回転が規制される。
【0019】
図1、5、6に示すように、付勢部材35は、定荷重バネであり、先端部35aはダンパー規制ユニット2aに固定してあり、基端はロッド規制ユニット2bに固定したロール37に巻かれている。この付勢部材35は、ばねの引き出し量にかかわらず、一定の荷重で先端部35aをロール37側に付勢している。
【0020】
次に、引戸5の開閉動作について、開き動作及び閉じ動作に分けて説明する。まず、開き動作について説明する。
図9に示すように、引戸5が全閉状態にあるとき、図5(a)に示すように、戸先側フック22aは戸先側トリガー7aに係合した状態であり、付勢部材35はロール37に最も巻かれた状態にある。
図5(a)の(ア)に示すように、他方のダンパー規制部15bはダンパー11から離れた位置にあると共に(イ)に示すように一方のダンパー規制部15aはダンパー11の一方の端部11aを回転自在にしている。
図5(a)の(ウ)に示すように、一方のスパイラルロッド規制部13aはロッド端部材33の端部33aを回転自在にしているが、(エ)に示すように、他方のスパイラルロッド規制部13bは端部33aと係合した位置(図2(c)参照)にあり、スパイラルロッド9の回転が規制されている。
この全閉状態では、ダンパー11はスパイラルロッド9にブレーキを作用しない(制動しない)から、引戸5は自由に開くことができる。
一方、戸尻側フック22bは、トリガー7bから外れた状態であり、戸尻側フック22bは自重により、ピン26側を下げた位置にあるので、戸尻側フック22bのピン26は戸尻側ガイドエンド24bの係止部38に係止されている。
したがって、ダンパー規制ユニット2aはフック22aにより上枠3a取り付けられたトリガー7aに係止された状態であり、ロッド規制ユニット2bは引戸5に固定された戸尻側ガイドエンド24bに係止された状態となっている。換言すれば、ダンパー規制ユニット2aは上枠3aに係止され、ロッド規制ユニット2bは引戸5に係止されている。
そして、図5(a)の全閉状態から引戸5を戸尻側に引くと、戸先側フック22aは戸先側トリガー7aに係止されたまま、引戸5と共にロッド規制ユニット2bが戸尻側に移動し、ダンパー規制ユニット2aから離れると共に付勢部材35がロール37から引き出される。
【0021】
そして、所定距離まで引戸5を開くと、図5(b)に示す半開状態になる。半開状態になると、戸先側フック22aのピン26が側板5aから外れ、戸先側フック22aが回転して、戸先側フック22aのピン26が戸先側ガイドエンド24aの係止部38(図2(c)参照)に係止する。これにより、ダンパー規制ユニット2aは引戸5に係止された状態になり、ダンパー規制ユニット2a及びロッド規制ユニット2bは共に引戸5に係止される。
尚、半開状態では、ダンパー規制ユニット2aは、付勢部材35に抗して、ロッド規制ユニット2bから最も離れた位置になり、定荷重ばね13は最も伸びた状態で、それぞれのユニット2a、2bが引戸5に保持される。
一方、図5(b)に示す半開状態では、(ア)に示すように、ダンパー11は他方のダンパー規制部15bから離れた位置にあると共に(イ)に示すように一方のダンパー規制部15aに対してダンパー11の一方の端部11aを回転自在にしており、(ウ)に示すように一方のスパイラルロッド規制部13aもロッド端部材33を回転自在にしており、(エ)に示すように、他方のスパイラルロッド規制部13bもロッド端部材33から離れた位置にあるから、ダンパー11及びスパイラルロッド9はいずれも回転が規制されず、自由状態である。
【0022】
図9に示すように、半開状態のまま、引戸5を開き方向X1まで開くと、図5(c)に示す状態になる。
この開方向にX1移動した位置では、図5(c)の(イ)に示すように一方のダンパー規制部15aはダンパー11の一方の端部11aの回転を自由にしているが、(ア)に示すように、引戸5に固定されている他方のダンパー規制部15bがダンパー11の他方の端部11bに係合して、ダンパー11の回転が規制される。
一方、この位置で戸尻側トリガー7bが一方のスパイラルロッド規制部13aの突設部19aを押して、一方のスパイラルロッド規制部13aを作動させ、(ウ)に示すように、一方のスパイルロッド規制部15aがロッド端部材33の回転を規制する。尚、(エ)に示すように、ロッド端部材33は他方のスパイラルロッド規制部15bから離れた位置にある。同時に、戸尻側トリガー7bに戸尻側フック22bが係合する。
このように、開き方向にX1移動した位置(全開直前位置)では、(ア)に示すようにダンパー11の端部11bが回転できず、(ウ)に示すようにロッド端部材33の回転も規制されるので、スパイラルロッド9には、ダンパー11の筐体aと筐体bとの間で生じる油圧によるブレーキ(制動)が作用する。これにより、引戸5は一端停止される。
そして、一端停止した後、戸尻側トリガー7bに戸尻側フック22bが係合したまま、付勢部材35がその付勢力によりダンパー規制ユニット2aを引戸5と共に戸尻側に引き寄せる。これにより、開方向にX1移動した位置(全開直前位置)から図6(d)に示す全開状態になるまで、ハンドルを引かなくても引戸5は自動的に全開する。
【0023】
次に、全開状態から全閉状態に引戸5を閉じる動作について説明する。
図6(d)に示すように、全開状態では、付勢部材35は最も縮んだ状態になる。(イ)に示すように、一方のダンパー規制部15aはダンパー11の回転を自由にした状態であるが、(ア)に示すように、ダンパー11の他方の端部11bは他方のダンパー規制部15bに係合して、ダンパー11の回転が規制されている。一方、(ウ)(エ)に示すように、スパイラルロッド9のロッド端部材33は、規制がなく、回転自由な状態である。この全開状態では、ダンパー11の回転のみが規制されており、スパイラルロッド9は回転が自由であるから、ダンパー11のブレーキ(制動)は作用しない。
一方、戸先側フック22aのピン26は戸先側ガイドエンド24aの係止部38に係止したままの状態であり、戸尻側フック22bは戸尻側トリガー7bに係合した状態になっている。
この全開状態から引戸5を閉じ始めると、付勢部材35がロール37から引き出され始め、ダンパー規制ユニット2aとロッド規制ユニット2bとが次第に離れ、所定距離閉じると、戸尻側フック22bのピン26が側板5aから外れ、戸尻側フック22bが回転して、戸尻側ガイドエンド24bの係止部38に係止され、図6(e)に示す半開状態になる。
【0024】
図6(e)に示す半開状態では、図5(b)に示す半開状態と同じ状態である。即ち、図6(e)の(ア)に示すように、ダンパー11は他方のダンパー規制部15bから離れた位置にあると共に(イ)に示すように一方のダンパー規制部15aに対してダンパー11の一方の端部11aを回転自在にしており、(ウ)に示すように一方のスパイラルロッド規制部13aもロッド端部材33を回転自在にしており、(エ)に示すように、他方のスパイラルロッド規制部13bもロッド端部材33から離れた位置にあるから、引戸5にダンパー11が作用せず引戸5の開閉は自由な状態である。
尚、ダンパー規制ユニット2aは、付勢部材35に抗してロッド規制ユニット2bから離れた位置になり、付勢部材35は最も伸びた状態で保持されると共に、ダンパー規制ユニット2a及びロッド規制ユニット2bは、共に対応するフック22a、22bのピン26がガイドエンド24a、24bの係止部38に係止しており、引戸5に係止した状態になっている。
【0025】
図6(f)に示すように、半開状態のまま、引戸5を閉じ方向X1まで閉じると(図9参照)、全閉直前の状態になる。
この閉じ方向にX1移動した位置では、戸先側トリガー7aが一方のダンパー規制部15aの第3スライド19の突設部19aを押して、(イ)に示すように、一方のダンパー規制部15aを作動させ、ダンパー11の回転を規制する。また、(エ)に示すように、他方のスパイルロッド規制部15bがロッド端部材33に係合して、ロッド端部材33の回転を規制する。これにより、スパイラルロッド9の回転が規制されると共にダンパー11の回転が規制されて、ダンパー11によるブレーキが作用するので、引戸5は一端停止される。
尚、(ア)に示すように、引戸5に固定されている他方のダンパー規制部15bはダンパー11から離れて位置にあり、(ウ)に示すように、一方のスパイラルロッド規制部13aは、ロッド端部材33の回転を規制しない位置にある。
【0026】
更に、引戸5が閉じ方向にX1移動した位置(全閉直前)で一端停止された後、戸先側トリガー7aと戸先側フック22aとが係合しているので、付勢部材35がロール37に巻かれるように縮んで、ダンパー規制ユニット2aにロッド規制ユニット2bが引き寄せられて、ハンドルを引かなくても引戸5が自動的に閉じ、図5(a)に示す全閉状態になる。
【0027】
本発明の実施形態にかかる引戸装置の作用効果について説明する。
図5及び図6に示すように、本発明の実施形態にかかる引戸装置1によれば、スパイラルロッド9やダンパー11の回転を規制したり規制の解除を切り替えることで、引戸5が開閉方向一方に所定量X1動いたときにダンパー11が作動したり、所定量X1より開閉方向一方に移動しようとしたときはダンパー11が作動しないようにすることができる。
これにより、引戸5を閉じ切る直前又は開き切る直前にはブレーキを作用させながら、小さな力で確実に閉じ切り又は開き切ることができる。
【0028】
スパイラルロッド9及びダンパー11の回転の規制や解除は、枠3に取り付けたトリガー7a、7bで行うので、トリガー7a、7bの取付け位置を変えることで、任意の位置でスパイラルロッド9及びダンパー11の回転規制や解除のタイミングを調整できる。
一方のダンパー規制部15aを有するダンパー規制ユニット2aと、スパイラルロッド9を連結したロッド規制ユニット2bを付勢部材35で連結し、引戸5が所定量X1より開閉方向の一方側に移動させようとしたときに付勢部材35が引戸5を開閉方向の一方側に付勢しているので、引戸5が所定量X1より開閉方向に移動させようとしたときは、ダンパー11が機能していない状態であるため、引戸5を引寄せる付勢部材35の力が小さくて済む。
引戸5を開く方向と閉じる方向の両方でダンパー規制部15a、15bとスパイラルロッド規制部13a、13bがそれぞれダンパー11とスパイラルロッド9の回転を規制又は解除しているから、引戸5を開く方向と閉じる方向の直前でダンパー11によって衝撃を吸収しつつ、確実に引戸5を開閉できる。
【0029】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
例えば、ダンパー11の一方及び他方の端部11a、11bは側面視四角形状にすることに限らず、5角形や6角形のように対角の寸法よりも対向する片間の寸法が小さい他の形状としても良い。
トリガー7a、7bは磁気等により引戸の移動量を検知して、スパイラルロッド規制部13やダンパー規制部15a、15bを作動させるものであっても良い。
【符号の説明】
【0030】
1 引戸装置
3 上枠(枠)
9 スパイラルロッド
11 ダンパー
13a 一方のスパイラルロッド規制部
13b 他方のスパイラルロッド規制部
15a 一方のダンパー規制部
15b 他方のダンパー規制部
35 付勢部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9