(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】アビバクタムナトリウムのC形
(51)【国際特許分類】
C07D 487/08 20060101AFI20220519BHJP
A61K 31/551 20060101ALI20220519BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220519BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220519BHJP
A61K 31/546 20060101ALI20220519BHJP
A61K 31/427 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
C07D487/08 CSP
A61K31/551
A61P31/04
A61P43/00 121
A61K31/546
A61K31/427
(21)【出願番号】P 2018506919
(86)(22)【出願日】2016-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2016068925
(87)【国際公開番号】W WO2017025526
(87)【国際公開日】2017-02-16
【審査請求日】2019-07-22
(32)【優先日】2015-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2015-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】305008042
【氏名又は名称】サンド・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホッター,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】アダマー,ベレーナ
(72)【発明者】
【氏名】レンガウアー,ハンネス
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-517027(JP,A)
【文献】国際公開第2014/135930(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/086241(WO,A1)
【文献】特表2003-519698(JP,A)
【文献】特表2013-507346(JP,A)
【文献】高田則幸,創薬段階における原薬Formスクリーニングと選択,PHARM STAGE,Vol.6, No.10,2007年01月15日,p.20-25
【文献】大島寛,結晶多形・擬多形の析出挙動と制御,PHARM STAGE,2007年01月15日,Vol.6, No.10,p.48-53
【文献】川口洋子ら,医薬品と結晶多形,生活工学研究,2002年,Vol.4, No.2,p.310-317
【文献】BYRN S,PHARMACEUTICAL SOLIDS: A STRATEGIC APPROACH TO REGULATORY CONSIDERATIONS,PHARMACEUTICAL RESEARCH,米国,KLUWER ACADEMIC PUBLISHERS,1995年07月01日,V12 N7,P945-954
【文献】山野光久,医薬品のプロセス研究における結晶多形現象への取り組み,有機合成化学協会誌,2007年09月01日,Vol.65, No.9,p.907(69)-913(75)
【文献】"新医薬品の規格及び試験方法の設定について",医薬審発第568号,2001年05月01日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 487/08
A61K 31/551
A61K 31/546
A61K 31/427
A61P 31/04
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
20~30℃の範囲の温度で0.15419nmの波長を有するCu-Kアルファ
1,2放射線で測定した場合に6.5±0.2°、14.4±0.2°、15.5±0.2°、18.0±0.2°及び19.3±0.2°の2-シータ角での反射を含む粉末X線回折図を有するアビバクタムナトリウムのC形結晶。
【請求項2】
20重量%未満のアビバクタムナトリウムの他の物理的形態を含む、請求項1に記載のC形結晶。
【請求項3】
20~30℃の範囲の温度で0.15419nmの波長を有するCu-Kアルファ
1,2放射線で測定した場合に、8.5±0.2°、16.4±0.2°及び/又は17.1±0.2°の2-シータ角での反射を含まない、及び/又は6.9±0.2°~12.6±0.2°の範囲の2-シータ角での反射を含まない、請求項1又は2に記載のC形結晶。
【請求項4】
(i) 20~30℃の範囲の温度でダイヤモンドATRセルを用いて測定した場合に、3459±2cm
-1、1690±2cm
-1、1287±2cm
-1、1247±2cm
-1及び690±2cm
-1の波数でのピークを含むフーリエ変換赤外スペクトル、及び/又は
(ii) 20~30℃の範囲の温度で測定した場合に、55±2.75%以下の平衡相対湿度
を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のC形結晶。
【請求項5】
(i) アビバクタムナトリウム及び水を含む溶液を提供すること;
(ii) (i)で得られた溶液を2-ブタノール及び/又はイソブタノールを含有する溶媒と混合すること;
(iii) (ii)で得られた混合物から水を少なくとも部分的に除去すること
を含む、請求項1から4のいずれか一項で定義されたアビバクタムナトリウムのC形結晶の調製方法。
【請求項6】
医薬組成物の調製のための、請求項1から4のいずれか一項に定義されたアビバクタムナトリウムのC形結晶の使用。
【請求項7】
(i) 請求項1から4のいずれか一項に定義されたアビバクタムナトリウムのC形結晶;
(ii) 場合により1つ以上の抗菌剤;
(iii) 場合により1つ以上の薬学的に許容される賦形剤
を含む医薬組成物。
【請求項8】
1つ以上の抗菌剤がベータ-ラクタム抗生物質である、請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
ベータ-ラクタム抗生物質が、セフタジジム、セフタロリン・フォサミル及びアズトレオナムからなる群から選択される、請求項
8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
医薬として使用するための、請求項
7から
9のいずれか一項に記載の医薬組成
物。
【請求項11】
医薬として使用するための、請求項1から4のいずれか一項に記載のアビバクタムナトリウムのC形結晶。
【請求項12】
細菌感染症の治療及び/又は予防に使用するための、請求項
7から
9のいずれか一項に記載の医薬組成
物。
【請求項13】
細菌感染症の治療及び/又は予防に使用するための、請求項1から4のいずれか一項に記載のアビバクタムナトリウムのC形結晶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、アビバクタムナトリウムのC形結晶及びその調製方法に関する。本発明はまた、少なくとも1つの抗菌剤がベータ-ラクタム抗生物質である、C形及び1つ以上の抗菌剤を含む医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、特に細菌感染症の治療及び/又は予防のための薬剤として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
アビバクタムナトリウムは非ベータ-ラクタムベータ-ラクタマーゼ阻害剤の種類に属し、細菌感染症の治療のためにベータ-ラクタム抗生物質と共に使用されることが意図される。それはベータラクタム抗生物質をベータラクタマーゼ酵素による分解から保護し、したがってベータ-ラクタム抗生物質の抗菌活性を維持する。
【0003】
WO02/10172A1号には、結晶形のトランス-7-オキソ-6-スルホオキシ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのラセミナトリウム塩及びその調製方法が記載されている。
【0004】
しかし、化学構造(I)で表される(1R,2S,5R)-7-オキソ-6-スルホオキシ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのナトリウム塩(国際的な一般名:アビバクタムナトリウム)である、ただ1つのエナンチオマーが活性であることが見出された。
【0005】
【0006】
WO2011/042560A1号には、アビバクタムナトリウムのA形、B形、D形及びE形結晶が記載されており、これらの形態の少なくとも1つとC形との混合物が記載されている。しかしながら、C形又は前記混合物の調製方法はそれには含まれていない。
【0007】
WO2014/135930A1号は、粉末X線回折によって特徴付けられるアビバクタムナトリウムの結晶形を開示する。6頁に提供されたピークリスト及び
図1の対応する粉末X線回折図によれば、この結晶形は、WO2011/042560A1号の少なくともB形及びD形を含むアビバクタムナトリウムの結晶形の混合物に割り当てることができ、C形は存在しない。
【0008】
温度ストレスを受けると、又は酸性又は塩基性条件下では、水和した形態がしばしば加水分解する傾向があることは、当業者には周知である。また、水和物は脱水する傾向があり、例えば、それらは乾燥条件及び/又は高温に曝されたときに容易に水分を失う。例えば、WO2011/042560A1号は、アビバクタムナトリウム二水和物のE形が、長期保存及びより高温で水を失い、加水分解する傾向があることを述べている(17頁1~2行)。この出願ではさらに、E形は約70%の相対湿度より上で特に安定であり(15頁25行)、そのことによりこの水和形態が水分の存在下でのみ安定であることが示される。また、E形は、約60℃を超える温度で一水和物のA形に脱水し、さらなる温度ストレス下でA形が脱水して無水のB形になることが判明した。製剤過程及び粉砕が通常熱の発生を伴うため、物理的形態のこのような変換は重要である。したがって、医薬目的のためには、水和物よりも無水形態のアビバクタムナトリウムが好ましい。
【0009】
適切な物理的性質に加えて、固体形態の製造可能性により、それが医薬の調製のための実行可能な候補であるかどうかが決定される。WO2011/042560A1号(16頁30~31行)によれば、無水のD形は非常に小さい結晶としてしか得られず、ろ過が困難で遅くなり、そのためD形を調製することが困難になる。このように、単離に関する制約のため、D形は工業規模で製造することができない。また、製造方法のロバスト性及び信頼性は、物理的形態の選択の重要な基準である。WO2011/042560A1号(17頁8~14行)は、例えば、無水のB形が、種晶の非存在下で調製することが困難であり、非常に狭い範囲の水分活性においてのみ得られることを述べている。この出願に開示されている種晶の調製(16頁22~26行)は、単純ではないようであり、まして工業的に適用可能ではないようである。したがって、無水のB形の信頼できる工業生産は非常に困難であるようである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2002/10172号
【文献】国際公開第2011/042560号
【文献】国際公開第2014/135930号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、多形的に安定である、即ち、製剤過程中及び/又は貯蔵時にアビバクタムナトリウムの他の物理的形態に変換しない結晶形、好ましくは結晶性無水アビバクタムナトリウムを提供することであった。さらなる目的は、多形的に純粋又は本質的に多形的に純粋である、即ち、アビバクタムナトリウムの他の物理的形態を含まないか又は本質的に含まない、アビバクタムナトリウムの結晶形、好ましくは結晶無水形態を提供することであった。さらに、アビバクタムナトリウムの結晶(無水)形態が医薬組成物内で種々の条件、例えば、周囲の貯蔵条件下で多形的に安定である、アビバクタムナトリウムの結晶形、好ましくは結晶性無水形態を含む固体医薬組成物を提供することが目的である。また、アビバクタムナトリウムの結晶(無水)形態が多形的に純粋な形態又は本質的に多形的に純粋な形態で存在する、アビバクタムナトリウムの結晶形、好ましくは結晶性無水形態を含む固体医薬組成物を提供することが目的である。
【0012】
最後に、本発明の別の目的は、多形的に又は本質的に多形的に純粋な及び/又は安定な形態で工業規模で確実に生産可能である結晶形、好ましくは結晶性無水形態のアビバクタムナトリウムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明は、アビバクタムナトリウムの無水C形結晶及びその調製のための工業的に適用可能で信頼性が高く安定した方法に関する。C形は、周囲条件下で並びに固体医薬剤形、例えば、注射用粉末の製造において起こる条件下で多形的に安定である。また、本明細書で定義されるC形は、保存可能期間にわたって、固体医薬組成物、例えば、注射用粉末内での貯蔵時に物理的形態の観点から安定である。したがって、本発明のC形は、医薬組成物の製剤及び貯蔵中に、アビバクタムナトリウムの他の物理的形態に変換しない。本発明はまた、多形的に純粋な又は本質的に多形的に純粋な、即ち、他の物理的形態を含まないか又は本質的に含まない、特にWO2011/042560A1号に記載されているようなアビバクタムナトリウムのA形、B形、D形及びE形を含まないか又は本質的に含まないアビバクタムナトリウムのC形結晶及びその調製方法に関する。
【0014】
驚くべきことに、本発明のアビバクタムナトリウムのC形は、水分に対して物理的に安定であり、温度ストレスに対して非常に安定であり、医薬の調製に使用することができることが判明した。
【0015】
したがって、本発明はまた、本明細書に開示されるようなアビバクタムナトリウムのC形、好ましくは本明細書に開示される有効量及び/又は所定量のアビバクタムナトリウムのC形を含む医薬組成物に関する。
【0016】
本発明は、アビバクタムナトリウムを含む医薬組成物にも関し、アビバクタムナトリウムは、本明細書に開示されるアビバクタムナトリウムのC形として存在し、医薬組成物は他の物理的形態を含まないか又は実質的に含まない、例えば、WO2011/042560A1号に記載されているようなアビバクタムナトリウムのA形、B形、D形及びE形を含まないか又は本質的に含まない。好ましくは、医薬組成物は、アビバクタムナトリウムのA形を含まないか又は本質的に含まない。
【0017】
本発明はまた、
(i) 本明細書に開示されるアビバクタムナトリウムのC形、好ましくは有効量及び/又は所定量の本明細書に開示されるアビバクタムナトリウムのC形、又は
(ii) アビバクタムナトリウム、好ましくは有効量及び/又は所定量のアビバクタムナトリウムであって、アビバクタムナトリウムは、本明細書に開示されるアビバクタムナトリウムのC形として存在するアビバクタムナトリウム、
及び好ましくは少なくとも1つの抗菌剤がベータ-ラクタム抗生物質である、1つ以上の抗菌剤を場合により含む医薬組成物に関する。
【0018】
本発明はさらに、2-ブタノール及び/又はイソブタノールを含有する溶媒をアビバクタムナトリウムの水溶液に添加し、続いて好ましくは共沸蒸留によって少なくとも部分的に水を除去することによる結晶化を含む、本明細書で定義されるアビバクタムナトリウムのC形の調製方法に関する。
【0019】
本発明はまた、有効量及び/又は所定量の本明細書で定義されるアビバクタムナトリウムのC形及び少なくとも1つの抗菌剤、好ましくはベータ-ラクタム抗生物質を投与することを含む、ヒト又は動物における細菌感染症の治療方法に関する。
【0020】
本発明は、ヒト又は動物における細菌感染症の治療に使用するための、本明細書で定義されるアビバクタムナトリウムのC形を含む医薬組成物又は医薬にも関する。
【0021】
その物理的形態の安定性のために、本発明のアビバクタムナトリウムのC形は、アビバクタムナトリウムのC形とアビバクタムナトリウムの少なくとも1つの他の物理的形態、好ましくは少なくとも1つ以上の無水結晶形、例えば、D形結晶及び/又はB形結晶;及び/又は1つ以上の水和形態、例えば、A形結晶及び/又はE形結晶;及び/又は非晶質アビバクタムナトリウムとを含む混合物の調製に用いることができる。したがって、本発明は、アビバクタムナトリウム製剤及びそれを含む医薬組成物及びヒト又は動物における細菌感染症の治療方法におけるそれらの使用も熟考し、アビバクタムナトリウム製剤は、本明細書に記載の所定量のC形多形と、好ましくは、無水結晶形、例えば、D形結晶及びB形結晶;水和結晶形、例えば、A形結晶及びE形結晶;及び非晶質アビバクタムナトリウムからなる群から選択される、アビバクタムナトリウムの少なくとも1つの他の物理的形態との混合物である。
【0022】
定義
本明細書で使用される場合、用語「室温」とは、15~35℃、好ましくは20~30℃の範囲の温度を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「非晶質」は、長距離の分子間秩序を欠く非結晶性材料に使用される。
【0024】
本明細書で使用される粉末X線回折に関する用語「反射」は、固体材料中の原子の平行平面によって散乱されたX線からの建設的干渉によって特定の回折角(ブラッグ角)で引き起こされる、X線回折図におけるピークを意味し、これは長距離の位置順に秩序ある繰り返しパターンで分布している。このような固体材料は結晶材料として分類され、非晶質材料は長距離の秩序を欠き、短距離の秩序のみを示し(上述の説明も参照)、したがって広範な散乱をもたらす固体材料として定義される。文献によれば、短距離の秩序は数個の原子のみにわたっているのに対して、長距離の秩序は、例えば、約103~1020原子にわたって延びている(Vitalij K. Pecharsky及びPeter Y. Zavalij、Kluwer Academic Publishers、2003、3頁の「Fundamentals of Powder Diffraction and Structural Characterization of Materials」を参照)。
【0025】
PXRDに関して用語「本質的に同じ」は、ピークの位置の変動及びピークの相対強度が考慮されるべきであることを意味する。例えば、2-シータ値の典型的な精度は、±0.2°2-シータの範囲内にある。したがって、標準的な条件下では、ほとんどのX線回折装置では、例えば、6.5°2-シータに通常現れる回折ピークは6.3°~6.7°2-シータの間に現れることができる。さらに、当業者は、相対的なピーク強度は、結晶度、好ましい配向、試料調製及び当業者に知られている他の因子によるばらつきと同様に装置間のばらつきを示し、定性的手段としてのみみなされるべきであることを理解するであろう。
【0026】
本明細書で使用される用語「A形」は、WO2011/042560A1号に開示されているアビバクタムナトリウムの結晶性一水和物を意味し、これは室温で0.15419nmの波長を有するCu-Kアルファ1,2放射線で測定した場合に8.5±0.2°、16.4±0.2°、17.1±0.2°の2-シータ角での反射を含むPXRDを有することを特徴とする。
【0027】
本明細書で使用される場合、アビバクタムナトリウムのC形結晶に関して、用語「本質的に純粋な」又は「実質的に純粋な」又は「実質的に多形的に純粋な」は、この特定の実施形態において、C形が約20%未満、好ましくは約10重量%未満、より好ましくは約5重量%未満、さらにより好ましくは約3重量%未満、最も好ましくは約1重量%のアビバクタムナトリウムの他の物理的形態を含むことを意味する。
【0028】
本明細書で使用される用語「物理的形態」は、アビバクタムナトリウムの任意の結晶及び非晶質相を指す。
【0029】
本明細書で使用されるアビバクタムナトリウムC形の用語「所定量」は、組成物の調製時に組成物中、例えば、医薬組成物に存在するアビバクタムナトリウムのC形の量を指す。
【0030】
本明細書で使用されるアビバクタムナトリウムC形の用語「有効量」は、ベータ-ラクタム抗生物質をベータ-ラクタマーゼ酵素による分解から保護するのに十分であり、したがってベータ-ラクタム抗生物質の抗菌活性を維持することができるアビバクタムナトリウムのC形の量を意味する。
【0031】
本明細書で使用される用語「約」は、示された値又は範囲の5%以内、より典型的には1%以内、最も典型的には0.5%以内を意味する。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「母液」は固体の結晶化後に残っている溶液を指す。
【0033】
本明細書で使用される用語「細菌感染症の治療」は、細菌、特にベータ-ラクタマーゼ産生細菌によって直接的又は間接的に引き起こされる状態の治癒、予防及び/又は改善を含む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本明細書の実施例1に従って調製したアビバクタムナトリウムのC形の代表的な粉末X線回折図である。
【
図2】本明細書の実施例1に従って調製したアビバクタムナトリウムのC形の代表的なフーリエ変換赤外スペクトルである。
【
図3】本明細書の実施例1に従って調製したアビバクタムナトリウムのC形の代表的な示差走査熱量曲線である。
【
図4】本明細書の実施例1に従って調製したアビバクタムナトリウムのC形の代表的な熱重量分析曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の詳細な説明
以下、本発明を実施形態によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
本発明の主題は、アビバクタムナトリウムのC形結晶である。
【0037】
C形は、固体を特徴付けるための製薬業界の分野において周知の分析方法によって特徴付けられ得る。そのような方法は、粉末X線回折(PXRD)、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)及び重量吸湿(GMS)を含むが、これらに限定されない。C形は、前述の方法の1つによって、又はそれらの2つ以上を組み合わせることによって特徴付けることができる。特に、C形は、以下の実施形態の1つによって、又は以下の実施形態の2つ以上を組み合わせることによって特徴付けることができる。
【0038】
アビバクタムナトリウムのC形結晶は、室温で0.15419nmの波長を有するCu-Kアルファ1,2放射線で測定した場合に6.5±0.2°、14.4±0.2°、15.5±0.2°、18.0±0.2°及び19.3±0.2°の2-シータ角での反射を含む粉末X線回折図を有することを特徴とする。
【0039】
あるいは、アビバクタムナトリウムのC形結晶は、室温で0.15419nmの波長を有するCu-Kアルファ
1,2放射線で測定した場合に、本発明の
図1に示されるものと本質的に同じ粉末X線回折図を有することを特徴とする。
【0040】
これに代えて又はそれに加えて、アビバクタムナトリウムのC形結晶は、室温でダイヤモンドATRセルを用いて測定した場合に、3459±2cm-1、1690±2cm-1、1287±2cm-1、1247±2cm-1及び690±2cm-1の波数でのピークを含むフーリエ変換赤外スペクトルを有することを特徴とする。
【0041】
これに代えて又はそれに加えて、アビバクタムナトリウムのC形結晶は、25℃~250℃の範囲の温度で10K/分の加熱速度で測定した場合に、約227℃の開始温度を有する単一の発熱ピークを示す示差走査熱量曲線を有することを特徴とする。
【0042】
これに代えて又はそれに加えて、アビバクタムナトリウムのC形結晶は、約25℃~200℃の範囲の温度で約10K/分の加熱速度で熱重量分析を用いて測定した場合に、C形結晶の重量に基づいて約0.5%以下の重量損失を示すことを特徴とする。
【0043】
熱分析からわかるように、アビバクタムのC形結晶は、温度ストレスに対して非常に安定である。例えば、示差走査熱量曲線は、分解が約227℃の温度で開始するまで熱事象を示さず、TGA曲線は約200℃の温度まで約0.5%の重量損失しか示さない。
【0044】
これに代えて又はそれに加えて、アビバクタムナトリウムのC形結晶は、0~60%の範囲の相対湿度及び25.0±0.1℃の温度において重量吸湿を用いて測定した場合に、C形結晶の重量に基づいて0.5%以下の重量変化を示すことを特徴とする。
【0045】
重量吸湿によれば、アビバクタムナトリウムのC形は、実質的に純粋な多形相で存在する場合、60%までの相対湿度を有する雰囲気に曝されると安定である。この臨界値を超える場合にのみ、C形は水和形態Aに変換し始める。したがって、好ましい実施形態では、本発明は、実質的に純粋な形態の、即ち、アビバクタムナトリウムの他の物理的形態を含まないか又は実質的に含まない、例えば、WO2011/042560A1号に記載の物理的形態A、B、D及び/又はE、特にWO2011/042560A1号のA形を含まないか又は実質的に含まない形態のアビバクタムナトリウムのC形結晶に関する。
【0046】
特に、本発明は、約20重量%未満、好ましくは約10重量%未満、より好ましくは約5重量%未満、さらにより好ましくは約3重量%未満、最も好ましくは約1重量%未満のアビバクタムナトリウムの他の物理的形態を含むアビバクタムナトリウムの実質的に純粋なC形結晶に関する。
【0047】
好ましくは、本発明は、約20重量%未満、好ましくは約10重量%未満、より好ましくは約5重量%未満、さらにより好ましくは約3重量%未満、最も好ましくは約1重量%未満のアビバクタムナトリウムのA形結晶を含むアビバクタムナトリウムの実質的に純粋なC形結晶に関する。
【0048】
より好ましくは、本発明は、室温で0.15419nmの波長を有するCu-Kアルファ1,2放射線で測定した場合に、6.5±0.2°、14.4±0.2°、15.5±0.2°、18.0±0.2°、19.3±0.2°の2-シータ角での反射を含み、約8.5±0.2°、16.4±0.2°及び/又は17.1±0.2°の2-シータ角での反射を含まない粉末X線回折図を有するアビバクタムナトリウムの実質的に純粋なC形結晶に関する。
【0049】
最も好ましくは、本発明は、室温で0.15419nmの波長を有するCu-Kアルファ1,2放射線で測定した場合に、6.5±0.2°、14.4±0.2°、15.5±0.2°、18.0±0.2°、19.3±0.2°の2-シータ角での反射を含み、6.9±0.2°~12.6±0.2°の範囲の2-シータ角での反射を含まない粉末X線回折図を有するアビバクタムナトリウムの実質的に純粋なC形結晶に関する。
【0050】
あるいは、本発明は、室温で0.15419nmの波長を有するCu-Kアルファ
1,2放射線で測定した場合に、本発明の
図1に示されたものと本質的に同じ粉末X線回折図を有することを特徴とするアビバクタムナトリウムの実質的に純粋なC形結晶に関する。
【0051】
これに代えて又はそれに加えて、本発明は、室温でダイヤモンドATRセルを用いて測定した場合に、3459±2cm-1、1690±2cm-1、1287±2cm-1、1247±2cm-1、690±2cm-1の波数でのピークを含み、3500±2cm-1~4000±2cm-1の波数でのピークを含まない、好ましくは3463±2cm-1~4000±2cm-1の波数でのピークを含まないフーリエ変換赤外スペクトルを有することを特徴とするアビバクタムナトリウムの実質的に純粋なC形結晶に関する。
【0052】
これに代えて又はそれに加えて、本発明は、25℃~250℃の範囲の温度で10K/分の加熱速度で測定した場合に、約227℃の開始温度を有する単一の発熱ピークを示す示差走査熱量曲線を有することを特徴とするアビバクタムナトリウムの実質的に純粋なC形に関する。
【0053】
これに代えて又はそれに加えて、本発明は、25℃~200℃の範囲の温度で約10K/分の加熱速度で熱重量分析を用いて測定した場合に、約0.5%以下の重量損失を示すことを特徴とするアビバクタムナトリウムの実質的に純粋なC形に関する。
【0054】
これに代えて又はそれに加えて、本発明は、0~60%の範囲の相対湿度及び25.0±0.1℃の温度で測定した場合に、C形結晶の重量に基づいて0.5%以下の重量変化を示すことを特徴とするアビバクタムナトリウムの実質的に純粋なC形に関する。
【0055】
WO2011/042560A1号によれば、そこに記載されているC形の混合物は、5%という低い相対湿度で一水和物のA形に変わる(15頁26~27行)。
【0056】
本発明の発明者らは、本発明のC形結晶の物理的安定性を、室温及び種々の相対湿度においてそれにストレスをかけることによって調べた(本明細書の実施例3も参照)。驚くべきことに、C形結晶は、WO2011/042560A1号の教示とは対照的に、特に多形的に純粋な材料として存在する場合、約55%以下の相対湿度でストレスを受けた場合、アビバクタムナトリウムの他の物理的形態に変形しないことが判明した。例えば、C形の材料は、室温及び55%の相対湿度で9日間、室温及び45%の相対湿度で277日間ストレスをかけた後でも安定なままであり、したがってB形と同様の安定性を示す。この挙動は、本発明によるC形で実施された重量吸湿実験によって確認された。重量吸湿によれば、C形は、約60%の相対湿度まで水蒸気との有意な相互作用を示さない。この臨界値を超えると、C形は水を取り込み始め、それは一水和物のA形への変換に伴う。したがって、C形は、B形と同様の水分に対する安定性を示し、これは、WO2011/042560A1号に提供された教示の観点から全く驚くべきことである。
【0057】
したがって、上記の定義に代えて又はそれに加えて、本発明のC形は、ほぼ室温で測定した場合に、約55%以下、好ましくは約50%以下、好ましくは約40%以下、より好ましくは約30%以下、さらにより好ましくは約20%以下、最も好ましくは約10%以下、例えば、約5%以下の平衡相対湿度を有することを特徴とする。
【0058】
さらなる態様では、本発明は、ほぼ室温で測定した場合に、約55%以下、好ましくは約50%以下、好ましくは約40%以下、より好ましくは約30%以下、さらにより好ましくは約20%以下、最も好ましくは約10%以下、例えば、約5%以下の平衡相対湿度を有することを特徴とする、本明細書で定義されるアビバクタムナトリウムのC形結晶を含む密閉格納容器に関する。
【0059】
格納容器の平衡相対湿度は、充填前に乾燥ガスで格納容器をパージするか、又は乾燥剤を添加することによって調整することができる。好ましくは、アビバクタムナトリウムのC形及び場合によりベータ-ラクタム抗生物質等の抗菌剤が格納容器に充填される前に、格納容器は窒素でパージされる。パージ及び充填後、格納容器は閉じられ、好ましくは密閉にして閉じられる。
【0060】
WO2011/042560A1号には、C形とA形のような他の形態との混合物のみが未定義の比率で記載されている(3頁6~7行及び12頁3~7行)。これとは対照的に、本発明の発明者は、C形を確実に得る方法、特にC形を実質的に純粋な多形相で得る方法を見出した。
【0061】
したがって、本発明のさらなる主題は、アビバクタムナトリウムのC形結晶、好ましくはアビバクタムナトリウムの実質的に純粋なC形の調製方法であって、
(i) アビバクタムナトリウム及び水を含む溶液を提供すること;
(ii) (i)で得られた溶液を2-ブタノール及び/又はイソブタノールを含有する溶媒と混合すること;
(iii) (ii)で得られた混合物から水を少なくとも部分的に除去すること;
(iv) 場合により(iii)で得られた混合物をC形の結晶、好ましくはアビバクタムナトリウムの実質的に純粋なC形の結晶で播種すること;
(v) 場合により(iii)又は(iv)で得られた結晶の少なくとも一部を母液から分離すること;
(vi) 場合により(v)で得られた単離した結晶を洗浄すること;
(vii) 場合により工程(iii)~(vi)のいずれか1つで得られた結晶を乾燥させること
を含む該方法である。
【0062】
第1の工程では、アビバクタムナトリウムの水溶液が調製される。アビバクタムナトリウムの任意の物理的形態、例えば、結晶性アビバクタムナトリウム、非晶質アビバクタムナトリウム又はそれらの混合物を適用することができる。使用することができる適切な結晶形は、例えば、WO2011/042560A1号のA形、B形、D形及びE形又はそれらの混合物である。これらの結晶形は、WO2011/042560A1号の教示に従って調製することができる。
【0063】
アビバクタムナトリウムは、水を含む溶媒,好ましくは約20~150g/L、好ましくは約40~120g/L、最も好ましくは約60~100g/Lの範囲の濃度の水に溶解される。得られた溶液は、場合により未溶解の粒子を除去するために濾過することができる。好ましくは、溶液は室温で調製される。
【0064】
その後、得られた水溶液は2-ブタノール、イソブタノール又はそれらの混合物を含む有機溶媒と混合され、好ましくは水溶液は2-ブタノールと、最も好ましくはイソブタノールと混合される。二相混合物の水/有機溶媒比は、好ましくは約1:0.5~3、より好ましくは約1:1~2の範囲である。
【0065】
続いて、水は少なくとも部分的に除去され、好ましくは水は除去され、最も好ましくは二相性混合物を撹拌下でほぼ還流温度に加熱することによって水は完全に除去される。最も好ましくは、水は共沸蒸留によって除去される。
【0066】
結晶化を促進するために、C形の種晶を添加することができる。播種は、C形の成長を制御するために、又は結晶性生成物の粒度分布を制御するために使用され得る。
【0067】
得られたC形の結晶は、濾過又は遠心分離のような任意の従来の方法によって、最も好ましくは濾過によって回収することができる。
【0068】
場合により、(v)で得られた単離された結晶は溶媒で洗浄されてもよい。好ましくは、溶媒は、水不混和性有機溶媒を含む。最も好ましくは、水不混和性有機溶媒は、2-ブタノール、イソブタノール又はそれらの混合物から選択される。
【0069】
最後に、C形の結晶は、場合により、約100℃以下、好ましくは約80℃以下、より好ましくは約60℃以下の温度で乾燥されることができ、最も好ましくは、結晶は約40℃以下、例えば、ほぼ室温で乾燥される。乾燥は、約1~72時間、好ましくは約2~48時間、より好ましくは約4~24時間、最も好ましくは約6~18時間の範囲の期間実施することができる。乾燥は、周囲圧力及び/又は真空で、好ましくは約100ミリバール以下、より好ましくは約50ミリバール以下、最も好ましくは約30ミリバール以下、例えば、約20ミリバール以下で実施することができる。
【0070】
上記の方法は、C形が2-ブタノール及び/又はイソブタノールから選択的に得られるので、C形を多形的に純粋な形態で確実に生成する。この方法のロバスト性は、WO2011/042560A1号に開示されたB形の製造方法と比較して有利である。
【0071】
驚くべきことに、本発明のC形、特に上記の方法によって得られたか又は得られるC形は、水分及び温度ストレスに対して物理的に安定であり、医薬組成物の調製に使用できることが判明した。
【0072】
したがって、本発明のさらなる主題は、医薬組成物の調製のための本明細書で定義されるアビバクタムナトリウムのC形結晶の使用である。好ましくは、本発明は、医薬組成物の調製のための、アビバクタムナトリウムの実質的に純粋なC形結晶の使用に関する。
【0073】
本発明によれば、本発明の医薬組成物は、本明細書で定義されるアビバクタムナトリウムのC形と、場合によりアビバクタムナトリウムのC形以外の他の多形相及び/又はアビバクタムの他の塩又は溶媒和物をはじめとする他の活性成分と、場合により賦形剤と一緒に混合することを含む方法によって調製することができる。例えば、錠剤のような固体剤形の場合には、混合物は、例えば、固体剤形を形成するようにそれをプレスすることによって、さらに処理することができる。本発明のC形の物理的安定性に起因して、全ての方法の工程は周囲条件で行うことができる。
【0074】
本発明のさらなる主題は、本明細書で定義されるアビバクタムナトリウムのC形結晶、好ましくは有効量及び/又は所定量の本明細書で定義されるアビバクタムナトリウムのC形結晶を含む医薬組成物である。好ましくは、本発明は、アビバクタムナトリウムの多形的に純粋な又は実質的に多形的に純粋なC形結晶、より好ましくは有効量及び/又は所定量のアビバクタムナトリウムの多形的に純粋な又は実質的に多形的に純粋なC形結晶を含む医薬組成物に関する。特に、医薬組成物は有効量のアビバクタムナトリウムを含み、アビバクタムナトリウムはアビバクタムナトリウムのC形として存在し、医薬組成物はアビバクタムナトリウムの他の物理的形態を含まないか実質的に含まないことが好ましい。
【0075】
本発明はさらに、2つ以上のアビバクタムナトリウムの物理的形態の混合物であって、混合物は所定量の本明細書で定義されるアビバクタムナトリウムのC形とアビバクタムナトリウムの少なくとも1つの他の物理的形態、好ましくは少なくとも1つの他の無水結晶形、例えば、D形結晶及び/又はB形結晶、及び/又は1つ以上の水和結晶形、例えば、A形結晶及び/又はD形結晶及び/又は非晶質形態のアビバクタムナトリウムとからなる該混合物を含む組成物、好ましくは医薬組成物に関する。例えば、本発明は、アビバクタムナトリウムのC形とアビバクタムナトリウムの少なくとも1つの他の物理的形態、好ましくはアビバクタムナトリウムの少なくとも1つの他の無水形態との混合物を約99:1~50:50、好ましくは99:1~65:35の範囲のモル比で含む組成物、好ましくは医薬組成物を熟考する。他の無水形態は、例えば、D形結晶又はB形結晶である。
【0076】
アビバクタムナトリウムのC形に加えて、本発明の医薬組成物は、アビバクタムナトリウム以外のアビバクタムの他の薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物を含むことができる。
【0077】
好ましくは、本発明の医薬組成物は活性成分として有効量のアビバクタムナトリウムを含有し、アビバクタムナトリウムの少なくとも50%(w/w)、好ましくは少なくとも60、70、80、90、95、99、99.5、99.8、99.9%(w/w)が多形相Cとして存在する。組成物は、アビバクタムナトリウムの他の物理的形態を含まないか又は少なくとも本質的に含まず、例えば、非晶質のアビバクタムナトリウム材料を含まないか本質的に含まず、及び/又はWO2011/042560A1号に記載されているA形及びE形のようなアビバクタムナトリウムの水和形態を含まないか又は少なくとも本質的に含まず、及び/又はWO2011/042560A1号に記載されているB形又はD形のようなアビバクタムナトリウムの他の無水形態を含まないか又は本質的に含まないことが特に好ましい。
【0078】
好ましい態様では、本発明の医薬組成物は1つ以上の抗菌剤をさらに含有する。好ましくは、少なくとも1つの抗菌剤としては、ベータ-ラクタム抗生物質、例えば、ペナム、ペネム、セフェム、セフェム、カルバセフェム、オキサセフェム、セファマイシン、ペニシリン、例えば、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、メズロシリン、アパルシリン、ヘタシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、スルベニシリン、チカルシリン、ピペラシリン、メシリナム、ピブメシリナム、メチシリン、シクラシリン、タルアンピシリン、アスポキシシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、ナフシリン、ピバンピシリン、セファロスポリン、例えば、セファロチン、セファロロジン(cephalorodine)、セファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファゾリン、セファレキシン、セフラジン、セフチゾキシム、セフメノキシム、セフメタゾール、セファログリシン、セフォニシド、セフォジジム、セフピロム、セフタジジム、セフタロリン、セフタロリン・フォサミル、セフトリアキソン、セフピラミド、セフブペラゾン、セフォゾプラン、セフェピム、セフォセリス、セフルプレナム、セフゾナム、セフピミゾール、セフクリジン、セフィキシム、セフチブテン、セフジニル、セフポドキシム・アキセチル、セフポドキシム・プロキセチル、セフテラム・ピボキシル、セフェタメト・ピボキシル、セフカペン・ピボキシル、セフジトレン・ピボキシル、セフロキシム、セフロキシム・アキセチル、ロラカルバセフ(loracarbacef)、ラタモキセフ、カルバペネム、例えば、イミペネム、メロペネム、ビアペネム、パニペネム及びモノバクタム、例えば、アズトレオナム及びカルモナム並びにそれらの塩が挙げられる。最も好ましくは、ベータ-ラクタム抗生物質は、セフタジジム及び/又はセフタロリン・フォサミルから選択される。
【0079】
最も好ましくは、本発明の医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0080】
本発明の組成物は、細菌感染症、特にベータ-ラクタマーゼ産生細菌によって引き起こされる感染症を患っているヒト又は動物における細菌感染症の治療方法に有利に使用することができる。
【0081】
本発明は、本明細書で定義されるアビバクタムナトリウムのC形結晶、又は特にヒト又は動物における細菌感染症の治療に医薬として使用するためのアビバクタムナトリウムのC形を含む医薬組成物又は医薬にも関する。
【0082】
様々な実施形態では、本発明の医薬組成物は、約1:2、1:3、1:4、1:5又は1:6の重量比で、好ましくは本質的に純粋な形態の、本明細書で定義されるアビバクタムナトリウムのC形結晶及び1つ以上の抗菌剤を含む。
【0083】
様々な実施形態では、本発明の医薬組成物は、格納容器、例えば、容器又は再構成及び希釈されるべきバイアル中に提供される。特定の実施形態では、単一の格納容器は、約0.5~5.0g、好ましくは約1.0~3.0g、より好ましくは約2.0gの抗菌剤、例えば、セフタジジム、セフタロリン・フォサミル又はアズトレオナム、及び約0.1~1.3g、好ましくは約0.2~1.0g、より好ましくは約0.5gの本明細書で定義されるアビバクタムナトリウムのC形結晶を含むことができる。特に好ましい実施形態では、単一の格納容器は、約2.0gの抗菌剤、例えば、セフタジジム、セフタロリン・フォサミル又はアズトレオナム、及び約0.5gの本明細書で定義されるアビバクタムナトリウムのC形結晶を含む。
【0084】
本発明の態様、有利な特徴及び好ましい実施形態を以下の項目に要約する。
【0085】
1) 20~30℃の範囲の温度で0.15419nmの波長を有するCu-Kアルファ1,2放射線で測定した場合に6.5±0.2°、14.4±0.2°、15.5±0.2°、18.0±0.2°及び19.3±0.2°の2-シータ角での反射を含む粉末X線回折図を有することを特徴とするアビバクタムナトリウムのC形結晶。
【0086】
2) 20~30℃の範囲の温度で0.15419nmの波長を有するCu-Kアルファ
1,2放射線で測定した場合に、本発明の
図1に示されるものと本質的に同じ粉末X線回折図を有することを特徴とするアビバクタムナトリウムのC形結晶。
【0087】
3) 20~30℃の範囲の温度でダイヤモンドATRセルを用いて測定した場合に、3459±2cm-1、1690±2cm-1、1287±2cm-1、1247±2cm-1及び690±2cm-1の波数でのピークを含むフーリエ変換赤外スペクトルを有することを特徴とする、項目1又は2に記載のC形結晶。
【0088】
4) 25℃~250℃の範囲の温度で10K/分の加熱速度で測定した場合に、約227℃の開始温度を有する単一の発熱ピークを示す示差走査熱量曲線を有することを特徴とする、先行する項目のいずれか一つに記載のC形結晶。
【0089】
5) 約25℃~200℃の範囲の温度で約10K/分の加熱速度で熱重量分析を用いて測定した場合に、C形結晶の重量に基づいて約0.5%以下の重量損失を示すことを特徴とする、先行する項目のいずれか一つに記載のC形結晶。
【0090】
6) 20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、3重量%未満又は1重量%未満のアビバクタムナトリウムの他の物理的形態を有する、項目1に記載のC形結晶。
【0091】
7) 他の物理的形態はA形結晶であり、A形は20~30℃の範囲の温度で0.15419nmの波長を有するCu-Kアルファ1,2放射線で測定した場合に、8.5±0.2°、16.4±0.2°及び17.1±0.2°の2-シータ角での反射を含む粉末X線回折図を有することを特徴とする、項目6に記載のC形結晶。
【0092】
8) 20~30℃の範囲の温度で0.15419nmの波長を有するCu-Kアルファ1,2放射線で測定した場合に、8.5±0.2°、16.4±0.2°及び/又は17.1±0.2°の2-シータ角での反射を含まない、項目1~7のいずれか一つに記載のC形結晶。
【0093】
9) 20~30℃の範囲の温度で0.15419nmの波長を有するCu-Kアルファ1,2放射線で測定した場合に、6.9±0.2°~12.6±0.2°の範囲の2-シータ角での反射を含まない、項目1~8のいずれか一つに記載のC形結晶。
【0094】
10) 室温で0.15419nmの波長を有するCu-Kアルファ
1,2放射線で測定した場合に、本発明の
図1に示されるものと本質的に同じ粉末X線回折図を有することを特徴とする、項目6~9のいずれか一つに記載のC形結晶。
【0095】
11) 20~30℃の範囲の温度でダイヤモンドATRセルを用いて測定した場合に、3459±2cm-1、1690±2cm-1、1287±2cm-1、1247±2cm-1、690±2cm-1の波数でのピークを含み、3500±2cm-1~4000±2cm-1の範囲の波数でのピークを含まないフーリエ変換赤外スペクトルを有することを特徴とする、項目1~10のいずれか一つに記載のC形結晶。
【0096】
12) 20~30℃の範囲の温度でダイヤモンドATRセルを用いて測定した場合に、3459±2cm-1、1690±2cm-1、1287±2cm-1、1247±2cm-1、690±2cm-1の波数でのピークを含み、3463±2cm-1~4000±2cm-1の範囲の波数でのピークを含まないフーリエ変換赤外スペクトルを有することを特徴とする、項目1~10のいずれか一つに記載のC形結晶。
【0097】
13) 25℃~250℃の範囲の温度で10K/分の加熱速度で測定した場合に、約227℃の開始温度を有する単一の発熱ピークを示す示差走査熱量曲線を有することを特徴とする、項目6~12のいずれか一つに記載のC形結晶。
【0098】
14) 約25℃~200℃の範囲の温度で約10K/分の加熱速度で熱重量分析を用いて測定した場合に、約0.5%以下の重量損失を示すことを特徴とする、項目6~13のいずれか一つに記載のC形結晶。
【0099】
15) 20~30℃の範囲の温度で測定した場合に、約55%以下の平衡相対湿度を有する、先行する項目のいずれか一つに記載のC形結晶。
【0100】
16) 20~30℃の範囲の温度で測定した場合に、約50%以下の平衡相対湿度を有する、先行する項目のいずれか一つに記載のC形結晶。
【0101】
17) 20~30℃の範囲の温度で測定した場合に、約40%以下の平衡相対湿度を有する、先行する項目のいずれか一つに記載のC形結晶。
【0102】
18) 20~30℃の範囲の温度で測定した場合に、約30%以下の平衡相対湿度を有する、先行する項目のいずれか一つに記載のC形結晶。
【0103】
19) 20~30℃の範囲の温度で測定した場合に、約20%以下の平衡相対湿度を有する、先行する項目のいずれか一つに記載のC形結晶。
【0104】
20) 20~30℃の範囲の温度で測定した場合に、約5%以下の平衡相対湿度を有する、先行する項目のいずれか一つに記載のC形結晶。
【0105】
21) (i) アビバクタムナトリウム及び水を含む溶液を提供すること;
(ii) (i)で得られた溶液を2-ブタノール及び/又はイソブタノールを含有する溶媒と混合すること;
(iii) (ii)で得られた混合物から水を少なくとも部分的に除去すること
を含む、先行する項目のいずれか一つに定義されたC形結晶の調製方法。
【0106】
22) 工程(i)における溶液の濃度が20~150g/Lの範囲である、項目21に記載の方法。
【0107】
23) 工程(i)における溶液の濃度が40~120g/Lの範囲である、項目21に記載の方法。
【0108】
24) 工程(i)における溶液の濃度が60~100g/Lの範囲である、項目21に記載の方法。
【0109】
25) 工程(i)の溶液が濾過される、項目21~24のいずれか一つに記載の方法。
【0110】
26) 工程(i)の溶液が20~30℃の範囲の温度で調製される、項目21~25のいずれか一つに記載の方法。
【0111】
27) 工程(ii)において、工程(i)で得られた溶液が、2-ブタノール、イソブタノール又はそれらの混合物と混合される、項目21~26のいずれか一つに記載の方法。
【0112】
28) 工程(ii)において、工程(i)で得られた溶液が2-ブタノールと混合される、項目27に記載の方法。
【0113】
29) 工程(ii)において、工程(i)で得られた溶液がイソブタノールと混合される、項目27に記載の方法。
【0114】
30) 水/有機溶媒比が1:0.5~3の範囲である、項目21~29のいずれか一つに記載の方法。
【0115】
31) 水/有機溶媒比が1:1~2の範囲である、項目30に記載の方法。
【0116】
32) 工程(iii)において、工程(ii)で得られた混合物から水が除去される、項目21~31のいずれか一つに記載の方法。
【0117】
33) 工程(iii)において、工程(ii)で得られた混合物から水が完全に除去される、項目32に記載の方法。
【0118】
34) 工程(ii)で得られた二相混合物を撹拌下で還流温度に加熱することによって、水が部分的に除去、除去又は完全に除去される、項目21~33のいずれか一つに記載の方法。
【0119】
35) 共沸蒸留によって、水が部分的に除去、除去又は完全に除去される、項目21~33のいずれか一つに記載の方法。
【0120】
36) 工程(iii)で得られた混合物に、項目1~20のいずれか一つに記載のアビバクタムナトリウムのC形の結晶を播種する工程(iv)をさらに包含する、項目21~35のいずれか一つに記載の方法。
【0121】
37) 工程(iii)又は(iv)で得られた結晶の少なくとも一部を母液から分離する工程(v)をさらに含む、項目21~36のいずれか一つに記載の方法。
【0122】
38) 結晶が濾過又は遠心分離によって回収される、項目37に記載の方法。
【0123】
39) 結晶が濾過によって回収される、項目38に記載の方法。
【0124】
40) 単離された結晶を溶媒で洗浄する工程(vi)をさらに含む、項目37~39のいずれか一つに記載の方法。
【0125】
41) 溶媒が水不混和性有機溶媒を含む、項目40に記載の方法。
【0126】
42) 水不混和性有機溶媒が2-ブタノールである、項目41に記載の方法。
【0127】
43) 水不混和性有機溶媒がイソブタノールである、項目41に記載の方法。
【0128】
44) 水不混和性有機溶媒が2-ブタノール及びイソブタノールの混合物である、項目41に記載の方法。
【0129】
45) 結晶を乾燥させる工程(vii)をさらに含む、項目21~44のいずれか一つに記載の方法。
【0130】
46) 結晶が100℃以下の温度で乾燥される、項目45に記載の方法。
【0131】
47) 結晶が80℃以下の温度で乾燥される、項目45に記載の方法。
【0132】
48) 結晶が60℃以下の温度で乾燥される、項目45に記載の方法。
【0133】
49) 結晶が40℃以下の温度で乾燥される、項目45に記載の方法。
【0134】
50) 結晶が20~30℃の範囲の温度で乾燥される、項目45に記載の方法。
【0135】
51) 乾燥が1~72時間の範囲の期間にわたって行われる、項目45~50のいずれか一つに記載の方法。
【0136】
52) 乾燥が2~48時間の範囲の期間にわたって行われる、項目45~50のいずれか一つに記載の方法。
【0137】
53) 乾燥が4~24時間の範囲の期間にわたって行われる、項目45~50のいずれか一つに記載の方法。
【0138】
54) 乾燥が6~18時間の範囲の期間にわたって行われる、項目45~50のいずれか一つに記載の方法。
【0139】
55) 乾燥が周囲圧力で行われる、項目45~54のいずれか一つに記載の方法。
【0140】
56) 乾燥が100ミリバール以下の真空で行われる、項目45~54のいずれか一つに記載の方法。
【0141】
57) 乾燥が50ミリバール以下の真空で行われる、項目45~54のいずれか一つに記載の方法。
【0142】
58) 乾燥が30ミリバール以下の真空で行われる、項目45~54のいずれか一つに記載の方法。
【0143】
59) 乾燥が20ミリバール以下の真空で行われる、項目45~54のいずれか一つに記載の方法。
【0144】
60) 医薬組成物の調製のための、項目1~20のいずれか一つに定義されたC形結晶の使用。
【0145】
61) 有効量及び/又は所定量の項目1~20のいずれか一つに定義されたC形結晶及び場合により1つ以上の抗菌剤を含む医薬組成物。
【0146】
62) 有効量のアビバクタムナトリウム、及び場合によりアビバクタムの他の薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物、及びさらに場合により1つ以上の抗菌剤を含み、アビバクタムナトリウムが、項目1~20のいずれか一つに定義されたC形結晶で存在する医薬組成物。
【0147】
63) アビバクタムナトリウム及び場合により1つ以上の抗菌剤を含み、アビバクタムナトリウムがアビバクタムナトリウムの2つ以上の物理的形態の混合物として存在し、混合物が所定量の項目1~20のいずれか一つに定義されたアビバクタムナトリウムのC形及びアビバクタムナトリウムの少なくとも1つの他の物理的形態からなる医薬組成物。
【0148】
64) アビバクタムナトリウムの少なくとも1つの他の物理的形態が、無水結晶形及び/又は非晶質形態である、項目63に記載の医薬組成物。
【0149】
65) 混合物における所定量のアビバクタムナトリウムのC形とアビバクタムナトリウムの少なくとも1つの他の物理的形態とのモル比が99:1~50:50の間である、項目63又は64に記載の医薬組成物。
【0150】
66) 1つ以上の抗菌剤が、セフタジジム及び/又はセフタロリン・フォサミルから選択される、項目61~65に記載の医薬組成物。
【0151】
67) 少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、項目61~66に記載の医薬組成物。
【0152】
68) 医薬として使用するための、項目61~67のいずれか一つに定義された医薬組成物。
【0153】
69) 細菌感染症の治療及び/又は予防に使用するための項目61~68のいずれか一つに定義された医薬組成物。
【0154】
以下の非限定的な実施例は本開示の例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0155】
実施例
透過幾何形態のシータ/シータ結合ゴニオメーターを備えたPANalytical X‘Pert PRO回折計、Cu-Kアルファ1,2放射線(波長0.15419nm)、集束ミラー及び固体状態のPIXcel検出器を用いて粉末X線回折(PXRD)を実施した。45kVの管電圧及び40mAの管電流で、周囲条件で2°~40°の2-シータの角度範囲で1段階当たり40秒(255チャネル)で0.013°の2-シータの刻み幅を適用して、回折図を記録した。2-シータ値の典型的な精度は、±0.2° 2-シータの範囲内である。したがって、例えば6.5°の2-シータで現れる実質的に純粋なC形の回折ピークは、標準条件下でほとんどのX線回折計で6.3~6.7°の2-シータの間に現れることができる。
【0156】
フーリエ変換赤外分光法(FTIR)は、周囲条件で4cm-1の分解能を有するBruker Tensor 27 FTIR分光計を用いてMKII Golden Gate(商標) Single Reflection Diamond ATR(減衰全反射)セルを用いて実施した。スペクトルを記録するために、試料のへらの先端を粉末形態のダイヤモンドの表面に適用した。次に、試料をサファイアアンビルを用いてダイヤモンド上に押し付け、スペクトルを記録した。清浄なダイヤモンドのスペクトルをバックグラウンドスペクトルとして使用した。波数値の典型的な精度は、約±2cm-1の範囲内である。したがって、3459cm-1に現れる実質的に純粋なC形の赤外ピークは、標準条件下でほとんどの赤外分光計で3457cm-1から1761cm-1の間に現れることができる。
【0157】
DSCはMettler Polymer DSC R装置で行った。試料を、穿孔したアルミニウム蓋を有する40マイクロLのアルミニウムパン中で25から250℃まで10K/分の速度で加熱した。窒素(パージ速度50mL/分)をパージガスとして使用した。
【0158】
TGAはMettler TGA/DSC 1装置で行った。試料をアルミニウム蓋で密閉した100マイクロLのアルミニウムパン中で加熱した。測定の開始時に自動的に蓋に孔を開けた。試料を25℃から200℃まで10K/分の速度で加熱した。窒素(パージ速度50mL/分)をパージガスとして使用した。
【0159】
SPSx-1μ吸湿分析器(ProUmid、Ulm)を用いて、吸湿等温線を記録した。測定サイクルを、周囲相対湿度(RH)30%で開始し、最初に3%RH、次いで0%RHに減少させた。その後、収着サイクルでRHを0%から80%まで上昇させ、5%の段階で脱着サイクルでRHを0%に減少させ、最終的に一段階で30%RHに上昇させた。1段階当たりの時間は最低2時間で最大6時間に設定した。試験した全ての試料の最大時間の前に1時間以内に一定質量が±0.01%の平衡状態に達した場合、最大時間の6時間の前に連続湿度段階を適用した。平衡が達成されなかった場合、最大時間6時間の後に継続的湿度段階を適用した。温度は25±0.1℃であった。
【0160】
[実施例1:アビバクタムナトリウムのC形結晶]
アビバクタムナトリウム(160mg、例えば、WO2011/042560A1号の実施例5に従って調製したD形結晶)を2mLの水に溶解した。この溶液に3mLのイソブタノールを加え、二相混合物を119℃の浴温度に加熱して水を共沸的に除去した。水を除去した後、沈殿物が生じた。懸濁液を室温まで冷却し、固体を濾過によって回収し、フィルター上で吸引乾燥させた。
【0161】
収量:98mg(理論値の61%)、DSC(10K/分):227℃の開始温度を有する発熱、
TGA(10K/分):約25~200℃の質量変化0.5重量%
【0162】
得られた材料の粉末X線回折図を
図1に示し、反射リストを表1に提供する。
【0163】
【0164】
得られた材料のフーリエ変換赤外スペクトルを
図2に示し、ピークリストを表2に提供する。
【0165】
【0166】
[実施例2:アビバクタムナトリウムのC形結晶]
アビバクタムナトリウム(164mg、例えば、WO2011/042560A1号の実施例5に従って調製したD形結晶)を2mLの水に溶解した。この溶液に3mLの2-ブタノールを加え、二相混合物を135℃の浴温度に加熱して水を共沸的に除去した。水を除去した後、沈殿物が生じた。懸濁液を室温まで冷却し、固体を濾過によって回収し、フィルター上で吸引乾燥させた。粉末X線回折により、C形結晶の受け取りが確認された。
【0167】
収量:102mg(理論値の62%)、
【0168】
[実施例3:ストレステスト]
C形結晶(本明細書の実施例1に従って調製)を、異なる相対湿度を生成する飽和塩溶液上のデシケーター中で室温で開放貯蔵した。試料を粉末X線回折によって分析し、その結果を以下の表2にまとめた。
【0169】