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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】ゼオライトSSZ-52x
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20220519BHJP
   B01J 29/70 20060101ALN20220519BHJP
   B01J 29/76 20060101ALN20220519BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J29/70 M
B01J29/70 Z
B01J29/76 A ZAB
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018567842
(86)(22)【出願日】2017-05-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 US2017033929
(87)【国際公開番号】W WO2018004876
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-03-31
(31)【優先権主張番号】15/196,598
(32)【優先日】2016-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デイビス、トレーシー
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0068403(US,A1)
【文献】米国特許第06254849(US,B1)
【文献】特表2017-535500(JP,A)
【文献】特表2005-525983(JP,A)
【文献】XIE, D. et al.,Journal or the American Chemical Society,米国,2013年06月19日,Vol.135,pp.10519-10524,doi:10.1021/ja4043615
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20 - 39/54
B01J 21/00 - 38/74
CAplus/REGISTRY/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム酸化物、ガリウム酸化物、鉄酸化物、またはこれらの混合物から選択される酸化物に対する、ケイ素酸化物、ゲルマニウム酸化物、またはこれらの混合物から選択される酸化物のモル比が6~50であり、合成したままの状態で表5のX線回折線を有し、前記酸化物がケイ素酸化物及びアルミニウム酸化物を含む、ゼオライトSSZ-52x。
【表5】
【請求項2】
前記ゼオライトが水素形態である、請求項1に記載のゼオライトSSZ-52x。
【請求項3】
合成したままかつ無水の状態でモル比に関して次の通りの組成:
【表1】

(表中、Yは、ケイ素、ゲルマニウム、またはこれらの混合物であり;Wは、アルミニウム、ガリウム、鉄、またはこれらの混合物であり;Mは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、またはこれらの混合物であり;nはMの価数であり;Qは次の構造:
【化1A】

を有する四級アンモニウムカチオンであり、Xは前記ゼオライトの形成に悪影響を及ぼさないアニオンである)
を有する、請求項1に記載のゼオライトSSZ-52x。
【請求項4】
WがアルミニウムでありYがケイ素である、請求項に記載のゼオライトSSZ-52x。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、新規な結晶性ゼオライトSSZ-52x、例えばN,N-ジエチル-5,8-ジメチル-2-アゾニウムビシクロ[3.2.2]ノナンなどの四級アンモニウムカチオン鋳型剤を用いたSSZ-52xの調製方法、及びSSZ-52xを触媒として用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
技術水準
結晶性モレキュラーシーブ及びゼオライトは、その特有のふるい特性及びその触媒特性のため、炭化水素変換、ガスの乾燥及び分離などの用途で特に有用である。多くの異なる結晶性モレキュラーシーブが開示されているが、ガスの分離及び乾燥、炭化水素及び化学品の変換、ならびに他の用途に望ましい特性を有する新しいゼオライトが継続的に必要とされている。新しいゼオライトは、これらのプロセスにおいて選択率を高める新規な内部細孔構造を含み得る。
【0003】
米国特許第6,254,849号には、ゼオライトSSZ-52、その組成物の調製、及び有用な用途が記載されている。米国特許第6,379,531号には、SSZ-52を使用する方法が記載されている。例えば、SSZ-52は、ガス分離のための吸収剤として、及びガス流中のNOの還元のためまたはメタノールからオレフィンへの変換のための触媒として、有用である。
【0004】
NOの低減などの重要な用途において改善された結果を与えることができる新規なゼオライトは常に重要であり、産業界に歓迎される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
本発明は、本明細書において「ゼオライトSSZ-52x」または単に「SSZ-52x」と称する、特有の特性を有する結晶性モレキュラーシーブの群に関する。好ましくは、SSZ-52xはそのアルミノシリケートの形態で得られる。本明細書で使用される「アルミノシリケート」という用語は、アルミナとシリカの両方を含むゼオライトを指す。
【0006】
本発明によれば、アルミニウム酸化物、ガリウム酸化物、鉄酸化物、及びこれらの混合物から選択される酸化物に対する、ケイ素酸化物、ゲルマニウム酸化物、及びこれらの混合物から選択される酸化物のモル比が約6~50であり、焼成後に、下の表4のX線回折線を有するゼオライトが提供される。ある実施形態においては、ゼオライトは、湿度10%で80時間、750℃で老化させた後に、250℃で100%のNO変換率を示す。本質的に、SSZ-52xは、標準的なSSZ-52材料と比較して、より優れた900℃での耐久性を示す。
【0007】
本発明は、更に、合成したままかつ無水の状態でモル比に関して次の通りの組成を有するゼオライトを提供する:
【表1】

表中のYは、ケイ素、ゲルマニウム、またはこれらの混合物であり;Wは、アルミニウム、ガリウム、鉄、またはこれらの混合物であり;Mは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、またはこれらの混合物であり;nはMの価数(すなわち1または2)であり;Qは次の構造:
【化1】

を有する四級アンモニウムカチオンである。
【0008】
ある実施形態においては、有機構造指向剤は、N-エチル-N-(2,4,4-トリメチルシクロペンチル)ピロリジニウムカチオン、N-エチル-N-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシル)ピロリジニウムカチオン、及びこれらの混合物からなる群から選択される。N-エチル-N-(2,4,4-トリメチルシクロペンチル)ピロリジニウムカチオン及びN-エチル-N-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシル)ピロリジニウムカチオンは、それぞれ次の構造(2)及び(3):
【化2】

【化3】

で表される。ゼオライトは焼成後、下の表4のX線回折線を有する。
【0009】
本発明によれば、アルミニウム酸化物、ガリウム酸化物、鉄酸化物、及びこれらの混合物から選択される酸化物に対する、ケイ素酸化物、ゲルマニウム酸化物、及びこれらの混合物から選択される酸化物のモル比が約6~50である、約200℃~約800℃の温度での熱処理によって調製されたゼオライトも提供される。本発明は、このようにして調製された主に(少なくとも90%)水素形態であるゼオライトも含み、この水素形態は、酸またはアンモニウム塩の溶液とのイオン交換及びその後の2回目の焼成によって調製される。
【0010】
本発明により、第1の四価元素の酸化物と、前記第1の四価元素とは異なる第2の四価元素、三価元素、五価元素、またはこれらの混合物の酸化物とを含む結晶性材料の調製方法であって、結晶化条件下で前記酸化物源と、構造(1)、(2)、または(3)を含む鋳型剤とを接触させることを含み、Q/YOの比が0.01~0.05、ある実施形態においては0.015~0.03の範囲であり、M2/n/YOの比が0.51~0.90、ある実施形態においては0.60~0.90の範囲であり、Qは1種の鋳型剤または鋳型剤の混合物であり、Mはアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、またはこれらの混合物であり、nはMの価数であり、Yはケイ素、ゲルマニウム、またはこれらの混合物である、方法も提供される。
【0011】
また、ガス流をゼオライトと接触させることを含む、酸素の存在下でガス流に含まれる窒素酸化物を還元するための改善された方法であって、改善が本発明のゼオライトをゼオライトとして使用することを含む方法も提供される。ゼオライトは、窒素酸化物の還元を触媒することができる金属または金属イオン(コバルト、銅またはこれらの混合物等)を含んでいてもよく、化学量論量より過剰の酸素の存在下で行われてもよい。好ましい実施形態においては、ガス流は、内燃機関の排気流である。SSZ-52xは、NOの還元において驚くべき安定性を示すことが見出された。
【0012】
ある実施形態では、液体生成物を生成する条件下で、低級アルコールまたは他の含酸素炭化水素を、本発明のゼオライトを含む触媒と接触させることを含む、前記低級アルコール及び他の含酸素炭化水素の変換方法も提供される。
【0013】
また、ある実施形態によれば、例えば窒素含有ガス混合物からの窒素などの、ガスの分離方法であって、混合物を本発明のゼオライトを含む組成物と接触させることを含む方法も提供される。ある実施形態においては、ガス混合物は窒素及びメタンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図面の簡単な記述
図1図1は、SSZ-52及びSSZ-52xを含むフレッシュ触媒についての温度に基づくNO変換率のグラフである。
【0015】
図2図2は、10%のHOの中で750℃で80時間老化させたSSZ-52及びSSZ-52x触媒についての温度に基づくNO変換率のグラフである。
【0016】
図3図3(a)は、SSZ-52xについての回転電子回折(RED)データであり、図3(b)は、SSZ-52についてのREDデータである。
【0017】
図4図4(a)は、合成されたままのSSZ-52xゼオライトの粉末X線回折(XRD)パターンであり、図4(b)は、合成されたままのSSZ-52ゼオライトの粉末XRDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な記述
SSZ-52xは、下の表2に示す組成を有する反応混合物から調製される:
【表2】

表中のY、W、Q、M、及びnは、上で定義した通りである。Q/YOとM2/n/YOの比率を記載した範囲内に維持することが重要であり、そうでない場合にはSSZ-52xは得られないであろう。
【0019】
実際には、SSZ-52xは、
(a)結晶性モレキュラーシーブを形成することができる少なくとも1種の酸化物源と、構造(1)、(2)、または(3)からなる鋳型剤または鋳型剤の混合物とを含む水溶液を調製すること(SSZ-52xを得るためには、反応混合物中の成分比が上の表2に記載の範囲内でなければならないことが見出された);
(b)SSZ-52xの結晶の形成に十分な条件下で水溶液を維持すること;及び
(c)SSZ-52xの結晶を回収すること;
を含む方法によって調製される。
【0020】
したがって、SSZ-52xは、架橋された三次元結晶構造を形成するための、共通の酸素原子を介して四面体配位で結合された金属酸化物及び非金属酸化物と組み合わされた結晶性材料及び鋳型剤を含み得る。金属酸化物及び非金属酸化物は、第1の四価元素(複数可)の酸化物の1つまたは組み合わせ、第1の四価元素(複数可)とは異なる第2の四価元素(複数可)の1つまたは組み合わせ、三価元素(複数可)、五価元素(複数可)、またはこれらの混合物を含む。第1の四価元素(複数可)は、好ましくは、ケイ素、ゲルマニウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、第1の四価元素はケイ素である。第2の四価元素(これは第1の四価元素とは異なる)、三価元素、及び五価元素は、好ましくは、アルミニウム、ガリウム、鉄、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、第2の三価または四価の元素はアルミニウムである。
【0021】
反応混合物のためのアルミニウム酸化物の典型的な供給源としては、アルミン酸塩、アルミナ、アルミニウムコロイド、シリカゾルに被覆されたアルミニウム酸化物、水和アルミナゲル(Al(OH)等)、及びアルミニウム化合物(AlCl及びAl(SO等)が挙げられる。ケイ素酸化物の典型的な供給源としては、ケイ酸塩、シリカヒドロゲル、ケイ酸、ヒュームドシリカ、コロイドシリカ、テトラアルキルオルトケイ酸塩、及びシリカ水酸化物が挙げられる。ガリウム、ゲルマニウム、及び鉄は、それらのアルミニウム及びケイ素の対応物に相当する形態で添加することができる。
【0022】
原料ゼオライト試薬は、アルミニウム源またはホウ素源を供給することができる。ほとんどの場合においては、原料ゼオライトはシリカ源も供給する。脱アルミニウム化または脱ホウ素化された形態の原料ゼオライトは、例えば上で記載した従来の供給源を使用して添加された追加的なケイ素と共にシリカ源としても使用することができる。本方法のためのアルミナの供給源としての原料ゼオライト試薬の使用は、1985年3月5日にBourgogneらに付与された「Process for the Preparation of Synthetic Zeolites,and Zeolites Obtained By Said Process」というタイトルの米国特許第4,503,024号により完全に記載されており、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
典型的には、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム、ルビジウム、カルシウム、及びマグネシウムの水酸化物などのアルカリ金属水酸化物及び/またはアルカリ土類金属水酸化物が反応混合物の中で使用される;しかしながら、この成分は、当量の塩基性が維持されている限り省略することができる。鋳型剤は、水酸化物イオンを供給するために使用することができる。そのため、これは例えばハライドを水酸化物イオンとイオン交換し、それにより必要とされるアルカリ金属水酸化物の量を低減するかなくすために有益な場合がある。アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類カチオンは、中の価電子電荷を釣り合わせるために、合成されたままの結晶性酸化物材料の一部であってもよい。
【0024】
反応混合物は、望ましくは反応混合物の0.01~50,000重量ppm(例えば100~5000重量ppm)の量で、SSZ-52などのモレキュラーシーブ材料の種も含有することができる。
【0025】
SSZ-52xを調製するために使用することができる1つの有機鋳型剤は、次の構造(1):
【化4-1】

を有するN,N-ジエチル-5,8-ジメチル-2-アゾニウムビシクロ[3.2.2]ノナンカチオンを含み、式中、XはSSZ-52xの形成に悪影響を及ぼさないアニオンである。代表的なアニオンとしては、ハロゲン(例えばフルオリド、クロリド、ブロミド、及びヨージド)、ヒドロキシド、アセテート、サルフェート、テトラフルオボレート、カルボキシレート等が挙げられる。ヒドロキシドが最も好ましいアニオンである。
【0026】
ある実施形態においては、有機構造指向剤は、N-エチル-N-(2,4,4-トリメチルシクロペンチル)ピロリジニウムカチオン、N-エチル-N-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシル)ピロリジニウムカチオン、及びこれらの混合物からなる群から選択される。N-エチル-N-(2,4,4-トリメチルシクロペンチル)ピロリジニウムカチオン及びN-エチル-N-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシル)ピロリジニウムカチオンは、それぞれ次の構造(2)及び(3)で表される:
【化4-2】

【化4-3】

SSZ-52xを調製するために構造(1)、(2)、及び(3)を有する有機鋳型剤のいずれか1つを使用することができ、または鋳型剤の混合物を使用することができる。
【0027】
反応混合物は、SSZ-52xゼオライトの結晶が形成されるまで高温で維持される。水熱結晶化は、通常、自己圧力下、120℃~160℃の温度で行われる。結晶化期間は典型的には1日より長く、好ましくは約3日間から約20日間である。
【0028】
好ましくは、ゼオライトは、穏やかな撹拌(stirring、agitation)を使用して調製される。
【0029】
水熱結晶化工程の際、SSZ-52x結晶に、反応混合物から自然に核形成させることができる。種材料としてのSSZ-52結晶またはSSZ-52x結晶の使用は、完全な結晶化を生じさせるために必要とされる時間を短縮するのに有利な場合がある。更に、種結晶を入れると、あらゆる望ましくない相よりもSSZ-52xの核生成及び/または形成が促進されることにより、得られる生成物の純度を高めることができる。種として使用する場合、SSZ-52結晶は、反応混合物中で使用されるシリカの重量の0.1~10%の量で添加される。
【0030】
ゼオライト結晶が形成された後、固体生成物は、ろ過などの標準的な機械的分離技術により反応混合物から分離される。結晶は、水洗された後、例えば90℃~150℃で8~24時間乾燥されることで、合成されたままの状態のSSZ-52xゼオライト結晶が得られる。乾燥工程は、大気圧または真空下で行うことができる。
【0031】
製造されたままの状態のSSZ-52xは、約6~50の、アルミニウム酸化物、ガリウム酸化物、鉄酸化物、及びこれらの混合物から選択される酸化物に対する、ケイ素酸化物、ゲルマニウム酸化物、及びこれらの混合物から選択される酸化物のモル比を有し、焼成後には、下の表4のX線回折線を有する。SSZ-52xは、更に、下の表1に示されるモル比の、合成したままかつ無水状態での組成を有する:
【表2-1】

表中のY、W、Q、M、及びnは、上で定義した通りである。調製されたSSZ-52xは、湿度10%で80時間、750℃で老化させた後でさえも250℃で100%のNO変換率が達成されるような、NO変換率に関して驚くほど改善された安定性及び性能を示すことも見出された。このような性能は、先行技術のゼオライトSSZ-52からの予想外の改善であり、これはSSZ-52とSSZ-52xとの間の差を強調する。図1及び図2を参照のこと。
【0032】
SSZ-52xは、そのX線回折パターン及び回転電子回折によって特徴付けられる、SSZ-52と比較して不規則性が増加した新規な構造からなると考えられる。例えば、ナノメートルサイズの単結晶に関する三次元電子回折データを記録することができる回転電子回折(RED)法により、SSZ-52とSSZ-52xの試料を分析した。
【0033】
各試料について4つのREDデータセットを同じ実験設定で収集した:結晶を合計100°傾け、傾斜を0.3°変えるたびに電子回折像を収集した。
【0034】
SSZ-52とSSZ-52xの両方の構造の不規則性の程度を評価するために、回折ストリークの数(不規則構造を表す回折の特徴)と回折点の数(規則構造を表す回折の特徴)の比率を計算し、下の表3に記載した。これは、SSZ-52x結晶がSSZ-52結晶よりも有意に高い水準の不規則性によって特徴付けられることを明確に示している。
【0035】
図3(a)はSSZ-52xについてのREDデータの写真であり、図3(b)はSSZ-52についてのREDデータの写真である。
【表3】
【0036】
焼成後、SSZ-52xゼオライトは、そのX線粉末回折パターンが表4に示される特徴的な線を含む結晶構造を有する:
【表4】

(a)±0.20°
(b)与えられている粉末XRDパターンは、X線パターンの中の最も強い線に100の値を割り当てた相対的な強度スケールに基づく:W=弱い(>0~≦20);M=中程度(>20~≦40);S=強い(>40~≦60);VS=非常に強い(>60~≦100)。
【0037】
合成されたままのSSZ-52xの特徴的なX線回折線を下の表5に示す。図面の図4(a)は、図4(b)に示されているSSZ-52についてのXRDパターンと比較した、合成されたままの形態のSSZ-52xについてのXRDパターンを示す。
【表5】

(a)±0.20°
(b)与えられている粉末XRDパターンは、X線パターンの中の最も強い線に100の値を割り当てた相対的な強度スケールに基づく:W=弱い(>0~≦20);M=中程度(>20~≦40);S=強い(>40~≦60);VS=非常に強い(>60~≦100)。
【0038】
焼成されたSSZ-52xのX線回折パターンからの代表的なピークを表4に示す。焼成は、「製造されたまま」の材料のパターンと比較してピークの強度の変化だけでなく、回折パターンのわずかなシフトも生じさせることができる。ゼオライト中に存在する金属または他のカチオンを様々な他のカチオン(HまたはNH 等)と交換することによって製造されるゼオライトは、本質的に同じ回折パターンを生じさせるが、ここでも同様に、面内間隔のわずかなシフト及びピークの相対強度の変化が存在し得る。これらのわずかな摂動にもかかわらず、基本的な結晶格子はこれらの処理によっては変化しないままである。
【0039】
結晶性SSZ-52xは合成したままの状態で使用できるものの、好ましくは熱処理(焼成)される。通常、イオン交換によってアルカリ金属カチオンを除去し、これを水素、アンモニウム、または任意の望みの金属イオンで置換することが望ましい。アルミナに対するシリカのモル比を増加させるために、ゼオライトをキレート剤(例えばEDTA)または希酸溶液で浸出させることができる。ゼオライトはスチーミングすることもでき、スチー―ミングは酸からの攻撃に対する結晶格子の安定化に役立つ。
【0040】
ゼオライト中のカチオンのいくつかを、標準的なイオン交換技術により金属カチオンで置換することによって、ゼオライトの中に金属を導入することもできる(例えば、1964年7月7日にPlankらに付与された米国特許第3,140,249号;1964年7月7日にPlankらに付与された米国特許第3,140,251号;及び1964年7月7日にPlankらに付与された米国特許第3,140,253号を参照のこと)。典型的な置換カチオンとしては、例えば希土類、IA族、IIA族、及びVIII族の金属、ならびにこれらの混合物などの金属カチオンを挙げることができる。置換金属カチオンのうち、希土類、Mn、Ca、Mg、Zn、Cd、Pt、Pd、Ni、Cu、Co、Ti、Al、Sn、及びFeなどの金属のカチオンが特に好ましい。
【0041】
水素、アンモニウム、及び金属成分は、SSZ-52xの中にイオン交換することができる。ゼオライトに金属を含浸させることもでき、あるいは当該技術分野で公知の標準的な方法を使用して金属をゼオライトと物理的に密接に混合することもできる。
【0042】
典型的なイオン交換技術は、合成ゼオライトを、望みの置換カチオンまたはカチオンの塩を含有する溶液と接触させることを含む。多種多様な塩を使用することができるものの、塩化物及び他のハロゲン化物、酢酸塩、硝酸塩、及び硫酸塩が特に好ましい。通常、より効果的なイオン交換の結果を得られることから、ゼオライトは、チャンネルの中及び表面上に存在する有機物を除去するためにイオン交換手順の前に焼成される。代表的なイオン交換技術は、1964年7月7日にPlankらに付与された米国特許第3,140,249号;1964年7月7日にPlankらに付与された米国特許第3,140,251号;及び1964年7月7日にPlankらに付与された米国特許第3,140,253号を含む様々な特許の中で開示されている。
【0043】
望みの置換カチオンの塩溶液と接触させた後、ゼオライトは、典型的には水で洗浄されてから65℃~約200℃の範囲の温度で乾燥される。洗浄後、炭化水素変換プロセスにおいて特に有用な触媒活性な生成物を生成するために、ゼオライトを約200℃~約800℃の範囲の温度で、空気または不活性ガス中で1~48時間またはそれ以上の範囲の時間焼成することができる。
【0044】
SSZ-52xの合成された形態で存在するカチオンに関わらず、ゼオライトの基本結晶格子を形成する原子の空間的配置は本質的に変化しないままである。
【0045】
SSZ-52xは、様々な物理的形状へと形成することができる。一般的に言えば、ゼオライトは、粉末、顆粒、または成形された製品(2メッシュ(Tyler)のスクリーンを通過して400メッシュ(Tyler)のスクリーン上に保持されるのに十分な粒子サイズを有する押出成形品等)の形態であってもよい。触媒が有機バインダーを用いた押出などにより成形される場合には、アルミノシリケートは乾燥前に押し出されるか、乾燥または部分的に乾燥されてから押し出すことができる。
【0046】
SSZ-52xは、有機変換プロセスで使用される温度及び他の条件に耐性がある他の材料と複合体を形成することができる。このようなマトリックス材料としては、活性及び不活性材料ならびに合成のまたは天然に存在するゼオライト、ならびに無機材料(粘土、シリカ、及び金属酸化物等)が挙げられる。そのような材料の例及びこれらが使用され得る方法は、Zonesらに1990年5月20日に付与された米国特許第4,910,006号、Nakagawaに1994年5月31日に付与された米国特許第5,316,753号に記載されており、これらは共に参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0047】
NO の還元
SSZ-52xは、ガス流中の窒素酸化物の接触還元に極めて有利に使用される。典型的には、ガス流は酸素も含み、しばしばその化学量論量より過剰で含む。また、SSZ-52xは、窒素酸化物の還元を触媒することができる金属または金属イオンをその中または上に含み得る。そのような金属または金属イオンの例としては、銅、コバルト、鉄、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0048】
ゼオライトの存在下での窒素酸化物の接触還元のためのそのような方法の1つの例は、Ritscherらに1981年10月27日に付与された米国特許第4,297,328号の中に開示されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。そこでは、触媒プロセスは、一酸化炭素及び炭化水素の燃焼と、内燃機関からの排気ガスなどのガス流に含まれる窒素酸化物の接触還元である。使用されるゼオライトは、ゼオライトの中または上に有効量の触媒銅金属または銅イオンを与えるように、イオン交換された、ドープされた、または十分に担持された金属である。更に、このプロセスは例えば酸素などの過剰の酸化剤の中で行われる。
【0049】
SSZ-52xは、例えば、SSZ-52と比較してNOの変換率に関して向上した性能をもたらすことが見出された。老化した触媒がSSZ-52と比較して低い温度で改善されたNO変換率(例えば250℃で100%)を与えることが観察されたことから、SSZ-52xはより安定である。これは図面の図1及び図2に示されている。
【0050】
炭化水素変換プロセス
SSZ-52xゼオライトは、炭化水素変換反応において有用である。炭化水素変換反応は、炭素含有化合物が異なる炭素含有化合物へと変更される化学的及び触媒的なプロセスである。SSZ-52xが有用であると見込まれる炭化水素変換反応の例としては、水素化分解、脱ろう、接触分解、及びオレフィン生成反応が挙げられる。触媒は、他の石油精製及び炭化水素変換反応(n-パラフィン及びナフテンの異性化、オレフィンの異性化、イソブチレン及び1-ブテンなどのオレフィン化合物またはアセチレン化合物のポリマー化及びオリゴマー化、改質、低分子量炭化水素からの高分子量炭化水素の形成(例えばメタンのアップグレーディング)、及び酸化反応等)においても有用であると期待される。SSZ-52x触媒は高い選択率を有することができ、炭化水素変換条件下では、全生成物に対する目的生成物の高いパーセンテージを得ることができる。
【0051】
SSZ-52xゼオライトは、炭化水素質供給原料の処理に使用することができる。炭化水素質供給原料は炭素化合物を含み、これは多くの様々な供給源(バージン石油留分、リサイクル石油留分、シェール油、液化石炭、タールサンド油、NAOからの合成パラフィン、再生プラスチック原料等)由来であってもよく、また通常はゼオライト触媒反応を受けやすい任意の炭素含有供給原料であってもよい。炭化水素質供給原料が受ける処理の種類に応じて、供給物は金属を含んでいても含んでいなくてもよく、またこれは多いまたは少ない窒素不純物または硫黄不純物も有していてもよい。しかし、供給原料の金属、窒素、及び硫黄の含有率が低いほど、一般的に処理はより効率的(そして触媒はより活性)になることが理解されるであろう。
【0052】
炭化水素質供給原料の変換は、望みのプロセスの種類に応じて、例えば流動床、移動床または固定床型反応器の中で任意の都合のよい様式で行うことができる。触媒粒子の配合は、変換プロセス及び操作方法次第で異なる。
【0053】
モレキュラーシーブSSZ-52xは、含酸素物質のオレフィンへの変換における触媒としての使用に適している場合がある。本明細書で使用される用語「含酸素物質」は、必ずしも限定されるものではないが、脂肪族アルコール、エーテル、カルボニル化合物(例えばアルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭酸塩等)だけでなく、ヘテロ原子含有化合物(ハロゲン化物、メルカプタン、スルフィド、アミン、及びこれらの混合物等)も含めて定義される。脂肪族部位は、通常、1~10個の炭素原子(例えば1~4個の炭素原子)を含む。特に好適な含酸素化合物は、メタノール、ジメチルエーテル、またはこれらの混合物であり、特にはメタノールである。
【0054】
含酸素物質の変換は、液相または気相の含酸素物質(例えばメタノール)を用いて、バッチ方式または連続方式で行うことができる。連続方式で行う場合、1~1000h-1(例えば1~100h-1)の、含酸素物質を基準とした時間当たりの重量空間速度(WHSV)を使用することができる。経済的な変換率を得るためには、通常は高温が必要とされる(例えば300℃~600℃または400℃~500℃の温度)。触媒は、固定床または動的床(例えば流動床または移動床)の中にあってもよい。
【0055】
含酸素供給原料は、反応条件下で不活性な希釈剤(例えばアルゴン、窒素、二酸化炭素、水素、または蒸気)と混合されてもよい。供給流中の含酸素物質の濃度は様々であってもよい(例えば供給原料の5~90モル%)。圧力は、広い範囲(例えば大気圧から500kPaまで)で変動し得る。
【0056】
生成したオレフィン(複数可)は、典型的には2~30個の炭素原子(例えば、2~8個の炭素原子、2~6個の炭素原子、または2~4個の炭素原子、最も好ましくはエチレン及び/またはプロピレン)を有する。
【0057】
金属(例えば白金などのVIII族金属)を含む本発明の触媒を用いて行うことができる他の反応としては、水素化-脱水素反応、脱窒素反応、及び脱硫反応が挙げられる。
【0058】
次の表6は、本発明の炭化水素変換反応においてSSZ-52xを含む触媒を使用する場合に使用され得る典型的な反応条件を示している。好ましい条件は括弧内に示されている。
【表6】

数百気圧
気相反応
炭化水素分圧
液相反応
WHSV
他の反応条件及びパラメーターは下に示されている。
【0059】
接触分解
炭化水素分解原料は、典型的には主に水素形態であるSSZ-52xを使用して、水素の不在下で触媒的に分解することができる。
【0060】
SSZ-52xが水素の不在下で接触分解触媒として使用される場合、触媒は、例えば分解触媒の成分としてこれまで用いられてきた任意のアルミノシリケートなどの、従来の分解触媒と組み合わせて使用されてもよい。典型的には、これらは大きな細孔の結晶性アルミノシリケートである。これらの従来の分解触媒の例は、上述した米国特許第4,910,006号及び第5,316,753号に開示されている。従来の分解触媒(TC)成分が使用される場合、TC対SSZ-52xの相対的な重量比は、通常約1:10~約500:1、望ましくは約1:10~約200:1、好ましくは約1:2~約50:1、最も好ましくは約1:1~約20:1である。新規なゼオライト及び/または従来の分解成分は、選択性を修正するために希土類イオンで更にイオン交換されてもよい。
【0061】
分解触媒は、典型的には無機酸化物マトリックス成分と共に使用される。そのようなマトリックス成分の例についての前述の米国特許第4,910,006号及び第5,316,753号を参照のこと。
【0062】
SSZ-52Xのその他の用途
SSZ-52xは、モレキュラーシーブ挙動に基づく吸着剤としても使用することができる。
【0063】
SSZ-52xは、窒素含有ガス混合物からの窒素の分離のなどの、ガスの分離に使用することもできる。そのような分離の1つの例は、メタンからの窒素の分離(例えば天然ガスからの窒素の分離)である。
【0064】
実施例
次の実施例は実証であるが、限定を意図するものではない。
【0065】
実施例1
N,N-ジエチル-5,8-ジメチル-2-アゾニウムビシクロ[3.2.2]ノナンカチオンの合成
三口の5リットルフラスコに、平衡アームを備えた滴下ろうとを取り付ける。ろうとの上をセプタムで塞ぐ。系に窒素を通す。最初に、1859mLのテトラヒドロフラン(THF)の中に104.55gのジイソプロピルアミンを入れ、次いで温度を-70℃近くに保ちながら401.7mLのn-ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M)をゆっくりと添加することにより、in-situ試薬を作る。カニューレを用いてn-ブチルリチウムを滴下ろうとに入れる。THFへの添加に約1.25時間かけ、その後、得られた混合物を更に1時間撹拌する。1117mLのTHF中の104.53gの3-メチル-2-シクロヘキセン-1オンを0.75時間かけて滴下する。最後に、161.73gのアクリル酸メチルを0.25時間かけて添加する。反応を徐々に室温まで温め、その進行をTLCにより追跡する。反応は一晩進行するようである。
【0066】
生成物の回収は、溶液が酸性になるまで1NのHClを添加することにより開始する。反応生成物を分液ろうとに移し、水相を回収して塩化メチレンで引き続き処理する(2×250mL)。合わせた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、その後溶媒を除去する。残渣をエーテルの中に入れ、少量ガム状物質を除く。エーテルを除去し、得られたオイルを蒸留する;Vigreauxカラム(30cm)を設置し、2~4mmHgで流す。生成物の大部分は123~137℃の間に出る。
【0067】
得られた生成物を、水素化リチウムアルミニウムを用いて還元する。還元により、ジオール,1-メチル-2-メタノール-7-ヒドロキシビシクロ[2.2.2]オクタンが生成する。側鎖のメタノール基は、無水ピリジン(500mL)中での塩化トシル(96.92g)とジオール(85.68g)との反応によりトシル化される。反応を-5℃に冷却しながら、粉末滴下ろうとを使用して窒素下で塩化トシルを他の2つの成分に添加する。添加を0.75時間かけて行い、反応混合物を室温まで温め、反応を一晩中進行させる。塩化メチレン500mLを添加し、得られた混合物を分液ろうとに移し、水(2×250mL)で洗浄する。得られた生成物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、留去することで150gのオイルを得る。
【0068】
生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製する。1kgのシリカゲル(230~400メッシュ)をヘキサン中でスラリー化し、50mLの塩化メチレン中のオイルを上に載せた。溶出は25/75の酢酸エチル(EtOAc)/ヘキサンを使用して行い、フラクションはTLCにより追跡する。83gの生成物を回収する。その後、トシレートをLAH(上の通り)を用いて還元することで、1,2-ジメチル-7-ヒドロキシビシクロ[2.2.2]オクタンを得る。次に、アルコールをケトンへ再び酸化する。37.84gのアルコールを、三口の2リットルフラスコ中で以下の通りに反応させる:34.60gの塩化オキサリル及び604mLの塩化メチレンを入れ、窒素で満たす。サイドアームを有する添加ろうとを用いて、122.7mLの塩化メチレンの中に入っている46gの無水ジメチルスルホキシド(DMSO)を添加する。ドライアイス/アセトン浴を用いて浴を-60℃に冷却し、添加を0.5時間かけて行う。53.4mLの塩化メチレンの中に入っているアルコールをこの温度で0.5時間かけて添加し、引き続き更に0.5時間撹拌する。その後、126.65gのトリエチルアミンを滴下ろうとに入れ、添加を開始し、0.25時間継続する。全ての添加は発熱応答を生じるため、冷却が継続される。反応混合物をゆっくりと室温まで温め、反応を一晩継続する。
【0069】
反応生成物の後処理は500mLの水の添加により開始する。その後、分離した水相を塩化メチレン(2×250mL)で抽出する。次いで、合わせた有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥し、留去する。得られたオイルをエーテルでトリチュレーションして少量の不溶性物質を分離する。エーテルを留去することで37gの生成物が得られる。
【0070】
滴下ろうとに接続された1リットルの丸底フラスコに、37gのケトン及び240mLの96%のギ酸を入れる。これらの成分を、磁気撹拌子を用いて攪拌する。この中に溶解及び懸濁させた43gのヒドロキシルアミン-O-スルホン酸を含む125mLのギ酸をろうとに入れる。添加は攪拌しながら20分かけて行う。溶液は暗くなる。滴下ろうとを還流冷却器で置き換え、TLCで追跡するために試料を採取しつつ、反応を15~20時間還流させる。
【0071】
混合物を2kgの氷の中に注意深く注ぎ入れる。氷の中で冷却した後、50%NaOHを添加して混合物をゆっくりとpH=12にする。500mL単位の塩化メチレンを使用して3回抽出を行う。これらの抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥する。乾燥後、溶媒を留去することで約45gの黒色オイルが残る。
【0072】
このオイルを最小限のクロロホルムに溶解させ、カラム(230~400メッシュのシリカゲル750g、クロロホルム中で既にスラリー化されているもの)に装填する。溶出は、2体積%のメタノールが入っているクロロホルムを用いて進行させる。溶出フラクションはTLCにより追跡する(フラクション7~21が同じ生成物を与える)。類似しているフラクションを合わせ、溶出溶媒を除去することで約30gのラクタムが得られる。
【0073】
25gのこのラクタムを還元工程で使用する。2Lの三口丸底フラスコを使用し、窒素ガスを系内に流し、還流冷却器を通してバブラーの中に通気する。系は滴下ろうとを有する。460mLの無水エーテルをフラスコに入れる。注意深く、18gの水素化アルミニウムリチウムもフラスコに入れる。少量のガスが発生する。ラクタムを230mLの塩化メチレン(これも無水)に溶解させる。フラスコをアセトン/ドライアイス浴で冷却した後、ラクタムを滴下する。反応は発熱的であるため、温度の上昇に伴い一定期間ごとにより多くの氷を添加する必要がある。還元は、TLCデータの変化により追跡することができる(ヨウ素により追跡し、98/2のクロロホルム/メタノールでシリカ上で溶離させる)。反応を一晩おいて室温にする。
【0074】
18gの水をゆっくり添加する。これは予期された発熱的なガスの発生を伴う。エーテルを除去し、その体積をジクロロメタンで置き換える。18gの15%NaOH溶液、次いで55gの水を添加する。形成された固体をろ別し、追加のジクロロメタンで洗浄し、有機フラクションと合わせ、硫酸ナトリウム上で乾燥させる(注意:NaOH溶液をジクロロメタンと接触させたまま一晩おいてはならない)。溶媒を留去して約15gのオイル/固体混合物を回収する。これは未精製アミンである。
【0075】
10gのこのアミンを次の通りに四級化する:撹拌子及び還流冷却器を備えた250mLのフラスコに、アミン、10gのKHCO、65mLのメタノール、最後に30gのヨウ化エチルを添加する。混合物を還流させ、その状態で48時間維持する。冷却後、溶媒を除去する。固体をクロロホルムで処理する。次に、クロロホルム可溶性のフラクションを留去して別の固体を得て、これを最小限の熱アセトン及びメタノールから再結晶させる。低温で再結晶化することで、合計で11gの塩である3つの別個の群の生成物が得られる。これらの群の融点は全て252~256℃の範囲である。
【0076】
塩は、BIO-RAD(登録商標) AG1-X8樹脂上でのイオン交換によって水酸化物形態へと変換される。
【0077】
実施例2
N-エチル-N-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシル)ピロリジニウムカチオンの合成
構造指向剤(SDA)は、下のスキームに記載の反応手順を使用して合成する。
【化5】
【0078】
N-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシル)ピロリジンの合成
3リットルの三口フラスコ中で、150g(2.13モル)のピロリジン及び100gの3,5,5-トリメチルシクロヘキサノン(0.71モル)を、1500mLの無水ヘキサン中で混合する。得られた溶液に、150g(1.25モル)の無水硫酸マグネシウムを添加し、混合物を機械撹拌し、132時間還流加熱する(反応はNMR分析により追跡する)。反応混合物をフリットガラスろうとを通してろ過する。ろ液をロータリーエバポレーターで減圧下で濃縮することで、H-及び13C-NMR分析により示される、133gの目的のエナミンの異性体混合物を得る。[1-(3,3,5-トリメチルシクロヘキス-1-エニル)ピロリジン及び1-(3,5,5-トリメチルシクロヘキス-1-エニル)ピロリジン]。N-(3,5,5-トリメチルシクロヘキシル)ピロリジンを得るためのエナミン混合物の飽和は、活性炭上の10%Pdの存在下、55psiの圧力の水素ガスでエタノール中で水素化することにより定量的収率で達成される。
【0079】
N-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシル)ピロリジンの四級化(N-エチル-N-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシル)ピロリジニウムアイオダイドの合成)
1000mLの無水メタノールの中に131g(0.67モル)のN-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシル)ピロリジンの中に入っている溶液に、210g(1.34モル)のヨウ化エチルを添加する。反応を室温で3日間機械撹拌する。その後、追加的な当量のヨウ化エチル及び1当量(67.7g;0.67モル)の重炭酸カリウムを添加し、反応を還流温度で72時間撹拌する。反応混合物を減圧下でロータリーエバポレーターで濃縮することで、オフホワイト色の固体物質を得る。固体をクロロホルムで数回すすぎ、各すすぎの後にろ過する。全てのすすぎに使用したクロロホルムを合わせてから濃縮することで、そのNMRデータが目的の四級ヨウ化アンモニウム塩に許容される白色粉末が得られる。反応は、218g(収率93%)の生成物を与える。ヨウ化物塩は、アセトン及びエーテル中での再結晶によって精製する。これはアセトン中にヨウ化物塩を完全に溶解させることによって行い、その後、生成物の析出は、エチルエーテルをアセトン溶液に添加することによって促進される。再結晶により、211gの生成物を白色粉末として得る(H-及び13C-NMR分析から純粋)。
【0080】
イオン交換(N-エチル-N-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシル)ピロリジニウムヒドロキシドの合成)
1リットルのプラスチック瓶の中の、350mLの水の中に入っているN-エチル-N-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシル)ピロリジニウムアイオダイド塩(100g;0.285モル)の溶液に、340gのイオン交換樹脂-OH(BIO-RAD(登録商標) AH1-X8)を添加し、混合物を室温で一晩穏やかに撹拌する。混合物をろ過し、固体を更に水75mLですすぐ。0.1NのHClによる滴定分析から、0.215モルの総収量の水酸化物イオン(0.215モルのN-エチル-N-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシル)ピロリジニウムヒドロキシド)が得られる。
【0081】
実施例3
N-エチル-N-(2,4,4-トリメチルシクロペンチル)ピロリジニウムカチオンの合成
ピロリジン及び2,4,4-トリメチルシクロペンタノンから出発して、N-エチル-N-(2,4,4,-トリメチルシクロペンチル)ピロリジニウムカチオンを上述した合成スキームを用いて合成する。
【0082】
実施例4
SSZ-52Xの合成
構造(1)を有する3.71gのSDA、N,N-ジエチル-5,8-ジメチル-2-アゾニウムビシクロ[3.2.2]ノナンカチオンを、20.51gの水、9.98gの1NのNaOH、17.28gのケイ酸ナトリウム溶液、0.18gのSSZ-52種の結晶、及びアルミニウムの供給源としての1.75gのナトリウムYゼオライトと混合する。SDAの濃度は0.54Mであった。全ての成分を125ccのPTFEライナーの中で混合した。ライナーをオートクレーブの中に密封し、135℃に加熱した。オートクレーブを4日間回転させた。
【0083】
結晶生成物を回収し、X線回折によりSSZ-52xであると決定した。生成物は、表5のXRDデータ及び図4(a)のX線回折パターンを有していた。
【0084】
実施例5
SSZ-52Xの合成
23mLのPTFEオートクレーブライナーの中で、1.39mmolのN,N-ジエチル-5,8-ジメチル-2-アゾニウムビシクロ[3.2.2]ノナンヒドロキシド(0.54M)、1.35gの1NのNaOH溶液、2.59gケイ酸ナトリウム溶液、2.49gの脱イオン水、0.26gのゼオライトY(CBV300、Zeolyst International、SiO/Alのモル比=5.1)、0.027gのSSZ-52の種結晶を混合し、均一な混合物が得られるまで撹拌した。ライナーに蓋をし、Parr鋼製オートクレーブ反応器内に入れた。オートクレーブを回転(43rpm)させながら135℃で4日間加熱した。回収した生成物はXRDによりSSZ-52xであることを確認した。
【0085】
実施例6
SSZ-52Xの焼成
実施例4からの材料を次の方法で焼成する。材料の薄層をマッフル炉の中で室温から120℃まで毎分1℃の速度で加熱し、120℃で3時間保持する。その後、同じ速度で温度を540℃まで上昇させ、この温度で5時間保持する。空気と窒素の50/50混合物を、加熱中に20標準立方フィート毎分の速度でゼオライトに通す。生成物のX線回折データは表4のものであった。
【0086】
実施例7
NO 変換
焼成したSSZ-52xに、インシピエントウェットネス法によって重量により銅を担持させた。次いで、室温から150℃まで2℃/分の速度で材料の温度を上げ、150℃で16時間保持した後、450℃まで5℃/分の速度で材料の温度を上げ、450℃で16時間保持することにより、イオン交換した材料を活性化した。その後、材料を再度室温まで放冷した。
【0087】
試料を、温度の関数としての(例えば、N及びOへの)そのNO変換能力を決定するために試験した。フレッシュな(すなわち老化していない)Cu/SSZ-52を、500ppmのNO、500ppmのNH、10%のO、10%のHO、及び残部Nの条件下で、60,000/時の空間速度で、合成触媒活性試験(SCAT)装置を使用して試験した。結果は図1の中に示されている。例えば750℃で80時間、10%(湿度)で老化させた触媒などの老化した触媒についても、上に記載のSCATを使用して試験した。結果は図2に示されており、SSZ-52と比較しSSZ-52xの優れた耐久性及び向上した性能が実証されている。
【0088】
本明細書及び添付の請求項のためには、別段の指示がない限り、明細書及び請求項の中で使用されている量、パーセンテージまたは割合、及び他の数値を表す全ての数字は、全ての場合において用語「約」により修飾されるものとして理解すべきである。更に、本明細書に開示の全ての範囲は、端点を含み、独立して組み合わせることができる。下限と上限を有する数値範囲が開示される場合は常に、範囲内に含まれる全ての数字も具体的に開示されている。
【0089】
本明細書で使用される「含む」という用語は、その用語の後に特定される要素または工程を含むことを意味するが、全てのそのような要素または工程は網羅的ではなく、実施形態は他の要素または工程を含み得る。
【0090】
別段の規定がない限り、個々の成分または成分の混合物をそこから選択することができる要素、材料、または他の成分の種類の列挙は、列挙された成分及びそれらの混合物の全ての可能な下位に属する組み合わせを含むことが意図されている。
【0091】
定義されていない全ての用語、略語、または省略形は、出願がなされた時点に当業者によって通常使用されている意味を有すると理解される。単数形「a」、「an」及び「the」は、明示的に及び明白に1つの場合に限定されない限り、複数の言及を含む。
【0092】
本出願で引用されている全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各個別の刊行物、特許出願、または特許の開示が具体的かつ個別にその全体が参照により組み込まれていることが示されている場合と同じ程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明に関連して、以下の内容を更に開示する。
[1]
アルミニウム酸化物、ガリウム酸化物、鉄酸化物、またはこれらの混合物から選択される酸化物に対する、ケイ素酸化物、ゲルマニウム酸化物、またはこれらの混合物から選択される酸化物のモル比が約6~50であり、焼成後に表4:
【表1】

のX線回折線を有し、回転電子回折(RED)法により証明されるSSZ-52よりも高い水準の不規則性を示す、ゼオライト。
[2]
前記酸化物がケイ素酸化物及びアルミニウム酸化物を含む、[1]に記載のゼオライト。
[3]
湿度10%で80時間、750℃で老化させた後に、250℃で100%のNO 変換率を示す、[1]に記載のゼオライト。
[4]
合成したままかつ無水の状態でモル比に関して次の通りの組成:
【表2】

(表中、Yは、ケイ素、ゲルマニウム、またはこれらの混合物であり;Wは、アルミニウム、ガリウム、鉄、またはこれらの混合物であり;Mは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、またはこれらの混合物であり;nはMの価数であり;Qは次の構造:
【化1A】

を有する四級アンモニウムカチオンである)
を有するゼオライトであって、前記ゼオライトが合成したままの状態で表5:
【表3】

のX線回折線を有する、前記ゼオライト。
[5]
WがアルミニウムでありYがケイ素である、[4]に記載のゼオライト。
[6]
次の組成:
【表4】

を有する反応混合物中で、結晶化条件下、前記酸化物の供給源と、次の構造:
【化1B】

(式中、X は前記ゼオライトの形成に悪影響を及ぼさないアニオンである)
を有する四級アンモニウムカチオンを含む鋳型剤とを接触させることを含む、[4]に記載のゼオライトの調製方法。
[7]
前記M 2/n /YO の比率が0.60~0.90の範囲である、[6]に記載の方法。
[8]
前記酸化物がケイ素酸化物及びアルミニウム酸化物である、[6]に記載の方法。
[9]
前記ゼオライトが、湿度10%で80時間、750℃で老化させた後に、250℃で100%のNO 変換率を示す、[6]に記載の方法。
[10]
アルミニウム酸化物、ガリウム酸化物、鉄酸化物、及びこれらの混合物から選択される酸化物に対する、ケイ素酸化物、ゲルマニウム酸化物、及びこれらの混合物から選択される酸化物を含むゼオライトの調製方法であって、前記方法が、次の組成:
【表5】

(表中、Yは、ケイ素、ゲルマニウム、またはこれらの混合物であり;Wは、アルミニウム、ガリウム、鉄、またはこれらの混合物であり;Mは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、またはこれらの混合物であり;nはMの価数であり;Qは四級アンモニウムカチオンである)
を有する反応混合物中で、結晶化条件下、前記酸化物の供給源と、
【化2】

または
【化3】

から選択される構造を有する四級アンモニウムカチオンを含む鋳型剤とを接触させることを含み、前記ゼオライトが合成したままの状態で表5:
【表6】

のX線回折線を有する、前記方法。
[11]
前記酸化物がケイ素酸化物及びアルミニウム酸化物である、[10]に記載の方法。
[12]
前記ゼオライトが、湿度10%で80時間、750℃で老化させた後に、250℃で100%のNO 変換率を示す、[10]に記載の方法。
[13]
前記M 2/n /YO の比率が0.60~0.90の範囲である、[10]に記載の方法。
図1
図2
図3
図4