(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】油中水型エマルジョンの形態の唇用化粧品およびメーキャップ方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20220519BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20220519BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20220519BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20220519BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20220519BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/34
A61K8/37
A61Q1/04
A61Q1/00
A61K8/73
(21)【出願番号】P 2019504854
(86)(22)【出願日】2017-07-27
(86)【国際出願番号】 FR2017052101
(87)【国際公開番号】W WO2018020165
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-05-27
(32)【優先日】2016-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】302071210
【氏名又は名称】エルヴェエムアッシュ ルシェルシュ
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブロサール、ファビエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ、アマンディーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ド ラ ポテリー、ヴァレリー
【審査官】山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-508919(JP,A)
【文献】国際公開第2012/104163(WO,A1)
【文献】特表2008-505968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
25重量%~45重量%の、水および少なくとも1つのポリオールを含む水相;
25重量%~50重量%の油混合物;
10重量%~20重量%の少なくとも1つの揮発性溶媒;
0.5重量%~10重量%の、前記油のうちの少なくとも1つまたは前記油混合物に溶解されたポリマー;
0.05%~5%の、前記油の少なくとも1つをゲル化するためまたは前記油混合物をゲル化するためのゲル化化合物;および
着色剤
を含む、油中水型エマルジョンであって、
前記パーセンテージは、前記エマルジョンの重量に対して表現され;
前記エマルジョンは、前記油混合物が、ポリグリセリンのエステルから選択される少なくとも1つの第1の油、脂肪酸モノエステルから選択される少なくとも1つの第2の油および脂肪アルコールから選択される少なくとも1つの第3の油を含むことを特徴とする、
油中水型エマルジョン。
【請求項2】
前記水相が、前記エマルジョンの重量に対して30重量%~40重量%を占めることを特徴とする、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項3】
前記第1の油が、ポリグリセリンのエステルおよび16~20個の炭素原子を含む脂肪族カルボン酸のエステルから選択される第1のエステル、ならびにポリリシノール酸ポリグリセリルから選択される第2のエステルを含む混合物であることを特徴とする、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項4】
前記第1のエステルが、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリン-2およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項3に記載のエマルジョン。
【請求項5】
前記第2の油が、イソステアリン酸イソステアリル;イソステアリン酸イソセチル;イソステアリン酸イソプロピル;イソステアリン酸2-エチル-ヘキシルからなる群より選択される、少なくとも1つのC16-C20アルキル鎖を有する、非ヒドロキシル化モノエステルであることを特徴とする、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項6】
前記エマルジョンの重量に対して10重量%と20重量%との間の、エステル基を有する油を含むことを特徴とする、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項7】
前記揮発性溶媒が、シリコーン油から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項8】
前記ポリマーが、前記第3の油に溶解されることを特徴とする、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項9】
前記第3の油が、オクチルドデカノールであり、前記ポリマーが、エチルセルロースであることを特徴とする、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項10】
前記油ゲル化化合物が、第四級塩化アルキルアンモニウムで修飾されたヘクトライトであり、前記エマルジョンの重量に対して0.1重量%~1重量%を占めることを特徴とする、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項11】
水が、30重量%~40重量%であり、前記ポリオールが、3重量%~15重量%を占め;
前記第1の油が、ポリグリセリンとC16-C20脂肪酸との、非ヒドロキシル化の、少なくとも2つのエステルを含む混合物であり、1重量%~15重量%を占め;
前記第2の油が、少なくとも2つの飽和C16-C20アルキル鎖を含む非ヒドロキシル化モノエステルであり、1重量%~15重量%を占め;
前記第3の油が、C10-C26飽和モノアルコールであり、10重量%~30重量%を占め
;
前記ゲル化化合物が、第四級塩化アルキルアンモニウムで修飾されたヘクトライトであり、0.1重量%~1重量%を占め;
前記着色剤が、0.1重量%~5重量%を占め;
前記パーセンテージは、前記エマルジョンの重量に対して重量基準で表現され
、
前記揮発性溶媒が、前記揮発性溶媒の重量に対して、少なくとも80重量%のシリコーン溶媒を含む;
ことを特徴とする、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項12】
請求項1に記載のエマルジョンを塗布する工程を含む、唇をメーキャップする方法。
【請求項13】
塗布手段およびキャップが備わったボトルであって、前記ボトルは、請求項1に記載のエマルジョンを含み、前記塗布手段は、ブラシまたは多孔性発泡体である、ボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の油混合物を含む油中水型エマルジョンの形態の化粧品組成物に関し、より詳細には、唇のメーキャップの分野に関する。
【0002】
本発明はまた、この組成物を唇に局所塗布する工程を含む、唇を美容的にメーキャップする方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
唇用のメーキャップ製品は、例えばスキンケア製品などの他の化粧品とは異なって光沢特性が求められる化粧品であり、可能な限り控えめなマット仕上げの薄膜を皮膚上にもたらすことが望ましい。
【0004】
また、長時間にわたるメーキャップ製品の唇における保持レベルは、その製品がより大きな摩擦に曝される限り、他の身体領域に塗布される化粧品よりもかなり高くなくてはならない。
【0005】
最後に、唇は、他の身体部分よりもかなり敏感であるので、その製品によってもたらされる快適さも非常に大きくなくてはならない。
【0006】
したがって、市場に出すのにふさわしいものであるために、唇用のメーキャップ製品は、長時間にわたる製品の安定性;唇に塗布されている間およびまたいったん塗布されたら長時間にわたる製品の快適さ;唇に堆積する薄膜の光沢;および長時間にわたる薄膜の唇における保持などの多くの基準をはじめとした複雑な規格を満たす必要がある。
【0007】
これらの基準は、同時に満たすことが難しく、例えば、長時間にわたるメーキャップの保持の増大または唇に堆積する薄膜の光沢の増大は、唇における製品の快適さを低下させることが非常に多く、唇の乾燥、粘着性の感覚または唇において重く感じる堆積物の感覚を生じることがある。
【0008】
唇用のメーキャップ製品の大部分は、脂肪から製剤化され、水を含まない。水を含む口紅またはリップグロスは、水相および油相を含む固体または液体エマルジョンの形態であり得る。水相が油相中に分散される(油中水型エマルジョン)か、または油相が水相中に分散される(水中油型エマルジョン)。
【0009】
本発明のエマルジョンは、油中水型の液体エマルジョンの形態であり、このカテゴリーの従来技術のエマルジョンと比べて非常に流動性である特徴を示す。本発明者らは、長時間にわたって安定であり、少量の安定化剤(一般にエマルジョン系の長期間安定性を保証するために必要)を使用しつつ大量の油および大量の水を含むエマルジョンを製剤化する方法を予想外にも発見した。本発明のエマルジョンは、少量の保持剤、特に、粘着性の感覚を生じさせ得るフェニルシリコーン化合物しか含まないという利点も示す。本発明者らは特に、エチルセルロース、有機化合物で修飾されたヘクトライト、およびポリグリセリンのエステルを合わせることが、そのような目的を達成するのを可能にすることを見出した。詳細には、唇において粘着性または不快感を生じさせるのを回避するために、エマルジョンの安定性、流動性およびテクスチャーを両立させることは非常に難しい。
【0010】
唇をメーキャップするために流動性が高い油中水型エマルジョンを提供することには、数多くの利点がある。それは、水が存在するために塗布中にすがすがしい感覚およびまた厚さが薄いことと本質的に関連する軽さの感覚を提供する薄膜を唇にもたらすことが可能である。この流動性にもかかわらず、本発明のエマルジョンは、非常に良好な保湿特性および光沢特性をもたらすことができる。このことは、唇に堆積する薄膜が薄いという点でさらに驚くべきことである。
【0011】
したがって、本発明の目的の1つは、不快感を生じさせずに塗布時および長時間にわたって非常に潤いのある唇のメーキャップを提供する、唇に塗布するための製品を提案することである。本発明の別の目的は、唇においてしなやかで、滑らかで、軽く、柔らかく、ベタベタせず、かつ粘着性でない感覚を残す非常に薄い製品堆積物を唇にもたらすことである。
【発明の概要】
【0012】
下記の本文において、パーセンテージは、反対のことが明示的に示されない限り、本発明のエマルジョンの総重量に対する重量基準で表現される。
【0013】
上に示された本発明の目的の少なくとも1つは、25℃および大気圧において、好ましくは1500ミリパスカル秒(mPa.s)と10,000mPa.sとの間にある動粘性率を有する油中水型エマルジョンによって達成され、そのエマルジョンは、水相、油、1つ以上の揮発性溶媒および着色剤を含む。
【0014】
このエマルジョンは、以下の特徴のいずれかまたはこれらの特徴の1つ以上の組み合わせを満たし得る:
・水相は、25重量%と45重量%との間を占め、水、少なくとも1つのグリコールおよび必要に応じて少なくとも1つのモイスチャライザーを含む
・油は、25重量%と50重量%との間を占め、ポリグリセリンエステルから選択される少なくとも1つの第1の油、脂肪アルコールモノエステルから選択される少なくとも1つの第2の油およびC10-C26脂肪アルコールから選択される少なくとも1つの第3の油を含む
・揮発性溶媒は、10重量%~20重量%、好ましくは12重量%~18重量%を占める。
【0015】
前記エマルジョンは、0.5重量%~10重量%、好ましくは、2重量%~4重量%の可溶性ポリマーまたは前記第3の油に溶解されたポリマーも含み得る。前記エマルジョンは、0.05重量%~5重量%、好ましくは、0.1重量%~2重量%の、上で述べた油の1つまたは油混合物をゲル化するためのゲル化化合物も含み得る。用語「ゲル化化合物」または「油ゲル化化合物」は、油または油混合物の25℃および大気圧における動粘性率を高める化合物を表すために使用され、その油または油混合物に、その「ゲル化化合物」または「油ゲル化化合物」が、係る油または油混合物の重量に対して0.4重量%~20重量%の含有量で加えられている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
態様の1つにおいて、本発明は、
25重量%~45重量%の、水および少なくとも1つのポリオールを含む水相;
25重量%~50重量%の油混合物;
10重量%~20重量%の少なくとも1つの揮発性溶媒;
0.5重量%~10重量%の、前記油の少なくとも1つまたは前記油混合物に溶解されたポリマー;
0.05%~5%の、前記油の少なくとも1つをゲル化するためまたは前記油混合物をゲル化するためのゲル化化合物;および
着色剤
を含む油中水型エマルジョンを提供し;
そのパーセンテージは、エマルジョンの重量に対して表現され;
そのエマルジョンは、その油混合物が、ポリグリセリンのエステルから選択される第1の油、脂肪酸モノエステルから選択される少なくとも1つの第2の油、および脂肪アルコールから選択される少なくとも1つの第3の油を、好ましくは大部分において、少なくとも含むことを特徴とする。
【0017】
この態様において、
水は、30重量%~40重量%の水を占め得、ポリオールは、3重量%~15重量%を占め得;
第1の油は、ポリグリセリンとC16-C20脂肪酸との、好ましくは非ヒドロキシル化の、少なくとも2つのエステルを含む混合物であり得、1重量%~15重量%を占め得;
第2の油は、少なくとも1つ、好ましくは2つの、飽和C16-C20アルキル鎖を含む非ヒドロキシル化モノエステルであり得、1重量%~15重量%を占め得;
第3の油は、C10-C26飽和モノアルコールであり得、10重量%~30重量%を占め得;
揮発性溶媒は、少なくとも80重量%のシリコーン溶媒を含み得;
ゲル化化合物は、第四級塩化アルキルアンモニウムで修飾されたヘクトライトであり得、0.1重量%~1重量%を占め得;
着色剤は、0.1重量%~5重量%を占め得;
パーセンテージは、エマルジョンの重量に対して重量基準で表現される。
【0018】
このエマルジョンは、非常に流動性かつ安定であるという利点を示し得る。25℃および大気圧におけるその動粘性率は、好ましくは、1500mPa.sと10,000mPa.sとの間である。
【0019】
当業者は、水相が前記油を含む別の相に分散されていることを検証するために、当業者の一般知識の一部を成す手法を使用できる。
【0020】
別の態様では、好ましくは1500mPa.sと10,000mPa.sとの間である25℃および大気圧における動粘性率を有する本発明の油中水型エマルジョンは、水相、油、1つ以上の揮発性溶媒および着色剤を含み得、以下のことを特徴とし得る:
・その水相は、25重量%と45重量%との間を占める
・その油は、25重量%と50重量%との間を占め、ポリグリセリンのエステルから選択される第1の油を少なくとも含む
・その揮発性溶媒は、10重量%~20重量%を占める
・前記エマルジョンは、1重量%~4重量%のエチルセルロース、および0.05重量%~5重量%の、前記油の1つまたは前記油混合物をゲル化するためのゲル化化合物も含む。
パーセンテージは、エマルジョンの重量に対して重量基準で表現される。
【0021】
本発明の別の態様では、油中水型エマルジョンは、
30重量%~40重量%の水;
1重量%~15重量%の、少なくとも1つ、好ましくは2つのC16-C20飽和アルキル鎖を含む非ヒドロキシルモノエステル;
10%~30%のC10-C26飽和モノアルコール;
0.1重量%~10重量%の、前記モノアルコールに溶解された少なくとも1つのポリマー;
10重量%~20重量%の、少なくとも80重量%のシリコーン溶媒を含む揮発性溶媒の混合物;
1重量%~15重量%の、ポリグリセリンとC16-C20脂肪酸との、好ましくは非ヒドロキシルの、少なくとも2つのエステルを含む混合物;
0.1重量%~1重量%の、第四級塩化アルキルアンモニウムで修飾されたヘクトライト;および
3重量%~15重量%のポリオールを含む。
パーセンテージは、エマルジョンの重量に対して重量基準で表現される。
【0022】
本願において、用語「...~...」は、その値の範囲の上界および下界を含めることを求めるが、用語「...と...との間」は、その値の範囲の限度を除外する。その限度を除外する値の範囲を開示することは、要するに、その限度を含む等価な値の範囲を開示することになり、その逆もまた同じである。
【0023】
本発明の意味において、「油」は、25℃および大気圧において、その水相および油が使用される量において、エマルジョンの水相に可溶性でない化合物である。「液体」化合物は、30℃以下、好ましくは25℃以下または20℃以下の融点、軟化温度またはガラス転移点を有する分子または分子混合物であり、その融点は、示差熱測定を行うことによって得られる曲線の最大値または示差熱測定を行うことによって得られる曲線の融解開始点に対応する。用語「固体」は、液体でない化合物のことを表す。
【0024】
用語「脂肪酸」は、必要に応じて1つ以上のヒドロキシル基で置換された、8~30個の炭素原子、好ましくは10~24個の炭素原子、より好ましくは12~22個、より良くは16~20個の炭素原子を含む、飽和または不飽和の直鎖状または分枝状のカルボン酸を意味するために使用される。本発明の特定の実施形態において、脂肪酸は、直鎖状の飽和であり、ヒドロキシル基によって置換されていない。
【0025】
特定の実施形態において、上記の態様の1つに従って記載されるエマルジョンは、少なくとも25重量%の油混合物、少なくとも25重量%の水、10重量%~20重量%の揮発性シリコーン溶媒、0.5重量%~10重量%、好ましくは2重量%~4重量%のエチルセルロース、0.05重量%~5重量%の、有機化合物で修飾されたヘクトライトを含み、前記油混合物は、イソテアル酸イソステアリル、少なくとも1つのポリグリセリンエステルおよびオクチルドデカノールを含む。
【0026】
上に記載された態様の1つにおいて、本発明のエマルジョンは、好ましくは、唇用のメーキャップ製品、すなわち、スキンケア製品(ローション、セラム、クリーム)、スキンメーキャップ製品(ファンデーション)または睫毛メーキャップ製品(マスカラ)などの他の用途には適切でない、特定の特性を有する製品である。
【0027】
最後に、本発明の最後の態様は、i)上に記載されたエマルジョンのうちの1つを唇に塗布する工程にある、唇をメーキャップするかまたは唇をケアする方法;ii)上に記載されたエマルジョンの1つを作製する方法;およびiii)上に記載されたエマルジョンの1つを含むボトルに関する。
【0028】
上に明記された態様の各々は、下記に記載される成分のいずれか1つを含み得るか、または使用し得る。
【0029】
水相は、好都合にも、エマルジョンの重量に対して25重量%~45重量%、例えば、30重量%~40重量%を占める。水相は、水、ポリオールおよび/またはナトリウム塩もしくはマグネシウム塩、特に塩化ナトリウムを含み得る。
【0030】
ポリオールは、水相に組み込まれ得、3~8個の炭素原子とともに少なくとも2つのヒドロキシル基を含み得る。例として、ポリオールは、プロピレングリコール、ペンチレングリコール、カプリリルグリコール、1,3プロパンジオール、ブチレングリコールおよびグリセリンから選択され得る。
【0031】
本発明のエマルジョンは、エマルジョンの重量に対して3重量%~15重量%のポリオール、特に5重量%~10重量%のポリオールを含み得る。
【0032】
本発明のエマルジョンは、ポリグリセリンエステルから選択される第1の油を少なくとも含み得る。そのポリグリセリンエステルは、好都合にも、ポリグリセリンの非オキシアルキレンエステル、例えば、ポリグリセリン-2の非オキシアルキレンエステルから選択される。
【0033】
ポリグリセリンエステルは、エモリエント機能と、脂相に分散された水相を安定化させる機能との両方を有し得る。
【0034】
ポリグリセリンエステルは、ポリグリセリンとポリリシノール酸とのエステル化から生じる、ポリリシノール酸ポリグリセリルと称されるエステルから選択され得る。例として、ポリリシノール酸ポリグリセリル-3、ポリリシノール酸ポリグリセリル-5、ポリリシノール酸ポリグリセリル-6およびポリリシノール酸ポリグリセリル-10(INCI名を使用)が挙げられ得る。本発明の特定の実施形態において、ポリリシノール酸ポリグリセリル-6が選択される。本発明のエマルジョンは、エマルジョンの重量に対して1重量%~3重量%、特に1.5重量%~2重量%のポリリシノール酸ポリグリセリル化合物を含み得る。
【0035】
脂肪酸は、好ましくはヒドロキシル基によって置換されておらず、8~30個の炭素原子を含み、かつできる限り少なくとも1つのメチル分枝を含む、飽和脂肪酸から選択される。それらの脂肪酸は、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リノール酸、カプリン酸、ベヘン酸またはそれらの混合物から選択され得る。
【0036】
別のポリグリセリンエステルは、ヒドロキシル基によって置換されておらず、必要に応じて少なくとも1つのメチル分枝を含み、できる限り16~20個の炭素原子を含む飽和脂肪酸、好ましくはイソステアリン酸とポリグリセリンとのエステル化から生じるエステルから選択され得る。エマルジョンに含まれるポリグリセリンエステルは、好ましくは、ポリグリセリン-2の非オキシアルキレンエステルから選択される。したがって、例として、ポリグリセリンエステルは、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリル-2またはジイオソステアリン酸ポリグリセリル-2である。
【0037】
本発明の特定の実施形態において、第1の油は、ポリグリセリンのエステルおよび16~20個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸のエステルから選択される第1のエステル、ならびにポリリシノール酸ポリグリセリルから選択される少なくとも1つの第2のエステルを少なくとも含む混合物である。ポリグリセリンとC16-C20脂肪酸とのエステルは、特に、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリン-2およびそれらの混合物から選択される。
【0038】
したがって、第1の油は、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリル-2およびポリリシノール酸ポリグリセリル-6の混合物であり得る。
【0039】
第1の油は、好ましくは、エマルジョンの重量に対して1重量%~15重量%、より正確には、エマルジョンの重量に対して5重量%~10重量%または6重量%~8重量%を占める。
【0040】
本発明のエマルジョンは、脂肪酸モノエステルから選択される少なくとも1つの第2の油を含み得、脂肪酸は、上で定義されたとおりのものである。例として、少なくとも1つの分枝状のC16-C20アルキル鎖を含む非ヒドロキシルモノエステルが選択され得る。そのようなモノエステルは、C16-C20脂肪族モノカルボン酸とC16-C20脂肪族モノアルコールのエステル、一酸または少なくとも1つのメチル分枝もしくはエチル分枝を含むモノアルコールの少なくとも1つから選択され得る。
【0041】
モノエステルは、好ましくは、C18分枝アルキル鎖を含む。
【0042】
イソステアリン酸のエステルが好ましい。例として、第2の油は、以下の化合物から選択され得る:イソステアリン酸ミリスチル;イソステアリン酸ブチル;イソステアリン酸イソステアリル;イソステアリン酸ステアリル;イソステアリン酸イソセチル;イソステアリン酸イソプロピル;硬化ひまし油イソステアリン酸;およびイソステアリン酸2-エチル-ヘキシル(INCI名を使用)。
【0043】
本発明の特定の実施形態において、第2の油は、イソステアリン酸イソステアリルである。
【0044】
本発明のエマルジョンに含まれる液体エステルのすべての重量は、好ましくは、前記エマルジョンの油のすべての重量の30%超、好ましくは、35%超、より好ましくは、40%超である。特定の実施形態において、本発明のエマルジョンに含まれるエステル油の90%超は、C16-C20脂肪酸エステル、好ましくは、イソステアリン酸エステルである。本発明のエマルジョンは、エマルジョンの重量に対して、10重量%と20重量%との間、好ましくは、14重量%と18重量%との間の、エステル基を有する油を含み得る。さらなるエステル油は、1,1,1-トリメチロールプロパンのエステルおよび脂肪酸のエステル、例えば、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパンであり得る。
【0045】
第3の油は、C10-C26脂肪族脂肪アルコール、好ましくは、C10-C26直鎖状または分枝状飽和脂肪族モノアルコール、より好ましくは、C10-C20モノアルコール、例えば、2-オクチルドデカノールから選択され得る。
【0046】
エマルジョンは、好ましくは、15%と30%との間、好ましくは、20%と25%との間の第3の油を含む。
【0047】
本発明のエマルジョンは、唇におけるエマルジョンの堆積物に薄膜生成特性を付与する、ある量のポリマーを組み込み得る。25℃において固体であり、油に溶解されるポリマーを使用することが好ましく、そのポリマーは、エマルジョンに導入されたとき、油に溶解される。
【0048】
ポリマーは、上に記載された油の少なくとも1つまたは上に記載された油の混合物に可溶性であるかまたはそれに溶解される。ポリマーは、前記油または前記油混合物の重量に対して5重量%と40重量%との間にある重量濃度で溶解されるとき、可溶性であると言われる。
【0049】
本発明のエマルジョンに導入される前に、ポリマーは、第3の油における濃度が10重量%と30重量%との間であるとき、第3の油に25℃において可溶性であるポリマーから選択され得る。ポリマーは、好ましくは、炭化水素である。用語「炭化水素」は、ケイ素を含まないポリマーを意味するために使用される。
【0050】
そのようなポリマーは、油に導入される前は25℃において固体であり得、エチルセルロース、植物樹脂およびビニルピロリドンの共重合体から選択され得る。
【0051】
植物樹脂は、本発明の意味において、いくつかの異なる化合物:
ある特定の植物によって分泌され、次いでその後の化学変換なしに回収される、樹脂性滲出物と称される物質、例えば、特に木の幹を軽くたたくことによって得られる樹脂性滲出物;
樹脂性滲出物から抽出された分子またはそのような分子の混合物;および
樹脂性滲出物またはそれが含む分子と化学的に反応する製品
を包含する。
【0052】
植物樹脂が化学変換なしに植物から収集されるとき、その植物樹脂は、それが含み得るすべての水を除去することによって乾燥された後、液体の形態または固体の形態であり得る。植物樹脂は一般に、非常に粘稠性であり、また空気と接触するように置かれたとき、いくらか速く乾燥する液体である。
【0053】
例として、樹脂性滲出物の誘導体は、グリセリンとロジンとのエステル(ロジン酸グリセリルまたはグリセリンおよびロジンに由来する長鎖脂肪酸の混合物のモノエステル、またはモノロジン酸グリセリル、CAS65997-13-9、CAS8050-31-5としても知られる)である。ロジン(C15H20O6;CAS85026-55-7)は、松の木などの樹脂を含む木から収集された滲出液を蒸留し、乾燥させた後に得られるコロファンから抽出される、グルコピラノシドモチーフを有する芳香族酸である。
【0054】
Shorea属かつRobusta種の木から収集される樹脂性滲出物であるダンマル樹脂とも称されるサラソウジュの木に由来する樹脂(INCI名:サラソウジュ樹脂)を使用することも可能である。
【0055】
本発明の特定の実施形態において、ポリマーは、エチルセルロースである。
【0056】
ヒドロキシル基がエチルセルロース無水グルコースモチーフによって置換される程度は、好ましくは、2.0~3.0である(これは、使用されるグレードに応じて、置換されたポリマーの重量に対して45.0%と52.5%との間であるエチオキシル基の重量パーセントに対応し得る)。
【0057】
エチルセルロースの平均分子量は好ましくは、80部のトルエンと20部のエタノールとの混合物において5重量%の溶液の25℃における粘度が、1mPa.s~400mPa.s、好ましくは、3mPa.s~250mPa.s、例えば、5mPa.s~20mPa.sになるように選択される。
【0058】
本発明の特定の実施形態において、エチルセルロースは、本発明のエマルジョンの油または油混合物に溶解され、これは、商品名Ethocel(登録商標)Standard 7 Premium、Ethocel(登録商標)100もしくはEthocel(登録商標)200(Dow Chemical Co.)または商品名Aqualon(登録商標)NC(Ashland)として販売されているグレードに対応し得る。
【0059】
ビニルピロリドンの共重合体としては、VP/エイコセンおよびVP/ヘキサデセンが挙げられ得る。
【0060】
例として、共重合体の量は、エマルジョンの重量に対して0.1重量%~10重量%、好ましくは、1%~5%またはさらには2%~4%である。本発明者らは、10%超の含有量において、エマルジョンが、1~数百ミクロンの厚さに塗り広げられたとき、より粘稠かつ粘着性になることを観察した。0.1%未満の含有量では、エマルジョンの光沢特性および保湿特性は、唇に塗り広げられたとき、十分ではない。
【0061】
特定の実施形態において、ポリマーの混合物、例えば、エチルセルロースの混合物、および有機化合物によって修飾されたヘクトライト(例えば、テトラ-アルキルアンモニウム塩、例えば、下記に記載されるようなヘクトライト)の混合物が使用される。
【0062】
本発明のエマルジョンの油の1つをゲル化するためまたは前記エマルジョンに含まれる油混合物をゲル化するための1つ以上のゲル化化合物を本発明のエマルジョンに組み込むことが可能である。0.05重量%~5重量%、好ましくは、0.1重量%~2重量%、例えば、0.5重量%~1重量%のゲル化化合物を使用することが好ましい。
【0063】
本発明の範囲において使用するのに適したゲル化化合物の例として、修飾天然雲母(例えば、アルミニウム、マグネシウムおよびカリウムのフルオロケイ酸塩);デキストリンおよび脂肪酸のエステル(例えば、パルミチン酸デキストリンまたはミリスチン酸デキストリン);C8-C30脂肪酸のトリエステルおよびモノ-またはポリ-グリセリルのトリエステル(例えば、トリ(ヒドロキシステアリン酸)グリセリル(INC名:トリヒドロキシステアリン));特に第四級のアミン、第三級アミンから選択される化合物によって処理された粘土である有機修飾粘土;およびシリコーン化合物で処理された焼成(ヒュームド)シリカ表面が挙げられ得る。
【0064】
本発明のエマルジョンは、第四級塩化アルキルアンモニウム、好ましくは、14~20個の炭素原子を有する少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのアルキルによって置換されたアンモニウムで修飾された、0.1重量%~1重量%のヘクトライトを含み得る。そのアルキルは、ステアリルであり得る。アンモニウムが2つのメチルおよび2つのステアリルを有するINC名ジステアルジモニウムヘクトライトを有する化合物が挙げられる。
【0065】
本発明のエマルジョンは、好都合にも、上に記載されたような、エチルセルロースの混合物および第四級塩化アルキルアンモニウムで修飾されたヘクトライトの混合物を含む。
【0066】
エマルジョンにおいて必要に応じて使用される揮発性溶媒は、好ましくは、65重量%超、好ましくは、75%超またはさらには90重量%超のシリコーン化合物によって構成される。
【0067】
揮発性溶媒は、特にシリコーン油、例えば、0.5センチストークス(cSt)~6cStの粘度を有するジメチコーン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルヘキシルトリシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリソロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリソロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサンおよびそれらの混合物から選択され得る。本発明の特定の実施形態において、揮発性溶媒は、デカメチルシクロペンタシロキサンである。
【0068】
揮発性溶媒は、C1-C6モノアルコール(例えば、エタノール)または炭化水素(例えば、イソドデカン、イソデカン、イソヘキサデカン、n-ドデカン(C12)およびn-テトラデカン(C14)ならびにウンデカンとトリデカンとの混合物)でもあり得る。
【0069】
本発明のエマルジョン中に存在する揮発性溶媒は、エマルジョンの重量に対して5重量%~20重量%、例えば、10重量%~20重量%、好ましくは、12重量%~18重量%を占め得る。
【0070】
本発明のエマルジョンは、好ましくは、5重量%未満の揮発性アルコールおよび/または揮発性炭化水素(例えば、エタノールまたはイソドデカン)(これらは唇の上で乾燥することが見出され得、本発明の範囲において求められる快適さおよび保湿を低下させ得る)を含む。
【0071】
本発明者らは、イソドデカンおよびエタノールなどの揮発性溶媒が、ある特定の割合で使用されるとエマルジョンによって提供される唇の保湿を低下させ得ることを観察した。
【0072】
特定の実施形態において、エマルジョンに含まれる揮発性溶媒は、シクロメチコン、好ましくは、デカメチルシクロペンタシロキサンによって構成される。
【0073】
本発明のエマルジョンは、保湿特性を示す1つ以上の分子および/または1つ以上の植物抽出物(例えば、グリコール、特にグリセリンまたは天然ポリオール)または当業者に公知の他の任意の保湿剤を含み得る。
【0074】
本発明のエマルジョンは、顔料(油および水相に不溶性)および色素(油または水相に可溶性)から選択される着色剤を含む。
【0075】
無機顔料としては、二酸化チタン、好ましくは表面処理された二酸化チタン;黒色、黄色、赤色および茶色の酸化鉄;マンガンバイオレット;ウルトラマリンブルー;酸化クロム;水和酸化クロム;ならびにフェリックブルーが例として挙げられ得る。
【0076】
有機顔料としては、以下の顔料:D&C Red No.19;D&C Red No.9;D&C Red No.21;D&C Orange No.4;D&C Orange No.5;D&C Red No.27;D&C Red No.13;D&C Red No.7;D&C Red No.6;D&C Yellow No.5;D&C Red No.36;D&C Orange No.10;D&C Yellow No.6;D&C Red No.30;D&C Red No.3;カーボンブラック、およびコチニールカルミンに基づくレーキが例として挙げられ得る。
【0077】
真珠光沢顔料は、特に、白色真珠光沢顔料(例えば、酸化チタン被覆雲母、オキシ塩化ビスマス);および有色真珠光沢顔料(例えば、酸化鉄を含むチタン雲母、フェリックブルーまたは酸化クロムを含むチタン雲母、上で明記されたタイプの有機顔料を含むチタン雲母、およびオキシ塩化ビスマスに基づく顔料)から選択され得る。
【0078】
色素として、カラメル、Yellow 5、Acid Blue 9/Blue 1、Green 5、Green 3/Fast Green FCF 3、Orange 4、Red 4/Food Red 1、Yellow 6、Acid Red 33/Food Red 12、Red 40、コチニールカルミン(Cl 15850,Cl 75470)、Ext.Violet 2、Red 6-7、フェロシアン化鉄、ウルトラマリン、Acid Yellow 3/Yellow 10、Acid Blue 3、Yellow 10が挙げられ得る。例として、脂溶性色素は、スーダンレッド、D&C Red 17、D&C Green 6、ベータカロチン、ダイズ油、スーダンブラウン、D&C Yellow 11、D&C Violet 2、D&C Orange 5、キノレンイエロー、アナトーである。
【0079】
例として、本発明のエマルジョンは、特定の実施形態において、エマルジョンの総重量に対して、0.01重量%~10重量%、例えば、0.1重量%~1重量%および0.2重量%~0.8重量%の着色剤を含む。
【0080】
上に記載された成分以外に、本発明のエマルジョンは、少なくとも1つの美容的または皮膚科学的に許容され得る賦形剤を含み、それらの賦形剤は、香料、リン脂質、電解質、唇に塗布されたときエマルジョン中のある特定の化合物の苦味をマスキングするための甘味料、pH調整剤および保存剤から選択され得る。特定のリン脂質は、23重量%のホスファチジルコリンならびに97重量%のリン脂質および糖脂質を含む、ダイズから抽出された非水素化レシチンである。
【0081】
本発明のエマルジョンの保湿特性は、コルネオメトリーによって測定され得る。コルネオメトリーは、長時間にわたる皮膚のキャパシタンスの変動を測定する。櫛の形状の2本の金属電極(金でできている)で構成されているプローブを使用することによって、そのプローブの端の電極の間に薄い絶縁層を置く。皮膚表面に電場を作る。電極と皮膚との系のキャパシタンスは、プローブと接触している皮膚の誘電率に依存し、皮膚が潤っているほど誘電率が高い。時間Tにおけるエマルジョンの保湿効果は、未処置の皮膚ゾーンにおいて時間Tに測定されたキャパシタンスと、本発明のエマルジョンを塗布された皮膚のゾーンにおいて時間Tに測定されたキャパシタンスとの間の上昇率の形態で表現され得る。
【0082】
コルネオメトリーによって、特に上に記載されたプロトコルを用いて測定された本発明の実施形態の保湿力は、それを塗布した6時間後に、60%超、好ましくは、65%超であり得る。
【0083】
25℃および大気圧におけるエマルジョンの粘度は、好ましくは、1500mPa.sと10,000mPa.sとの間であり、好ましくは、8000mPa.s、6000mPa.sまたは5000mPa.s未満、より好ましくは、2500mPa.sと4000mPa.sとの間である。
【0084】
この粘度は、例えば、以下の条件下において、適切な運動体および測定時間とともに、Rheoplusソフトウェアを用いるRheolab QC(Anton Paar)粘度計によって測定され得る。
【0085】
【0086】
測定を行う前に、本発明のエマルジョンを25℃の乾燥器内の120ミリリットル(mL)のポット(Ref.:102171001,Kola Rond VT3 M120 Blanc Pharm)において最低12時間静置する。運動体がポットに投入されたら、組成物のレベルは、ポットのくびれ部分に到達しなくてはならない。
【0087】
6秒ごとに測定された測定値のパーセンテージ偏差を測定することによって、運動体が適切に選択されていることを検証する。この問題に関して、エマルジョンの粘度に対する値は、上に明記された測定時間中にその装置を用いて測定された最後の15個の測定値の平均値に等しい。
【0088】
本発明のエマルジョンの湿った薄膜は、好都合にも、そのエマルジョンが、自動スプレッダーおよび100μmの厚さを有するバーを使用してガラスプレート上に堆積されたとき、65マイクロメートル(μm)以下、好ましくは60μm以下の、25℃において測定された厚さを示す。
【0089】
エマルジョンの堆積物の厚さは、自動スプレッダーおよび100μmの厚さを有するバーを用いてその生成物をガラスプレート上に堆積させることによって評価され得る。塗り広げられた堆積物は必要に応じて、25℃および50%相対湿度における、湿度が制御された保温密閉容器内で、30分間~2時間にわたって静置され得る。
【0090】
塗り広げられた直後または保温密閉容器を放置したときに、当業者に公知の任意の方法を用いて、厚さが測定され得る。
【0091】
本発明のエマルジョンは、その相が長時間にわたって分離しない、つまり、目視検査によって識別できる異なる2つの相を形成するように水相と油が分離しないという点で好都合にも安定である。したがって、エマルジョンを1ヶ月間または2ヶ月間にわたって50℃、45℃または4℃の乾燥器内で貯蔵した後に、安定性を検証できる。
【0092】
本発明のいずれかの態様に係るエマルジョンは、以下の特徴のいずれかまたは複数のこれらの特徴の組み合わせを満たし得る。
・本エマルジョンは、エマルジョンの安定性を損なわずに、0.2重量%未満、好ましくは、0.15重量%未満の水性ゲル化剤(すなわち、それが水に可溶性または分散性であるとき、25℃および大気圧における水の粘度を5%超高める化合物)しか含まない場合があり、より好ましくは、いかなる水性ゲル化剤も有しない場合がある。そのような状況下では、得られる生成物は、塗布されると、より粘着性でなく、より流動性であり、より滑らかである。挙げられ得る水性ゲル化剤には、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルビニルポリマー(INCI名カルボマー)、多糖(例えば、キサンタンガム、グアーゴム、カラギナン、ヒドロキシメチルセルロース)およびそれらの混合物が含まれる。本発明のエマルジョンは、好都合にも、上述のゲル化剤のいずれをも有しない。
・本エマルジョンは、1重量%未満、好ましくは、0.5%未満の、固体であるかまたは固相を含む脂肪化合物(例えば、ろうまたはペースト状化合物)しか含まない場合があり、またはさらには脂肪化合物を有しない場合がある。挙げられ得る固体脂肪化合物には、特に、ステアリン酸、ポリエチレンワックス、合成ワックス、パラフィンろうまたはミクロクリスタリンワックス、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールおよびステアリン酸グリセリルが含まれる。詳細には、これらの化合物は、唇に堆積する組成物の薄膜の厚さを高め得、かつ/またはその薄膜がもたらし得る粘着性の感覚を高め得る。
・本エマルジョンは、6重量%未満、好ましくは、1重量%未満の以下の化合物しか含まない場合があり、好ましくは、以下の化合物のいずれをも有しない場合がある:部分的または全体的に架橋された有機ポリシロキサンエラストマー、ポリスチレンおよびコポリ(エチレンプロピレン)の共重合体ならびにポリスチレンおよびコポリ(エチレンブチレン)の共重合体;必要に応じて水添ポリイソブテン。詳細には、これらの化合物は、ベタベタする感覚および/または粘着性の感覚を唇に残すことがあり、本発明はこれを特に回避しようとしている。
・本エマルジョンは、5重量%未満、好ましくは、1重量%未満の不揮発性の固体または液体シリコーン化合物しか含まない場合があるか、または実際にはそのような化合物のいずれも含まない場合がある;挙げられ得るシリコーン化合物には、シリコーン樹脂、シリコーンエラストマー、シリコーン界面活性剤、シリコーンゴムまたはフェニルシリコーン油がある。本発明者らは、シリコーン化合物(例えば、フェニルプロピルジメチルシロキシケイ酸樹脂またはセチルジメチコーンコポリオール)が本発明のエマルジョン中に存在することが、ユーザーが、よりベタベタし、より粘稠であり(ゆえにより知覚でき)、かつより快適でないと長時間にわたって知覚する、唇に堆積する薄膜をもたらすことを特に見出した。本発明のエマルジョンは、好都合にも、1重量%未満、好ましくは、0重量%の不揮発性フェニルシリコーン化合物しか含まない。シリコーン樹脂化合物、多糖またはフェニルジメチコーンが非常に低い含有量であるかまたはさらには存在しないにもかかわらず、本発明の製品のケア特性およびメーキャップ特性は、満足のいく様式で保持され、特に保湿および光沢が保持される。
・有機日焼け止めは、本エマルジョンの感覚的品質を低下させるので、本エマルジョンは、0.5重量%未満の有機日焼け止めしか含まない場合がある。
・本エマルジョンは、8重量%未満、好ましくは5重量%未満の、植物に由来するトリグリセリド(例えば、ひまし油)およびテトライソステアリン酸ペンタエリスリチルから選択されるエステル油しか含まない場合があり、好ましくは、それらを有しない場合がある。
・本エマルジョンは、2重量%未満のソルビタンエステルまたはスクロースエステル(例えば、ヤシ脂肪酸スクロースまたはステアリン酸ソルビタン)しか含まない場合があり、好ましくは、それらを有しない場合がある。
【0093】
本発明は、上に記載されたエマルジョンの1つを唇に適用する工程にある、唇をメーキャップする方法も提供する。それらのエマルジョンに関する上に記載された特徴のすべてが、本発明のメーキャップ方法に当てはまる。
【0094】
本発明は、塗布手段が備わっていて上に記載されたエマルジョンを含むボトルも提供する。本発明のエマルジョンは、好都合にも、塗布手段およびキャップ(または栓)を有するボトル(またはスクイズポーチ)に詰められる。塗布手段は、ブラシまたは多孔性発泡体であり得、好都合にもキャップに固定され得る。ブラシは、好ましくは平らであり、その先端は、直線状または曲線状であり得る。ボトルは、円筒、チューブまたは長方形の箱の形状であり得る。塗布手段は、様々な形状、例えば、円筒形、長方形または平坦な形を有し得、必要に応じて、エマルジョンを唇に塗布する精度を改善するように面取りされ得る。
【0095】
最後に、本発明は、上に記載されたようなエマルジョンを調製する方法を提供する。この方法の特定の実行は、少なくとも3工程を含む。第1の工程では、第2および第3の油を混合し、次いで、60℃以上の温度のその混合物にポリマーを溶解する。第2の工程では、第1の工程の終わりに得られた混合物の温度を30℃と60℃との間にある値に低下させ、次いで、残りすべての油、油ゲル化剤および揮発性溶媒を加え、次いで、その混合物の温度を外界温度にまで低下させる。最後に、第3の工程では、水相の全成分を混合し、次いで、第2の工程において得られた混合物にその水相を注ぎ込む。第4の工程では、得られたエマルジョンに顔料を加えてもよい。全成分の混合は、好都合にも大気圧において撹拌しながら行われる。
【0096】
以下の実施例によって本発明を詳細に例証する。
【実施例】
【0097】
以下の組成を有する2つのエマルジョンを調製した。
【0098】
【0099】
成分を上記の表に登場する順に混合することによって、本発明の実施例1のエマルジョンを作製した。
【0100】
第1の工程では、第2および第3の油を混合し、次いで、90℃の温度のその混合物にエチルセルロースを溶解した。第2の工程では、第1の工程の終わりに得られた混合物の温度を50℃に低下させ、次いで、残りすべての油、油ゲル化剤および揮発性溶媒を加え、次いで、その混合物の温度を25℃に低下させた。最後に、第3の工程では、水相の全成分を混合し、次いで、第2の工程において得られた混合物にその水相を注ぎ込んだ。第4の工程において、得られたエマルジョンに顔料を加えた。全成分の混合は、大気圧において撹拌しながら行った。
【0101】
- 安定性研究
エマルジョンを1ヶ月間にわたって50℃の乾燥器内に置いた。
【0102】
結果:本発明の実施例1の生成物は安定であったが、比較実施例2の生成物は、安定ではなかった。
【0103】
- 粘度測定
本発明の実施例1におけるエマルジョンの粘度および市場で入手可能な従来技術の製品に対応するリップグロスの粘度を、Rheoplusソフトウェアを備えるRheolab QC(Anton Paar)粘度計を用いて測定した。
【0104】
本発明の実施例1の粘度を、50回転/分(rpm)で回転するフィン運動体を用いて3分間にわたって測定した一方で、市販品(Mintel Report No.2401385)の粘度は、10rpmで回転するアンカー可動モデルを用いて7分間にわたって測定した。
【0105】
測定の前に、各組成物を120mLのポット(Ref.:102171001,Kola Rond VT3 M120 Blanc Pharm)に注ぎ込み、次いで、最低12時間にわたって25℃の乾燥器内に置いた。運動体をポットに沈めたら、組成物のレベルは、そのポットのくびれ部分に到達した。
【0106】
エマルジョンの粘度の値は、上に明記された測定時間中にその装置を用いて測定された最後の15個の測定値の平均値に等しい。
【0107】
結果:本発明の実施例1の粘度は、2500mPa.sと4000mPa.sとの間であり、油中水型エマルジョンの形態の従来技術の市販品(Mintel Report No.2401385)の粘度は、10,000mPa.sと22,000mPa.sとの間であった。本発明のエマルジョンは、従来技術のエマルジョンよりもかなり流動性であった。
【0108】
- 保湿力
本発明の実施例1の保湿力を、10人のコーカサス人ボランティアに対して前腕に塗布してCM825(Courage and Khazaka)コルネオメーターを用いて測定した(T=0)。
【0109】
各ボランティアの前腕の内側面に分布する25平方センチメートル(cm2)を占める2つの皮膚ゾーンをランダムに選択した。エマルジョンをその2つの特定のゾーンのうちの1つに、使用中として2ミリグラム/平方センチメートル(mg/cm2)で塗布し、未処置の第2のゾーンはコントロールとした。
【0110】
時間T=X時間におけるエマルジョンの保湿効果は、前腕の未処置の皮膚ゾーンにおいて時間T=X時間に測定されたキャパシタンスと、本発明の実施例1のエマルジョンを塗布された前腕の皮膚ゾーンにおいて時間T=X時間および残留薄膜を除去した後に測定されたキャパシタンスとの間の上昇率に等しい。
【0111】
油中水型エマルジョンの形態の市販品(Mintel Report No.2401385)の保湿力を測定するために同じプロトコルを使用した。
【0112】
結果:T=6時間における本発明の実施例1の保湿力は、+68%であった。T=8時間における従来技術製品の保湿力は、+57%であった。両方の場合において、観察された変動は有意であった(p<0.01)。
【0113】
本発明のエマルジョンは、従来技術のエマルジョンの保湿力よりも明らかに良好な保湿力を示す。
【0114】
- インビボにおける自己評価
本発明の実施例1の生成物および従来技術の市販品(Mintel Report No.2401385)を、2つの異なるパネルで同じプロトコルに従って非依存的様式で評価した。
【0115】
本発明の実施例1を評価するためのパネル:21~64歳(平均年齢47歳)のコーカサス人タイプの32人のボランティア女性。1週間にわたって1日あたり1回、唇に塗布し、日中、塗り直した。
【0116】
従来技術の市販品(Mintel Report No.2401385)を評価するためのパネル:26~70歳のコーカサス人タイプの32人のボランティア女性。1日あたり2回、連続した4週間にわたって唇に塗布した。
【0117】
パネルの各女性自身が、試験期間の終わりに質問票に回答することによって製品の効果および特性を評価した。ボランティアは、「そう思う」、「ややそう思う」、「ややそう思わない」「強くそう思わない」をマークすることによって質問票に回答した。各項目について、満足パーセンテージ(「そう思う」および「ややそう思う」の回答の数)を算出した。
【0118】
結果:得られた結果を下記に表に示す。
【0119】
【0120】
すべての結果が統計学的に有意だった。
【0121】
本発明の実施例1のエマルジョンを用いて得られたメーキャップの結果は、ボランティアのパネルによって、より薄く、より快適であり、非常に付け心地が良く、より粘着性でないと感じられた。
【0122】
- 粘着性の測定
本発明の実施例1のエマルジョンを、自動スプレッダーおよび100μmの間隙を有するバーを用いてガラスプレート上に堆積させた。塗り広げたエマルジョンを、25℃および50%湿度において、湿度が制御された保温密閉容器内で1時間堆積させた。
【0123】
5キログラム(kg)の力センサーが取り付けられたTAXT Plus(Stable Micro Systems)テクスチャー分析装置を使用して、直径5mmのステンレス鋼シリンダーを用いて所定の長さの時間にわたって定圧をかけ、次いで、そのツールを一定速度で取り除いた。その取り除く段階において、エマルジョンは、そのツールに対して吸引力を発揮し、その吸引力はエマルジョンの粘着性と相関する。
【0124】
塗り広げたものに対してそれぞれ測定を5回行った。2回の測定の間に、エタノールを用いて常にシリンダーを清浄にした。サンプルの同じ位置において測定を行うことはなかった。エマルジョンの粘着性は、ツールを取り除く段階において測定される離脱力の仕事と等価である。それは、時間軸に沿った曲線の積分に対応する。この仕事は、ジュール/平方メートル(J/m2)として正に表現される。
【0125】
測定パラメータ:
1)接近速度:0.1ミリメートル/秒(mm/s);
2)接触検知からの速度:0.1mm/s;
3)力/圧力:0.197ニュートン(N)/0.01メガパスカル(MPa);
4)接触時間:3秒;
5)除去速度:0.1mm/s
【0126】
上に記載されたプロトコルを、従来技術の市販品(Mintel Report No.1716698)を用いて再現した。
【0127】
結果:本発明の実施例1のエマルジョンの粘着性は、1.43±0.06J/m2に等しかった。従来技術製品の粘着性の値は、1.79±0.31J/m2に等しかった。
【0128】
- 組成物の薄膜の厚さの測定
本発明の実施例1のエマルジョンを塗り広げたものまたは従来技術の市販品(Mintel Report No.2401385)を塗り広げたものを、100μmの厚さのバーを有する自動スプレッダーを使用してガラスプレート上に堆積させた。
【0129】
その後、25℃および50%相対湿度の密閉容器内に1時間放置した後、それらの湿った堆積物の厚さを測定した。
【0130】
結果:実施例1のエマルジョンの薄膜の厚さは、54.3μm(標準偏差=4.2)であり、市販品の厚さは、69.2μm(標準偏差=1.5)であった。
【0131】
本発明のエマルジョンおよび従来技術の別のエマルジョンを同じプロトコルを用いて塗り広げたとき、本発明のエマルジョンを塗り広げたものは、従来技術の別のエマルジョンを塗り広げたものよりもかなり薄かった。