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特許7075943電気モータの冷却装置並びに冷却装置を備えた電気モータ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】電気モータの冷却装置並びに冷却装置を備えた電気モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/18 20060101AFI20220519BHJP
【FI】
H02K5/18
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019553624
(86)(22)【出願日】2017-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2017001415
(87)【国際公開番号】W WO2018114037
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-02
(31)【優先権主張番号】102016015535.3
(32)【優先日】2016-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510334790
【氏名又は名称】ジール・アベッグ エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(72)【発明者】
【氏名】レルヒャー フリーダー
(72)【発明者】
【氏名】エルネマン ローター
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-130662(JP,A)
【文献】特表2006-504386(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198642(WO,A1)
【文献】特開2004-147486(JP,A)
【文献】特開平09-201009(JP,A)
【文献】特開2015-185331(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006013089(DE,A1)
【文献】中国実用新案第205565971(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ冷却フランジ(4)及びステータ冷却フランジ(2)を備える電気モータの冷却装置であって、それらの冷却フランジ(2、4)のうちの一方は他方に対して回転可能であって、また、両方の冷却フランジ(2、4)のうちの少なくとも一方がその周囲に分配して配設されている複数の冷却フィンを備えている冷却装置であって、
両方の前記冷却フランジ(2、4)のうちの少なくとも一方が、電気モータの駆動時に外気へと熱を排出し、また、熱を排出する前記冷却フランジ(2、4)の複数の前記冷却フィン(8、10)のうちの少なくともいくつか、好ましくは少なくとも50%がそれらの長さに渡って波形状の延伸部を有しており、その際、波形状の延伸部を有する1つの冷却フィンの表面積は割り当てられた直線的な参照フィンの表面積よりも大きい冷却装置において、
両方の前記冷却フランジ(2、4)のうちの少なくとも一方の、波形状の前記冷却フィン(8、10)のうちの少なくとも1つのペアに関して、位相位置(ΔΦ)が異なっていること、
前記電動モータの回転軸に垂直な平面への投影で見て、前記冷却フィン(8、10)の進行におけるそれぞれの直線基準線Rからのずれを、前記直線基準線R上の対応する位置の関数として、うねり関数とし、前記うねり関数の局所的な極値の大きさを振幅として、
一方の前記冷却フランジ(2、4)の全ての冷却フィン中心線(8a、10a)の平均されたうねり関数の振幅が、全ての冷却フィン中心線(8a、10a)に関する平均された振幅の値の20%を超えないこと、及び、
一方の前記冷却フランジ(2、4)のそれぞれ直接隣り合う前記冷却フィン(8、10)の位相変化(ΔΔΦ)の平均量が、ラジアンで無次元に表して、π/3の値を超えないこと、
を特徴とする冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却装置において、
波形状の前記冷却フィン(8、9)の波長(∧)の、割り当てられた前記冷却フランジ(2、4)の半径方向での延伸(B)に対する比率(∧/B)が、0.7から1.7の間の値を取ることを特徴とする冷却装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の冷却装置において、
それぞれ2つの隣り合う前記冷却フィン(8、10)の平均間隔(sm)の、それらの冷却フィン(8、10)の平均厚さ(dm)に対する比率(sm/dm)が、2から6の間の範囲の値を取ることを特徴とする冷却装置。
【請求項4】
請求項1からの何れか一項に記載の冷却装置において、
一方の前記冷却フランジ(2、4)のそれぞれ直接隣り合う前記冷却フィン(8、10)の全ての可能なペアの位相位置(ΔΦ)間の符号付き位相変化(ΔΔΦ)の平均値が、ラジアンで無次元に表して、π/6の値を超えないことを特徴とする冷却装置。
【請求項5】
請求項1からの何れか一項に記載の冷却装置において、
一方の前記冷却フランジ(2、4)の波形状の前記冷却フィン(8、10)の平均振幅(Am)が、約0.1∧mから約0.3∧mの間の範囲にあり、その際、∧mはその冷却フランジ(2、4)の全ての冷却フィン(8、10)の平均波長であることを特徴とする冷却装置。
【請求項6】
請求項1からの何れか一項に記載の冷却装置において、
前記冷却フィン(8、10)の平均振幅(Amr)が周囲に渡って変化していることを特徴とする冷却装置。
【請求項7】
請求項1からの何れか一項に記載の冷却装置において、
熱排出機能を有する1つの冷却フランジ(2、4)の全ての冷却フィン(8、10)の平均厚さ(dm)が、約1.5mmから約3mmの間にあることを特徴とする冷却装置。
【請求項8】
請求項1からの何れか一項に記載の冷却装置において、
熱排出機能を有していない一方の前記冷却フランジ(2、4)の全ての前記冷却フィン(8、10)の平均厚さ(dm)が、約0.5mmから約1.5mmの間にあることを特徴とする冷却装置。
【請求項9】
請求項1からの何れか一項に記載の冷却装置において、
前記冷却フィン(8、10)の両方の端部が半径方向で内側の包絡円(13)及び外側の包絡円(14)の間の範囲に存在していることを特徴とする冷却装置。
【請求項10】
請求項に記載の冷却装置において、
前記外側の包絡円(14)の半径(Ra)及び前記内側の包絡円(13)の半径(Ri)の比が、約1.1から約1.6の間にあることを特徴とする冷却装置。
【請求項11】
請求項1から10の何れか一項に記載の冷却装置において、
前記冷却フィン(8、10)がそれらの高さ(H)に渡って一定の厚さ(d)を有していることを特徴とする冷却装置。
【請求項12】
請求項1から11の何れか一項に記載の冷却装置において、
前記冷却フィン(8、10)の厚さ(d)がその頭部側(30)の方向で減少することを特徴とする冷却装置。
【請求項13】
請求項1から12の何れか一項に記載の冷却装置を備える電気モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1,2の前提部分に従う電気モータの冷却装置及び並びに請求項14に従う電気モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気モータはステータ(固定子)及びロータ(回転子)を有している。外部ロータモータにおいては、ロータがステータを取り囲んでいる。ステータ内及び/又はロータ内には、電気モータの駆動時に熱を発生する構成部材が存在している。その熱を排出(放出)するために、ステータ及びロータは、ステータ冷却フランジ或いはロータ冷却フランジの形態の冷却フランジを有しており、そこにはそれぞれ複数の冷却フィンを配設することが出来る。ステータ冷却フランジ及びロータ冷却フランジはまとめて、冷却装置と称される。冷却フランジは互いに僅かに間隔をおいて向かい合っている。電気モータの駆動時にロータが、また従ってロータ冷却フランジがその軸(シャフト)の周りで回転する場合、冷却気流が発生し、当該冷却気流は両方の冷却フランジの間並びにそこに存在する冷却フィンの間を流れ、冷却装置に蓄えられた熱を排出する。冷却フィンは周囲に分布して配設されており、また、直線的に形成されている。通常、冷却フィンは半径方向に延伸しているが、半径方向に対して傾いて配設されていてもよい。
【0003】
冷却装置においては、冷却フィンを備える冷却フランジは特には2つの機能を有することが出来る。一方には、冷却フランジを直接熱の排出に用いることが出来る(熱排出冷却フランジ)、その熱は別の場所で対応する熱排出冷却フランジへと導かれるものである。他方には、冷却フランジは空気力学的な機能を有することが出来る。空気力学的な機能を有する冷却フランジは、モータの駆動時に、冷却システム内での気流の挙動に対して有利には向かい合う冷却フランジとの相互作用で以下のように影響を及ぼすために利用される、すなわち、冷却システムの排熱に対して本質的に有利に影響を及ぼすために利用される。冷却フランジは熱排出機能と同様に、空気力学的な機能を同時に有していることが出来る。
【0004】
冷却システムは予め設定された構成空間において限定された量の熱しか排出することは出来ない。更に冷却フィンは、モータ駆動時には、所謂回転音といった、増大された騒音の発生を導き、これは往々にして不快なものとして感じられる。特には、ステータ冷却フランジでも、また同様にロータ冷却フランジでも、それぞれ互いに向かい合う冷却フィンがそれらの進行部分で直線的であり、また、互いに角度をなしていないか又は互いにごく僅かな角度しか有していない場合、例えば全ての冷却フィンがもっぱら直線的な進行を有している場合、ロータの回転運動時には、ステータ冷却フランジ及びロータ冷却フランジの互いに向かい合う冷却フィンは半径方向の延伸部の大部分の上方で互いに同時にかすめて通り過ぎる。これは増大された回転音の発生を導く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、請求項1の前提部分に従う電気モータの冷却装置及び並びに請求項13に従う電気モータに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、従来の冷却装置においては本発明に従って請求項1の特徴部分の特徴によって解決され、また電気モータにおいては請求項13の特徴によって解決される。
【0007】
本発明に従う冷却装置においては、冷却フィンの少なくともいくつかは最早直線的に延伸してはおらず、直線から波形状に逸脱して構成されている。これは、熱を排出する冷却フランジにおいては冷却フィンの利用可能な状態にある表面積が拡大され、それにより熱排出(熱放出)を格段に向上させることが可能であることを導く。波形状の冷却フィンのうちの1つと比較可能な進行を有する、特には同一の半径方向及び軸方向の延伸並びに同一の厚さを有する、直線的な基準線に比べて、波形状の冷却フィンはより大きな熱を排出する表面を有している。冷却フィンの非直線的な進行は、追加的な構造空間を必要とせず、その結果、冷却装置また従って電気モータ全体も更にコンパクトに形成され得る。追加的に冷却フィンの直線的な進行から逸脱する形状構成によって、更にはロータ冷却フランジの回転の際の回転音さえも低減されていることが達成される。これはロータの回転運動の際に、ステータ冷却フランジ及びロータ冷却フランジの互いに向かい合ったそれぞれの冷却フィンが、最早半径方向の大きな延伸部上で同時に互いにかすめ通り過ぎないことによってもたらされるが、それは特には、共通の半径方向の延伸部の、特には50%よりも大きな、広い範囲で、互いにかすめ通り過ぎる瞬間に、向かい合う冷却フィンの間に、明らかに0°よりも大きな角度、特には5°よりも大きな角度が生じていることによって、もたらされる。加えて、冷却フィンの間のこの角度は、半径方向の延伸部に渡って可変的である。
【0008】
この様態では、冷却フィンの簡潔な構成によって、コンパクトな構成空間を維持したままで、冷却フィンの表面積の拡大によって冷却能力を向上することのみならず、同時に騒音の発生を低減することが、有利な様態で達成され得る。
【0009】
冷却フランジが所定の様態で半径方向へ延伸する際、波形状は、冷却フィンの格段に大きな表面積の拡大を導く。波形状は電気モータの使用時に大きな乱流度をもたらし、それにより、冷却空気による熱排出が促進される。冷却フィンがその冷却フィン中心線の経過において平面的な投射で見て基準線に関して著しい偏位を正負の周方向で交互に有していることによって、うねり(波性)が与えられる。同様に平面的な投射で見て、冷却フィンの進行におけるそのそれぞれの基準線からの逸脱・ずれ(差)が、基準線の割り当てられた位置と関連して、うねり関数(波関数)として称される。有利には、このうねり関数は1つの冷却フランジに上での冷却フィンの大部分に対して、有利には冷却フィンの少なくとも80%に対して、少なくとも2つの極値を有している。冷却フィンの基準線は冷却フランジの半径方向にあるか当該半径方向に対して傾いた状態にある。
【0010】
少なくとも一対の隣り合う波形状の冷却フィンに対して、特には大部分隣り合う波形状の冷却フィンに対して、特には全ての隣り合う波形状の冷却フィンに対して、位相位置(位相状態)を調整することによって、非常に有利には、冷却能力を回転する冷却フランジの回転方向とは依存させないことが可能となる。
【0011】
波形状の形成のもとでは、単なる波形状のみではなく、例えば鋸歯形状の進行も理解される。
【0012】
うねり関数は、振幅、波長、及び位相位置を有している。振幅及び波長は、冷却フィンの延伸に渡って可変的であってもよい。位相位置は、冷却フランジの半径方向内側の端部を示す包絡円に関連して、決定される。
【0013】
波状の冷却フィンの波長の、割り当てられている冷却フランジの半径方向の延伸に対する比率は、有利には0.7から1.7の間にある。このように形成することによって、冷却フィンが存在している保持部材の半径方向の幅を上述のようにする場合に冷却フィンの最適な大きさの表面積がもたらされる、その際冷却フィンの間の流路は依然として流れにとって有利に形成され得る。
【0014】
冷却フランジの波状の冷却フィンの振幅は、それぞれの同一の冷却フィンの冷却フィンに関して平均化された波長の約0.1倍から約0.3倍の範囲にある。
【0015】
波形状の冷却フィンの振幅は、好ましくは周囲に渡って変わっていてもよい。従って、冷却能力を最大にするために、更なる調整量も用いることが出来る。
【0016】
冷却フィンの間の平均間隔が冷却フィンの平均厚さの約2倍から約6倍に対応することが、有利な様態でコンパクトな構成に寄与する。それによって、冷却フィンの間の間隔は、コンパクトな構造にもかかわらず、十分に大きなものであるので、その結果、冷却フィンの間を通って流れる冷却気流は冷却システムの表面上を流れることが出来る。
【0017】
有利には、冷却フィンの間の間隔は冷却フィンの平均厚さの少なくとも2倍に対応する。この間隔は、電気モータの大きさに応じて約1.5mmから約18mmの間であり得る。
【0018】
冷却フィンの厚さが有利な様態ではたった約1.5mmから約3mmの間にあることは、コンパクトな構造形態及びプレッシャーダイカスト鋳造法での良好な製造可能性に寄与する。
【0019】
冷却フィンはその高さに渡って一定の厚さを有していてもよいが、その端部側への方向で減少する厚さを有していてもよい。そのような構成は、冷却フランジを製造するためのプレッシャーダイカスト鋳造法の際の簡潔な取り除きを可能にする。
【0020】
冷却フィンは有利には、その両方の端部が内側及び外側の包絡円の領域に存在するように、冷却フランジ上に設けられており、それら両方の包絡円は互いに同軸である。
【0021】
冷却フランジの半径方向での大きすぎない膨張を維持するため、有利な様態では外側の包絡円の内側の包絡円に対する比率は約1.1から約1.6の間にある。この様態では、冷却フランジは気流にとって、阻害にはならない、特には電気モータがアキシャルベンチレータのために用いられる場合には阻害にはならない。
【0022】
冷却能力を回転する冷却フランジの回転方向とは独立した状態を維持するため、有利には、冷却フィンの位相位置が波形状の冷却フィンを備える冷却フランジの周囲に渡って変化することが企図されている。従って、隣り合う冷却フィンは互いに平行な状態にはなく、むしろ位相変化(位相偏位、位相のずれ)に応じて互いにずらされて配設されている。
【0023】
この様態では、冷却フィンのうねりは変化する位相位置に関して、ロータ冷却フランジの回転方向とは無関係に、大きな冷却気流速度及び大きな乱流度と共に、大きな冷却能力が達成されるように、最適化され得る。これは例えば、1つの冷却フランジの波状の全ての冷却フィンのうねり関数の位相位置が、ラジアンで表して、0から2・πのインターバルで略均一に分布していることによって、すなわち、1つの冷却フランジの個々の波状の冷却フィンの位相位置の影響が周囲に渡って見て再度平均化されていることによって、達成される。冷却システムの基本的に有効な回転方向への独立性に対する第1の条件は、1つの冷却フランジの全ての冷却フィンのうねり関数の合計が、これらの冷却フィンのうねり関数の平均の振幅の20%を超えないような振幅を有することである(すなわち、うねり関数を加算的に重ね合わせる場合に位相位置に条件付けられた打ち消し効果が支配的である)。
【0024】
第2の条件、具体的にはそれを満たすことで冷却能力の回転方向に対する独立性が更に最適化されまた有利には第1の条件と共に満たされる第2の条件は、1つの冷却フランジの直接隣り合うそれぞれの冷却フィンの全てのペアの位相位置の間での、回転方向に関して符号を付された(正負を区別された)位相変化の平均値が無次元でラジアンで表して、絶対値にして、π/6よりも大きくないことである。それにより、隣り合う冷却フィンの間の位相変化の符号の影響は、周囲に渡って略平均される。
【0025】
この場合、1つの冷却フランジの直接隣り合う2つの冷却フィンの間の位相変化が大きすぎないことが有利である。有利には位相偏移はラジアンで表して1つの冷却フランジの隣り合う2つの冷却フィンの間で絶対値にしてπ/3よりも大きくない(π/3以下である)。それにより、隣り合うそれぞれの冷却フィンの間に流れにとって有利な流路を形成することが出来る。
【0026】
冷却装置の形態によっては、直接隣り合う冷却フィンは必ずしもそれらの位相位置に関して異なっている必要はない。従って例えば、それぞれ3番目又は5番目の冷却フィンのみが、その位相位置に関して、それぞれ隣り合う波形状の基準冷却フィンに対して変化されている。
【0027】
回転方向への独立性のための更なる条件は、半径に対する基準線の符号を付された角度が、1つの冷却フランジの全ての冷却フィンに渡って平均して、0°へ向かうこと、有利には5°よりも小さいことによって、与えられる。全ての基準線が略半径方向へ指向している場合、この条件は自動的に満たされる。
【0028】
波状の冷却フランジを備えた冷却装置の冷却能力の回転方向に対する独立性を広範囲に及んで保証するためには、熱を放出する全ての冷却フランジにおいて冷却フィンの位相位置及び基準線に関する上述の条件が満たされることが特に重要である。理想的な回転方向独立性のためには、それらの適切な条件が、単に空気力学的な冷却フランジにおいても満たされるべきである。
【0029】
本願の対象は特許請求の範囲の個々の請求項のみからもたらされるものではなく、図中及び明細書中で開示される全ての記載及び特徴によってももたらされる。それらは、それらが請求項の対象でない場合でも、それらが個々に又は組み合わせで従来技術に対して新規である限り、発明にとって重要なものとして請求される。
【0030】
本発明のその他の特徴はその他の請求項、明細書及び図中からもたらされる。
【0031】
本発明は図中に示されているいくつかの実施例に基づいてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明に従う冷却装置のステータ冷却フランジを備えるステータブッシュをロータ側から見た軸方向平面図を示す。
図1a】本発明に従う冷却装置を備える電気モータを軸断面図で示す。
図2】本発明に従う冷却装置を備える電気モータを軸断面図で示す。
図3】記載されたステータブッシュを備える本発明に従う冷却装置の別の実施形態を図2に対応する図面で示す。
図4図1に従うステータブッシュを斜め前方からの概略図で示す。
図5】本発明に従う冷却装置のステータ冷却フランジの別の実施形態と共に、ステータブッシュを軸方向上面図で示す。
図6図5に従うステータブッシュを斜視図で示す。
図7】本発明に従う冷却装置のステータ冷却フランジの別の実施例と共にステータブッシュを軸方向上面図で示す。
図8図7に従うステータブッシュを斜視図で示す。
図9】冷却フランジ上の個別の冷却フィンを概略図で示す。
図10図9に従う冷却フィンをその冷却フィン中心線によって複数の特性量と共に表して拡大概略図で示す。
図11a】冷却フィンの断面形状の一例を拡大概略図で示す。
図11b】冷却フィンの断面形状の一例を拡大概略図で示す。
図11c】冷却フィンの断面形状の一例を拡大概略図で示す。
図11d】冷却フィンの断面形状の一例を拡大概略図で示す。
図12】本発明に従う冷却装置の冷却フランジの別の実施例を上面図で示しており、波状の全ての冷却フィンは同一の位相位置を有しており、冷却能力は回転方向に依存している。
図13】本発明に従う冷却装置の冷却フランジの別の実施例を上面図で示しており、隣り合うそれぞれの冷却フィンはそれらの位相位置に関してラジアンで表して交互に+π及び-πだけ異なっておりまた冷却能力は基本的に回転方向に依存しない。
図14】本発明に従う冷却装置の冷却フランジの別の実施例を上面図で示しており、波状の冷却フィンはむしろ鋸歯形状の経過を有している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1aは、外部ロータモータの形態の電気モータを例示しており、それは例えば電気的に整流された直流モータであってもよい。それは冷却フランジ2を備えたステータブッシュ1を有しており、当該冷却フランジ2からは中心にてベアリングブッシュ3が突出している。ベアリングブッシュ3は、ロータシャフト41を備えているロータ40内へと延伸しており、当該ロータシャフト41はベアリングブッシュ3にて既知に様態で回転可能に支持されている。ロータ40はロータハウジング42を有しており、その内側には複数の永久磁石43が固定されている。それらは環状の空隙部を形成しつつステータパック44を取り囲んでおり、当該ステータパック44は既知の様態でコイルを備えている。ステータパパック44は有利には重ね合わされた薄片から構成されるシートメタルパックである。
【0034】
図1はステータブッシュへ向かう軸方向の上面図をロータ側から見て図示したものであり、当該ステータブッシュ1は外部ロータモータのステータの一部である。ステータブッシュ1は、図2に示すように、ベアリングブッシュ3から半径方向へ突出するステータフランジ200を有している。ベアリングブッシュ3は有利にはステータフランジ200と一体的に形成されており、また、その中でロータ40のロータシャフト41が回転可能の支持されている。実施例においては、ベアリングブッシュ3の外側201(図2)へ、ステータコイル45を備えたメタルプレートパック44が取り付けられる。
【0035】
ステータフランジ200の外縁から間隔をおいて、そこから横方向に、周りを取り囲む壁部6が突出している。当該壁部6は電気的/電子的な構成要素のための収容空間7を取り囲んでいる。その半径方向外側の領域では、ステータフランジ200と一体的にステータ冷却フランジ2が設けられている。このステータ冷却フランジ2は複数の冷却フィン8を備えており、当該冷却フィン8はステータ冷却フランジ2の周囲に渡って分布して配設されている。図1から明らかであるように、冷却フィン8はステータ冷却フランジ2の周囲に渡って略均一に分布して配設されている。冷却フィン8は半径方向において略ステータフランジ200の外縁5から環状の突起部9まで延伸しており、当該環状の突起部9は、ベアリングブッシュ3に対して同軸な状態にありまた例えば壁部6の内径よりも小さい外径を有している。環状突起部9及び壁部6は、ステータ冷却フランジ200の別々の側面に存在している。壁部6と同様に、突起部9も有利にはステータフランジ200と一体的に形成されている。ステータ冷却フランジ2の半径方向内側の端部は、突起部9によって或いは冷却フィン8の半径方向内側の端部によって、もたらされる。
【0036】
この実施例では、ステータの電気的又は電子的な構成要素内で発生する熱は、ステータ冷却フランジ2の表面203を介して外気へと排出される。この熱は、例えばコイルから来てフランジ201を介してステータブッシュ1へと導かれ得る、及び/又は、電子機器の領域内で発生してフランジ202を介してステータブッシュ1内へと導かれ得る。フランジ202は実施例においては壁部6の内側である。ステータブッシュ1は、例えばアルミニウムといった良好な熱伝導性を有する材料から製造されている。ステータ冷却フランジ2をステータブッシュ1と一体的に統合して形成することは、実施例においては、熱伝導面201、202からステータ冷却フランジ2の熱を排出する表面203への最適な熱伝導を可能にする。
【0037】
図2又は図3の実施例に図示されているように、ロータ40には、外側にロータ冷却フランジ4が設けられており、それはモータの駆動時にロータ40と共にベアリングブッシュ3のシャフト(軸)208の周りで回転する。ロータに関しては、図2及び図3では、冷却フランジ4とそこに配設またそれと一体的に形成された複数の冷却フィン10のみが図示されている。冷却フィン10は、ロータ冷却フランジ4の外縁から環状突起部12まで延伸している。両方の冷却フランジ2、4は、互いに僅かに間隔をおいた状態にある。その際、冷却フィン8、10は互いに向かい合っている。ロータ冷却フランジ4は、ロータ40と一体的に統合して形成されていてもよいし、又はロータ40の他の部分に固定されている個別の部品であってもよい。本発明における冷却装置205は、複数の冷却フィン8、10を備え、互いに向かい合う2つの冷却フランジ2、4から構成されている。モータの駆動時には、両方の冷却フランジ2、4は互いに回転的な相対運動を示す。それぞれの冷却フランジ2、4は、その表面203、204で外気へ熱を排出するために利用することが出来る、及び/又は、両方の冷却フランジ2、4の互いの相対運動に基づく空気力学的に効果的な相互作用によって、冷却フランジ2、4の一方で冷却装置205の熱排出を決定的に支援することが出来る。冷却フランジ2、4がその表面203、204で熱排出のために利用される場合、従ってそれは有利には別の位置で熱を吸収するその他の部品と一体的に、良好な熱伝導性を有する材料から形成されている。それが単に空気力学的な相互作用のためにのみ利用される場合、それは例えば、個別のプラスチック部材として作製されていてもよい。必要性に応じて、ステータ冷却フランジ2、ロータ冷却フランジ4、又は両方の冷却フランジ2、4が、熱排出の機能を有することが出来る。
【0038】
外部ロータモータの説明された基本的な構成は既知であるので、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0039】
冷却フィン8、10は有利には高さH(図11)を有しており、当該高さHは冷却フランジ2、4のベースフランジ33に対して略垂直に測られたものであり、それは割り当てられた環状突起部9、12の高さを超えない。
【0040】
図2が示すように、ロータ冷却フランジ4の冷却フィン10は実施例においてはステータ冷却フランジ2の冷却フィン8よりも短い半径方向の長さを有している。更にステータ冷却フランジ2は図示されている実施例においては半径方向でロータ冷却フランジ4を超えている。冷却フィン8、10、環状突起部12、並びに、ステータ冷却フランジ2及びロータ冷却フランジ4の記載した寸法は、図示及び説明された寸法に限定されるものではない。従って、冷却フィン8、10は例えば半径方向の同一の延伸部を有していてもよい。同様に、ステータ冷却フランジ2及びロータ冷却フランジ4が同一の外径を有していることも可能である。実施例においてはステータ冷却フランジ2の冷却フィン8は、ロータ冷却フランジ4の冷却フィン10よりも、明らかに大きな寸法を有しているが、その理由は、冷却フィン8が熱排出体及び外気の間の大きな接触面によって促進される熱排出に利用されることにある、その一方で、実施例におけるロータ冷却フランジ4の冷却フィン10は単に空気力学的な機能のみを有しまたそれによって冷却装置205の熱排出を決定的に支援する。
【0041】
外部ロータモータの使用時には、ステータ冷却フランジ2に対するロータ冷却フランジ4の回転によって、冷却フィン8及び冷却フィン10の間に空気の流れ(気流)が発生し、それは冷却フランジ表面203及び/又は冷却フランジ表面204からの熱を吸収し、外へ排出する。冷却フィン10を備えるロータ冷却フランジ4は、その際、実施例においてはラディアルファンホイールと比較出来るような働きをし、また、内側から外側へ高速で空気を運び、冷却フランジ表面203及び/又は冷却フランジ表面204の排出されるべき熱を吸収したこの空気を半径方向でモータ外へ吐き出す。その結果、冷却装置205の半径方向内側の領域には負圧が発生し、そして新鮮な外気が冷却フィン8を備えるステータ冷却フランジ2にて半径方向外側から内側へと吸い込まれ、その際、冷却フィン8は排熱を吸収する。更に、互いに向かい合う冷却フィン8及び冷却フィン10の直接的な相互作用により強い乱流が発生し、それは空気への熱排出を更に促進する。しかしながらこの相互作用は特には以下のような場合に、大きな騒音発生の原因にもなり得る、つまり特には、全ての冷却フィン8及び10が半径方向(ラジアル)に指向しておりまた直線的である場合(従来技術)、又は或いは、それらが、ステータ冷却フランジ2及びロータ冷却フランジ4の与えられたある位置にて冷却フィン8及び10がそれらの全体的な共通の半径方向の延伸部に渡って互いに正確に向かい合ってまた平行に延伸しているように構成されている場合、すなわち、それらが互いに丁度向かい合っており、それらの進行に関して互いに角度を有していないか、或いはごく僅かな角度しか有していない場合、大きな騒音発生の原因にもなり得る。波状の形状を与えられた冷却フィン8、10の本発明に従う構成によって、この回転音の発生は格段に減少される。
【0042】
ステータ冷却フランジ2の冷却フィン8は、図1に従う実施例においては、波形状に形成されている。図9は、唯一つの波形状の冷却フィン8、10を備えている冷却フランジ2、4を、上面図で概略的に示しており、当該冷却フランジ2、4はロータ冷却フランジであってもよいし、又は、ステータ冷却フランジであってもよい。冷却フランジ2、4の半径方向内側の周縁線(包絡円)は、半径Riを有しており、当該周縁線は冷却フィン8、10の半径方向内側の端部によって画定(定義)され得る。冷却フランジ2、4の半径方向外側の周縁線(包絡円)は、半径Raを有しており、当該周縁線は冷却フィン8、10の半径方向外側の端部によって画定され得る。従って、冷却フランジ2、4の半径方向の延伸はB=Ra-Riとなる。
【0043】
冷却フィン8、10の外側輪郭(シルエット)が破線で記載されている。その際、これらの外側輪郭の間隔は、常に冷却フィン8、10の冷却フィン厚さdをおおよそ特徴づけている。冷却フィン厚さdは、関連する冷却フィン8、10の内側の半径方向及び軸方向位置で、両方の冷却フィン壁部の間で限界まで適合され得る内接球206(図6)の直径を表している。冷却フィンの平均化された冷却フィン厚さdmrとして、更に、個々の冷却フィン8、10に関して平均された厚さdが示されている。1つの冷却フランジ2、4の平均の冷却フィン厚dmは、おおよそ、その冷却フランジ2、4の全ての冷却フィンの平均化された厚さdmrである。図9には冷却フィン8、10に関して、更に、冷却フィン中心線8a、10aが記入されている。それを用いて、冷却フィン8、10のうねりを良好に説明することが出来る。この冷却フィン中心線8a、10aは、1つの冷却フィン8、10の全ての断面の面重心を回転軸Mに対して同軸な異なる半径の円筒外周と接続させることによって、定義され得る。
【0044】
図10には、冷却フィン2、4の冷却フィン8、10が拡大図で、その冷却フィン中心線8a、10aの進行(延び)によって概略的に示されている。この冷却フィン中心線8a、10aは図10に従って見えている平面上に投影されて示されており、当該平面は例えばモータの回転軸に対して垂直な状態にある。「波形状(うねり)」なる用語を説明するために、更に基準線Rが考慮され、当該基準線Rは少なくとも2回、有利には3回、冷却フィン中心線8a、10aと交差する。従って、冷却フィン中心線8a、10aが、実質的に直線的で、非波形状で進行する場合、それは基準線Rに対して全く偏位していない、或いは、ごく僅かにしか偏位していない。反対に波形状の冷却フィン中心線8a、10aは、その半径方向での進行に渡って、正負の周方向Θに交互に振れている。この場合、基準線Rは常に、正負の周方向Θでの冷却フィン中心線8a、10aの振れ(偏位)が基準線Rに対して可能な限り対称であるように、位置決めされる。より正確に説明するためには更に、冷却フィン中心線8a、10aの最大偏位207が定義される。それは偏位の極値である。その際、冷却フィン中心線8a、10aの内側及び外側の端部は、仮想的に曲線を進行させたとしても内側及び外側の端部の位置に極値が存在することが曲線の進行から見て取れる場合においてのみ、最大偏位と見なされる。基準線Rはこの場合、隣り合う2つの最大偏位が常に同じ大きさ(絶対値)であるか、又は、冷却フィン中心線8a、10aの全ての最大偏位についての平均で見て、その大きさに関して互いに可能な限り小さい偏位を有している、と定義することが出来る。図10に従う実施例においては、この基準線Rは正に半径方向に指向しているが、これは半径に対して傾いた状態にあってもよい。それぞれの冷却フィン8、10の冷却フィン中心線8a、10a、及び、R上での進行長さの関数としてのそれぞれの冷却フィン8、10の基準線Rの間の差、が、それぞれの冷却フィン8、10のうねり関数と称される。その際、Rと内側の包絡円13との交点上に原点(ゼロ地点)211が設定される。波形状の冷却フィン8、10は、うねり関数を有しており、当該うねり関数は、冷却フィン8、10の進行上で、少なくとも2つの、特には少なくとも3つの(局所的な)極値を有している。
【0045】
冷却フィン8、10の波形状の進行(経過)は、図10に従い、その冷却フィン中心線8a、10aを用いてまたそこから導かれるうねり関数を用いて、特には振幅A、波長∧、及び、位相位置ΔΦによって特徴づけられ得る。うねり関数の局所的な極値の絶対値が常に、冷却フィン中心線8a、10aのうねりの振幅Aと称される。波長∧は、冷却フィン中心線8a、10aのうねり関数の連続する2つの極大値又は連続する2つの極小値の間の間隔である。振幅Aの大きさ又は波長∧の長さは一定であってもよいし、冷却フィン中心線8a、10aの進行に伴って変化してもよい。振幅Aの大きさ及び/又は波長∧の長さは冷却フィン中心線8a、10aに渡って変化し得るので、更に、それぞれの冷却フィン8、10或いはその冷却フィン中心線8a、10aに関して、フィン平均された振幅Amr或いはフィン平均された波長∧mrが定義され得て、それらはそれぞれ、個々の冷却フィン中心線8a、10aにとっての、全ての特定可能な振幅A或いは波長∧の平均値である。位相位置ΔΦは冷却フィン8、10のうねり関数の第1の最大値の位置を(正の周方向におけるもの、また最小値ではない)、その原点或いはゼロ地点211に関連して、表している。ラジアンでの位相位置Δφは、Δφ=2・π・ΔΦ/∧mrで定義され、その際、πは円周率、∧mrはフィン平均された波長である。
【0046】
冷却フィン8、10を波形状に形成することによって、特定の境界条件下では、直線的な、或いは、放射的で直線的な冷却フィンに比べて、特には熱を排出する冷却フランジ2、4の表面203、204を拡大することが出来るので、その結果、冷却フランジ2、4の熱排出は格段に向上される。境界条件は、特には、半径方向及び軸方向での使用可能な取り付け空間によって、製造技術的な理由による冷却フィン8、10の最小の冷却フィン厚さdによって、そして、互いに隣り合う冷却フィン8、10の最小間隔s(図1)によって、与えられる。またその際には、流体技術的な観点が考慮されなければならない。冷却フィン間隔sは、隣り合う2つの冷却フィン8、10の間の任意の位置で定義され、それは隣り合う2つの冷却フィン8、10の側面の間で限界まで内接され得る球の直径によって行われる(図1参照)。直前に挙げた両方の境界条件(冷却フィン厚d及び冷却フィン間隔d)は、良好な熱排出を達成するために周方向におけるフィンの数を任意に増加させられないことの要因となる。
【0047】
参照直線Rを用いて、波形状のそれぞれの冷却フィン8、10に対して、直線的な(波状でない)基準冷却フィンを定義することも可能である。その仮想の冷却フィン中心線が正にR上に存在するこの直線的な基準冷却フィンは、割り当てられた波形状の冷却フィンと同様の軸方向及び半径方向の延伸並びに同様の厚みの経過、を有している。その直線的な基準冷却フィンと比較して、波形状の冷却フィン8、10は格段に大きな表面積を有しており、それは熱排出にとって有利である。波形状の冷却フィン8、10の表面積とそれらの直線的な基準冷却フィンの表面積の比率は、冷却フィン8、10の半径方向の延伸に関連して、振幅A及び波長∧に決定的に依存している。それは波形状の冷却フィン8、10に対して有利には少なくとも1.05の値を取る。
【0048】
表面積の拡大に基づく熱排出の改善に加えて、冷却フィン8、10を波形状の形態とすることによって、冷却フィンが直線的な形態である場合と比べて流速及び乱流度を増大させることで、熱排出の更なる利点が達成され得る。
【0049】
多くの実施形態においては、両方の冷却フランジ2又は4の一方が、波形状の冷却フィン8或いは10を備えていれば十分である。特に、冷却フランジの一方のみが熱排出機能を有している場合には、その冷却フランジが波形状の冷却フィン8或いは10を備えていれば十分である。
【0050】
ステータ冷却フランジ2及び/又はロータ冷却フランジ4の波形状の冷却フィン8、10の適切な形態により、全ての冷却フィンを直線的又は非波形状の形態にした場合と比べて、回転音の発生を格段に減少させることが出来る。
【0051】
非常に良好な熱排出を達成するためは、波長∧、振幅A、冷却フィン厚さd(図1)に関連する位相位置ΔΦ、冷却フィン数n、冷却フランジ2、4の内径Ri及び外径Ra及びそれらからもたらされる冷却フランジ2、4の半径方向の延伸B=Ra-Ri、並びに冷却フィン8、10の高さHが、互いに調整されなければならない。冷却フィン8、10の高さHは、その際、図11も参照すれば、その冷却フランジ2、4のベース面33に対して略垂直な延びである。そのような最適化の課題を実行するためには、数値流体シミュレーション(CFD:数値流体力学)の援用が向いており、それを用いることで、冷却装置205の冷却挙動をコンピュータモデルでシミュレートすることが出来る。その際、特には波長∧、振幅A、及び位相位置ΔΦといった変数(パラメータ)は、ステータ冷却フランジ2及びロータ冷却フランジ4の間で、及び、隣り合う冷却フィン8、10の間で、変化してもよい。振幅A及び波長∧に関しては、冷却フランジ全体に渡って見たそれらの平均値Am、∧mが導入される、それらは、1つの冷却フランジ2或いは4の全ての冷却フィン中心線8a、10a並びに全ての半径方向の位置に関しての振幅A或いは波長∧の平均値である。内側の包絡円13の半径Riの20%から45%の値が、熱を排出する冷却フランジ2、4の半径方向での延伸(延び)Bにとって特に有利であることが分かった。熱を排出しない冷却フランジの2、4は有利にはその半径方向の延伸Bに関してよりコンパクトであり、Riの10%から30%のBに対する値を有している。
【0052】
熱を排出する冷却フランジの有利な実施形態においては、波長∧は、Bの70%から170%の間の範囲にある。∧の値がより小さい場合には、確かに冷却フィン8、10の表面積はさらに拡大されるかもしれないが、気流に対しては負の影響を与えることになる。振幅Aは有利には波長∧の0.1倍から0.3倍である。振幅Aをそのように選ぶことは、両方の冷却フランジ2、4の少なくとも一方の冷却フィン8、10が上述のように設計されている場合、顕著な回転音の低減を導き、また、熱を排出する冷却フランジ2、4での有利な熱排出を導く。冷却フランジ2、4の複数の冷却フィン8、10の平均の冷却フィン厚さdmは、有利には、冷却フランジ2、4の平均の冷却フィン間隔smよりも小さい。なお、冷却フィン間隔smは隣り合う2つの冷却フィン8、10の間に形成される流路15の幅を特徴づけており、有利には6>sm/dm>1.5の関係にある。
【0053】
図1から明らかであるように、図示されている実施例では、冷却フィン8の位相位置ΔΦはステータ冷却フランジ2の周囲に渡って変化している。図1においては例として3つの冷却フィン8のために、割り当てられた複数の位相位置ΔΦが記載されている。
【0054】
1つの冷却フランジ2、4の周囲に渡って波形状の冷却フィン8、10の位相位置ΔΦ或いはΔφが変化することによって、ステータ冷却フランジ2に対するロータ冷却フランジ4の回転方向Θに依存しない冷却能力を保証することが可能となる。図1に従う実施例においては、ステータ冷却フランジ1の周囲に渡って、n=48の波形状の冷却フィン8が設けられている。複数の破線を用いて、個々の冷却フィン8の位相位置の進行が明確化されている。ステータ冷却フランジ2の周囲に渡るこの位相位置の進行は、単に例として理解されるべきものである。位相位置の進行は、冷却空気ホイール4の回転方向Θとは無関係に所望の冷却作用が発生されるように、選ばれる。
【0055】
波形状の冷却フィン8、10の位相位置の変化なしでは、冷却装置205の冷却能力に関して、好ましい回転方向がもたらされる、すなわち、冷却装置205の冷却作用は、そのような構成においては一方の方向に対しての方が、反対側の方向に対してよりも、大きい。冷却フランジ2、4が空気力学的にのみ働く場合に比べて、波形状の冷却フィン8、10を備える熱を排出する冷却フランジ2、4において位相位置ΔΦが適切に変化されていない場合は、回転方向に依存する冷却効率の違いの程度はより大きい。従って、冷却作用の回転方向への依存性が臨界的な値へと至ることなく、冷却フランジ2、4が空気力学的にのみ働く場合に、波形状の冷却フィン8、10を、位相位置ΔΦを変化させず使用することが、可能であることも考えられる。
【0056】
一般的に、当然モータに対しても、ステータ冷却フランジ2上に及び/又はロータ冷却フランジ4上に波形状の冷却フィン8或いは10を備えた冷却装置205であって、一方の回転方向に対して反対の回転方向よりも良好な冷却能力を有する冷却装置205を、使用することが可能である。これは特には、モータが特定の回転方向のためにのみ使用される場合である。
【0057】
図12には、一定の位相位置を有する波形状の冷却フィン8、10を備える冷却フランジ2、4が図示されている。熱を排出する冷却フランジが上述のように設計される場合、モータの回転方向Θに対する熱排出の著しい依存性が顕著に現れる。この好ましい回転方向においては特に、非常に大きな熱排出が達成され得る。しかしながら、両方の回転方向を有して使用されるべきであるモータに対しては、そのような冷却フランジ2、4の適応性は低くなり得る。
【0058】
同様に図14にも、一定の位相位置を有する波形状の冷却フィン8、10を備えた冷却フランジ2、4が図示されている。図12に従う実施形態に対する差異に関して、冷却フィン8、10のうねり関数は別の形を有している。例えば図10に従う実施形態においては、冷却フィン8、10のうねり関数の最大偏位207の範囲には、いわば丸状の輪郭が存在しておりまたうねり関数の形状はその進行においていわばサイン関数に重ねされているのに対して、図14に従う実施形態は、冷却フィン8、10のうねり関数の最大偏位207の範囲にいわば尖った又は角状の形状を有している。進行はいわばジグザグ形状である。波形状の冷却フィン8、10の冷却フィン中心線8a、10aは、その半径方向での進行に渡って、基準線Rに対して、正負の周方向θで交互の振れを有している。うねり関数は特には少なくとも2つの極値(極大値及び極小値)を有している。その際うねり関数の進行は、例えば、互いに接続されている部分円セグメント、ジグザグ形状、鋸歯形状、サイン形状又はそこから導かれる形状、又は、ステップ形状(階段形状)といった、異なる形状を採用することも出来る
【0059】
冷却フランジ2、4の、特には熱を排出する冷却フランジ2、4の、全ての波形状の冷却フィン8、10の位相位置ΔΦに対して第1の基準が満たされることは、回転方向の双方に対する冷却装置205の類似した冷却作用を保証する。この基準とは、1つの冷却フランジ2、4の全ての冷却フィン8或いは10のうねり関数の位相位置Δφにして、無次元の、ラジアンで表した位相位置Δφが、0から2・πの範囲で略均一に分布されていること、を意味している。1つの冷却フランジ2或いは4の全ての冷却フィン8、10のうねり関数を平均したとすると、すなわち、それらを足し合わせてそして冷却フィンの数nで割ったとすると、打ち消し効果が支配的であることから、結果は、比較的小さい振幅を有する平均されたうねり関数となる。平均されたうねり関数の振幅の大きさは、有利には、全ての冷却フィン8或いは10の平均された振幅Amの大きさの20%よりも大きくはない。
【0060】
この基準が満たされることを保証する構造の可能性としては、それぞれの冷却フィン8或いは10に対して、ペア形成により、同一の冷却フランジ2或いは4の正確に1つの別の冷却フィン8’或いは10’が割り当てられ、それが略同一の半径方向の振幅進行A、及び、略同一の半径方向の波長進行∧を有しており、その位相位置Δφに関しては、略πだけ他方の冷却フィン8或いは10の位相位置と異なっていること、が挙げられる。図1及び図5には、例示的にそのようなステータ冷却フィン8及び8’のペアが示されている。
【0061】
冷却フランジ2、4の、特には熱を排出する冷却フランジ2、4の、全ての波形状の冷却フィン8、10の位相位置ΔΦに対して第2の基準が満たされることは、第1の基準が満たされることとの組み合わせで、回転方向の双方に対する冷却装置205の略同一の冷却作用を保証する。説明のため、直接隣り合う冷却フィン8、8”或いは10、10”のペアに対しては、位相変化ΔΔΦが観察される。当該位相変化ΔΔΦは、隣り合う2つの冷却フィンの間の位相位置ΔΦに関して、符号付きの差異(正負を区別された差異)ΔΔΦ=ΔΦ8”或いは10”-ΔΦ8或いは10を表している。その際、8”或いは10”は、常に、8或いは10の回転方向Θに存在する隣り合った冷却フィンである。第2の条件は、1つの冷却フランジ2或いは4の隣り合う冷却フィン8、8”或いは10、10”の全ての可能なペアの平均された符号を付された位相変化ΔΔΦが略ゼロである場合に満たされるが、それは、正負の位相変化が周囲に渡って略相殺されること(略打ち消し合うこと)を意味している。この平均の位相変化は、有利には、無次元でラジアンで表して、絶対値にしてπ/6よりも大きくはない。
【0062】
第2の基準が満たされることを保証する構造的な可能性としては、直接隣り合う冷却フィンのそれぞれの変化(ずれ)ΔΔφ(1)に、同じ絶対値を有しまた符号が異なる別の変化ΔΔφ(2)が正確に1つ割り当てられること、が挙げられる。有利には、変化ΔΔφ(1)の冷却フィンのうねり関数は、ペアごとに適合させた上で、変化ΔΔφ(2)の冷却フィンと比較して、それぞれに略等しい振幅の進行及び波長の進行を有しており、また、有利にはおおよそΔφ=πだけ互いに位相がずらされている。
【0063】
図5には、例示的にそのような2つの相補的な位相変化ΔΔΦ(1)及びΔΔΦ(2)が示されている。
【0064】
回転方向従属性に関する更なる条件は、符号を付された、基準線Rの半径に対する角度は、1つの冷却フランジの全ての冷却フィンについて平均して、0°に向かっていること、有利には5°よりも小さいことによって与えられる。全ての基準線がおおよそ半径方向に指向している場合は、この条件は自動的に満たされている。
【0065】
図13には、波形状の冷却フィン8、10を有する冷却フランジ2、4の別の実施形態が図示されている。一対の冷却フィン8、8”或いは10、10”は、常に交互に、約+π及び約-πの無次元の位相変化(位相のずれ)ΔΔφを有している、すなわち、波長の約半分の有次元の位相変化ΔΔΦを有している。波形状の全ての冷却フィン8、10(冷却フィン8”、10”を含む)の位相変化ΔΦに関する冷却フランジ2、4のこの構成は、特には先に回転方向従属性の達成に関して説明した両方の条件1、2が満たされているので、基本的に回転方向に依存しない冷却フランジ2、4の冷却能力を導く。
【0066】
しかしながら図13に従う実施形態においては、隣り合う2つの冷却フィン8、10の間の冷却フィン間隔sは半径方向の位置に関して比較的大きく変化していることも見て取れる。例えば、隣り合う2つの冷却フィン8、10に関して、冷却フィン間隔s1及び冷却フィン間隔s2が、異なる位置に書き込まれている。これらは大きく異なる大きさを有している。半径方向での冷却フィン間隔のこのような大きな変化は、2つの隣り合う冷却フィンの間のそれぞれの中間空間によって形成されている流路を通る冷却気流の案内にとってはむしろ不利であり、また従って冷却能力が低減される可能性があることが分かった。
【0067】
反対に、図1図5及び図7に従う実施形態においては、冷却能力の回転方向依存性に対する基準の双方を満たすために、確かにステータ冷却フランジ2の異なる冷却フィン8の間に、位相位置ΔΦの変化があることが見て取れるが、しかしながら、図13に従う実施例の場合に比べて、隣り合う2つのそれぞれの冷却フィン8の間の間隔は半径上で格段に僅かな程度で変化している。その際、冷却フランジの外側の包絡円14に対する内側包絡円13の半径方向の広がりのみに基づいて、何れにせよ既に冷却フィン間隔の拡大が期待され得ることが考慮されなければならない。その際、当該冷却フィン間隔はこの寸法においてはそれのみでは不利にはならない。隣り合う冷却フィン8、10の冷却フィン間隔の広すぎない半径方向の変化を達成するためには、隣り合う2つの冷却フィンの間の、絶対値での最大の位相変化がΔΔφ(max)=π/3であると非常に有利であることが分かった。この条件は、有利には1つの冷却フランジ2、4の直接隣り合う冷却フィン8、10の可能な全てのペアの少なくとも80%に対して維持されるべきである、その際それは、直接隣り合う冷却フィン8、10のいくつかのペア(最大でも20%)がこの条件を満たさない場合でも、不利な作用は及ぼさない。
【0068】
モータの駆動時により低減された回転音が保たれるためには、更に、冷却フィン8、10が周囲に渡って若干不均一に分布されている場合が有利であり得る。この不均一分布は特には、それぞれの基準線Rの不均一分布に関して認識され得るかもしれない。隣り合う2つの基準線Rの生じている最大の角度変位(角度のずれ)と、隣り合う2つの基準線Rの生じている最小の角度変位との間の比率が、1.2から2であると、有利であることが判明した。
【0069】
冷却フィン8、10は有利な様態では、軸方向で見て、アンダーカットなしで構成されている。それによって、冷却フィン8、10を有する冷却フランジ2、4を非常に簡潔にプレッシャーダイカスト鋳造法で製造すること及び取り出すことが可能である。特には、図1から図8のうちの1つに従うステータ冷却フランジ2を備えるステータブッシュ全体が、ステータフランジ200、ベアリングブッシュ3、壁部6及び冷却フィン8と統合されて、プレッシャーダイカスト鋳造法で安価に製造され得る。
【0070】
図3に従う実施形態は、特にはロータ冷却フランジ4の冷却フィン10に平坦な分離板16が配設されている点で図2に従う実施例とは異なっており、当該分離板16は冷却フィン10をその半径方向の延伸の大部分に渡って覆っている。リングディスク形状の分離板16は間隔をおいてステータ冷却フランジ2の冷却フィン8と向かい合っている。分離板16の半径方向内側の縁部17は環状突起部12に対して間隔を有している。それにより、環状突起部12及び分離板16の内側の縁部17の間に空気流入部18が形成される。
【0071】
分離板16は本実施例では、そのステータフランジ2の冷却フィン8に向けられた平坦な外面19が環状突起部12の端部面と共通の半径方向平面内に存在するように、設けられている。この様態では、冷却空気のために最適な流れの案内が保証されている。分離板16は冷却フィン8及び冷却フィン10の間で案内される冷却空気を生じさせるために利用される。回転するロータ冷却フランジ4によって吸い込まれる冷却空気は、冷却フィン8の間で半径方向外側から内側へ、流路15内へと流れ、また、そこから空気流入部18へ至る。その結果、冷却空気はそれに引き続きロータ冷却フランジ4の冷却フィン10の間で半径方向内側から外側へと流れる。
【0072】
ステータフランジ2の環状突起部9は、冷却空気が環状突起部9にてそれが吸気流入部18を通って冷却フィン10に到達するように軸方向に向きを変えるように、ロータ冷却フランジ4の環状突起部12に接続している。分離板16は冷却フィン10の間にある流路15を冷却フィン8に対する方向で閉鎖しているので、冷却装置205による卓越した空気の案内が保証される。
【0073】
その他の点に関しては、図3に従う実施形態は図1及び図2に従う実施形態と比較可能に形成されている。
【0074】
図5及び図6に従う実施形態においては、冷却フィン8は上述の実施例におけるものよりも長い。特に、半径方向の延伸Bが比較的長く、また、冷却フランジ2の内径Riの約40%の値を有している。冷却フィン8の波長∧の、半径方向の延伸Bに対する比率は、図1に従う実施例と比較してより小さく、約60%の値を取る。
【0075】
この実施形態においても、隣り合う冷却フィン8は、異なる位相位置ΔΦを有している、或いは無次元でラジアンで表した位相位置Δψを有している。
【0076】
冷却フィン8の間のいくつかの領域には、サポートスリーブ(ドーム部)21が設けられており、当該サポートスリーブ21はステータ冷却フランジ2に取り付けられており、ステータを留め具に固定するために利用される。これはボルトを用いてステータに固定されており、当該ボルトはサポートスリーブ21内へ既知の様態でステータフランジ2の壁部6に向けられた側面209から螺入され得る。
【0077】
サポートスリーブ21の周りの領域を冷却フィン8及びそれらの間に形成された流れ領域と共に最適に利用出来るように、以下のようにサポートスリーブ21は配設されまた冷却フィン8はサポートスリーブ21と隣り合って以下のように形成されている、すなわち、隣り合う冷却フィン8の波部分22がサポートスリーブ21の輪郭形状に適合されているように、サポートスリーブ21は配設されまた冷却フィン8はサポートスリーブ21と隣り合って形成されている。実施例中のサポートスリーブ21は円形状の断面を有しているので、波部分22は少なくとも近似的に、それらの波部分22がサポートスリーブ21の周面部に対して同軸に延伸するように、形成されている。それによって、隣り合うフィン8とサポートスリーブ21の間に必要な或いは冷却に関して最適な間隔が保証される、すなわち、サポートスリーブと隣り合う冷却フィン8の間に効果的な流路212(図5)が形成される。
【0078】
図5及び図6に従う実施例においては、個別の冷却フィン8のフィン平均振幅Amrは周囲に渡って(半径方向で)変化している。サポートスリーブ21の領域では、この平均の冷却フィン振幅Amrはどちらかといえばより小さく、また、サポートスリーブ21とそれぞれに隣り合うフィンの間に有利な流路212が形成されるように選択されている。サポートスリーブ21から離れた中間領域における冷却フィン8に関しては、この平均の冷却フィン振幅はどちらかといえばより大きく選ばれている、それは特には熱を排出する表面積をより大きく維持するためである。最小の平均の冷却フィン振幅Amrに対する最大の平均の冷却フィン振幅Amrの比率は、約1.2から約2の範囲にある。有利な流路の形成を保証するために、直接隣り合う冷却フィンに対する平均の冷却フィン振幅Amrの比率は、有利には1.1未満に選択されるべきである。
【0079】
更に、隣り合う冷却フィン8の間の位相変化ΔΔΦは、隣り合うサポートスリーブ21への最適な移行が達成されるように、構成されている。この様態では、サポートスリーブ21に拘らず、冷却作用が、(図示されていない)ロータ冷却フランジ4の回転方向とは無関係であることが保証される。
【0080】
詳述した構成によって、サポートスリーブ21の外側も、それと隣り合う冷却フィン8の波部分22と関連して、流れを案内するため、そして、熱を排出するために利用される。
【0081】
サポートスリーブ21は、半径方向に延びるウェブ部23を介して環状突起部9に繋がれている。ウェブ部23はステータ冷却フランジ2のベース面からおおよそステータ冷却フランジの軸の方向へ延びている。有利にはウェブ部23はサポートスリーブ21及び冷却フィン8と同様の高さを有している。
【0082】
サポートスリーブ21及びウェブ部23も、アンダーカットなしで形成されており、その結果、ステータブッシュ1全体の抜き取りを問題なく行うことが出来る。
【0083】
環状突起部9は、上述の実施例とは異なり、連続したリング(円筒)としては形成されておらず、軸方向に延びる複数のスリットによって複数の個別のセグメントに分割されている。これらのスリット24は、それらが隣り合う冷却フィンの間で適切な流路15の領域に存在するように、設けられている。
【0084】
軸方向のスリット24は、軸方向で見て、隣り合うサポートスリーブ21の間の領域に存在している(図5)。サポートスリーブ21は、既知の様態でステータフランジを貫通する開口部25を取り囲んでおり、当該開口部25内には有利にはネジ部が設けられ、その中へステータを留め具に固定するためのボルトを螺入させることが出来る。
【0085】
位相位置ΔΦは詳述した様態においてステータフランジ2の周囲に渡って変化しており、それにより、冷却フィン8、10の冷却がロータ冷却フランジ4の回転方向に依存しないことが達成される。冷却フィン8が波形状部を有しているので、モータ駆動時に冷却装置205において発生する回転音は、冷却フィンが直線的に延伸する場合に比べて、両方の冷却フランジ2、4にて格段に減少される。
【0086】
図7及び図8は、基本的には図5及び図6に従う実施例に対応している実施例を図示している。従って、以下においては異なる構成についてのみ説明する。構成の異なりは、サポートスリーブ21に対して隣り合っている冷却フィン8が、最早湾曲された波部分22がサポートスリーブに対して同軸な状態にあるのではなく、直線的及び互いに平行な部位26を備える冷却フィン8がサポートスリーブ26に隣り合って延伸している点にある。直線的な部位26は、外側の包絡円14からそれがサポートスリーブ近傍へ至るように半径方向内側へ延伸している。直線的な部位26はその後、それぞれのサポートスリーブ21に対して略同軸に延伸する湾曲された波部分22へと移行する。それぞれのサポートスリーブに隣り合っている2つの冷却フィン8のこの構成によって、ステータブッシュ1を製造時に適切な握持装置(グリップ装置)を用いて掴むことが可能となる。適切な握持装置は側方から直線的でまた半径方向へ指向されている冷却フィン領域26の間での握持を可能とする。
【0087】
図6及び図8に従う実施例から明らかであるように、サポートスリーブ21と隣り合う2つの冷却フィン8の間の領域28には、冷却フランジ2の支持壁部が大きな壁圧と共に構成されている。それにより、サポートスリーブ21に固定されている留め具によって発生する分応力(コンポネントストレス)を減少させることが出来る。
【0088】
その他の冷却フィン8は、上述された様態で形成されまた配設されている。
【0089】
図7及び図8に従う図示されている実施例においては、ステータブッシュ1の周囲に渡って、56個の波上の冷却フィン8が分布して配設されている。これらの冷却フィン8は、有利には約1.5mmから約2.5mmの平均厚さを有している。波状に形成された冷却フィン8によって、隣り合う冷却フィン8の間の間隔を狭すぎるものにすることなく、熱を排出する大きな表面積が達成される。隣り合う冷却フィンの間のこの間隔は、1つの冷却フランジに渡る平均値smに関して、少なくともその冷却フランジに渡って単純に平均されたフィン厚さdmの値を取る。隣り合う冷却フィン8の間のこの平均間隔smは有利には、平均フィン厚dmの2倍から6倍の間の範囲にある。実際には、この平均間隔smは有利には約3mmから約18mmの間の値を取る。
【0090】
アキシャルベンチレータファンホイールを有するモータを用いる場合には、有利には大き過ぎる外径Ra(図9)は選択されない、その理由は、アキシャルベンチレータにおいては冷却フランジ2、4がアキシャルベンチレータの気流にとっての妨げになり得る点にある。内径Riは通常モータのその他の構成要素の構造によって決定される。フランジ領域29の内半径Riに対する外半径Raの比率は有利には、約1.1から約1.6の間の範囲にあり、特には約1.4である。冷却フランジの半径方向の延伸Bは、Ra及びRiによって決定される。
【0091】
図9に従う概略図が示すように、波形状の冷却フィン8は、冷却フランジ2、4の外径Ra及び内径Riの間で延伸している。外半径Raは外側の包絡円14の半径に対応し、また、内径Riは内側の包絡円13の半径に対応している(図1及び図7)。冷却フィン8はこの場合、基本的には半径方向に指向されているように、形成されている。フランジ領域29の周方向はΘで表されており、ロータの回転軸はMで示されている。
【0092】
図11aから図11dは冷却フィン8、10の異なる形成を仮想の冷却フィン中心線8a、10aに対して略垂直な断面で示している。
【0093】
図11aに従う実施形態の場合、冷却フィン8、10は、厚さdの長方形形状の断面を有している。冷却フィン8、10はその高さHに渡って適宜一定の断面或いは一定の厚さdを有している。比率H/dは有利には約2から約8の間の範囲にある。厚さdは有利には約1mmから約4mmの値を取る。
【0094】
図11bに従う冷却フィン8、10は台形形状の断面を有している。脚部領域では、冷却フィン8、10は厚さd1を有しており、頭部領域では厚さd1よりも薄い厚さd2を有している。冷却フィン8、10の頭部側(頂端側)30から側壁部31、32への移行部は丸められている。台形形状の断面に基づき、冷却フィン8、10は、脚部領域から頭部領域或いは頭部側へ向かって連続的に狭まっている、すなわち厚みdは頭部領域から脚部領域へ向かって変化している。比率H/dは、冷却フィン8、10をそのような構成とした場合でも、冷却フィン8、10の全高に渡って、有利には、約2から約8の間の範囲にある。
【0095】
図11cに従う冷却フィン8、10は、原則的に図11bに従う冷却フィンと同じ構成を有している。差異は、頭部側30のそれぞれが角部を介して側壁部31、32へと移行しており、丸められてはいない点のみである。
【0096】
図11b及び図11cに従う冷却フィン8、10の傾いた状態にある側壁部31、32は、熱流(ヒートフロー)にとって有利であるが、その理由はフィンの連続的な断面減少が熱の主流方向で基礎面33の領域から頭部領域30に向かって存在していることにある。このような断面構成は特には、冷却フランジ2、4を鋳造工具から問題なく抜き取ることが出来るという長所も有している。側壁部31、32は、抜き勾配を形成している。
【0097】
図11dに従う冷却フィン8、10は、図11b及び図11cに従う実施例の場合のように頭部側30が平坦に形成されているのではなく、完全に丸められていることによって特徴づけられている。
【0098】
図11aから図11dに従う全ての実施例においては、丸み部は、側壁部31、32から基礎面33への移行部にも設けることが出来る。
【0099】
端部側及び基礎側の丸み部は、長方形形状の断面を有する図11aに従う冷却フィン8、10に設けることも出来る。
【0100】
詳述された全ての実施例において、波形状の冷却フィン8、10は冷却フランジ2、4の一方にのみ設けることも可能であり、有利には熱を排出する冷却フランジ2、4にのみ設けられていてもよい。他方の冷却フランジ2、4の冷却フィン8、10はこの場合、従来の様態で直線的に延伸して形成され得て、その際これらの直線的な冷却フィン8、10は半径方向に延伸しているか、又は、半径方向に対して角度をなして延伸して、設けることが出来る。
【0101】
同様に、波形状の冷却フィンを、一方の冷却フランジ2、4のみに設けられるのではなく、両方の冷却フランジ2、4に設けることも出来る。その際、両方の冷却フランジ2、4の波状の冷却フィン8、10は、異なる特性量(例えばRa、Ri、B、∧、ΔΦ、A)を有している。
【0102】
全ての冷却フィン8、10が波形状部を有しているのではない場合でも、1つの冷却フランジ2、4は有利には波形状の冷却フィン8、10を備えて形成され得る。有利には1つの冷却フランジ2、4の全ての冷却フィン8、10の少なくとも50%が波形状部を有しており、より良好には1つの冷却フランジ2、4の全ての冷却フィン8、10の少なくとも80%が波形状部を有している。
【符号の説明】
【0103】
2 冷却フランジ
4 冷却フランジ
8 冷却フィン
8a 冷却フィン中心線
10 冷却フィン
10a 冷却フィン中心線
13 内側の包絡円
14 外側の包絡円
30 頭部側(頂端側)
Am 波形状の冷却フィンの平均振幅
Amr 冷却フィンの平均振幅
B 冷却フランジの半径方向での延伸
d 冷却フィンの厚さ
dm 冷却フィンの平均厚さ
sm 冷却フィンの平均間隔
H 冷却フィンの高さ
Ra 外側の包絡円の半径
Ri 内側の包絡円の半径
ΔΦ 位相位置
ΔΔΦ 位相変化
∧ 波形状の冷却フィンの波長
図1
図1a
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11a)】
図11b)】
図11c)】
図11d)】
図12
図13
図14