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特許7075949コーティング構造体、シート状製品及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】コーティング構造体、シート状製品及びその使用
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/58 20060101AFI20220519BHJP
   D21H 19/82 20060101ALI20220519BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220519BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220519BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20220519BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220519BHJP
   C09D 7/43 20180101ALI20220519BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220519BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20220519BHJP
   B65D 65/42 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
D21H19/58
D21H19/82
B32B27/30 A
B32B27/30 B
B32B27/20 Z
C09D133/04
C09D7/61
C09D7/43
C09D7/63
C09D7/65
B65D65/42 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019568753
(86)(22)【出願日】2018-06-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 FI2018050464
(87)【国際公開番号】W WO2018229344
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2020-12-11
(31)【優先権主張番号】20175560
(32)【優先日】2017-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】504186286
【氏名又は名称】ケミラ ユルキネン オサケイティエ
【氏名又は名称原語表記】KEMIRA OYJ
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】特許業務法人井上国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077919
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153899
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100172638
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 隆治
(74)【代理人】
【識別番号】100159363
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 淳子
(72)【発明者】
【氏名】トゥルッキ、タルヤ
(72)【発明者】
【氏名】エイヤ アネリ レポ
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-040963(JP,A)
【文献】特開平10-331096(JP,A)
【文献】米国特許第05562980(US,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0074995(KR,A)
【文献】特開平04-018194(JP,A)
【文献】特表平07-509193(JP,A)
【文献】特表2006-526689(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0241475(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00-D21J7/00
B32B1/00-43/00
B65D65/00-65/46
C09D1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロース繊維を含むシート状基材のためのコーティング構造体であって、
-(a)安定剤の存在下で重合した、ガラス転移温度Tgが20℃以下(≦)、好ましくは10℃以下(≦)の第1のスチレン(メタ)アクリレート共重合体を少なくとも70質量%、
(b)カオリン又はタルクなどの無機板状鉱物粒子を0.1~30質量%、及び
(c)少なくとも1種の第1の増粘剤を0.01~2質量%
含む、少なくとも1層のプレコート層と
-(a)安定剤の存在下で重合した、ガラス転移温度Tgが20℃以下(≦)、好ましくは10℃以下(≦)の第2のスチレン(メタ)アクリレート共重合体を少なくとも50質量%、
(b)無機鉱物粒子を0.1~30質量%、
(c)少なくとも1種の第2の増粘剤を0.01~5質量%、及び
(d)ブロッキング防止剤を0.5~30質量%
含む、トップコート層と
を備えることを特徴とする構造体。
【請求項2】
前記プレコート層が、
(a)第1のスチレン(メタ)アクリレート共重合体を70~99質量%、好ましくは70~95質量%、より好ましくは73~90質量%、及び/又は
(b)無機板状鉱物粒子を5~25質量%、より好ましくは10~20質量%、及び/又は
(c)少なくとも1種の第1の増粘剤を0.1~2質量%、好ましくは0.1~1.5質量%、より好ましくは0.2~1質量%
含むことを特徴とする、請求項1に記載のコーティング構造体。
【請求項3】
前記トップコート層が、
(a)第2のスチレン(メタ)アクリレート共重合体を50~99質量%、好ましくは60~95質量%、より好ましくは63~85質量%、及び/又は
(b)無機鉱物粒子を5~25質量%、より好ましくは5~20質量%、及び/又は
(c)少なくとも1種の第2の増粘剤を0.1~5質量%、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.1~2質量%、及び/又は
(d)ブロッキング防止剤を1~30質量%、好ましくは1~20質量%、より好ましくは1~15質量%
含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のコーティング構造体。
【請求項4】
前記ブロッキング防止剤が、C16~C18アルケニルケテン二量体、パラフィンワックス、カラナウバワックス、ステアリン酸カルシウム、ポリグリセリド又は高密度ポリエチレンから選択されることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載のコーティング構造体。
【請求項5】
前記スチレン(メタ)アクリレート共重合体が、デンプン及びポリビニルアルコール、好ましくはデンプンから選択される安定剤の存在下で重合されたものであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のコーティング構造。
【請求項6】
前記スチレン(メタ)アクリレート共重合体が、カルボキシル化共重合体であり、好ましくは1~5質量%のカルボン酸を含むモノマー混合物を重合することにより得られるものであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のコーティング構造体。
【請求項7】
前記第1及び/又は第2のスチレン(メタ)アクリレート共重合体が、-40~20℃、好ましくは-20~10℃、より好ましくは-10~10℃の範囲のガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のコーティング構造体。
【請求項8】
前記第1のスチレン(メタ)アクリレート共重合体と前記第2のスチレン(メタ)アクリレート共重合体が互いに同一であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のコーティング構造体。
【請求項9】
前記第1及び/又は第2の増粘剤が、アルカリ可溶性/膨潤性エマルジョン(ASE)増粘剤及び疎水的修飾アルカリ可溶性エマルジョン(HASE)増粘剤などの合成pH-トリガー型増粘剤、ポリビニルアルコール、エチル化ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、グアーガム、又はアラビアゴムを含む群から選択されることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のコーティング構造体。
【請求項10】
前記第1の増粘剤と前記第2の増粘剤が互いに異なり、第1の増粘剤が合成増粘剤から、好ましくは合成pH-トリガー型増粘剤から選択され、第2の増粘剤が好ましくはカルボキシメチルセルロースであることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のコーティング構造体。
【請求項11】
前記プレコート層及び/又はトップコート層が、-OH又は-COOH基と反応する架橋剤を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のコーティング構造体。
【請求項12】
前記構造体が、2層以上のプレコート層と、該プレコート層の最も外側の層の上に塗布された1層のトップコート層とを備えることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のコーティング構造体。
【請求項13】
前記構造体が、トップコート層の上に塗布されたポリエチレンフィルムを備えることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載のコーティング構造体。
【請求項14】
前記プレコート層が、2~30g/m、好ましくは3~20g/m、より好ましくは5~15g/mの塗工量を有し、前記トップコート層が、0.5~20g/m、好ましくは0.5~15g/m、より好ましくは0.5~10g/mの塗工量を有することを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載のコーティング構造体。
【請求項15】
-リグノセルロース繊維を含み、平行な、第1及び第2の大表面を有する基材、及び
-該基材の大表面の少なくとも1つに塗布された請求項1~14のいずれか一項に記載のコーティング構造体
を含むことを特徴とするシート状製品。
【請求項16】
前記基材の坪量が25~800g/m、好ましくは30~700g/m、より好ましくは40~500g/mであることを特徴とする、請求項15に記載の製品。
【請求項17】
KIT試験値が少なくとも8、鉱油バリアHVTR値が100g/m/d未満(<)、及び/又は水蒸気バリアWVTR値が100g/m/d未満(<)であることを特徴とする、請求項15又は16に記載の製品。
【請求項18】
食品事業用パッケージを作製するための請求項15~17のいずれか一項に記載のシート状製品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、添付の独立請求項の前文に記載したコーティング構造体、シート状製品、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
紙又は板紙の表面には、その特性を改善するために様々なコーティング膜を施すことができる。特に、製品を包装する目的で使用する紙及び板紙にとっては、グリースバリア特性及び水蒸気バリア特性が重要である。紙又は板紙の表面に塗布するコーティングは、パッケージ内の商品からの漏れに対する効果的なバリアを実現し、及び/又はパッケージ商品を汚染から及び/又は周囲の大気との接触から保護するものでなければならない。食品及び飲用液(consumable liquids)に使用する包装材料の場合、かかるバリア要件は特に厳しい。
【0003】
包装目的に用いるコーティング膜は、折り目付け(creasing)及び折り畳み(folding)に対する耐性も優れている必要がある。そのコーティングは、紙又は板紙を折り畳んで箱にしたり、製品を包み込んだりしても、亀裂が入らないようなものでなければならない。亀裂が生じると、コーティングのバリア特性が低下するか、又は完全に破壊することさえある。
【0004】
さらに、紙及び板紙のコーティング膜は、製品を製造し及びコンバーティング加工する(converting)プロセスの間、ブロッキング(粘着:blocking)に対して抵抗性を示すものでなければならない。コーティング層が高圧及び高温下で軟化する場合には、巻き取ると、リール上の次の層に付着し、冷却するとリール全体がブロッキングする可能性がある。コンバーティング加工プロセス中、コーティングはその過程でスムーズに動作するために適切な摩擦特性を持つ必要がある。また、コーティングは、高速包装ラインで使用する目的のために、適切な接着性(glueability properties)も備えていることが必要である。その接着性が、コーティング表面へ接着剤を塗布することによって生じる結合の速度及び強度を決定するからである。
【0005】
もう1つの満足すべき側面として、パッケージのリサイクルの可能性がある。これは、紙及び板紙パッケージの場合、梱包した商品を消費した後、理想的にはリサイクル、つまり再パルプ化のために回収することを意味する。この場合、コーティング膜は、リサイクルするための要件をも満たす必要があり、例えば、再パルプ化プロセスを妨げるものであってはならない。紙又は板紙の表面にラミネートされている従来のプラスチックフィルムは、必ずしも容易に再パルプ化できるとは限らない。したがって、ラミネートされた紙及び板紙製品は、多くの場合、エネルギー浪費となり、資源の観点からは不経済である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一目的は、従来技術に存在する欠点を最小限にするか、又はさらには解消することである。
【0007】
本発明の別の目的は、グリース及び水蒸気に対する、良好なバリア特性を実現するコーティング構造体及びシート状製品を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、折り目を付けたとき、及び/又は折り畳んだときに、亀裂に耐えるコーティング構造体を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、高速塗工での塗工に適し、かつ、良好な操業性(runnability)を有するコーティング構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的は、独立請求項の特徴部分に提示した特徴を具備する本発明によって達成される。本発明の幾つかの好適な実施形態は従属請求項に提示する。
【0011】
本書で言及する実施形態は、適用可能な場合、たとえ別途言及しないときでも、本発明の全ての態様に関する。
【0012】
リグノセルロース繊維を含むシート状基材のための、本発明に係る典型的なコーティング構造体は、
-(a)安定剤の存在下で重合した、ガラス転移温度Tgが20℃以下(≦)、好ましくは10℃以下(≦)の第1のスチレン(メタ)アクリレート共重合体を少なくとも70質量%、
(b)カオリン又はタルクなどの無機板状鉱物粒子を30質量%未満(<)、及び
(c)少なくとも1種の第1の増粘剤を0.01~2質量%
含む、少なくとも1層のプレコート層、及び
-(a)安定剤の存在下で重合した、ガラス転移温度Tgが20℃以下(≦)、好ましくは10℃以下(≦)の第2のスチレン(メタ)アクリレート共重合体を少なくとも50質量%、
(b)無機鉱物粒子を30質量%以下(≦)、
(c)少なくとも1種の第2の増粘剤を0.01~5質量%、及び
(d)ブロッキング防止剤(粘着防止剤:antiblocking agent)を0.5~30質量%
含む、トップコート層、
を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る典型的なシート状製品は、
-リグノセルロース繊維を含み、平行な、第1及び第2の大表面を有する基材、及び
-基材の大表面の少なくとも1つに塗布された本発明に係るコーティング構造体
を含む。
【0014】
驚くべきことに、明確に定義したプレコート層と明確に定義したトップコート層とを備えた本発明に係るコーティング構造体は、そのコーティング構造体を塗布した基材がパッケージの製造中に折り畳みを受けた場合でも、亀裂に対する良好な耐性を実現するものであることが見出された。また、そのコーティング構造体は、グリース及び/又は湿気に対して優れたバリア性をもたらす。さらに、コーティング構造体の表面は、製品がロール状に巻き取られたり、又はシートとして積み重ねられたりするときでも、隣接するコーティング構造体の表面に付着しない。したがって、本発明に係るコーティング構造体は、とりわけ、包装及び同様の他の目的に最適な特性を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】折り目を付け、かつ、汚染した試料について視覚的結果を示す。
図2】折り目を付け、かつ、汚染した試料について視覚的結果を示す。
図3a】ロッド3を使用してプレコート層を、及び、ロッド0を使用してトップコート層を二重コートした、折り目付けし、折り畳み、汚染した試料(塗工量13.8g/m)に関し、その視覚的結果を示す。
図3b】折り目付けし折り畳んだ、同様の試料(塗工量13.8g/m)について、鶏脂グリースバリア試験の視覚的結果を示す。
図3c】ロッド3を使用して2層のプレコート層を、及び、ロッド0を使用してトップコート層を、三重コートした、折り目付けし、折り畳み、汚染した試料(塗工量15.9g/m)に関し、その視覚的結果を示す。
図3d】折り目付けし折り畳んだ、同様の試料(塗工量15.9g/m)について、鶏脂グリースバリア試験の視覚的結果を示す。
図4a】折り目を付け、折り畳み、かつ、汚染した試料(塗工量13.8g/m)について視覚的結果を示す。
図4b】折り目付けし折り畳んだ、その試料(塗工量13.8g/m)について、鶏脂グリースバリア試験の視覚的結果を示す。
図5a】折り目を付け、折り畳み、かつ、汚染した試料(塗工量12.5g/m)について視覚的結果を示す。
図5b】折り目付けし折り畳んだ、その試料(塗工量12.5g/m)について、鶏脂グリースバリア試験の視覚的結果を示す。
図6a】折り目を付け、折り畳み、かつ、汚染した試料についての視覚的結果を示す。
図6b】折り目付けし折り畳んだ、その試料について、鶏脂グリースバリア試験の視覚的結果を示す。
図7a】折り目を付け、折り畳み、かつ、汚染した試料について、その視覚的結果を示す。
図7b】折り目付けし折り畳んだ、その試料について、鶏脂グリースバリア試験の視覚的結果を示す。
図8a】折り目を付け、折り畳み、かつ、汚染した試料について視覚的結果を示す。
図8b】折り目付けし折り畳んだ、その試料について、鶏脂グリースバリア試験の視覚的結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本文脈において、コーティング層及びコーティング組成物中の各種成分について示す質量%の値の全ては、コーティング層又はコーティング組成物の総乾燥固形分から計算する。
【0017】
本発明に係るコーティング構造体は、少なくとも1層のプレコート層、及びトップコート層を備えている。プレコート層は、リグノセルロース繊維を含むシート状基材の表面に塗布する。幾つかの実施形態では、プレコート層を塗布する前に、シート状構造体の表面には、例えば疎水性表面サイズで表面サイズを行うことができるが、好ましいのは、プレコート層を、処理層が事前に存在しないシート状基材の表面に直接塗布することである。なお、基材は内添サイズを含むものであってもよい。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、コーティング構造体は、2層以上のプレコート層と、最も外側のプレコート層の上に塗布した1層のトップコート層とを含むことができる。個々のプレコート層は互いに異なっていても、又は、互いに同一であってもよい。複数のプレコート層を使用することで、コーティング構造体のバリア特性を調整することが可能となる。種々のプレコート層を使用することにより当該調整を行うことができ、及び/又は、より軽量化した個々のプレコート層を使用することが可能となる。
【0019】
一実施形態によれば、コーティング構造体は、1層又は複数のプレコート層と、少なくとも1層のトップコート層、好ましくは1層のトップコート層からなり、それにより、プレコート層又は最も外側のプレコート層とトップコート層とが相互に直接接触する。これは、プレコート層とトップコート層との間には他の層が全く存在しないことを意味する。最も外側のプレコート層とは、コーティング構造体が複数のプレコート層を含む場合には、基材から最も遠いプレコート層を指す。
【0020】
プレコート層は、安定剤の存在下で重合した、かつ、ガラス転移温度Tgが20℃以下(≦)、好ましくは10℃以下(≦)の第1のスチレン(メタ)アクリレート共重合体を少なくとも70質量%含む。本発明の一実施形態によれば、プレコート層は、第1のスチレン(メタ)アクリレート共重合体を70~99質量%、好ましくは70~95質量%、より好ましくは73~90質量%含むことができる。トップコート層は、安定剤の存在下で重合した、かつ、ガラス転移温度Tgが20℃以下(≦)、好ましくは10℃以下(≦)の第2のスチレン(メタ)アクリレート共重合体を少なくとも50質量%含む。本発明の一実施形態によれば、トップコート層は、第2のスチレン(メタ)アクリレート共重合体を50~99質量%、好ましくは60~95質量%、より好ましくは63~85質量%含むことができる。
【0021】
第1及び/又は第2のスチレン(メタ)アクリレート共重合体は、安定剤の存在下で、少なくともモノマー(a)、モノマー(b)及び任意のモノマー(c)のフリーラジカル乳化共重合によって得ることができる。モノマー(a)は、少なくとも1種の、任意に置換されたスチレンであり、モノマー(b)は、少なくとも1種のC~C-アルキル(メタ)アクリレートである。
【0022】
好ましい一実施形態によれば、第1及び/又は第2のスチレン(メタ)アクリレート共重合体のモノマー(a)は、スチレン、置換スチレン、例えば、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルトルエン、クロロメチルスチレン、及びそれらの何れかの混合物を含む群から選択される。モノマー(a)の量は、モノマー(a)、(b)、及び任意で(c)の総乾燥固形分から計算して、0.1~75質量%、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~55質量%である。
【0023】
第1及び/又は第2のスチレン(メタ)アクリレート共重合体の適切なモノマー(b)は、C~C-アルキルアクリレート;C~C-アルキルメタクリレート;又はそれらの混合物、例えばn-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル又は2-ブチルアクリレート、及び対応するブチルメタクリレート;メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート又はプロピルメタクリレートからなる群から選択することができる。本発明の好適な一実施形態によれば、モノマー(b)はブチル(メタ)アクリレートから選択される。当該モノマーは、例えば、少なくとも2つの異性体ブチルアクリレートの混合物を含むことができる。より好ましくは、モノマー成分(b)は、n-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、又はn-ブチルアクリレートとtert-ブチルアクリレートとの混合物である。モノマー(b)の量は、モノマー(a)、(b)及び任意の(c)の総乾燥固形分から計算して、25~99.9質量%、好ましくは30~95質量%、より好ましくは35~90質量%であることができる。
【0024】
一実施形態によれば、第1及び/又は第2のスチレン(メタ)アクリレート共重合体は、1種のモノマー(c)にも、少なくとも由来する。このモノマー(c)は、エチレン性不飽和で、かつ、モノマー(a)及び(b)とは異なる。第1及び/又は第2のスチレン(メタ)アクリレート共重合体は、カルボキシル化共重合体であることが好ましく、上記のモノマー(a)及び(b)を、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸又はスチレンスルホン酸などのカルボン酸から選択されるモノマー(c)と重合させることにより得たものであることが好ましい。アクリル酸及びスチレンスルホン酸が好適である。任意のモノマー(c)の量は、モノマー(a)、(b)及び(c)の総乾燥固形分から計算して、0.1~15質量%、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは1~5質量%であることができる。第1及び/又は第2のスチレン(メタ)アクリレート共重合体の両方がカルボキシル化共重合体であることがより好ましく、また、このカルボキシル化共重合体は1~5質量%のカルボン酸を含むモノマー混合物を重合することにより得ることが好ましい。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、第1及び第2のスチレン(メタ)アクリレート共重合体は、安定剤の存在下で重合されたものである。安定剤は、分解デンプン及びポリビニルアルコールを含む群から選択され、好ましくは平均分子量Mnが500~10000の分解デンプンである。分解デンプンは、デンプンを酸化的、熱的、酸性、加水分解的又は酵素的分解にさらすことにより得られる。現在のところ、酸化的分解が好適である。酸化剤としては、次亜塩素酸塩、ペルオキソ二硫酸塩、過酸化水素又はそれらの混合物を使用することができる。本発明で使用される分解デンプンは、ジャガイモ、米、トウモロコシ、ワキシーコーン、小麦、大麦又はタピオカデンプンなどの天然デンプンを分解したものの適切なものであればよい。アミロペクチン含有量が80%を超える(>)、好ましくは95%を超える(>)デンプンが有利である。
【0026】
第1及び第2のスチレン(メタ)アクリレート共重合体の重合は、安定剤水溶液に、上記で定義したモノマーを個別に又は混合物として加え、また、重合を開始するのに適したフリーラジカル開始剤を添加することにより実施することができる。重合プロセスは、典型的には、酸素の非存在下で、好ましくは不活性ガス雰囲気中、例えば窒素下で行われる。本発明の一実施形態によれば、反応混合物中のモノマーの総量は、反応混合物の総乾燥固形分から計算して、10~92質量%、好ましくは20~90質量%、より好ましくは35~88質量%である。ここで、各モノマーの量とは、重合プロセス中に反応混合物に添加されるモノマー(a)、(b)及び任意の(c)の総量(合計量)を指す。
【0027】
本発明の好ましい一実施形態によれば、プレコート層に使用される第1のスチレン(メタ)アクリレート共重合体とトップコート層に使用される第2のスチレン(メタ)アクリレート共重合体は互いに同一である。
【0028】
第1及び/又は第2のスチレン(メタ)アクリレート共重合体は、-40~+20℃、好ましくは-20~+10℃、より好ましくは-10~+10℃の範囲のガラス転移温度を有することができる。このガラス転移温度範囲が、要求されるバリア特性を示す共重合体を、しかも、基材に折り目を付けるとき、又は、基材を折り畳んでパッケージにするときでも亀裂に耐えるのに十分柔らかい共重合体を実現する。
【0029】
プレコート層は、無機板状鉱物粒子を含むことが好ましい。本文脈において、板状鉱物は、好ましくは、その粒子が10を超える(>)形状因子を有する無機鉱物として理解される。無機板状鉱物粒子の典型的な具体例としては、カオリン、タルク、及びそれらの混合物がある。プレコート層とトップコート層中の板状鉱物粒子は同じでも異なっていてもよいが、プレコート層とトップコート層中の板状鉱物粒子は同じであることが好ましい。板状の鉱物粒子は、コーティング構造体のバリア特性を改善することから、好適である。典型的には、プレコート層は、無機板状鉱物粒子を30質量%以下(≦)含む。一実施形態によれば、プレコート層は、無機板状鉱物粒子を0.1~30質量%、好ましくは5~25質量%、より好ましくは10~20質量%含むことができる。無機鉱物粒子の量としては、優れたバリア特性だけでなく、コスト削減をも実現することから、可能な限り多いことが好ましい。
【0030】
トップコート層は、例えば、板状鉱物粒子、多孔質シリカ粒子、カオリン粒子、重質炭酸カルシウム粒子、軽質炭酸カルシウム粒子、又はこれらの混合物などの、無機鉱物粒子を含む。トップコート層は、トップコート層のブロッキング防止特性(粘着防止特性:anti-blocking properties)を強化する無機鉱物粒子を含むことが好ましい。トップコート層中の無機鉱物粒子は、上記の板状鉱物粒子から、又は多孔質シリカ又はカオリン粒子から選択することが好ましい。典型的には、トップコート層は、無機鉱物粒子を30質量%以下(≦)、好ましくは≦20質量%以下(≦)含む。また、トップコート層は、無機鉱物粒子、好ましくは無機板状鉱物粒子を0.1~30質量%、好ましくは5~25質量%、より好ましくは5~20質量%含むことができる。
【0031】
プレコート層とトップコート層中の無機鉱物粒子は同じでも異なっていてもよい。
【0032】
プレコート層は少なくとも1種の第1の増粘剤を含み、トップコート層は少なくとも1種の第2の増粘剤を含む。第1及び/又は第2の増粘剤は、アルカリ可溶性/膨潤性エマルジョン(ASE)増粘剤及び疎水的修飾アルカリ可溶性エマルジョン(HASE)増粘剤などの合成pH-トリガー型増粘剤、ポリビニルアルコール、エチル化ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、グアーガム、又はアラビアゴムを含む群から選択することができる。増粘剤は、特に高速塗布での、コーティングカラーの操業性(runnability)を改善する。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、第1増粘剤及び第2の増粘剤は互いに異なっていてもよく、この場合、第1の増粘剤は、合成増粘剤から、好ましくは合成pH-トリガー型増粘剤から選択されることが好ましく、また、第2の増粘剤はカルボキシメチルセルロースであることが好ましい。
【0034】
プレコート層中の第1の増粘剤(複数の場合を含む)の量は、典型的には0.01~2質量%である。この量には、第1の増粘剤が数種ある場合、全ての増粘剤が含まれる。好ましい一実施形態によれば、プレコート層は、少なくとも1種の第1の増粘剤を0.1~2質量%、好ましくは0.1~1.5質量%、より好ましくは0.2~1質量%含む。
【0035】
トップコート層中の第2の増粘剤(複数の場合を含む)の量は、典型的には0.01~5質量%である。この量には、第1の増粘剤が数種ある場合、全ての増粘剤が含まれる。好ましい一実施形態によれば、トップコート層は、少なくとも1種の第2の増粘剤を0.1~5質量%、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.1~2質量%含む。
【0036】
トップコート層は、ブロッキング防止剤を0.5~30質量%、好ましくは1~30質量%、より好ましくは1~20質量%又は2~20質量%、さらにより好ましくは1~15質量%又は5~15質量%含むことができる。一実施形態によれば、トップコート層中のブロッキング防止剤は、アニオン性C16~C18アルケニルケテン二量体、パラフィンワックス、カラナウバワックス、ステアリン酸カルシウム、ポリグリセリド又は高密度ポリエチレンから選択することができる。
【0037】
トップコート層は、ブロッキング防止剤としてC16~C18アルケニルケテン二量体を0.5~30質量%含むことが好ましい。トップコート層中のアニオン性C16~C18アルケニルケテン二量体の量は、1~30質量%、好ましくは2~20質量%、より好ましくは5~15質量%であってよい。
【0038】
プレコート層及び/又はトップコート層は、-OH又は-COOH基と反応する架橋剤を含むことができる。適切な架橋剤の具体例としては、とりわけ、クエン酸、炭酸ジルコニウム、グリオキサール、尿素ホルムアルデヒド及びメラミンホルムアルデヒドがある。架橋剤は、例えば水との反応に利用できる末端基の数を減らすことにより、コーティング層の水に対する感受性を低下させる。また、架橋剤は、コーティング構造体の再パルプ化特性を改善することができる。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、コーティング構造体はポリエチレンフィルムを含むことができる。ポリエチレンフィルムはトップコート層上に適用される。ポリエチレンフィルムは、特に、コーティング構造体を液体包装用の基材の上に塗布する場合、バリア特性を改善するものである。
【0040】
本発明の別の実施形態によれば、コーティング構造体は、積層高分子フィルムの層を含まない。これにより、コーティング構造体の再パルプ化性が向上する。
【0041】
コーティング構造体は、プレコート層(複数の場合を含む)とトップコート層との組合せを変えることで、様々なコーティングの製造を可能とする。プレコート層及びトップコート層の塗工量は、所望の最終用途に応じて自由に選択することができる。本発明の一実施形態によれば、プレコート層(複数の場合を含む)は2~30g/m、好ましくは3~20g/m、より好ましくは5~15g/mの塗工量を有し、また、トップコート層は0.5~20g/m、好ましくは0.5~15g/m、より好ましくは0.5~10g/mの塗工量を有することができる。コーティング構造体が複数のプレコート層を含む場合には、所与の塗工量は、全てのプレコート層の合計塗工量を示す。
【0042】
コーティング構造体をコートする基材は、リグノセルロース繊維を含む基材であることが好ましい。リグノセルロース繊維は、化学的、機械的、化学機械的パルプ化プロセスを含め、従来のパルプ化プロセスによって得られたものであってもよい。また、リグノセルロース繊維はリサイクル繊維であってもよい。基材は、平行な、第1及び第2の大表面を有し、通常、エンドレスの繊維ウェブの形態にある。基材の坪量は25~800g/m、好ましくは30~700g/m、より好ましくは40~500g/mであることができる。
【0043】
コーティング構造体は、ロッドコーティング、ブレードコーティング、スプレーコーティング又はカーテンコーティングなどの任意の従来の塗工技術を使用することにより、基材の少なくとも1つの大表面の上に塗布される。
【0044】
好ましい一実施形態によれば、得られたコート(coated)製品は、少なくとも8、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも12のTAPPI 559 KIT(キット)試験値を有する。KIT(キット)試験値は、コーティングの油及びグリースに対する撥水性を評価するもので、その測定は標準TAPPIメソッドT-559pm-96に従って実施する。
【0045】
好ましい一実施形態によれば、得られたコート製品は100g/m/d(日)未満(<)の鉱油バリアHVTR値を有する。使用したヘキサン蒸気透過率(Hexane Vapour Transmission Rate)(HVTR)値は、BASF社が開発した試験方法を使用して得たものである。試験では、バリア試料で蓋をした測定用カップにヘキサンを入れ、既知の領域を通って出ていくヘキサンの蒸発を測定する。この試験方法は、通常、当業者に知られている。
【0046】
好ましい一実施形態によれば、得られたコート製品の、23℃及び50%相対湿度での、水蒸気バリアWVTR値は、100g/m/d未満(<)である。WVTR値は、ASTM F-1249、ISO15105-2、ISO15106-3、DIN53122-2の標準的な方法を使用して測定することができる。
【0047】
本製品は、食品事業用パッケージの作製又は液体包装に使用することができる。
【実施例
【0048】
実験例
参考試料1
リール間(reel-to-reel)コーティングを、セミパイロットコーターを使用して行った。130g/mのライナーボードを基材として使用した。塗工速度を10m/minとし、コーティングには20μmのロッド(rod)を使用した。使用したコーティングカラーは、Tg=20℃のスチレンアクリレートバインダー50%及びタルク顔料(Finntalc C15、以下に挙げる全ての例で使用)50%を含有するものであった。試料基材にそのコーティングカラーを二重コート(double coat)した。塗工量はオーブン内で決定した。
【0049】
次のバリア特性について試験を行った。採用した標準的な方法を括弧内に示した。
- 酸素、OTR(ASTM D3985、23℃50%RH;23℃80%RH)、
- 水蒸気、WVTR(ASTM E-96、D3985及びF1927、23℃50%RH)、
- 水、コッブ(Cobb)300秒(s)(ISO535、EN20535及びTAPPI T 441)、
- グリース及び油
・ KIT(キット)試験(TAPPI方法T-559 pm-96)
・ オリーブ油40℃(ISO16235-2及びTAPPI 507 cm-99)、5バール(bar)170時間(h)
【0050】
得られた結果を表2に示す。折り目を付け、かつ、汚染した(stained)試料について視覚的結果を図1に示す。
【0051】
参考試料2
リール間コーティングを、セミパイロットコーターを使用して行った。130g/mのライナーボードを基材として使用した。塗工速度を10m/minとし、コーティングには14μmのロッドを使用した。試料基材に、プレコート層及びトップコート層を塗工した。使用したプレコート及びトップコート用のコーティングカラーの組成を表1に示す。使用したコーティングカラーは、Tg=10℃のスチレンアクリレートバインダーを含有するものであった。
【0052】
【表1】
【0053】
得られた結果を表2に示す。折り目を付け、かつ、汚染した試料について視覚的結果を図2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
コーティング例3
基材として265g/mの折り畳み箱用板紙を使用した。まだコートされていない基材に、RK Kコントロールコーターロッドコーティング装置を使用して、1層又は2層のバリアプレコートを塗布した。二重コートする試料の場合、ワイヤ直径24μmの塗工ロッド(3)を使用してプレコートを塗布した。三重コート(triple-coated)する試料の場合、最初のプレコート層はワイヤ直径24μmの塗工ロッド(3)を使用して、2番目のプレコート層はワイヤ直径0.05μmの円滑ロッド(0)を使用して適用した。トップコートは0.05μmのワイヤ直径の円滑ロッド(0)を使用して塗布し、湿潤膜の厚さを4ミクロンとした。塗工速度を5に設定し、IR乾燥機を使用して60秒間乾燥を実施した。使用したコーティングカラーの組成を表3に示す。使用したコーティングカラーは、Tg=5℃のスチレンアクリレートバインダーを含有するものであった。
【0056】
【表3】
【0057】
プレコート用コーティングカラーのpHは、NaOHを使用して8.5に調整した。
【0058】
コートした試料に対して簡単なコンバーティング加工試験を行った。その試験は、折り目付け及び穿孔装置Cyklos CPM 450を使用する、試料に折り目を付ける過程、及びCobb-ローラーを使用して折り畳み、折り目を一定の圧力でプレスする過程を包含するものであった。折り目付けと折り畳みは、機械方向と横方向の両方で実施した。折り畳んだ試料に対して、エタノールに溶解したメチルレッドを使用して汚染試験を行った。Systech社製の浸透分析装置M7002機器を使用して、水蒸気バリア特性を測定した。また、ゆで(boiled)鶏脂を使用してグリースバリア特性について試験した。コートし折り畳んだFBB試料のバリアコーティングを施した面に脂肪を配置し、60℃のオーブンに60分間入れ、写真撮影してグリース浸透について評価を行った。
【0059】
ロッド3を使用してプレコート層を、及び、ロッド0を使用してトップコート層を二重コートした、折り目付けし、折り畳み、汚染した試料(塗工量13.8g/m)に関し、その視覚的結果を図3aに示す。また、折り目付けし折り畳んだ、同様の試料(塗工量13.8g/m)について、鶏脂グリースバリア試験の視覚的結果を図3bに示す。塗工量12.6の同様の試料について得られた測定結果を表4に示す。
【0060】
ロッド3及びロッド0を使用して2層のプレコート層を、また、ロッド0を使用してトップコート層をコートすることで三重コートを施した試料(塗工量15.9g/m)であって、折り目付けし、折り畳み、汚染したものの視覚的結果を図3cに示す。また、折り目付けし折り畳んだ、同様の試料(塗工量15.9g/m)について、鶏脂グリースバリア試験の視覚的結果を図3dに示す。
【0061】
【表4】
【0062】
コーティング例4
基材として265g/mの折り畳み箱用板紙を使用した。まだコートされていない基材に、RK Kコントロールコーターロッドコーティング装置及びワイヤ直径24μmの塗工ロッド(3)を使用して、バリア性プレコートを塗布した。また、トップコートを0.05μmのワイヤ直径の円滑ロッド(0)を使用して塗布し、湿潤膜の厚さを4ミクロンとした。塗工速度を5に設定し、IR乾燥機を使用して60秒間乾燥を実施した。使用したコーティングカラーの組成を表5に示す。使用したコーティングカラーは、Tg=5℃のスチレンアクリレートバインダーを含有するものであった。
【0063】
【表5】
【0064】
プレコート用コーティングカラーのpHは、NaOHを使用して8.5に調整した。
【0065】
各試料について、コーティング例3について説明したのと同じ方法で簡単なコンバーティング加工試験を行った。
【0066】
折り目を付け、折り畳み、かつ、汚染した試料(塗工量13.8g/m)について視覚的結果を図4aに示す。また、折り目付けし折り畳んだ、その試料(塗工量13.8g/m)について、鶏脂グリースバリア試験の視覚的結果を図4bに示す。塗工量11.1g/mの同様の試料について得られた測定結果を表6に示す。
【0067】
【表6】
【0068】
コーティング例5
基材として265g/mの折り畳み箱用板紙を使用した。まだコートされていない基材に、RK Kコントロールコーターロッドコーティング装置及びワイヤ直径24μmの塗工ロッド(3)を使用して、バリアプレコートを塗布した。また、トップコートを0.05μmのワイヤ直径の円滑ロッド(0)を使用して塗布し、湿潤膜の厚さを4ミクロンとした。塗工速度を5に設定し、IR乾燥機を使用して60秒間乾燥を実施した。使用したコーティングカラーの組成を表7に示す。使用したコーティングカラーは、Tg=5℃のスチレンアクリレートバインダーを含有するものであった。
【0069】
【表7】
【0070】
プレコート用コーティングカラーのpHは、NaOHを使用して8.5に調整した。
【0071】
各試料について、コーティング例3について説明したのと同じ方法で簡単なコンバーティング加工試験を行った。
【0072】
折り目を付け、折り畳み、かつ、汚染した試料(塗工量12.5g/m)について視覚的結果を図5aに示す。また、折り目付けし折り畳んだ、その試料(塗工量12.5g/m)について、鶏脂グリースバリア試験の視覚的結果を図5bに示す。塗工量10.6g/mの同様の試料について得られた測定結果を表8に示す。
【0073】
【表8】
【0074】
コーティング例6
基材として265g/mの折り畳み箱用板紙を使用した。まだコートされていない基材に、RK Kコントロールコーターロッドコーティング装置及びワイヤ直径24μmの塗工ロッド(3)を使用して、バリアプレコートを塗布した。また、トップコートを0.05μmのワイヤ直径の円滑ロッド(0)を使用して塗布し、湿潤膜の厚さを4ミクロンとした。塗工速度を5に設定し、IR乾燥機を使用して60秒間乾燥を実施した。使用したコーティングカラーの組成を表9に示す。使用したコーティングカラーは、Tg=5℃のスチレンアクリレートバインダーを含有するものであった。
【0075】
【表9】
【0076】
各試料について、コーティング例3について説明したのと同じ方法で簡単なコンバーティング加工試験を行った。
【0077】
折り目を付け、折り畳み、かつ、汚染した試料についての視覚的結果を図6aに示す。また、折り目付けし折り畳んだ、その試料について、鶏脂グリースバリア試験の視覚的結果を図6bに示す。同様の試料について得られた測定結果を表10に示す。
【0078】
【表10】
【0079】
コーティング例7
基材として235g/mの折り畳み箱用板紙を使用した。まだコートされていない基材に、RK Kコントロールコーターロッドコーティング装置及びワイヤ直径24μmの塗工ロッド(3)を使用して、バリアプレコートを塗布した。また、トップコートを0.05μmのワイヤ直径の円滑ロッド(0)を使用して塗布し、湿潤膜の厚さを4ミクロンとした。塗工速度を5に設定し、IR乾燥機を使用して60秒間乾燥を実施した。使用したコーティングカラーの組成を表11に示す。使用したコーティングカラーは、Tg=10℃のカルボキシル化スチレンアクリレートバインダーを含有するものであった。
【0080】
【表11】
【0081】
各試料について、コーティング例3について説明したのと同じ方法で簡単なコンバーティング加工試験を行った。
【0082】
折り目を付け、折り畳み、かつ、汚染した試料について、その視覚的結果を図7aに示す。また、折り目付けし折り畳んだ、その試料について、鶏脂グリースバリア試験の視覚的結果を図7bに示す。同じ試料について得られた測定結果を表12に示す。
【0083】
【表12】
【0084】
コーティング例8
基材として265g/mの折り畳み箱用板紙を使用した。まだコートされていない基材に、RK Kコントロールコーターロッドコーティング装置及びワイヤ直径24μmの塗工ロッド(3)を使用して、バリアプレコートを塗布した。また、トップコートを0.05μmのワイヤ直径の円滑ロッド(0)を使用して塗布し、湿潤膜の厚さを4ミクロンとした。塗工速度を5に設定し、IR乾燥機を使用して60秒間乾燥を実施した。使用した各コーティングカラーの組成を表13に示す。使用したコーティングカラーは、Tg=5℃のスチレンアクリレートバインダーを含有するものであった。
【0085】
【表13】
【0086】
各試料について、コーティング例3について説明したのと同じ方法で簡単なコンバーティング加工試験を行った。
【0087】
同じ試料について得られた測定結果を表14に示す。
【0088】
【表14】
【0089】
コーティング例9
基材として265g/mの折り畳み箱用板紙を使用した。まだコートされていない基材に、RK Kコントロールコーターロッドコーティング装置及びワイヤ直径24μmの塗工ロッド(3)を使用して、バリアプレコートを塗布した。また、トップコートを0.05μmのワイヤ直径の円滑ロッド(0)を使用して塗布し、湿潤膜の厚さを4ミクロンとした。塗工速度を5に設定し、IR乾燥機を使用して60秒間乾燥を実施した。使用した各コーティングカラーの組成を表15に示す。使用したコーティングカラーは、Tg=5℃のスチレンアクリレートバインダーを含有するものであった。
【0090】
【表15】
【0091】
各試料について、コーティング例3について説明したのと同じ方法で簡単なコンバーティング加工試験を行った。
【0092】
折り目を付け、折り畳み、かつ、汚染した試料について視覚的結果を図8aに示す。また、折り目付けし折り畳んだ、その試料について、鶏脂グリースバリア試験の視覚的結果を図8bに示す。同様の試料について得られた測定結果を表16に示す。
【0093】
【表16】
【0094】
繊維ベースのパッケージング用のバリアコーティングを開発するには、平坦な表面としてのコーティングの特性を見るだけでは十分ではない。バリアコーティングを施した製品は、コンバーティング加工プロセスを経るので、折り目付け及び折り畳み過程中にそのコーティングが損傷を受けず完全なままであるようにすることが重要である。上記の例によれば、良好なバリア特性を持つ参考試料であっても、バリアコーティングが折り目(fold)で割れ、平坦な試料として持っていたバリア特性を失うため、商業的に使用することができないことを示している。コーティング例3~9は、本発明に係る様々なコーティング配合物が良好なバリア性と良好なコンバーティング加工特性の組合せを実現することができることを示している。製品は二重又は多層コートすることができる。開示したコーティング構造体は、特別に改善されたグリース及び水蒸気バリア特性を実現するものである。
【0095】
本発明について、現時点で最も実用的で好適な実施形態であると思われるものについて説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではないと解釈すべきであり、また、本発明は、添付した特許請求の範囲に記載した範囲内で各種の変形例及び均等な技術解決手段を包含することを意図している。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b