(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】バンパー
(51)【国際特許分類】
B62D 35/02 20060101AFI20220519BHJP
B60R 19/48 20060101ALI20220519BHJP
B62D 35/00 20060101ALI20220519BHJP
B62D 37/02 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
B62D35/02
B60R19/48 P
B62D35/00 B
B62D37/02 Z
(21)【出願番号】P 2020002470
(22)【出願日】2020-01-09
【審査請求日】2020-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390005430
【氏名又は名称】株式会社ホンダアクセス
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩貝 僚
(72)【発明者】
【氏名】福田 正剛
(72)【発明者】
【氏名】湯沢 峰司
(72)【発明者】
【氏名】阿部 将寛
(72)【発明者】
【氏名】高田 淳
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-177848(JP,A)
【文献】特開2008-201156(JP,A)
【文献】特開2007-283810(JP,A)
【文献】特開2019-077334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 35/02
B60R 19/48
B62D 35/00
B62D 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方下部に設けられるバンパーであって、
前記バンパーの下部には、前記車両の前輪の車幅方向内側端部の延長線上の領域を含んで
略同形状の整流用突起
が車両幅方向に
複数並設
され、
前記整流用突起が、前記延長線の内側領域に前記延長線の外側領域よりも多く配置されていることを特徴とするバンパー。
【請求項2】
車両の前方下部に設けられるバンパーであって、
前記バンパーの下部に
は、前記車両の前輪の車幅方向内側端部の延長線上の領域を含んで
略同形状の整流用溝部
が車両幅方向に
複数並設
され、
前記整流用溝部が、前記延長線の内側領域に前記延長線の外側領域よりも多く配置されていることを特徴とするバンパー。
【請求項3】
前記バンパーは側面部を有し、前記側面部には、前記車両の前輪側面上方の前方に、車両前後方向の側面側整流用突起を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のバンパー。
【請求項4】
前記整流用突起が前記延長線と平行に延設されていることを特徴とする請求項1に記載のバンパー。
【請求項5】
隣り合う前記整流用突起の後端部間の間隔が略等しいことを特徴とする請求項1に記載のバンパー。
【請求項6】
前記整流用突起は先端部が尖った先鋭形状を有し、前記整流用突起の幅は後端部が最大となることを特徴とする請求項1に記載のバンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の下部に設けるバンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものとして、自動車の下部を覆うように配置されると共に車幅方向中央部を前後方向に延びる凹状のトンネル部が形成された床部材において空気流の流れをガイドする空気流ガイド構造であって、前記自動車の前方から前記床部材の下側に流入した空気流を後方へガイドするために前記床部材に沿って前後方向に延びるように形成され、後端部がフロントタイヤより後方で且つ前記自動車の側部と前記トンネル部との間に配置されるガイド壁を備えた空気流ガイド構造(例えば特許文献1)がある。
【0003】
前記空気流ガイド構造では、走行時における車両下部の空気抵抗の増加を抑制するために床部材の下側を流れる空気流の速度を均一化させることを目的としているが、タイヤハウスの影響については考慮されていなかった。
【0004】
また、フロントタイヤの車両前方位置にフロントディフレクタを設け、走行中、前部床下の周りを流れる走行風の流れを整える車両の前部床下構造において、前記フロントディフレクタは、前記フロントタイヤの直進状態タイヤ先端面の位置よりも車両前方位置であって、前記フロントタイヤの直進状態タイヤ内面の位置よりも車両センターラインに近い車幅方向内側位置に配置され、車両後方に向かう走行風の流れを、車両内方と車両外方の2方向に分岐する前方頂部と、前記前方頂部よりも車両後方位置であって、前記前方頂部よりも車幅方向内側位置に配置した内側端部と、前記前方頂部と前記内側端部とを接続するとともに前記内側端部の近傍部位において車幅方向内側に傾斜し、車両前方からの走行風を受けると、受けた走行風の流れを、車幅方向内側に向かう流れに整える第1整流面と、を有する車両の前部床下構造(例えば特許文献2)がある。
【0005】
前記車両の前部床下構造では、走行中、前部床下の周りを流れる走行風による空気抵抗を低減することで、所望の空力性能向上を実現することを目的としているが、タイヤハウスの影響については考慮されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-65445号公報
【文献】特許第5522254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高速走行時の車両安定性や応答性向上には揚力の前後バランスを最適化することが知られており、数値流体解析を用いた計算においては、タイヤ周りにおける圧力変動が高いことが証明されている。
【0008】
前記タイヤ周りにおいては、ブレーキ等の熱エネルギーも含め、回転物であるタイヤを含めた複雑な圧力が介在しており、発明者の研究に基づく新たな知見により、空気基本揚力特性を用い、乱流帯域を事前に整流させ、タイヤハウスの内部圧力変動を抑えることによって、揚力バランスの更なる向上を可能とした。
【0009】
図34は、走行時の車両下部の数値流体力学による解析結果を示す車両の底面図であり、車両前後方向と平行な走行風条件での直進走行に相当する。同図に示すように、自走式の車両1は左右の前輪2L,2Rと左右の後輪3L,3Rとを有し、これら前輪2L,2R及び後輪3L,3Rを収納する前後のタイヤハウス4,4,5,5が車両1の左右に設けられている。
【0010】
図34の車両1を取り巻く風の流れに示されるように、前輪2L,2R及び後輪3L,3Rのタイヤハウス4,4,5,5付近は圧力が高く、乱流の発生が確認される。この乱流は車体下部における風の流れがタイヤハウス4,4,5,5内にて滞留し、滞留した乱流が回転部であるタイヤのホイール開口部から放出されてると仮定し、以下の試験を行った。
【0011】
前記ホイール開口部を全面的にカバーで閉じ、実車走行により、操縦安定性の効果を確認したところ、4輪ともにホイール開口部を閉じた場合、高速直進性の向上が認められる場合があることかった。この効果は、各種車体形状により変化もあることから、CL値(揚力係数)の前後バランスの変化に寄与するものと思われる。
【0012】
また、比較のために、後部タイヤのみホイール開口部をカバーで閉じたものは、4輪ともに閉じたものに比べて、操縦安定性への寄与が低く、この結果から、主として前輪における乱流を低減することにより、操縦安定性を高めることできることが実車走行により分かった。また、後部タイヤのホイールに設けるカバーは、ブレーキ等の熱害にて全面を閉じることは困難であり、別手法を用いた実走行にて検証を行った結果、本発明に至った。
【0013】
そこで、本発明は上記した課題に鑑み、車両の操安性を向上することができるバンパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、車両の前方下部に設けられるバンパーであって、前記バンパーの下部には、前記車両の前輪の車幅方向内側端部の延長線上の領域を含んで略同形状の整流用突起が車両幅方向に複数並設され、前記整流用突起が、前記延長線の内側領域に前記延長線の外側領域よりも多く配置されていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項2に係る発明は、車両の前方下部に設けられるバンパーであって、前記バンパーの下部には、前記車両の前輪の車幅方向内側端部の延長線上の領域を含んで略同形状の整流用溝部が車両幅方向に複数並設され、前記整流用溝部が、前記延長線の内側領域に前記延長線の外側領域よりも多く配置されていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項3に係る発明は、前記バンパーは側面部を有し、前記側面部には、前記車両の前輪側面上方の前方に、車両前後方向の側面側整流用突起を設けたことを特徴とする。
【0017】
また、請求項4に係る発明は、前記整流用突起が前記延長線と平行に延設されていることを特徴とする。
【0018】
また、請求項5に係る発明は、隣り合う前記整流用突起の後端部間の間隔が略等しいことを特徴とする。
【0019】
また、請求項6に係る発明は、前記整流用突起は先端部が尖った先鋭形状を有し、前記整流用突起の幅は後端部が最大となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の構成によれば、前輪周りでの乱流の発生を抑えて、車両安定性を高めることができる。
【0021】
請求項2の構成によれば、前輪周りでの乱流の発生を抑えて、車両安定性を高めることができる。
【0022】
請求項3の構成によれば、前輪の車幅方向外側の乱流が整流され、車両安定性を高めることができる。
【0023】
請求項4の構成によれば、空気を直線的に整流することができる。
【0024】
請求項5の構成によれば、隣り合う整流用突起の間を通過する空気を略均一に整流することができる。
【0025】
請求項6の構成によれば、整流用突起の空気抵抗が少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施例1を示すバンパーの斜視図である。
【
図12】同上、車両前側下部を説明する側面図である。
【
図14】
車両下部を流れる走行風の流れを示す従来例の走行風流れ図である。
【
図15】同上、車両下部を流れる走行風の流れを示す走行風流れ図であって、速度分布を示し、
図15(A)は従来例、
図15(B)は実施例を示す。
【
図16】同上、車両下部を流れる走行風に流れを示す走行風流れ図であり、
図16(A)は比較例、
図16(B)は実施例を示す。
【
図18】本発明の実施例2を示すバンパーの斜視図である。
【
図31】同上、バンパーの要部の拡大底面図である。
【
図32】本発明の実施例3を示す車両下部側の正面図である。
【
図34】従来例の車両下部を流れる走行風に流れを示す走行風流れ図であり、直進走行の場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明のバンパーの実施例について説明する。
【実施例1】
【0028】
図1~
図13及び図15~図17は本発明の実施例1を示し、同図に示すように、自走式の車両1は左右の前輪2L,2Rと左右の後輪3L,3Rとを有し、これら前輪2L,2R及び後輪3L,3Rを収納する前後のタイヤハウス4,4,5,5が車両1の左右に設けられている
。
【0029】
前記車両1の前部には、フロント樹脂部材たるフロントバンパー7が設けられ、このフロントバンパー7は、樹脂を金型で成形してなる。また、前記フロントバンパー7には、ラジエータ等を冷却するために外気を車両1の内部に流入させる開口部8が設けられている。
【0030】
前記フロントバンパー7は、バンパー前面11と、前記バンパー前面11の左右端部に設けられるバンパー側面13,13と、前記バンパー前面11及びバンパー側面13の下部に設けられたバンパー底面14とを一体に有する。
【0031】
図5などに示すように、前記バンパー前面11は、左右方向に長く形成されたバンパー前面中央部17と、このバンパー前面中央部17の車幅方向端部と前記バンパー側面13,13とを連結するバンパー前面傾斜部18,18とを一体に有し、前記バンパー前面中央部17の高さ方向中央に前記開口部8が形成されている。
【0032】
そして、前記バンパー前面中央部17は、前記開口部8の上部分のバンパー前面中央上部17Uと、前記開口部8の下部分のバンパー前面中央下部17Sとからなる。
【0033】
また、
図3などに示すように、前記バンパー前面中央上部17Uの前面及びバンパー前面中央下部17Sの前面は、車両前後方向に対して直交する車幅方向で直線状又は曲率半径の大きな湾曲状に形成されており、前記バンパー前面中央上部17U及びバンパー前面中央下部17Sの端部と、前記バンパー前面傾斜部18,18との間に、屈曲箇所19U,19U,19S,19Sが設けられ、それらバンパー前面傾斜部18,18は車幅方向外側に後側になるように傾斜している。
【0034】
バンパー前面中央上部17Uの屈曲箇所19U,19Uの位置に対して、車幅方向外側に前記バンパー前面中央下部17Sの屈曲箇所19S,19Sが設けられている。また、
図1に示すように、左右の屈曲箇所19S,19Sは、前記タイヤハウス4,4の内壁面4N,4Nの車両前後方向の前方位置に設けられ、屈曲箇所19Sと内壁面4Nとが車両前後方向に略並んで配置されている。
【0035】
前記バンパー前面中央下部17Sの下部に、前記バンパー底面14の前側が連続して設けられ、前記バンパー前面中央下部17S,バンパー前面傾斜部18及びバンパー側面13と、前記バンパー底面14との間に凸状の湾曲部14Wが設けられている。
【0036】
前記両側のバンパー前面傾斜部18,18には、フォグランプ21を取り付けるための開口部であるフォグランプ開口部22が形成され、このフォグランプ開口部22にフォグランプ21が取り付けられている。
【0037】
前記バンパー側面13は、その後上端部に、後方側に位置するフェンダ23(
図1)と連結する連結部13Bが形成されており、その連結部13Bをフェンダ23に連結して、車両1に支持されている。また、前記バンパー側面13の後端には、前輪2L,2Rのタイヤハウス4,4の前側の一部を形成する後縁部13Aが設けられている。
【0038】
図15及び
図16に示すように、前記フロントバンパー7のバンパー底面14は、車両1の下部の床部材24の前縁に連続して配置され、前記バンパー底面14の下面と床部材24の前縁側下面とが面一で連続する。前記床部材24は車幅方向に渡るように配置され、略平坦な形状、即ちタイヤハウス4,5を除いて急激な凹凸を抑制して緩やかに湾曲するように形成されている。この場合、床部材24は1枚ものでもよいし、複数枚を連続して配置したもので構成してもよい。
【0039】
図3及び
図4などに示すように、前記バンパー底面14の後縁部20は、車幅方向中央の後縁中央部20Aと、この後縁中央部20Aの車幅方向外側の両側に設けられた斜めの後縁傾斜部20B,20Bを備える。前記後縁中央部20Aは車幅方向で直線状に形成され、両側の前記後縁傾斜部20B,20Bは、車幅方向外側に向かって後ろ向き斜めに形成されると共に、前記後縁傾斜部20B,20Bには、複数の段差部20C,20C・・・が形成されている。
【0040】
図12及び
図13に示すように、前輪2L,2R及び後輪3L,3Rは、アルミニウム合金などからなるホイール25と、このホイール25に装着したタイヤ26とを備え、前記ホイール25の中心に、前記車両1の車軸(図示せず)が接合される。
【0041】
前記ホイール25は、外周部であるリム部27と、中心部であるハブ部28と、リム部27とハブ部28とを連結する複数のスポーク部29,29・・・と、これらスポーク部29,29・・・の間に設けた開口部30とを有している。
【0042】
図6~
図9などに示すように、前記フロントバンパーの下部たる前記バンパー底面14の下面には、前記前輪2L,2Rの前方に整流用突起31が車両幅方向に間隔を置いて複数(7個)並設されている。前記整流用突起31は、車両1の前方に向かって先端部32が尖った先鋭な砲弾形の形状をなし、先端部32は湾曲状をなし、外周面33は曲面状で車両幅方向の断面形状は半円形をなす。また、
図6に示すように、先端部32側が車両後方に向かってバンパー底面14の下面から離れるように斜めに形成されている。尚、整流用突起31はフロントバンパー7に一体成型されている。
【0043】
前記整流用突起31は、車両前後方向の後端部34で車両幅方向の断面形状が最大となり、前記後端部34における整流用突起31の突起幅と、隣合う整流用突起31,31の前記後端部34,34間の突起間隔が略等しく、前記突起幅は前記突起間隔の0.8~1.2倍程度である。尚、後端部34における突起幅より、整流用突起31は前後方向に長く形成されているが、その長さは150mm以下である。
【0044】
また、
図9などに示すように、複数の整流用突起31,31・・・は、車両幅方向中央側から車両幅方向外側に向かって位置が後になるように湾曲状に並び、前記延長線36上の領域を含み、車幅方向内側に向かって、車両前方を尖らせた砲弾形の突起31を車両幅方向一列に配置している。且つ、
図6に示すように、幅方向に隣り合う整流用突起31,31・・・は前後方向において隙間なく重複するように配置されているから、気流の直進性を確保した整流効果が得られる。
【0045】
さらに、
図9に示すように、前輪2L,2Rを直線走行時の車両1の前後方向に向けた状態で、前輪2Rの車幅方向内側端部2Tの延長線36上の領域に跨って複数の前記整流用突起31,31・・・が配置されており、延長線36の車両幅方向中央側が内側領域36Nであり、延長線36の車両幅方向外側が外側領域36Sである。尚、延長線36は前輪2Rの車両幅方向内面の延長線である。この例では、延長線36は、車幅方向外側から2個目と3個目の間に位置し、外側領域36Sに2個の整流用突起31が配置され、内側領域36Nに5個の整流用突起31が配置されている。尚、
図11に示す整流用突起31の配置の変形例では、外側領域36Sに1個の整流用突起31を設けているが、
図9のように外側領域36Sに複数の整流用突起31を設けることが好ましい。
【0046】
そして、内側領域36Nの複数の整流用突起31は、前記タイヤハウス4の前記内側端部2Tより車幅方向中央側の部分に前方に位置し、前記外側領域36Sの整流用突起31は、前記内側端部2Tから前輪2L,2Rの幅の3分の1以下、好ましくは4分の1以下の幅Wの範囲に配置されている。このようにすることにより、整流した気流を不用意に前輪2L,2Rに直接当てることなく、端部2Tの内側のタイヤハウス4内に送ることができる。
【0047】
また、図中、51は側面側整流用突起であり、後述する実施例3で詳述する。
【0048】
図14~
図16は走行時の車両下部の数値流体力学による解析結果を示し、
図14,
図15(A)及び
図16(A)は
図15(B)及び
図16(B)は実施例である。比較例の
図15(A)に比べて実施例15(B)では、前輪2L,2Rの外側に速度に低い低速領域Lが発生している。このように低速領域Lが発生するのは、走行によりタイヤハウス4内で発生した乱流が車両1の幅方向外側に排出されるためである。
【0049】
これについて
図11を用いて説明すると、同図において、下側の細い矢印は整流用突起31のない場合の通常の空気の流れを示し、整流されることなく、タイヤハウス4内に入り、乱流となる。これに対して、
図11の上側の太い矢印に示すように、複数の整流用突起31により気流が整流され、この整流された流れがタイヤハウス4内に入り、内部の乱流を外側へと排出することができる。このように前輪2L,2R周りの乱流の発生を抑制することにより、走行性及び操舵性が向上する。
【0050】
また、整流用突起31により、流れを纏められつつ分散を行うことで、整流された気流がタイヤハウス4内の端部2Tより内側に流れ、これによりタイヤハウス4内の乱流がタイヤハウス4の車幅方向外側に排出され、サスストロークの動きの妨げとなっていたタイヤハウス4内の圧力を変化させ、これによりサスストロークがスムーズに動き、走行性が向上する。
【0051】
このように本実施例では、請求項1に対応して、車両1の前方下部に設けられるバンパーたるフロントバンパー7であって、フロントバンパー7の下部には、車両1の前輪2L,2Rの車幅方向内側端部2Tの延長線36上の領域に跨って車両前後方向の整流用突起31を車両幅方向に並設したから、前輪2L,2R周りでの乱流の発生を抑えて、車両安定性を高めることができる。
【0052】
以下、実施例上の効果として、前記整流用突起31は、車両1の前方に向かって先端部32が尖った先鋭な砲弾形の形状をなし、先端部32は湾曲状をなし、外周面33は曲面状で車両幅方向の断面形状は半円形をなすから、空気抵抗が少なく、所望の整流効果を得ることができる。また、前記後端部34における整流用突起31の突起幅と、隣合う整流用突起31,31の前記後端部34,34間の突起間隔が略等しく、前記突起幅は前記突起間隔の0.8~1.2倍程度であるから、気流を纏めて分散する整流効果に優れ、その流れによりタイヤハウス4内に滞留する乱流を効果的に排出することができる。さらに、外側領域36Sに少なくとも1個以上、好ましくは複数(2個)の整流用突起31が配置され、内側領域36Nに外側領域36Sより多い複数(5個)の整流用突起31が配置されているから、前輪2L,2Rの端部2T及びこの端部2Tより車幅方向内側のタイヤハウス4内に整流した気流を流し、内部の乱流を車幅方向外側へと効果的に排出することができる。
【実施例2】
【0053】
図18~
図31は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。同図に示すように、この例のフロントバンパー7は、前記バンパー前面11の上部にバンパー上面12を一体に有し、フロントバンパー7の中央において後方に向かって拡大するように形成されている。また、車両1のエンジンフード(図示せず)を閉めた状態で、このエンジンフードの前端縁に前記バンパー上面12の後縁12Fが係合する。
【0054】
また、この例のフロントバンパー7では、左右のバンパー側面13,13は間隔が後方に向かって拡大するように斜めに形成され、さらに、前記フォグランプ開口部22は設けられていない。
【0055】
前記バンパー底面14の後縁である後縁傾斜部20Bには、下面側の突出した突条部42を形成し、この突条部42には前記前輪2L,2Rの前方に整流用溝部41が車両幅方向に間隔を置いて複数(6個)並設され、隣り合う整流用溝部41の間隔は等間隔である。前記整流用溝部41は、突条部42を略半円形に凹ませたものである。また、整流用溝部41の底部の高さはバンパー底面14の下面と略同一である。尚、整流用溝部41の車両前後方向の長さは50mm以下である。
【0056】
この例では、延長線36は、車幅方向外側から1個目と2個目の間に位置し、外側領域36Sに1個の整流用溝部41が配置され、内側領域36Nに5個の整流用溝部41が配置されている。尚、実施例1と同様に、外側領域36Sに複数個数(2個)の整流用溝部41を設け、外側領域36Sに複数(4個)の整流用溝部41を設けることが好ましい。
【0057】
尚、図中45は、バンパー底面14と床部材24(
図25)を連結するための連結具であり、この連結具45はバンパー底面14に取り付けられている。
【0058】
このように本実施例では、請求項2に対応して、車両1の前方下部に設けられるバンパーたるフロントバンパー7であって、フロントバンパー7の下部には、車両1の前輪2L,2Rの車幅方向内側端部2Tの延長線36上の領域に跨って車両前後方向の整流用溝部41を車両幅方向に並設したから、前輪2L,2R周りでの乱流の発生を抑えて、車両安定性を高めることができる。
【0059】
以下、実施例上の効果として、下面側の突出した突条部42を形成し、この突条部42には前記前輪2L,2Rの前方に整流用溝部41が車両幅方向に間隔を置いて複数(6個)並設したから、整流用溝部41の間は下方に突出した部分となり、整流用溝部41を流れた整流された気流がタイヤハウス4内へと流れる。また、外側領域36Sに1個の整流用溝部41が配置され、内側領域36Nに外側領域36Sより多い複数(5個)の整流用突起31を配置したから、実施例1と同様な作用・効果を奏する。
【実施例3】
【0060】
図32~
図33は本発明の実施例3を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。同図に示すように、この例のフロントバンパー7は、バンパー側面13の外面に側面側整流用突起51を突出して設けたものである。
【0061】
前記側面側整流用突起51は、
図5にも示すように、先端部52が先鋭に形成され、先端部52の後に一体に設けた基端部53が後方に向かって上下幅が縮小するように形成され、基端部53の後端縁部54はバンパー側面13の外面と面一に形成されている。
【0062】
図33に示すように、側面側整流用突起51は、前輪2L,2Rの側面のハブ部28の
高さ位置より上方に配置されている。この場合、前輪2L,2Rの側面の上部でハブ部28とリム部27の間の高さ位置に側面側整流用突起51を配置することが好ましい。特に、
図33に示すように、開口部30の上部側の高さ位置に側面側整流用突起51を配置することが好ましい。
【0063】
この場合、側面側整流用突起51が
図33のように、ホイール25の開口部30の上部側位置では、高速直進走行安定性が見られ、旋回性能が大幅にアップし、特に、不整地における旋回時における直進性が向上し、また、不整地における旋回時のグリップ変化が低減された。これは
図34で示したタイヤハウス4,4の車両方向外側の乱流を側面側整流用突起51により整流することにより得られた効果である。
【0064】
次に、ホイール25の中心のハブ部28の高さ位置(高さ方向中央の矢印位置)に側面側整流用突起51を配置した場合、特に効果は得られなかった。また、ホイール25の開口部30の下部側の高さ位置(高さ方向下部の矢印位置)では、実施例に比べて、高速直進安定性の効果が下がる。尚、旋回性能の向上が見られたが、路面がフラットである場合に限り、不整地におけるグリップ変化低減効果はなかった。
【0065】
このように本実施例では、請求項3に対応して、バンパーたるフロントバンパー7は側面部たるバンパー側面13を有し、バンパー側面13には、車両1の前輪2L,2R側面上方の前方に、車両前後方向の側面側整流用突起51を設けたから、前輪2L,2Rの車幅方向外側の乱流が整流され、車両安定性を高めることができる。
【0066】
また、実施例上の効果として、側面側整流突起51の高さ方向中央が、ホイール25の上部側に位置するから、路面及びハブ部28の影響を受けることなく、開口部30やタイヤ26の外周とタイヤハウス4の隙間から流れてた乱流を効果的に整流することができる。
【0067】
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、整流用突起,整流用溝部及び側面側整流用突起の形状は実施例に限定されず、適宜選定可能であるが、幅よりも長さ方向が長い方が好ましい。また、整流用突起,整流用溝部及び側面側整流用突起の長さや高さは実施例に限定されず、適宜選定可能である。さらに、実施例では、整流用突起及び側面側整流用突起をフロントバンパーに一体成形したが、別体の整流用突起及び側面側整流用突起をフロントバンパーにネジなどの取付手段により取り付けてもよい。また、実施例2のバンパーに側面側整流用突起を設けてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 自走式車両(車両)
2L,2R 前輪
7 フロントバンパー(バンパー)
13 バンパー側面(側面部)
14 バンパー底面(バンパーの下部)
31 整流用突起
32 先端部
34 後端部
36 延長線
36N 内側領域
36S 外側領域
41 整流用溝部
51 側面側整流用突起