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特許7075965欠陥検査システム、欠陥検査方法及び航空機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】欠陥検査システム、欠陥検査方法及び航空機
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/30 20060101AFI20220519BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20220519BHJP
   G01J 5/08 20220101ALI20220519BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20220519BHJP
   B64F 5/60 20170101ALI20220519BHJP
【FI】
G01B11/30 A
G01N21/88 Z
G01J5/08
G01J5/48 D
B64F5/60
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020116262
(22)【出願日】2020-07-06
(65)【公開番号】P2022014102
(43)【公開日】2022-01-19
【審査請求日】2020-07-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、防衛省、役務請負契約、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(73)【特許権者】
【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛装備庁長官
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136504
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】中野 拓也
(72)【発明者】
【氏名】安部 雅勝
(72)【発明者】
【氏名】吉村 健佑
(72)【発明者】
【氏名】内藤 佑貴
(72)【発明者】
【氏名】林 利光
(72)【発明者】
【氏名】菅野 恭広
(72)【発明者】
【氏名】藤原 誠
(72)【発明者】
【氏名】木下 遼太
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-54343(JP,A)
【文献】特開平5-45116(JP,A)
【文献】特開2011-226797(JP,A)
【文献】特開2001-50782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01N 21/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材及び金属の少なくとも一方からなる航空機構造体における検査対象エリアに亀裂が生じたか否かを判定する欠陥検査システムであって、
波長が380nmから780nmの可視光を出射する光源と、
前記検査対象エリアに配置され、ポリマー光導波路又はミクロンオーダの太さを有する光ファイバからなる前記可視光の光路とを有し、
前記検査対象エリアに亀裂が生じているか否かを判定するために、前記光路に光検出器が接続されずに用いられ、
前記検査対象エリアに亀裂が生じた場合に前記亀裂が生じた位置において前記光路が屈曲し、前記光路の屈曲に起因して前記光路から漏れる可視光の光量が検査員の目視又は光学カメラの撮影で判定できる程度まで増加するという現象を利用して前記検査対象エリアに亀裂が生じているか否かを判定できるようにした欠陥検査システム。
【請求項2】
複合材及び金属の少なくとも一方からなる構造体における欠陥の検査対象エリアに配置される光路と、
前記光路の一端に接続され、前記光路に光を出射する光源と、
前記光路の別の端部に接続された反射鏡と、
を有し、
前記検査対象エリアに欠陥が生じているか否かを判定するために、前記光路に光検出器が接続されずに用いられる欠陥検査システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の欠陥検査システムを設けた航空機。
【請求項4】
請求項1又は2記載の欠陥検査システムを用いて前記検査対象エリアに亀裂が生じているか否かを判定する欠陥検査方法。
【請求項5】
複合材及び金属の少なくとも一方からなる航空機構造体における検査対象エリアに亀裂が生じたか否かを判定する欠陥検査方法において、
前記検査対象エリアに配置され、ポリマー光導波路又はミクロンオーダの太さを有する光ファイバからなる光路に波長が380nmから780nmの可視光を出射するステップと、
前記検査対象エリアに亀裂が生じた場合に前記亀裂が生じた位置において前記光路が屈曲し、前記光路の屈曲に起因して前記可視光の伝播中において前記光路から漏れる可視光の光量が検査員の目視又は光学カメラの撮影で判定できる程度まで増加するという現象を利用して前記検査対象エリアに亀裂が生じているか否かを、前記光路の端部に光検出器を連結せずに検査員の目視又は光学カメラの撮影で判定するステップと、
を有する欠陥検査方法。
【請求項6】
複合材及び金属の少なくとも一方からなる構造体における欠陥の検査対象エリアに配置された光路の一端に光源を接続する一方、前記光路の別の端部に反射鏡を接続し、前記光源から前記光路に光を出射するステップと、
前記検査対象エリアに欠陥が生じた場合に前記欠陥が生じた位置において前記光路が屈曲し、前記光路の屈曲に起因して前記光の伝播中において前記光路から漏れる可視光の光量又は前記光路から放射される赤外線量が増加することを利用して前記検査対象エリアに欠陥が生じているか否かを前記光路の端部に光検出器を連結せずに判定するステップと、
を有する欠陥検査方法。
【請求項7】
前記航空機構造体を備えた航空機の飛行中には前記光路を光学カメラで撮影して得られる画像に基づいて前記検査対象エリアに亀裂が生じているか否かを判定する一方、前記航空機が飛行していない場合には前記光路を光学カメラで撮影して得られる画像に基づいて、若しくは前記光路から漏れる可視光を目視することによって前記検査対象エリアに亀裂が生じているか否かを判定する請求項記載の欠陥検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、欠陥検査システム、欠陥検査方法及び航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体の非破壊検査(NDI:Non Destructive Inspection)として、過流探傷検査(ET:Eddy Current Testing)、超音波探傷検査(UT:Ultrasonic Testing)、浸透探傷検査(PT:Penetrant Testing)等が知られている。また、近年では光ファイバセンサを用いた探傷検査法も知られている(例えば特許文献1乃至4参照)。
【0003】
光ファイバセンサを用いた検査法の具体例としては、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastics)や炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)等の樹脂を繊維で強化した繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)である複合材に光ファイバを埋め込んで損傷や破損の位置を検出する技術も提案されている(例えば特許文献5及び6参照)。また、複合材において発生し得るリンクル(繊維の皺)等の異常を、赤外線サーモグラフィを撮影することによって評価するNDIも提案されている(例えば特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-146746号公報
【文献】特開2005-321223号公報
【文献】特開2005-208000号公報
【文献】特開昭61-155802号公報
【文献】特開平09-273906号公報
【文献】特開平08-054343号公報
【文献】特開2017-129560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、構造体の欠陥を非破壊で簡易に検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る欠陥検査システムは、複合材及び金属の少なくとも一方からなる航空機構造体における検査対象エリアに亀裂が生じたか否かを判定する欠陥検査システムであって、波長が380nmから780nmの可視光を出射する光源と、前記検査対象エリアに配置され、ポリマー光導波路又はミクロンオーダの太さを有する光ファイバからなる前記可視光の光路とを有し、前記検査対象エリアに亀裂が生じているか否かを判定するために、前記光路に光検出器が接続されずに用いられ、前記検査対象エリアに亀裂が生じた場合に前記亀裂が生じた位置において前記光路が屈曲し、前記光路の屈曲に起因して前記光路から漏れる可視光の光量が検査員の目視又は光学カメラの撮影で判定できる程度まで増加するという現象を利用して前記検査対象エリアに亀裂が生じているか否かを判定できるようにしたものである。
また、本発明の実施形態に係る欠陥検査システムは、複合材及び金属の少なくとも一方からなる構造体における欠陥の検査対象エリアに配置される光路と、前記光路の一端に接続され、前記光路に光を出射する光源と、前記光路の別の端部に接続された反射鏡とを有し、前記検査対象エリアに欠陥が生じているか否かを判定するために、前記光路に光検出器が接続されずに用いられるものである。
【0007】
また、本発明の実施形態に係る航空機は、上述した欠陥検査システムを設けたものである。
【0008】
また、本発明の実施形態に係る欠陥検査方法は、上述した欠陥検査システムを用いて前記検査対象エリアに欠陥が生じているか否かを判定するものである。
【0009】
また、本発明の実施形態に係る欠陥検査方法は、複合材及び金属の少なくとも一方からなる航空機構造体における検査対象エリアに亀裂が生じたか否かを判定する欠陥検査方法において、前記検査対象エリアに配置され、ポリマー光導波路又はミクロンオーダの太さを有する光ファイバからなる光路に波長が380nmから780nmの可視光を出射するステップと、前記検査対象エリアに亀裂が生じた場合に前記亀裂が生じた位置において前記光路が屈曲し、前記光路の屈曲に起因して前記可視光の伝播中において前記光路から漏れる可視光の光量が検査員の目視又は光学カメラの撮影で判定できる程度まで増加するという現象を利用して前記検査対象エリアに亀裂が生じているか否かを、前記光路の端部に光検出器を連結せずに検査員の目視又は光学カメラの撮影で判定するステップとを有するものである。
また、本発明の実施形態に係る欠陥検査方法は、複合材及び金属の少なくとも一方からなる構造体における欠陥の検査対象エリアに配置された光路の一端に光源を接続する一方、前記光路の別の端部に反射鏡を接続し、前記光源から前記光路に光を出射するステップと、前記検査対象エリアに欠陥が生じた場合に前記欠陥が生じた位置において前記光路が屈曲し、前記光路の屈曲に起因して前記光の伝播中において前記光路から漏れる可視光の光量又は前記光路から放射される赤外線量が増加することを利用して前記検査対象エリアに欠陥が生じているか否かを前記光路の端部に光検出器を連結せずに判定するステップとを有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る欠陥検査システムの構成図。
図2図1に示す光路の配置例を示す図。
図3図1に示す構造体に亀裂が生じた場合における光路の状態を示す断面図。
図4図1に示す光路の別の配置例を示す図。
図5】本発明の第2の実施形態に係る欠陥検査システムの構成図。
図6図5に示す光路の別の配置例を示す図。
図7】本発明の第3の実施形態に係る欠陥検査システムの構成図。
図8図7に示す光路の別の配置例を示す図。
図9】(A)、(B)、(C)は図7に示すように四角形の格子状に複数の光路を配置した構造体に複数の欠陥が生じた場合の例を示す図。
図10】本発明の第4の実施形態に係る欠陥検査システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る欠陥検査システム、欠陥検査方法及び航空機について添付図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
(構成及び機能)
図1は本発明の第1の実施形態に係る欠陥検査システムの構成図である。
【0013】
欠陥検査システム1は、亀裂、損傷或いは剥離等の欠陥の有無を検査するためのシステムである。任意の構造体2を欠陥検査システム1による欠陥の検査対象とすることができる。例えば、航空機を構成する構造体2が欠陥の検査対象である場合には、欠陥検査システム1を航空機に設けることができる。すなわち、欠陥の検査対象エリアを航空機構造体に設定し、航空機構造体に欠陥が生じたか否かを判定することができる。構造体2の材質についても任意である。例えば、金属からなる構造体、複合材からなる構造体或いは金属と複合材を重ね合せた構造体のように、金属及び複合材の少なくとも一方からなる構造体2を欠陥検査システム1による欠陥の検査対象とすることができる。
【0014】
欠陥検査システム1は、レーザ光等の可視光を出射する光源3、レーザ光の光路4、光学カメラ5、画像解析部6、入力装置7及びディスプレイ8で構成することができる。尚、検査員が目視で検査対象エリアにおける欠陥の有無を判定する場合には光学カメラ5、画像解析部6、入力装置7及びディスプレイ8を省略することもできる。また、以降では、主に光源3からレーザ光を出射する場合を例に説明するが、レーザ光ではない可視光を光源3から出射するようにしても良い。
【0015】
図2図1に示す光路4の配置例を示す図である。
【0016】
光路4は、構造体2における欠陥Dの検査対象エリアに少なくとも1本配置される。図2は、複数の光路4を、構造体2の表面における欠陥Dの検査対象エリアを横切るように平行に配置した例を示している。
【0017】
光路4を形成するための光学素子としては、光ファイバや光導波路が挙げられる。尚、広義には、光ファイバは光導波路の一種である。狭義の光導波路の典型例としては、ガラス光導波路等の無機光導波路及びポリマー(高分子)光導波路が挙げられる。ポリマー光導波路は、本来、光信号によるプリント基板用の光学素子であり、有機光導波路、プラスチック光導波路、ポリマー光配線又はポリマー光回路等とも呼ばれる。
【0018】
ポリマー光導波路は、クラッド層の内部にコア層を形成したものであり、コア層は高分子材料で形成する一方、クラッド層は樹脂シート等で形成することができる。ポリマー光導波路の特長としては、長さ方向に垂直な方向における光の損失が無い点、加工が容易である点、高密度化が可能である点及び実装が容易である点等が挙げられる。
【0019】
光学カメラ5は、レーザ光の伝播中において光路4を含む欠陥Dの検査対象エリアの可視光画像を撮影することが可能な位置に配置される。このため、光学カメラ5によって光路4を含む検査対象エリアの2次元の光学画像を取得することができる。
【0020】
図3図1に示す構造体2に亀裂が生じた場合における光路4の状態を示す断面図である。
【0021】
レーザ光の光路4は、クラッド層10の内部にコア層11を形成した光ファイバやポリマー光導波路等の光導波路12で構成することができる。光導波路12は、接着剤13で構造体2の表面に接着することができる。尚、構造体2の表面を塗装したり、表面処理を行った後に、塗膜又は表面処理層の表面に接着剤13で光導波路12を接着するようにしても良い。或いは、逆に、光導波路12の外側を塗装しても良い。
【0022】
構造体2の表面に亀裂等の欠陥Dが生じると、図3に示すように欠陥Dが生じた位置においてレーザ光の光路4を形成する光導波路12が屈曲する。すなわち、光導波路12のクラッド層10が変形する。また、図3に示す例に限らず、物体の衝突等によって光導波路12自体が損傷した場合においても、光導波路12が変形して光路4が屈曲する。その結果、屈曲した光導波路12の部分にレーザ光の一部が反射して屈折し、光導波路12から可視光が漏洩する。すなわち、波長が380nmから780nmの光が変形したクラッド層10を透過して光導波路12の外部に漏れる。このため、欠陥Dが生じた位置に存在する光導波路12から漏れる可視光の光量が増加することになる。
【0023】
従って、レーザ光の光路4を形成する光導波路12から漏れる可視光の光量に基づいて検査対象エリアに欠陥Dが生じているか否かを判定することができる。つまり、欠陥Dの検査対象エリアに欠陥Dが生じた場合に欠陥Dが生じた位置において光路4が屈曲し、光路4の屈曲に起因して光路4から漏れる可視光の光量が増加するという現象を利用して検査対象エリアに欠陥Dが生じているか否かを判定することができる。
【0024】
このため、検査対象エリアに欠陥Dが生じているか否かを判定するために、光路4を形成する光導波路12にレーザ光を出射するための光源3は必要であるが、光導波路12から出射するレーザ光を検出するための光検出器は不要である。従って、欠陥検査システム1は、光路4に光検出器を接続せずに用いることができる。すなわち、光路4の端部に直接又は間接的に光検出器を連結せずに検査対象エリアに欠陥Dが生じているか否かを判定することができる。
【0025】
最も簡易には、欠陥検査システム1のユーザとなる検査員が光路4を目視することによって検査対象エリアに欠陥Dが生じているか否かを判定することができる。また、図1に例示されるように検査対象エリア及び光路4を撮影できるように光学カメラ5を設置すれば、検査対象エリア及び光路4を光学カメラ5で撮影して得られる可視光画像に基づいて欠陥Dが生じているか否かを判定することもできる。すなわち、光学カメラ5で撮影して得られる可視光画像を目視することによって、検査対象エリアに欠陥Dが生じているか否かを判定することができる。このため、検査員が直接目視できないような箇所を検査対象エリアに設定して欠陥Dの有無を検査することもできる。
【0026】
また、検査員が直接目視できるか否かを問わず、光学カメラ5で光導波路12等の光路4を含む検査対象エリアの可視光画像を撮影すれば、所望の時期に所望の場所で検査対象エリアにおける欠陥Dの有無及び位置を検査することが可能となるのみならず、可視光画像を検査記録として保存することもできる。すなわち、光学カメラ5で撮影された可視光画像において相対的に可視光の光量が大きい特異点や領域が観測されれば、特異点や領域が欠陥Dの位置や範囲を表していることになる。つまり、検査対象エリアにおける可視光画像の撮影によって欠陥Dの位置や範囲を視覚化した検査記録の保存が可能となる。
【0027】
欠陥Dを高精度に検出できるようにするためには、欠陥Dによってレーザ光の屈折による可視光の漏れが観測できる程度に生じるようにすることが重要である。そのためには、光路4を変形し易い光導波路12で構成することが好ましい。欠陥Dの影響を受けて変形し易い光導波路12としては、ポリマー光導波路やミクロンオーダの太さを有する細い光ファイバが挙げられる。従って、ポリマー光導波路やミクロンオーダの太さを有する細い光ファイバで光路4を形成することが望ましい。
【0028】
他方、欠陥Dの有無の判定は、光路4を含む検査対象エリア又は光路4を含む検査対象エリアの可視光画像の目視によって行うことができる。従って、レーザ光として、可視光レーザを用いることが適切である。
【0029】
また、光導波路12の本数及び長さを増加させれば、より広い検査対象エリアを対象として欠陥Dの検査を行うことが可能となり、光導波路12の密度を増加させれば、欠陥検査についての空間分解能を向上させることができる。
【0030】
図1に示す例では、複数の光導波路12が欠陥Dの検査対象エリアに平行に配置されている。このため、各光導波路12が横切る部分における欠陥の検査が可能である。もちろん、複数の光導波路12を非平行に配置してもよい。また、構造体2の形状によっては光導波路12を分岐、合流或いは交差させても良い。
【0031】
特に、上述したように高密度化が可能であるポリマー光導波路で光路4を形成すれば、1mm以下(μmオーダ)のピッチで複数の光路4を配置することが可能となる。また、光路4を交差させることが不可避である場合においても、光ファイバとは異なり、ポリマー光導波路を重ねずに光路4を形成することができる。このため光路4を形成するためにポリマー光導波路を用いれば、光ファイバを交差させる場合に生じる凹凸を回避することもできる。
【0032】
しかも、上述したように、ポリマー光導波路は、施工が容易である。例えば、複数の光路4として複数のポリマー光導波路を形成した樹脂のシートを接着剤13で構造体2の表面に貼り付けるだけで、簡易に複数の光路4を構造体2の表面に配置することができる。
【0033】
このため、光路4の交差が不可避である場合には、1枚の樹脂のシート内にポリマー光導波路を交差させて形成することができる。そうすると、交差するように配置されたポリマー光導波路と、構造体2の表面との間における距離のばらつきを低減することができる。また、光路4を交差させるか否かを問わず、光導波路12を構造体2の表面に取付けるための接着剤13としてフィルム接着剤を用いれば、液状接着剤等を使用する場合に比べて光導波路12と、構造体2の表面との間における距離を、より均一にすることができる。その結果、欠陥Dの検出能を一層向上させることができる。
【0034】
図4図1に示す光路4の別の配置例を示す図である。
【0035】
図4に示すように光導波路12の一部又は全部を滑らかに湾曲させることによって光導波路12を蛇行配置してもよい。図4に示す例では、光導波路12の形状が、滑らかに湾曲する曲線部分と、直線部分とを交互に連結した形状となっている。
【0036】
図4に例示されるように光導波路12の一部又は全部を滑らかに湾曲させると、光導波路12を交差させることなく欠陥Dの検査対象エリアに高密度に光導波路12を設けることができる。或いは、光導波路12の分岐を不要にすることができる。また、レーザ光を入射すべき光導波路12を1本とすれば、光源3を1つにできる。他に、渦巻き状に光導波路12を配置することによっても光導波路12を交差させることなく欠陥Dの検査対象エリアに高密度に光導波路12を設けることができる。
【0037】
図1又は図4に例示されるように、複数の光導波路12又は湾曲した光導波路12を縦軸及び横軸の2軸方向について異なる複数の位置を横切るよう2次元的に配置することができる。そうすると、欠陥Dの検査対象エリアを2次元領域とし、欠陥Dの位置を2次元の位置として検査することが可能となる。もちろん、欠陥Dの検査対象エリアが狭隘部であれば、1本の光導波路12を直線的に配置して、或いは小さい曲率で湾曲配置して、欠陥Dの位置を直線軸或いは曲線軸上における1次元の位置として検査できるようにしても良い。
【0038】
光学カメラ5で撮影された構造体2の表面の2次元画像は、ディスプレイ8に表示させることができる。これにより、検査員等のユーザは、ディスプレイ8に表示された可視光画像を目視することによって、欠陥Dの有無及び位置を確認することができる。例えば、航空機を構成する構造体2が欠陥Dの検査対象である場合には、鳥、石或いは雹の衝突による金属又は複合材の衝撃損傷による凹みや樹脂の割れ、複合材の剥離による樹脂の割れ、複合材又は金属の疲労による亀裂並びに制限荷重を超えるような局所的な大きな荷重による複合材又は金属の変形や亀裂等の欠陥Dの有無及び位置を確認することができる。
【0039】
欠陥Dの有無及び位置の検出は自動的に行えるようにすることもできる。欠陥Dの有無及び位置の検出を自動的に行う場合には、光学カメラ5の出力側に画像解析部6が設けられる。従って、欠陥Dの有無及び位置の検出を、ユーザがディスプレイ8に表示された可視光画像の目視のみで行う場合や光学カメラ5で撮影された可視光画像を他の画像解析システムに取り込んで画像解析を行うことによって欠陥Dの有無及び位置を検出する場合には、画像解析部6を省略してもよい。
【0040】
画像解析部6には、可視光画像を対象とする特異点の検出処理や閾値処理等の画像処理によって欠陥Dの検査対象エリアにおける欠陥Dの有無及び位置を自動判定する機能が設けられる。このような画像処理機能を有する画像解析部6は、画像処理プログラムを読込ませたコンピュータ等の電子回路で構成することができる。
【0041】
欠陥Dが生じた部分に配置される光路4から漏れる可視光の光量は欠陥Dが生じていない部分から漏れる可視光の光量よりも大きい。従って、光学カメラ5から画像解析部6に取り込まれた画像データの画素値同士の比較や画素値と基準値との比較によって欠陥Dに対応する特異点や領域を検出するようにしてもよい。具体例として、画像解析部6に取り込まれた画像データの画素値を画素値の平均値や基準値と比較し、差や比が閾値を超えた場合には欠陥Dが存在すると判定する閾値処理を含む判定処理を行うことができる。
【0042】
別の具体例として、欠陥Dの検査対象エリアに配置された光路4から漏れる可視光の光量変化、すなわち画像解析部6に取り込まれた可視光画像の画素値の変化を基準値と比較することによって、欠陥Dが存在する位置を表す特異点や領域を検出するようにしてもよい。具体的には、欠陥Dの検出対象となる可視光画像を基準画像と比較し、画素値の差又は比が閾値を超えた場合には欠陥Dが存在すると判定する閾値処理を含む判定処理を行うことができる。
【0043】
欠陥Dの検出対象となる可視光画像との比較対象となる基準画像には、欠陥Dが存在しないことが確認されている状態でレーザ光が光路4を伝播している期間に光学カメラ5で撮影された欠陥Dの検査対象エリアにおける可視光画像を用いることができる。或いは、欠陥Dが存在しないことが確認されており、かつ検査対象エリアの構造及び光路の配置パターンが同等である他の構造体の検査対象エリアにおける、レーザ光が光路を伝播している期間に光学カメラで撮影された可視光画像を基準画像としても良い。
【0044】
尚、ユーザがディスプレイ8に表示された可視光画像又は光路4の目視によって欠陥Dの検出を行う場合においても同様な基準画像と比較することによって欠陥Dの有無を判定することができる。
【0045】
光学カメラ5で撮影された可視光画像はもちろん、画像解析部6による欠陥Dの自動検査結果についてもディスプレイ8に表示させることができる。例えば、画像解析部6による可視光画像の画像解析によって欠陥Dが検出された場合には、可視光画像上において欠陥Dの位置を着色等によって強調表示させることもできる。
【0046】
入力装置7は、ユーザが必要な指示情報を欠陥検査システム1に入力するためのデバイスである。例えば、光源3からのレーザ光の出射や画像解析部6における画像解析の開始を入力装置7の操作によって指示することができる。
【0047】
以上のような欠陥検査システム1及び欠陥検査方法は、欠陥Dが存在する部分に配置されたレーザ光の光路4から可視光が漏れることを利用して、欠陥Dの有無及び位置を検査するようにしたものである。
【0048】
(効果)
欠陥検査システム1及び欠陥検査方法によれば、光検出器を用いることなく光源3と光路4の配置のみで簡易にレーザ光を用いた非破壊検査を行うことができる。特に、光検出器の設置が困難な部分はもちろん、他の非破壊検査を行うためにセンサ類を設置することが困難な部分であっても、欠陥Dの検査対象エリアを観察できれば欠陥Dの有無を検査することができる。例えば、検査員のアクセスが困難な構造部品であっても離れた位置から光学カメラ5で検査対象エリアの可視光画像を撮影することによって、欠陥Dの有無を検査することができる。
【0049】
また、視覚的に亀裂等の欠陥Dの有無、位置及び規模等を検出することができる。このため、従来の非破壊検査法に比べて検査労力及び検査時間の削減を図ることができる。
【0050】
また、欠陥Dの検査対象が航空機を構成する構造体の内部である場合には、光学カメラ5、画像解析部6、入力装置7及びディスプレイ8等を航空機に搭載することができる。そうすると、航空機の飛行中において亀裂等の欠陥Dの検出が可能となる。すなわち、航空機構造体を備えた航空機の飛行中において、光路4を光学カメラ5で撮影して得られる可視光画像に基づいて検査対象エリアに欠陥Dが生じているか否かを判定することができる。この場合、欠陥Dが検出された場合には飛行条件を変更する等の対応によって飛行安全を向上させることができる。
【0051】
一方、航空機が飛行していない場合には光路4を光学カメラ5で撮影して得られる可視光画像に基づいて、若しくは光路4を目視することによって検査対象エリアに欠陥Dが生じているか否かを判定することができる。このため、航空機の飛行中に亀裂等の欠陥Dが検出された場合には、地上点検時に欠陥Dの詳細検査を行うこともできる。
【0052】
他方、欠陥Dの検査対象が航空機の機体表面である場合のように、欠陥Dの検査対象エリアを撮影するための光学カメラ5を航空機に搭載できない場合であっても、地上での点検中に光学カメラ5を持参することによって簡易に欠陥Dの有無の検査を行うことができる。特に、ポリマー光導波路を高密度にプリントしたシートを貼り付けて光学カメラ5で撮影する検査とすれば、航空機の機体表面の所望の部分について簡易に非破壊検査を行うことができる。
【0053】
(第2の実施形態)
図5は本発明の第2の実施形態に係る欠陥検査システムの構成図である。
【0054】
図5に示された第2の実施形態における欠陥検査システム1Aでは、光源3からレーザ光ではない可視光を出射するようにし、光路4の一端に光源3を接続する一方、光路4の別の端部に反射鏡20を接続した点が第1の実施形態における欠陥検査システム1と相違する。第2の実施形態における欠陥検査システム1Aの他の構成及び作用については第1の実施形態における欠陥検査システム1と実質的に異ならないため、光学カメラ5、画像解析部6、入力装置7及びディスプレイ8の図示を省略し、同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
【0055】
図5に示すように、光源3と接続されない側の光路4の端部、すなわち光の出射側における端部に、反射鏡20を接続することができる。そうすると、光が反射鏡20で反射し、反射光も欠陥Dの検査対象エリアを通ることになる。従って、欠陥Dが存在する部位では、光源3から出射した光の屈折のみならず、反射鏡20で反射した反射光の屈折によっても光が漏洩することになる。このため、欠陥Dが存在する部位から漏れる可視光の光量を増幅させることができる。その結果、欠陥Dの検出感度を向上させることができる。尚、可視光としてレーザ光を使用すると、レーザ光の反射光によってレーザ出力が不安定となることから、レーザ光ではない可視光を使用することが現実的である。
【0056】
図6図5に示す光路4の別の配置例を示す図である。
【0057】
図6に示すように光導波路12をジグザグ状に蛇行配置する場合においても、光導波路12の他端に反射鏡20を接続することができる。もちろん、渦巻き状に光導波路12を配置する場合においても同様である。
【0058】
以上の第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な効果に加え、欠陥Dの検出感度を向上できるという効果を得ることができる。
【0059】
(第3の実施形態)
図7は本発明の第3の実施形態に係る欠陥検査システムの構成図である。
【0060】
図7に示された第3の実施形態における欠陥検査システム1Bでは、光路4の配置方法と、光路4の端部に光検出器30及び信号処理部31を接続した点が第1の実施形態における欠陥検査システム1と相違する。第3の実施形態における欠陥検査システム1Bの他の構成及び作用については第1の実施形態における欠陥検査システム1と実質的に異ならないため、光学カメラ5、画像解析部6、入力装置7及びディスプレイ8の図示を省略し、同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
【0061】
第3の実施形態における欠陥検査システム1Bでは、光導波路12からなる光路4が格子状に配置される。そして、1本の光路4の一端には光源3が接続される一方、他端には光検出器30が接続される。このため、各光路4を伝播するレーザ光を光検出器30において検出することができる。
【0062】
光検出器30の出力側には信号処理部31が接続される。信号処理部31についても信号処理プログラムを読込ませたコンピュータ等の電子回路で構成することができる。信号処理部31には、光検出器30において検出された光の検出信号に基づいて欠陥Dの位置を特定する機能が設けられる。従って、画像解析部6のみならず、信号処理部31においても欠陥Dの自動検査が可能である。すなわち、光学カメラ5で撮影された可視光画像に基づく欠陥Dの検査と、光信号に基づく欠陥Dの検査とを併用することができる。
【0063】
第1の実施形態において説明したように、欠陥Dを横切る光路4は屈曲する。その結果、欠陥Dを横切る光路4を伝播するレーザ光の強度は低下する。従って、各光路4を伝播したレーザ光の強度変化を信号処理部31において検出すれば、欠陥Dを横切る光路4を特定することができる。すなわち、光検出器30で検出されたレーザ光の強度が、光源3から出力されたレーザ光の強度から閾値を超えて減少した光路4を、欠陥Dを横切る光路4と判定することができる。
【0064】
そうすると、レーザ光の強度が減少し、かつ交差する複数の光路4を特定することによって、欠陥Dの位置とサイズを特定することが可能となる。具体例として、図7に示すように互いに直交するX軸とY軸で位置が定義される2次元領域に格子状に光路4を配置する場合であれば、X軸方向において異なる位置X1、X2、X3にありY軸に平行な複数の光路4と、Y軸方向において異なる位置Y1、Y2、Y3にありX軸に平行な複数の光路4が配置されることになる。
【0065】
この場合、X軸方向における位置X2にありY軸に平行な光路4を伝播したレーザ光の強度と、Y軸方向における位置Y2にありX軸に平行な光路4を伝播したレーザ光の強度のみが減少していれば、欠陥Dは、X座標及びY座標で表わされる位置(X1,Y1)、位置(X3,Y1)、位置(X3,Y3)及び位置(X1,Y3)で囲まれた範囲に存在することになる。また、平行に配置された複数の光路4を伝播したレーザ光の強度が減少していれば、欠陥Dのサイズが平行に配置された複数の光路4に跨るサイズであるということになる。
【0066】
このように複数の光路4を交差させると、レーザ光の光量の減少を検出することによって欠陥Dの位置とサイズを特定することが可能となる。特に、ポリマー光導波路は1mm間隔で配置できるため、ポリマー光導波路を1mm間隔で格子状に配置すれば、1mmの精度で欠陥Dの位置とサイズを特定することができる。
【0067】
図8図7に示す光路4の別の配置例を示す図である。
【0068】
図8に示すように複数の光路4を3方向に平行となるように配置しても良い。この場合、90度以外の角度で交差する複数の光路4が存在することになる。複数の光路4を3つ以上の異なる向きで平行に配置すると、異なる位置に複数の欠陥Dが生じた場合であってもそれぞれ検出することが可能となる。
【0069】
図9(A)、(B)、(C)は図7に示すように四角形の格子状に複数の光路4を配置した構造体2に複数の欠陥Dが生じた場合の例を示す図である。
【0070】
図9(A)に示すように、複数の平行な光路4を四角形の格子状に直交配置し、光源3及び光検出器30を各光路4に接続することによって欠陥検査システム1Bを構成することができる。しかしながら、例えば、図9(A)に示すように、同一方向において隣接していない複数の光路4を伝播するレーザ光が欠陥Dによって損失した場合には、レーザ光が損失した光路4の交差位置が複数箇所となる。このため、欠陥Dの位置を特定することができない。具体的には、図9(A)に例示されるようなレーザ光の損失があった場合であれば、図9(B)に示す2つの領域に欠陥Dが生じたのか、或いは、図9(C)に示す2つの領域に欠陥Dが生じたのかを識別することができない。
【0071】
これに対して図8に示すように、3つ以上の座標軸を定義し、3つ以上の座標で欠陥Dの位置を特定すれば、異なる位置に生じた複数の欠陥Dをそれぞれ特定することが可能となる。より具体的には、互いに異なる3方向以上の複数の方向にレーザ光を伝播させる複数の光路4であって、1つの方向につき少なくとも2つの光路2を有する複数の光路2を構造体2の表面に配置し、複数の光路4の各一端にレーザ光を入射させる光源3を接続する一方、複数の光路4の各他端に、複数の光路4の各他端から出射するレーザ光を検出する光検出器30を接続することによって、複数の欠陥Dをそれぞれ特定することが可能となる。
【0072】
図8に示す例では、60度で交差する3つの軸で欠陥Dの位置が特定できるようになっている。このため、3つの光路4からそれぞれ出射されるレーザ光の各強度が減少した場合には、3つの光路4の各一部を含む領域を欠陥Dの発生位置として特定することができる。
【0073】
尚、第1の実施形態において説明したように、レーザ光の損失は光路4が交差する部分においても生じる。従って、光路4を交差させる角度に関わらず、3本以上の光路4が1箇所で交差しないように光路4を配置することが、無用なレーザ光の損失を低減する観点から望ましい。
【0074】
上述の他、光検出器30から出力される検出信号からノイズを除去するためのフィルタ処理、アベレージング処理、包絡線検波処理並びにフーリエ変換やウィーブレット変換等の周波数解析処理等を行うための機能を必要に応じて信号処理部31に設けることもできる。これにより、レーザ光の検出信号の減少をより高精度に検出することが可能となる。
【0075】
以上の第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な効果に加え、光路4を伝播したレーザ光の強度に基づく欠陥Dの検出を併用できるという効果を得ることができる。このため、欠陥Dの誤検出の発生を低減することができる。
【0076】
特に、四角形の格子状に光路4を配置する場合には、複数の欠陥Dの位置の特定が困難となる場合があるが、光学カメラ5で撮影された可視光画像を用いた検査によって複数の欠陥Dの位置の特定が可能となる。このため、格子状に配置された光路4を伝播したレーザ光の強度に基づく欠陥Dの自動検出を行い、欠陥Dの位置の候補が複数個所となる場合に光学カメラ5で撮影された可視光画像に基づく欠陥Dの検査を行うようにしても良い。
【0077】
(第4の実施形態)
図10は本発明の第4の実施形態に係る欠陥検査システムの構成図である。
【0078】
図10に示された第4の実施形態における欠陥検査システム1Cでは、検査対象エリアに欠陥が生じているか否かを判定するために可視光ではなく赤外線(IR:Infrared ray)を利用するようにした点が他の実施形態における欠陥検査システム1、1A、1Bと相違する。第4の実施形態における欠陥検査システム1Cの他の構成及び作用については他の実施形態における欠陥検査システム1、1A、1Bと実質的に異ならないため、第1の実施形態における欠陥検査システム1との相違点についてのみ説明する。
【0079】
第4の実施形態における欠陥検査システム1Cでは、検査対象エリアにおける欠陥の有無を赤外線を利用して判定するため、光学カメラ5の代わりに赤外線カメラ40が設けられる。赤外線カメラ40は、検査対象エリアの温度分布を表す2次元の赤外線画像を撮影する赤外線温度センサである。温度分布を表す赤外線画像は、サーモグラフィとも呼ばれる。赤外線は波長が780nmから1mmの光であり、目視できない。このため、欠陥検査システム1Cには、赤外線カメラ40の他、画像解析部6、入力装置7及びディスプレイ8が備えられる。
【0080】
図3に例示されるように構造体2の表面に亀裂や損傷等の欠陥Dが生じると、上述したようにレーザ光の光路4を形成する光導波路12が屈曲する。このため、光導波路12が変形して光路4が狭くなるか遮られる。その結果、光路4が狭くなった光導波路12の部分或いは光路4が遮られた光導波路12の部分におけるレーザ光の損失量が他の部分よりも増加し、レーザ光のエネルギの減少量が他の部分よりも相対的に多くなる。
【0081】
そうすると、レーザ光のエネルギ減少分は熱エネルギとなって発熱するため、欠陥Dを横切る光導波路12の部分における温度は他の光導波路12の部分における温度よりも相対的に高くなる。すなわち、欠陥Dを横切る光路4を形成する光導波路12の温度が局所的に上昇する。
【0082】
従って、赤外線カメラ40で光導波路12を含む検査対象エリアの赤外線画像を撮影すれば、赤外線画像に基づいて欠陥Dの有無及び位置を検知することができる。すなわち、赤外線画像において相対的に温度が高い特異点が観測されれば、特異点が欠陥Dの位置を表していることになる。つまり、赤外線画像の撮影によって欠陥Dの位置の視覚化が可能となる。
【0083】
赤外線画像を利用して欠陥Dの有無及び位置を検知する場合においても、可視光画像を利用する場合と同様に、欠陥Dを高精度に検出できるようにするためには、欠陥Dによってレーザ光の屈折による損失及び局所的な温度変化が観測できる程度に生じるようにすることが重要である。このため、光路4を、ポリマー光導波路やミクロンオーダの太さを有する細い光ファイバのような変形し易い光導波路12で構成することが好ましい。
【0084】
赤外線カメラ40で撮影された構造体2の表面における2次元の赤外線画像をディスプレイ8に表示させれば、検査員等のユーザは、ディスプレイ8に表示された赤外線画像を目視することによって、欠陥Dの有無及び位置を確認することができる。一方、画像解析部6が検査対象エリアにおける欠陥Dの有無及び位置を自動判定するようにしても良い。その場合には、赤外線画像を対象とする特異点の検出処理によって検査対象エリアにおける欠陥Dの有無及び位置を自動判定することができる。
【0085】
欠陥Dが生じた部分に配置される光路4の温度上昇量は欠陥Dが生じていない部分に配置される光路4の温度上昇量よりも大きい。従って、赤外線画像の画素値同士の比較や画素値と基準値との比較によって欠陥Dに対応する特異点を検出するようにしてもよい。具体例として、赤外線画像の画素値を画素値の平均値や基準値と比較し、差や比が閾値を超えた場合には欠陥Dが存在すると判定する閾値処理を含む判定処理を行うことができる。
【0086】
但し、構造体2の表面自体にも温度分布が存在する場合には、構造体2の表面からも温度分布に対応する強度分布を有する赤外線が放射される。このため、欠陥Dの検査対象エリアにおける温度変化、すなわち赤外線画像の画素値の変化を基準値と比較することによって、特異点を検出するようにしてもよい。すなわち、欠陥Dに対応する特異点の検出対象となる赤外線画像を基準画像と比較し、画素値の差又は比が閾値を超えた場合には欠陥Dが存在すると判定する閾値処理を含む判定処理を行うことができる。
【0087】
特異点の検出対象となる赤外線画像との比較対象となる基準画像には、レーザ光が光路4を伝播していない期間に撮影された欠陥Dの検査対象エリアにおける赤外線画像や欠陥Dが存在しないことが確認されている状態でレーザ光が光路4を伝播している期間に撮影された欠陥Dの検査対象エリアにおける赤外線画像を用いることができる。
【0088】
以上のような第4の実施形態における欠陥検査システム1Cは、欠陥Dが存在する部分に配置されたレーザ光の光路4では光路4の屈曲及びレーザ光の損失によって温度上昇量とともに光路4から放射される赤外線量が増加することを利用し、赤外線画像を撮影することによって欠陥Dの有無及び位置を検知できるようにしたものである。換言すれば、第4の実施形態における欠陥検査システム1Cは、レーザ光の伝播中において光路4から放射される赤外線量に基づいて検査対象エリアに欠陥が生じているか否かを判定するものである。
【0089】
このため、第4の実施形態における欠陥検査システム1Cにおいても、光検出器を用いることなく光源3と光路4の配置のみで簡易にレーザ光を用いた非破壊検査を行うことができる。また、欠陥Dの検査対象が航空機を構成する構造体の内部である場合には、欠陥検査システム1Cを航空機に搭載することによって、航空機の飛行中であっても、検査対象エリアに欠陥Dが生じているか否かを判定することができる。
【0090】
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【符号の説明】
【0091】
1、1A、1B、1C 欠陥検査システム
2 構造体
3 光源
4 光路
5 光学カメラ
6 画像解析部
7 入力装置
8 ディスプレイ
10 クラッド層
11 コア層
12 光導波路
13 接着剤
20 反射鏡
30 光検出器
31 信号処理部
40 赤外線カメラ
D 欠陥
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10