(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】シリンジ
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20220519BHJP
B01L 3/02 20060101ALI20220519BHJP
G01N 31/22 20060101ALI20220519BHJP
G01N 31/00 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
G01N1/00 101K
B01L3/02 D
G01N31/22 121F
G01N31/00 B
(21)【出願番号】P 2020171386
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2020-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】505417149
【氏名又は名称】成田空港給油施設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】塙 賢一
(72)【発明者】
【氏名】照屋 一
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-194599(JP,A)
【文献】特開2004-065272(JP,A)
【文献】特表2019-524393(JP,A)
【文献】国際公開第2019/077703(WO,A1)
【文献】特開2002-095749(JP,A)
【文献】米国特許第04995974(US,A)
【文献】特開2015-051122(JP,A)
【文献】特開2009-189696(JP,A)
【文献】特開2020-072938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
A61B 10/00
A61M 5/00
B01L 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を採取するためのシリンジであって、
前記試料を吸引する貫通孔が形成されたノズルと、
一方の開口が前記ノズルに接続され、前記貫通孔から吸引された試料を収容する筒状の収容部と、
他方の開口から前記収容部に挿入され、当該収容部の中心軸に沿って、第1位置と、前記第1位置にある場合よりも前記ノズル側の端部が前記ノズルから離れた第2位置との間で移動可能な基体部と、
前記基体部に設けられ、前記収容部の内周面と摺動可能な摺動部と、
前記第1位置にある場合に前記第2位置に近づく方向に前記基体部を付勢する第1弾性部材と、
前記第1弾性部材による前記基体部の付勢が維持されるように、前記基体部を前記第1位置に保持する保持機構とを具備し、
前記保持機構による前記基体部の保持が解除されると、前記第1弾性部材の弾性力により前記基体部が前記第2位置に近づく方向に移動することで、前記貫通孔から試料が吸引され
、
前記基体部は、前記摺動部からみて前記ノズルとは反対側において長尺状の軸部を含み、
前記軸部は、他の部分に対して窪んだ切欠部を含み、
前記保持機構は、前記切欠部と嵌合可能なピン部材と、前記軸部に当接するようにピン部材を付勢可能な第2弾性部材とを含み、
前記ピン部材が前記切欠部と嵌合することで、前記基体部が前記第1位置に保持され、前記嵌合を解除すると、前記保持機構による前記基体部の保持が解除され、
前記第2弾性部材は、前記基体部が前記第2位置から前記第1位置まで移動する際に、当該基体部の移動を阻害することなく、前記ピン部材を前記軸部に当接するように付勢し、
前記切欠部が前記ピン部材に到達すると、前記第2弾性部材の弾性力により当該ピン部材が当該切欠部に嵌合する
シリンジ。
【請求項2】
前記ノズルの先端には、通過する試料を検査可能な試験紙と、前記貫通孔と連通し、当該試験紙が内部に設置される連通孔と、当該連通孔の周囲に形成される環状の溝部とを含む検査部が着脱可能に取り付けられ、
前記溝部は、前記貫通孔の周囲に位置する第1側壁部と、前記連通孔からみて当該第1側壁部の外側において当該第1側壁部の周囲に位置する第2側壁部とを含み、
前記ノズルの内周面と前記第1側壁部とが当接し、前記ノズルの外周面と前記第2側壁部とが当接するように、前記溝部と前記ノズルとが嵌合することで、当該ノズルの先端に前記検査部が取り付けられる
請求項
1のシリンジ。
【請求項3】
試料を採取するためのシリンジであって、
前記試料を吸引する貫通孔が形成されたノズルと、
一方の開口が前記ノズルに接続され、前記貫通孔から吸引された試料を収容する筒状の収容部と、
他方の開口から前記収容部に挿入され、当該収容部の中心軸に沿って、第1位置と、前記第1位置にある場合よりも前記ノズル側の端部が前記ノズルから離れた第2位置との間で移動可能な基体部と、
前記基体部に設けられ、前記収容部の内周面と摺動可能な摺動部と、
前記第1位置にある場合に前記第2位置に近づく方向に前記基体部を付勢する第1弾性部材と、
前記第1弾性部材による前記基体部の付勢が維持されるように、前記基体部を前記第1位置に保持する保持機構とを具備し、
前記保持機構による前記基体部の保持が解除されると、前記第1弾性部材の弾性力により前記基体部が前記第2位置に近づく方向に移動することで、前記貫通孔から試料が吸引され、
前記ノズルの先端には、通過する試料を検査可能な試験紙と、前記貫通孔と連通し、当該試験紙が内部に設置される連通孔と、当該連通孔の周囲に形成される環状の溝部とを含む検査部が着脱可能に取り付けられ、
前記溝部は、前記貫通孔の周囲に位置する第1側壁部と、前記連通孔からみて当該第1側壁部の外側において当該第1側壁部の周囲に位置する第2側壁部とを含み、
前記ノズルの内周面と前記第1側壁部とが当接し、前記ノズルの外周面と前記第2側壁部とが当接するように、前記溝部と前記ノズルとが嵌合することで、当該ノズルの先端に前記検査部が取り付けられる
シリンジ。
【請求項4】
前記基体部は、前記弾性力により前記第1位置から移動して前記第2位置に到達すると、当該第2位置よりも前記ノズルから離れた位置には移動しない
請求項1
から請求項3の何れかのシリンジ。
【請求項5】
前記ノズルは、前記収容部に着脱可能に接続される
請求項1から請求項
4の何れかのシリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を採取するためのシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
試料を採取するためのシリンジに関する各種の技術が従来から提案されている。例えば、特許文献1には、先端に液出入口をもつ円筒状のバレルと、バレル内面と気密及び液密を保って接触するプランジャチップが先端に形成されたプランジャーとを具備するバレルが開示されている。そして、プランジャチップがバレルの内面を摺動するようにプランジャーを後退する方向に移動させることで、試料の採取が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、所望する量の試料が採取できるまで、プランジャーを後退する方向に引き続ける必要がある。具体的には、利用者は、一方の手でシリンジを持ちつつ、他方の手でプランジャーを引く操作をする必要がある。したがって、利用者にとって手間がかかり作業効率が悪いという問題がある。以上の事情を考慮して、本発明では、利用者がプランジャーを移動させる操作を行うことなく、試料を採取することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明のシリンジは、試料を吸引する貫通孔が形成されたノズルと、一方の開口が前記ノズルに接続され、前記貫通孔から吸引された試料を収容する筒状の収容部と、他方の開口から前記収容部に挿入され、当該収容部の中心軸に沿って、第1位置と、前記第1位置にある場合よりも前記ノズル側の端部が前記ノズルから離れた第2位置との間で移動可能な基体部と、前記基体部に設けられ、前記収容部の内周面と摺動可能な摺動部と、前記第1位置にある場合に前記第2位置に近づく方向に前記基体部を付勢する第1弾性部材と、前記第1弾性部材による前記基体部の付勢が維持されるように、前記基体部を前記第1位置に保持する保持機構とを具備し、前記保持機構による前記基体部の保持が解除されると、前記第1弾性部材の弾性力により前記基体部が前記第2位置に近づく方向に移動することで、前記貫通孔から試料が吸引される。
【発明の効果】
【0006】
本発明のシリンジによれば、保持機構による基体部の保持を解除することで、第1弾性部材の弾性力により基体部が第1位置から当該第1位置よりもノズルから離れた第2位置に移動する。すなわち、利用者が基体部を移動させる操作を行うことなく、試料を採取することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係るシリンジの構成図である。
【
図2】第1位置にある状態のシリンジの断面図である。
【
図3】第2位置にある状態のシリンジの断面図である。
【
図7】第2実施形態の比較例に係るノズルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るシリンジ100の概略的な構成図である。
図2および
図3は、
図1のa-a線における断面図である。シリンジ100は、試料(液体)を採取するための器具である。
図1から
図3に例示される通り、第1実施形態のシリンジ100は、ノズル11と収容部12と基体部13と弾性部材14(第1弾性部材の例示)と支持部材15と保持機構16とフレーム部17を具備する。
【0009】
ノズル11は、試料を吸引するための貫通孔Hが形成された部材である。貫通孔Hの断面形状は円形である。以下の説明では、貫通孔Hの中心軸に平行な方向をx方向と表記し、x方向に直交する方向をy方向と表記する。
【0010】
第1実施形態のノズル11は、第1部分111と第2部分112とを含む。第1部分111はx方向の負側に位置する部分であり、第2部分112はx部分の正側に位置する部分である。貫通孔Hは、第1部分111と第2部分112とにわたり連続的に形成される。第1部分111における内径(貫通孔Hの径)は、第2部分112における内径(貫通孔Hの径)よりも大きい。
【0011】
収容部12は、ノズル11の貫通孔Hから吸引された試料を収容するための部材である。具体的には、x方向に沿った円筒状の部材である。収容部12におけるx方向の負側の端部と正側の端部とはそれぞれ開口する。x方向に平行な軸を中心軸とする円柱状の内部空間(以下「収容空間」という)Rが収容部12により形成される。そして、収容空間Rに試料が収容される。収容部12にはノズル11が接続される。具体的には、収容部12におけるx方向の負側の開口(「一方の開口」の例示)が貫通孔Hと連通するように、収容部12にノズル11が接続される。例えば、収容される試料が目視できるように透明な部材で収容部12が形成される。なお、第1部分111の内径は、収容部12の内径よりも小さい。
【0012】
第1実施形態では、ノズル11は、収容部12とは個別に形成され、収容部12に着脱可能に接続される。ノズル11におけるx方向の正側の端部が収容空間R内に挿入されるように、収容部12にノズル11が接続される。なお、ノズル11と収容部12との密着性を向上するために、ノズル11の外周面に収容部12の内周面と当接するようなゴム部材を設けてもよい。
【0013】
基体部13は、ノズル11から試料を吸引させるために使用する部材である。具体的には、基体部13は、x方向に沿った長尺状の部材である。基体部13は、収容部12におけるx方向の正側の開口(「他方の開口」の例示)から、当該収容部12に挿入される。なお、少なくとも基体部13の先端(x方向の負側の端部)が収容部12に挿入されていれば、基体部13の全長にわたり収容部12に挿入される必要はない。基体部13は、先端が収容部12内に挿入された状態で、x方向に沿って(収容部12の中心軸に沿って)移動可能である。基体部13がノズル11に近づく方向(x方向の負側)およびノズル11から離れる方向(x方向の正側)に移動可能であるとも換言できる。
【0014】
具体的には、基体部13は、x方向に沿って、第1位置から第2位置までの間で移動可能である。
図2は、基体部13が第1位置P1にある場合の断面図であり、
図3は、基体部13が第2位置P2にある場合の断面図である。試料を採取する前のシリンジ100の断面図が
図2であり、試料を採取した後のシリンジ100の断面図が
図3であるとも換言できる。
【0015】
第1位置P1は、基体部13の先端(x方向の負側の端部)が最もノズル11に近い位置である。いわゆるフルストロークの状態が、基体部13が第1位置P1にある状態であるとも換言できる。なお、基体部13が第1位置P1にある場合に、基体部13の先端がノズル11における正側の端部に接触しているか否かは不問である。
【0016】
一方で、第2位置P2は、第1位置P1にある場合よりも基体部13の先端がノズル11から離れた位置である。なお、第2位置P2は、第1位置P1よりも基体部13の先端がノズル11から離れた位置にあれば任意である。第2位置P2(すなわち基体部13の移動量)は、例えば、採取を所望する試料の量に応じて適宜に設定される。基体部13が第1位置P1から第2位置P2に移動することで、所望する量の試料が採取される。
【0017】
具体的には、基体部13を第1位置P1から第2位置P2に近づく方向(すなわちノズル11から離れる方向)に移動させると、ノズル11の貫通孔Hから試料が吸引される。そして、ノズル11から吸引された試料が収容空間Rに収容される。そして、基体部13が第2位置P2まで移動すると、シリンジ100により所望する量の試料が採取される。一方で、基体部13を第2位置P2から第1位置P1まで移動させると、採取した試料がノズル11から排出される。
【0018】
本願では、利用者が基体部13を移動させる操作を行うことなく、基体部13を第1位置P1から第2位置P2まで移動させる構成を採用する。すなわち、試料を採取するために基体部13を移動させる操作が不要である。基体部13を第1位置P1から第2位置P2まで移動させる具体的な構成については後述する。
【0019】
第1実施形態の基体部13は、ピストン部131とプランジャー132と含む。ピストン部131は、基体部13のうちx方向の負側に位置し、収容部12内(すなわち収容空間R)に挿入される部分である。具体的には、基体部13は、x方向に沿った長尺状の部材であり、収容部12の収容空間Rに対応する形状(円柱状)に形成される。なお、ピストン部131の長さ(x方向における大きさ)は任意であるが、
図1では、収容部12の長さよりもピストン部131の長さが大きい構成を例示する。
【0020】
ピストン部131には摺動部311が設けられる。例えば、ピストン部131におけるx方向の負側の端部(基体部13の先端)に摺動部311が設けられる。すなわち、収容部12内に挿入される部分に摺動部311が位置する。摺動部311(いわゆるガスケット)は、収容部12内に挿入された状態で当該収容部12の内周面と摺動可能な部材である。ピストン部131の周方向にわたり摺動部311が設けられる。すなわち、摺動部311は円環状の部材である。例えば、ゴム等の樹脂材料で摺動部311が形成される。摺動部311は収容部12の内周面と当接する。すなわち、摺動部311により収容空間Rの密閉性が維持される。なお、摺動部311を基体部13の先端に設けることは必須ではない。収容部12内に挿入され、収容部12の内周面と摺動可能であれば、摺動部311を基体部13に設ける位置は任意である。同様に、摺動部311の形状や材質も任意である。
【0021】
ピストン部131におけるx方向の正側の端部にはプランジャー132が設けられる。プランジャー132は、基体部13をx方向に沿って移動させる際に使用する部材である。特に、基体部13をx方向の負側(すなわちノズル11に近づく方向)に移動させる際にプランジャー132が使用される。プランジャー132を押圧することで基体部13がx方向の負側に移動する。すなわち、収容部12に収容された試料を排出することが可能になる。
【0022】
第1実施形態のプランジャー132は、軸部321と押圧部322とを含む。軸部321は、x方向に沿った長尺状の部材である。基体部13のうち摺動部311からみてノズル11とは反対側に位置する長尺状の部分が軸部321であるとも換言できる。軸部321の断面形状は、例えば円形である。軸部321におけるx方向の負側の端部がピストン部131と接続され、軸部321におけるx方向の正側の端部に押圧部322が設けられる。押圧部322は、利用者が基体部13をx方向の負側に移動させる際に押圧する部分であり、例えば円板状である。
【0023】
支持部材15は、基体部13および収容部12を支持するための部材である。第1実施形態の支持部材15は、外筒151と接続部材152とを含む。外筒151は、基体部13を支持するための筒状の部材であり、両端が開口する。外筒151の中心軸はx方向に平行である。外筒151の内部においてx方向に沿って移動可能なように、基体部13が外筒151の内部に支持される。
【0024】
接続部材152は、収容部12を支持するための部材である。接続部材152には、x方向に沿った貫通孔が形成される。接続部材152の貫通孔と収容空間Rとが連通するように、接続部材152に収容部12が支持される。具体的には、接続部材152のx方向の負側の端部に、収容部12のx方向の正側(ノズル11とは反対側)の端部が支持される。また、接続部材152の貫通孔と外筒151の内部空間とが連通するように、接続部材152に外筒151が接続される。具体的には、接続部材152のx方向の正側の端部に、外筒151が接続される。
【0025】
図2および
図3に例示される通り、x方向の負側から、ノズル11と収容部12と接続部材152と外筒151とが順番に位置する。そして、収容空間Rと接続部材152の貫通孔と外筒151の内部空間とが、x方向に沿って連続的に形成される。基体部13は、収容空間Rと接続部材152の貫通孔と外筒151の内部空間とにわたり、x方向に沿って移動可能である。なお、プランジャー132の押圧部322は、基体部13が第1位置P1にある場合に、外筒151内に挿入されないように形成される。また、支持部材15の構成は任意である。例えば、外筒151と接続部材152とは異なる部材を支持部材15が含んでよいし、外筒151と接続部材152とを一体的に形成してもよい。
【0026】
なお、基体部13の構成は以上の例示に限定されない。収容部12の密閉性を維持したまま揺動可能な揺動部を含み、x方向に沿って移動可能であれば、基体部13の構成は任意である。例えば、基体部13がピストン部131およびプランジャー132とは異なる部分を含んでもよいし、ピストン部131およびプランジャー132とを一体的に形成してもよい。
【0027】
図1から
図3に例示される通り、ノズル11と収容部12と基体部13と支持部材15とは、例えば、枠状のフレーム部17により外面を支持される。ただし、シリンジ100においてフレーム部17は必須ではない。
【0028】
上述した通り、本発明では、利用者が基体部13を移動させる操作を行うことなく、基体部13を第1位置P1から第2位置P2まで移動させることが可能である。基体部13を第1位置P1から第2位置P2まで移動させるために、弾性部材14および保持機構16を使用する。
【0029】
弾性部材14は、弾性的に変形する部材である。具体的には、弾性部材14は、第1位置P1にある場合に第2位置P2に近づく方向(すなわちノズル11から離れる方向)に基体部13を付勢可能である。第1実施形態では、線状の部材が螺旋状に巻かれた圧縮コイルばねが弾性部材14として使用される。すなわち、第1実施形態の弾性部材14の全長は、無荷重の状態から荷重を受けると自由長さから短縮し、荷重が軽くなると自由長さに近づく。
【0030】
図2に例示される通り、基体部13が第1位置P1にある場合には、弾性部材14は圧縮(短縮)した状態が維持される。一方で、
図3に例示される通り、基体部13が第2位置P2にある場合には、第1位置P1にある場合よりも弾性部材14が圧縮されていない。すなわち、第2位置P2にある場合には、第1位置P1にある場合よりも弾性部材14にかかる荷重が小さい状態である。
【0031】
弾性部材14は、基体部13の移動に応じて全長が変化するようにシリンジ100に設けられる。具体的には、弾性部材14は、基体部13がノズル11に近づく方向(すなわち第1位置P1に近づく方向)に移動すると、全長が短縮(すなわち圧縮)するように設置される。基体部13がノズル11に近づく方向に移動するほど、弾性部材14に係る荷重が大きくなるとも換言できる。
【0032】
例えば、外筒151の内側に弾性部材14が設置される。そして、弾性部材14の内周側に基体部13(第1実施形態ではピストン部131)が挿通される。すなわち、ピストン部131の中心軸と弾性部材14の中心軸とは略平行である。ピストン部131をシャフトとして、当該ピストン部131に巻回するように弾性部材14が設置されるとも換言できる。
【0033】
図2および
図3に例示される通り、基体部13には、弾性部材14の一端(x方向の正側の端部)支持するための部分(以下「第1支持部」という)B1を含む。第1実施形態では、ピストン部131におけるx方向の正側の端部に第1支持部B1が形成される。第1支持部B1の外径は、弾性部材14の内径を上回るように設計される。例えば、ピストン部131の周方向にわたり第1支持部B1が形成される。
【0034】
一方で、支持部材15は、弾性部材14の他端(x方向の負側の端部)を支持するための部分(以下「第2支持部」という)B2を含む。第1支持部B1よりもx方向の負側にある位置に第2支持部B2は形成される。
図2および
図3では、支持部材15のうち接続部材152に第2支持部B2を設ける構成を例示する。例えば、接続部材152において外筒151と接続される部分(x方向の正側の端部)は、外筒151の内部に挿入されるように形成する。そして、外筒151の内部に挿入される部分を第2支持部B2として利用する。
【0035】
具体的には、第1支持部B1と第2支持部B2との間に弾性部材14が設置される。基体部13がノズル11に近づく方向(第1位置P1に近づく方向)に移動すると、第1支持部B1により弾性部材14が圧縮される。弾性部材14が圧縮された状態では、基体部13はノズル11から離れる方向(第2位置P2に近づく方向)に付勢される。すなわち、
【0036】
以上の説明から理解される通り、基体部13は、第1位置P1にある状態では、弾性部材14によりノズル11から離れる方向に付勢される。なお、基体部13がノズル11に近づく方向に移動した際に弾性部材14が圧縮可能なように設置されれば、弾性部材14を設置するための構成は以上の例示に限定されない。
【0037】
保持機構16は、基体部13を第1位置P1に保持するための機構である。弾性部材14による基体部13の付勢が維持されるように、基体部13を保持する機構が保持機構16であるとも換言できる。すなわち、弾性部材14による付勢に対抗するように基体部13が保持される。
【0038】
具体的には、保持機構16は、ピン部材161と弾性部材162(第2弾性部材の例示)と操作部163とを含む。ピン部材161は、基体部13に嵌合可能な部材である。例えば、ピン部材161は、x方向(すなわち軸部321が延在する方向)に交差するw方向に沿って長尺な部材である。なお、w方向とy方向との異同は不問である。
図2には、ピン部材161の拡大図も図示されている。第1実施形態のピン部材161には、軸部321が挿通される挿通孔Sが形成される。軸部321は、挿通孔Sに挿通された状態でx方向に沿って移動可能である。
【0039】
図2および
図3に例示される通り、ピン部材161は、外筒151の内部空間を貫通するように当該外筒151に支持される。例えば、ピン部材161の一端N1および他端N2(挿通孔Sを挟んで相互に反対側に位置する2つの端部)が、が外筒151に支持される。なお、
図2および
図3では、w方向の負側に一端N1が位置し、w方向の正側に他端N2が位置する。ピン部材161は、外筒151の内部において軸部321が挿通孔Sに挿通された状態で、w方向に沿って移動可能なように外筒151に支持される。
【0040】
弾性部材162は、軸部321に当接するようにピン部材161を弾性力により付勢可能な部材である。例えば、圧縮コイルバネが弾性部材162として使用される。ピン部材161のうち挿通孔S(軸部321)よりもw方向の負側の部分に、弾性部材162が設けられる。例えば、弾性部材162の一端(w方向の負側の端部)は外筒151の内周面に支持され、弾性部材162の他端(w方向の正側の端部)がピン部材161に支持されるように、ピン部材161が設置される。
【0041】
第1実施形態では、ピン部材161は、弾性部材162によりw方向の正側に付勢される。したがって、挿通孔Sの内周面の一部(以下「当接部分」という)が軸部321に当接する方向に付勢される。第1実施形態では、挿通孔Sの内周面のうち軸部321からみて弾性部材14側の部分が当接部分に相当する。
【0042】
ピン部材161の他端N2は外部に露出すように設置される。そして、他端N2にはピン部材161を移動するための操作部163が接続される。操作部163は、例えば外筒151の外周面に設けられる。例えば、他端N2に形成された貫通孔を介して操作部163が接続される。第1実施形態では、操作部163を押下することで、ピン部材161をw方向の負側に移動させることができる。
【0043】
図1および
図3に例示される通り、プランジャー132の軸部321には、切欠部Kが形成される。具体的には、切欠部Kは、軸部321のうち他の部分に対して局所的に窪んだ部分である。軸部321の周方向の全周にわたり切欠部Kが形成される。なお、切欠部Kは軸部321において第1位置P1に対応する位置に形成される。軸部321において局所的に径が小さい部分が切欠部Kであるとも換言できる。
【0044】
図2に例示される通り、基体部13が第1位置P1にある状態では、ピン部材161が切欠部Kと嵌合する。ピン部材161が基体部13に嵌合している状態では、基体部13の移動が阻害される。したがって、基体部13が第1位置P1に保持される。すなわち、弾性部材14による基体部13の付勢が維持される。
【0045】
図3に例示される通り、基体部13が第2位置P2にある場合には、ピン部材161の挿通孔Sの内周面における当接部分は、弾性部材162の付勢により、軸部321に当接する。具体的には、軸部321のうち切欠部Kよりもx方向の負側にある部分(
図3ではx方向の負側の端部側の部分)に当接部分が当接する。
【0046】
そして、
図3の状態から、プランジャー132を押圧すると、ピン部材161(当接部分)が軸部321と当接した状態を維持したまま、基体部13がノズル11に近づく方向(第1位置P1に近づく方向)に移動する。すなわち、切欠部Kがピン部材161に近づくように移動する。切欠部Kがピン部材161まで到達すると、弾性部材162の弾性力により、ピン部材161が切欠部Kに嵌合する。
図4は、ピン部材161と切欠部Kとが嵌合している状態の拡大図である。
図4に例示される通り、ピン部材161のうちx方向の負側の表面Faが、切欠部Kにおけるx方向の負側の側面Fbに当接する。したがって、基体部13が第1位置P1に保持される。
【0047】
以上の説明から理解される通り、弾性部材162は、基体部13が第2位置P2から第1位置P1まで移動する際に、当該基体部13の移動を阻害することなく、ピン部材161(当接部分)を軸部321に当接するように付勢する。なお、基体部13が第2位置P2から第1位置P1まで移動する間は、弾性部材162は、軸部321に当接することで圧縮された状態である。
【0048】
ピン部材161と切欠部Kが嵌合した状態(すなわち基体部13が第1位置P1にある状態)から、操作部163を押下することで、ピン部材161をw方向の負側(すなわち当接部分が軸部321から離れる方向)に移動する。そして、ピン部材161がw方向の負側に移動すると、ピン部材161と切欠部Kとの嵌合が解除される。すなわち、ピン部材161のうちx方向の負側の表面Faと、切欠部Kにおけるx方向の負側の側面Fbとが接触しない状態になる。その結果、保持機構16による基体部13の保持が解除される。したがって、弾性部材14の弾性力により基体部13が第2位置P2に近づく方向(ノズル11から離れる方向)に移動する。ひいては、ノズル11から試料の吸引が開始される。
【0049】
そして、基体部13は、第1位置P1から第2位置P2まで移動すると停止する。すなわち、基体部13は、第2位置P2よりもさらにノズル11から離れた位置(x方向の正側)には移動しない。基体部13が弾性部材14の弾性力により移動する量(以下「移動量」という)が固定値に設定されるとも換言できる。すなわち、第1実施形態では、基体部13における第1位置P1から第2位置P2までの移動量(固定値)に応じた試料を採取することが可能になる。
【0050】
基体部13を第2位置P2で停止させる構成(すなわち基体部13の移動量を固定値にする構成)は任意である。例えば、
図2および
図3に例示される通り、第2位置P2に対応する位置(切欠き部よりもノズル11側にある位置)に、ピン部材161に当接するように突出する部分(以下「突出部」という)Tを軸部321に設ける。したがって、基体部13は、第1位置P1から突出部Tに当接する位置(すなわち第2位置P2)まで移動すると、停止する。なお、第2位置P2にある場合に弾性部材14が自由長さであるか否かは不問である。弾性部材14は、少なくとも基体部13を第1位置P1から第2位置P2まで移動する弾性力を有すればよい。
【0051】
また、例えば、突出部Tを設けずに、弾性部材14の弾性力を調整することで第2位置P2に停止させる構成も採用される。以上の構成では、第2位置P2にある場合に弾性部材14が自由長さになるように設計する。ただし、基体部13を第2位置P2で停止させる構成は以上の例示に限定されない。
【0052】
ここで、所望する量の試料が採取できるまで、基体部(プランジャー)を移動する操作を継続的に必要とするシリンジ(以下「比較例1」という)が従来からある。比較例1には、例えば、所望する量の試料の採取が終わるまで、プランジャーを引く操作を続けることで採取するシリンジ(以下「比較例1A」という)や、所望する量の試料の採取が終わるまで、プランジャーを押す操作を続けることで採取するシリンジ(以下「比較例1B)がある。比較例1Aはいわゆるアトラスシリンジであり、比較例1Bはいわゆるイージーサンプラーである。
【0053】
比較例1Aのシリンジでは、利用者は、所望する量の試料の採取が終わるまで、プランジャーを引く操作を続ける。具体的には、利用者は、プランジャーを操作するには、一方の手でシリンジを持ちつつ、他方の手でプランジャーを操作する必要がある。
【0054】
一方で、比較例1Bのシリンジでは、利用者は、片手でプランジャーを操作することが可能であるものの、比較例1Aと同様に、所望する量の試料の採取が終わるまで、プランジャーを押す操作が必要である。以上の説明から理解される通り、比較例1では、利用者は、所望する量の試料が採取できるまで基体部を移動する操作を継続的に行う必要がある。したがって、利用者にとって手間がかかり作業効率も悪いという問題がある。
【0055】
それに対して、第1実施形態の構成によれば、保持機構16による基体部13の保持を解除することで、弾性部材14の弾性力により基体部13が第1位置P1から第2位置P2に移動する。すなわち、利用者が基体部13を移動させる操作を必要とすることなく、ノズル11から試料が吸引される。言い換えれば、試料の採取を自動で行うことができる。ひいては、利用者の手間を軽減し、作業効率を向上することが可能である。
【0056】
また、比較例1では、利用者は、所望する量の試料を採取する場合、収容部に収容される試料の量を目視で確認しながら、プランジャーを操作する必要がある。したがって、利用者にとって不便である。それに対して、第1実施形態では、基体部13は弾性部材14の弾性力により第1位置P1から第2位置P2まで移動すると停止する。すなわち、収容部12に収容される試料の量を目視で確認することなく、所望の量(第1位置P1から第2位置P2の移動量に応じた量)の試料を採取することができる。
【0057】
第1実施形態では、切欠部Kがピン部材161に到達する位置(すなわち第1位置P1)まで基体部13を移動させると、弾性部材162の弾性力により当該ピン部材161が切欠部Kに嵌合する。そして、基体部13が第1位置P1に保持される。すなわち、基体部13を第1位置P1まで移動させた後に、基体部13を第1位置P1に保持するための操作(例えば、利用者が切欠部Kに嵌合するようにピン部材161を移動させる操作)をすることが不要である。ただし、本発明において、ピン部材161を切欠部Kに嵌合させるための操作を不要とするための構成は必須ではない。例えば、基体部13を第1位置P1まで移動させた後に、基体部13を第1位置P1に保持するための操作を必要とする構成も採用される。すなわち、保持機構16が弾性部材162を含まなくてもよい。
【0058】
採取した試料が収容部12に収容されている状態では、当該試料を排出するための操作(すなわち基体部13を第1位置P1まで移動する操作)により、ピン部材161を切欠部Kに嵌合させることができる。したがって、試料を排出するととともに、シリンジ100を試料が採取できる状態にすることができる。したがって、次に試料を採取する際には、ピン部材161と切欠部Kとの嵌合を解除するだけでよい。ひいては、利用者の手間をさらに軽減することができる。
【0059】
なお、保持機構16の具体的な構成は以上の例示に限定されない。切欠部Kがピン部材161に到達する位置までプランジャー132を押圧することで、ピン部材161を切欠部Kに嵌合させることが可能であれば、保持機構16の構成は任意である。例えば、ピン部材161が挿通孔Sを含まなくてもよい。さらには、基体部13を第1位置P1に保持することが可能であれば、保持機構16の構成は任意である。すなわち、保持機構16がピン部材161と弾性部材162と操作部163で構成されることは必須ではない。
【0060】
また、ピン部材161の挿通孔Sの形状(x方向からみたときの平面形状)は、第1位置P1にある場合にピン部材161が切欠部Kと嵌合可能であり、ピン部材161をw方向の負側に移動させたときに当該嵌合が解除できれば任意である。
【0061】
同様に、切欠部Kの形状についても、第1位置P1にある場合にピン部材161と嵌合可能であり、ピン部材161をw方向の負側に移動させたときにピン部材161との嵌合が解除されれば、任意である。例えば、軸部321の全周にわたり切欠部Kを形成しなくてもよい。また、軸部321についても断面形状が円形以外(例えば多角形など)でもよい。切欠部Kの形状や位置は軸部321の形状に応じて適宜に変更し得る。
【0062】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各形態において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0063】
第2実施形態では、本発明に係るシリンジ100の一態様に係る使用例を説明する。具体的には、航空機に使用される燃料(「試料」の例示)を検査するためにシリンジ100を使用する。
図5は、第2実施形態に係るシリンジ100のノズル11の断面図である。
図5に例示される通り、第2実施形態では、ノズル11の先端(収容部12とは反対側の端部)に検査部500が着脱可能に取り付けられる。
【0064】
検査部500は、シリンジ100により採取する燃料を検査可能な部材である。
図6は、検査部500の概略的な構成図である。
図6に例示され通り、検査部500は、試験紙51と、当該試験紙51を設置するための収容体52とを含む。試験紙51は、通過する燃料を検査可能な試薬が含有された紙である。例えば、燃料中における水の含有の有無を検査する試験紙51が使用される。所定量の水が燃料に含まれていると試験紙51の色が変化する。
【0065】
収容体52は、ノズル11の貫通孔Hと連通する連通孔53と、当該連通孔53の周囲に形成される溝部54とを含む。連通孔53は、x方向に沿った貫通孔Hである。連通孔53の内部には試験紙51が設置される。連通孔53を塞ぐように試験紙51が設置される。例えば、収容体52は、アクリルやポリカーボネート等のプラスチックで形成される。
【0066】
溝部54は、収容体52におけるx方向の正側の表面からx方向の負側に向かって形成される溝である。連通孔53の全周にわたり溝部54が形成される。すなわち、溝部54は環状の有底孔である。試験紙51は、連通孔53のうち溝部54の底よりもx方向の負側の部分に設けられる。なお、検査部500は、いわゆるウォーター・ディテクター(A.サール社製)である。
【0067】
溝部54は、連通孔53の周囲に位置する第1側壁部541と、当該第1側壁部541の周囲に位置する第2側壁部542で構成される窪みであるとも換言できる。第2側壁部542は、連通孔53からみて第1側壁部541の外側にある。第1側壁部541と第2側壁部542との間の空間が溝部54である。なお、x方向からみて、第1側壁部541は直径D1の円形であり、第2側壁部542は直径D2(>D1)の円形である。
【0068】
図5に例示される通り、第2実施形態では、溝部54にノズル11が嵌合することで、ノズル11の先端に検査部500が取り付けられる。第1実施形態で上述した通り、ノズル11は、第1部分111と第2部分112とを含む。第2実施形態では、ノズル11の貫通孔Hと検査部500の連通孔53とが連通するように、ノズル11の第1部分111と溝部54とが嵌合する。具体的には、第1部分111の内周面11aと連通孔53の第1側壁部541とが当接し、第1部分111の外周面11bと連通孔53の第2側壁部542とが当接するように、溝部54とノズル11とが嵌合する。ノズル11の外周面11bおよび内周面11aが溝部54と面接触するとも換言できる。溝部54に第1部分111が挿入されることで、溝部54とノズル11とが嵌合する。なお、ノズル11の先端面と溝部54の底とが当接しているか否かは不問である。
【0069】
第1部分111における内径および外径は、溝部54の幅(D2-D1)に応じて設定される。具体的には、第1部分111の内径は、第1側壁部541における直径D1に応じて(例えば直径D1をやや下回るくらいに)設定され、第1部分111の外径は、第2側壁部542における直径D2に応じて(例えば直径D2をやや下回るくらいに)設定される。その結果、第1部分111を溝部54に挿入すると、第1部分111の内周面11aと連通孔53の第1側壁部541とが当接し、第1部分111の外周面11bと連通孔53の第2側壁部542とが当接した状態で、溝部54とノズル11とが嵌合する。なお、第1部分111は、溝部54の形状に応じて形成される。ノズル11は、例えば耐摩耗性が高いポリアセタール等のプラスチックで形成される。第1実施形態で上述した通り、ノズル11と収容部12とは別個の部材で形成される。
【0070】
検査部500をノズル11に取り付けた状態で、検査対象となる燃料に検査部500の先端を接触させる。そして、保持機構16による基体部13の保持を解除すると、ノズル11から連通孔53を介して燃料が吸引される。ノズル11から燃料を吸引する際に、連通孔53に設けられた試験を燃料が通過する。したがって、燃料の検査が可能になる。検査のたびにノズル11に検査部500が着脱される。
【0071】
ここで、検査部500の連通孔53とノズル11とを嵌合させることで、ノズル11に検査部500を取り付ける構成(以下「比較例2」という)を想定する。
図7は、比較例2に係るノズルの断面図である。
図7から把握される通り、比較例2のノズルは、先端側に向かって単調減少する形状(すなわちテーパ形状)である。
【0072】
比較例2では、ノズルの外径が連通孔53の径に対応する部分までノズルを強く挿入(圧入)することで、連通孔53とノズルとを嵌合させる。したがって、
図7例示される通り、ノズルの外周面のうち外径が連通孔53の直径に対応する部分(太線部分)が、周方向にわたり線状に連通孔53に当接する。したがって、ノズルのうち連通孔53と接触する部分にかかる負荷が大きい。その結果、検査部500が検査のたびに着脱されることで、ノズルの摩耗が進行する。ノズルの摩耗が進行すると、検査部500(収容体52)とノズルとの間に隙間が発生し、試験紙51を通過せずに当該隙間から浸入した試料が採取される。したがって、検査の回数が増加するに伴い、検査の正確性が低下するという問題が発生する。
【0073】
それに対して、第2実施形態では、ノズル11の外周面11bおよび内周面11aが溝部54に面接触する。すなわち、比較例2よりも、ノズル11と検査部500とが接触する面積が大きい。したがって、ノズル11に係る負荷を軽減することができる。すなわち、比較例2よりもノズル11の摩耗を低減することが可能である。ひいては、検査の正確性が低下する恐れを低減できる。
【0074】
また、第2実施形態では、溝部54にノズル11を嵌合させることで、収容体52の一部(具体的には溝部54の内側の部分)が貫通孔Hに挿入される。その結果、基体部13がノズル11から離れる方向に移動することで、ノズル11の貫通孔Hおよび収容部12の収容空間Rが負圧になると、溝部54の底がノズル11の先端面に近づく方向に移動する。したがって、検査部500をノズル11に取り付ける段階では、溝部54にノズル11を強く押し込む必要はないという利点もある。ひいては、比較例2とよりも検査部500の取り付けが容易である。
【0075】
比較例2の構成では、ノズルを連通孔53に圧入するために、収容体52よりも硬度が低い樹脂(例えばポリプロピレン)でノズルが形成される。したがって、ノズルの摩耗が進行しやすい。ノズル11が耐摩耗性の高い材料で形成される第2実施形態の構成によれば、ノズル11の摩耗の進行をさらに抑制できる。
【0076】
第1実施形態で上述した通り、ノズル11は、収容部12に対して着脱可能である。したがって、仮にノズル11の摩耗が進行しても、ノズル11を取り換えることができるという利点もある。
【0077】
なお、第2実施形態で説明した燃料の検査では、規定される量(例えば5ml)をシリンジ100で採取する必要がある。以上の検査には、第1位置から第2位置まで移動する際の移動量(固定値)に応じた量が採取可能な構成が特に有効である。
【0078】
<変形例>
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を適宜に併合することも可能である。
【0079】
(1)前述の各形態では、弾性部材14として圧縮コイルばねを使用したが、例えば引張コイルばねを弾性部材14として使用してもよい。すなわち、基体部13が第1位置にあるときに、弾性部材14が自由長さよりも長い状態にあるように、弾性部材14をシリンジ100の任意の位置に設置する。そして、前述の各形態と同様に、保持機構16による保持が解除されると、弾性部材14の弾性力により基体部13が第2位置に近づく方向(ノズル11から離れる方向)に移動する。以上の説明から理解される通り、弾性部材14の種類は、第1位置にある場合に第2位置に近づく方向に基体部13を付勢可能であれば任意である。同様に、弾性部材162の種類についても、ピン部材161を軸部321に当接するように付勢することが可能であれば任意である。
【0080】
(2)前述の形態では、第1支持部B1をピストン部131におけるx方向の正側の端部に設ける構成を例示したが、第1支持部B1を設ける位置は以上の例示に限定されない。基体部13において第1支持部B1が形成される位置は、基体部13がノズル11に近づく方向に移動する際に、弾性部材14におけるx方向の正側の端部に当接することで圧縮させることが可能であれば、任意である。例えば、ピストン部131におけるx方向の正側の端部よりもノズル11に近い位置に第1支持部B1を形成してもよい。
【0081】
同様に、第2支持部B2が形成される位置は、第1支持部B1よりもx方向の負側にあり、弾性部材14の他端側が当接することが可能であれば、任意である。例えば、外筒151の内周面においてピストン部131に向かって弾性部材14に当接するように突出する第2支持部B2を設けてもよい。
【0082】
(3)本発明において、第1部分111と第2部分112とでノズル11を構成することは必須ではない。また、第1部分111と第2部分112とは異なる部分をノズル11が含んでもよい。すなわち、ノズル11の形状は任意である。ただし、検査部500をノズル11に嵌合させる構成では、ノズル11が第1部分111と第2部分112とを含む構成が好適である。
【0083】
(4)前述の各形態では、ノズル11を収容部12に着脱可能に設置する構成を例示したが、本発明において、ノズル11を収容部12に着脱可能に接続する構成は必須ではない。
【符号の説明】
【0084】
11 :ノズル
12 :収容部
13 :基体部
14 :弾性部材
15 :支持部材
16 :保持機構
17 :フレーム部
51 :試験紙
52 :収容体
53 :連通孔
54 :溝部
100 :シリンジ
111 :第1部分
112 :第2部分
131 :ピストン部
132 :プランジャー
151 :外筒
152 :接続部材
161 :ピン部材
162 :弾性部材
163 :操作部
311 :摺動部
321 :軸部
322 :押圧部
500 :検査部
541 :第1側壁部
542 :第2側壁部
B1 :第1支持部
B2 :第2支持部
H :貫通孔
K :切欠部
P1 :第1位置
P2 :第2位置
R :収容空間
S :挿通孔
T :突出部