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特許7075992靴用複合材の製造方法、金型、および、靴用複合材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】靴用複合材の製造方法、金型、および、靴用複合材
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/00 20060101AFI20220519BHJP
   A43B 13/04 20060101ALI20220519BHJP
   B29C 44/12 20060101ALI20220519BHJP
   B29K 75/00 20060101ALN20220519BHJP
   B29L 31/50 20060101ALN20220519BHJP
【FI】
B29C44/00 G
A43B13/04 A
B29C44/12
B29K75:00
B29L31:50
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020514875
(86)(22)【出願日】2018-04-19
(86)【国際出願番号】 JP2018016212
(87)【国際公開番号】W WO2019202716
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(73)【特許権者】
【識別番号】518337094
【氏名又は名称】加久企業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】原野 健一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 義範
(72)【発明者】
【氏名】郭 志雄
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-158708(JP,A)
【文献】特開2013-220354(JP,A)
【文献】特開2018-012326(JP,A)
【文献】特開昭57-167223(JP,A)
【文献】特開昭62-267129(JP,A)
【文献】特開2017-061143(JP,A)
【文献】特開2016-141153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00-40/60
B29D 35/00-35/14
A43B
A43C
A43D
C08J 9/00-9/42
B29C 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴用パーツを金型のキャビティー内に入れ、該キャビティー内で靴用パーツの水平方向の位置を固定させ、
前記キャビティーに発泡粒子を詰め込んで、前記発泡粒子を前記靴用パーツの表面上に積み重ね、
前記キャビティー内の空気を前記キャビティー外に排出させて、前記キャビティー内を真空状態にし、
前記キャビティー内に蒸気を注入し前記キャビティー内を加熱することにより、前記発泡粒子を溶融発泡させ、前記発泡粒子を互いに粘着させるとともに、前記発泡粒子を前記靴用パーツに粘着させ、
前記キャビティー内に冷却液を注入して、前記キャビティー内を冷却し、
前記発泡粒子が発泡して形成された発泡粒子層の表面に、前記靴用パーツが結合して、前記発泡粒子層と前記靴用パーツとが一体化した靴用複合材を得、
前記キャビティー内に発泡粒子を詰め込むステップにおいて、
ゲル粒子と前記発泡粒子とを混合し、
混合された前記ゲル粒子と前記発泡粒子とを前記キャビティー内に入れ、
前記ゲル粒子の数量は発泡粒子の数量よりも少なく、
前記発泡粒子が、非架橋TPU発泡粒子であり、
前記ゲル粒子が、ポリウレタンゲル粒子である、
靴用複合材の製造方法。
【請求項2】
前記発泡粒子は、TPUで形成され、
前記靴用パーツは、ゴムで形成されたゴム層と、該ゴム層に積層され且つゴム及びTPUで形成された表面層とを備え、
前記表面層と前記発泡粒子層とは、結合されており、
前記ゴム層のゴム濃度は、前記表面層のゴム濃度よりも高い、請求項1に記載の靴用複合材の製造方法。
【請求項3】
靴用パーツを金型のキャビティー内に入れ、該キャビティー内で靴用パーツの水平方向の位置を固定させ、
前記キャビティーに発泡粒子を詰め込んで、前記発泡粒子を前記靴用パーツの表面上に積み重ね、
前記キャビティー内の空気を前記キャビティー外に排出させて、前記キャビティー内を真空状態にし、
前記キャビティー内に蒸気を注入し前記キャビティー内を加熱することにより、前記発泡粒子を溶融発泡させ、前記発泡粒子を互いに粘着させるとともに、前記発泡粒子を前記靴用パーツに粘着させ、
前記キャビティー内に冷却液を注入して、前記キャビティー内を冷却し、
前記発泡粒子が発泡して形成された発泡粒子層の表面に、前記靴用パーツが結合して、前記発泡粒子層と前記靴用パーツとが一体化した靴用複合材を得、
前記発泡粒子は、TPUで形成され、
前記靴用パーツは、ゴムで形成されたゴム層と、該ゴム層に積層され且つゴム及びTPUで形成された表面層とを備え、
前記表面層と前記発泡粒子層とは、結合されており、
前記ゴム層のゴム濃度は、前記表面層のゴム濃度よりも高い、
靴用複合材の製造方法。
【請求項4】
前記キャビティー内で前記靴用パーツの水平方向の位置を固定させる固定位置は、前記キャビティー内に設けられた凹入パターンである、請求項1~3の何れか1項に記載の靴用複合材の製造方法。
【請求項5】
前記靴用パーツが単一材料で形成され、該単一材料がゴムである、請求項に記載の靴用複合材の製造方法。
【請求項6】
前記靴用パーツとして、材料が異なる靴用パーツを2つ用い、且つ、これらの靴用パーツを直接積み重ねることによって、一方の靴用パーツの水平方向の位置を前記キャビティー内で固定させ、前記靴用パーツは、RB、EVA、TPU、及び、発泡ゴムの中から選ばれた異なる材料で形成されている、請求項に記載の靴用複合材の製造方法。
【請求項7】
前記蒸気は、100℃以上の水蒸気であり、
前記金型の冷却後に、該金型内に水を注入して該金型の温度を35℃~25℃に保つ、請求項1~の何れか1項に記載の靴用複合材の製造方法。
【請求項8】
前記金型として、水平割りの金型を用い、該金型が下型と上型とを有し、
前記下型と、前記上型とで前記キャビティーを形成させつつ、前記下型と、前記上型との距離を1~2mmとした状態で、前記キャビティー内に前記発泡粒子を詰め込み、
前記距離を縮め前記発泡粒子を圧縮させた状態で、前記キャビティー内を真空状態にする、請求項1~の何れか1項に記載の靴用複合材の製造方法。
【請求項9】
前記金型として、下型と上型とを有する金型を用い、
前記キャビティー内で靴用パーツの水平方向の位置を固定させる固定位置は、前記下型の前記キャビティーの底面に配され、且つ、前記キャビティーの前端、後端又は中間位置の何れか1箇所又は2箇所以上に配される、請求項1~の何れか1項に記載の靴用複合材の製造方法。
【請求項10】
前記キャビティー内に発泡粒子を詰め込むステップでは、前記発泡粒子を含む複数種の粒子を混合状態で前記キャビティー内に供給する、請求項1~の何れか1項に記載の靴用複合材の製造方法。
【請求項11】
前記キャビティー内に発泡粒子を詰め込むステップでは、前記複数種の粒子を混合しつつ、この混合により混合状態となった前記複数種の粒子を前記キャビティー内に供給する、請求項10に記載の靴用複合材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴用複合材の製造方法、金型、および、靴用複合材に関する。
【背景技術】
【0002】
靴は、足を保護するという機能だけでなく、用途や使用場所によって様々な機能が消費者から求められており、靴業界には、大きなビジネスチャンスが存在する。衝撃吸収部を有する靴を履いて歩けば、地面を踏むときの反発力が直接下肢に伝わるのを該衝撃吸収部によって抑制することができる。そのため、衝撃吸収材(発泡材料、エアクッション等)を有する靴が数多く作られており、例えば、靴底用部材として衝撃吸収材を有する靴が知られている。
【0003】
台湾実用新案M513603、台湾実用新案M467338、台湾実用新案M403227、台湾特許I519401では、発泡方式により靴底用部材を作製している。これら3件の台湾実用新案では、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合体)樹脂発泡材を用いている。樹脂を金型内に入れてから加熱加圧発泡を行っている。前記台湾特許では、TPU(熱可塑性ポリウレタン)を金型内に入れ、発泡成形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】台湾実用新案M513603
【文献】台湾実用新案M467338
【文献】台湾実用新案M403227
【文献】台湾特許I519401
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許では、TPU発泡技術を用いており、得られた靴底用部材は、弾力性に優れ、圧縮による永久変形がし難いものとなるが、発泡後の靴底用部材に接着剤を塗り、そして、耐摩耗性及び滑り止め機能を有するゴム又はEVAで作製した靴用パーツを貼り合せることが必要となる。よって、接着剤を塗る時間がかかってしまう。また、靴用パーツと靴底用部材との接着強度を高めることも求められる。
【0006】
また、工業的に大量生産できるように縦型大面積の金型が求められ、また、従来のTPU発泡では、縦型発泡できる金型が用いられている。本発明では、今までにないTPU発泡の金型を水平に設置することを検討した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、金型内発泡により、靴用パーツと発泡粒子層との結合強度が高い上に、接着剤を塗るステップを省略でき、短時間で簡便に靴用複合材を得ることができる、靴用複合材の製造方法を提供するとともに、金型、および、靴用複合材を提供することを課題とする。
【0008】
本発明に係る靴用複合材の製造方法は、靴用パーツを金型のキャビティー内に入れ、該キャビティー内で靴用パーツの水平方向の位置を固定させ、
前記キャビティーに発泡粒子を詰め込んで、前記発泡粒子を前記靴用パーツの表面上に積み重ね、
前記キャビティー内の空気を前記キャビティー外に排出させて、前記キャビティー内を真空状態にし、
前記キャビティー内に蒸気を注入し前記キャビティー内を加熱することにより、前記発泡粒子を溶融発泡させ、前記発泡粒子を互いに粘着させるとともに、前記発泡粒子を前記靴用パーツに粘着させ、
前記キャビティー内に冷却液を注入して、前記キャビティー内を冷却し、
前記発泡粒子が発泡して形成された発泡粒子層の表面に、前記靴用パーツが結合して、前記発泡粒子層と前記靴用パーツとが一体化した靴用複合材を得る、靴用複合材の製造方法である。
【0009】
また、本発明に係る金型は、上型と下型とを有する金型であって、
前記上型と前記下型とを重ね合せることで、前記上型と前記下型との間にキャビティーが形成されるように構成され、
前記キャビティーの底面には、靴用パーツの水平方向の位置を固定する固定位置を備え、
該固定位置で前記靴用パーツの水平方向の位置を固定し、前記キャビティー内に発泡粒子を充填させた後に、該発泡粒子を発泡させることによって、前記発泡粒子が発泡して形成された発泡粒子層の一方の表面に、前記靴用パーツが結合して、前記発泡粒子層と前記靴用パーツとが一体化した靴用複合材を作製する、金型である。
【0010】
さらに、本発明に係る靴用複合材は、不均一な粒子径の複数個の発泡粒子が互いに積み重なることによって形成された発泡粒子層と、
該発泡粒子層の一の表面の前端、後端、又は、前端と後端との中間位置に配された1又は2以上の靴用パーツとを備えており、
金型内で前記発泡粒子が発泡して前記発泡粒子層が前記靴用パーツに粘着した靴用複合材である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る靴用複合材の製造方法のフロー図。
図2】靴用パーツを金型内に入れる模式図。
図3】金型内に発泡粒子を詰め込む模式図。
図4】金型内に発泡粒子が詰め込まれた状態を示す模式図。
図5】金型内を真空にする模式図。
図6】金型内を蒸気で加熱する模式図。
図7】完成品の断面模式図。
図8】他実施形態に係る靴用複合材の製造方法のフロー図。
図9】他実施形態において、キャビティーを形成させつつ、上型と下型との距離を1~2mmとした模式図。
図10】他実施形態において、2つの靴用パーツを積み重ねた模式図。
図11】他実施形態に係る靴用複合材であって、ゲル粒子と発泡粒子とが混合された発泡粒子層を備える靴用複合材の模式図。
図12】混合機の斜視図。
図13】混合機の側面図。
図14】混合機の正面図。
図15】混合機の正面の断面図。
図16】混合機の正面の断面図(複数種の粒子を混合槽に供給している状態を示す図。)。
図17】混合機の正面の断面図(複数種の粒子を混合しつつ、混合状態の複数種の粒子を混合槽外に排出している状態を示す図。)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
【0013】
図1には、本実施形態に係る靴用複合材の製造方法のフロー図を示す。本実施形態に係る靴用複合材の製造方法では、靴用パーツを金型内に入れ、金型内に発泡粒子を詰め込み、金型内を真空にし、金型内を蒸気で加熱し、金型内を冷却してから、靴用複合材を取り出す。
【0014】
図2~7に、本実施形態に係る製造方法を詳しく示す。靴用パーツ1を金型2のキャビティー21内に入れ、該キャビティー21内で靴用パーツ1の水平方向の位置を固定位置22で固定する。靴用パーツ1は単一材料で形成され、該単一材料をゴムとすることができる。固定位置22は、キャビティー21内に設けられた凹入パターンであり、キャビティー21の前端、後端、又は中間位置に設けられ、2か所以上設けられてもよい。前記金型2のキャビティー21をアウトソールの形成に用いる場合には、金型2は、キャビティー21を1つのみ備えてもよく、2以上備えてもよい。
【0015】
図3、4に示すように、金型2のキャビティー21内に発泡粒子3を詰め込んで、発泡粒子3の一部を靴用パーツ1の表面上に積み重ねる。前記発泡粒子3は、EPOP(非架橋TPU発泡粒子)である。粒子径が均一であり単一種類の発泡粒子3を金型2のキャビティー21内に充填する例を挙げて、本実施形態を説明する。
【0016】
図5に示すように、キャビティー21内の空気をキャビティー21外に排出させて、キャビティー21内を真空状態にする。キャビティー21内に残っている空気をキャビティー21外に排出することにより、キャビティー21は、靴用パーツ1及び発泡粒子3が存在する部分以外の部分が真空状態になる。
【0017】
図6に示すように、キャビティー21内に蒸気を注入しキャビティー21内を加熱することにより、発泡粒子3を溶融発泡させ、発泡粒子3を互いに粘着させるとともに、発泡粒子3を靴用パーツ1に粘着させる。蒸気は、水蒸気であり、また、水蒸気の温度は100℃以上である。
【0018】
キャビティー21内に冷却液を注入して、キャビティー21内を冷却する。金型2の冷却後に、金型2内に水を注入して金型2の温度を25℃~35℃に保つ。
【0019】
図7に示すように、前記発泡粒子3が発泡して形成された発泡粒子層30の表面に、前記靴用パーツ1が結合して、前記発泡粒子層と前記靴用パーツ1とが一体化した靴用複合材を得る。即ち、加熱発泡後の複数の発泡粒子3が、一層の発泡粒子層30を構成し、該発泡粒子層30の表面に靴用パーツ1が結合している。また、本実施形態及び図面では、アウトソール及び滑り止め靴底を組み合わせた例を示す。
【0020】
上述したように、金型内発泡により、靴用パーツ1と発泡粒子層30とが一体化して靴用複合材を得ることができる。靴用パーツ1と発泡粒子層30との結合強度が高い上に、接着剤を塗るステップを省略でき、短時間で簡便に靴用複合材を得ることができるから、本発明の目的を達成できることがわかる。
【0021】
図8には、他実施形態に係る靴用複合材の製造方法のフロー図を示す。
前記金型として、水平割りの金型を用いる。金型は下型と上型とを有する。
図9には、本実施形態の金型のキャビティー内に発泡粒子を詰め込む前に、下型と、上型とでキャビティーを形成させつつ、下型と、上型との距離を1~2mmとした状態を示す。金型2を水平に配置し、下型と、上型とでキャビティー21を形成させつつ、下型と、上型との距離を1~2mmとした状態で、キャビティー21内に発泡粒子を詰め込む。そして、前記距離を縮め前記発泡粒子3を圧縮させた状態で、前記キャビティー21内を真空状態にする。下型と、上型とでキャビティー21を形成させつつ、下型と、上型との距離を1~2mmとした状態で、キャビティー21内に発泡粒子を詰め込むことにより、キャビティー21全体の空間が大きい状態で発泡粒子3をキャビティー21内に詰め込むことができるので、キャビティー21内に発泡粒子3を多く詰め込むことができる。また、前記距離を縮め前記発泡粒子3を圧縮させた状態で、前記キャビティー21内を真空状態にすることにより、発泡粒子3をきちんと整列させた状態で前記キャビティー21内を真空状態にすることができる。
【0022】
図10には、他の実施形態を示す。図10の靴用パーツ1と、靴用パーツ10とは、機能、形状、用途が異なる。また、2つの靴用パーツ1、10を直接積み重ね、又は、水平方向に間隔を空けて配置する。また、2つの靴用パーツ1、10を直接積み重ねる場合には、一方の靴用パーツ1の水平方向の位置をキャビティー21内で固定させる。前記靴用パーツは、RB、EVA、TPU、及び、発泡ゴムの中から選ばれた異なる材料で形成されている。
【0023】
図11には、本実施形態の金型2のキャビティー21内に発泡粒子3を詰め込むステップにおいて、単一種類の発泡粒子3(EPOP、非架橋TPU発泡粒子)を用い、ゲル粒子31と発泡粒子3とを混ぜてキャビティー21内に入れ、且つ、ゲル粒子31の数量は発泡粒子3の数量よりも少なく、ゲル粒子31はポリウレタンゲル粒子である、靴用複合材を示す。
【0024】
本実施形態の金型は、上型24と下型23とを備え、上型24と下型23とを重ね合せることで上型24と下型23との間にキャビティー21が形成されるように構成され、キャビティー21の底面には、靴用パーツ1の水平方向の位置を固定する固定位置22を備え、固定位置22で靴用パーツ1の水平方向の位置を固定し、キャビティー21内に発泡粒子3を充填させた後に、発泡粒子3を発泡させることによって、発泡粒子3が発泡して形成された発泡粒子層30の一方の表面に、靴用パーツ1が結合して、発泡粒子層30と靴用パーツ1とが一体化した靴用複合材を作製する。上型24には、発泡粒子を供給するためのフィーダー、蒸気通路、冷却水通路、及び、前記真空状態にするために空気を排出する排出通路が含まれ、下型23には、蒸気通路、冷却水通路、及び、前記真空状態にするために空気を排出する排出通路が含まれる。
【0025】
上述した製造方法により、複数個の発泡粒子3が不均一な粒子径で互いに積み重なることによって発泡粒子層30が形成され、かつ、発泡粒子層30の一の表面の前端、後端、又は、前端と後端との中間位置に靴用パーツ1が配される。金型内で発泡粒子3が発泡して発泡粒子層30が靴用パーツ1に粘着した靴用複合材を作製することができる。
【0026】
なお、本発明に係る靴用複合材の製造方法、金型、および、靴用複合材は、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る靴用複合材の製造方法、金型、および、靴用複合材は、上記した作用効果によって限定されるものでもない。さらに、本発明に係る靴用複合材の製造方法、金型、および、靴用複合材は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0027】
例えば、靴用複合材は、前記発泡粒子がTPU(熱可塑性ポリウレタン)で形成され、前記靴用パーツがゴムで形成されている場合、前記靴用パーツは、該ゴムで形成されたゴム層と、該ゴム層に積層され且つゴム及びTPUで形成された表面層とを備え、前記表面層と前記発泡粒子層とは、結合されており、前記ゴム層のゴム濃度は、表面層のゴム濃度よりも高いことが好ましい。
靴用複合材は、斯かる構成を有することにより、靴用パーツと発泡粒子層との結合力が高くなるという利点を有する。
前記表面層は、ゴム及びTPUに加えて、相溶化剤を含むことが好ましい。
前記表面層は、ゴムを40~85質量%、TPUを10~40質量%、前記相溶化剤を5~20質量%含有することが好ましい。
【0028】
靴用複合材の製造方法で、発泡粒子を含む複数種の粒子(例えば、ゲル粒子及び発泡粒子を含む複数種の粒子)をキャビティー内に供給する場合、複数種の粒子を混合状態でキャビティー内に供給することが好ましい。具体的には、複数種の粒子を混合しつつ、この混合により混合状態となった複数種の粒子をキャビティー内に供給することが好ましい。より具体的には、複数種の粒子を混合機で混合しつつ、この混合により混合状態となった複数種の粒子を混合機からキャビティー内に供給することが好ましい。
図12~15に示すように、前記混合機100は、横型円筒状の混合槽101と、混合槽101内に複数種の粒子を供給する供給部102と、混合槽101内の複数種の粒子を撹拌する撹拌装置103と、該撹拌により混合状態となった複数種の粒子を混合槽101外に排出する排出部104とを備える。
また、前記混合機100は、混合状態の複数種の粒子を排出部104からキャビティーに供給するように構成されている。
前記撹拌装置103は、前記混合槽101の仮想中心軸に沿って配され且つ軸周りに回転するシャフト131と、該シャフト131に装着され、且つ、該シャフト131から混合槽101の円筒状の壁面近傍まで延びる板状の回転翼132とを備える。
前記混合機100は、図16、17に示すように、供給部102によって複数種の粒子105を混合槽101内に供給し、該供給により混合槽101の底部に溜まった複数種の粒子105を、回転翼132が回転することで、混合槽101の上部まで持ち上げるように構成されている。
すなわち、靴用複合材の製造方法では、複数種の粒子が混合槽101の底部に溜まった状態で回転翼132を回転させると、混合槽101の底部に溜まった複数種の粒子を回転翼132によって持ち上げ、そして、回転翼132の先端がシャフト131よりも上方の位置まで上がると、複数種の粒子がシャフト方向に向かって転がり、複数種の粒子が混合される。
また、靴用複合材の製造方法では、供給部102によって複数種の粒子が混合槽101内に供給されると、比重や粒径の関係で複数種の粒子の中で比較的下方に溜まりやすい粒子(以下、「下方に溜まりやすい粒子」ともいう。)が存在し、複数種の粒子が偏在してしまう。靴用複合材の製造方法では、下方に溜まりやすい粒子が回転翼132によって混合槽101の壁面に沿って持ち上がり、回転翼132の先端がシャフト131よりも上方の位置まで上がると、下方に溜まりやすい粒子は混合槽101の壁面側からシャフト方向に向かって他の粒子よりも速い速度で転がり、その結果、複数種の粒子が十分に混合された状態となる。
また、排出部104は、前記混合槽101の壁面に設けられた排出口141と、該排出口141から混合状態の複数種の粒子を吸引する吸引部とを有する。
前記排出口141は、シャフト131よりも上方に設けられている。前記混合槽101の壁面の円形状断面において、前記混合槽101の壁面の頂点111と、前記排出口141の中心との間の角度θは、35°~45°が好ましい。
言い換えれば、靴用複合材の製造方法では、複数種の粒子をすくい上げて、相対的に下方にあった粒子を相対的に上方にあった粒子よりも上側にすくい上げることで、粒子の上下位置を逆転させて、複数種の粒子を十分に混合させる。そして、十分に混合された状態で複数種の粒子を取り出す。
従って、靴用複合材の製造方法では、十分に混合された状態で複数種の粒子をキャビティー内に供給することができる。
【符号の説明】
【0029】
1:靴用パーツ、10:靴用パーツ、2:金型、21:キャビティー、22:固定位置、3:発泡粒子、30:発泡粒子層、31:ゲル粒子、
100:混合機、101:混合槽、102:供給部、103:撹拌装置、104:排出部、105:複数種の粒子、111:頂点、131:シャフト、132:回転翼、141:排出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17