(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結晶形
(51)【国際特許分類】
C07D 413/14 20060101AFI20220519BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20220519BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220519BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220519BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220519BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
C07D413/14 CSP
A61K31/506
A61P11/00
A61P29/00
A61P35/00
A61P37/06
(21)【出願番号】P 2020560586
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2019051819
(87)【国際公開番号】W WO2019145460
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-09-15
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/051938
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517248845
【氏名又は名称】イドーシア ファーマシューティカルズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IDORSIA PHARMACEUTICALS LTD
【住所又は居所原語表記】HEGENHEIMERMATTWEG 91, 4123 ALLSCHWIL, SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ゲリー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス フォン ラウマー
【審査官】▲高▼岡 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特許第6655754(JP,B2)
【文献】特表2017-528464(JP,A)
【文献】特表2017-527577(JP,A)
【文献】特表2016-502538(JP,A)
【文献】国際公開第2009/011850(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a. 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:3.6°、8.2°及び18.3°におけるピークの存在;又は、
b. 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:6.7°、8.5°及び10.9°におけるピークの存在;又は、
c. 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:8.2°、17.9°及び21.0°におけるピークの存在;
により特徴づけられる
結晶形の、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの
結晶であって、
【化1】
当該粉末X線回折ダイアグラムは、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射を用いて得られ、2θ値の精度は2θ+/-0.2°の範囲内である、結
晶。
【請求項2】
粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:3.6°、7.2°、8.2°、8.7°及び18.3°におけるピークの存在により特徴づけられる
結晶形の、請求項1に記載の化合物、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン
-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結
晶であって、当該粉末X線回折ダイアグラムは、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射を用いて得られ、2θ値の精度は2θ+/-0.2°の範囲内である、結
晶。
【請求項3】
粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:3.6°、7.2°、8.2°、8.7°、9.1°、10.8°、13.9°、17.0°、17.5°及び18.3°におけるピークの存在により特徴づけられる
結晶形の、請求項1に記載の化合物、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結
晶であって、当該粉末X線回折ダイアグラムは、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射を用いて得られ、2θ値の精度は2θ+/-0.2°の範囲内である、結
晶。
【請求項4】
図1に示す粉末X線回折パターンを本質的に示す、請求項2又は3に記載の化合物、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結
晶。
【請求項5】
示差走査熱量測定により決定される約259℃における吸熱イベントを有する、請求項2~4のいずれか1項に記載の化合物、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結
晶。
【請求項6】
当該結晶形が
無水物である、請求項2~5のいずれか1項に記載の化合物、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結
晶。
【請求項7】
a) 10mgの(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドを1mLのメタノールと混合するか、又は、20mgの(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドをメタノールとアセトニトリルの約3:1混合物1mLと混合する工程;b) 0.1℃/minの勾配で約65℃に加熱することにより、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドを溶解する工程;
c) 0.1℃/minの勾配を使用することにより、前記混合物を約20℃に冷却する工程;及び
d) 生成物をろ過し、乾燥する工程;
により得ることができる;
請求項2~6のいずれか1項に記載の化合物、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結
晶。
【請求項8】
a. 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:6.7°、8.5°、10.9°、13.2°及び14.5°におけるピークの存在;又は、
b. 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:6.8°、8.2°、14.1°、17.9°及び21.0°におけるピークの存在;
により特徴づけられる
結晶形の;請求項1に記載の化合
物(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結
晶であって、当該粉末X線回折ダイアグラムは、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射を用いて得られ、2θ値の精度は2θ+/-0.2°の範囲内である、結
晶。
【請求項9】
a.
図2に示す粉末X線回折パターンを本質的に示し;粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:6.7°、8.5°、10.9°、13.2°及び14.5°におけるピークの存在により特徴づけられる
結晶形;又は、
b.
図3に示す粉末X線回折パターンを本質的に示し;粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:6.8°、8.2°、14.1°、17.9°及び21.0°におけるピークの存在により特徴づけられる
結晶形;
の、
請求項8に記載の化合物、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結
晶。
【請求項10】
粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:6.7°、8.5°、10.9°、13.2°及び14.5°におけるピークの存在により特徴づけられる
結晶形の;請求項8又は9に記載の化合物、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結
晶であって、無水物である、結
晶。
【請求項11】
粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:6.8°、8.2°、14.1°、17.9°及び21.0°におけるピークの存在により特徴づけられる
結晶形の;請求項8又は9に記載の化合物、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結
晶であって、二水和物である、結
晶。
【請求項12】
医薬として使用するための、請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結
晶。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結
晶を有効成分として有し、さらに少なくとも1種の薬学的に許容される担体を有する医薬組成物
【請求項14】
医薬組成物の製造において使用するための請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン
酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結
晶であって、当該医薬組成物が、化合物、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドを有効成分として有し、さらに少なくとも1種の薬学的に許容される担体材料を有する、結
晶。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結晶
を有効成分として含む、癌、自己免疫障害、炎症性疾患、移植拒絶又は線維症の予防又は治療において使用するための医薬。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結晶
を有効成分として含む、癌、自己免疫障害、炎症性疾患、移植拒絶又は線維症の予防用又は治療用の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な結晶形(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミド((3S,4S)-1-Cyclopropylmethyl-4-{[5-(2,4-difluoro-phenyl)-isoxazole-3-carbonyl]-amino}-piperidine-3-carboxylic acid (1-pyrimidin-2-yl-cyclopropyl)-amide)(以下、「化合物」とも記載する。):
【0002】
【0003】
その製造方法、当該結晶形を有する医薬組成物、そのような結晶形から製造される医薬組成物、及び、特に癌、自己免疫障害、炎症性疾患、移植拒絶又は繊維症の治療のための、CXCL11/CXCL12受容体CXCR7の調節剤としてのそれらの使用に関する。本発明はさらに、癌(特に、悪性神経膠腫(malignant glioma)、多形膠芽腫(glioblastoma multiforme)を含む脳腫瘍;神経芽細胞腫;膵臓腺癌/膵管腺癌を含む膵臓癌;結腸癌、肝細胞癌、胃癌を含む消化器癌;カポジ肉腫;成人T細胞白血病を含む白血病;リンパ腫;肺癌;乳癌;横紋筋肉腫;前立腺癌;食道扁平上皮癌;口腔扁平上皮癌;子宮体癌;甲状腺乳頭癌を含む甲状腺癌;転移性癌;肺転移;黒色腫及び転移性黒色腫を含む皮膚癌;膀胱癌;多発性骨髄腫;骨肉腫;頭頸部癌;並びに腎明細胞癌、転移性腎明細胞癌を含む腎癌)の治療における、1又2種以上の治療剤及び/又は放射線療法及び/又は標的療法と組み合わせた、医薬としての当該結晶形に関する。
【背景技術】
【0004】
ケモカイン受容体は、ペプチド性のケモカインリガンドに高い親和性で結合するGタンパク質共役受容体(GPCR)の一群である。ケモカイン受容体の主な機能は、安静時及び炎症時において、白血球のリンパ器官及び組織への輸送をガイドすることであるが、ある種のケモカイン受容体は、非造血系細胞及びそれらの前駆細胞に対する役割を持つことが知られている。
【0005】
CXCR7(別名、ACKR3、別名、RDC1、別名、CMKOR1、別名、GPR159)には2種のケモカインリガンドが知られている:CXCL12(別名、ストロマ
細胞由来因子1、SDF-1;別名、前駆B細胞増殖刺激因子、PBSF)及びCXCL11(別名、l-TAC、別名、INF-y-誘導性T細胞化学誘引物質(INF-y-inducible T cell a chemo-attractant))。
【0006】
ストロマ由来の化学誘引物質であるCXCL12は、免疫監視機構及び炎症性反応の制御に関与する。CXCL12は、骨髄ストロマ細胞、内皮細胞、心臓、骨格筋、肝臓、脳、腎臓、柔細胞より分泌され、幹細胞増殖、生存及び造血/前駆体の骨髄へのホーミングにおいて本質的な役割を担う(Rankin SMら;Immunol let.2012、145(1-2):47-54)。また、CXCL12は、骨髄由来前駆細胞を脈管形成部位に動員する。さらに、CXCL12は発癌において重要な役割を果たす。CXCL12は、内皮前駆細胞及び骨髄由来免疫抑制細胞の腫瘍部位及び他の骨髄由来細胞への動員を促進する。さらに、CXCL12は、腫瘍進行と関連した血管新生(angiogenesis)/脈管形成(vasculogenesis)を制御し、循環腫瘍細胞の転移部位への播種に重要な役割を担う。その走化機能に加え、CXCL12は腫瘍細胞の増殖、運動性及び生存を制御することが示された(Kryczek Iら;Cancer
Res.2005、65(2):465-72;Teicher BAら;Clin Can Res.2010、16(11):2927-31;Domanska UMら;European J of Cancer。2013、49(1):219-30)。
【0007】
CXCR7に加えて、CXCL12はCXCR4(別名、フュージン、別名、白血球由来7回膜貫通型ドメイン受容体;LESTR、別名、D2S201E、別名、7回膜貫通型セグメント受容体、別名、HM89、別名、リポ多糖類付随タンパク3;lap3、別名、LPS付随タンパク3)に結合し、活性化し、CXCL11はCXCR3(別名、GPR9、別名、CD183)に結合し、活性化する。
【0008】
従って、CXCR7とそのリガンドであるCXCL12及びCXCL11との相互作用(以下、CXCR7軸と記載する)は、体内の特定の部位、特に炎症、免疫障害及び免疫機能障害部位への受容体担持細胞のガイドに関わっており、また、組織障害、アポトーシス誘導、細胞増殖及び血管新生抑制にも関連している。CXCR7及びそのリガンドは、癌、自己免疫障害、炎症、感染症、移植拒絶、線維症及び神経変性を含む種々の病的状態において、上方制御されて高頻度で発現している。
【0009】
癌は全世界の主要な死因の1つである。腫瘍は、異常に増殖する悪性癌細胞に加えて、機能的に支持する微小環境からなる。この腫瘍微小環境は、複雑に配置された細胞、細胞外マトリクス成分及びシグナル伝達分子からなり、ストロマ及び腫瘍細胞間のコミュニケーションの変化により確立される。腫瘍が大きくなるに従い、(血管の成長を促進する)血管新生因子等の、腫瘍の成長を助長することができ、又は、宿主の免疫応答の攻撃の回避を補助することができる種々の因子の産生を誘引する。CXCL12は腫瘍内で産生される血管新生及び免疫調節因子である。
【0010】
本発明の結晶性CXCR7調節剤は、単独で又は組み合わせて、CXCL11/CXCL12受容体CXCR7の発現が癌における病気の進行と関連する癌(特に、膵臓癌、膵臓腺癌、乳癌、ホルモン抵抗性前立腺癌、腎細胞癌、子宮頚部癌、子宮頸部上皮内腫瘍、甲状腺乳頭癌、膀胱癌、ユーイング肉腫、結腸癌、大腸癌、肺癌、肺腺癌、非小細胞性肺癌、髄膜腫、MALTリンパ腫、有刺細胞癌、神経内分泌腫瘍、鼻咽頭癌、多形膠芽腫、星膠細胞腫、神経膠腫、肝細胞癌、エストロゲン陽性乳癌、骨肉腫、胆嚢癌、腎腫瘍及び腎細胞癌)において有用であろう。また、CXCR7は、白血病、腺癌、脳転移、多発性骨髄腫、頭頸部癌、原発性皮膚黒色腫(primary cutaneous melanoma)、黒色腫、転移性黒色腫、横紋筋肉腫、下垂体腺腫、口腔扁平上皮癌、口腔腫
瘍、リンパ形質細胞性リンパ腫、成人T細胞白血病、脳腫瘍、食道扁平上皮癌、食道癌、卵巣悪性腫瘍、リンパ腫、ウイルス誘発性腫瘍、耳鼻咽喉新生物、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、甲状腺癌、子宮頸部扁平上皮癌、子宮体癌、神経芽細胞腫、消化器癌、リンパ増殖性疾患、乳房外ページェット病、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、胃癌、神経鞘腫及び絨毛癌、悪性胸膜中皮腫、神経性腫瘍、髄膜腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、口腔白板症、カポジ肉腫及び胞巣状(alveolar)横紋筋肉腫においても発現している(概説についてはSunら参照;Cancer Metastasis Rev.2010、29(4)、709-722)。
【0011】
本発明のCXCR7調節剤は、単独で又は組み合わせて、実験疾患モデルにおいて、単剤として、又は、細胞毒性療法と組み合わせて、siRNA、shRNA、マイクロRNA、過剰発現、CXCR7ノックアウト動物、CXCR7アゴニスト、CXCR7アンタゴニスト、抗体又はナノボディを用いたCXCR7調節が、腫瘍成長に影響を与えることが示された疾患(そのような疾患には、特に、肝細胞癌(Xue TCら;Exp Ther Med.2012、3(1):117-123;Zhengら;Journal of Experimental and Clinical Cancer Research。2010、11;29:31)、カポジ肉腫(Raggo Cら;Cancer Res.2005、65(12):5084-95)、T細胞白血病(Jin Zら;Int J Cancer.2009、125(9):2229-35)、リンパ腫(Burns JMら;J Exp Med.2006、203(9):2201-13)、肺癌、乳癌(Miao Zら;PNAS.2007、104(40):15735-40)、胃癌(De-Min Mら;World J Surg Oncol.2016、14(1):256-266)、横紋筋肉腫(Grymula Kら;Int J cancer.2010、127(11):2554-68)、前立腺癌(Wang Jら;J Biol Chem.2008、283(7):4283-94)、膵臓癌(Shakir Mら;Pancreas.2015、44(4):528-34)、食道扁平上皮癌(Zhou SMら;Oncol Rep.2016、35(6):3453-9)、子宮体癌(Long Pら;Tumour boil.2016、37(6):7473-80)、甲状腺乳頭癌(Zhang Hら;Tumour boil.2016、37(2):2415-23)、口腔扁平上皮癌(Chen Nら;Tumour boil.2016、37(1):567-75)、肺転移(Goguet-Surmenianら;Br J Cancer.2013、109(6):1579-85)、黒色腫(McConnell ATら;Br J Dermatol.2016、doi:10.1111/bjd.14720)、膀胱癌(Liu Lら;Mol Med Rep.2013、8(1):140-6)、多発性骨髄腫(Azab AKら;Blood.2014、124(12):1905-14)、骨肉腫(Zhang Yら;Oncol Rep.2014、32(3):965-72)、結腸癌(Wang HXら;Mol Clin Oncol.2015、3(6):1229-1232)、グレードIVの星膠細胞腫(Walters MJら;Br J Cancer.2014、110(5):1179-88)、頭頸部癌(Maussang Dら;J Biol Chem.2013、288(41):29562-72)、神経芽細胞腫(Liberman Jら;Plos One.2012、7(8):e43665)及び膠芽腫(Liu Y;Anticancer Res.2015、35(1):53-64;Walters MJら;Br J Cancer.2014、110(5):1179-88;Ebsworth Kら;J Clin Oncol.2012、30(15) e13580)が含まれる。);腫瘍関連血管に影響を与えることが示された疾患(Miao Zら、PNAS.2007、104(40):15735-40);及び、腫瘍細胞播種を減少させることが示された疾患(Grymula Kら;Int J cancer.2010、127(11):2554-68);において有用であると考えられる。
【0012】
本発明のCXCR7調節剤は、単独で又は組み合わせて、(例えば、siRNA、shRNA、マイクロRNA、過剰発現、CXCR7ノックアウト動物、CXCR7アゴニスト、CXCR7アンタゴニスト、抗体又はナノボディを用いた)CXCR7調節が、白血球の移動を制御し(Berahovich RDら;Immunology.2014、141(1):111-22)及びミエリン/神経修復を促進して(Williams JLら;J Exp Med.2014、5;211(5):791-9;Gottle
Pら;Ann Neurol.2010、68(6):915-24)、炎症、自己免疫及び脱髄疾患の実験疾患モデルにおいて有益な効果を提供することが示された疾患(そのような疾患には、多発性硬化症及び自己免疫性脳脊髄炎(Cruz-Orengo Lら;J Neuroinflammation.2011、6;8:170;Bao Jら;Biochem Biophys Res Commun.2016 Jan 1;469(1):1-7)、ギラン-バレー症候群又は自己免疫性神経炎(Brunn Aら;Neuropathol Appl Neurobiol.2013、39(7):772-87)、関節リウマチ(Watanabe Kら;Arthritis Rheum.2010、62(11):3211-20)、急性肺炎症/急性肺損傷(Ngamsri KCら;J Immunol.2017、198(6):2403-2413;Petty JMら;J Immunol.2007、178(12):8148-57)、喘息(Gasparik Vら;ACS Med Chem Lett.2012 Jan 12;3(1):10-4;Chang HCら;Immunology.2017 DOI:10.1111/imm.12881)が含まれる。);慢性低酸素誘導肺高血圧(Sartina Eら;Pediatr Res.2012、71(6):682-8);肺繊維症(Cao Zら;Nat Med.2016;22(2):154-62);及びアテローム性動脈硬化症(Zhao Dら;Biochemistry.2015、17;54(45):6806-14;Ma W.ら;Biochem Pharmacol.2014、1;89(1):99-108)を緩和することが示された疾患、において有用であると考えられる。
【0013】
さらに、CXCR7が、心臓幹細胞移動(Chen Dら;Sci Rep.2015、5:16813)、慢性同種移植片血管症(Thomas MNら;Transpl Int.2015、28(12):1426-35)、炎症性腸疾患(Werner Lら;Theranostics.2013、3(1):40-6)、慢性鼻炎(chronic rhinusitis)(Patadia Mら;Am J Rhinol Allergy.2010、24(1):11-6)、ヒトの肺血管疾患(Rafii Sら;Nat Cell Biol.2015、17(2):123-36)及び重篤な子癇前症の発症(Lu Jら;Exp Mol Pathol.2016、100(1):184-91)に関与すること;及び、腎虚血/再灌流障害の間葉系幹細胞治療の有益な効果を向上させること(Liu Hら;Plos One.2012、7(4):e34608)及び抗不安薬様挙動を誘発すること(Ikeda Yら;Cell.2013、5;155(6):1323-36)が提唱されている。上記の疾患に加えて、CXCR7調節剤は、腎同種移植片拒絶、全身性エリテマトーデス、骨関節炎、肺血管疾患、急性腎不全、脳虚血を含む虚血、慢性同種移植片拒絶、急性冠症候群、損傷中枢神経系;高脂血症、HSC移植、高血圧、肺高血圧症、滋賀毒素関連溶血性尿毒症症候群、HIV/AIDS;硬変症、ストレス関連障害、増殖性糖尿病網膜症、ウエストナイルウイルス脳炎、血管損傷、肺線維症、子宮内膜症、自己免疫性甲状腺炎、脈絡膜新生血管関連疾患、再生不良性貧血、シェーグレン症候群及び尋常性白斑の治療に有用であろう。
【0014】
近年の研究によって、機構上、CXCL12経路の活性化が、複数の補完的な作用:(i)癌細胞の生存、浸潤並びに癌幹細胞及び/又は腫瘍形成細胞の顕型化を直接促進することによるもの;(ii)「末梢ストロマ」(即ち、骨髄性骨髄由来細胞)を動員して、免疫抑制、腫瘍の再発及び転移を容易にすることによるもの;及び(iii)直接的又は
パラクリン様式により血管形成を促進することによるもの、を介した従来の治療法及び生物的薬剤の両方に対する腫瘍耐性の潜在的メカニズムである証拠が増えてきており(Duda DGら:CXCL12(SDF1alpha)-CXCR4/CXCR7 pathway inhibition:an emerging sensitizer for anticancer therapies?;Clin Cancer Res;2011、17(8);2074-80)、近年、CXCR7調節剤を含む抗CXCL12剤が、癌治療において現在行いうる療法に対する増感剤として使用しうる可能性があることを裏付ける前臨床及び臨床データについて論じている。加えて、内皮におけるCXCR7発現の増強が自己免疫疾患の炎症性浸潤にとって重要であるようだ。CXCL12及びCXCL11は炎症性免疫応答における重要なリガンドであり、これは:(i) 細胞移動、細胞接着及び細胞生存に作用することにより(Kumar Rら;Cell Immunol.2012、272(2):230-41);(ii) 細胞、例えばマクロファージ(Ma W.ら;Biochem Pharmacol.2014、1;89(1):99-108)、CD4+T細胞(Zohar Yら;J Clin Invest.2014、124(5):2009-22)、希突起膠細胞前駆体(Gottle
Pら;Ann Neurol.2010、68(6):915-24)の分化、成熟及び極性化を促進することにより;(iii) ホーミングプロセスに関与することによる(Lewellis SWら;J Cell Biol.2013、4;200(3):337-55)。従って、CXCR7を標的とし、すなわちそのリガンドのレベルを制御することは、広範な自己免疫及び炎症性疾患の病理に決定的な役割を有するだろう。Sanchez-Martinら(Trends Mol Med.2013、19(1):12-22)は、最近、疾患におけるCXCR7の調節不全について論じ、この受容体が自己免疫疾患及び炎症の治療の魅力的な治療上の標的であることを強調した。
【0015】
従って、本発明のCXCR7アンタゴニストは、単独で、又は、1若しくは2種以上の治療剤及び/若しくは化学療法及び/若しくは放射線療法及び/若しくは免疫療法と組み合わせて;特に、化学療法、放射線療法、EGFR阻害剤、アロマターゼ阻害剤、とりわけPD1及び/若しくはPDL1遮断及び/若しくはCTLA4遮断等の免疫療法、又は他の標的療法と組み合わせて;癌腫;腺癌;神経内分泌腫瘍;黒色腫及び転移性黒色腫を含む皮膚癌;非小細胞性肺癌を含む肺癌;転移性癌;肺転移;膀胱癌(urinary bladder cancer)を含む膀胱癌(bladder cancer);尿路上皮癌;腎細胞癌を含む腎癌;転移性腎細胞癌、転移性腎明細胞癌;結腸癌、大腸腺腫、大腸腺癌(colorectal adenocarcinoma)、大腸癌、転移性大腸癌、家族性大腸腺腫症(FAP)、食道癌、口腔扁平上皮癌を含む消化器癌;胃癌、胆嚢癌、胆管癌、肝細胞癌;膵臓腺癌又は膵管(腺)癌等の膵臓癌;子宮体癌;卵巣癌;子宮頚部癌;神経芽細胞腫;去勢抵抗性前立腺癌等の前立腺癌;脳転移、悪性神経膠腫、多形膠芽腫、髄芽腫、髄膜腫を含む脳腫瘍;トリプル・ネガティブ乳癌を含む乳癌;口腔腫瘍;上咽頭腫瘍;胸部癌(thoracic cancer);頭頸部癌;急性骨髄性白血病、成人T細胞白血病を含む白血病;甲状腺乳頭癌を含む甲状腺癌;絨毛癌;ユーイング肉腫;骨肉腫;横紋筋肉腫;カポジ肉腫;バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、MALTリンパ腫を含むリンパ腫;原発性眼内B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫及びウイルス誘発腫瘍;等の癌並びにCXCR7及び/又はCXCL12及び/又はCXCL11介在転移、走化性、細胞接着、経内皮遊走、細胞増殖及び/又は生存が関与する疾患の予防(prevention)/予防(prophylaxis)又は治療に有用であろう。
【0016】
具体的には、脳腫瘍、悪性神経膠腫、そして多形膠芽腫におけるCXCR7の役割の可能性が文献上知られている。CXCR7調節剤を含むCXCL12経路の調節剤は、化学療法剤又は放射線療法と組み合わせて、脳癌の潜在的な治療剤であると言及されている。例えば、Hattermannら(Cancer research 2010、70(8):3299-3308)は、CXCL12「刺激により、カンプトテシン及びテモゾ
ロミド誘発性のアポトーシスが抑制され、CXCR7アンタゴニストにより、CXCL12の抗アポトーシス作用が低減する。」と教示している。この著者らは、「CXCR7は、星膠細胞腫/膠芽腫におけるCXCL12の機能性受容体であり、薬剤誘発性アポトーシスに対する耐性を介在している。」と結論している。さらに、Hattermannら(Oncol Rep.2012、27:1348-1352)は、「CXCL12は、テモゾロミドの抗増殖効果を抑止する。」と教示している。この著者らは、この効果をCXCR7特異的アンタゴニストによりほぼ完全に消失させることができることから、「CXCL12の抗アポトーシス効果が、主にCXCR7により介在されることを示している。」とも教示している。Ebsworthら(Neuro Oncol(2013)15(suppl 3):iii37-iii61.ET-023)は、膠芽腫のラットモデルにおいて、CXCR7アンタゴニストを放射線療法と組み合わせて投与すると、有意に生存が延長すると教示している。この知見は他の研究(例えば、Ebsworth Kら;J Clin Oncol.2012、30(15) e13580;Walters
MJら;Br J Cancer.2014、110(5):1179-88)によって裏付けられており、膠芽腫の別のラットモデルにおいて、放射線療法と組み合わせたCXCR7のin vivo阻害により生存期間が有意に延長したことが開示されている。また、Liu SCら(Neuro-Oncology 2014;16(1):21-28)は、照射後にCXCL12を阻害すると、ラットにおける自然発症脳腫瘍の腫瘍再発が防止されることを教示している。Liu SCら(Neuro Oncol.2013、16(1):21-8)は、脳転移モデルにおける照射後のCXCL12の阻害により、照射のみの場合と比べて、腫瘍成長の著しい阻害及び寿命の延長が得られたことも教示している。Calatozzolo Cら(Cancer Biol Ther.2011、11(2)、1-12)は、in vitroでの実験において、CXCR7アンタゴニストにより、神経膠腫の増殖が完全に阻害されることを教示している。
【0017】
具体的には、膵臓腫瘍におけるCXCR7の役割は文献に記載されている。Shakirら(Pancreas.2015、44(4):528-34)は、CXCR4及びCXCR7が、CXCL12との相互作用により、より攻撃的な挙動を促進する下流のプロテインキナーゼを活性化することを観察した。さらに、CXCR7及びCXCl12の発現は腫瘍の組織学的悪性度と関連する(Liu Zら、World J Surg Oncol.2014、12:348)。これらの知見はHeinrich ELら(J Transl Med.2012、10:68)により確認された。従って、CXCR7調節剤は膵臓癌の治療に有用であろう。
【0018】
CXCR7調節剤は甲状腺乳頭癌の治療にも有用であろう。Liu Zら(J Surg Res.2014、191(2):379-88)は、CXCR7メッセンジャーRNA及びタンパクレベルが甲状腺乳頭癌において顕著に増大し、腫瘍の進行と関連することを記述した。CXCR7は、増殖、細胞周期、アポトーシス、浸潤及びS-G2期遷移に関与する細胞周期制御タンパク質の発現を制御することができた。甲状腺乳頭癌細胞においてCXCR7をノックダウンすると、細胞増殖及び浸潤が抑制され、S期arrestを誘発し、アポトーシスを促進した。Zhang Hら(Tumor Biol.2016、37(2):2415-23)はさらに、CXCR7が、おそらく血管新生促進性のVEGF又はIL-8による血管新生の制御により、甲状腺乳頭癌細胞の増殖に影響を与え、甲状腺乳頭癌の腫瘍化に関与することを示した。甲状腺癌におけるCXCR7軸の発現及び機能はZhu Xらにより確認された(Int J Oncol.2016、48(6):2321-9)。
【0019】
CXCR7調節剤は肺癌の治療にも有用であろう:過剰発現とRNA干渉の組み合わせを用いて、Miao Zら(PNAS.2007、104(40):15735-40)は、CXCR7が、乳癌及び肺癌細胞から形成された腫瘍の増殖を促進し、実験的肺転移
を増強することを確立した。Iwakiri Sら(Iwakiri Sら;Cancer.2009、115(11):2580-93)は、CXCR7のより高い発現が、病理ステージIの非小細胞性肺癌の早期及び転移性の再発と関連することを観察した。
【0020】
CXCR7調節剤は肝細胞癌の治療にも有用であろう:CXCR7の発現が肝細胞癌組織で増大することが報告された。CXCR7発現のノックダウンは、肝細胞癌細胞の浸潤、接着及び血管新生を有意に阻害した。加えて、CXCR7発現の下方制御により、肝細胞癌の異種移植モデルにおいて腫瘍成長が減少する(Zheng Kら;J Exp Clin Cancer Res.2010、29:31)。また、Monnier Jら(Eur J Cancer.2012、48(1):138-48)は、408のヒト肝細胞癌のコホートにおいて、正常肝対照と比較して、腫瘍におけるCXCR7が有意に高いことを観察した。ヒト肝細胞癌断面の免疫組織化学染色により、CXCR7の発現が癌組織においてはるかに高いことが確認された。肝細胞癌細胞株中のCXCR7のRNAiを用いて、Xue TCら(Exp Ther Med.2012、3(1):117-123)は、CXCR7の下方制御がヌードマウスにおける腫瘍の成長及び肺転移数を減少させることを観察した。さらに、組織マイクロアレイにより、CXCR7の発現が高いHCCは肺に転移しやすいことが示された。CXCR7の下方制御は、高い転移能を有するヒト肝細胞癌細胞の増殖及び肺転移を阻害する。
【0021】
CXCR7調節剤は転移性結腸癌の治療にも有用であろう:Guillemotら(Br J Cancer.2012、107(12):1944-9)は、大腸癌細胞の注入後にCXCR7アンタゴニストで処置したマウスにおいて、肺転移が有意に減少することを観察した。Wang HXら(Mol Clin Oncol.2015、3(6):1229-1232)は、結腸癌標本中のCXCR7発現を調べ、結腸癌中のCXCR7レベルが正常結腸組織と比較して有意に高いことを観察した。加えて、リンパ節転移性結腸腫瘍のCXCR7発現は、非転移性腫瘍と比較して有意に高かった。
【0022】
CXCR7は、脳転移において発現していることも報告されている(Salmaggiら、Cancer Biol Ther.2009、8:17、1-7)。この著者らは、CXCL12/CXCR4/CXCR7経路は、転移性の細胞の浸潤及び増殖におけるこれらの分子の役割を研究する上で、さらなる研究の興味深い対象となりうると結論づけた。
【0023】
具体的には、炎症性脱髄疾患に対するCXCR7の影響が文献により知られている。CXCR7は成体マウス脳の種々の領域において発現しており、その発現は多発性硬化症のマウスモデルにおいて上方制御されている(Banisadr Gら;J Neuroimmune Pharmacol.2016 Mar;11(1):26-35)。血液-脳関門(BBB)におけるCXCL12の変化した発現パターンが多発性硬化症に関与しており、この疾患の重篤度に関連する(McCandless EEら;Am J Pathol.2008、172(3):799-808)。CXCR7の阻害が実験的自己免疫性脳脊髄炎に効果的であることがマウスで示された。これらの近年の研究は、CXCR7が、多発性硬化症における、相補的機構を介在する疾患調節分子であることを強く示唆するものであり、上記相補的機構は:(i) BBBにおけるCXCL12の再分布(redistribution)を介して白血球の血管周囲腔への侵入を促進し(Cruz-Orengo Lら;J Neuroinflammation.2011、6;8:170;Cruz-Orengo Lら;J Exp Med.2011、14;208(2):327-39)、インテグリンのCXCR4介在活性化を制御することにより(Hartmann TNら;J Leukoc Biol.2008;84(4):1130-40)、(ii) ミクログリア(小膠)細胞の走化性に直接影響を与え(Bao Jら;Biochem Biophys Res Commun.2016 Ja
n 1;469(1):1-7)、及び、炎症性単球に直接影響を与えてそれらの脳への侵入を促進することにより(Douglas SDら;J Leukoc Biol.2017;102:1155-1157) (iii) 希突起膠細胞前駆体細胞のCXCR4介在成熟を増強させるCXCL12のレベルを上昇させて、再有髄化を促進することによるものである(Williams JLら;J Exp Med.2014、5;211(5):791-9;Gottle Pら;Ann Neurol.2010、68(6):915-24)。最近、Chuら(Neuroscientist.2017、23(6):627-648)は、オリゴデンドロサイト前駆細胞の移動、増殖及び分化の促進におけるCXCL12/CXCR4/CXCR7の中心的な役割に基づき、脱髄疾患に対し、CXCL12/CXCR4/CXCR7軸を標的とすることの重要性を報告した。すなわち、CXCR7の阻害は、治療的に炎症を予防し、成体脱髄CNSにおけるミエリン修復を増強することができた。
【0024】
具体的には、関節リウマチにおけるCXCR7の潜在的役割は文献から知られている。CXCR7は、滑膜内の内皮細胞上に発現していることが報告されている。また、関節リウマチ患者の滑膜組織内でCXCL12及びCXCL11mRNAレベルが上昇していた(Uenoら;Rheumatol Int.2005、25(5):361-7)。CXCL12は、滑膜内のCD4+T細胞及び単球の蓄積に中心的な役割果たすことが示された(Nanki Tら;J Immunol.2000、165(11):6590-8;Blades MCら;Arthritis Rheum.2002 Mar;46(3):824-36)。加えて、CXCL12は、その血管新生促進機能及び破骨細胞動員及び分化に対するその作用を介して、関節リウマチのプロセスに関与する。従って、CXCR7調節剤を含むCXCL12経路の調節剤が、関節リウマチ治療の潜在的治療剤として提案されている。Villalvillaら(Expert Opin Ther
Targets.2014、18(9):1077-87)は、最近、関節リウマチ治療に抗CXCL12剤を使用する可能性を支持する前臨床及び臨床データについて論じた。Watanabeら(Arthritis Rheum.2010、62(11):3211-20)は、CXCR7阻害剤が、予防的及び治療的に、疾患の臨床症状及びコラーゲン誘発マウス関節炎モデルにおける血管新生を減少させることを教示する。
【0025】
具体的には、CXCR7は炎症性障害のいくつかに関与している。例えば、CXCL12及びCXCL11は慢性閉塞性肺疾患等の急性及び慢性肺炎症のプロセスに関係がある(Petty JMら;J Immunol.2007、178(12):8148-57;Porter JCら;J Immunol.2008、180(3):1866-77)。CXCL12は、ヒト及び動物モデルの両方で、肺において上方制御されていることが見い出された(Phillips RJら;J Clin Invest.2004、114(3):438-46)。喘息モデルにおいて肺におけるCXCR7のノックダウン及び抗CXCL12剤が肺炎症及び気道過敏症を緩和することが示された(Gasparik Vら;ACS Med Chem Lett.2012 Jan 12;3(1):10-4;Lukacs NWら;Am J Pathol.2002、160(4):1353-60)。CXCR7アンタゴニズム又はCXCL12の遮断が、マウスの急性肺損傷において、肺炎症を減少させ、肺上皮性関門を安定化することが示された(Ngamsri KCら;J Immunol.2017、198(6):2403-2413;Konrad FMら;Cell Death Dis.2017、8(5))。Caoら(Nat Med.2016;22(2):154-62)は、肺線維症のマウスモデルにおいて、肺損傷後に、CXCR7調節剤が「肺胞修復を促進し、肺繊維症を減少させる」ことを教示する。肝繊維症におけるCXCR7の役割についても記述がされている(Ding BSら;Nature.2014、505(7481):97-102)。
【0026】
炎症性腸疾患においてCXCL12及びCXCL11が上方制御されていることも報告されている(Koelink PJら;Pharmacol Ther.2012、133(1):1-18)。炎症性腸疾患において、CXCR7が末梢血T細胞上で上方制御されていることが見い出された(Werner Lら;J Leukoc Biol.2011、90(3):583-90)。著者は、「炎症性腸疾患患者の末梢血においてCXCR7の発現が増大すると、粘膜炎の部位へのT細胞の流入の増大が促進される」と仮定する(Werner Lら;Theranostics.2013、3(1):40-6)。炎症性腸疾患のマウスモデルにおいて、CXCL12経路の調節剤は、T細胞の浸潤を減らし、組織損傷を減少させることができた(Mikami Sら;J Pharmacol Exp Ther.2008、327(2):383-92;Xia XMら;PLoS One.2011、6(11):e27282)。
【0027】
病変した乾癬皮膚においてもCXCL12及びCXCL11レベルの上昇が見られた(Chen SCら;Arch Dermatol Res.2010、302(2):113-23;Zgraggen Sら;PLoS One.2014、9(4):e93665)。Zgraggenらは、乾癬様皮膚炎症の2種の異なるモデルにおいて、CXCL12の遮断が慢性皮膚炎症の経過を改善することを教示する。
【0028】
全身性エリテマトーデス(SLE)等の他の自己免疫障害のいくつかは、CXCR7/CXCR4発現の変化を示し、これは、SLE B細胞のCXCL12促進性移動の障害と関連している(Biajoux Vら;J Transl Med.2012、18;10:251)。加えて、CXCL12は、複数のマウス狼瘡モデルで、腎炎腎において顕著に上方制御された。Wangら(J Immunol.2009、182(7):4448-58)は、CXCL12軸に作用させることが狼瘡の好適な治療標的であることを教示する。これは、CXCR4アンタゴニストが、生存を延長させ、腎炎及びリンパ球増殖を減少させて、この疾患を顕著に改善させるからである。
【0029】
CXCL12及びCXCR4が、自己免疫疾患患者の甲状腺において、及び、動物モデルにおいて上方制御されていることが見いだされた(Armengol MPら;J Immunol.2003、170(12):6320-8)。Liuら(Mol Med
Rep.2016、13(4):3604-12)は、CXCR4の遮断が、マウスにおいて自己免疫性甲状腺炎の重篤性を減少させ、リンパ球浸潤及び自己抗体産生を減少させることを教示する。
【0030】
Viraniら(Virani Sら;AJRI.2013、70:386-397)は、CXCL12の遮断が子宮内膜症病変における血管新生を制限することを教示する。
【0031】
CXCR7調節剤の生物学的特性は、そのリガンド、CXCL11、CXCL12、BAM22及びその関連ペプチドと関連し及び/又はそれらにより制御されるいかなる生理学的機能及び/又は細胞機能をも包含するが、これらに限定されるものではない。そのため、CXCL12の欠乏は、イン ヴィヴォで化学療法に対する癌細胞の感受性を高め、CXCL12治療は結腸癌の転移を遮断する(Dudaら;Clin.Cancer Res.2011 17(8)2074-2080;Naumannら;Plos One.2010、5(2) e9175)。また、CXCR7はCXCL11(別名、低分子誘導性サイトカインサブファミリーb、メンバー11(small inducible
cytokine subfamily b,member 11);scyb11、別名、インターフェロンガンマ誘導性タンパク質9;ip9、別名、低分子誘導性サイトカインサブファミリーb、メンバー9b;scyb9b)の受容体であり、従って、CXCR7活性の調節剤はCXCL11関連の病理を有する適応症に使用することもできる(Rupertus Kら;Clin Exp Metastasis.2014、31(
4):447-59;Zohar Yら;J Clin Invest.2014、124(5):2009-22;Antonelli Aら;Thyroid.2013、23(11):1461-9)。CXCR7は、オピオイドペプチドBAM22及びその関連ペプチド(ペプチドE、ペプチドBAM12、BAM14、BAM18)の受容体としても機能し、従って、CXCR7活性の調節剤はオピオイドペプチド関連の病理を有する適応症に使用することもできるであろう(Ikedaら;Cell.2013、155、1323-1336)。また、CXCR7はCXCl11及びCXCL12のスカベンジャー受容体として機能することが示された。従って、CXCR7を標的とすることによりCXCl11及びCXCL12の濃度が局所的に変化し、これによりCXCl11及びCXCL12の濃度勾配の調節が解除されることが示されている。
【0032】
SMYDタンパクブロッカーである特定のイソオキサゾール化合物がWO2016/040515により知られており、WO2016/040515中の化合物においては、イソオキサゾール環が、本発明のフェニル置換基の代わりに特定の(シクロ-)アルキル置換基により置換されており;また、ピペリジン基がカルボキサミド置換基を担持していない。WO2006/087543、WO2005/026149及びJ.Med.Chem 2014、57(14)、6060-6082により特定のピロール化合物が抗菌剤として知られている。WO2005/032490より環状ジアミンがファクターXa(Factor Xa)阻害剤として知られている。WO2004/050024はケモカイン受容体調節剤としてピロリジン化合物を開示している。
【発明の概要】
【0033】
本発明は、CXCR7受容体の調節剤であり、すなわちCXCR7受容体アンタゴニストとして作用し、特に癌などの、CXCL12受容体及び/又はCXCL11受容体の活性化に反応する疾患の予防又は治療に有用な、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの新規な結晶形を提供するものである。癌の予防又は治療において、当該結晶形は、1又は2種以上の化学療法剤及び/又は放射線療法及び/又は標的療法と組み合わせて使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、実施例1から得られるような結晶形1における「化合物」の粉末X線回折ダイアグラムを示す。方法1を用いて測定した上記X線回折は、示した屈折角2シータにおける、ダイアグラムにおける最も強いピークと比較して、下記のパーセンテージの相対強度を有するピークを示す(相対的ピーク強度を括弧内に記載する。)(3-40°の範囲の2シータからの顕著な強度を有する選択したピークを報告する。):3.6°(53%)、7.2°(31%)、8.2°(68%)、8.7°(46%)、9.1°(6%)、10.8°(50%)、13.9°(9%)、17.0°(26%)、17.5°(12%)、18.3°(100%)。
【
図2】
図2は、実施例2から得られるような結晶形2における「化合物」の粉末X線回折ダイアグラムを示す。方法1を用いて測定した上記X線回折ダイアグラムは、示した屈折角2シータにおける、ダイアグラムにおける最も強いピークと比較して、下記のパーセンテージの相対強度を有するピークを示す(相対的ピーク強度を括弧内に記載する。)(3-40°の範囲の2シータからの顕著な強度を有する選択したピークを報告する。):6.7°(46%)、8.5°(100%)、10.9°(19%)、13.2°(15%)、14.1°(13%)、14.5°(31%)、16.0°(16%)、17.4°(20%)、18.4°(16%)、20.8°(14%)。
【
図3】
図3は、実施例3から得られるような結晶形3における「化合物」の粉末X線回折ダイアグラムを示す。方法2を用いて測定した上記X線回折ダイアグラムは、示した屈折角2シータにおける、ダイアグラムにおける最も強いピークと比較して、下記のパーセンテージの相対強度を有するピークを示す(相対的ピーク強度を括弧内に記載する。)(3-40°の範囲の2シータからの顕著な強度を有する選択したピークを報告する。):6.8°(26%)、8.2°(100%)、8.8°(11%)、14.1°(27%)、16.0°(16%)、17.9°(31%)、21.0°(26%)、24.1°(17%)。
【
図4】
図4は、実施例4から得られるような結晶形4における「化合物」の粉末X線回折ダイアグラムを示す。方法2を用いて測定した上記X線回折ダイアグラムは、示した屈折角2シータにおける、ダイアグラムにおける最も強いピークと比較して、下記のパーセンテージの相対強度を有するピークを示す(相対的ピーク強度を括弧内に記載する。)(3-40°の範囲の2シータからの顕著な強度を有する選択したピークを報告する。):6.4°(100%)、8.3°(38%)、8.9°(12%)、13.6°(20%)、14.1°(9%)、15.4°(14%)、16.7°(28%)、18.0°(32%)、23.2°(42%)。
【0035】
いかなる疑義をも避けるために、上記のピークは、
図1~
図4に示す粉末X線回折の実験結果を記述する。上記のピークのリストとは対照的に、本発明の各結晶形の「化合物」を完全に及び明確に特徴づけるためには、選択された特徴的なピークのみが必要であることが理解されるべきである。
【0036】
図1~
図4のX線回折ダイアグラムにおいては、屈折角2シータ(2θ)を横軸に、数値を縦軸にプロットする。
【0037】
本発明の詳細な記述
1) 本発明の第1の態様は、
a. 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:3.6°、8.2°及び18.3°(特に、3.6°、7.2°、8.2°、8.7°及び18.3°;とりわけ、3.6°、7.2°、8.2°、8.7°、9.1°、10.8°、13.9°、17.0°、17.5°及び18.3°)におけるピークの存在;又は、
b. 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:6.7°、8.5°及び10.9°(特に、6.7°、8.5°、10.9°、13.2°及び14.5°;とりわけ、6.7°、8.5°、10.9°、13.2°、14.1°、14.5°、16.0°、17.4°、18.4°及び20.8°)におけるピークの存在;又は、
c. 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:8.2°、17.9°及び21.0°(特に、6.8°、8.2°、14.1°、17.9°及び21.0°;とりわけ、6.8°、8.2°、8.8°、14.1°、16.0°、17.9°、21.0°及び24.1°)におけるピークの存在;
により特徴づけられる、「化合物」、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結晶形に関する。
【0038】
【0039】
態様1)に従う結晶形は、遊離塩基の結晶形における(すなわち塩の形態ではない)「化合物」、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドを含むものとする。さらに、当該結晶形は非配位及び/又は配位溶媒を有してもよい。配位溶媒は、本明細書において、結晶性溶媒和物についての用語として使用される。同様に、非配位溶媒は、本明細書において、物理吸着又は物理補足溶媒についての用語として使用される(Polymorphism in the Pharmaceutical Industry(Ed.R.Hilfiker、VCH、2006)、Chapter 8:U.J.Griesser:The Importance of Solvatesによる定義)。結晶形1は特に無水物であり、すなわち、配位水を有さないが、イソプロパノール、メタノール、エタノール及び/又は水等の非配位溶媒を有してもよい。結晶形2は特に無水物であり、すなわち、配位水を有さないが、イソプロパノール、メタノール、エタノール及び/又は水等の非配位溶媒を有してもよい。結晶形3は特に二水和物であり、すなわち、約2当量の配位水を有し、水等の非配位溶媒をさらに有してもよい。
【0040】
2) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:3.6°、8.2°及び18.3°におけるピークの存在により特徴づけられる、態様1)に従う「化合物」の結晶形に関し、当該結晶形は、特に、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:3.6°、7.2°、8.2°、8.7°及び18.3°におけるピークの存在により特徴づけられる。
【0041】
3) 別の態様は、態様1)に従う、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:3.6°、8.2°及び18.3°におけるピークの存在により特徴づけられる、「化合物」の結晶形;又は、態様2)に従う、そのような結晶形に関し、当該結晶形は、特に、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:3.6°、7.2°、8.2°、8.7°、9.1°、10.8°、13.9°、17.0°、17.5°及び18.3°におけるピークの存在により特徴づけられる。
【0042】
4) 別の態様は、態様1)に従う、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:3.6°、8.2°及び18.3°におけるピークの存在により特徴づけられる、「化合物」の結晶形;又は、態様2)若しくは3)に従う、そのような結晶形であって、
図1に示す粉末X線回折パターンを本質的に示す、結晶形に関する。
【0043】
5) 別の態様は、態様1)に従う、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:3.6°、8.2°及び18.3°におけるピークの存在により特徴づけられる、「化合物」の結晶形;又は、態様2)~4)のいずれか1つに従う、そのような結晶形で
あって、(例えば、本明細書に記載の方法を用いることにより)示差走査熱量測定により決定される約259℃における吸熱イベントを有する、結晶形に関する。
【0044】
6) 別の態様は、態様1)に従う、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:3.6°、8.2°及び18.3°におけるピークの存在により特徴づけられる、「化合物」の結晶形;又は、態様2)~5)のいずれか1つに従う、そのような結晶形に関し、当該結晶形は:
a) 10mgの「化合物」を1mLのメタノールと混合するか、又は、20mgの「化合物」をメタノールとアセトニトリルの約3:1混合物1mLと混合する工程;
b) 0.1℃/minの勾配で約65℃に加熱することにより、「化合物」を溶解する工程;
c) 0.1℃/minの勾配を使用することにより、前記混合物を約20℃に冷却する工程;及び
d) 生成物をろ過し、(例えば、室温及び約10mbarの減圧で4時間)乾燥する工程;
により得ることができる。
【0045】
7) 別の態様は、態様1)に従う、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:3.6°、8.2°及び18.3°におけるピークの存在により特徴づけられる、「化合物」の結晶形;又は、態様2)~6)のいずれか1つに従う、そのような結晶形に関し、当該結晶形は無水物である(すなわち、配位水を有さない。)。
【0046】
8) 別の態様は、
a. 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:6.7°、8.5°、10.9°、13.2°及び14.5°におけるピークの存在;又は、
b. 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:6.8°、8.2°、14.1°、17.9°及び21.0°におけるピークの存在;
により特徴づけられる、態様1に従う「化合物」の結晶形に関する。
【0047】
9) 別の態様は、
a. 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:6.7°、8.5°、10.9°、13.2°、14.1°、14.5°、16.0°、17.4°、18.4°及び20.8°におけるピークの存在;又は、
b. 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:6.8°、8.2°、8.8°、14.1°、16.0°、17.9°、21.0°及び24.1°におけるピークの存在;
により特徴づけられる、態様1)又は8)に従う「化合物」の結晶形に関する。
【0048】
10) 別の態様は、
a. 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:6.7°、8.5°、10.9°(特に、6.7°、8.5°、10.9°、13.2°及び14.5°)におけるピークの存在により特徴づけられる、態様1)又は8)に従う「化合物」の結晶形;又は、
図2に示す粉末X線回折パターンを本質的に示す、態様9)に従うそのような結晶形;又は、
b. 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:8.2°、17.9°、21.0°(特に、6.8°、8.2°、14.1°、17.9°及び21.0°)におけるピークの存在により特徴づけられる、態様1)又は8)に従う「化合物」の結晶形;又は、
図3に示す粉末X線回折パターンを本質的に示す、態様9)に従うそのような結晶形;
に関する。
【0049】
11) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:6.7°、8.5°、10.9°、13.2°、14.5°(特に、6.7°、8.5°、10.9°、13.2°、14.1°、14.5°、16.0°、17.4°、18.4°及び20.8°)におけるピークの存在により特徴づけられる、態様1に従う「化合物」の結晶形に関する。
【0050】
12) 別の態様は、無水物である(すなわち、配位水を有さない)、態様1)に従う、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:6.7°、8.5°及び10.9°におけるピークの存在により特徴づけられる、「化合物」の結晶形;又は、態様8)~11)のいずれか1つに従うそのような結晶形、に関する。
【0051】
13) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:6.8°、8.2°、14.1°、17.9°、21.0°(特に、6.8°、8.2°、8.8°、14.1°、16.0°、17.9°、21.0°及び24.1°)におけるピークの存在により特徴づけられる、態様1に従う「化合物」の結晶形に関する。
【0052】
14) 別の態様は、二水和物である(すなわち、約2当量の配位水を有する)、態様1)に従う、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:8.2°、17.9°及び21.0°におけるピークの存在により特徴づけられる、「化合物」の結晶形;又は、態様8)~10)のいずれか1つ又は13)に従うそのような結晶形に関し;当該約2当量の配位水は、(例えば、GVS/蒸気吸着試験により決定される)約6.9%の水含量を有する「化合物」の結晶形に相当するものとする。
【0053】
さらに、結晶形4の(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドが開示され、この結晶形は、特に、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:6.4°、8.3°、16.7°、18.0°及び23.2°(とりわけ、6.4°、8.3°、8.9°、13.6°、14.1°、15.4°、16.7°、18.0°及び23.2°)におけるピークの存在により特徴づけられ;
図4に示す粉末X線回折パターンを本質的に示す。結晶形4は、特に、THF及び/又は水等のさらなる配位又は非配位溶媒を有してもよい。
【0054】
いかなる疑義をも避けるために、上記態様の1つが、「粉末X線回折ダイアグラムにおける、以下の屈折角2θにおけるピーク」に言及する場合は常に、当該粉末X線回折ダイアグラムは、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射を用いて得られるものであり;そして本明細書で提供される2θ値の精度は+/-0.1~0.2°の範囲内であることが理解されるべきである。特に、本発明の態様及び請求項中でピークに対する屈折角2シータ(2θ)を特定する場合、記載された当該2θ値は、当該値-0.2°から当該値+0.2°(2θ+/-0.2°)の間;そして好ましくは当該値-0.1°から当該値+0.1°(2θ+/-0.1°)の間と理解されるべきである。
【0055】
化合物、固体、医薬組成物、疾患等について複数形が使用される場合は、単数の化合物、固体等をも意味することが意図されている。
【0056】
「エナンチオマーが富化された」という用語は、本発明の文脈において、特に、「化合物」の少なくとも90、好ましくは少なくとも95、そして最も好ましくは少なくとも99重量パーセントが、「化合物」の一方のエナンチオマーの形態で存在することを意味するものと理解される。「化合物」は、エナンチオマーが富化された絶対(3S,4S)-
配置で存在するものと理解される。
【0057】
「本質的に純粋な」という用語は、本発明の文脈において、「化合物」の結晶の少なくとも90、好ましくは少なくとも95、そして最も好ましくは少なくとも99重量パーセントが、本発明の結晶形、特に本発明の単一の結晶形で存在すること、を特に意味するものと理解される。
【0058】
例えば、粉末X線回折ダイアグラムにおけるピークの存在を定義する場合、通常の方法は、S/N比についてこれを行うことである(S=シグナル、N=ノイズ)。この定義に従えば、粉末X線回折ダイアグラムにピークが存在しなければならないと述べる場合、粉末X線回折ダイアグラムのピークは、x(xは1より大きい数値である。)より大きい、通常は2より大きい、特に3より大きいS/N比(S=シグナル、N=ノイズ)を持つことにより定義されるものと理解される。
【0059】
結晶形が、それぞれ
図1~
図4に表される粉末X線回折パターンを本質的に示す、という記載の文脈において、「本質的に」という用語は、当該図に表されるダイアグラムの少なくとも主要なピーク、すなわち、ダイアグラムにおける最も強いピークと比べ、10%を超える、特に20%を超える相対強度を有するピークが存在しなければならないことを意味する。しかしながら、粉末X線回折の当業者は、粉末X線回折ダイアグラムの相対強度が、好ましい配向効果に起因する強い強度変動に付され得ることを認識しているはずである。
【0060】
温度に関して使用されていない場合には、数値「X」の前に置かれる「約」という用語は、本出願において、X-Xの10%からX+Xの10%の間、好ましくはX-Xの5%からX+Xの5%の間を表す。温度の特定の場合には、温度「Y」の前に置かれる「約」の用語は、本出願において、Y-10℃からY+10℃にわたる間、好ましくはY-5℃からY+5℃にわたる間、特にY-3℃からY+3℃にわたる間を表す。室温は、約25℃の温度を意味する。本出願において、n当量(nは数である。)の用語が使用される場合、本出願の範囲内において、nは約nを意味し、好ましくはnは正確にnを意味するものとする。
【0061】
数値範囲を記述するために「間」又は「から(~)」の語が使用される場合は常に、示された範囲の末端の点は明示的にその範囲に含まれると解される。これは、例えば、温度範囲が40℃から80℃の間(又は40℃から(~)80℃)であると記述される場合、末端の点である40℃と80℃はその範囲に含まれることを意味し、あるいは、可変数が1から4の間(又は1から(~)4)の整数であると定義される場合、可変数は整数の1、2、3又は4であることを意味する。
【0062】
%w/wという表現は、考慮している組成物の総重量に対する重量百分率を意味する。同様に、v/vという表現は、考慮している2つの成分の体積比を意味する。「vol」という表現は、(例えば反応物のkgで表した)重量当たりの(例えば溶媒のLで表した)体積を意味する。例えば、7volは、(反応物の)kg当たりの7リットル(の溶媒)を意味する。
【0063】
態様1)~14)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形、特に本質的に純粋な結晶形は、医薬として、例えば、経腸又は非経口投与のための医薬組成物の形態で使用することができる。
【0064】
15) 従って、別の態様は、医薬として使用するための、態様1)~14)のいずれか1つに従う「化合物」、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(
2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結晶形に関する。
【0065】
態様1)~14)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶性固体、特に本質的に純粋な結晶性固体は、単独の成分として、又は、「化合物」の他の結晶形若しくは非晶質形との混合物として使用してよい。
【0066】
医薬組成物の製造は、いずれの当業者にもよく知られた様式で(例えば、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、21st Edition(2005)、Part 5、「Pharmaceutical Manufacturing」[published by Lippincott Williams & Wilkins]を見よ。)、本発明の結晶形を、任意にその他の治療的に有益な物質と組み合わせて、適切な無毒の不活性な薬学的に許容される固体又は液体の担体材料及び必要に応じて、通常の薬学的アジュバントと共に、製剤投与形態とすることにより遂行することができる。
【0067】
16) 本発明のさらなる態様は、態様1)~14)のいずれか1つに従う「化合物」、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結晶形を有効成分として有し、さらに少なくとも1種の薬学的に許容される担体材料を有する医薬組成物に関する。
【0068】
態様16)に従うそのような医薬組成物は、CXCR7受容体又はそのリガンドに関連する疾患又は障害の予防又は治療の予防又は治療に特に有用である。
【0069】
17) 本発明のさらなる態様は、錠剤の形態である、態様14)に従う医薬組成物に関する。
【0070】
18) 本発明のさらなる態様は、カプセル剤の形態である、態様14)に従う医薬組成物に関する。
【0071】
19) 本発明のさらなる態様は、医薬組成物の製造において使用するための、態様1)~14)のいずれか1つに従う「化合物」、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結晶形[特に、態様2)~7)のいずれか1つに従う結晶形]に関し、当該医薬組成物は、有効成分として、「化合物」、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドを有し、さらに少なくとも1種の薬学的に許容される担体材料を有する。
【0072】
いかなる疑義をも避けるために、態様19)は、(例えば、医薬製造の純度要件に適合させるために)「化合物」の最終単離工程として適切であり/使用される、態様1)~14)のいずれか1つに従う結晶形[特に、態様2)~7)のいずれか1つに従う結晶形]に関するが、(例えば、「化合物」の上記元の結晶形は、製造過程の間にさらに変換され、及び/又は、薬学的に許容される担体材料中に溶解されるため;すなわち、最終医薬組成物中において、「化合物」は、非結晶形、別の結晶形又は溶解形態等で存在し得るため
)態様17)に従う最終医薬組成物は、当該結晶形を含んでもよく、含まなくてもよい。
【0073】
20) 従って、本発明のさらなる態様は、「化合物」、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドを有効成分として有する医薬組成物に関し、当該医薬組成物は、態様1)~14)のいずれか1つに従う、「化合物」、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結晶形[特に、態様2)~7)のいずれか1つに従う結晶形]及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体材料を用いて製造される。
【0074】
21) 本発明のさらなる態様は、カプセル剤の形態である、態様20)に従う医薬組成物に関する。
【0075】
22) 本発明のさらなる態様は、CXCR7受容体又はそのリガンドに関連する疾患又は障害の予防又は治療において使用するための、態様1)~14)のいずれか1つに従う、「化合物」、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結晶形に関する。
【0076】
23) 本発明のさらなる態様は、CXCR7受容体又はそのリガンドに関連する疾患又は障害の予防又は治療のための医薬の製造において使用するための、態様1)~14)のいずれか1つに従う、「化合物」、(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミドの結晶形に関する。
【0077】
態様1)~14)のいずれか1つに定義する「化合物」の結晶形は、CXCR7受容体又はそのリガンドに関連する疾患又は障害、特に、CXCR7受容体の機能不全又はCXCR7を介してシグナル伝達するリガンドの機能不全又はCXCR7リガンド(CXCL12及びCXCL11)の他の受容体(CXCR4及びCXCR3)を介してシグナル伝達するCXCR7リガンド(CXCL12及びCXCL11)の機能不全に関連する疾患又は障害の予防又は治療に有用である。
【0078】
CXCR7受容体又はそのリガンドに関連する疾患又は障害は、特に下記からなる群より選択される:
- 癌(特に、悪性神経膠腫、多形膠芽腫を含む脳腫瘍;髄芽腫;膵臓腺癌/膵管腺癌を含む膵臓癌;結腸癌、肝細胞癌及び胃癌を含む消化器癌;カポジ肉腫;成人T細胞白血病を含む白血病;リンパ腫;肺癌;乳癌;横紋筋肉腫;前立腺癌;食道扁平上皮癌;口腔扁平上皮癌;子宮体癌;甲状腺乳頭癌を含む甲状腺癌;転移性癌;肺転移;黒色腫及び転移性黒色腫を含む皮膚癌;膀胱癌;多発性骨髄腫;骨肉腫;頭頸部癌;及び腎明細胞癌、転移性腎明細胞癌を含む腎癌);
- 炎症性疾患(特に、慢性鼻炎(chronic rhinusitis)、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アテローム性動脈硬化、心筋炎及びサルコイドーシス;特に慢性鼻炎、喘息及びアテローム性動脈硬化);
- 自己免疫障害(特に、(炎症性)脱髄疾患;多発性硬化症(MS);ギラン-バレー症候群;関節リウマチ(RA);炎症性腸疾患(IBD;特にクローン病及び潰瘍性大腸炎を含む。);全身性エリテマトーデス(SLE);ループス腎炎;間質性膀胱炎;セ
リアック病;自己免疫性脳脊髄炎;骨関節炎;及びI型糖尿病;とりわけ、(炎症性)脱髄疾患、多発性硬化症、ギラン-バレー症候群、関節リウマチ、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎及び自己免疫性脳脊髄炎等の炎症相を有する自己免疫障害);
- 移植拒絶(特に、腎同種移植片拒絶、心同種移植片拒絶及び造血幹細胞移植によりもたらされる移植片対宿主病);及び
- 線維症(特に、肝線維症、肝硬変、肺線維症、とりわけ特発性肺線維症)。
【0079】
特に、CXCR7受容体又はそのリガンドに関連するそのような疾患又は障害は、癌、自己免疫障害(とりわけ、炎症相を有する自己免疫障害)及び線維症である。
【0080】
加えて、CXCR7受容体又はそのリガンドに関連するさらなる疾患又は障害は、CXCR7及び/又はCXCL12及び/又はCXCL11介在転移、走化性、細胞接着、経内皮遊走、細胞増殖及び/又は生存が関与する疾患である。
【0081】
加えて、CXCR7受容体又はそのリガンドに関連するさらなる具体的な疾患又は障害は、増殖性糖尿病網膜症;ウエストナイルウイルス脳炎;肺血管疾患;急性腎不全;脳虚血を含む虚血;急性冠症候群;損傷中枢神経系;高脂血症;高血圧;肺高血圧症;滋賀毒素関連溶血性尿毒症症候群;子癇前症;血管損傷;HIV/AIDS;血管新生;及び(アルツハイマー病の炎症相等の)脳及び神経機能障害;(不安障害、うつ病及び外傷後ストレス障害等のストレス関連障害);並びにオピオイド受容体関連疾患、子宮内膜症、自己免疫性甲状腺炎、脈絡膜新生血管関連疾患、再生不良性貧血、シェーグレン症候群及び尋常性白斑である。副態様において、CXCR7受容体又はそのリガンドに関連するそのようなさらなる具体的な疾患又は障害は肺高血圧症である。
【0082】
「癌」という用語は、癌腫;腺癌;白血病;肉腫;リンパ腫;骨髄腫;転移性癌;脳腫瘍;神経芽細胞腫;膵臓癌;消化器癌;肺癌;乳癌;前立腺癌;子宮体癌;皮膚癌;膀胱癌;頭頸部癌;神経内分泌腫瘍;卵巣癌;子宮頚部癌;口腔腫瘍;上咽頭腫瘍;胸部癌;及びウイルス誘発性腫瘍等のすべての種類の癌を意味する。
【0083】
特に、この用語は、脳転移、悪性神経膠腫、多形膠芽腫、髄芽腫、髄膜腫を含む脳腫瘍;神経芽細胞腫;膵臓腺癌/膵管腺癌を含む膵臓癌;結腸癌、大腸腺腫、大腸腺癌、転移性大腸癌、家族性大腸腺腫症(FAP)、胃癌、胆嚢癌、胆管癌、肝細胞癌を含む消化器癌;カポジ肉腫;急性骨髄性白血病、成人T細胞白血病を含む白血病;バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、MALTリンパ腫及び原発性眼内B細胞リンパ腫を含むリンパ腫;非小細胞性肺癌を含む肺癌;トリプル・ネガティブ乳癌を含む乳癌;横紋筋肉腫;去勢抵抗性前立腺癌を含む前立腺癌;食道扁平上皮癌;(口腔)扁平上皮癌;子宮体癌;甲状腺乳頭癌を含む甲状腺癌;転移性癌;肺転移;黒色腫及び転移性黒色腫を含む皮膚癌;膀胱癌(urinary bladder cancer)、尿路上皮癌を含む膀胱癌;多発性骨髄腫;骨肉腫;頭頸部癌;及び腎細胞癌、腎明細胞癌、転移性腎細胞癌、転移性腎明細胞癌を含む腎癌;並びに神経内分泌腫瘍;卵巣癌;子宮頚部癌;口腔腫瘍;上咽頭腫瘍;胸部癌;絨毛癌;ユーイング肉腫;及びウイルス誘発性腫瘍を意味する。
【0084】
特に、「癌」という用語は、悪性神経膠腫、とりわけ多形膠芽腫、神経芽細胞腫;膵臓癌、中でも膵管腺癌;カポジ肉腫;成人T細胞白血病、リンパ腫;肺癌;乳癌;横紋筋肉腫;前立腺癌;食道扁平上皮癌;(口腔)扁平上皮癌;子宮体癌;甲状腺乳頭癌;転移性癌;肺転移;黒色腫;膀胱癌;多発性骨髄腫;骨肉腫;消化器癌、とりわけ結腸癌、肝細胞癌及び胃癌;頭頸部癌;及び腎明細胞癌を意味する。好ましくは、「癌」という用語は、悪性神経膠腫、特に多形膠芽腫;膵臓癌、特に膵管腺癌;甲状腺乳頭癌;肝細胞癌;肺癌;乳癌;転移性癌;肺転移;黒色腫;結腸癌;頭頸部癌;及び腎明細胞癌を意味する。
【0085】
態様1)~14)のいずれか1つに定義する「化合物」の結晶形は、先に定義した癌の予防又は治療のための治療剤として特に有用であり、上記癌は転移性癌/転移を形成する癌である。
【0086】
態様1)~14)のいずれか1つに定義する「化合物」の結晶形は、癌の予防又は治療のための治療剤として特に有用である。それらは、単一の治療剤として、あるいは1又は2種以上の化学療法剤及び/又は放射線療法及び/又は標的療法と組み合わせて使用することができる。副態様において、式(I)の化合物を、1又は2以上の化学療法剤及び/又は放射線療法及び/又は標的療法と組み合わせて癌の予防又は治療に使用する場合、そのような癌は、特に悪性神経膠腫、とりわけ多形膠芽腫;膵臓癌、とりわけ膵管腺癌;甲状腺乳頭癌;肺転移;黒色腫;肺癌;転移性癌;肝細胞癌;乳癌;大腸癌;又は頭頸部癌である。そのような組み合わせ治療は、同時に、別々に又はある期間に渡って行われてもよい。
【0087】
従って、本発明は、薬学的に許容される担体物質と:
- 態様1)~14)のいずれか1つに定義する「化合物」の結晶形;
- 及び1又は2種以上の細胞毒性化学療法剤;
とを含む医薬組成物にも関する。
【0088】
従って、本発明は、さらに、
- 薬学的に許容される担体物質及び態様1)~14)のいずれか1つに定義する「化合物」の結晶形を含む医薬組成物と;
- 化学療法及び/又は放射線療法及び/又は標的療法と組み合わせた、癌の(特に悪性神経膠腫、とりわけ多形膠芽腫の)予防又は治療のための前記医薬組成物の使用方法の指示書;
とを含むキットに関する。
【0089】
「放射線療法」(「radiotherapy」又は「radiation therapy」又は「radiation oncology」)という用語は、癌の予防(補助療法)及び/又は治療における電離放射線の医学的使用を意味し;外部及び内部放射線療法を含む。
【0090】
「標的療法」という用語は、特定のタイプの癌細胞又はストロマ細胞に作用する低分子又は抗体等の1又は2種以上の抗新生物剤を用いた、癌の予防(補助療法)及び/又は治療を意味する。ある種の標的療法は、癌細胞の増殖や拡散に関わるある種の酵素、タンパク質又はその他の分子の作用をブロックする。他のタイプの標的療法は、免疫系が癌細胞を殺すのを助け(免疫療法);又は癌細胞に毒性物質を直接送り込んで殺す。本発明の化合物と組み合わせるのに特に適した標的療法の例は、免疫療法、特にプログラム細胞死受容体1(PD-1受容体)又はそのリガンドPD-L1(Feig Cら、PNAS2013)を標的とする免疫療法である。
【0091】
式(I)の化合物と組み合わせて使用する場合、「標的療法」という用語は特に以下のような薬剤を意味する:
a) 上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤又はブロッキング抗体(例えば、ゲフィチニブ(Gefitinib)、エルロチニブ(Erlotinib)、アファチニブ(Afatinib)、イコチニブ(Icotinib)、ラパチニブ(Lapatinib)、パニツムマブ(Panitumumab)、ザルツムマブ(Zalutumumab)、ニモツズマブ(Nimotuzumab)、マツズマブ(Matuzumab)及びセツキシマブ(Cetuximab));
b) B-RAF阻害剤(例えば、ベムラフェニブ(Vemurafenib)、ソラフェニブ(Sorafenib)、ダブラフェニブ(Dabrafenib)、GDC-0879、PLX-4720、LGX818);
c) アロマターゼ阻害剤(例えば、エキセメスタン(Exemestane)、レトロゾール(Letrozole)、アナストロゾール(Anastrozole)、ボロゾール(Vorozole)、フォルメスタン(Formestane)、ファドロゾール(Fadrozole));
d) 免疫チェックポイント阻害剤(例えば、ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)(ランブロリズマブ(Lambrolizumab)、MK-3475)、ニボルマブ(Nivolumab)、ピディリズマブ(Pidilizumab)、AMP-514/MED10680等の抗PD1抗体;例えば、WO2015/033299、WO2015/044900及びWO2015/034820に開示される化合物等の低分子抗PD1剤;BMS-936559、アテゾリズマブ(atezolizumab)(MPDL3280A)、MEDI4736、アベルマブ(avelumab)(MSB0010718C)等の抗PD1L抗体;AMP224等の抗PDL2;イピリムマブ(ipilimumab)、tremilmumab等の抗CTLA-4抗体。);
d) ワクチン療法的アプローチ(例えば、樹状細胞ワクチン療法、(例えば、gp100ペプチド又はMAGE-A3ペプチドを用いた)ペプチド又はタンパク質ワクチン療法;
f) 顆粒球単球コロニー刺激因子(GMCSF)遺伝子トランスフェクト腫瘍細胞ワクチン(GVAX)又はFms-関連チロシンキナーゼ3(Flt-3)リガンド遺伝子トランスフェクト腫瘍細胞ワクチン(FVAX)又はToll様受容体増強GM-CSF腫瘍ベースワクチン(TEGVAX)等の免疫調節因子を分泌するように遺伝的に修飾された患者由来又は同種(allogenic)(非自己)癌細胞の再導入;
g) キメラ抗原レセプター(CAR)改変T-細胞(例えばCTL019)等のT細胞ベース養子免疫療法;
h) サイトカイン又は免疫サイトカインベース治療(例えば、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、インターロイキン2、インターロイキン15);
i) Toll-様レセプター(TLR)アゴニスト(例えば、レシキモド(resiquimod)、イミクイムド(imiquimod)、グルコピラノシル脂質A、CpGオリゴデオキシヌクレオチド);
j) サリドマイドアナログ(例えば、レナリドマイド(Lenalidomide)、ポマリドミド(Pomalidomide));
k) インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)及び/又はトリプトファン-2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO)阻害剤(例えば、NLG919/Indoximod、1MT(1-メチルトリプトファン)、INCB024360);
l) T細胞共刺激受容体の活性化剤(例えば、(BMS-986016等の)抗リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)抗体;抗T細胞免疫グロブリン ムチン-3(TIM-3)抗体、抗CD137/4-1BB抗体(例えば、BMS-663513/ウレルマブ(urelumab))、抗キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、例えばリリルマブ(Lirilumab)(IPH2102/BMS-986015);抗OX40/CD134(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー4)、抗OX40-リガンド/CD252;(TRX518等の)抗グルココルチコイド誘発TNFRファミリー関連遺伝子(GITR)、(CP-870,893等の)抗CD40(TNF受容体スーパーファミリーメンバー5)抗体;(BG9588等の)抗CD40-リガンド抗体;抗CD28抗体);
m) 二重特異性抗体又は抗体フラグメント、抗体模倣タンパク質(antibody
mimetic proteins)等の腫瘍特異性抗原並びにT-細胞表面マーカーに結合する分子(例えば、設計アンキリン反復配列タンパク質(designed an
kyrin repeat proteins)(DARPINS)、二重特異性T細胞engager(BITE、例えばAMG103、AMG330));
n) コロニー刺激因子-1受容体(CSF-1R)を標的とする抗体又は低分子量阻害剤(例えば、RG7155又はPLX3397)。
【0092】
態様1)~14)のいずれか1つに定義する「化合物」の結晶形と組み合わせて使用する場合、d)に挙げたもの等の免疫チェックポイント阻害剤及び、特に、プログラム細胞死受容体1(PD-1受容体)又はそのリガンドPD-L1を標的とするものが好ましい。
【0093】
「化学療法」という用語は、1又は2種以上の細胞毒性抗新生物剤(「細胞毒性化学療法剤」)による癌の治療を意味する。化学療法は、しばしば放射線療法又は外科手術等の他の癌治療と併用される。この用語は特に、分裂の早い(これは大抵の癌細胞の主な特性の1つである。)細胞を殺すことで作用する従来の化学療法剤を意味する。化学療法では、一度に1種の薬物(単剤化学療法)又は一度に数種の薬物(併用化学療法又は多剤化学療法)を用いうる。光への暴露によってのみ細胞毒性活性へと変化する薬物を用いる化学療法は、光化学療法又は光力学療法と呼ばれる。
【0094】
本明細書で使用する「細胞毒性化学療法剤」又は「化学療法剤」という用語は、細胞死又は細胞壊死を引き起こす活性な抗新生物剤を意味する。式(I)の化合物と組み合わせて使用する場合、この用語は特に、下記のような従来の細胞毒性化学療法剤を意味する:
a) アルキル化剤(例えば、メクロレタミン(mechlorethamine)、クロラムブシル(chlorambucil)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、イホスファミド(ifosfamido)、ストレプトゾシン(streptozocin)、カルムスチン(carmustine)、ロムスチン(lomustine)、メルファラン(melphalan)、ブスルファン(busulfan)、ダカルバジン(dacarbazine)、テモゾロミド、チオテパ(thiotepa)又はアルトレタミン(altretamine)、特にテモゾロミド);
b) プラチナ製剤(例えば、シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)又はオキサリプラチン(oxaliplatin));
c) 代謝拮抗薬(例えば、5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)、カペシタビン(capecitabine)、6-メルカプトプリン(6-mercaptopurine)、メトトレキセート(methotrexate)、ゲムシタビン(gemcitabine)、シタラビン(cytarabine)、フルダラビン(fludarabine)又はペメトレキセド(pemetrexed));
d) 抗腫瘍抗生物質(例えば、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、エピルビシン(epirubicin)、イダルビシン(idarubicin)、アクチノマイシン-D(actinomycin-D)、ブレオマイシン(bleomycin)、マイトマイシン-C(mitomycin-C)又はミトキサントロン(mitoxantrone));
e) 有糸分裂阻害物質(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル(docetaxel)、イキサベピロン(ixabepilone)、ビンブラスチン(vinblastine)、ビンクリスチン(vincristine)、ビノレルビン(vinorelbine)、ビンデシン(vindesine)又はエストラムスチン(estramustine));又は
f) トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide)、トポテカン(topotecan)、イリノテカン(irinotecan)、ジフロモテカン(diflomotecan)又はエロモテカン(elomotecan))。
【0095】
態様1)~14)のいずれか1つに定義する「化合物」の結晶形と組み合わせて使用する場合、好ましい細胞毒性化学療法剤は、上記のアルキル化剤(特に、メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、ストレプトゾシン、カルムスチン、ロムスチン、メルファラン、ブスルファン、ダカルバジン、3-メチル-(トリアゼン-1-イル)イミダゾール-4-カルボキサミド(MTIC)及び、特にテモゾロミド、チオテパ、アルトレタミン等のそのプロドラッグ;又はこれらの化合物の薬学的に許容される塩;とりわけテモゾロミド);及び有糸分裂阻害物質(特に、パクリタキセル、ドセタキセル、イキサベピロン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ビンデシン、エストラムスチン;又はこれらの化合物の薬学的に許容される塩;とりわけパクリタキセル)である。式(I)の化合物と組み合わせて使用する最も好ましい細胞毒性化学療法剤は、多形膠芽腫の治療に通常用いられるもの、特にテモゾロミドである。放射線療法もまた、同じく好ましい。
【0096】
化学療法は、治療目的で施されても、あるいは延命又は症状の改善を狙ったものでもよい。
【0097】
a) 集学的(Combined modality)化学療法は、放射線療法又は外科手術等の他の癌治療と共に行う、薬物の使用である。
【0098】
b) 導入(Induction)化学療法は、化学治療薬による癌の一次治療である。この種の化学療法は、治療目的で用いられる。
【0099】
c) 強化(Consolidation)化学療法は、寛解後に、全無病期間を延長し及び全生存を改善する目的で施される。投与される薬剤は、寛解をもたらした薬剤と同じものである。
【0100】
d) 強化(Intensification)化学療法は、強化(consolidation)化学療法と同一であるが、導入化学療法とは異なる薬剤が用いられる。
【0101】
e) 併用(Combination)化学療法は、患者を同時に多くの異なる薬剤で治療するものである。これらの薬剤は、メカニズム及び副作用が異なる。最も大きな利点は、いずれか1種類の薬剤に対して耐性を獲得する機会が最小化されることである。また、より少ない用量で薬剤が使用されることが多く、毒性が低減される。
【0102】
f) 術前補助(Neoadjuvant)化学療法は、外科手術等の局所治療に先立って施され、原発腫瘍を縮小することを目的としている。微小転移性病態のリスクが高い癌に対しても施される。
【0103】
g) 補助(Adjuvant)化学療法は、局所治療(放射線療法又は外科手術)の後に施される。癌の存在を示す証拠はほとんど無いが、再発の危険がある場合に用いることができる。また、身体の他の箇所に広がったあらゆる癌性細胞を殺すのにも有用である。これらの微小転移は、補助化学療法で治療することができ、これらの播種性細胞による再発率を下げることができる。
【0104】
h) 維持(Maintenance)化学療法は、寛解を延長するために繰り返される低用量治療である。
【0105】
i) 救援(Salvage)化学療法又は緩和(palliative)化学療法は、治療を目的とせず、単に腫瘍負荷を減少させ、期待余命を伸ばすために施される。こうした養生法に対しては、毒性プロファイルがより優れていることが一般に求められる。
【0106】
態様1)~14)のいずれか1つに定義する「化合物」の結晶形と組み合わせる場合、a)、b)、c)、d)、e)、そして特に上記g)及び/又はh)に挙げるような予防的又は治療的な形態の化学療法(又は、必要な変更を加えて:放射線療法)が好ましい。
【0107】
投与形態に関連する場合の、「同時に」は、本出願において、該当する投与形態が、2種又はより多くの活性成分及び/又は治療のほぼ同時投与であることを意味し;同時投与により、対象は2種又はより多くの活性成分及び/又は治療に同時に暴露されることになるものと理解される。同時に投与される場合、当該2種又はより多くの活性成分は、多剤混合薬(a fixed dose combination)として、又は、(例えば、同じ投与経路によりほぼ同時に投与されるべき2種又はより多くの異なる薬学的組成物を使用することにより)同等の非多剤混合薬(a non-fixed dose combination)として、又は、2種又はより多くの異なる投与経路を用いる非多剤混合薬により投与されてもよく、当該投与により、対象は2種又はより多くの活性成分及び/又は治療に本質的に同時に暴露されることになる。
【0108】
「多剤混合薬」は、投与形態を意味する場合、本出願においては、該当する投与形態が、2種又はより多くの活性成分を有する1種の薬学的組成物の投与であることを意味する。
【0109】
投与形態に関連する場合の、「別々に」は、本出願において、該当する投与形態が、2種又はより多くの活性成分及び/又は治療の異なる時点における投与であることを意味し;別々の投与は、対象が2種又はより多くの活性成分及び/又は治療に同時に暴露される治療相(例えば、少なくとも1時間、特に少なくとも6時間、とりわけ少なくとも12時間)に導くが、そのような「別々の投与」は、特定の状況下において、対象が一定の時間の間(例えば、少なくとも12時間、特に少なくとも1日)、2種又はより多くの活性成分及び/又は治療の1つにのみ暴露される治療相をも包含してよいものと理解される。従って、別々の投与は、特に、活性成分及び/又は治療の1種を、例えば、1日に1回与え、別のものを、例えば、1日に2回、1日に3回、隔日で与え、そのような投与形態の結果として、本質的に全治療期間の間、対象が2種又はより多くの活性成分及び/又は治療に同時に暴露される状況を意味する。別々の投与はまた、活性成分及び/又は治療の少なくとも1種を(1日に1回又は2回等の)連日投与よりも実質的に長い周期で与える状況(例えば、活性成分及び/又は治療の1種を1日に1回又は2回与え、別のものを1週間に1回与える。)をも意味する。例えば、(例えば、毎週の又は2週間に1回の)放射線療法と組み合わせて使用する場合、態様1)~14)のいずれか1つに定義する本発明の「化合物」の結晶形は、場合によって「別々に」使用されるであろう。
【0110】
「ある期間に渡る」投与は、本出願において、2種又はより多くの活性成分及び/又は治療を異なる時に続けて投与することを意味する。この用語は、特に、1種の活性成分及び/又は治療の全投与が完結した後に、1又は2種以上の他方の投与を開始する投与法を意味する。この場合、活性成分及び/又は治療の一方を数カ月間投与した後に、他方の又は他の活性成分及び/又は治療を投与することが可能である。
【0111】
「ある期間に渡る」投与はまた、態様1)~14)のいずれか1つに定義する「化合物」の結晶形が、最初の化学療法又は放射線療法治療又は標的療法(例えば、導入化学療法)の後に開始する治療において、任意で、さらなる/進行中の化学療法又は放射線療法治療又は標的療法と組み合わせて(例えば、強化(consolidation)化学療法、強化(intensification)化学療法、補助化学療法若しくは維持化学療法;又はそれと同等の放射線療法と組み合わせて)使用される状況を包含し;そのようなさらなる/進行中の化学療法又は放射線療法治療又は標的療法は、態様1)~14)のい
ずれか1つに定義する「化合物」の結晶形を用いた治療と同時に又は別々に行われる。
【0112】
自己免疫障害は、(炎症性)脱髄疾患;多発性硬化症(MS);ギラン-バレー症候群;関節リウマチ(RA);炎症性腸疾患(IBD;特にクローン病及び潰瘍性大腸炎を含む。);全身性エリテマトーデス(SLE);ループス腎炎;間質性膀胱炎;セリアック病;自己免疫性脳脊髄炎;骨関節炎;及びI型糖尿病を含むものとして定義してよい。加えて、自己免疫疾患はさらに、乾癬;乾癬性関節炎;抗リン脂質抗体症候群;橋本甲状腺炎等の甲状腺炎;リンパ球性甲状腺炎;重症筋無力症;ブドウ膜炎;上強膜炎;強膜炎;川崎病;網膜ブドウ膜炎;後部ブドウ膜炎;ベーチェット病関連ブドウ膜炎;ブドウ膜髄膜炎症候群;アレルギー性脳脊髄炎;鼻炎、結膜炎、皮膚炎等のアトピー性疾患;並びにリウマチ熱及び感染後糸球体腎炎を含む感染後自己免疫疾患等の障害を含む。副態様において、自己免疫障害は、特に、炎症相を有する自己免疫障害を意味し、具体例は、(炎症性)脱髄疾患、多発性硬化症(MS)、ギラン-バレー症候群、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD;特にクローン病及び潰瘍性大腸炎を含む。)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎及び自己免疫性脳脊髄炎である。
【0113】
炎症性疾患は、特に、慢性鼻炎並びに喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アテローム性動脈硬化、心筋炎、眼球乾燥疾患、サルコイドーシス、炎症性ミオパチー及び急性肺損傷を含むものとして定義してよい。
【0114】
移植拒絶は、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓、角膜及び皮膚等の移植された器官の拒絶;造血幹細胞移植によりもたらされる移植片対宿主病;慢性同種移植片拒絶並びに慢性同種移植片血管症を含むものとして定義してよい。
【0115】
線維症は、特に、肝線維症、肝硬変、肺線維症、特発性肺線維症、腎線維症、心内膜心筋線維症及び関節線維症を含むものと定義してよい。
【0116】
態様1)~14)のいずれか1つに定義する「化合物」の結晶形は、腫瘍の予防又は治療方法であって、有効量の当該結晶形を投与することを有し、前記有効量は、腫瘍の特性に変化をもたらし、その変化は、CXCL11/CXCL12受容体経路の調節により実現される、方法にも有用であり;前記予防又は治療は、任意で従来の化学療法又は放射線療法と組み合わせて行ってもよい(この場合、腫瘍は、特に悪性神経膠腫、とりわけ多形膠芽腫である。)。そのような組み合わせ治療は、同時に、別々に及び/又はある期間に渡って行われてもよい。
【0117】
態様1)~14)のいずれか1つに定義する「化合物」の結晶形は、免疫応答を調節する方法であって、有効量の当該結晶形を投与することを有し、前記有効量は炎症性疾患を調節する量であり、前記応答は、CXCL11/CXCL12受容体経路を介するものである、方法にも有用である。
【0118】
本発明はまた、エナンチオマーが富化された形態の「化合物」の製造方法及び態様1)~14)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形の製造及び特徴づけの方法に関する。当該方法は下記実験の項の手順に記載されている。
【0119】
実験手順:
温度はすべて℃で示す。市販の出発物質は、さらに精製を行うことなく、入手した状態で使用する。別段の記載が無い限り、すべての反応は、窒素又はアルゴン雰囲気下、オーヴンで乾燥したガラス製の器具内で行う。化合物は、シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー又は分取用HPLCで精製する。本発明に記載した化合物は、以下に記載した条件を用いて、LC-MSデータで特徴を明らかにする(保持時間tRはminで示
す;質量分析から得られた分子量はg/molで示す。)。本発明の化合物が、配座異性体(conformational isomers)の混合物である場合、特にそれら異性体がLC-MSスペクトルとして表れる場合は、最も量の多い異性体の保持時間を示す。
【0120】
NMR分光分析:
400MHz(1H) Ultrashield(登録商標) Magnet及びBBO
5mmプローブヘッド又はPAXTI 1mmプローブヘッドを備えたBruker Avance II分光計又はBruker Avance III HD Ascend 500MHz(1H)、DCH cryoprobeを装着したマグネット。化学シフト(δ)は、NMR溶媒の不完全な重水素化から得られるプロトン共鳴に関連して百万分率(ppm)で報告され、例えばジメチルスルホキシドに関してはδ(H)2.49ppmであり、クロロホルムに関してはδ(H)7.24ppmである。略語s、d、t、q及びmは、一重項、二重項、三重項、四重項、多重項を意味し、brは広域をそれぞれ意味する。結合定数JはHzで報告される。
【0121】
品質管理(QC)分析LC-MS:
機器及び条件
ポンプ:WatersのAcquity Binary、Solvent Manager、MS:Waters SQ Detector、DAD:Acquity UPLC
PDA Detector、ELSD:Acquity UPLC ELSD。カラム:Waters製Acquity UPLC CSH C18 1.7μm 2.1x50mm又はAcquity UPLC HSS T3 C18 1.8μm 2.1x50mm、Acquity UPLC Column Manager内にて60℃に温度制御。溶出液:A1:H2O+0.05%FA;B1:AcCN+0.045%FA。方法:勾配:2.0minにわたって2%B、98%B。流速:1.0mL/min。検出:UV214nm及びELSD、並びにMS、tRはminで示す。
【0122】
分析用LC-MS
機器:
質量分析検出器(シングル四重極質量分析計、Thermo Finnigan MSQPlus又は等価のもの)を備えたBinary勾配ポンプ、Agilent G4220A又は等価のもの。
【0123】
条件:
方法A(酸性条件):カラム:Zorbax SB-aq(3.5μm、4.6x50mm)。条件:MeCN[溶出液A];水+0.04%TFA[溶出液B];勾配:1.5minにわたって95%Bから5%Bへ(流速:4.5mL/min)。検出:UV/Vis+MS。
【0124】
分取用LC-MS
機器:
質量分析検出器(シングル四重極質量分析計、Thermo Finnigan MSQPlus又は等価のもの)を備えたBinary勾配ポンプ、Gilson 333/334又は等価のもの。
【0125】
条件:
方法B(塩基性条件):カラム:Waters XBridge C18(10μm、30x75mm)。条件:MeCN[溶出液A];水+0.5%NH4OH(25%水溶液)[溶出液B];勾配:6.5minにわたって95%Bから5%Bへ(流速:75mL
/min)。検出:UV/Vis+MS。
【0126】
キラル分析用クロマトグラフィー
機器:
HPLC:Dionex DAD-3000UV検出器を備えたDionex HPG-3200SDポンプ。
【0127】
SFC:CO2供給:Aurora Fusion A5 Evolution;ポンプ:Agilent G4302A;UV検出器:Agilent G1315C。
【0128】
条件:
HPLC:カラム:ChiralPak AY-H、5μm、250x4.6mm又はRegis(R,R)Whelk-O1 250x4.6mm、5μm;溶出液:A:Hept、0.05%DEA、B:エタノール、0.05%DEA、流速0.8から1.2mL/min。
【0129】
SFCカラム:Regis(R,R)Whelk-O1、4.6x250mm、5μM;溶出液:A:60%CO2、B:40%DCM/EtOH/DEA 50:50:0.1。
【0130】
キラル分取用クロマトグラフィー
機器:
HPLC:Dionex DAD-3000UV検出器を備えた2 Varian SD1 ポンプ。
【0131】
SFC:CO2供給:Maximator DLE15-GG-C;ポンプ:2 SSI
HF CP 300;UV検出器:Dionex DAD-3000。
【0132】
条件:
HPLC:カラム:ChiralPak IA、IB、IC、IE若しくはIF、5μm、20x250mm又はRegis(R,R)Whelk-O1、21.1x250mm、5μm;溶出液:A(0%から90%のHept)とB(10%から100%のEtOH、0.1%DEA)の適宜な混合物、流速:16、23又は34mL/minの適宜な流速。
【0133】
SFC:カラム:Regis(R,R)Whelk-O1、30x250mm、5μm又はChiralPak IC、30x250mm、5μm;溶出液:A(60%から80%のCO2)とB(30%から40%のDCM/EtOH/DEA 50:50:0.1)の適宜な混合物、流速160mL/min。
【0134】
粉末X線回折分析(XRPD)
XRPD法1
粉末X線回折パターンは、反射モード(結合2シータ/シータ)においてCuKα-照射で作動するLynxeye検出器を備えたBruker D8 AdvanceX線回折計上で収集する。典型的には、X-線チューブを40kV/40mAで走査させる。3~50°の2θの走査範囲にわたって、0.02°(2θ)のステップサイズ及び76.8秒のステップタイムを適用する。発散スリットは固定的に0.3に設定する。粉末を、0.5mmの深さのシリコン単結晶サンプルホルダー内にわずかにプレスし、測定の間、サンプルをそれ自体のプレイン中で回転させる。回折データは、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射を用いてレポートされる。これまでに記録された粉末
X線回折パターンが一般的にそうであるように、本明細書で提供される2θ値の精度は、+/-0.1~0.2°の範囲内である。
【0135】
XRPD法2
粉末X線回折パターンは、反射モードにおいてCuKα-照射で作動する自動XYZステージ、オートサンプルポジショニング仕様のレーザービデオ顕微鏡及びVantec-500検出器を備えたBruker D8 GADDS-HTS回折計上で収集する。典型的には、X-線チューブを40kV/40mAで走査させる。X線光学系は、0.5mmのピンホールコリメーターと接続したシングルGoebel多層膜ミラーからなる。典型的には、4°のシータ1及び16°のシータ2のゴニオメーターポジション並びに20cmの検出器距離で、180sにわたってシングルフレームを記録する。フレームは5-35°の2θ範囲において積分される。周囲条件下で走査する試料は、グラインドせずに受け取ったままの粉末を用いて、平板試料として調製する。約5-10mgの試料をガラススライド上に軽くプレスし、平坦な表面を得る。測定時間の間試料は移動させない。回折データは、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射を用いてレポートされる。これまでに記録された粉末X線回折パターンが一般的にそうであるように、本明細書で提供される2θ値の精度は、+/-0.1~0.2°の範囲内である。
【0136】
重量測定蒸気吸着(GVS)分析
測定は、25℃においてステッピングモードで作動するマルチサンプル装置SPS-100n(Projekt Messtechnik、ウルム、ドイツ)上で行う。予め規定された湿度プログラム(40-0-95-0-95-40%RH、5%のΔRHステップを適用し、各ステップ毎に最大24時間の平衡化時間を設ける。)を開始する前に、試料を40%RHで平衡化する。各試料を約20~30mg使用する。吸湿性の分類は、the European Pharmacopea Technical Guide(1999、86頁)に従って行い、例えば、やや吸湿性:質量増加が2%未満で0.2%mass/mass以上;吸湿性:質量増加が15%未満で2%mass/mass以上。最初の吸着スキャンにおける40%相対湿度と80%相対湿度との間の質量変化を考慮する。
【0137】
示差走査熱量測定(DSC)
DSCデータは、34ポジションのオートサンプラーを備えたMettler Toledo STARe System(DSC822eモジュール、セラミックセンサー付きの測定用セル及びSTAR ソフトウェア version 9.20)上で収集する。装置は、インジウム標品を用いてエネルギー及び温度について平衡化する。典型的には、1.5mgの各サンプルを、自動的に削孔されるアルミニウムパン内で、特に断らない限り、-20℃から280℃に、10℃ min-1で加熱する。サンプル上で窒素パージを20mL min-1で維持する。融点についてピーク温度をレポートする。
【0138】
熱重量分析(TGA)
TGAデータは、34ポジションのオートサンプラーを備えたMettler Toledo STARe System(TGA851eモジュール及びSTARソフトウェア
version 9.20)上で収集する。典型的には、約5mgのサンプルを、自動的に削孔されるアルミニウムパン内で、特に断らない限り、30℃から250℃に、10℃ min-1で加熱する。サンプル上で窒素パージを10mL min-1で維持する。
【0139】
(明細書の上記又は下記の部分において使用される)略語:
aq. 水溶液
Boc ブチルオキシカルボニル
d 日
DCM ジクロロメタン
DEA ジエチルアミン
DIPEA ジイソプロピル-エチルアミン、Huenig塩基、エチル-ジイソプロピルアミン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルフォキシド
Et エチル
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
FC フラッシュクロマトグラフィー
h 時間
HATU 2-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート
Hept ヘプタン
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
HV 高真空条件
LC-MS 液体クロマトグラフィー-質量分析
Me メチル
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
mL ミリリットル
min 分
Nr 番号
Ph フェニル
prep. 分取用
rpm 分当たりの回転数
RT 室温
s 秒
sat. 飽和
SFC: 超臨界流体クロマトグラフィー
tBu tert-ブチル=3級ブチル
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
T3P プロピルホスホン酸無水物
tR 保持時間
【0140】
参照実施例1: (3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミド)
4-((S)-1-フェニル-エチルアミノ)-5,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1,3-ジカルボン酸 1-tert-ブチルエステル 3-エチルエステル
Dean-Starkトラップ及び還流凝縮器を備えた乾燥フラスコ内で、4-オキソピペリジン-1,3-ジカルボン酸-1-t-ブチルエステル 3-メチルエステル(10g、35mmol)をトルエン(500mL)中に溶解する。(S)-(-)-α-メチルベンジルアミン(6.71g、55.4mmol)及びp-トルエンスルホン酸一水和物(0.36g、1.85mmol)を添加し、混合物を3h加熱還流する。次いで、混合物をRTに冷却し、aq.sat.NaHCO3で3回洗浄し(3x100mL)、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮して、生成物を濃い黄色のオイルとして得る
。LC-MS法A:tR=1.01min;[M+H]+=375.18。1H NMR(400MHz、CDCl3) δ:9.28(d、J=7.4Hz、1H)、7.25-7.38(m、5H)、4.63(m、1H)、4.19(q、J=7Hz、2H)、4.07(s、2H)、3.46-3.38(m、1H)、3.33-3.26(m、1H)、2.43-35(m、1H)、2.09-1.99(m、1H)、1.50(d、J=7.4Hz、3H)、1.43(s、9H)、1.29(t、J=7.0Hz、3H)。
【0141】
(3S,4S)-4-((S)-1-フェニル-エチルアミノ)-ピペリジン-1,3-ジカルボン酸 1-tert-ブチルエステル 3-エチルエステル
水素化ホウ素ナトリウム(1.43g、37.85mmol)をN2下-15℃にてTHF(100mL)中に溶解する。TFA(10.7mL、0.14mmol)を20minにわたって滴下する。4-((S)-1-フェニル-エチルアミノ)-5,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1,3-ジカルボン酸 1-tert-ブチルエステル 3-エチルエステル(10.5g、28mmol)を-14~-18℃にて10minにわたって加える。得られた混合物を0℃にて60min撹拌する。氷水(100mL)を注意深く加え、反応混合物をRTにて10min撹拌する。NaOHの3M水溶液を加えて、混合物をpH11にする。反応混合物をDCMで抽出し(2X100mL)、合わせた有機層を塩水(brine)で洗浄し(2X100mL)、MgSO4上で乾燥し、溶媒を減圧下で蒸発させる。得られたオイルを、heptane/EtOAc系(1:0~4:1)を溶出液として用い、120gのシリカゲル上のFCにより精製して、表題の生成物を黄色がかったオイル(9.5g)として得る。表題の化合物には~10%の対応する(3S,4R)-異性体が混入している。LC-MS法A:tR=0.71min;[M+H]+=377.33。1H NMR(400MHz、CDCl3) δ:7.31-7.41(m、5H)、4.14-4.27(m、3H)、4.02(q、J=6.6Hz、1H)、3.74-3.85(m、3H)、3.00-3.10(m、2H)、2.89-2.94(m、2H)、1.88(m、1H)、1.60-1.65(m、1H)、1.42-1.46(m、11H)、1.28-1.38(m、3H)。
【0142】
(3R,4S)-4-アミノ-ピペリジン-1,3-ジカルボン酸 1-tert-ブチルエステル 3-エチルエステル
(3R,4S)-4-((S)-1-フェニル-エチルアミノ)-ピペリジン-1,3-ジカルボン酸 1-tert-ブチルエステル 3-エチルエステル(9.6g、25.5mmol)のMeOH(250mL)中の溶液を、活性炭上のPd(OH)220%(1g)の懸濁液にH2下で加える。混合物をRTにて18h撹拌する。懸濁液を、セライトを通してろ過し、ろ液を真空下で濃縮して、表題の化合物を薄黄色のオイル(5.65g)として得る。表題の化合物は~10%の対応する(3S,4R)-異性体を含有する。LC-MS法A:tR=0.54min;[M+H]+=273.26。1H NMR(400MHz、CDCl3) δ:4.56-4.65(m、1H)、4.40-4.65(m、2H)、4.04-4.30(m、3H)、3.59-3.72(m、1H)、3.01-3.21(m、2H)、2.51-2.68(m、2H)、1.98-2.11(m、1H)、1.73-1.77(m、1H)、1.46(m、8H)、1.26-1.39(m、3H)。
【0143】
(3R,4S)-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-1,3-ジカルボン酸 1-tert-ブチルエステル 3-エチルエステル
(3R,4S)-4-アミノ-ピペリジン-1,3-ジカルボン酸 1-tert-ブチルエステル 3-エチルエステル(12.15g、27.2mmol)のDCM(200mL)中の溶液に、RTにて、5-(2,4-ジフルオロフェニル)イソオキサゾール-
3-カルボン酸(6.1g、26.3mmol)を加える。次いで、TEA(15.2mL、109mmol)、さらにT3Pの50%DCM溶液(32.4mL、54.4mmol)を加える。反応混合物をRTにて24h撹拌する。反応混合物をaq.sat.NaHCO3で2回洗浄する(2X100mL)。有機層をMgSO4上で乾燥し、蒸発させる。粗製残渣を、heptane/EtOAc系(1:0~85:15)を溶出液として用い、100gのシリカゲル上のFCにより精製して、表題の化合物を白色の粉末(10.25g)として得る;表題の化合物は~10%の対応する(3S,4R)-異性体を含有する;LC-MS法A:tR=1.15min;[M+H]+=480.1。1H NMR(400MHz、CDCl3) δ:7.96-8.00(m、1H)、7.81-7.89(m、1H)、6.98-7.13(m、2H)、4.54-4.62(m、1H)、4.42-4.52(m、1H)、3.97-4.28(m、2H)、3.14-3.21(m、1H)、2.88-3.08(m、2H)、2.03-2.18(m、1H)、1.78-1.87(m、1H)、1.58(s、2H)、1.48-1.52(m、9H)、1.28-1.37(m、3H)。
【0144】
(3S,4S)-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-1,3-ジカルボン酸 1-tert-ブチルエステル 3-エチルエステル
ナトリウムエトキシド(3.225g、45mmol)を、(3R,4S)-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-1,3-ジカルボン酸 1-tert-ブチルエステル 3-エチルエステル(3.6g、7.5mmol)のEtOH(40mL)とEtOAc(20mL)の混合物中の溶液に加える。混合物をRTにて1日撹拌する。反応混合物をaq.sat.NH4Cl(25mL)で処理する。DCM(50mL)を加える。有機相を分離し、水層をDCMで3回抽出する(3X50mL)。合わせた有機層をMgSO4上で乾燥し、ろ過し、濃縮する。粗製残渣を、塩基性条件を用いてprep.LC-MSにより精製する(方法B)。表題の化合物を無色の粉末(1.91g)として得、それは~10%の対応する(3S,4R)-異性体を含有する。
【0145】
エナンチオマーとして純粋な表題の化合物を、カラムChiralPak IC、5?m、30x250mmを用いて、A(80%CO2)とB(50%DCM、20%MeOH、0.1%DEA)の混合物を溶出液として、160mL/minの流速で、~10%の(3R,4R)-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-1,3-ジカルボン酸 1-tert-ブチルエステル 3-エチルエステルを含有する(3S,4S)-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-1,3-ジカルボン酸 1-tert-ブチルエステル 3-エチルエステルの混合物のキラル分取用SFCにより得る。キラルHPLC:tR=3.29min。LC-MS法A:tR=1.06min;[M+H]+=480.08。1H NMR(400MHz、CDCl3) δ:8.90-8.94(m、1H)、8.04-8.10(m、1H)、7.57-7.62(m、1H)、7.31-7.38(m、1H)、7.11-7.16(m、1H)、4.23-4.32(m、1H)、4.05-4.13(m、1H)、4.03(q、J=7.1Hz、2H)、3.92-3.97(m、1H)、2.80-3.06(m、2H)、2.61-2.69(m、1H)、1.77-1.81(m、1H)、1.48-1.58(m、1H)、1.40-1.46(m、9H)、1.08(t、J=7.1Hz、3H)。
【0146】
(3S,4S)-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-1,3-ジカルボン酸 1-tert-ブチルエステル
(3S,4S)-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-1,3-ジカルボン酸 1-tert-ブチルエステル 3-エチルエステル(4.98g、10.7mmol)をTHF(80mL)中に溶解する。次いで、1M NaOH水溶液(20mL、20mmol)を加え、混合物をRTにて3h撹拌する。反応混合物を2M HCl水溶液(10mL)でpH=3付近まで酸性化し、DCMで3回抽出する(3X50mL)。合わせた有機相をMgSO4上で乾燥し、ろ過し、濃縮する。表題の化合物を白色の粉末(4.56g)として得る;LC-MS法A tR=0.99min;[M+H]+=452.33。1H NMR(400MHz、DMSO-d6) δ:12.51(s、1H)、8.90(d、J=8.8Hz、1H)、8.07(td、J1=8.6Hz、J2=6.4Hz、1H)、7.60(m、1H)、7.34(td、J1=8.5Hz、J2=2.2Hz、1H)、7.15(d、J=2.9Hz、1H)、4.26(m、1H)、4.04-4.17(m、1H)、3.92-3.95(m、1H)、2.79-3.01(m、2H)、2.60(td、J1=11.0Hz、J2=4.0Hz、1H)、1.75-1.82(m、1H)、1.36-1.54(m、10H)。
【0147】
(3S,4S)-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-3-(1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピルカルバモイル)-ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルエステル
(3S,4S)-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-1,3-ジカルボン酸 1-tert-ブチルエステル(400mg、0.88mmol)のDMF(15mL)中の溶液に、1-(ピリミジン-2-イル)シクロプロパン-1-アミン塩酸塩(171mg、0.975mmol)、DIPEA(0.805mL、4.61mmol)及びHATU(404mg、1.06mmol)を加える。反応混合物をRTにて4h撹拌する。揮発性物質を蒸発させ、粗製の混合物を、塩基性条件を用いてprep.LC-MSにより精製して(方法B)、表題の化合物(419mg)を得る;LC-MS法A tR=0.95min;[M+H]+=568.97。1H NMR(500MHz、DMSO-d6) δ:8.62(d、J=8.6Hz、1H)、8.53(d、J=4.8Hz、3H)、8.08(d、J=6.4Hz、1H)、7.34(d、J=2.4Hz、1H)、7.19-7.21(m、1H)、7.17(d、J=3.0Hz、1H)、3.92-4.1(m、2H)、3.63(m、1H)、3.35-3.45(m、1H)、3.15-3.26(m、2H)、2.75-2.92(m、1H)、1.42-154(m、4H)、1.22-1.44(m、11H)。
【0148】
(3S,4S)-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミド塩酸塩
(3S,4S)-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-3-(1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピルカルバモイル)-ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルエステル(419mg、0.74mmol)をジオキサン(10mL)中に溶解する。HClの4Mジオキサン溶液(5mL、20mmol)を滴下する。混合物をRTにて1h撹拌する。溶媒を蒸発させ、残渣をHV下で乾燥して、表題の粗製化合物を白色の粉末(365mg)として得る。LC-MS法A:tR=0.64min;[M+H]+=469.17。1H NMR(400MHz、DMSO-d6) δ:9.38-9.41(m、1H)、9.27-9.29(m、1H)、9.00(d、J=8.5Hz、1H)、8.93(s、1H)、8.57(d、J=4.8Hz、2H)、8.06(q、J=7.8Hz、1H)、7.59(t、J=10.5Hz、1H)、7.31-7.39(m、2H)、7.25(t、J=4.8Hz、1H)、4.27(d、J=9.8Hz、1H)、3.34(m、2H
)、3.07-3.20(m、3H)、2.03(m、1H)、1.86-1.89(m、1H)、1.51(m、1H)、1.37-1.41(m、1H)、1.03-1.11(m、2H)。
【0149】
(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミド
(3S,4S)-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 メチルエステル塩酸塩(200mg、0.396mmol)のDCM(20mL)中の懸濁液に、RTにて、シクロプロパンカルボキサルデヒド(0.03mL、0.396mmol)、次いでDIPEA(0.2mL、1.2mmol)及びナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(221mg、1mmol)を加える。反応混合物をRTにて2h撹拌する。反応混合物をaq.sat.NaHCO3で2回処理する(50mL)。有機相をMgSO4上で乾燥し、蒸発させる。粗製残渣を、塩基性条件を用いてprep.LC-MSにより精製して(方法B)、表題の化合物を無色の固体(148mg)として得る;キラルHPLC:tR=2.42min;LC-MS法A:tR=0.69min;[M+H]+=523.04。1H NMR(400MHz、DMSO-d6) δ:8.57(d、J=8.4Hz、1H)、8.51(d、J=4.7Hz、2H)、8.47(s、1H)、8.08(dd、J1=8.2Hz、J2=15.7Hz、1H)、7.59(t、J=9.8Hz、1H)、7.34(t、J=8.3Hz、1H)、7.12-7.23(m、2H)、3.95-4.06(m、1H)、3.14(d、J=10.0Hz、1H)、2.99(d、J=10.3Hz、1H)、2.72(t、J=9.3Hz、1H)、2.18-2.27(m、2H)、2.12(t、J=11.4Hz、1H)、2.01(t、J=11.5Hz、1H)、1.85(d、J=11.0Hz.1H)、1.54-1.66(m、1H)、1.45-1.51(m、1H)、1.31-1.41(m、1H)、1.04-1.16(m、2H)、0.79-0.90(m、1H)、0.49(d、J=7.6Hz、2H)、0.10(d、J=4.1Hz、2H)。
【0150】
II. 生物学的アッセイ
In vitroアッセイ
「化合物」のCXCR7受容体に対するアンタゴニスト活性を、下記の実験方法に従って測定する。
【0151】
アッセイには、invitrogenのTango CXCR7-bla U2OS細胞株を用いる。これらの細胞は、Tango GPCR-bla U2OS親株細胞に安定に取り込まれたTEVプロテアーゼ部位及びGal4-VP16転写因子に結合したヒトヒトケモカイン受容体CXCR7を含む。この親株細胞は、UAS応答配列の制御化で、ベータ-アレスチン/TEVプロテアーゼ融合タンパク質及びベータ-ラクタマーゼレポーター遺伝子を安定に発現する。リガンドが結合し、受容体が活性化すると、プロテアーゼ-付加ベータ-アレスチン分子が、プロテアーゼ開裂部位を介してC-末端で転写因子に結合したCXCR7に動員される。プロテアーゼは転写因子をCXCR7から開裂し、それが核に移動し、ベータ-ラクタマーゼの発現を活性化する。FRET対応基質(FRET-enabled substrate)によりベータ-ラクタマーゼの発現の検出が可能である。
【0152】
Tango CXCR7-bla U2OS細胞を0.05%トリプシン-EDTAで培養皿から剥がし、生育培地(McCoy’s 5A90%(v/v)、透析FCS10%(v/v)、0.1mMのNEAA、25mMのHEPES(pH7.3)、1mMのピルビン酸ナトリウム、P/S1%(v/v)、50μg/mlのハイグロマイシン、1
00μg/mlのジェネティシン、200μg/mlのゼオシン)中に回収し、遠心し、アッセイ培地(McCoy’s 5A90%(v/v)、透析FCS1%(v/v)、0.1mMのNEAA、25mMのHEPES(pH7.3)、P/S1%(v/v))に再懸濁する。384ウェルプレート(黒色側壁、透明底)に、1ウェル当たり10000細胞(30μl)を蒔く。プレートを、37℃/5%CO2で24時間インキュベートする。試験化合物をDMSO中に溶解して10mMとし、用量反応曲線の最終濃度の500倍の濃度に、DMSOで段階希釈する。次いで、化合物をアッセイ培地で1:100希釈し、最終濃度の5倍にする。アッセイプレートに、希釈した化合物を1ウェル当たり10μl添加し、37℃で15分間インキュベートする。その後、CXCL12/SDF1-αを、アッセイ培地で最終濃度(受容体活性化のEC80値)の5倍に希釈し、1ウェル当たり10μlをアッセイプレートに添加する。アゴニストは受容体の活性化、従ってb-アレスチンの動員を引き起こす。アンタゴニストとして作用する化合物はこの活性化を減少させる。プレートを37℃にて22時間インキュベートする。1ウェル当たり10μlの検出試薬(LiveBLAzer(登録商標)-FRET B/G(CCF4-AM)基質)をアッセイプレートに移し、プレートを、遮光して、室温にて2時間インキュベートする。蛍光カウントを測定する(Scan1:Ex409/20nm、Em460/30nm、Scan2:Ex409/20nm、Em530/30nm)。算出発光比をIC50の決定に使用する。算出されるEC50値は、その日の細胞アッセイのやり方によって変動しうる。この種の変動は、当業者に公知である。数回の測定による平均IC50値を、幾何平均値とする。この試験においては、参照実施例1の化合物を試験し、3nmのIC50を有した。
【0153】
III. 実施例
実施例1: 結晶形1の(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミド
1mLのMeOHを、標準HPLCバイアル中の10mgの(例えば、参照実施例1から得られる)「化合物」に加え、Crystal16機器(Crystallization Systems、NL)を用いて磁気撹拌棒で500rpmにて撹拌しながら、0.1℃/minの勾配で65℃に加熱することにより懸濁液を溶解させる。次いで、溶液を0.1℃/minの勾配で20℃に冷却する。得られた固体は結晶形1の「化合物」である。
【0154】
あるいは、1mLのMeOH/MeCN 3/1を、標準HPLCバイアル中の20mgの(例えば、参照実施例1から得られる)「化合物」に加え、Crystal16機器(Crystallization Systems、NL)を用いて磁気撹拌棒で500rpmにて撹拌しながら、0.1℃/minの勾配で65℃に加熱することにより懸濁液を溶解させる。次いで、溶液を0.1℃/minの勾配で20℃に冷却する。得られた固体は結晶形1の「化合物」である。
【0155】
【0156】
実施例2:結晶形2の(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペ
リジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミド
100mgの結晶形1の「化合物」を1mLのDCM中に懸濁し、4mLのガラスバイアル内に置いた磁気撹拌棒でRTにて穏やかに撹拌する。1週間後、固体を分離し、この固体は結晶形2の「化合物」である。
【0157】
あるいは、1mLのMeOH/MeCN 3/1を、標準HPLCバイアル中の10mgの(例えば、参照実施例1から得られる)「化合物」に加え、Crystal16機器(Crystallization Systems、NL)を用いて磁気撹拌棒で500rpmにて撹拌しながら、0.1℃/minの勾配で40℃に加熱することにより懸濁液を溶解させる。次いで、溶液を0.1℃/minの勾配で20℃に冷却する。得られた固体は結晶形2の「化合物」である。
【0158】
【0159】
実施例3: 結晶形3の(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミド
50mgの結晶形2の「化合物」を、4mLのガラスバイアル内で0.4mLの水中に懸濁し、オービタルシェイカー上でRTにて穏やかに振とうする。1日後、湿潤状態(wet state)で測定した場合、得られた固体は結晶形3の「化合物」である。結晶形3は二水和物である。
【0160】
【0161】
実施例4: 結晶形4の(3S,4S)-1-シクロプロピルメチル-4-{[5-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-イソオキサゾール-3-カルボニル]-アミノ}-ピペリジン-3-カルボン酸 (1-ピリミジン-2-イル-シクロプロピル)-アミド
10mgの「化合物」を、4mLのガラスバイアル内で3mLのTHF中に溶解し、周囲条件下で蒸発させる。固体を完全に蒸発させた後(3日後)、測定した固体は結晶形4の「化合物」である。
【0162】
あるいは、10mgの結晶形2の「化合物」を0.02mLのTHF/H2O 9/1中に懸濁し、バイアルを閉じた状態でRTにて静置する。6日後、得られた固体は結晶形4の「化合物」である。
【0163】