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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】ノズルクリーナ
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/32 20060101AFI20220519BHJP
   B23K 9/29 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
B23K9/32 E
B23K9/29 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021000480
(22)【出願日】2021-01-05
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】521006587
【氏名又は名称】原 博
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【弁理士】
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】原 博
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-148852(JP,A)
【文献】実開平7-3868(JP,U)
【文献】特開2014-172064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00 - 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接トーチのノズルの表面に付着した堆積物を除去するためのノズルクリーナにおいて、
前記ノズル内に挿入可能で該挿入時の軸心方向に伸び、前記ノズルの内面を研磨するための研磨部と、
前記研磨部が固定され、該研磨部より大径で作業者が保持するための把持部とを備え、
前記研磨部は、前記軸心方向に互いに間隔をあけて複数並んで設けられた研磨刃を備え、前記研磨刃の各々は、前記軸心方向視で多角形状の板状体で成り、前記板状体のエッジを刃先とすることを特徴とするノズルクリーナ。
【請求項2】
前記研磨刃のうち、前記軸心方向の先端側にある研磨刃を第1の研磨刃とし、この第1の研磨刃の後方側にある研磨刃を第2の研磨刃としたとき、前記第1の研磨刃と前記第2の研磨刃とは、前記軸心方向視で異なる角度位置になるように配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載のノズルクリーナ。
【請求項3】
前記第1の研磨刃及び第2の研磨刃は、前記軸心方向視で四角形状で成り、
前記第1の研磨刃及び第2の研磨刃の前記軸心方向視で前記異なる角度位置が30°~60°の角度範囲内である、ことを特徴とする請求項2に記載のノズルクリーナ。
【請求項4】
前記軸心方向後方側にある研磨刃は、2個以上設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のノズルクリーナ。
【請求項5】
前記研磨部は、前記ノズル内に挿入されるときに給電チップとの干渉を避けるための、前記軸心方向に伸びる空洞部を有し、
前記軸心方向先端側にある研磨刃は、板状体の先端側にある隅部を斜めに面取りした面取部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のノズルクリーナ。
【請求項6】
前記研磨部は、前記軸心方向の後方側に、前記研磨部と一体に該研磨部よりも大径とされ、クリーニング作業時に前記ノズルの端面および外面と当接可能な当接面を有し、
前記当接面には凹部が形成されており、前記当接面と前記凹部との境界を成すエッジが前記ノズルの端面または外面を研磨する刃先となることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のノズルクリーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接トーチのノズルの表面に付着した堆積物を除去するためのノズルクリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シールドガスを溶接点に供給する溶接トーチのノズルに挿入して回転させ、ノズルの内面に付着した堆積物を除去するために用いられる種々の形状のノズルクリーナが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。特許文献1に示されるノズルクリーナは、ノズル内に挿入される研磨部が円筒の外面にその円筒に平行な平面を形成した形状を有して成り、その平面と円形外面との交線からなるエッジを研磨用の刃先としている。
【0003】
特許文献2に示されるノズルクリーナは、ノズル内に挿入される研磨部が先端に向けて断面が小さくなるテーパ形状の四角柱で成り、その四角柱のエッジを研磨用の刃先としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-148852号公報
【文献】特開2002-160062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1や特許文献2に示されるようなノズルクリーナにおいては、ノズルに挿入される研磨部の全長にわたって研磨用の刃先が設けられているので、刃先に沿って存在する堆積物を除去する場合、研磨部への負荷が大きくなってノズルクリーナの操作に大きな力が必要になり、使い勝手が悪い。
【0006】
本発明は、上記課題を解消するものであって、より小さな力でノズル内の付着物を除去できて操作性の良いノズルクリーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明のノズルクリーナは、溶接トーチのノズルの表面に付着した堆積物を除去するためのノズルクリーナにおいて、前記ノズル内に挿入可能で該挿入時の軸心方向に伸び、前記ノズルの内面を研磨するための研磨部と、前記研磨部が固定され、該研磨部より大径で作業者が保持するための把持部とを備え、前記研磨部は、前記軸心方向に互いに間隔をあけて複数並んで設けられた研磨刃を備え、前記研磨刃の各々は、前記軸心方向視で多角形状の板状体で成り、前記板状体のエッジを刃先とする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のノズルクリーナによれば、刃先を有する研磨刃が軸心方向に間隔をあけて設けられて、刃先が軸心方向に連続していないので、研磨部への負荷が抑制され、より小さな力でノズル内の付着物を除去できて操作性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るノズルクリーナの斜視図。
図2】同ノズルクリーナの分解斜視図。
図3】(a)は同ノズルクリーナの側面図、(b)は同正面図、(c)は(a)のノズルクリーナをその軸心回りに45°回転した状態の側面図、(d)は同正面図。
図4】(a)は同ノズルクリーナを溶接トーチのノズルに挿入した状態を示す部分断面側面図、(b)は(a)のノズルクリーナをその軸心回りに45°回転した図。
図5】(a)は第1の変形例に係るノズルクリーナの斜視図、(b)は第2の変形例に係るノズルクリーナの斜視図。
図6】第3の変形例に係るノズルクリーナの斜視図。
図7】第4の変形例に係るノズルクリーナの斜視図。
図8】他の一実施形態に係るノズルクリーナの斜視図。
図9】(a)は第5の変形例に係るノズルクリーナの斜視図、(b)は同上面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係るノズルクリーナについて、図面を参照して説明する。図1図2に示すように、ノズルクリーナ1は、ノズルに挿入時の挿入方向になる軸心方向Axを有する。ノズルクリーナ1は、ノズルの内面を研磨するための研磨部2と、その研磨部2と一体的に固定される基部3と、基部3に接続される把持部4とを備えている。
【0011】
研磨部2は、溶接トーチのノズル内に挿入可能で軸心方向Axに伸びた形状を有している。研磨部2は、軸心方向Axに複数(本例では4個)並んで設けられた研磨刃20(20a,20b,20c,20dの総称)を備えている。研磨刃20a(第1の研磨刃)は、軸心方向Axの先端側にあり、研磨刃20b,20c,20d(総称して第2の研磨刃)は、研磨刃20aの後方側にある。研磨刃20は、その各々が軸心方向視で多角(本例では四角)形状の板状体で成り、それぞれの板状体の辺や稜線部であるエッジを刃先1a,1bとする。研磨刃20は、離間部21によって互いに間隔をあけて層状に重ねられて研磨部2を構成し、円柱状の基部3に同軸に固定されている。研磨部2は、研磨部2をノズル内に挿入するきにノズル内の構造物である給電チップとの干渉を回避するための、軸心方向Axに伸びる空洞部23を有する。研磨部2の概略形状は、四角形と円形と斜面とを組み合わせた凹凸外形を有する中空棒である。
【0012】
複数の研磨刃20の各々は、軸心方向視で同じ大きさの正方形である。研磨部2の最も先端側にある研磨刃20aと後方側の研磨刃20b~20dとは、軸心方向視で異なる角度位置になるように軸心回りに45°回転されている。
【0013】
軸心方向Axの先端側にある研磨刃20aは、先端側の4隅に、二等辺三角形状の面取部24を有し、面取部24の境界を成す斜辺がノズルに最初に挿入される先進刃先である刃先1aを構成する。斜辺は、研磨部2の軸心方向Axに対して平行でも直交でもない斜めの辺(エッジ)という意味である。この研磨刃20aは、斜辺から成る刃先1aの他に、軸心方向Axのエッジから成る刃先1bを有する。刃先1bは、刃先1aの後からノズルに侵入する。
【0014】
後方側の研磨刃20b,20c,20dの各々は、軸心方向Axに沿った4つのエッジから成る刃先1bを有する。これらの刃先1bは、先進刃である刃先1aに対する後続刃であり、ノズルの内面を仕上げ研磨する。
【0015】
離間部21は、外形が円柱形状のスペーサとして機能し、研磨刃20の各々の間隔をあける。離間部21は、研磨部2の他の構成部分とともに一体的に、例えば切削加工によって形成される。離間部21は、外形が完全な円柱形状に限られず、四角柱を旋盤加工する際に完全な円柱状になる手前で加工をやめて四角柱の面を残したような、不完全な円柱形状であってもよく、研磨刃20間の刃先1bを分離できればよい。
【0016】
基部3は、円柱形状を有し、その下面中央に雌ねじを有する。基部3は、研磨刃20の軸心方向視の外形よりも大きな断面を有し、研磨部2がノズルに挿入されたときに、基部3の上面にノズルの先端が当接するストッパとして機能する。基部3は、円柱形状に限られず、ノズルに対するストッパとして機能する形状であればよく、把持部4をノズルに対するストッパとしてもよい。基部3は、研磨部2とともに一体的に、例えば切削加工によって形成される。
【0017】
把持部4は、研磨部2および基部3よりも大径の円盤状であり、その上面中央には基部3を挿入載置する凹部4aを有し、下面中央には基部3の雌ねじにねじ止めされる雄ねじ4bを挿入するための孔を有する。その孔は、凹部4aに連通している。研磨部2は、基部3を介して雄ねじ4bによって把持部4に固定される。研磨部2に一体の基部3と把持部4との相互回転防止のため、凹部4aの底面と基部3の底面とを、偏心位置にピンを立てて位置決めしてもよい。この把持部4は、例えば、把持部4の後端面に手のひら側をあてがい、把持部4の外周に分散して指をかけた状態で、作業者が把持部4を回しながら押す操作が想定されている。
【0018】
次に、刃先1a,1bについてさらに説明する。図3(a)(b)(c)(d)に示すように、研磨刃20の軸心方向Axに沿ったエッジから成る刃先1bは、研磨刃20を内包する、ノズルクリーナ1と同軸の仮想円20R上に位置する。ノズルクリーナ1が、その軸心回りに回転されるとき、刃先1bは仮想円20R上を移動する。仮想円20Rは、ノズルクリーナ1で処理されるノズルの内径よりも小さい。
【0019】
研磨刃20aの面取部24の斜辺から成る刃先1aは、仮想円20Rの中心寄りの位置から仮想円20Rの円周上に至る範囲に、研磨部2の側方から見て斜めに伸びてテーパ状に分布している。従って、研磨刃20aは、面取部24と刃先1aとをガイドとして、ノズルの内部に容易に挿入でき、使い勝手がよい。研磨部2が回転されつつノズルに挿入されるとき、刃先1aは、ノズルの内面に堆積して内径を狭めている堆積物を削り落して内径を広げながら、ノズル内に侵入する。
【0020】
次に、ノズルクリーナ1の使用例を説明する。図4(a)(b)に示すように、アーク溶接用の溶接トーチ9は、シールドガスを溶接点に供給するためのノズル90と、溶接トーチ9の中心軸に沿って送出される溶接用のワイヤに接触して電気エネルギを溶接用のワイヤに強制的に供給する給電チップ91とを備えている。
【0021】
作業者は、ノズル90を片手で持ち、他の片手でノズルクリーナ1の把持部4を持って、ノズルクリーナ1を右や左に回しながら、研磨刃20aをノズル90の内部に押し込んでいく。このとき、給電チップ91はノズルクリーナ1と干渉することなく空洞部23の内部に収まり、刃先1aは付着して堆積した堆積物を削り落としながら進み、後続の刃先1bは残余の堆積物をさらに削り落として仕上げ研磨をしながら進む。このようにして、ノズルクリーナ1を用いて、溶接トーチ9のノズル90の内面に付着した堆積物を除去してクリーニングすることができる。
【0022】
上述のノズル90は、通常、溶接トーチ9から取り外すことができる。溶接トーチ9から取り外したノズル90の内部をノズルクリーナ1でクリーニングする場合、ノズル90内に給電チップ91が存在しないので、研磨部2に空洞部23が形成されていないものであってもよい。
【0023】
次に、ノズルクリーナ1の製造について説明する。本実施形態のノズルクリーナ1は、基部3と一体の研磨部2と、把持部4と、これらを結合固定する雄ねじ4bとの3つの部品によって構成されている。研磨部2は、付着した堆積物を除去できる強度と耐久性とをする刃先1a,1bを形成できる任意の材料で製造すればよく、例えば金属材料、例えば鉄合金で製造される。
【0024】
研磨部2と基部3とは、軸心に同軸の円形の表面と、軸心方向Axに平行な平面と、面取部24を成す平面であって軸心方向Axに対して傾いた斜面と、軸心方向Axに直交する平面と、を外形構成面として有している。これらの面は、例えば、旋盤加工と、フライス加工とによって容易に工作することができ、ノズルクリーナ1を低コストで製造できる。また、切削加工後の焼き入れ加工によって、刃先1a,1bを高硬度化してもよい。
【0025】
把持部4は、基部3と一体の研磨部2を固定できる強度を有するもであればよく、例えば、アルミニュームの合金を用いて軽量なものとすることができ、旋盤加工で容易に工作できる。把持部4は、研磨部2および基部3と一体のものであってもよい。また、把持部4は、金属に限られず木製やプラスチック製であってもよく、単体の材料に限られず、金属、木、プラスチック、ゴムなどを複合したものであってもよい。
【0026】
図5(a)は、第1の変形例に係るノズルクリーナ1を示す。ここに、把持部4は、円柱状または棒状の把持部4としている。このような把持部4は、円盤状の把持部4と同様に任意の材料で構成でき、その構造はパイプ形状としてもよい。このノズルクリーナ1は、例えば、体操競技における鉄棒を掴むように把持部4を片手で把持して、他方の片手でノズルをつかんで、ノズルクリーニング作業を行なうことができる。
【0027】
図5(b)は、第2の変形例に係るノズルクリーナ1を示す。このノズルクリーナ1の把持部4または把持部4の一部が、電動のねじ回しまたはドリルのチャックに把持できる六角柱状を有しており、ノズルクリーナ1を電動式のクリーナとして用いることができる。把持部4は、研磨部2や基部3と一体で形成してもよく、別部品として形成して研磨部2や基部3に固定してもよい。把持部4の形状は、六角柱状に限られず、チャックで把持できる棒状であればよい。また、このノズルクリーナ1は、棒状部を手で把持して作業をするには細いが、基部3の外周面を親指と人差し指で把持してクリーニング作業をすることができる。この場合、基部3は作業者が保持する把持部として機能し、このノズルクリーナ1は、作業者が手作業でクリーニング作業を行う道具として用いることができる。基部3の外周面に滑り止め加工をしてもよい。
【0028】
図6は、第3の変形例に係るノズルクリーナ1を示す。このノズルクリーナ1は、面取部24の形状が非対称であり、この点で、図1の対称な面取部24を有するノズルクリーナ1とは相違する。この変形例において、面取部24の長さの異なる2つの斜辺のうち、短い斜辺の方が傾斜が少なく、ノズル90の内面により近接しているので、短い斜辺が刃先1aとなる。
【0029】
面取部24が形成される研磨刃20aは、研磨部2の概略外径が先端で小さくなるように、軸心方向視で下層の研磨刃20の外形よりも小さな外形を有するものとしてもよい。面取部24は、任意の傾斜と任意の面積とを有するものとしてもよい。面取部24は、研磨刃20aに刃先1bが形成されない形状である台形状の面取部として、形成してもよい。また、面取部24が研磨刃20aに台形状に形成される場合、研磨刃20aの後方の研磨刃20bにおいても、その隅部に面取部24を形成するようにしてもよい。
【0030】
また、研磨刃20aを回転配置させる位置は45°に限られず任意に設定してもよく、研磨刃20a及び研磨刃20b~20dの軸心方向Axから見て角度位置の差が30°~60°の角度範囲内であれば好適である。研磨刃20aだけを回転配置させることに限られず、任意の研磨刃20を互いにまたは一緒に回転配置させてもよく、例えばらせん状に回転配置してもよい。また、ノズルクリーナ1は、上述した実施形態や種々の変形例の構成を互いに組み合わせた構成としてもよい。
【0031】
本実施形態のノズルクリーナ1によれば、刃先1a,1bを有する研磨刃20が軸心方向Axに間隔をあけて設けられて、刃先1a,1bが軸心方向Axに沿って連続していないので、研磨部2への負荷が抑制され、より小さな力でノズル内の付着物を除去でき、操作性がよい。また、軸心方向Axから見て、研磨刃20aと研磨刃20bとが異なる角度位置にあるので、研磨部2を回しながら押し込む操作によって、研磨刃20aの刃先1a,1bから研磨刃20bの刃先1bへと、作業する刃先を迅速に引き継ぐことができ、付着物の除去を効率的に行うことができ、操作性がよい。言い換えると、研磨刃20a,20bの配置位置を回転した構造は、少しの回転と押し込みによって、次の刃先が、ノズル内面の注目点における付着物に当たる、という効果を奏する。
【0032】
図7は、第4の変形例に係るノズルクリーナ1を示す。このノズルクリーナ1は、図1図5図6などに示すノズルクリーナ1の研磨刃20aにおける面取部24を備えていないノズルクリーナである。このノズルクリーナ1の研磨刃20aは、斜めの刃先1aを有さず、軸心方向Axに沿った刃先1bのみを有する。
【0033】
このノズルクリーナ1は、ノズルへの挿入時の案内面や案内刃先となる面取部24と斜めの刃先1aを備えていないが、多くの場合においてノズル内面に点在している付着物を避けて研磨刃20aをノズル内に挿入できる。その場合、ノズルクリーナ1は、研磨部2を回転させることにより、研磨刃20aの刃先1bによって付着物を除去することができ、その後、後続の研磨刃20b~20dによる仕上げ研磨ができる。
【0034】
図8は、他の一実施形態に係るノズルクリーナ1を示す。このノズルクリーナ1の研磨部2は、軸心方向視で5角形の板状体で成る研磨刃20(20a~20e)を、互いに間隔をあけて軸心方向Axに5個並べた状態で備えている。研磨刃20のいずれも、共通の軸心に関して同じ回転位置にある。この場合、研磨部2が五角柱状になって、研磨部2における軸心方向Axに沿う平面が5面になるので、フライス盤による加工が簡単になる。
【0035】
研磨刃20aは、先端側の5隅に面取部24を有し、面取部24の境界を成す斜辺エッジが刃先1aを構成する。また、研磨刃20aは、軸心方向視において10角形となるように、軸心方向Axに平行な面取部24bを有している。面取部24bは、板状体における軸心方向Axに平行な隣接する側壁面の交叉部分に形成されている。面取部24bの境界を成す軸心方向Axに平行なエッジは、刃先1bを構成する。
【0036】
研磨刃20aの面取部24bによる刃先1bは、後方の研磨刃20bの刃先1bに対し、軸心周りの回転位置をずらした位置にあり、研磨のタイミングをずらす効果がある。また、研磨刃20aの面取部24bは、研磨刃20aについての外接円を小さくする効果があり、ノズルへの研磨部2の挿入を容易にする。
【0037】
この実施形態に係るノズルクリーナ1は、研磨部2によるノズルの内面研磨に加え、基部3によって、ノズルの端面および先端部の外面の研磨を行うことができる。研磨部2に加え基部3が研磨を行うという意味で、基部3は研磨部2の一部である。
【0038】
研磨部2は、軸心方向Axの後方側に、研磨部2と一体に形成されて研磨部2よりも大径とされた当接面を基部3の上面側に有する。その当接面は、クリーニング作業時にノズルの端面に当接可能な当接面3a、およびノズルの先端部の外面に当接可能な当接面3bである。より具体的には、円盤形状の基部3における軸心方向Axの先端側の面に、ノズルの先端を差し込み可能に形成された、矩形断面を有する円形溝の底面と外側壁面が、それぞれ、当接面3aと当接面3bになる。
【0039】
当接面3a,3bには凹部3cが形成されている。当接面3aと凹部3cとの境界を成すエッジがノズルの端面を研磨する刃先1cとなる。また、当接面3bと凹部3cとの境界を成すエッジがノズルの外面を研磨する刃先1dとなる。凹部3cは、当接面3a,3bを、基部3の外側から中心方向に向けて連続的に切り欠く共通の溝状に形成されている。この溝状の凹部3cは、ノズルの端面と端部の外面とを刃先1c,1dによって研磨したとき発生する研磨屑の排出溝として機能する。
【0040】
なお、この実施形態において、凹部3cが当接面3a,3bに共通に形成されているが、当接面3aに形成される凹部と当接面3bに形成される凹部とを互いに異なる位置に形成していてもよい。また、当接面3a,3bは、刃先1c,1dを適切な位置に形成するための面であり、ノズルの端面や外面を研磨できるように刃先1c,1dを形成できればよいので、広い面として分布している必要はない。例えば、凹部3cの開口面積が当接面3a,3bの面積よりも数倍広い構成であってもよい。
【0041】
この実施形態のノズルクリーナ1は、研磨部2をノズルに挿入後、当接面3aをノズルの端面に押し当てて軸心回りに右や左に互いに逆回転させることにより、刃先1cによってノズルの端面を研磨することができる。また、ノズルクリーナ1は、研磨部2をノズルに挿入後、ノズル端部の外面と刃先1dとを互いに当接させて押圧し、軸心回りに右や左に互いに回転させることにより、刃先1dによってノズルの端部外面を研磨することができる。
【0042】
ノズル端部の外面と刃先1dとの互いの当接と押圧を可能とするため、研磨部2と基部3とは、研磨部2をノズルに挿入後、研磨部2を傾けたり中心をずらす移動によって、ノズルとノズル内の研磨部2の互いの位置と傾きを変えられる公差やガタを設定しておけばよい。
【0043】
なお、研磨部2と基部3との接続部分を細くすることにより、ノズルの端面を当接面3aに接触させた状態で、研磨部2をよい大きく傾けることができ、ノズル端部の外面と刃先1dとを互いに当接させ押圧することが容易になる。例えば、ノズルクリーナ1における研磨刃20のうちの最後方の研磨刃20eを離間部21に置き換えた構造とし、さらに基部3における当接面3aの内径を離間部21の径の大きさまで小さくすればよい。
【0044】
図9(a)(b)は、第5の変形例に係るノズルクリーナ1を示す。この変形例のノズルクリーナ1は、図8のノズルクリーナ1における面取部24を、最上層の研磨刃20aとその直下の研磨刃20bの2つの研磨刃にわたって形成した構造を有している。なお、研磨刃20aにおける面取部24とその直下の研磨刃20bにおける面取部24とは、同一平面にはなっていない。このノズルクリーナ1は、研磨部2の先端の傾斜が緩くなっており、また、刃先1aの刃渡りが長くなっているので、ノズルへの挿入が容易であり、安定してクリーニング作業を行うことができる。
【0045】
この変形例では、研磨刃20a,20bにおける面取部24、従って刃先1aがノズルクリーナ1の正面から見て連続しているので(図9(b))、研磨刃20aの刃先1aと研磨刃20bの刃先1aとで連続的に堆積物の研磨を行うことができる。このような連続的な研磨を可能とするため、この変形例では、研磨刃20a,20bにおける面取部24を側面から見ると同一平面になってない。切削加工の手間を減らすため、研磨の連続性が損なわれるが、研磨刃20a,20bにおける面取部24を互いに同一平面に形成してもよい。
【0046】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、研磨部2の外形寸法、内形寸法、長さなどは、ノズルクリーナ1が適用される溶接トーチ9の寸法に合わせて任意に設定すればよい。研磨刃20の個数は、4つや5つに限られず複数の任意の個数としてもよい。各研磨刃20の厚みや、各離間部21の厚みは、それぞれ個々に任意の厚みとしてもよく、刃先とならない角部があってもよい。そこで、例えば、図1のノズルクリーナ1において、研磨刃20dと基部3との間に間隔を設け、その間隔を、図1の離間部21の厚みの数倍に長くして、研磨部2の先端部分に研磨刃20a~20dを集中させたものとして、ノズルの深部を効率的にクリーニングできる構成としてもよい。また、この構成に、図8の基部3による刃先1c,1dを備えることにより、ノズルの外面研磨を容易に実施できる。
【0047】
研磨刃20は、軸心方向視で同じ大きさの四角形や五角形の外形を有する板状体に限られず、より一般的に、研磨刃20は、軸心方向視で多角形状の板状体であればよく、有効な刃先とするその板状体の外周エッジが仮想円20Rに接するものであればよい。従って、研磨刃20は、軸心方向視で三角または六角以上の多角形であってもよい。研磨部2は、軸心方向Axに沿って複数並ぶ研磨刃20が任意の多角形状の板状体の任意の組み合わせで構成したものであってもよい。また、刃先1bは、仮想円20R上に回転対称に設けられている必要はなく、研磨刃20を成す多角形状の板状体も回転対称でなくともよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ノズルクリーナ
1a 刃先(面取部の境界の斜めのエッジ)
1b 刃先(研磨刃の軸心方向のエッジ)
1c 刃先(基部のエッジ、ノズル端面用)
1d 刃先(基部のエッジ、ノズル端部外面用)
2 研磨部
20 研磨刃
20a 研磨刃(第1の研磨刃)
20b,20c,20d,20e 研磨刃(第2の研磨刃)
23 空洞部
24,24b 面取部
3 基部
3a ノズルの端面との当接面
3b ノズルの外面との当接面
3c 凹部
4 把持部
9 溶接トーチ
90 ノズル
91 給電チップ
【要約】
【課題】本発明は、より小さな力でノズル内の付着物を除去できて操作性の良いノズルクリーナを提供する。
【解決手段】ノズルクリーナ1は、回転されつつノズルに挿入される研磨部2と、研磨部2が固定される把持部4とを備えている。研磨部2は、刃先1a,1bを有する四角形状の板状体で成る複数の研磨刃20を互いに間隔をあけて軸心方向Axに並べて設けた形状に構成される。軸心方向Axの先端側にある研磨刃20aと後方側にある研磨刃20b~20dとは、軸心方向視で異なる角度位置に配置されている。ノズルクリーナ1は、研磨刃20が間隔をあけて設けられて、刃先1a,1bが軸心方向Axに沿って連続していないので、研磨部2への負荷が抑制され、より小さな力で操作できる。研磨刃20a,20bが異なる角度位置にある構造は、研磨部2の少しの回転と押し込みによって次の刃先がノズル内面の注目点の付着物に当たる、という効果を奏する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9