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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】画像取得装置及び画像取得方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/34 20060101AFI20220519BHJP
   G01N 35/04 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
G02B21/34
G01N35/04 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021072043
(22)【出願日】2021-04-21
(62)【分割の表示】P 2017079667の分割
【原出願日】2017-04-13
(65)【公開番号】P2021113997
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】柴田 武志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 泰基
(72)【発明者】
【氏名】河島 孝之
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 知志
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-275639(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0240613(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
G01N 35/00-37/00
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドガラスを所定の配列方向に複数段に保持するカセットを装着可能であり、前記スライドガラスに保持された試料の画像を取得する画像取得装置であって、
中心軸周りに一定の位相角をもって放射状に配置され、前記カセットを保持する保持空間を形成する複数のカセット保持板を有しており、前記中心軸周りに回転可能な回転ドラムと、
前記回転ドラムの外方に配置され、前記保持空間に保持された前記カセットに向けて検査光を出射する光源と、
前記検査光を含む反射光を検出し、検出信号を出力する光検出部と、
前記光源及び前記光検出部を前記配列方向に沿って移動させることで、前記回転ドラムの回転によって検知位置に送られた前記カセットに対して前記光源及び前記光検出部を走査する走査部と、
前記光源及び前記光検出部の走査によって得られた前記検出信号に基づいて、前記カセットに保持された前記スライドガラスの保持位置及び保持状態の少なくとも一方に関する保持情報を生成する情報生成部と、
前記回転ドラムの回転によって取出位置に送られた前記カセットから前記スライドガラスを取り出すスライドガラス取出部と、
前記回転ドラム及び前記スライドガラス取出部の動作を制御する動作制御部と、を備え、
前記動作制御部は、前記情報生成部によって生成された前記スライドガラスの前記保持情報に基づいて、前記取出位置に送られた前記カセットに保持された前記スライドガラスのうち、保持位置及び保持状態が正常であると検知された前記スライドガラスのみを取り出すように前記スライドガラス取出部の動作を制御し、保持位置或いは保持状態が異常であると検知された前記スライドガラスの取り出しをスキップするように前記スライドガラス取出部の動作を制御する、画像取得装置。
【請求項2】
前記回転ドラムの中心部分に設けられた支柱と、
前記検知位置に位置する前記カセットの高さ方向に沿って前記光源と対向して前記支柱の側面に設けられた光反射部と、を更に備える、請求項1に記載の画像取得装置。
【請求項3】
前記カセットは、前記検査光及び前記反射光を通過させる開口部を有し、
前記光反射部は、前記開口部を通過した前記検査光を前記光検出部に向けて反射し、
前記光検出部は、前記開口部を通過した前記反射光を検出する、請求項2に記載の画像取得装置。
【請求項4】
前記光反射部は、再帰反射器を含む、請求項2又は3に記載の画像取得装置。
【請求項5】
前記情報生成部は、前記スライドガラスが保持されていない前記カセットが前記保持空間に保持された状態で前記検知位置に位置するときの前記反射光の参照信号に基づいて生成された参照情報を保有し、当該参照情報によって補正された前記検出信号に基づいて前記保持情報を生成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の画像取得装置。
【請求項6】
前記情報生成部は、前記検出信号の波形と前記参照信号の波形との差分或いは除算を取ることにより、前記検出信号の波形を補正する、請求項5に記載の画像取得装置。
【請求項7】
中心軸周りに一定の位相角をもって放射状に配置され、保持空間を形成する複数のカセット保持板を有しており、前記中心軸周りに回転可能な回転ドラムを用いて、スライドガラスに保持された試料の画像を取得する画像取得方法であって、
前記スライドガラスを所定の配列方向に複数段に保持するカセットを前記保持空間に装着する装着ステップと、
前記回転ドラムの回転によって、前記保持空間に装着された前記カセットを検知位置に移動させる第1移動ステップと、
前記回転ドラムの外方に配置され、前記保持空間に保持された前記カセットに向けて検査光を出射する光源、及び、前記検査光を含む反射光を検出し、検出信号を出力する光検出部を前記配列方向に沿って移動させることで、前記回転ドラムの回転によって前記検知位置に送られた前記カセットに対して前記光源及び前記光検出部を走査する走査ステップと、
前記走査ステップで得られた前記検出信号に基づいて、前記カセットに保持された前記スライドガラスの保持位置及び保持状態の少なくとも一方に関する保持情報を生成する生成ステップと、
前記回転ドラムの回転によって、前記保持空間に装着された前記カセットを前記検知位置から取出位置に移動させる第2移動ステップと、
前記取出位置に送られた前記カセットから前記スライドガラスを取り出すスライドガラス取出ステップと、を備え、
前記スライドガラス取出ステップでは、前記生成ステップで生成された前記スライドガラスの前記保持情報に基づいて、前記取出位置に送られた前記カセットに保持された前記スライドガラスのうち、保持位置及び保持状態が正常であると検知された前記スライドガラスのみを取り出し、保持位置或いは保持状態が異常であると検知された前記スライドガラスの取り出しをスキップする、画像取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料等の画像取得に用いられる画像取得装置及び画像取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像取得装置として、例えば特許文献1に記載の画像取得装置がある。この画像取得装置は、試料のマクロ画像を取得するマクロ画像取得装置と、試料のミクロ画像を取得するミクロ画像取得装置とを備えて構成されている。マクロ画像取得装置は、スライドガラス上の試料のマクロ画像を取得し、取得したマクロ画像に基づいてミクロ画像を取得するためのスキャン条件(スキャン範囲や焦点取得情報等)を設定する。ミクロ画像取得装置は、マクロ画像に基づいて設定されたスキャン条件に応じた高倍率の対物レンズを備えている。ミクロ画像取得装置は、高倍率の対物レンズを用いて、スライドガラス上の試料の高倍率(高解像度)の画像を取得する。
【0003】
また、上述したような画像取得装置に対して複数のスライドガラスを搬送する装置として、例えば特許文献2に記載のスライドガラス搬送装置がある。このスライドガラス搬送装置は、複数段にスライドガラスを保持するカセットからスライドガラスを取り出して所定の位置に搬送する装置である。スライドガラス搬送装置は、スライドガラスに係合する突起を備えた引出ハンドと、引出ハンドの前進、後退、上昇等の操作を行う駆動機構と、スライドガラスの進出位置に設けられた位置決めガイドとを備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-127578号公報
【文献】国際公開第2006/098442号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなスライドガラス搬送装置は、多数のスライドガラスを画像取得装置に対して搬送し、画像取得装置において試料の画像取得を連続的に実行できるようにする点で有用である。しかしながら、試料の種類などに応じてスライドガラスの保持位置がカセット毎にばらつくことがある。また、カセットに対してスライドガラスが正しくセットされない場合も考えられる。そのため、画像取得装置での無駄な搬送作業を削減し、カセット単位の画像取得に要する時間を短縮するには、カセット内のスライドガラスの保持位置及び/或いは保持状態を事前に把握することが必要となる。
【0006】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、カセット内のスライドガラスの保持位置及び/或いは保持状態を事前に把握することができる画像取得装置及び画像取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る画像取得装置は、スライドガラスに保持された試料の画像を取得する画像取得装置であって、スライドガラスを所定の配列方向に複数段に保持するカセットが着脱自在に装着されるカセット装着部と、カセット装着部に装着されたカセットに向けて検査光を出射する光源と、検査光を前記配列方向に走査する走査部と、カセットの背面側に配置され、光源から出射された検査光を反射する光反射部と、光反射部、カセット、及びスライドガラスの少なくとも一つによって反射された検査光を含む反射光を検出し、検出信号を出力する光検出部と、検出信号に基づいて、カセットに保持されたスライドガラスの保持位置及び保持状態の少なくとも一方に関する保持情報を生成する情報生成部と、を備える。
【0008】
また、本発明の一側面に係る画像取得方法は、スライドガラスに保持された試料の画像を取得する画像取得方法であって、スライドガラスを所定の配列方向に複数段に保持するカセットに向けて光源から検査光を出射する光出射ステップと、検査光を配列方向に走査しながら、カセットの背面側に配置された光反射部によって、光源から出射された検査光を反射させる反射ステップと、光反射部、カセット、及びスライドガラスの少なくとも一つによって反射された検査光を含む反射光を光検出部によって検出し、検出信号を出力する光検出ステップと、検出信号に基づいて、カセットに保持されたスライドガラスの保持位置及び保持状態の少なくとも一方に関する保持情報を生成する生成ステップと、を備える。
【0009】
これらの画像取得装置及び画像取得方法では、スライドガラスを所定の配列方向に複数段に保持するカセットに向けて光源からの検査光を配列方向に走査し、検査光を光反射部で反射する。そして、光反射部、カセット、及びスライドガラスの少なくとも一つによって反射された検査光を含む反射光を光検出部によって検出する。スライドガラスが存在する位置では、検査光がスライドガラスで散乱され、検査光の一部のみが反射光として光検出部で検出されるため、光検出部によって検出される反射光の強度は小さくなる。一方、スライドガラスが存在しない位置では、検査光がスライドガラスで散乱されることなく光反射部によって反射されるため、光検出部によって検出される反射光の強度は、スライドガラスが存在する位置に比べて高くなる。カセット内のスライドガラスの保持位置及び/或いは保持状態は、光検出部からの検出信号として現れるので、当該検出信号を解析することで、スライドガラスの保持位置及び/或いは保持状態に関する保持情報を生成できる。保持情報を事前に把握することにより、画像取得装置での無駄な搬送作業を削減することが可能となり、カセット単位の画像取得に要する時間の短縮化が図られる。
【0010】
また、情報生成部或いは生成ステップでは、スライドガラスが保持されていないカセットがカセット装着部に装着された状態での反射光の検出信号に基づいて生成された参照情報を保有し、当該参照情報によって補正された検出信号に基づいて保持情報を生成してもよい。このような補正を検出信号に施すことにより、保持情報の生成精度を高めることができる。
【0011】
また、カセットは、検査光及び反射光を通過させる開口部を有していてもよい。この場合、光反射部からの反射光を一層十分な光量で検出できる。したがって、保持情報の生成精度を一層高めることができる。
【0012】
また、光反射部或いは光反射ステップでは、開口部を通過した検査光を光検出部に向けて反射し、光検出部は、開口部を通過した反射光を検出してもよい。この場合、保持情報の生成に要する光学系を簡単化できるので、画像取得装置の大型化を回避できる。また、異なるカセットに対して光反射部を共通で用いることができる。
【0013】
また、光反射部は、カセットの背面に配置されていてもよい。この場合、検査光を透過させるための機構をカセットに設ける必要がなくなるため、カセットの構成の複雑化を避けることができる。また、光源及び光検出部と光反射部との間の距離を短くすることが可能となり、反射光を十分な光量で検出できる。したがって、保持情報の生成精度を一層高めることができる。
【0014】
また、光反射部は、再帰反射器を含んでいてもよい。この場合、光反射部からの反射光を一層十分な光量で検出できる。したがって、保持情報の生成精度を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カセット内のスライドガラスの保持位置及び/或いは保持状態を事前に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】画像取得装置を含んで構成される画像取得システムの一例を示すシステム構成図である。
図2】画像取得装置の一実施形態を示すブロック図である。
図3】スライドガラスを保持するカセットの一例を正面側から示す斜視図である。
図4図3に示したカセットを背面側から示す斜視図である。
図5】カセット装着部の一例を示す正面図である。
図6】スライドガラス検知部の一例を示すブロック図である。
図7】スライドガラス検知部の構成を示す概略図である。
図8】画像取得装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図9】カセット内のスライドガラスの保持位置及び保持状態が正常である場合の例を示す図である。
図10図9の場合の検出信号の一例を示す図である。
図11】参照信号の一例を示す図である。
図12】補正後の検出信号の一例を示す図である。
図13】カセット内のスライドガラスの保持位置及び保持状態が異常である場合の一例を示す図である。
図14図13の場合の補正後の検出信号の一例を示す図である。
図15】カセット内のスライドガラスの保持位置及び保持状態が異常である場合の別例を示す図である。
図16図15の場合の補正後の検出信号の一例を示す図である。
図17】スライドガラス検知部の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の一側面に係る画像取得装置及び画像取得方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、画像取得装置を含んで構成される画像取得システムの一例を示すシステム構成図である。図1に示すように、画像取得システム1は、画像取得装置11と、画像取得装置11の動作を制御する制御用コンピュータ12と、画像取得装置11の操作に用いられる複数の操作用コンピュータ13と、画像取得システム1で用いられる各種データを格納するデータサーバ14とを備えている。この画像取得システム1は、設置場所が互いに異なる操作用コンピュータ13を利用して画像取得装置11を遠隔操作することにより、画像取得装置11で生体サンプル等の試料のバーチャルスライド画像を取得し、当該バーチャルスライド画像に基づく試料の観察を各種施設で実施可能とするシステムである。
【0019】
制御用コンピュータ12及び操作用コンピュータ13は、物理的には、RAM、ROM等のメモリ、及びCPU等のプロセッサ(演算回路)を内蔵するコンピュータシステムである。制御用コンピュータ12及び操作用コンピュータ13は、例えばパーソナルコンピュータ、スマートデバイス、マイクロコンピュータ、或いはクラウドサーバなどである。また、制御用コンピュータ12及び操作用コンピュータ13は、ディスプレイなどの表示装置、キーボードやマウスといった入力装置等が接続されている。また、表示装置及び入力装置は、タッチスクリーン或いはスマートデバイスであってもよい。
【0020】
画像取得装置11と制御用コンピュータ12とは、例えば施設内において同室に設置され、有線又は無線によって相互に情報通信可能に接続されている。データサーバ14は、例えば画像取得装置11及び制御用コンピュータ12が設置された施設とは別のデータセンタ内に設置され、ネットワークNを介して制御用コンピュータ12と相互に情報通信可能に接続されている。操作用コンピュータ13は、例えば任意の施設に設置され、ネットワークNを介してデータサーバ14と相互に情報通信可能に接続されている。なお、画像取得装置11と制御用コンピュータ12とは、それぞれ別施設或いは別室に設置されてもよい。また、データサーバ14は、制御用コンピュータ12と同じ施設に設置されてもよい。
【0021】
制御用コンピュータ12及び操作用コンピュータ13は、ユーザからの画像取得装置11における試料のスキャン条件等の入力を受け付け、入力された条件に基づいて画像取得装置11の動作を制御する。また、制御用コンピュータ12は、画像取得装置11で取得した画像データ等の各種データをデータサーバ14に送信する。制御用コンピュータ12及び操作用コンピュータ13は、データサーバ14に保存されている各種データを参照し、画像取得装置11で取得したバーチャルスライド画像をディスプレイに表示させる閲覧機能を有している。
【0022】
次に、画像取得装置11について説明する。図2は、画像取得装置の一実施形態を示すブロック図である。同図に示すように、画像取得装置11は、カセット装着部21と、スライドガラス取出部22と、スライドガラス搬送部23と、画像取得部24と、画像処理部25とを備えている。また、カセット装着部21に対しては、カセット装着検知部31と、識別コード読取部32と、スライドガラス検知部33とが設けられている。さらに、画像取得装置11は、制御用コンピュータ12或いは操作用コンピュータ13からの制御に基づいて、これらの各構成要素の動作を制御する動作制御部34を備えている。
【0023】
カセット装着部21は、複数のスライドガラスを保持するカセット41が着脱自在に装着される部分である。カセット41は、図3及び図4に示すように、縦長の略直方体形状をなす樹脂製の筐体42を備えている。筐体42の一対の内側壁には、筐体42の内側に向かって張り出す保持板43,43がそれぞれ設けられている。保持板43,43上にスライドガラスGを載置することにより、スライドガラスGが筐体42の底面44と平行な状態で保持される。
【0024】
本実施形態のカセット41では、30段の保持板43,43がカセット41の高さ方向に設けられており、30枚のスライドガラスGを一度に保持することが可能となっている。また、本実施形態では、10段ごとに仕切板45が配置され、仕切板45の配置位置ではスライドガラスGの保持間隔が他の位置に比べて広くなっている。これにより、目視でのスライドガラスGの保持位置の把握が容易となっている。
【0025】
一方の保持板43と他方の保持板43とは、筐体42の中央部分で互いに離間した状態となっている。また、一方の保持板43は、筐体42の正面側に突出する突出部分46と、突出部分46の先端に設けられた爪部47とを有している。突出部分46の幅は、筐体42の正面側に向かって狭くなっており、爪部47は、先細りの突出部分46の先端において上向きに設けられている。このような構成により、保持板43,43に載置された状態において、スライドガラスGの底面(特に角部周辺)が十分な面積で保持板43,43から露出する。したがって、スライドガラスGを保持板43,43から指で容易に取り外すことができる。
【0026】
カセット41の頂面48には、識別カードCを載置する載置部49が設けられている。当該頂面の識別カードCの一面側には、当該カセット41を識別するための識別情報を文字列として含む識別コードが付与されている。識別カードCには、識別コードが直接印字されていてもよく、識別コードが印字されたシールが貼り付けられていてもよい。載置部49は、頂面48の縁部に設けられた複数の爪部50を有している。これらの爪部50により、載置部49に載置された識別カードCの側面が保持されるようになっている。また、頂面48の中央部分には、当該頂面48の幅方向の全体にわたって一定の幅で窪み部51が設けられている。この窪み部51により、識別カードCの中央部分が載置部49から浮くので、識別カードCを載置部49から指で容易に取り外すことができる。
【0027】
また、図4に示すように、カセット41の背面52の中央部分には、開口部53が設けられている。開口部53は、保持板43,43によるスライドガラスGの保持領域に対応して、カセット41の高さ方向に一定の幅で延在している。したがって、開口部53が設けられている領域では、開口部53を通してカセット41の正面側から背面側を見通すことが可能となっている。また、カセット41の背面52において、開口部53よりも下方の位置及び開口部53よりも上方の位置には、カセット装着部21へのカセット41の装着に用いる金属プレート54がそれぞれ設けられている。金属プレート54は、例えばカセット41の内部空間の幅と同程度の長さの帯状をなし、ネジ止めなどの締結手段によって筐体42に固定されている。
【0028】
図5は、カセット装着部21の一例を示す正面図である。同図に示すように、カセット装着部21は、複数のカセット41を装着可能な回転ドラム61を枠体K内に備えて構成されている。回転ドラム61は、底板62と、天板63と、底板62と天板63との間に配置された複数のカセット保持板64とを有している。回転ドラム61の中心部分には、支柱65が設けられている。支柱65は、底板62の中心部分及び天板63の中心部分にそれぞれ設けられた開口に通されており、固定軸(回転しない軸)となっている。支柱65は、円柱及び角柱のいずれであってもよい。
【0029】
カセット保持板64は、回転ドラム61の中心軸周りに一定の位相角をもって放射状に配置されている。隣接するカセット保持板64,43間の空間は、上述したカセット41の保持空間Sとなっている。本実施形態では、回転ドラム61の周方向に12箇所の保持空間Sが設けられている。カセット保持板64が放射状に配置されているため、保持空間Sは、回転ドラム61の外周側から奥側に向かって裾狭まりとなっている。また、保持空間Sの奥側において、隣り合うカセット保持板64,64の端部同士は、一定の間隔をもって離間している。これにより、保持空間Sの奥側の支柱65の周面又は側面を回転ドラム61の正面側から見通すことができるようになっている。
【0030】
底板62及び天板63には、各保持空間Sの奥側となる位置にマグネット66がそれぞれ設けられている。背面側を奥側に向けた状態でカセット41(図3及び図4参照)を保持空間Sに差し込むことにより、カセット41の背面側の上下の金属プレート54が磁力によって保持空間Sの上下のマグネット66に結合する。これにより、回転ドラム61に対してカセット41が着脱自在に保持される。
【0031】
底板62の下部には、回転ドラム61を中心軸周りに一方向(例えば時計回り)に回転させるアクチュエータが設けられている。本実施形態の回転ドラム61では、画像取得装置11の正面側を向くようにカセット41の装着位置M1が設定されている。図5の例では、装着位置M1において、枠体Kの窓から3つの保持空間Sにアクセス可能となっており、一度に3体のカセット41を回転ドラム61に装着できる。回転ドラム61の回転により、保持空間Sに保持されたカセット41は、装着位置M1を起点として、各種の検知を行う検知位置M2、及びカセット41内のスライドガラスGを取り出して画像取得部24側に送る取出位置M3に順番に送られる(図6参照)。
【0032】
また、天板63は、中心側から放射状に延びてカセット保持板64の上端を保持する複数の保持片67を有している。保持片67,67間には、保持空間Sの平面形状に対応する切欠部68が設けられている。この切欠部68により、保持空間Sに保持された状態のカセット41の頂面48(すなわち、識別カードCの載置部49)を天板63側から見通することができるようになっている。
【0033】
図2に戻り、カセット装着検知部31は、回転ドラム61へのカセット41の装着状態を検知する部分である。カセット装着検知部31は、例えば保持空間Sに保持されたカセット41から支柱65までの距離を検出する距離センサ69を有し、当該距離センサ69による検出結果に基づいてカセット41の装着状態の良否を判断する。カセット装着検知部31は、カセット41の装着状態の判断結果を報知手段によって報知してもよく、カセット41の装着状態に異常がある場合に、回転ドラム61の回転を禁止するように動作制御部34に指示情報を出力してもよい。
【0034】
識別コード読取部32は、識別カードCに付与された識別コードの読み取りを行う部分である。識別コード読取部32は、例えば回転ドラム61の上方に配置された識別コードリーダを有し、回転ドラム61の回転によって検知位置M2に送られたカセット41の頂面に載置されている識別カードCから識別コードを読み取る。識別コード読取部32は、読み取った識別コードに含まれるカセット41の識別情報を画像処理部25に出力する。
【0035】
スライドガラス検知部33は、カセット41内のスライドガラスGの保持位置及び保持状態の少なくとも一方を検知する部分である。例えば回転ドラム61の外方に配置された光電センサ71(後述する)を有し、回転ドラム61の回転によって検知位置M2に送られたカセット41内のスライドガラスGの保持位置及び/或いは保持状態を検知する。スライドガラス検知部33は、検知した保持位置及び/或いは保持状態を示す保持情報をスライドガラス取出部22に出力する。スライドガラス検知部33は、検知した保持位置及び/或いは保持状態に異常がある場合には、報知手段による報知を行ってもよい。スライドガラス検知部33の更なる詳細は、後述する。
【0036】
スライドガラス取出部22は、回転ドラム61に保持されたカセット41からスライドガラスGを取り出す部分である。スライドガラス取出部22は、搬送ハンドなどの取出手段を備え、回転ドラム61の回転によって取出位置M3に送られたカセット41からスライドガラスGを順番に取り出してスライドガラス搬送部23に受け渡す。また、スライドガラス取出部22は、画像取得部24による画像取得を終えたスライドガラスGをスライドガラス搬送部23から受け取ってカセット41内の元の保持位置に戻す。
【0037】
スライドガラス取出部22による搬送ハンドの駆動は、スライドガラス検知部33から出力される保持情報に基づいて制御される。例えばスライドガラス取出部22は、保持位置及び/或いは保持状態が正常であると検知されたスライドガラスGのみを搬送ハンドによって取り出し、保持位置及び/或いは保持状態が異常であると検知されたスライドガラスGの取り出しをスキップするようにしてもよい。
【0038】
スライドガラス搬送部23は、スライドガラス取出部22から受け取ったスライドガラスGを画像取得部24に向けて搬送する部分である。また、スライドガラス搬送部23は、スライドガラスGを画像取得部24のマクロ画像取得位置とミクロ画像取得位置との間で搬送する。スライドガラス搬送部23は、画像取得部24による画像取得を終えたスライドガラスGをスライドガラス取出部22に受け渡す。
【0039】
画像取得部24は、スライドガラスGに保持されている試料を撮像し、当該試料の画像を取得する部分である。画像取得部24は、例えばマクロ画像取得装置とミクロ画像取得装置とを備えて構成されている。マクロ画像取得装置は、スライドガラス搬送部23によってマクロ画像取得位置に搬送されたスライドガラスGのマクロ画像をマクロ画像取得用の撮像装置によって取得する。マクロ画像取得装置は、取得したマクロ画像に基づいてミクロ画像の取得範囲(スキャン範囲)及び焦点計測位置等を設定する。
【0040】
ミクロ画像取得装置は、スライドガラス搬送部23によってミクロ画像取得位置に搬送されたスライドガラスGのミクロ画像をミクロ画像取得用の撮像装置によって取得する。ミクロ画像取得装置は、例えば40倍、80倍、或いは100倍といった高倍率の対物レンズを用い、マクロ画像取得装置で設定されたスキャン範囲及び焦点計測位置に基づいて試料のフォーカスマップを作成する。ミクロ画像取得装置は、作成したフォーカスマップに基づいて試料に対する対物レンズの高さを制御し、スキャン範囲内のミクロ画像をミクロ画像取得用の撮像装置によって取得する。画像取得部24は、マクロ画像取得装置で取得したマクロ画像のデータ、ミクロ画像取得装置で取得したミクロ画像のデータ、スキャン範囲及びフォーカスマップ等のデータを画像処理部25に出力する。
【0041】
ミクロ画像装置におけるスキャン方式は、エリアイメージセンサを用いたストロボスキャン方式であってもよく、ラインスキャンセンサを用いたラインスキャン方式であってもよい。また、スキャン範囲内でスライドガラスの移動、停止、及び撮像を繰り返し実行するストップ・アンド・ゴー方式であってもよい。
【0042】
画像処理部25は、画像取得部24で取得した画像を処理する部分である。画像処理部25は、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(ApplicationsSpecific Integrated Circuit)、或いはマイクロコンピュータなどのコンピュータシステムによって構成されている。画像処理部25は、画像取得装置11から受け取ったミクロ画像データを合成し、試料のバーチャルスライド画像を生成する。画像処理部25は、生成したバーチャルスライド画像を識別コード読取部32から受け取ったカセット41の識別情報と関連付け、スキャン範囲及びフォーカスマップ等のデータと共に制御用コンピュータ12経由でデータサーバ14に格納する。
【0043】
続いて、上述したスライドガラス検知部33について更に詳細に説明する。
【0044】
図6は、スライドガラス検知部の一例を示すブロック図である。同図に示すように、スライドガラス検知部33は、光電センサ71と、走査部(スキャナ)72と、光反射部(リフレクタ)73と、情報生成部74と、記憶部(ストレージ)75とによって構成されている。
【0045】
光電センサ71は、光源76と光検出部77とを有し、光源76から出射された検査光L1を光検出部77で検出する。光電センサ71は、ビームセンサ、フォトエレクトリックセンサ、或いはレーザセンサとも称される。光源76は、カセット装着部21に装着されたカセット41に向けて検査光L1を出射する部分である。検査光L1は、コヒーレント光及びインコヒーレント光のいずれであってもよい。このため、光源76としては、例えばレーザダイオード、スーパールミネッセントダイオード、或いは発光ダイオードを用いることができる。光源76は、例えば検知位置M2に位置するカセット41の幅方向の中心部分と対向するように配置されている。
【0046】
走査部72は、光源76と光検出部77を含む光電センサ71をカセット41の高さ方向、すなわち、カセット41内のスライドガラスGの配列方向に移動させるスキャナである。つまり、走査部72により、光電センサ71から出射される検査光L1は、カセット41の高さ方向、すなわち、カセット41内のスライドガラスGの配列方向に走査される。走査部72は、例えば図7に示すように、モータ78の駆動軸79と従動軸80とに掛け渡された周回ベルト81を有している。上述した光電センサ71は、周回ベルト81に固定されており、周回ベルト81の駆動によって検査光L1がカセット41内のスライドガラスGの配列方向に一定の速度で直線状に走査される。
【0047】
光反射部73は、カセットの背面側で検査光L1を反射させるリフレクタである。より具体的には、光反射部73は、例えばコーナリフレクタ等の再帰反射器によって構成されている。光反射部73は、例えば図7に示すように、カセット41の高さ方向に沿って光源76と対向して支柱65の側面に設けられている。また、光検出部77は、光反射部73で反射した検査光L1の反射光を検出する検出器である。光検出部77は、例えばフォトダイオード、光電子増倍管などによって構成されている。光検出部77は、光反射部73、カセット41、及びスライドガラスGによって反射された検査光L1を含む反射光L2を検出し、検出結果に応じた検出信号を情報生成部74に出力する。
【0048】
以上の構成によれば、スライドガラスGが存在する位置では、検査光L1がカセット41の正面側においてスライドガラスGで散乱され、検査光L1の一部が反射される。したがって、光検出部77によって検出される反射光L2の強度は、微弱なものとなる。一方、スライドガラスGが存在しない位置では、検査光L1がスライドガラスGで散乱することなくカセット41の背面52の開口部53(図4参照)を通過する。開口部53を通過した検査光L1の大部分は、光反射部73によって反射される。反射光L2は、再び開口部53からカセット41内を通り、光検出部77によって検出される。したがって、光検出部77によって検出される反射光L2の強度は、スライドガラスGが存在する位置に比べて高くなる。
【0049】
情報生成部74は、カセット41に保持されたスライドガラスGの保持位置及び/或いは保持状態に関する保持情報を生成する信号処理回路である。情報生成部74は、物理的には、例えばマイクロコンピュータなどのコンピュータシステムによって構成されている。情報生成部74は、光検出部77から検出信号を受け取ると、まず、記憶部75からの参照情報の読み出しを実行する。
【0050】
参照情報は、スライドガラスGが保持されていないカセット41がカセット装着部21に装着された状態での反射光L2の検出信号(参照信号)に基づいて生成される。参照情報は、例えば参照信号の波形である。情報生成部74は、光検出部77からの検出信号を参照情報に基づいて補正し、補正した検出信号に基づいてスライドガラスGの保持位置及び/或いは保持状態を検知する。より具体的には、情報生成部74は、例えば光検出部77からの検出信号の波形と参照信号の波形との差分或いは除算を取ることにより、検出信号の波形を補正する。情報生成部74は、補正した検出信号の波形に基づいてスライドガラスGの保持位置及び/或いは保持状態を検知する。そして、情報生成部74は、スライドガラスGの保持位置及び/或いは保持状態の検知結果に基づいて保持情報を生成し、当該保持情報をスライドガラス取出部22に出力する。
【0051】
続いて、画像取得装置11の動作について説明する。
【0052】
図8は、画像取得装置11の動作の一例を示すフローチャートである。同図に示すように、画像取得装置11では、試料のバーチャルスライド画像の取得に先立って、カセット41内のスライドガラスGの保持位置及び/或いは保持状態を検知する検知ステップがスライドガラス検知部33によって実行される。この検知ステップでは、まず、カセット装着部21へのカセット41の装着がなされる(ステップS01:装着ステップ)。
【0053】
カセット41の装着後、回転ドラム61の回転によってカセット41が検知位置M2に送られると、光源76から検査光L1が出射される(ステップS02:光出射ステップ)。さらに、検査光L1を出射した状態で光源76が走査部72によってカセット41の高さ方向(カセット41内のスライドガラスGの配列方向)に走査される(ステップS03:走査ステップ)。光源76から出射された検査光L1は、高さ方向(配列方向)に走査されながら、光反射部73、カセット41、或いはスライドガラスG、によって反射される(ステップS04:反射ステップ)。ステップS04による反射光L2は、光検出部77によって検出される(ステップS05:光検出ステップ)。
【0054】
反射光L2を検出した後、情報生成部74による参照情報の読み出しがなされ、参照情報に基づく検出信号の補正が行われる(ステップS06:補正ステップ)。検出信号の補正の後、補正された検出信号の解析がなされ、例えば補正された検出信号の波形に基づいて、スライドガラスGの保持位置及び/或いは保持状態が検知され、検知された保持位置及び/或いは保持状態に基づいて保持情報が生成される(ステップS07:生成ステップ)。
【0055】
以下、スライドガラス検知部33によるスライドガラスGの保持位置及び/或いは保持状態の検知例について説明する。
【0056】
図9は、カセット内のスライドガラスの保持位置及び保持状態が正常である場合の例を示す図である。同図の例では、カセット41の各段の保持板43,43のそれぞれにスライドガラスGが平行に保持されている。図10は、この場合の検出信号の一例を示す図である。図10では、縦軸が反射光強度、横軸が位置(検査光L1の走査位置)となっている。ここでは、検査光L1は、カセット41の下段側から上段側に走査されている。上述したように、スライドガラスGが存在する位置では、検査光L1がスライドガラスGで散乱し、反射光L2は光検出部77で殆ど検出されない。また、スライドガラスGが存在しない位置では、検査光L1がカセット41を通過して光反射部73で反射し、反射光L2が光検出部77によって十分な光量で検出される。
【0057】
したがって、スライドガラスGの保持位置及び保持状態が正常である場合、図10に示すように、検出信号の波形P1においては、スライドガラスGが存在しない位置に反射光強度のベースラインR1が現れ、スライドガラスGの保持位置に対応して規則的にボトムB1が現れる。なお、ボトムB1,B1間に現れている幅の広いボトムB2は、10段ごとに設けられた仕切板45に対応するものである。
【0058】
また、図11は、参照情報の一例を示す図である。同図では、参照情報として、参照信号の波形を示している。参照情報は、スライドガラスGが保持されていないカセット41がカセット装着部21に装着された状態での反射光L2の検出信号である。したがって、参照情報の波形P2においては、仕切板45に対応する位置を除いて反射光強度のベースラインR2が現れ、仕切板45に対応する位置には、幅の広いボトムB3が現れる。
【0059】
図12は、補正後の検出信号の一例を示す図である。補正後の検出信号の波形P3は、図10に示した検出信号の波形P1と図11に示した参照情報の波形P2との差分である。補正後の検出信号の波形P3においては、反射光強度の強弱が反転し、スライドガラスGの保持位置に対応して規則的にピークV3が現れる。これらのピークV3の出現位置及びピークV3の幅(半値全幅等)の閾値を予め設定しておくことにより、スライドガラスGの保持位置及び/或いは保持状態を検知できる。
【0060】
図13は、カセット内のスライドガラスの保持位置及び保持状態が異常である場合の一例を示す図である。同図の例では、スライドガラスGの左右の縁部が互いに異なる段の保持板43,43によって保持され、スライドガラスGが幅方向に傾斜した状態なっている。図13においては、上段側の4枚のスライドガラスGが右肩上がりとなっており、下段側の4枚のスライドガラスGが左肩上がりとなっている。
【0061】
図14は、図13の場合の補正後の検出信号の一例を示す図である。同図に示すように、スライドガラスGが傾斜した状態で保持されている場合、スライドガラスGが正常に保持されている場合と比較して、検査光L1の走査線上のスライドガラスGの位置が配列方向に対して変動する。したがって、補正後の検出信号の波形P4では、ピークV4の幅は正常時の波形P3のピークV3と変わらないものの、ピークV3の位置が正常時の波形P3のピークV3の位置に対して大きく変動する。したがって、ピークV4の幅が正常時と同等で、かつピークV4の位置が正常時に対して大きくずれている場合には、対応する段のスライドガラスGが傾斜して保持されていることを検知できる。
【0062】
また、図15は、カセット内のスライドガラスの保持位置及び保持状態が異常である場合の別例を示す図である。同図の例では、複数枚のスライドガラスGが同じ段の保持板43,43に保持された状態となっており、他の段では、スライドガラスGが保持板43,43に保持されない状態となっている。図16は、図15の場合の補正後の検出信号の一例を示す図である。同図に示すように、複数枚のスライドガラスGが保持されている場合、補正後の検出信号の波形P5では、ピークV5の幅が正常時の波形P3のピークV3に比べて大きくなり、ピークV5の位置が正常時の波形P3のピークV3の位置に対して僅かに(ピークV3,V5同士の重なりが保たれる程度に)変動する。
【0063】
したがって、ピークV5の幅が正常時に対して大きく、かつピークV5の位置が正常時に対して僅かにずれている場合には、対応する段のスライドガラスGが複数枚保持されていることを検知できる。また、スライドガラスGが保持されていない場合、ピークV5が出現すべき位置でピークV5が出現しない。したがって、ピークV5の有無に基づいて、対応する段にスライドガラスGが保持されていないことを検知できる。
【0064】
以上説明したように、画像取得装置11では、スライドガラスGを所定の配列方向に複数段に保持するカセット41に向けて光源76からの検査光L1を配列方向に走査する。そして、光反射部73、カセット41、或いはスライドガラスGによって反射された検査光L1を含む反射光L2を光検出部77によって検出する。スライドガラスGが存在する位置では、検査光L1がスライドガラスGで散乱するため、光検出部77によって検出される反射光L2の強度は微弱となる。一方、スライドガラスGが存在しない位置では、検査光L1がスライドガラスGで散乱することなく光反射部73で反射されるため、光検出部77によって検出される反射光L2の強度は、スライドガラスGが存在する位置に比べて高くなる。
【0065】
このため、カセット41内のスライドガラスGの保持位置及び/或いは保持状態は、光検出部77からの検出信号として現れることとなり、例えば検出信号の波形パターンを解析することで、スライドガラスGの保持位置及び/或いは保持状態に関する保持情報を生成できる。保持情報を事前に把握することにより、画像取得装置11での無駄な搬送作業を削減することが可能となり、カセット41単位の画像取得に要する時間の短縮化が図られる。また、スライドガラス取出部22における搬送ハンドなどの故障の発生を防止できる。
【0066】
また、画像取得装置11では、スライドガラスGが保持されていないカセット41がカセット装着部21に装着された状態での反射光L2の検出信号を情報生成部74が参照情報として保有し、当該参照情報によって補正した検出信号に基づいて保持情報を生成する。このような補正を検出信号に施すことにより、保持情報の生成精度を高めることができる。
【0067】
また、画像取得装置11では、検査光L1及び反射光L2を通過させる開口部53がカセット41の背面側に設けられている。このため、開口部53を介して光反射部73からの反射光L2を一層十分な光量で検出でき、保持情報の生成精度を一層高めることができる。また、画像取得装置11では、光反射部73がカセット41の開口部53を通過した検査光L1を光検出部77に向けて反射し、カセット41の開口部53を通過した反射光L2を光検出部77が検出する。これにより、保持情報の生成に要する光学系を簡単化できるので、画像取得装置11の大型化を回避できる。
【0068】
また、画像取得装置11では、光反射部73がカセット装着部21の支柱65に設けられている。したがって、回転ドラム61の回転によって検知位置M2に送られてくる異なるカセット41に対し、カセット装着部21側の光反射部73を共通で用いることができる。カセット41毎に光反射部73を設けなくて済むため、カセット41の製造コストの低減化が図られる。
【0069】
また、画像取得装置11では、光反射部73が再帰反射器を含んで構成されている。これにより、光反射部73における検査光L1の反射の指向性を確保でき、光反射部73からの反射光L2を一層十分な光量で検出できる。したがって、保持情報の生成精度を一層高めることができる。
【0070】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば光反射部73は、必ずしも再帰反射器を用いなくてもよく、例えば金属板、光反射板、光反射シートなどの他の反射材を支柱65に取り付ける構成であってもよい。また、光反射部73は、カセット装着部21側ではなく、カセット41側に配置されていてもよい。この場合、カセット41の背面側に開口部53を設ける代わりに、例えば図17に示すように、カセット41の背面(ここでは、背面側の壁部内面)に光反射部73を設けるようにしてもよい。この場合、検査光L1を透過させるための開口部53等の機構をカセット41に設ける必要がなくなるため、カセット41の構成の複雑化を避けることができる。また、光源76及び光検出部77と光反射部73との間の距離を短くすることが可能となり、反射光L2を十分な光量で検出できる。したがって、保持情報の生成精度を一層高めることができる。
【0071】
さらに、上述した実施形態では、光電センサ71が周回ベルト81に固定され、スライドガラス取出部22とは別体となっているが、光電センサ71は、スライドガラス取出部22の搬送ハンドに取り付けられていてもよい。この場合、スライドガラス取出部22の搬送ハンドが走査部72の機能を兼ねるので、画像取得装置11の構成の簡単化が図られる。
【0072】
情報生成部74が生成する保持情報は、スライドガラスGの保持位置及び保持状態の双方に関する情報でもよく、スライドガラスGの保持位置及び保持状態の一方に関する情報でもよい。また、反射光L2は、光反射部73、カセット41、或いはスライドガラスGのいずれかによって反射された検査光L1であってもよいし、これらの組み合わせによって反射された検査光L1であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
11…画像取得装置、21…カセット装着部、41…カセット、53…開口部、72…走査部、73…光反射部、74…情報生成部、76…光源、77…光検出部、G…スライドガラス、L1…検査光、L2…反射光。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17