(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】地盤注入用薬液組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 17/30 20060101AFI20220519BHJP
C09K 17/48 20060101ALI20220519BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
C09K17/30 P
C09K17/48 P
E02D3/12 101
(21)【出願番号】P 2021078994
(22)【出願日】2021-05-07
(62)【分割の表示】P 2017115208の分割
【原出願日】2017-06-12
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】村井 勇太
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-102615(JP,A)
【文献】特開2003-147358(JP,A)
【文献】特開昭58-079083(JP,A)
【文献】特開平07-026263(JP,A)
【文献】特公昭48-013656(JP,B1)
【文献】特表平05-505847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K17/00-17/52
C09K3/10-3/12
E02D3/12
C08G18/00-18/87
C08G71/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールを主成分とするA液と、ポリイソシアネートを主成分とするB液とからなる地盤注入用薬液組成物において、
前記ポリオールが、開始剤に付加されたアルキレンオキサイドの95質量%以上がプロピレンオキサイドであり、且つ水酸基価が30~300mgKOH/gであるポリエーテルポリオールを、90質量%以上の割合で含有していると共に、前記A液が、金属触媒を含有しており、更に前記A液及び前記B液には、発泡剤が、実質的に配合されていないことを特徴とする地盤注入用薬液組成物。
【請求項2】
前記金属触媒が、前記ポリオールの100質量部に対して、0.1~5質量部の割合で含有せしめられていることを特徴とする請求項1に記載の地盤注入用薬液組成物。
【請求項3】
前記A液が、3級アミン触媒を更に含有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の地盤注入用薬液組成物。
【請求項4】
発泡倍率が2倍以下である硬化反応生成物を与えることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の地盤注入用薬液組成物。
【請求項5】
前記ポリエーテルポリオールが、開始剤としての多価アルコールにアルキレンオキサイドを付加したものである請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の地盤注入用薬液組成物。
【請求項6】
前記ポリオール中、開始剤としてアミン化合物を用いて得られたポリエーテルポリオールの含有割合が、5質量%以下となるように、構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の地盤注入用薬液組成物。
【請求項7】
前記A液及び前記B液のうちの少なくとも何れか一方に、難燃剤を含有せしめてなることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の地盤注入用薬液組成物。
【請求項8】
前記難燃剤が、前記ポリオールの100質量部に対して、5~50質量部の割合で前記A液に含有せしめられていることを特徴とする請求項7に記載の地盤注入用薬液組成物。
【請求項9】
前記難燃剤が、前記ポリイソシアネートの100質量部に対して、5~40質量部の割合で前記B液に含有せしめられていることを特徴とする請求項7に記載の地盤注入用薬液組成物。
【請求項10】
前記A液及び前記B液の25℃での粘度が、それぞれ、50~500mPa・sであることを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の地盤注入用薬液組成物。
【請求項11】
前記A液と前記B液とが、体積基準にて、1:0.5~1:3の割合で用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の地盤注入用薬液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤注入用薬液組成物に係り、特に、大量の漏水や湧水の発生する地盤に好適に用いられる地盤注入用薬液組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、不安定な岩盤や地盤の安定強化のための地盤改良用途や、人工構造物のクラックや空隙を充填する空洞充填用途に採用される対策の一つとして、無機乃至有機系グラウトの注入があり、ある程度の効果を上げている。例えば、特許文献1では、そのようなグラウトの一つとして、ポリオール及び/又は有機ポリアミン化合物、有機ポリイソシアネート化合物、並びに水からなる土質等の安定化用注入薬液組成物が、用いられている。しかし、かかる特許文献1に開示の薬液組成物は、全体的に発泡体の発泡倍率が高いことから、充分な固結強度を実現することが出来ず、大量の漏水や湧水に対しては、水圧を支える強度が得られずに、完全に止水をすることが難しいという問題があった。
【0003】
また、大量の漏水や湧水に対して、その止水を目的とする薬液組成物としては、特許文献2において、イソシアネート成分を含む主剤と、ひまし油変性ポリエステルポリオール及び可塑剤成分を含む硬化剤とを混合して得られる遮水シート用止水剤が、提案されている。しかしながら、この止水剤は、多量の可塑剤によって低粘度化されているために、岩盤等に注入すると、ブリードアウトした可塑剤が湧水に流されて、水質汚染の原因になるという問題を内在している。
【0004】
さらに、大量の漏水や湧水を止水する際には、一部の薬剤が漏水や湧水と共に流出することで、水の白濁が発生し、環境に悪影響を与えるという問題があった。また、薬剤と水が触れた際の発泡倍率が大きくなると、漏水や湧水と共に流出する発泡体の体積も大きくなり、環境への悪影響が増大するという問題も内在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-26263号公報
【文献】特開2011-245453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、大量の漏水や湧水を止水することが出来る充分な強度を実現すると共に、水と触れた際における水の白濁を効果的に防止し、且つ発泡倍率も小さく抑え得るようにした地盤注入用薬液組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組合せにおいて、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載から把握される発明思想に基づいて理解されるものであることが、考慮されるべきである。
【0008】
(1) ポリオールを主成分とするA液と、ポリイソシアネートを主成分とするB液とか らなる地盤注入用薬液組成物において、前記ポリオールが、開始剤に付加されたア ルキレンオキサイドの95質量%以上がプロピレンオキサイドであり、且つ水酸基 価が30~300mgKOH/gであるポリエーテルポリオールを、90質量%以 上の割合で含有していると共に、前記A液が、金属触媒を含有しており、更に前記 A液及び前記B液には、発泡剤が、実質的に配合されていないことを特徴とする地 盤注入用薬液組成物。
(2) 前記金属触媒が、前記ポリオールの100質量部に対して、0.1~5質量部の 割合で含有せしめられていることを特徴とする前記態様(1)に記載の地盤注入用 薬液組成物。
(3) 前記A液が、3級アミン触媒を更に含有していることを特徴とする前記態様(1 )又は前記態様(2)に記載の地盤注入用薬液組成物。
(4) 発泡倍率が2倍以下である硬化反応生成物を与えることを特徴とする前記態様(
1)乃至前記態様(3)の何れか1つに記載の地盤注入用薬液組成物。
(5) 前記ポリエーテルポリオールが、開始剤としての多価アルコールにアルキレンオ キサイドを付加したものである前記態様(1)乃至前記態様(4)の何れか1つに 記載の地盤注入用薬液組成物。
(6) 前記ポリオール中、開始剤としてアミン化合物を用いて得られたポリエーテルポ リオールの含有割合が、5質量%以下となるように、構成されていることを特徴と する前記態様(1)乃至前記態様(5)の何れか1つに記載の地盤注入用薬液組成 物。
(7) 前記A液及び前記B液のうちの少なくとも何れか一方に、難燃剤を含有せしめて なることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(6)の何れか1つに記載の地 盤注入用薬液組成物。
(8) 前記難燃剤が、前記ポリオールの100質量部に対して、5~50質量部の割合 で前記A液に含有せしめられていることを特徴とする前記態様(7)に記載の地盤 注入用薬液組成物。
(9) 前記難燃剤が、前記ポリイソシアネートの100質量部に対して、5~40質量 部の割合で前記B液に含有せしめられていることを特徴とする前記態様(7)に記 載の地盤注入用薬液組成物。
(10) 前記A液及び前記B液の25℃での粘度が、それぞれ、50~500mPa・ sであることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(9)の何れか1つに記載 の地盤注入用薬液組成物。
(11) 前記A液と前記B液とが、体積基準にて、1:0.5~1:3の割合で用いら れることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(10)の何れか1つに記載の 地盤注入用薬液組成物。
【発明の効果】
【0009】
そして、このような本発明に従う薬液組成物の構成によれば、以下に列挙せる如き各種の効果が奏され得ることとなるのである。
(1)薬液組成物を地盤に注入するときに、水と接触しても、水が白濁することなく、有 利に施工することが出来る。
(2)薬液組成物が水に希釈されて、流出することが、効果的に防止されることとなるた めに、水質汚染が防止される。
(3)発泡倍率が2倍以下に抑えられるようにすることにより、注入した薬液組成物は、 水と接触しない部分の発泡が抑えられる一方、水と接触する部分が発泡するという、 部分的な発泡形態が実現され、これによって、地盤に注入した硬化反応生成物の強度 を効果的に確保することが出来る。
(4)発泡倍率が2倍以下に抑えられるようにすることで、硬化反応生成物が水に流され 難くなるところから、硬化反応生成物が水に流されることによる環境への悪影響が有 利に防止されることとなる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
要するに、本発明は、A液とB液とからなる二液型の薬液組成物において、かかるA液の主成分となるポリオールとして、所定のアルキレンオキサイドを開始剤に付加して得られる特定のポリエーテルポリオールを90質量%以上の割合で用いるようにしたものである。そして、そのような特定のポリエーテルポリオールは、かかる開始剤に付加されたアルキレンオキサイドの95質量%以上がプロピレンオキサイドにて構成され、且つ水酸基価が30~300mgKOH/gであるように構成されたものである。また、前記A液には、かかる特定のポリエーテルポリオールと共に、更に、金属触媒が含有せしめられており、これによって、所期の目的を達成したところに、大きな特徴が存しているのである。そして、それらA液やB液は、具体的には、以下のように構成されることとなる。
【0011】
<A液>
(ポリオール)
本発明に従う地盤注入用薬液組成物を構成する二液のうちの一つであるA液において、それを構成する主成分であるポリオールの90質量%以上は、所定の開始剤に対してアルキレンオキサイドが付加されてなる特定のポリエーテルポリオールであり、そしてそのような特定のポリエーテルポリオールにおいては、本発明の目的を有効に達成すべく、開始剤に付加されるアルキレンオキサイドの95質量%以上が、プロピレンオキサイドにて構成されている必要がある。しかも、そのような特定のポリエーテルポリオールの水酸基価は、30~300mgKOH/gの範囲内である必要があり、中でも好ましくは、32~290mgKOH/gの範囲内である。かかる水酸基価が30mgKOH/g未満となると、本発明の目的が充分に達成され難くなるのであり、一方300mgKOH/gを超えるようになると、水の白濁を惹起する等の問題が生じるようになる。そして、このような特定のポリエーテルポリオールは、上記の規定を満足するものであれば、単独で使用することが出来る他、適宜に組み合わせて併用することも可能である。
【0012】
なお、ポリオ-ルとして、上記した特定のポリエーテルポリオールと共に、他の公知のポリオールを併用したり、更に開始剤に付加されるアルキレンオキサイドとして、プロピレンオキサイドと共に、エチレンオキサイド等の他の公知のアルキレンオキサイドを併用したりすることが出来るが、その際、上記した特定のポリエーテルポリオールの含有量が90質量%未満となったり、プロピレンオキサイドの付加量が95質量%未満となったりすると、本発明の目的を充分に達成し難くなる。
【0013】
ところで、ポリエーテルポリオールは、一般に、少なくとも2個以上の活性水素基を有する化合物、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類;エチレンジアミン等のアミン類;エタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等の化合物を開始剤として用い、これに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させることからなる付加反応又は付加重合反応により、製造されるものである。
【0014】
その中で、本発明において用いられる特定のポリエーテルポリオールとしては、開始剤にアミン化合物を用いていないものであることが望ましい。そして、開始剤にアミン化合物を用いて得られたポリエーテルポリオールが用いられる場合にあっては、それが、ポリオール中、5質量%以下の割合となるように規制されることが望ましく、より好ましくは1質量%以下の割合とされる。本発明においては、アミン化合物ではない開始剤を用い、これに、プロピレングリコールの所定量を付加せしめて得られる特定のポリエーテルポリオールが、有利に用いられることとなる。なお、開始剤にアミン化合物を用いると、水に希釈され易くなり、水の白濁が惹起される恐れがあるからである。そのような特定のポリエーテルポリオールとしては、プロピレングリコールを開始剤とするポリプロピレングリコール、グリセリンを開始剤とするポリプロピレングリコール、ビスフェノールAを開始剤とするポリプロピレングリコール等が挙げられる。即ち、プロピレングリコール、グリセリン、ビスフェノールA等の多価アルコールを開始剤として、これに、プロピレンオキサイドを付加せしめてなるポリプロピレングリコールが、望ましく用いられることとなるのである。
【0015】
そして、上述の如き特定のポリエーテルポリオールは、一般に、200~4000程度の分子量を有していることが望ましく、中でも250~3200程度の分子量を有していることがより望ましく、特に300~2000程度の分子量を有していることが、更に望ましいのである。かかる分子量が200よりも小さくなると、水に希釈され易く、水の白濁を惹起する恐れがあり、また分子量が4000よりも大きくなると強度発現が困難となる恐れがある。
【0016】
(金属触媒)
また、本発明にあっては、A液には、上述の如き特定のポリエーテルポリオールの含有割合が90質量%以上であるポリオールと共に、金属触媒が、更に含有せしめられることとなる。そのような金属触媒は、ポリオールの100質量部に対して、一般に、0.1~5質量部程度、好ましくは0.2~3質量部、より好ましくは0.5~2.5質量部の割合で、含有せしめられることとなる。かかる金属触媒の含有量が、0.1質量部よりも少なくなると、反応に対する寄与が少なく、強度発現が遅くなる問題があり、一方5質量部よりも多くなると、反応が速くなり過ぎて、反応速度の制御が困難となる問題が惹起される。
【0017】
なお、本発明において、金属触媒としては、公知のものを特に制限なく用いることが出来、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、錫、鉛、ビスマス、亜鉛、鉄、ニッケル、ジルコニウム、コバルト等の有機酸金属塩や有機金属錯体を用いることが出来る。その中で、有機酸金属塩としては、酢酸、オクチル酸、ネオデカン酸、ナフテン酸、ロジン酸等と上記金属との塩が挙げられ、また有機金属錯体としては、アセチルアセトン等と上記金属との錯体が挙げられる。具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、オクチル酸ビスマス、オクチル酸鉛、オクチル酸鉄、オクチル酸錫、オクチル酸カルシウム、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、ネオデカン酸ビスマス、ネオデカン酸亜鉛、ネオデカン酸鉛、ネオデカン酸コバルト、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウリレート;アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンジルコニウム、アセチルアセトンニッケル、アセチルアセトン錫等を挙げることが出来る。これらの金属塩や金属錯体は、その取扱い性の向上のため、ミネラルスピリット、有機酸、グリコール類、エステル類等の希釈剤に溶解させたものとして、用いてもよい。また、これらの金属触媒は、単体で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、好ましくは、カリウム、錫、鉛、ビスマス又は亜鉛の酢酸塩、オクチル酸塩、ネオデカン酸塩、ラウリル酸塩や、アセチルアセトン錯体が挙げられ、より好ましくはカリウムを金属として用いた触媒が、好適に用いられることとなる。
【0018】
(3級アミン触媒)
また、本発明にあっては、A液に対して、上記した金属触媒と共に、3級アミン触媒を更に含有せしめることが、望ましい。かかる3級アミン触媒は、ポリオールの100質量部に対して、一般に、0.1~5質量部、好ましくは0.2~3質量部、より好ましくは0.5~2.5質量部の割合において、含有せしめられることとなる。この3級アミン触媒の含有量が0.1質量部よりも少ないと、反応に対する寄与が少なく、強度発現が遅くなる問題があり、一方5質量部よりも多いと、反応が速くなり過ぎて、反応速度の制御が困難となる。
【0019】
そして、そのような3級アミン触媒としては、外部の水との接触により発泡が意図される場合にあっては、ポリイソシアネートと水との反応を促進する作用を有する泡化触媒、ポリイソシアネートとポリオールとの反応を促進する作用を有する樹脂化触媒、ポリイソシアネートの3量化を促進する作用を有するイソシアヌレート化触媒等がある。
【0020】
具体的には、泡化触媒としては、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’-トリエチルアミノエチルエタノールアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’-トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール、トリエチルアミン等が挙げられる。また、樹脂化触媒としては、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロパンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサンジアミン、トリエチレンジアミン、33%トリエチレンジアミン・67%ジプロピレングリコール、N,N-ジメチルアミノヘキサノール、N,N-ジメチルアミノエタノール、N-メチル-N’-ヒドロキシエチルピペラジン、N-メチルモルフォリン、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール等が挙げられる。更に、イソシアヌレート化触媒としては、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N’,N”-トリス(ジメチルアミノプロピル)-ヘキサヒドロ-s-トリアジン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用しても、何等差し支えない。また、それらの中でも、樹脂化触媒や三量化触媒が、好適に用いられることとなる。
【0021】
<B液>
(ポリイソシアネート)
一方、本発明に従う地盤注入用薬液組成物を構成する二液のうちの他の一つであるB液は、従来と同様に、ポリイソシアネートを必須成分として調製されてなるものであって、本発明にあっては、そのようなB液中におけるポリイソシアネートの含有量が、一般に、70~100質量%、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~100質量%となるように調製されたものであることが望ましい。かかるポリイソシアネートの含有量が70質量%よりも少なくなると、硬化反応生成物の強度が低下する問題がある。そのため、B液におけるポリイソシアネートの割合は高い方が望ましく、B液をポリイソシアネートのみで構成しても、何等差支えない。
【0022】
また、本発明においては、かかるB液の必須成分であるポリイソシアネートは、分子中に2個以上のイソシアネート基(NCO基)を有する有機系イソシアネート化合物であって、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(クルードMDI)、トリレンジイソシアネート、ポリトリレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート類の他、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等を挙げることが出来る。これらのポリイソシアネート成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。それらの中でも、一般的には、反応性や経済性、取扱性等の観点から、MDIやクルードMDIが好適に用いられる。
【0023】
そして、本発明においては、上述の如きA液及びB液には、発泡剤が実質的に配合されておらず、従って反応系には、積極的に存在せしめられていないことが望ましい。ここにおいて、実質的に発泡剤が配合されていないとは、発泡剤が水以外の場合、定量分析によって、かかる発泡剤の含有量が1ppm未満であることであり、1ppm未満の微量な発泡剤が検出されたとしても、異物と見做して、発泡剤が添加されていないと判断する。なお、その定量分析は、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィー等を用いて行われることとなる。また、発泡剤が水である場合においては、配合されるポリオール、ポリイソシアネート、触媒、その他添加剤が含有している水分とは別に、意図的に、水を単独で薬液組成物の中に添加しないことを意味するものである。具体的には、A液又はB液において、水の存在量が0.1質量%未満であれば、それは異物と見做して、発泡剤は配合されていないと判断されることとなる。
【0024】
ところで、本発明に従う薬液組成物を構成する、上述の如きA液及びB液の少なくとも何れか一方には、難燃剤が含有せしめられていることが好ましい。この難燃剤は、A液に添加される場合において、ポリオールの100質量部に対して5~50質量部程度、好ましくは10~40質量部の割合で含有せしめられることが望ましい。また、B液に添加される場合にあっては、ポリイソシアネートの100質量部に対して5~40質量部程度、好ましくは10~30質量部の割合で含有せしめられることが望ましい。
【0025】
また、そのような難燃剤としては、具体的には、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、ハロゲン化リン酸エステル、無機系難燃剤等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、また2種以上が併用して用いられてもよい。これらの中でも、環境への負荷が少なく、発泡性組成物の減粘剤としても機能する点で、リン酸エステル及びハロゲン化リン酸エステルが好ましく用いられることとなる。なお、リン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリキシレニルホスフェート等が挙げられる。また、ハロゲン化リン酸エステルとしては、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、テトラキス(2-クロロエチル)ジクロロイソペンチルジホスフェート、ポリオキシアルキレンビス(ジクロロアルキル)ホスフェート等が挙げられる。
【0026】
なお、本発明に従う薬液組成物を構成する上述の如きA液及びB液には、その使用目的に応じて、従来と同様な各種の添加剤を添加せしめることが可能である。例えば、A液又はB液に対する添加剤としては、整泡剤、減粘剤等を挙げることが出来る。これらの添加剤は、A液を構成するポリオールの100質量部に対して0.1~20質量部、好ましくは0.1~15質量部の割合において用いられることとなる。また、B液を構成するポリイソシアネートの100質量部に対して0.1~15質量部、好ましくは0.1~10質量部の割合となるように、用いられることとなる。
【0027】
それら添加剤の中で、整泡剤は、A液とB液との反応によって形成されるフォームのセル構造を均一に整えるために用いられるものである。この整泡剤としては、例えば、シリコーン、非イオン系界面活性剤、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ラウリル脂肪酸エチレンオキシド付加物等が挙げられ、これらの中でも、シリコーン及び非イオン系界面活性剤が好ましく用いられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を併用して用いられてもよい。また、整泡剤の中では、シリコーン系整泡剤がより好ましく、中でも、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体等が好ましく用いられることとなる。
【0028】
加えて、減粘剤は溶剤として用いられ、A液又はB液に溶解されて、それらの液を減粘する働きを有するものである。そのため、そのような機能を有するものである限りにおいて、特に限定されるものではなく、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のエーテル類、プロピレンカーボネート等の環状エステル類、ジカルボン酸メチルエステル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、石油系炭化水素類等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を併用して用いられてもよい。
【0029】
ところで、本発明に従って調製されるA液及びB液は、それぞれ、25℃の温度下における粘度が50~500mPa・s、好ましくは60~400mPa・sとなるように、調製されるのが望ましい。この粘度が500mPa・sよりも高くなると、A液やB液が粘調な液となり、混合時の流動性が悪くなる等の問題を惹起するようになる。また、粘度が50mPa・sよりも低くなると、水に希釈され易いという問題がある。
【0030】
また、かくの如きA液とB液から構成される本発明に従う地盤注入用薬液組成物の使用に際しては、それら両液が、使用時に混合されて、目的とする地盤、岩盤等に対して、注入や流し込み等によって導入され、反応硬化せしめられることにより、強固な基礎を形成することとなる。なお、かかるA液とB液との混合比(A:B)は、A液中の水酸基含有量とB液中のNCO基含有量によって適宜に決定されることとなるが、一般に、体積基準にて、A:B=1:0.5~1:3、好ましくは1:1~1:2.5の範囲内において、採用されることとなる。また、それらA液やB液の使用方法についても、それらの使用の直前に、二液の混合が確実に行われ得る手法であれば、特に制限はなく、従来から公知の注入手法や流し込み手法が、適宜に採用されることとなる。
【0031】
そして、それらA液とB液とを混合したとき、本発明に従う薬液組成物にあっては、発泡倍率が2倍以下である硬化反応生成物を形成することとなる。この発泡倍率は、通常、1~2倍、好ましくは1~1.5倍、より好ましくは1~1.3倍となるように、設定される。なお、この発泡倍率は低ければ低いほど望ましく、一方2倍よりも大きくなると、有効な強度が得られなくなる恐れがある。
【0032】
また、A液とB液とを混合して、水中に投入したときには、発泡剤となる水と接触することで、発泡倍率は高くなって、通常、2~15倍、好ましくは3~10倍となるように設定される。これにより、湧水のある地盤に注入した薬液組成物は、水と接触しない部分は発泡が2倍以下に抑えられる一方、水と接触する部分が、2倍以上に発泡するという、部分的乃至は段階的な発泡形態が実現されることとなる。この時の地盤に注入された反応生成物は、その外側の接液部分の発泡倍率は高くなるが、内側の接液しない部分は、発泡倍率の低い高強度の硬化反応生成物を有する状態になるため、湧水の水圧を充分に支える強度を得ることが出来るのである。
【実施例】
【0033】
以下に、本発明の実施例や比較例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0034】
なお、以下の実施例及び比較例において得られたA液とB液の特性(粘度)と共に、A液とB液とを混合して反応硬化せしめた時の反応生成物の発泡倍率とその硬化時間、反応生成物の強度、水中で反応・発泡せしめた時の発泡硬化性と発泡倍率、更には水中での発泡後の水の濁りや水の光透過率については、それぞれ、以下の手法に従って、測定乃至は評価した。また、以下に示す「%」及び「部」は、何れも、質量基準である。
【0035】
(1)粘度
実施例及び比較例において得られたA液及びB液の粘度を、それぞれ、JIS-K-7117-1に準拠して、B型粘度測定装置を用いて粘度を測定した。
【0036】
(2)発泡倍率
25℃の温度に調整されたA液とB液とを、下記表1又は表2に示される所定の混合比において、全量が100mlとなるようにそれぞれ計量して、それら計量液を2Lのディスカップに収容した後、充分に混合撹拌して、硬化せしめた。そして、硬化反応終了後の反応生成物について、その発泡高さを測定し、発泡倍率を求めた。
【0037】
(3)硬化時間
25℃の温度に調整されたA液とB液とを、表1又は表2に示される混合比で、混合した後、反応生成物からガスが発生し、発泡高さが変化しなくなる時間、又は反応生成物に串を刺して、内部まで刺さらなくなった時間を測定し、その何れか遅い方を、硬化時間の終点とした。また、1時間以上硬化が起こらない場合は、「硬化せず」と評価した。
【0038】
(4)強度
A液及びB液を表1又は表2に示される混合比で混合撹拌した後、上部が解放された内径:50mm、高さ:120mmの有底円筒型内に流し込み、30℃で24時間養生した後、かかる型内の反応生成物から、直径:50mm、高さ:100mmの試験体を切り出し、JIS-K-7220に準じて圧縮強度の測定を行った。
【0039】
(5)水中での反応硬化性
25℃の温度に調整されたA液とB液とを、表1又は表2に示される混合比で、全量が100mlとなるよう計量して、混合した。そして、その混合の後、直ちに、2Lのディスカップに収容された20℃の水1L中に、A液及びB液の混合物を投入し、ヘラを用いて、30回水中で撹拌した後、1時間静置し、得られた反応生成物の評価を行った。反応生成物が得られたものを○、部分的に硬化が不十分であるものを△、水に希釈され、反応生成物が得られなかったものを×とした。
【0040】
(6)水中での発泡倍率
上記(5)の試験で得られた反応生成物の高さより、発泡倍率を求めた。
【0041】
(7)水濁り
25℃の温度に調整されたA液とB液とを、表1又は表2に示される混合比で、全量が100mlとなるよう計量して、混合した。そして、その混合後、直ちに、2Lのディスカップに収容された20℃の水1L中に投入して、ヘラを用いて、30回水中で撹拌した後、反応が収まるまで静置した。反応が収まった後、水の濁りを目視で確認し、濁りが認められないものを◎、ほぼ濁りがないものを○、明らかに濁りが認められるものを×として、評価した。
【0042】
(8)光透過率
上記(7)の水濁り試験で用いられたディスカップ中の水を回収し、それについて、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製U-2800型分光光度計)を用いて、波長500nmでの光透過率を、測定した。
【0043】
(実施例1)
-A液の調製-
ポリオールとして、三洋化成工業株式会社製ポリエーテルポリオール:PP-400[開始剤:プロピレングリコール、アルキレンオキサイド:プロピレンオキサイド(PO)100質量%、分子量:400、官能基数:2、水酸基価:280mgKOH/g]を用い、その100部に、金属触媒として、日本化学産業株式会社製プキャット15G(カリウム触媒:オクチル酸カリウム)の1.7部、難燃剤として、大八化学工業株式会社製TMCPP[トリス(クロロプロピル)ホスフェート]の30部を添加して、均一に混合せしめることによって、A液を得た。そして、この得られたA液の粘度を測定し、その結果を、下記表1に示した。
【0044】
-B液の調製-
ポリイソシアネートとして、万華化学ジャパン株式会社製Wannate PM-200(ポリメリックMDI)を用い、その100部を、B液として準備した。そして、この準備されたB液の粘度を測定し、その結果を、下記表1に示した。
【0045】
-A液とB液の反応-
上記で得られたA液とB液とを、体積比にて、1:1の割合で組み合わせて、常温下において、均一に混合し、反応せしめた後、前述の評価手法に従って、各種の評価試験を行い、それらの結果を、下記表1に示した。
【0046】
(実施例2)
実施例1において、金属触媒の使用量を1部とすると共に、3級アミン触媒として、花王株式会社製カオーライザーNo.31(樹脂化触媒:33%トリエチレンジアミンのジプロピレングリコール溶液)1部を更に添加したこと以外は、実施例1と同様の手法に従って、それぞれ、評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表1に示した。
【0047】
(実施例3)
実施例2において、ポリオールを、三洋化成工業株式会社製ポリエーテルポリオール:PP-3000(開始剤:プロピレングリコール、PO:100質量%、分子量:3000、官能基数:2、水酸基価:35mgKOH/g)に代えると共に、金属触媒と3級アミン触媒の使用量を、それぞれ1.5部としたこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ、評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表1に示した。
【0048】
(実施例4)
実施例2において、ポリオールを、三洋化成工業株式会社製ポリエーテルポリオール:GP-1000(開始剤:グリセリン、PO:100質量%、分子量:1000、官能基数:3、水酸基価:160mgKOH/g)に代えたこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ、評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表1に示した。
【0049】
(実施例5)
実施例2において、ポリオールを、株式会社アデカ製ポリエーテルポリオール:BPX-2000(開始剤:ビスフェノールA、PO:100質量%、分子量:2000、官能基数:2、水酸基価:57mgKOH/g)に代えると共に、金属触媒と3級アミン触媒の使用量をそれぞれ1.2部としたこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ、評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表1に示した。
【0050】
(実施例6)
実施例2において、ポリオールを、株式会社アデカ製ポリエーテルポリオール:EDP-1100(開始剤:エチレンジアミン、PO:100質量%、分子量:1100、官能基数:4、水酸基価:250mgKOH/g)に代えたこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ、評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表1に示した。
【0051】
【0052】
(比較例1)
実施例2において、ポリオールを、三洋化成工業株式会社製ポリエーテルポリオール:GP-400(開始剤:グリセリン、PO:100質量%、分子量:400、官能基数:3、水酸基価:400mgKOH/g)に代えると共に、金属触媒と3級アミン触媒の使用量を、それぞれ1.5部としたこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ、評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0053】
(比較例2)
実施例2において、ポリオールとして、上述のPP-400の50部と、株式会社アデカ製ポリエーテルポリオール:EDP-450(開始剤:エチレンジアミン、PO:100質量%、分子量:450、官能基数:4、水酸基価:500mgKOH/g)の50部とを用いると共に、金属触媒の使用量を1.0部、3級アミン触媒の使用量を0.7部としたこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ、評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0054】
(比較例3)
実施例2において、ポリオールを、三洋化成工業株式会社製ポリエーテルポリオール:GL-3000(開始剤:グリセリン、PO:エチレンオキサイド(EO)=80:20、分子量:3000、官能基数:3、水酸基価:56mgKOH/g)に代えると共に、金属触媒と3級アミン触媒の使用量をそれぞれ1.2部としたこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ、評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0055】
(比較例4)
実施例2において、ポリオールとして、上述のPP-400の50部と、三洋化成工業株式会社製BM-54(開始剤:エチレンジアミン、PO:EO=60:40、分子量:500、官能基数:4、水酸基価:450mgKOH/g)50部とを用いると共に、金属触媒と3級アミン触媒の使用量をそれぞれ0.25部としたこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ、評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0056】
(比較例5)
実施例2において、ポリオールを、三洋化成工業株式会社製ポリエーテルポリオール:BEO-10AE(開始剤:ビスフェノールA、EO:100質量%、分子量:670、官能基数:2、水酸基価:171mgKOH/g)に代えると共に、金属触媒の使用量を0.5部、3級アミン触媒の使用量を0.3部としたこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ、評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0057】
(比較例6)
実施例2において、ポリオールを、川崎化成工業株式会社製ポリエステルポリオール:RDK-133(水酸基価:315mgKOH/g)に代えると共に、金属触媒と3級アミン触媒の使用量をそれぞれ0.5部としたこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ、評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0058】
(比較例7)
実施例1において、金属触媒を添加しないこと以外は、実施例1と同様の手法に従って、それぞれ、評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0059】
(比較例8)
実施例2において、金属触媒を添加しないこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ、評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0060】
【0061】
かかる表1及び表2に示される結果より明らかな如く、本発明に従う実施例1~6に係るA液とB液との組合せからなる薬液組成物においては、何れも、発泡剤を実質的に含有していないために、発泡倍率が低く、地盤注入用薬液組成物として充分な強度を発現し得るものであることが確認された。また、それらA液とB液との組合せからなる薬液組成物にあっては、何れも、水中発泡において、適切な発泡倍率を確保しつつ、反応が終了した後の水の濁りは認められず、波長500nmでの光透過率も良好であることが確認されることから、反応生成物が水に流されることによる環境への影響が少なく、地盤に注入した際も、硬化反応生成物の充分な強度を得ることが出来ることが認められる。
【0062】
これに対して、比較例1~6に係るA液とB液の組合せでは、使用されたA液のポリオールの水酸基価が規定値以上であったり、また開始剤に付加されたアルキレンオキサイドのうちのプロピレンオキサイドの付加量が95質量%未満となる等の組成を採用するものであるため、水中でのA液とB液の発泡反応において、反応後の水の濁りが認められた。そして、このことから、それらのA液とB液の組合せを、地盤注入用薬液組成物として用いる際に、薬液が水に流され、環境への悪影響が懸念されることが予測されるものであった。また、金属触媒を使用しない比較例7,8のA液とB液との組合せからなる薬液組成物においては、何れも、硬化することがなく、更に水中でのA液とB液と発泡反応においても、部分的に硬化が不充分であり、地盤注入用薬液組成物として充分な強度発現に問題があるものと考えられた。