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▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】気孔率計測装置および気孔率計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/2251 20180101AFI20220519BHJP
【FI】
G01N23/2251
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022021981
(22)【出願日】2022-02-16
【審査請求日】2022-02-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 芳史
(72)【発明者】
【氏名】ガネサン アミルサン
(72)【発明者】
【氏名】ファン カンスン
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 允
(72)【発明者】
【氏名】安田 秀策
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-200444(JP,A)
【文献】特開2008-102027(JP,A)
【文献】特開2018-091765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
G01N 21/84-G01N 21/958
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気孔率の計測対象を含む画像を取得する取得部と、
前記画像から前記気孔率の計測対象となる領域画像を抽出する抽出部と、
前記領域画像の特徴量を説明変数とし、かつ、前記気孔率を目的変数とし、前記気孔率がそれぞれ付与された複数の前記領域画像を教師データとして機械学習された学習済み機械学習モデルを用いて、前記計測対象の気孔率を算出する算出部と、
を備え
前記特徴量は、前記領域画像の各画素の画素値、濃淡の変化が大きい特徴点周りの領域を画素値または微分値により特徴ベクトルに変換したもの、および、各画素の画素値の頻度分布の少なくともいずれか一つである、
気孔率計測装置。
【請求項2】
前記特徴量は、前記領域画像の局所特徴量を含む
請求項1に記載の気孔率計測装置。
【請求項3】
前記特徴量は、前記領域画像の輝度値の頻度分布を含む
請求項1に記載の気孔率計測装置。
【請求項4】
前記特徴量は、前記領域画像の局所特徴量と輝度値の頻度分布とを含む
請求項1に記載の気孔率計測装置。
【請求項5】
前記学習済み機械学習モデルは、前記画像の撮影倍率毎に構築される
請求項1~4のいずれか1項に記載の気孔率計測装置。
【請求項6】
前記計測対象は、遮熱コーティングのトップコートである
請求項1~5のいずれか1項に記載の気孔率計測装置。
【請求項7】
前記学習済み機械学習モデルは、前記トップコートの膜質毎に構築される
請求項6に記載の気孔率計測装置。
【請求項8】
前記画像毎に前記膜質を分類する分類部をさらに備え、
前記算出部は、前記膜質の分類結果に基づき、前記学習済み機械学習モデルを選択して用いて、前記計測対象の気孔率を算出する
請求項7に記載の気孔率計測装置。
【請求項9】
気孔率の計測対象を含む画像を取得するステップと、
前記画像から前記気孔率の計測対象となる領域画像を抽出するステップと、
前記領域画像の特徴量を説明変数とし、かつ、前記気孔率を目的変数とし、前記気孔率がそれぞれ付与された複数の前記領域画像を教師データとして機械学習された学習済み機械学習モデルを用いて、前記計測対象の気孔率を算出するステップと、
を含み、
前記特徴量は、前記領域画像の各画素の画素値、濃淡の変化が大きい特徴点周りの領域を画素値または微分値により特徴ベクトルに変換したもの、および、各画素の画素値の頻度分布の少なくともいずれか一つである、
気孔率計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気孔率計測装置および気孔率計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、2次元的な皮膜断面組織を光学顕微鏡もしくは走査型電子顕微鏡で撮影した後、皮膜と気孔の区別を人の目で行った後に二値化して気孔率を測定する気孔率評価方法が記載されている。
【0003】
また、非特許文献2には、FIB(集束イオンビーム)によって加工された微細(18μm×18μm×80μm)なセラミックス多孔質体をX線顕微鏡観察(XRM)によって3次元的に観察し、気孔部分を分離することで気孔率測定を行う解析手法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】小松 誠幸,黒田 聖治,「セラミック溶射皮膜の断面組織SEM写真による気孔率評価法(第2報)」,日本溶射学会 全国講演大会講演論文集 89, 33-34, 2009-06-15
【文献】U.Klement, J.Ekberg, S.T.Kelly ,”3D Analysis of Porosity in a Ceramic Coating Using X-ray Microscopy”, J Therm Spray Tech (2017) 26:456-463
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に記載の評価方法では、例えば、TBC(Thermal Barrier Coating;遮熱コーティング)に用いられるYSZ(イットリア安定化ジルコニア)のような脆性的・多孔質な皮膜ではエッジ効果によって気孔境界部が白く光る箇所が多数あって皮膜と気孔の区別が困難である。そのため皮膜と気孔の区別を、都度人の目によって実施しなければならず自動化が困難であるという課題があった。また、人による主観的判断の違いや、同一作業者でもバラツキが大きく再現性も低い。
【0006】
また、非特許文献2に記載の解析手法では、3次元的な計測は試験片作製にコストと時間を要する上、微小領域の計測に止まるため全体のマクロな気孔(数十μm)を捉えることが出来ないという課題があった。
【0007】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、気孔率を適切に自動で計測することができる気孔率計測装置および気孔率計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示に係る気孔率計測装置は、気孔率の計測対象を含む画像を取得する取得部と、前記画像から前記気孔率の計測対象となる領域画像を抽出する抽出部と、前記領域画像の特徴量を説明変数とし、かつ、前記気孔率を目的変数とし、前記気孔率がそれぞれ付与された複数の前記領域画像を教師データとして機械学習された学習済み機械学習モデルを用いて、前記計測対象の気孔率を算出する算出部と、を備える。
【0009】
本開示に係る気孔率計測方法は、気孔率の計測対象を含む画像を取得するステップと、前記画像から前記気孔率の計測対象となる領域画像を抽出するステップと、前記領域画像の特徴量を説明変数とし、かつ、前記気孔率を目的変数とし、前記気孔率がそれぞれ付与された複数の前記領域画像を教師データとして機械学習された学習済み機械学習モデルを用いて、前記計測対象の気孔率を算出するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示の気孔率計測装置および気孔率計測方法によれば、気孔率を適切に自動で計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第1実施形態に係る気孔率計測装置の機能的構成例を示すブロック図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る抽出部の処理の流れを示すフローチャートである。
図3】本開示の第1実施形態の動作例を説明するための画像の一例を示す模式図である。
図4】本開示の第1実施形態の動作例を説明するための画像の一例を示す模式図である。
図5】本開示の第1実施形態の動作例を説明するための画像の一例を示す模式図である。
図6】本開示の第1実施形態の動作例を説明するための画像の一例を示す模式図である。
図7】本開示の第1実施形態の動作例を説明するための画像の一例を示す模式図である。
図8】本開示の第1実施形態の動作例を説明するための画像の一例を示す模式図である。
図9】本開示の第1実施形態の動作例を説明するための画像の一例を示す模式図である。
図10】本開示の第1実施形態に係る気孔率計測装置の動作例を示すフローチャートである。
図11】本開示の第1実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。
図12】本開示の第1実施形態に係る気孔率計測装置に対する比較例の検証結果を示す模式図である。
図13】本開示の第1実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。
図14】本開示の第2実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。
図15】本開示の第2実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。
図16】本開示の第2実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。
図17】本開示の第2実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。
図18】本開示の第2実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。
図19】本開示の第2実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。
図20】本開示の第3実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。
図21】本開示の第3実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。
図22】本開示の第3実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。
図23】本開示の第3実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。
図24】本開示の第3実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。
図25】本開示の第3実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。
図26】本開示の第4実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。
図27】本開示の第4実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。
図28】本開示の第4実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。
図29】本開示の第4実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。
図30】本開示の第4実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。
図31】本開示の第4実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。
図32】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態に係る気孔率計測装置および気孔率計測方法について、各図を参照して説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、本開示の第1実施形態に係る気孔率計測装置の機能的構成例を示すブロック図である。図2は、本開示の第1実施形態に係る抽出部の処理の流れを示すフローチャートである。図3図9は、本開示の第1実施形態の動作例を説明するための画像の一例を示す模式図である。図10は、本開示の第1実施形態に係る気孔率計測装置の動作例を示すフローチャートである。図11および図13は、本開示の第1実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。図12は、本開示の第1実施形態に係る気孔率計測装置に対する比較例の検証結果を示す模式図である。
【0014】
(気孔率計測装置の構成)
本開示の第1実施形態において、気孔率計測装置は、気孔率の計測対象を含む画像に基づいて計測対象の気孔率を算出する。計測対象は、複数の気孔(空洞)を含む多孔質物質である。なお、気孔率は、固体部分と気孔との容積の比である。また、本実施形態は、一例として、計測対象が遮熱コーティングのトップコートである場合とする。遮熱コーティングは、例えばガスタービンの遮熱材として用いられる。遮熱コーティングは、例えばYSZからなるトップコート(遮熱層)と、基材とトップコートとを結合するボンドコート(結合層)とからなる2層構造を有している。トップコートは、気孔の効果によって熱伝導率を低下させる。また、計測対象を撮影した画像は、例えば、計測対象を切断し、断面観察用包埋樹脂に包埋し、研磨した後、電子顕微鏡等を用いて撮影した断面画像である。
【0015】
本開示の第1実施形態(および後述する第2~第4実施形態)において、気孔率計測装置は、例えば、サーバ、パーソナルコンピュータ、タブレット端末等のコンピュータを用いて構成することができる。そして、本実施形態に係る気孔率計測装置1は、コンピュータやその周辺装置等のハードウェアと、そのコンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせから構成される機能的構成として図1に示す各部を備える。すなわち、気孔率計測装置1は、取得部11と、抽出部12と、分類部13と、算出部14と、記憶部15とを備える。また、記憶部15は、1または複数の学習済み機械学習モデル16を記憶する。
【0016】
取得部11は、通信回線、着脱可能な記録媒体等を介して、気孔率の計測対象を含む画像(断面画像)を取得する。取得部11は、取り込んだ画像を例えば記憶部15に記憶する。図3は、気孔率の計測対象を含む画像の例である画像101を模式的に示す。図3に示す画像101は、トップコート201と、ボンドコート202と、基材203とを含んでいる。なお、画像101において、水平方向をX方向、垂直方向をY方向とする。
【0017】
抽出部12は、取得部11が取得した画像から気孔率の計測対象となる領域画像を抽出する。図2は、抽出部12による処理の一例を示す。抽出部12は、まず、例えば記憶部15から画像を読み込んでメインメモリ等に記憶する(ステップS1)。この例では、抽出部12が、図3に示す画像101を読み込んだものとする。次に、抽出部12は、読み込んだ画像101をグレースケール化する(ステップS2)。図4は、画像101をグレースケール化した画像102を模式的に示す。次に、抽出部12は、画像102に対してエッジ検出処理等を行い、トップコート201の輪郭を抽出する(ステップS3)。抽出部12は、例えば図5に示す画像103上で破線で示すように輪郭を抽出する。次に、抽出部12は、例えば、図6に示す画像104上で鎖線のブロックで示すように、輪郭線上部のY座標最小値と輪郭線下部のY座標最大値とで囲まれる領域を選択する(ステップS4)。次に、抽出部12は、選択した領域で画像を切り取る(ステップS5)。図7に示す画像105が切り取った画像であり、本実施形態ではこの抽出部12が切り取った画像105を領域画像という。
【0018】
分類部13は、画像(領域画像)毎に遮熱コーティングのトップコートの膜質を分類する。トップコートの膜質は、通常のポーラス皮膜のほか、形成の条件等によっては、縦割れを含む緻密皮膜となったり、高気孔の皮膜となったりする。図8は、条件を変えて形成した縦割れを含む緻密皮膜を撮影した画像106を示す。図9は、樹脂入り粉末を用いて意図的に形成した高気孔(高気孔率)の皮膜を撮影した画像107を示す。分類部13は、例えば、パターンマッチング等の画像認識処理を行い、トップコートの膜質を分類する。分類部13は、例えば、各画像の膜質を、通常、高気孔、緻密皮膜の3種類に分類する。
【0019】
算出部14は、学習済み機械学習モデル16を用いて、計測対象の気孔率を算出する。学習済み機械学習モデル16は、領域画像の特徴量を説明変数とし、かつ、気孔率を目的変数とし、気孔率がそれぞれ付与された複数の領域画像を教師データとして機械学習された機械学習モデルである。ここで、学習済み機械学習モデル16は、例えばニューラルネットワークを要素とする学習済みモデルであり、入力される多数のデータに対して求める解が出力されるよう、機械学習によりニューラルネットワークの各層のニューロン間の重み付け係数が最適化されている。学習済みモデル16は、例えば、入力から出力までの演算を行うプログラムと当該演算に用いられる重み付け係数(パラメータ)の組合せで構成される。そして、学習済みモデル16は、領域画像の特徴量を入力し、気孔率を出力する。また、気孔率がそれぞれ付与された領域画像とは、領域画像または領域画像が抽出された元の画像を経験のある計測者が目視して算出した気孔率がラベル付けされた領域画像である。
【0020】
また、領域画像の特徴量は、画像の特徴を数値化して表すデータである。領域画像の特徴量は、例えば領域画像の各画素の各輝度値(画素値)そのものであってもよい。あるいは、領域画像の特徴量は、例えばSIFT(Scale-Invariant Feature Transform)などのアルゴリズムを用いて領域画像から抽出された局所特徴量であってもよい。ここで、局所特徴量は、例えば画像中の濃淡の変化が大きい特徴点を検出し、その特徴点周りの領域を画素値や微分値により特徴ベクトルに変換したものである。あるいは、領域画像の特徴量は、領域画像の各画素の各輝度値の頻度分布であってもよい。あるいは、領域画像の特徴量は、これらの特徴量の組み合わせであってもよい。
【0021】
また、学習済み機械学習モデル16は、例えば、計測対象を撮影した画像の撮影倍率毎に構築されていてもよい。この場合、記憶部15は、例えば、複数の異なる撮影倍率毎に各1つの学習済み機械学習モデル16を記憶する。なお、各学習済み機械学習モデル16は、撮影倍率毎に機械学習される。また、算出部14は、取得部11が取得した画像の撮影倍率に基づき対応する学習済み機械学習モデル16を選択し、選択した学習済み機械学習モデル16を用いて気孔率を算出する。この構成によれば、撮影倍率の設定の自由度を向上させることができる。
【0022】
また、学習済み機械学習モデル16は、例えば、トップコート201の膜質毎に構築されていてもよい。この場合、記憶部15は、例えば、複数の異なる膜質の分類毎に各1つの学習済み機械学習モデル16を記憶する。なお、各学習済み機械学習モデル16は、膜質の分類毎に機械学習される。また、算出部14は、分類部13による膜質の分類結果に基づき、学習済み機械学習モデル16を選択して用いて、計測対象の気孔率を算出する。この構成によれば、気孔率の算出精度の向上を図ることができる。
【0023】
また、算出部14は、分類部13によって通常のポーラス皮膜と分類された領域画像のみを対象として、気孔率を算出してもよい。この場合、学習済み機械学習モデル16は、例えば、通常のポーラス皮膜と分類された領域画像のみを教師データとして機械学習することができる。
【0024】
(気孔率計測装置の動作例)
次に、図10を参照して、気孔率計測装置1の動作例について説明する。図10に示す処理は、操作者の指示(所定の入力操作等)に従って開始される。図10に示す処理では、まず、取得部11が画像を取り込む(ステップS11)。次に抽出部12が、領域画像を抽出する(ステップS12)。次に分類部13が、膜質を分類する(ステップS13)。次に算出部14が、学習済み機械学習モデルを用いて計測対象の気孔率を算出し(ステップS14)、所定の出力先に算出結果を出力する(ステップS15)。
【0025】
(気孔率計測装置の精度検証結果)
図11は、本実施形態における精度の検証結果の一例を示す。横軸は人(画像解析作業者)による気孔率の計測結果であり、縦軸は本実施形態の気孔率計測装置1による気孔率予測値である。また、○印が気孔率、実線が平均線、鎖線が95%の予測区間、破線が正しい予測を示す。機械学習では、368枚の画像および気孔率のデータセットを用いた。データセットは画像解析作業者のばらつきを無くすため、特定作業者の結果のみを用いている。個々の画像を局所特徴量SIFTに変換した後、クラスタ数512のBoVW(Bag of Visual Words)を介したコードブックとして、気孔率に対しサポートベクタマシンで機械学習させた。交差検証の結果、人による計測と精度よく一致した。
【0026】
同一画像を人の目で再現性確認した結果(図12)と、最も精度の良かった学習法で予測した結果(図13)はほぼ同等の精度を示し、図13に示すMAE(平均絶対誤差)と図12に示すMAE(平均絶対誤差)の差は0.16%しかなかった。
【0027】
(作用・効果)
以上のように、本実施形態によれば、蓄積した画像と、人の目によって判断した気孔率のデータセットを用いて機械学習モデルを機械学習することで、人の目と同じ判断が自動的・再現的にできるようになった。すなわち、本実施形態によれば、気孔率を適切に自動で計測することができる。
【0028】
(変形例)
なお、上記実施形態は、例えば次のように変形してもよい。例えば、上述した分類部13による分類を、新たな学習済み機械学習モデルを用いて行ってもよい。この場合、学習済み機械学習モデルは、画像データあるいは画像データから抽出した特徴量を説明変数とし、分類結果を目的変数とする。また、教師データは、人の目による分類結果がラベル付けされた画像データとする。
【0029】
<第2実施形態>
次に、図14図19を参照して、本開示の第2実施形態に係る気孔率計測装置および気孔率計測方法ついて説明する。図14図19は、本開示の第2実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。第2実施形態は、第1実施形態と比較して、学習済み機械学習モデル16のアルゴリズムと、学習済み機械学習モデル16へ入力する領域画像の特徴量の算出アルゴリズムが異なる(ただし比較のため第1実施形態と同一な例を一部含む)。
【0030】
機械学習は、個々の画像を局所特徴量SIFT、ORB(Oriented FAST and Rotated BRIEF)、およびAKAZE(Accelerated KAZE)に変換した後、クラスタ数512のBoVW(Bag of Visual Words)を介したコードブックとして、気孔率に対しサポートベクタマシンまたはランダムフォレストを用いて実行した。なお、ORB、AKAZE、SIFTなどの局所特徴量を足し合わせたベクトルを気孔率に対応させて機械学習させても良い。
【0031】
図14は、368個のデータセットを用いて局所特徴量SIFTをランダムフォレストで学習させた場合の精度検証結果を示す。図14における凡例等、表示の仕方は図11と同一である(以下、図15図31において同じ)。図15は、368個のデータセットを用いて局所特徴量SIFTをサポートベクタマシンで学習させた場合の精度検証結果を示す。図16は、368個のデータセットを用いて局所特徴量ORBをランダムフォレストでサポートベクタマシンで学習させた場合の精度検証結果を示す。図17は、368個のデータセットを用いて局所特徴量ORBをサポートベクタマシンで学習させた場合の精度検証結果を示す。図18は、368個のデータセットを用いて局所特徴量AKAZEをランダムフォレストでサポートベクタマシンで学習させた場合の精度検証結果を示す。図17は、368個のデータセットを用いて局所特徴量AKAZEをサポートベクタマシンで学習させた場合の精度検証結果を示す。
【0032】
以上のように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様、気孔率を適切に自動で計測することができる。
【0033】
<第3実施形態>
次に、図20図25を参照して、本開示の第3実施形態に係る気孔率計測装置および気孔率計測方法ついて説明する。図20図25は、本開示の第3実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。第3実施形態は、第1実施形態と比較して、学習済み機械学習モデル16のアルゴリズムと、学習済み機械学習モデル16へ入力する領域画像の特徴量の算出アルゴリズムが異なる。
【0034】
機械学習は、個々の領域画像の輝度値をヒストグラム化したデータ(以下、頻度分布のヒストグラムともいう)を特徴量として、気孔率に対しサポートベクタマシンまたはランダムフォレストを用いて実行した。ヒストグラムのbin数(区間の個数;分解能)は、64、128および256とした。
【0035】
図20は、232個のデータセットを用いて頻度分布のヒストグラム(bin数は64)をランダムフォレストで学習させた場合の精度検証結果を示す。図21は、232個のデータセットを用いて頻度分布のヒストグラム(bin数は64)をサポートベクタマシンで学習させた場合の精度検証結果を示す。図22は、232個のデータセットを用いて頻度分布のヒストグラム(bin数は128)をランダムフォレストで学習させた場合の精度検証結果を示す。図23は、232個のデータセットを用いて頻度分布のヒストグラム(bin数は128)をサポートベクタマシンで学習させた場合の精度検証結果を示す。図24は、232個のデータセットを用いて頻度分布のヒストグラム(bin数は256)をランダムフォレストで学習させた場合の精度検証結果を示す。図25は、232個のデータセットを用いて頻度分布のヒストグラム(bin数は256)をサポートベクタマシンで学習させた場合の精度検証結果を示す。
【0036】
以上のように、本実施形態によれば、bin数を例えば128以上とすることで、第1実施形態と同様、気孔率を適切に自動で計測することができる。また、局所特徴量を入力情報とする場合と比べ処理の負荷を容易に低減させることができる。
【0037】
<第4実施形態>
次に、図26図31を参照して、本開示の第4実施形態に係る気孔率計測装置および気孔率計測方法ついて説明する。図26図31は、本開示の第4実施形態に係る気孔率計測装置の検証結果を示す模式図である。第4実施形態は、第1実施形態と比較して、学習済み機械学習モデル16のアルゴリズムと、学習済み機械学習モデル16へ入力する領域画像の特徴量の算出アルゴリズムが異なる。
【0038】
機械学習は、頻度分布のヒストグラムと、局所特徴量SIFT、ORBまたはAKAZEとを組み合わせたベクトルを特徴量として、気孔率に対しサポートベクタマシンまたはランダムフォレストを用いて実行した。以下の例では、ヒストグラムのbin数は256とした。具体的には、画像の輝度分布のbin数を256としたベクトルと局所特徴量のベクトルを並列に繋げたベクトルを、気孔率に対応する機械学習のインプットとする。
【0039】
図26は、232個のデータセットを用いて局所特徴量SIFTと頻度分布のヒストグラムをランダムフォレストで学習させた場合の精度検証結果を示す。図27は、232個のデータセットを用いて局所特徴量SIFTと頻度分布のヒストグラムをサポートベクタマシンで学習させた場合の精度検証結果を示す。図28は、232個のデータセットを用いて局所特徴量ORBと頻度分布のヒストグラムをランダムフォレストで学習させた場合の精度検証結果を示す。図29は、232個のデータセットを用いて局所特徴量ORBと頻度分布のヒストグラムをサポートベクタマシンで学習させた場合の精度検証結果を示す。図30は、232個のデータセットを用いて局所特徴量AKAZEと頻度分布のヒストグラムをランダムフォレストで学習させた場合の精度検証結果を示す。図31は、232個のデータセットを用いて局所特徴量AKAZEと頻度分布のヒストグラムをサポートベクタマシンで学習させた場合の精度検証結果を示す。
【0040】
以上のように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様、気孔率を適切に自動で計測することができる。
【0041】
(各実施形態の作用効果)
上記構成の気孔率計測装置および気孔率計測方法では、気孔率の計測対象を含む画像から気孔率の計測対象となる領域画像を抽出し、領域画像の特徴量を説明変数とし、かつ、気孔率を目的変数とし記気孔率がそれぞれ付与された複数の領域画像を教師データとして機械学習された学習済み機械学習モデルを用いて、計測対象の気孔率が算出される。したがって、実施形態の気孔率計測装置および気孔率計測方法によれば、気孔率を適切に自動で計測することができる。
【0042】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0043】
〈コンピュータ構成〉
図32は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、および、インタフェース94を備える。
上述の気孔率計測装置1は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。
【0044】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータは、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0045】
ストレージ93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0046】
<付記>
各実施形態に記載の気孔率計測装置1は、例えば以下のように把握される。
【0047】
(1)第1の態様に係る気孔率計測装置1は、気孔率の計測対象を含む画像を取得する取得部11と、前記画像から前記気孔率の計測対象となる領域画像を抽出する抽出部12と、前記領域画像の特徴量を説明変数とし、かつ、前記気孔率を目的変数とし、前記気孔率がそれぞれ付与された複数の前記領域画像を教師データとして機械学習された学習済み機械学習モデル16を用いて、前記計測対象の気孔率を算出する算出部14と、を備える。本態様および以下の各態様によれば、気孔率を適切に自動で計測することができる。
【0048】
(2)第2の態様に係る気孔率計測装置1は、(1)の気孔率計測装置1であって、前記特徴量は、前記領域画像の局所特徴量を含む。
【0049】
(3)第3の態様に係る気孔率計測装置1は、(1)の気孔率計測装置1であって、前記特徴量は、前記領域画像の輝度値の頻度分布を含む。
【0050】
(4)第4の態様に係る気孔率計測装置1は、(1)の気孔率計測装置1であって、前記特徴量は、前記領域画像の局所特徴量と輝度値の頻度分布とを含む。
【0051】
(5)第5の態様に係る気孔率計測装置1は、(1)~(4)の気孔率計測装置1であって、前記学習済み機械学習モデル16は、前記画像の撮影倍率毎に構築される。本態様によれば、画像の撮影倍率の自由度を高めることができる。
【0052】
(6)第6の態様に係る気孔率計測装置1は、(1)~(5)の気孔率計測装置1であって、前記計測対象は、遮熱コーティングのトップコートである。
【0053】
(7)第7の態様に係る気孔率計測装置1は、(6)の気孔率計測装置1であって、前記学習済み機械学習モデルは、前記トップコートの膜質毎に構築される。本態様によれば、より精度の向上を図ることができる。
【0054】
(8)第8の態様に係る気孔率計測装置1は、(7)の気孔率計測装置1であって、前記画像毎に前記膜質を分類する分類部13をさらに備え、前記算出部14は、前記膜質の分類結果に基づき、前記学習済み機械学習モデル16を選択して用いて、前記計測対象の気孔率を算出する。本態様によれば、より精度の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0055】
1…気孔率計測装置
11…取得部
12…抽出部
13…分類部
14…算出部
15…記憶部
16…学習済み機械学習モデル
【要約】
【課題】気孔率を適切に自動で計測する。
【解決手段】気孔率計測装置は、気孔率の計測対象を含む画像を取得する取得部と、画像から気孔率の計測対象となる領域画像を抽出する抽出部と、領域画像の特徴量を説明変数とし、かつ、気孔率を目的変数とし、気孔率がそれぞれ付与された複数の領域画像を教師データとして機械学習された学習済み機械学習モデルを用いて、計測対象の気孔率を算出する算出部と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
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図30
図31
図32