(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】床下地材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
E04F 15/02 20060101AFI20220519BHJP
E04F 15/20 20060101ALI20220519BHJP
E04F 15/18 20060101ALI20220519BHJP
E04B 5/43 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
E04F15/02 T
E04F15/20
E04F15/18 602J
E04B5/43 H
(21)【出願番号】P 2022038840
(22)【出願日】2022-03-14
【審査請求日】2022-03-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313012349
【氏名又は名称】旭ファイバーグラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180415
【氏名又は名称】荒井 滋人
(72)【発明者】
【氏名】志村 貴文
(72)【発明者】
【氏名】板谷 透
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-241167(JP,A)
【文献】特開2017-48597(JP,A)
【文献】特開2015-94162(JP,A)
【文献】特開2018-119398(JP,A)
【文献】特開2001-140454(JP,A)
【文献】特開2001-132212(JP,A)
【文献】特開平7-18830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00-15/22
E04B 5/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床と床仕上げ材との間に接着されて配されるべき床下地材であって、
ガラス繊維からなる無機繊維及び熱可塑性樹脂繊維を含む有機繊維からなる内層と、
該内層の両面に配されている熱可塑性樹脂からなる外層と、
前記内層及び前記外層で形成されている下地材本体とを備え、
前記無機繊維は平均繊維径が1μm以上5μm以下であり、
前記内層における前記無機繊維は40重量%以上70重量%以下であり、
前記外層の目付は15g/m
2以上300g/m
2以下であり、
前記内層の通気抵抗値が0.2kPa・s/m以上0.9kPa・s/m以下であることを特徴とする床下地材。
【請求項2】
前記外層の通気抵抗値は0.03kPa・s/m以上30kPa・s/m以下であることを特徴とする請求項1に記載の床下地材。
【請求項3】
前記下地材本体の圧縮撓みの変位量が1kPa/mm以上20kPa/mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の床下地材。
【請求項4】
前記下地材本体は、厚みが2mm以上10mm以下であり、目付が500g/m
2以上1500g/m
2以下であることを特徴とする請求項1に記載の床下地材。
【請求項5】
前記無機繊維は、平均繊維径2μm~5μmのAガラス組成で捲縮のあるガラス繊維を含むことを特徴とする請求項1に記載の床下地材。
【請求項6】
前記有機繊維に含まれる前記熱可塑性樹脂繊維の割合は、50重量%以上100重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の床下地材。
【請求項7】
前記無機繊維に結合剤が塗布されていることを特徴とする請求項1に記載の床下地材。
【請求項8】
前記下地材本体は、前記外層の間に前記内層を配し、圧縮応力をかけて積層して形成し、その際に前記無機繊維を折ることを特徴とする請求項1に記載の床下地材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量床衝撃音を低減させることができる床下地材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルやマンション等、コンクリートが用いられている建築物には様々な騒音対策が必要である。その中で、生活音である床衝撃音は特に気になる騒音である。床衝撃音は軽量床衝撃音と重量床衝撃音との2種類に分類される。軽量床衝撃音は、ハイヒールで歩いたときのコツコツという音やスプーンを落としたときの音のように、比較的高い音である。一方、重量床衝撃音は、子供がはねた時のようなドスンという低い音である。
【0003】
軽量床衝撃音を低減させる目的で、各種繊維材料が床下地材として使用されている。この床下地材は、コンクリートスラブと呼ばれる床とフローリングやタイル等の床仕上げ材との間に介装されて用いられる。具体的には、床にウレタンやNBRなどの液状接着剤を塗り、そこに直接床下地材を貼り付け、さらに床下地材の上に接着剤を塗って、床仕上げ材を貼り付けて用いられる、所謂、直貼り施工が一般的である。
【0004】
別の床衝撃音対策として、空間を介して形成された二重床を用いる方法がある。この方法はコンクリートスラブに対し格子状の空間を設け、格子を支える柱をゴムなどの弾性体とすることで、床衝撃音に対して高い防音効果を持たせることが可能となる。一般的に二重床の方が直貼り施工と比べ床衝撃音の防音効果が高いとされる。しかしながらこの方法では、コンクリートスラブ面から100mm程度床が高くなるため、床から天井までの高さが不十分になり、高さを確保するとなると、立てられる階数が少なくなったり、階数当たりの材料費が高くなるという問題がある。したがって、床衝撃音対策としては床下地材を用いた方が、高さ方向の制約がなく安価に施工できるという観点では有効である。
【0005】
このような床下地材として、有機繊維を細繊維化したものが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1では、床下地材としてナイロン、PET、PPからなる0.1~3デニールの極細繊維が使用されている。特許文献1では、極めて細い繊維からなるシートを遮音材層として用い、垂直方向にかかる圧縮力に対して繊維同士を擦れさせ、音の振動エネルギーを摩擦による熱エネルギーに変換している。これにより特に衝撃圧縮力の軽減に効果があるとしている。
【0006】
しかしながら、特許文献1のような極細繊維を用いて床下地材を施工すると、液状の接着剤により極細繊維に接着剤が染み込む。そうすると、繊維同士の擦れあいが極端に減ってしまい、期待通りの床衝撃音の低減効果を得ることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであり、接着剤を用いても、繊維が揺れることを確保することができ、軽量床衝撃音を低減させることができる床下地材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明では、床と床仕上げ材との間に接着されて配されるべき床下地材であって、ガラス繊維からなる無機繊維及び熱可塑性樹脂繊維を含む有機繊維からなる内層と、該内層の両面に配されている熱可塑性樹脂からなる外層と前記内層及び前記外層で形成されている下地材本体とを備え、前記無機繊維は平均繊維径が1μm以上5μm以下であり、前記内層における前記無機繊維の割合は40重量%以上70重量%以下であり、前記外層の目付は15g/m2以上300g/m2以下であり、前記内層の通気抵抗値が0.2kPa・s/m以上0.9kPa・s/m以下であることを特徴とする床下地材を提供する。
【0010】
好ましくは、前記外層の通気抵抗値は0.03kPa・s/m以上30kPa・s/m以下である。
【0011】
好ましくは、前記下地材本体の圧縮撓みの変位量が1kPa/mm以上20kPa/mm以下である。
【0012】
好ましくは、前記下地材本体は、厚みが2mm以上10mm以下であり、目付が500g/m2以上1500g/m2以下である。
【0013】
好ましくは、前記無機繊維は、平均繊維径2μm~5μmのAガラス組成で捲縮のあるガラス繊維を含む。
【0014】
好ましくは、前記有機繊維に含まれる前記熱可塑性樹脂繊維の含有量は、50重量%以上100重量%以下である。
【0015】
好ましくは、前記無機繊維に結合剤が塗布されている。
【0016】
さらに、前記下地材本体は、前記外層の間に前記内層を配し、圧縮応力をかけて積層して形成し、その際に前記無機繊維を折ることを特徴とする床下地材の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、接着剤を用いても、繊維が揺れることを確保することができ、軽量床衝撃音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る床下地材を用いた床部分の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、本発明に係る床下地材1は、床2と床仕上げ材3との間に接着剤4を介して接着されて配されるべきものである。そして、
図2に示すように、床下地材1は内層5とこの内層5の両面に配されている外層6からなる下地材本体7として形成されている。床仕上げ材3は、塩ビタイルや、クッションフロア、ロールカーペット、タイルカーペットや木製のカーペット等を用いることができる。
【0020】
内層5は、ガラス繊維からなる無機繊維と熱可塑性樹脂繊維を含む有機繊維とが複合されて形成されている。外層6は、熱可塑性樹脂で形成されている。
【0021】
ここで、内層5に用いられている無機繊維はその平均繊維径が1μm以上5μm以下である。このような繊維径の細い短繊維のガラス繊維を使用することで、軽量床衝撃音の低減効果が高まる。すなわち、平均繊維径が6μm以上のような太さになると、ガラス繊維が効率よく揺れず(衝撃時にガラス繊維の揺れが小さくなる)、音の振動エネルギーが熱エネルギーに変換されにくい。この繊維の揺れを確実なものとするため、外層6が存在している。床下地材1を床2と床仕上げ材3との間に配する際、上述したように接着剤4が使用される。この接着剤4が無機繊維に付いてしまうと無機繊維の揺れがなくなってしまう。したがって接着剤4を無機繊維にしみこませないように、熱可塑性樹脂からなる外層6が必要となる。
【0022】
無機繊維には、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、バイオ原料を主原料とするバイオ樹脂などの結合剤が塗布されていてもよい。
【0023】
無機繊維の割合が40重量%を下回ると、ガラス繊維を揺らして音の振動エネルギーを低減させるという作用が少なくなってしまうので好ましくない。また、無機繊維の成分の比重が有機繊維の樹脂成分の比重の約2倍である(ガラス繊維の方が重い)ことを考慮すると、無機繊維の方が振動エネルギーを熱エネルギーに変えるということであり、少なくとも40重量%以上含んだ方が音の低減効果を見込めるということになる。一方、無機繊維の含有量が70重量%を超えると、いわゆるガラス繊維リッチとなり、繊維同士の結束力が弱まって、主にガラス繊維が飛散しやすくなるため好ましくない。これは、ガラス繊維と有機繊維の3次元的な交絡が不足し、熱可塑性の有機繊維によるガラス繊維の結束が不足しており、その状態で踏まれると、ガラス繊維が飛散してしまうことを招く。
【0024】
このように内層5に無機繊維の割合が40重量%から70重量%であることは、製品としての床下地材1に剛性を付与することになる。すなわち、床下地材1をロール状とした際に、現場で開梱した時の巻き癖を少なくすることができ、作業性が向上する。
【0025】
さらには、床下地材1に無機繊維の割合が40重量%から70重量%であるため、例えば床暖房がある箇所に床下地材1を適用した場合、加熱と冷却が繰り返されたとしても寸法の変化を最小限にすることができる。すなわち寸法収縮しにくくなるため、床仕上材1が熱膨張して床面が突き上がったりすることを防止できる。
【0026】
この無機繊維の割合が40重量%以上70重量%以下であることは、内層5における有機繊維の割合が30重量%以上60重量%以下であることを示している。内層5として無機繊維を単独で使用すると、無機繊維が折れて飛散してしまう。また、期待ほどの軽量床衝撃音の低減効果を得ることができない。有機繊維の割合が30重量%未満であると、無機繊維単独で使用した時のように繊維飛散が生じてしまうし、床衝撃音低減効果が少なくなる。有機繊維の割合が60重量%を超えてしまうと、繊維径の細い無機繊維の量が不足し、床衝撃音低減効果が低くなるため好ましくない。このように、内層5に有機繊維を適度に複合することで、長期間にわたる使用で性能低下のない床下地材1を得ることができる。有機繊維は全て熱可塑性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂繊維とそれ以外の繊維を混合したものでもよい。
【0027】
また、外層6の目付は15g/m2以上300g/m2以下である。目付が15g/m2未満であると、接着剤4が染み出して離型性が悪化するため好ましくない。また、床下地材1をコンクリートスラブや床仕上げ材3に接着した時の接着強度が不十分になるため好ましくない。目付が300g/m2を超えると、軽量床衝撃音低減効果は高まるが、材料コストが上がり、歩行感が悪化して好ましくない。また、床下地材1を施工する際、液状接着剤を多量に染み込むようになるため、施工時の作業効率が悪化するため好ましくない。
【0028】
外層6としては、有機繊維からなる不織布(スパンボンド不織布、エアレイド不織布、ニードルパンチ不織布等)を使用することができるが、表面が平滑で接着剤の浸入が多すぎないものを選ぶとよい。なかでもスパンボンド不織布は目止めされている為、最も好適に使用できる。
【0029】
外層6を形成する有機繊維の材質は、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ナイロン樹脂、ビニロン樹脂、PVA樹脂、レーヨン樹脂、パルプ樹脂などからなる繊維や、綿や麻などの天然繊維であっても構わない。
【0030】
また、内層5の通気抵抗値は0.2kPa・s/m以上0.9kPa・s/m以下である。これは、床2に床下地材1を接着したときは、接着剤4の水分は下地材本体7を通過して乾き、接着剤4は硬化する。したがって接着剤4の水分は効果的に蒸発させる必要があるが、これを実現させるためには、内層5の通気抵抗値があまり大きくならないようにすることが必要となる。
【0031】
このとき、内層5の無機繊維に接着剤4が浸透することを防ぐために、外層6の通気抵抗値も定めている。具体的には、外層6の通気抵抗値は0.03kPa・s/m以上30kPa・s/m以下である。外層6としては、このような通気抵抗値を有するものであれば、上述した不織布の他、フィルムや穴あきフィルムを用いることもできる。通気抵抗値が0.03kPa・s/m未満であると、接着剤4が内層5に浸入してしまい、無機繊維の揺れを妨げてしまう。一方、30kPa・s/mを超えると、接着剤4の蒸発が進まずに施工時間に時間がかかってしまう。外層6は単層で形成して通気抵抗値をコントロールしてもよいが、穴あきフィルム等を含めて複層(不織布+穴あきフィルム)とし、通気抵抗値をコントロールしてもよい。また、その際の穴あきフィルムはポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂等、内層5及び外層6を形成する不織布に対して十分な接着強度のあるものを使用すれば特に限定されない。
【0032】
また、下地材本体7の圧縮撓みの変位量は1kPa/mm以上20kPa/mm以下である。これは、下地材本体7(床下地材1)の厚みを1mm変位させようとしたときの力が、1kPa~20kPaということであり、標準体重(70kg)の男性が歩行時に床にかかる荷重から歪を計算し、2mm以上沈まないという意味である。2mm以上沈むと、歩行感が悪化し、床部分に用いる部材としては好ましくない。
【0033】
下地材本体7は、厚みが2mm以上10mm以下である。厚みが2mm未満の場合、十分な床衝撃音低減効果が発現せず好ましくない。一方、厚みが10mmを超えると、床衝撃音低減効果は非常に高まるが、歩行感が悪化し、更には高コストになるため好ましくない。また、下地材本体7は、目付が500g/m2以上1500g/m2以下である。目付が500g/m2未満だと、十分な床衝撃音低減効果が発現せず、歩行感も悪化するため好ましくない。目付が1500g/m2を超えると、床衝撃音低減効果は非常に高まるが、高コストになるため好ましくない。
【0034】
内層5に含まれる無機繊維は、平均繊維径2μm~5μmのAガラス組成で捲縮しているガラス繊維を含んでいる。Aガラス組成のガラス繊維は、特に平均繊維径の細いグラスウールである。このグラスウールは比較的安価に入手できるため好ましい。また、このグラスウールはある程度捲縮しているため有機繊維との絡みが多く、フリース加工するのに適している。
【0035】
内層5に含まれる無機繊維には、繊維表面を被覆したり繊維同士を結合する結合剤として熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が塗布されていてもよい。結合剤があることで下地材本体のガラス繊維の飛散を低減することができる。
【0036】
内層5に含まれる有機繊維が有する熱可塑性樹脂繊維の含有量は、50重量%以上100重量%以下である。熱可塑性樹脂繊維の量が50重量%を下回ると、無機繊維が飛散するなどして好ましくない。また、床下地材1を製造する工程にて加熱する工程があるが、このときに熱可塑性樹脂繊維が入ってないと、無機繊維と有機繊維が固まらないので好ましくない。
【0037】
なお、本発明に係る床下地材1の製造方法は以下の通りである。内層5は無機繊維と有機繊維をエアレイドによりブレンドさせる。エアレイ装置では、バラバラに粉砕してほぐした繊維や粉体を、水を使わないで、空気の流れに乗せて均一分散させ、コンベア上に吸い取らせて内層5を作る。このエアレイ装置で有機繊維と無機繊維を分散させる際に、シランカップリング剤、ワックス、撥水剤、難燃剤、静電防止剤、クレイ、タルク、マイカ等の添加剤などを少量塗布してもよい。すなわち、下地材本体の作製時に有機繊維や無機繊維の分散工程で静電防止剤やフッ素系やリン系の難燃剤などの添加剤を少量入れ一緒に分散させてもよい。
【0038】
外層6の間に内層5を配し、圧縮応力をかけて積層して形成し、その際に無機繊維を折るという工程を含む。具体的には、内層5及び2つの外層6からなる3層を加熱して、外層6に含まれる熱可塑性樹脂成分で一体化する過程で、100kg/m2以上の高い面圧をかけ、ガラス繊維の反発力を軽減する。このように、平均繊維径の細い無機繊維を用い床下地材1を製造する過程で、高い圧縮応力(面圧)をかけると、無機繊維が折れるので繊維の反発力が適度に弱まり、厚みも薄くできる。その結果、衝撃を受けた時の繊維の揺れを残しながら、歩行感を高めることができる。また、細繊維のガラス繊維は断熱性が高いので熱の伝わりが悪く、芯まで熱を通すことができないが、面圧をかけることでガラス繊維を固体に近づけ、熱の伝わりをよくすることができる。
【0039】
次に、比較例1~4を用いて本発明に係る床下地材1(実施例1、2)の効果を検証した。検証は、コンクリートスラブからなる床2の上に接着剤4を塗布して5分~10分ほど放置し、接着剤4の水分をある程度蒸発させた(完全に蒸発させると接着剤4として機能しない)。その後、実施例及び比較例の床下地材を張り付けて、10分~60分ほど放置し(ここで完全に接着剤4の水分を抜け切らせてくっつける)、床2と床下地材1との間の接着剤4を硬化させた。
【0040】
その後、床下地材1の表面(上面)に接着剤4を塗布し、5分~10分ほど放置した。そして、床仕上げ材3を張り付けて10分~60分ほど放置して床下地材1と床仕上げ材3との間の接着剤4を硬化させた。なお、実施例及び比較例ともに、床仕上げ材3は塩ビタイルを用いた。また、実施例及び比較例ともに、内層5を形成する無機繊維は60重量%とし、有機繊維は40重量%とした。
【0041】
実施例の床下地材1は3μmグラスウール(60重量%)をあらかじめ解繊を行い、その後有機繊維(40重量%)と混合しながら解繊を行いブレンドを行った。ブレンドしたガラスフェルト複合品はラインの上にふわふわとさせながら落として、180℃の加熱炉で2分ほど焼成し、有機繊維内の低融点熱可塑有機繊維を溶かした状態で両面に外層(透湿層)を貼り冷却ロールにてプレスすることで3mmの下地材を完成させた。
【0042】
実施例1、2、及び比較例1~3の無機繊維の平均繊維径は3μmであるが、比較例4の平均繊維径は7μmとした。床下地材1の厚みとしては、比較例1は12mm、比較例2は7mmとし、他は3mmとした。床下地材1の目付は、表の通りである。また、外層6について、比較例3のみなしとした。表中の低減階級は、JIS A 1418-1に準拠した軽量衝撃音試験であり、2階建てのコンクリート建物で試験を行った結果である。2階に床下地材1を施工し、施工するコンクリート製標準床の厚み200mmで長さ2700mm×3600mmの試験室からチッピングマシンにて衝撃音を発生させ、1階にて騒音レベルの測定を行った。測定点は高さ、場所違いで5点測定し平均値を求めた。LL(I)-4以上を合格とした(数値が高いほど軽量床衝撃音の低減効果が高い)。歩行感は、20kPaの荷重をかけて変位量が1.5mm未満であれば○、1.5mm以上2.0mm未満であれば△、2mm以上であれば×とした。
【0043】
【0044】
表に示されるように、比較例1のように床下地材1の厚みが12mm、すなわち10mmを超えてしまうと歩行感が悪く、また音の低減効果もそれほどよくなかった。比較例2のように床下地材1の目付が1600g/m2、すなわち1500g/m2を超えてしまうと、歩行感があまりよくなかった。比較例3のように外層6を設けないと、接着剤4が直接内層5の無機繊維に作用してしまい、床衝撃音の低減が著しく悪かった。比較例4のように、内層5の無機繊維の平均繊維径が7μm、すなわち5μmを超えてしまうと、繊維の揺れが少なくなるので床衝撃音の低減が著しく悪かった。したがって、実施例1や2のように、無機繊維径は3μmと細繊維であり、且つ内層5として無機繊維を多く含み、厚みは3mm程度に抑え、目付も500g/m2以上1500g/m2以下の範囲に収まっていて、外層6を設けていれば、歩行感もよく、床衝撃音も低減されることが分かった。
【符号の説明】
【0045】
1:床下地材、2:床、3:床仕上げ材、4:接着剤、5:内層、6:外層、7:下地材本体
【要約】
【課題】接着剤を用いても、繊維が揺れることを確保することができ、軽量床衝撃音を低減させることができる床下地材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】床下地材1は、ガラス繊維からなる無機繊維及び熱可塑性樹脂繊維を含む有機繊維からなる内層5と、内層5の両面に配されている熱可塑性樹脂からなる外層6とを備え、無機繊維は平均繊維径が1μm以上5μm以下であり、内層5における無機繊維は40重量%以上70重量%以下であり、外層6の目付は15g/m
2以上300g/m
2以下であり、内層5の通気抵抗値が0.2kPa・s/m以上0.9kPa・s/m以下である。
【選択図】
図2