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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】防蟻建築物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/72 20060101AFI20220520BHJP
【FI】
E04B1/72
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017172091
(22)【出願日】2017-09-07
(65)【公開番号】P2019044554
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-07-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390039295
【氏名又は名称】株式会社コシイプレザービング
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻本 吉寛
(72)【発明者】
【氏名】久保 友治
(72)【発明者】
【氏名】中野 隆史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一聡
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-241717(JP,A)
【文献】特開2016-094713(JP,A)
【文献】特開平07-017804(JP,A)
【文献】特開2016-138382(JP,A)
【文献】特開2011-026945(JP,A)
【文献】米国特許第05417017(US,A)
【文献】特開2001-299187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
E04G 11/06
E02D 27/01
A01M 29/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配筋を含む基礎コンクリート構造を有する防蟻建築物の製造方法であって、
前記配筋の間隙にコンクリートを流し込み、硬化する第1ステップと、
前記第1ステップで流し込み、硬化したコンクリートに配管を通すための孔部を設ける第2ステップと、
無機繊維集合体により包囲された配管を準備する第3ステップと、
前記第2ステップで設けられた孔部に前記第3ステップで準備された配管を挿入し、前記無機繊維集合体が圧縮された状態とする第4ステップと、を備える防蟻建築物の製造方法。
【請求項2】
前記配管が、前記防蟻建築物の内側の外径より外側の外径が小さくなるように前記無機繊維集合体を包囲して準備するものである請求項に記載の防蟻建築物の製造方法。
【請求項3】
前記第1ステップが、前記配筋の間隙にコンクリートを流し込む前にスペーサを設けるものであり、
前記第2ステップが、前記スペーサを外すことで前記孔部を設けるものである請求項に記載の防蟻建築物の製造方法。
【請求項4】
前記配管を挿入する前に、前記配筋の間隙または前記孔部の内壁面に前記無機繊維集合体を取付けるものである請求項に記載の防蟻建築物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の防蟻構造、特に、給水管や排水管等が埋設された基礎コンクリート構造を有する防蟻構造と、当該基礎コンクリート構造を有する防蟻建築物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白蟻は、建物の外部から地中を建物内地下に向けて進み、コンクリート間の間隙や割れ目を縫って建物内部に侵入し、支柱となる木材、断熱材等の建築物を食い荒らすため、近年種々の防蟻手段が開発されている。白蟻は、立ち上がり部を伝ってその上部の木材に到達することから、基礎コンクリートの立ち上がり部に防蟻処理を施すことが提案されている。具体的には、粒状又は液状の防蟻剤を基礎コンクリートに配設することが提案されている。しかし、この方法では、薬剤に有効寿命があり、その後は防蟻剤を再施工する必要があった。
【0003】
そこで、薬剤によることなく防蟻を達成する手段として、特許文献1には、コンクリート基礎立ち上がり部に密接して板状物を設けること、及びこの板状物として白蟻遮蔽材を使用することが開示されている。特許文献1でいう白蟻遮蔽材とは、白蟻の分泌物に対して耐性を有し、且つ白蟻がかみ砕くことによる穴の形成を防止できる強度を有するものとされており、ポリカーボネートなどの樹脂シート、セラミックシート、ガラス繊維シートなどが例示されている。
【0004】
特許文献2には、布基礎立ち上がり部の内側の土壌面に土間コンクリートを施工することが開示されている。この事によって土壌面からの白蟻の侵入は抑制される。しかし、土間コンクリートと布基礎立ち上がり部には、間隙が生じやすく、そこからの白蟻の侵入も防ぐ必要がある。そこで特許文献2では、土間コンクリートの下面であって基礎コンクリートと接する部分に粒状のスラグ(高炉冷却スラグ、転炉スラグなど)を敷き詰め、硬化させている。この硬化スラグをバリア層とすることで白蟻の掘り進みを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-211414号公報
【文献】特開2014-62435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1における板状物は、薬剤を配合しない場合は白蟻忌避効果を有さない。その場合、板状物の内部を掘り進む白蟻の侵入を防止することは可能であっても、板状物の表面の白蟻の通過を防ぐことができない。特に、この板状物は基礎立ち上がり部と地面との間に挿入されており、地面側から地表に出て来て、板状物の表面を伝って建物土台に到達する白蟻の侵入経路に対しては無防備であるという課題があった。
【0007】
また、特許文献2における硬化スラグは硬質であるが故に白蟻の掘り進みを防止できる一方、地震などの衝撃で割れが生じることも懸念される。一旦、割れが生じると、白蟻の侵入を防止することができないという課題があった。
【0008】
さらに、白蟻は、太陽光温水器等の給水管や排水管等が埋設された建物において、当該給水管や排水管等を伝って建物土台に到達することがわかっており、このような白蟻の侵入経路に対しては特段の対策が施されていなかった。
【0009】
本発明は上記の事情に着目してなされたものであって、その目的は、給水管や排水管等が埋設された建築物の基礎コンクリートを有する構造において、外力や薬効低下などによる防蟻性能の低下を引き起こすことなく、長期間に亘って確実に白蟻の侵入を防止可能な防蟻構造と防蟻建築物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決し得た本発明の防蟻構造は、建築物の基礎コンクリート構造に、無機繊維集合体により包囲された配管が埋設されている点に特徴を有する。
【0011】
本発明の防蟻構造において、基礎コンクリート構造が立設部を有しており、前記配管が該立設部に埋設されていることが好ましい。
【0012】
本発明の防蟻構造において、基礎コンクリート構造が土壌面に平行な横設部を有しており、前記配管が該横設部に埋設されていることが好ましい。
【0013】
本発明の防蟻構造において、無機繊維集合体がグラスウールまたはロックウールであることが好ましく、防蟻剤及び/または保湿剤を含んでいてもよい。
【0014】
本発明の防蟻構造において、配管が複数の管を有することが好ましい。
【0015】
また、上記課題を解決し得た本発明の防蟻建築物の製造方法は、配筋を含む基礎コンクリート構造を有する防蟻建築物の製造方法であって、無機繊維集合体により包囲された配管を準備する第1ステップと、前記第1ステップで準備された配管を前記配筋の間隙に挿入する第2ステップと、前記第2ステップで設置された配管と前記配筋の間隙にコンクリートを流し込み、硬化する第3ステップと、を備える点に特徴を有する。
【0016】
さらに、本発明の防蟻建築物の製造方法は、配筋を含む基礎コンクリート構造を有する防蟻建築物の製造方法であって、前記配筋の間隙にコンクリートを流し込み、硬化する第1ステップと、前記第1ステップで流し込み、硬化したコンクリートに配管を通すための孔部を設ける第2ステップと、無機繊維集合体により包囲された配管を準備する第3ステップと、前記第2ステップで設けられた孔部に前記第3ステップで準備された配管を挿入する第4ステップと、を備える点に特徴を有する。
【0017】
本発明の防蟻建築物の製造方法において、配管が、前記防蟻建築物の内側の外径より外側の外径が小さくなるように前記無機繊維集合体を包囲して準備するものであることが好ましい。
【0018】
本発明の防蟻建築物の製造方法において、第1ステップが、配筋の間隙にコンクリートを流し込む前にスペーサを設けるものであり、第2ステップが、スペーサを外すことで孔部を設けるものであることが好ましい。
【0019】
本発明の防蟻建築物の製造方法において、配管を挿入する前に配筋の間隙または孔部の内壁面に無機繊維集合体を取付けるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の防蟻構造によれば、建築物の基礎コンクリート構造に無機繊維集合体により包囲された配管が埋設されており、無機繊維集合体が基礎コンクリートの自重により圧縮された状態になる。また、無機繊維集合体は白蟻の食害に対して強い性質を持つことから、このような状態にすることで、給水管や排水管等を伝って建築物土台に到達する白蟻の侵入経路を絶つことができ、長期間に亘って持続的に白蟻の侵入を防止することができる。
【0021】
また、本発明の防蟻建築物の製造方法によれば、基礎コンクリートが硬化・収縮した後でも、無機繊維集合体の反発作用によって配管と基礎コンクリートの間に間隙が生じるのを防止できる。また、無機繊維集合体自体は柔軟性があるため、地震などの衝撃を受けても無機繊維集合体の割れなどによる間隙発生の心配がなく、地震などの外力によって配管と基礎コンクリート間の間隙が広くなっても、無機繊維集合体自体は圧縮された状態で埋設されているため、間隙の広がりに応じて拡張する。さらに、無機繊維集合体は白蟻の食害に対して強い性質を持つことから、このように構成することにより、白蟻が配管を伝って建築物土台に到達する侵入経路を絶つことができ、長期間に亘って持続的に白蟻の侵入を防止することができる。
【0022】
また、本発明の防蟻建築物の製造方法によれば、予め設けられた孔部に対して無機繊維集合体により包囲された配管が後から押し込まれることにより、当該無機繊維集合体が圧縮された状態になる。このような状態とすることにより、孔部と配管の間隙を伝って建築物土台に到達する白蟻の侵入経路を絶つことができ、長期間に亘って持続的に白蟻の侵入を防止することができる。また、予め設けられた孔部に対して、作業者が目視で確認しながら無機繊維集合体により包囲された配管の挿入作業ができるため、当該無機繊維集合体の押し込み量を自在に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態1に係る防蟻構造の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の実施の形態2に係る防蟻構造の一例を示す概略断面図である。
図3】本発明の実施の形態3に係る防蟻構造の一例を示す概略断面図である。
図4】本発明の実施の形態4に係る防蟻構造の一例を示す概略断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る防蟻建築物の製造方法の一例を示す概略断面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る防蟻建築物の製造方法の他の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のより詳細な具体例を説明するが、本発明は以下の具体例のみに限定されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお本明細書において、「建築物の内側」は、基礎コンクリートの立設部から建築物内部に向かう方向を示し、「建築物の外側」は、基礎コンクリートの立設部から建築物外部に向かう方向を示す。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る防蟻構造の一例を示す概略断面図である。図1の防蟻構造11では、土壌1と接する建築物の基礎コンクリート2において、無機繊維集合体3により表面を包囲された配管4が埋設されている。
【0026】
このような防蟻構造11は、具体的には、例えば、無機繊維集合体3により表面を包囲された配管4を土壌1に埋設した後、土壌1に基礎コンクリート2を流し込み、基礎コンクリート2の自重で無機繊維集合体3を押圧しつつ、該基礎コンクリート2を養生・硬化することによって形成できる。そうすると、基礎コンクリート2が硬化・収縮した後でも、無機繊維集合体3の反発作用によって配管4と基礎コンクリート2の間に間隙が生じるのを防止できる。さらには、無機繊維集合体3自体は柔軟性があるため、地震などの衝撃を受けても無機繊維集合体3の割れなどによる間隙発生の心配がなく、また地震などの外力によって配管4と基礎コンクリート2間の間隙が広くなっても、無機繊維集合体3自体は圧縮された状態で埋設されているため、間隙の広がりに応じて拡張する。このように構成することにより、白蟻が配管4を伝って建築物土台に到達する侵入経路を絶つことができ、長期間に亘って持続的に白蟻の侵入を防止することができる。
【0027】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2に係る防蟻構造の一例を示す概略断面図である。図2の防蟻構造21では、土壌1と接する建築物の基礎コンクリート2の立設部5に無機繊維集合体3により表面を包囲された配管4が埋設されている。
【0028】
このような防蟻構造21は、具体的には、例えば、無機繊維集合体3により表面を包囲された配管4を土壌1に埋設した後、立設部5に相当する箇所に基礎コンクリート2を流し込み、基礎コンクリート2の自重で無機繊維集合体3を押圧しつつ、該基礎コンクリート2を養生・硬化することによって形成できる。そうすると、基礎コンクリート2が硬化・収縮した後でも、無機繊維集合体3の反発作用によって配管4と基礎コンクリート2(立設部5)の間に間隙が生じるのを防止できる。さらには、無機繊維集合体3自体は柔軟性があるため、地震などの衝撃を受けても無機繊維集合体3の割れなどによる間隙発生の心配がなく、また地震などの外力によって配管4と基礎コンクリート2(立設部5)の間の間隙が広くなっても、無機繊維集合体3自体は圧縮された状態で埋設されているため、間隙の広がりに応じて拡張する。このように構成することにより、白蟻が配管4を伝って建築物内部に到達する侵入経路を絶つことができ、長期間に亘って持続的に白蟻の侵入を防止することができる。
【0029】
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3に係る防蟻構造の一例を示す概略断面図である。図3の防蟻構造31では、土壌1と接する建築物の基礎コンクリート2が土壌1に平行な横設部6を有しており、この横設部6に無機繊維集合体3により表面を包囲された配管4が埋設されている。なお、図3は、基礎コンクリート2の立設部5と横設部6が共に存在する場合を示しているが、立設部5が存在しない場合であっても本発明は適用可能である。
【0030】
このような防蟻構造31は、具体的には、例えば、無機繊維集合体3により表面を包囲された配管4を土壌1に埋設した後、立設部5と横設部6に相当する箇所に基礎コンクリート2を流し込み、基礎コンクリート2の自重で無機繊維集合体3を押圧しつつ、該基礎コンクリート2を養生・硬化することによって形成できる。そうすると、基礎コンクリート2が硬化・収縮した後でも、無機繊維集合体3の反発作用によって配管4と基礎コンクリート2(立設部5、横設部6)の間に間隙が生じるのを防止できる。さらには、無機繊維集合体3自体は柔軟性があるため、地震などの衝撃を受けても無機繊維集合体3の割れなどによる間隙発生の心配がなく、また地震などの外力によって配管4と基礎コンクリート2(立設部5、横設部6)の間の間隙が広くなっても、無機繊維集合体3自体は圧縮された状態で埋設されているため、間隙の広がりに応じて拡張する。このように構成することにより、白蟻が配管4を伝って建築物内部に到達する侵入経路を絶つことができ、長期間に亘って持続的に白蟻の侵入を防止することができる。
【0031】
(実施の形態4)
図4は、本発明の実施の形態4に係る防蟻構造の一例を示す概略断面図である。本発明の実施において、配管4が複数の管を有するものであってもよい。具体的には、複数の各種配管を通すための管(鞘管)を用いることができる。図4の防蟻構造41では、建築物の基礎コンクリート2の立設部5に無機繊維集合体3により表面を包囲された鞘管4Aが埋設されている。なお、図4のA-A断面図で示すように、鞘管4Aには複数本の配管4が含まれている。
【0032】
このような防蟻構造41は、具体的には、例えば、無機繊維集合体3により表面を包囲された鞘管4Aを土壌1に埋設した後、立設部5に相当する箇所に基礎コンクリート2を流し込み、基礎コンクリート2の自重で無機繊維集合体3を押圧しつつ、該基礎コンクリート2を養生・硬化することによって形成できる。そうすると、基礎コンクリート2が硬化・収縮した後でも、無機繊維集合体3の反発作用によって鞘管4Aと基礎コンクリート2(立設部5)の間に間隙が生じるのを防止できる。さらには、無機繊維集合体3自体は柔軟性があるため、地震などの衝撃を受けても無機繊維集合体3の割れなどによる間隙発生の心配がなく、また地震などの外力によって鞘管4Aと基礎コンクリート2(立設部5)の間の間隙が広くなっても、無機繊維集合体3自体は圧縮された状態で埋設されているため、間隙の広がりに応じて拡張する。このように構成することにより、白蟻が鞘管4Aを伝って建築物内部に到達する侵入経路を絶つことができ、長期間に亘って持続的に白蟻の侵入を防止することができる。
【0033】
なお、防蟻構造41について、鞘管4Aを包囲する無機繊維集合体3を設けることの他に、それぞれの配管4を無機繊維集合体3により表面を包囲するように構成してもよい。このように構成することで、白蟻が鞘管4A、及び鞘管4A内の各配管4を伝って建築物内部に到達する侵入経路を絶つことができ、長期間に亘って持続的に白蟻の侵入を防止することができる。
【0034】
以下、本発明の実施の形態に係る各構成要素について説明する。
【0035】
建築物の基礎コンクリート2の構造について、一般に通常の地盤に用いられる布基礎と、比較的軟弱な地盤に用いられるベタ基礎があるが、本発明を実施するにあたり、基礎コンクリート2の構造は特に限定されるものではなく、布基礎、ベタ基礎のどちらも適用できる。
【0036】
無機繊維集合体3の密度(相当密度)は、例えば5kg/m以上100kg/m以下であり、好ましくは10kg/m以上40kg/m以下であり、より好ましくは14kg/m以上36kg/m以下である。相当密度は、住宅金融支援機構仕様書に記載されている密度表示であり、例えば相当密度10[kg/m]は約10kg/mを意味する。
【0037】
無機繊維集合体3の熱伝導率は、例えば0.052W/(m・K)以下、好ましくは0.038W/(m・K)以下、より好ましくは0.034W/(m・K)以下である。熱伝導率は、例えば温度傾斜法、レーザーフラッシュ法、熱線法等を用いて25℃で測定することができる。
【0038】
無機繊維集合体3の平均繊維径は、例えば15μm以下であり、好ましくは8μm以下、より好ましくは6μm以下である。繊維径が小さい程、コンクリートの表面凹凸への追従性が高まり、白蟻の侵入をより高度に防止できる。また繊維径が小さい程、単位面積当たりの密度が高くなり、断熱性も高まる。
【0039】
無機繊維集合体3は、人造無機繊維集合体の成形体又は非成形体であることが好ましく、グラスウール又はロックウールの成形体又は非成形体であることがより好ましい。具体的には、グラスウールの成形体として旭ファイバーグラス株式会社から販売されている「アクリアウール16K(商品名)」、「アクリアUボードNT(商品名)」を用いることができる。これらを用いる場合、例えば、ポリエチレンフィルムに包まれていないグラスウール(裸品)を適切な厚みに切り出した後、当該グラスウールを配管表面に巻き付けるようにして包囲すればよい。
【0040】
グラスウール又はロックウールの非成形体とは、小塊状に加工したものをいい、例えば、吹き込みタイプのグラスウールとして旭ファイバーグラス株式会社から「アクリアブロー(商品名)」として販売されている。また、吹き込みタイプのロックウールとして、ロックウール工業会の「吹込み工法住宅用ロックウール」等が挙げられる。具体的には、例えば、小塊状に加工したグラスウール又はロックウールを吹込み専用機(ブローイングマシーン)にて配管に対して吹き付けるようにすればよい。
【0041】
無機繊維集合体3は、防蟻剤及び/または保湿剤を含んでいてもよい。無機繊維集合体3に防蟻剤を含ませることにより、給水管や排水管等を伝って建築物土台に到達する白蟻の侵入をより高度に防止することができる。また、無機繊維集合体3に保湿剤を含ませることにより、給水管や排水管等の保湿性を高め、冬季における結露を防止することができる。
【0042】
配管4は、具体的には、建築物の地下などに埋設される給水管や排水管であり、本発明の実施において、例えば、硬質のポリ塩化ビニル管や、給水・給湯用架橋ポリエチレン管を用いることができる。
【0043】
次に、本発明の実施の形態に係る防蟻建築物の製造方法について説明する。
【0044】
本発明の防蟻建築物の製造方法は、以下の3つのステップから構成される。つまり、第1ステップとして、無機繊維集合体により包囲された配管を準備し、次に、第2ステップとして、第1ステップで準備された配管を配筋の間隙に挿入する。その後、第3ステップとして、設置された配管と配筋の間隙にコンクリートを流し込み、硬化する。
【0045】
本発明の防蟻建築物の製造方法の特徴は、無機繊維集合体により包囲された配管を基礎コンクリートの配筋の間隙に挿入した後、コンクリートを流し込み、硬化させることである。この方法によれば、基礎コンクリートが硬化・収縮した後でも、無機繊維集合体の反発作用によって配管と基礎コンクリートの間に間隙が生じるのを防止できる。また、無機繊維集合体自体は柔軟性があるため、地震などの衝撃を受けても無機繊維集合体の割れなどによる間隙発生の心配がなく、地震などの外力によって配管と基礎コンクリート間の間隙が広くなっても、無機繊維集合体自体は圧縮された状態で埋設されているため、間隙の広がりに応じて拡張する。さらに、無機繊維集合体は白蟻の食害に対して強い性質を持つことから、このように構成することにより、白蟻が配管を伝って建築物土台に到達する侵入経路を絶つことができ、長期間に亘って持続的に白蟻の侵入を防止することができる。
【0046】
また、本発明の防蟻建築物の別の製造方法は以下の4つのステップから構成される。つまり、第1ステップとして、基礎コンクリートの配筋の間隙にコンクリートを流し込み、硬化した後、第2ステップとして、硬化したコンクリートに配管を通すための孔部を設け、第3ステップとして、無機繊維集合体により包囲された配管を準備し、第4ステップとして、第2ステップで設けられた孔部に第3ステップで準備された配管を挿入する。
【0047】
前記本発明の防蟻建築物の別の製造方法の特徴は、基礎コンクリートの配筋の間隙にコンクリートを流し込み、硬化した後、配管を通すための孔部を設け、無機繊維集合体により包囲された配管を当該孔部に挿入することである。この方法によれば、予め設けられた孔部に対して無機繊維集合体により包囲された配管が後から押し込まれることにより、当該無機繊維集合体が圧縮された状態になる。このような状態とすることにより、孔部と配管の間隙を伝って建築物土台に到達する白蟻の侵入経路を絶つことができ、長期間に亘って持続的に白蟻の侵入を防止することができる。また、予め設けられた孔部に対して、作業者が目視で確認しながら無機繊維集合体により包囲された配管の挿入作業ができるため、当該無機繊維集合体の押し込み量を自在に調整することができる。
【0048】
なお、本発明の防蟻建築物の製造方法において、配管が、防蟻建築物の内側の外径より外側の外径が小さくなるように、無機繊維集合体を包囲して準備するものであってもよい。具体的には、例えば、図5に示すように、配管4の周囲を無機繊維集合体3により巻き付ける際に、建築物の内側の外径より外側の外径のほうが小さいテーパ形状となるようにする。そして、無機繊維集合体3がテーパ形状に巻き付けられた配管4を孔部7に押し込むことにより孔部7内で無機繊維集合体3が圧縮され、建築物の内側より外側に移動する白蟻の進入経路を遮断することができる。
【0049】
また、上記以外の方法として、周囲に無機繊維集合体3を巻き付けていない配管4を孔部7に挿入した後、配管4と孔部7との間の間隙に対して、無機繊維集合体3を後から押し込むように行ってもよい。具体的には、例えば、配管4と孔部7との間の間隙に対して無機繊維集合体3の押し込み量を徐々に増やすことで、建築物の外側よりも内側のほうが無機繊維集合体3の押し込み量が増加するようにして行ってもよい。このようにすることで、配管4と孔部7との間の間隙に対して無機繊維集合体3の押し込み量を自在に調整することができ、押し込まれた無機繊維集合体3は孔部7の中で満遍なく圧縮され、建築物の内側より外側に移動する白蟻の進入経路を遮断することができる。
【0050】
さらに、上記防蟻建築物の別の製造方法は以下のように行ってもよい。まず、第1ステップとして、配筋の間隙にコンクリートを流し込む前に、配管4や鞘管4Aを通す孔部7を設けるためのスペーサを設置した後、コンクリートを流し込み、硬化させる。次に、第2ステップとして、当該スペーサを外すことで孔部7が設けられる。続いて第3ステップとして、第2ステップで設けられた孔部7の内壁面に無機繊維集合体3を接着剤等により取付けると共に、孔部7に挿入するための配管4や鞘管4Aを準備する。次に、第4ステップとして、第2ステップで設けられた孔部7に第3ステップで準備された配管4や鞘管4Aを挿入する。
【0051】
なお、無機繊維集合体3の取付けに関して、上記のように、配筋の間隙にコンクリートが流し込まれて硬化した後に設けられる孔部7の内壁面以外に、配筋の間隙に配管4や鞘管4Aが挿入される前の間隙の内壁面であってもよい。
【0052】
図6に、防蟻建築物の製造方法の一例を示す概略断面図を示す。図6に示すように、無機繊維集合体3が孔部7の内壁面に取付けられた際には、本来の孔部7よりも外径が小さくなっており、この状態で鞘管4Aを孔部7に挿入することにより無機繊維集合体3が押しつぶされた状態となる。したがって、無機繊維集合体3は孔部7の中で満遍なく圧縮され、建築物の内側より外側に移動する白蟻の進入経路を遮断することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 土壌
2 基礎コンクリート
3 無機繊維集合体
4 配管
4A 鞘管
5 コンクリート立設部
6 コンクリート横設部
7 孔部
11 防蟻構造
21 防蟻構造
31 防蟻構造
41 防蟻構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6