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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】加熱冷却撹拌装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 35/95 20220101AFI20220520BHJP
   B01F 27/90 20220101ALI20220520BHJP
   B01F 27/92 20220101ALI20220520BHJP
   B01F 27/80 20220101ALI20220520BHJP
【FI】
B01F15/06 A
B01F7/18 B
B01F7/24
B01F7/16 G
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018000111
(22)【出願日】2018-01-04
(65)【公開番号】P2019118874
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390013815
【氏名又は名称】学校法人金井学園
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中尾 一成
(72)【発明者】
【氏名】中尾 総一
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-069871(JP,U)
【文献】実開昭63-009222(JP,U)
【文献】国際公開第2009/069161(WO,A1)
【文献】公益社団法人 化学工学会 第81年会,2016年,ZAP324
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 27/00 - 27/96
B01F 35/90 - 35/95
C08F 2/00 - 2/60
C02F 3/12
Japio-GPG/FX
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容された被処理物を加熱冷却しながら攪拌するための加熱冷却攪拌装置であって、
前記容器内に回転可能に配置された攪拌翼と、
前記容器内に前記攪拌翼との間で熱交換可能に配置された通電部と、
前記容器外部に配置され、前記通電部に電流を供給する給電部と、
前記容器内に前記攪拌翼との間で熱交換可能に配置され、内部に冷媒を通流させる冷却管と、
前記容器外部に配置され、前記冷却管内に前記冷媒を循環させる冷却部とを備え、
前記通電部の少なくとも一部分は、前記攪拌翼の第1の部分との間で熱交換可能に配置され、
前記冷却管の少なくとも一部分は、前記攪拌翼の前記第1の部分とは異なる第2の部分との間で熱交換可能に配置され、
前記加熱冷却攪拌装置は、前記給電部および前記冷却部を同時に駆動するように構成される、加熱冷却攪拌装置。
【請求項2】
容器に収容された被処理物を加熱冷却しながら攪拌するための加熱冷却攪拌装置であって、
前記容器内に回転可能に配置された攪拌翼と、
前記容器内に前記攪拌翼との間で熱交換可能に配置された通電部と、
前記容器外部に配置され、前記通電部に電流を供給する給電部と、
前記容器内に前記攪拌翼との間で熱交換可能に配置され、内部に冷媒を通流させる冷却管と、
前記容器外部に配置され、前記冷却管内に前記冷媒を循環させる冷却部とを備え、
前記通電部の少なくとも一部分は、前記攪拌翼の第1の部分との間で熱交換可能に配置され、
前記冷却管の少なくとも一部分は、前記攪拌翼の前記第1の部分とは異なる第2の部分との間で熱交換可能に配置され、
前記第1の部分は、前記第2の部分に比べて、前記容器の深さ方向の上部に位置する、加熱冷却攪拌装置。
【請求項3】
容器に収容された被処理物を加熱冷却しながら攪拌するための加熱冷却攪拌装置であって、
前記容器内に回転可能に配置された攪拌翼と、
前記容器内に前記攪拌翼との間で熱交換可能に配置された通電部と、
前記容器外部に配置され、前記通電部に電流を供給する給電部と、
前記容器内に前記攪拌翼との間で熱交換可能に配置され、内部に冷媒を通流させる冷却管と、
前記容器外部に配置され、前記冷却管内に前記冷媒を循環させる冷却部とを備え、
前記通電部は、中空形状の導電体を有し、
前記冷却管は、前記導電体の中空部分に前記冷媒を通流させるように構成される、加熱冷却攪拌装置。
【請求項4】
容器に収容された被処理物を加熱冷却しながら攪拌するための加熱冷却攪拌装置であって、
前記容器内に回転可能に配置された攪拌翼と、
前記容器内に前記攪拌翼との間で熱交換可能に配置された通電部と、
前記容器外部に配置され、前記通電部に電流を供給する給電部と、
前記容器内に前記攪拌翼との間で熱交換可能に配置され、内部に冷媒を通流させる冷却管と、
前記容器外部に配置され、前記冷却管内に前記冷媒を循環させる冷却部とを備え、
前記攪拌翼は、少なくとも一部分が第1導電体として形成され、
前記通電部は、第2導電体と、前記第2導電体を覆う絶縁体とを有し、
前記給電部は、前記通電部に高周波電流を供給し、
前記容器内において、前記通電部は、前記第2導電体が発生する交番磁界を前記第1導電体に鎖交させることが可能とされている、加熱冷却攪拌装置。
【請求項5】
前記通電部の少なくとも一部分は、前記攪拌翼の表面に接合され、
前記冷却管の少なくとも一部分は、前記攪拌翼の表面に接合される、請求項1からのいずれか1項に記載の加熱冷却攪拌装置。
【請求項6】
前記通電部の少なくとも一部分は、前記攪拌翼の内部に配置され、
前記冷却管の少なくとも一部分は、前記攪拌翼の内部に配置される、請求項1からのいずれか1項に記載の加熱冷却攪拌装置。
【請求項7】
前記給電部は、前記通電部に直流電流を供給する、請求項1からのいずれか1項に記載の加熱冷却攪拌装置。
【請求項8】
前記加熱冷却攪拌装置は、前記給電部および前記冷却部の一方を選択的に駆動するように構成される、請求項からのいずれか1項に記載の加熱冷却攪拌装置。
【請求項9】
前記加熱冷却攪拌装置は、前記給電部および前記冷却部を同時に駆動するように構成される、請求項2または4に記載の加熱冷却攪拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器内に収容された被処理物を加熱冷却しながら撹拌するための加熱冷却撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モノマー同士を組み合わせて巨大高分子物質を生成する重合反応器、および下水汚泥からエネルギー源であるメタンガスを回収する汚泥処理装置などの様々な分野においては、被処理物を加熱冷却しながら撹拌するように構成された加熱冷却撹拌装置が利用されている。
【0003】
被処理物を加熱しながら撹拌するための構成としては、従来より、被処理物が収容された容器の外側に抵抗ヒータ、蒸気、温水および油などの加熱手段を配置し、加熱手段を用いて容器を加熱することで被処理物を加熱する構成が知られている(たとえば、実用新案登録第3012756号(特許文献1)参照)。また、被処理物を冷却しながら撹拌するための構成としては、容器の外部に冷媒路などの冷却手段を配置し、冷却手段を用いて容器を冷却することで被処理物を冷却する構成が知られている(たとえば、水科他、「ニュートン流体の撹拌槽壁伝熱係数に関する実験的研究」、化学工学論文集vol.30,No.8(1966)(非特許文献2)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3012756号
【非特許文献】
【0005】
【文献】嶋田他、「誘導加熱撹拌翼による水あめの加熱撹拌同時操作における温度均一性および熱伝達特性」、公益社団法人 化学工学会、第81年会(2016)
【文献】水科他、「ニュートン流体の撹拌槽壁伝熱係数に関する実験的研究」、化学工学論文集vol.30,No.8(1966)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、容器外部に加熱手段および冷却手段を配置する構成では、被処理物の粘度が高くなると、被処理物の撹拌が困難となるために、被処理物の温度ばらつきが大きくなるという課題がある。さらに、撹拌槽の槽壁近傍において被処理物の流動が悪くなるため、熱伝達特性が低下するとともに、熱応答性が低下するという課題もある。
【0007】
本願発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、撹拌翼を電磁誘導加熱することにより高粘度の被処理物における温度ばらつきを低減できることを見出した(たとえば、嶋田他、「誘導加熱撹拌翼による水あめの加熱撹拌同時操作における温度均一性および熱伝達特性」、公益社団法人 化学工学会、第81年会(2016)(非特許文献1)参照)。
【0008】
しかしながら、一方で、撹拌翼を電磁誘導加熱するためには、容器外部に電磁誘導コイルを配置する必要があるため、加熱冷却撹拌装置の体格の小型化に限界が生じることが懸念される。また、電磁誘導コイルが発生した交番磁界を容器内の撹拌翼に十分鎖交させるためには、容器を非導電体で形成する必要があり、容器の形状および大きさ、ならびに撹拌翼の形状などが制約されることが懸念される。
【0009】
さらに、容器外部に電磁誘導コイルを配置することで、該コイルで発生するジュール熱(銅損)は損失として空気中に放熱されるため、加熱効率が低いことが懸念される。
【0010】
さらには、被処理物の温度の高速制御および加熱冷却撹拌装置における省電力化の要求を受けて、加熱冷却効率の改善も重要な課題となっている。
【0011】
この発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、高い加熱冷却効率および装置の小型化を実現することができる加熱冷却撹拌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明のある局面によれば、加熱冷却撹拌装置は、容器に収容された被処理物を加熱冷却しながら撹拌するための装置であって、容器内に回転可能に配置された撹拌翼と、容器内に撹拌翼との間で熱交換可能に配置された通電部と、容器外部に配置され、通電部に電流を供給する給電部と、容器内に撹拌翼との間で熱交換可能に配置され、内部に冷媒を通流させる冷却管と、容器外部に配置され、冷却管内に冷媒を循環させる冷却部とを備える。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、通電部および冷却管が、容器内で撹拌翼との間で熱交換可能に配置されているため、撹拌翼によって被処理物の撹拌と加熱冷却とを一元化することができる。これにより、被処理物の粘度によらず、高速に被処理物の加熱および冷却を行なうことができ、高い加熱冷却効率を実現することができる。よって、被処理物の温度制御の高速化および加熱冷却撹拌装置の省電力化に貢献することができる。また、容器外部の加熱手段および冷却手段が不要となるため、加熱冷却撹拌装置の小型化を実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態1に係る加熱冷却撹拌装置の構成を概略的に示した図である。
図2図1のII-II線での断面図である。
図3】実施の形態1に係る加熱冷却撹拌装置の電気的回路構成を説明する図である。
図4】外部加熱・冷却方式および内部加熱・冷却方式における熱伝達特性および熱応答性を説明するための図である。
図5】実施の形態1に係る加熱冷却撹拌装置における熱伝達経路を概略的に示した図である。
図6】実施の形態1に係る加熱冷却撹拌装置による被処理物の温度制御の一例を説明するための図である。
図7】本発明の実施の形態2に係る加熱冷却撹拌装置の構成を概略的に示した図である。
図8】本発明の実施の形態3に係る加熱冷却撹拌装置の構成を概略的に示した図である。
図9図8のIX-IX線での断面図である。
図10】本発明の実施の形態4に係る加熱冷却撹拌装置の構成を概略的に示した図である。
図11図10のXI-XI線での断面図である。
図12】実施の形態4に係る加熱冷却撹拌装置の他の構成を概略的に示した図である。
図13図12の線XIII-XIIIに沿った断面図である。
図14】実施の形態4に係る加熱冷却撹拌装置に適用される撹拌翼および通電部の構成例を説明する図である。
図15】実施の形態4に係る加熱冷却撹拌装置に適用される撹拌翼および通電部の構成例を説明する図である。
図16】実施の形態4に係る加熱冷却撹拌装置に適用される撹拌翼および通電部の構成例を説明する図である。
図17】実施の形態4に係る加熱冷却撹拌装置に適用される撹拌翼および通電部の構成例を説明する図である。
図18】本発明の実施の形態6に係る加熱冷却撹拌装置の構成を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0016】
[実施の形態1]
この発明の実施の形態1に係る加熱冷却撹拌装置100は、容器21の内部に収容された被処理物20を加熱冷却しながら撹拌するための装置である。加熱冷却撹拌装置100は、たとえば原料モノマー同士を組み合わせて巨大高分子物質を生成する重合反応器に適用することができる。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態1に係る加熱冷却撹拌装置100の構成を概略的に示した図である。なお、図1は、加熱冷却撹拌装置100の軸方向AXに沿った断面構造を示している。
【0018】
図1を参照して、実施の形態1に係る加熱冷却撹拌装置100は、撹拌翼1と、回転軸2と、給電部3と、導電線7a,7bと、冷却部8と、冷媒路9a,9bと、通電部10と、冷却管13と、容器21と、蓋部22とを備える。
【0019】
図1には、容器21の内部に被処理物20が収容されている状態が示されている。容器21には蓋部22が取り付けられている。容器21および蓋部22は、たとえば樹脂で形成されている。なお、容器21および蓋部22は、導電体および非導電体のいずれから構成されていてもよい。
【0020】
被処理物20は、たとえば原料モノマーである。ただし、被処理物20は、原料モノマーに限定されず、気体、液体、固体(紛体、粒体等)およびこれらの混合物のいずれにも適用可能である。
【0021】
撹拌翼1は、容器21の内部に配置されており、少なくとも一部分が被処理物20中に浸漬されている。撹拌翼1は、たとえばマックスブレンド翼である。なお、後述するように、撹拌翼1には、被処理物20の粘度に応じて適当な形状の撹拌翼を用いることができる。
【0022】
撹拌翼1は、少なくとも一部分に導電体(第1導電体)が形成されている。撹拌翼1の少なくとも一部分は、代表的には金属で形成されている。当該少なくとも一部分はたとえばステンレス鋼(SUS304)で形成されている。具体的には、撹拌翼1は、その一部分が導電体で形成され、かつ、残りの部分が非導電体で形成された構造を採ることができる。あるいは、撹拌翼1は、全体が導電体で形成された構造を採ることができる。以下の説明では、全体が導電体で形成されている撹拌翼1について例示する。
【0023】
回転軸2は、軸方向AXにおける一方端部が、容器21の内部にて撹拌翼1の主軸に接続されている。回転軸2は、たとえばステンレス鋼(SUS304)で形成されている。回転軸2の一方端部と主軸との間には封止部材(図示せず)が配置されており、回転軸2の一方端部と主軸の間の隙間を封止することができる。封止部材には、たとえば絶縁性のOリングを用いることができる。
【0024】
回転軸2は、蓋部22に形成された貫通孔22aに挿入されている。回転軸2と貫通孔22aとの間には封止部材23が配置されている、封止部材23は、回転軸2と貫通孔22aとの隙間を封止可能に構成されている。封止部材23は、たとえばシールテープである。この場合、回転軸2の外周面にシールテープを巻いた状態で回転軸2を貫通孔22aに挿入することで、封止部材23によって回転軸2と貫通孔22aとの隙間を封止することができる。
【0025】
容器21の外部において、回転軸2の軸方向AXにおける他方端部は、図示しないモータの回転軸に連結されている。モータによって回転軸2を回転駆動させることにより、撹拌翼1が回転する。これにより、被処理物20が撹拌される。
【0026】
給電部3は、容器21の外部に配置されており、通電部10に対して電流を供給するように構成されている。本実施の形態では、給電部3が通電部10に対して高周波電流を供給する構成について説明する。ただし、給電部3は、通電部10に対して直流電流を供給する構成としてもよい。
【0027】
具体的には、給電部3は、スリップリング4と、交流電源5と、高周波トランス6と、導電線7a,7bとを含む。交流電源5はたとえば商用電源である。高周波トランス6は、交流電源5から電力の供給を受けて高周波の交流電力を生成する。スリップリング4は、高周波トランス6に電気的に接続されるカーボンブラシ(図示せず)を含んでおり、このカーボンブラシを回転体である導電線7a,7bに面接触させることにより、導電線7a,7bに高周波電流を供給するように構成されている。導電線7a,7bは、回転軸2の内部に形成された空間を通って容器21の内部に延びている。
【0028】
通電部10は、容器21の内部に配置されている。容器21の内部において、導電線7aは通電部10の一方端部に電気的に接続されている。導電線7bは通電部10の他方端部に電気的に接続されている。これにより、給電部3から通電部10に対して高周波電流が供給される経路が形成される。
【0029】
通電部10は、撹拌翼1との間で熱交換可能に配置されている。実施の形態1では、通電部10は、撹拌翼1の翼部分の表面に近接して配置されている。図1の例では、通電部10が撹拌翼1の翼部分に接合されている。なお、撹拌翼1と通電部10との間で熱交換が可能であれば、撹拌翼1の表面と通電部10との間に隙間があってもよい。
【0030】
ただし、本実施の形態に係る加熱冷却撹拌装置100では、給電部3が通電部10に対して高周波電流を供給する構成を採用するため、撹拌翼1の表面と冷却管13との間の間隔は閾値以下であることが好ましい。
【0031】
上記「閾値」は、通電部10と撹拌翼1との間に電気的結合を形成することができる間隔とされる。「電気的結合を形成することができる間隔」とは、電磁誘導の現象を生じさせることができる間隔をいう。言い換えれば、通電部10は、撹拌翼1と電気的結合を形成することが可能に配置されている。本実施の形態では、通電部10に高周波電流を流すことによって、通電部10と撹拌翼1との間に電気的結合が形成されるため、後述するように、両者の間で電磁誘導作用を利用することが可能となる。
【0032】
冷却部8は、容器21の外部に配置されており、冷却管13内に冷媒14を循環させるように構成されている。冷媒14には、たとえば純水や絶縁油などの絶縁性媒体、または不凍液を混合した水などの冷却水を用いることができる。冷却部8は、冷媒14を冷却する熱交換器82と、ポンプ84と、ロータリージョイント86と、熱交換器82およびロータリージョイント86とを接続する供給管8aおよび排出管8bと、冷媒路9a,9bとを含む。
【0033】
熱交換器82は、たとえば、ラジエータなどに設けられており、外部の空気を用いて冷媒14を冷却する。冷却された冷媒14はポンプ84によって、供給管8aを通じてロータリージョイント86に供給される。ロータリージョイント86は、冷媒路9aに冷媒14を供給するとともに、冷媒路9bから排出される冷媒14を、排出管8bを通じて熱交換器82に供給するように構成される。
【0034】
冷媒路9a,9bは、回転軸2の内部に形成された空間を通って容器21の内部に延びている。冷却管13は、容器21の内部に配置されている。容器21の内部において、冷媒路9aは冷却管13の一方端部に接続され、冷媒路9bは冷却管13の他方端部に接続されている。これにより、冷却部8と冷却管13との間を冷媒14が循環する経路が形成される。
【0035】
冷却管13は、撹拌翼1との間で熱交換可能に配置されている。実施の形態1では、冷却管13は、撹拌翼1の翼部分の表面に近接して配置されている。図1の例では、冷却管13は、撹拌翼1の翼部分に接合している。なお、撹拌翼1と冷却管13との間で熱交換が可能であれば、撹拌翼1の表面と冷却管13との間に隙間があってもよい。
【0036】
次に、図1に示した通電部10および冷却管13の詳細な構成について説明する。
図2は、図1のII-II線での断面図である。図2を参照して、撹拌翼1の平板部分の表面には、通電部10および冷却管13が接合されている。
【0037】
通電部10は、導電体11(第2導電体)と、導電体11の外周を覆う絶縁体12とを有する。導電体11は、代表的に金属で形成されている。導電体11は、たとえば、厚みが数mm程度のアルミ(Al)プレートで形成されている。絶縁体12は、たとえば金属酸化物で形成されている。導電体11がアルミプレートである場合、絶縁体12はアルミナ(Al)で形成することができる。
【0038】
通電部10は、たとえば接着剤を用いて撹拌翼1に接合されている。これにより、導電体11は絶縁体12を介して撹拌翼1に接合される。すなわち、通電部10は、電気絶縁性を保ちつつ撹拌翼1に接合される。
【0039】
冷却管13は、中空形状を有しており、内部に冷媒14を通流させることができる。冷却管13は、非導電体からなり、たとえば絶縁性樹脂で形成されている。冷却管13は、たとえば接着剤を用いて撹拌翼1に接合されている。これにより、撹拌翼1と冷媒14との間で熱交換を行なうことができるため、撹拌翼1を冷却することができる。
【0040】
なお、通電部10および冷却管13を撹拌翼1に接合させる他の形態としては、通電部10および冷却管13を撹拌翼1にねじ止めしてもよい。あるいは、接着剤やねじ等の固定部材を用いず、単に通電部10および冷却管13を撹拌翼1に重ね合わせるようにしてもよい。
【0041】
なお、図2では、通電部10および冷却管13は、撹拌翼1の同一表面に近接して配置されているが、この配置に限定されるものではない。たとえば、撹拌翼1の第1の表面に近接して通電部10を配置し、第1の表面とは異なる第2の表面に近接して冷却管13を配置してもよい。
【0042】
次に、図3を参照して、本実施の形態に係る加熱冷却撹拌装置100の電気的回路構成を説明する。
【0043】
図3を参照して、高周波トランス6は、交流電源5からの電力を受けて高周波の交流電力を生成する。スリップリング4は、高周波トランス6から高周波の交流電力の供給を受け、導電線7a,7bへ電力を伝送する。これにより、導電線7a,7bを通じて通電部10に高周波電流が供給される。なお、通電部10に高周波電流を供給するための電流経路には、直流(DC)カット用のキャパシタC1が接続されている。
【0044】
通電部10に高周波電流を流すと、時間的に変化する交番磁界が発生する。この交番磁界が撹拌翼1の導電体に鎖交すると、導電体の内部で電磁誘導作用が生じて起電力が誘導される。この起電力によって、導電体に渦状の誘導電流(渦電流)が発生する。渦電流は、導電体の電気抵抗によってジュール熱に変換される。撹拌翼1の導電体に発生したジュール熱は、被処理物20に伝達されることにより、被処理物20を加熱する。
【0045】
このように、実施の形態1に係る加熱冷却撹拌装置100では、撹拌翼1を電磁誘導加熱することで、撹拌翼1から熱を受けて被処理物20を加熱することができる。すなわち、加熱冷却撹拌装置100は、被処理物20を加熱するための熱源を容器21の内部に有している。本願明細書では、このような加熱方式を「内部加熱方式」と称する。これに対して、被処理物20を加熱するための熱源を容器21の外部に有する加熱方式を「外部加熱方式」と称する。
【0046】
内部加熱方式では、撹拌翼1によって被処理物20の撹拌と加熱とを一元化することができるため、被処理物20の撹拌と加熱とが容器21の内外で別々に行なわれる外部加熱方式に比べて、良好な熱伝達特性を得ることができる。これにより、被処理物20の温度の均一化を促進することができる。さらに、加熱時の被処理物20の温度の立上り時間を短くできるため、高速の温度制御が可能となる。
【0047】
特に、実施の形態1に係る加熱冷却撹拌装置100においては、高周波電流の通電部10を、容器21の内部に、撹拌翼1と電気的結合を形成することが可能に配置している。本願明細書では、通電部が容器内に配置されている内部加熱方式を「内部通電型内部加熱方式」とも称する。これに対して、通電部が容器外部に配置されている内部加熱方式を「外部通電型内部加熱方式」とも称する。
【0048】
内部通電型内部加熱方式では、通電部10を撹拌翼1に近接して配置できるため、通電部が発生する交番磁界を撹拌翼1に十分に鎖交させることができる。よって、撹拌翼1の配置位置および形状に制約が生じず、設計の自由度を高くすることができる。
【0049】
また、通電部10は、アルミプレート等の導電体で形成することができるため、撹拌翼1の形状に応じて適当な形状を採ることができる。たとえば通電部10を薄膜の導電体とすれば、通電部10を配置することで撹拌翼1が大きくなることもない。
【0050】
さらに、後述するように、内部通電型内部加熱方式は、外部通電型内部加熱方式に比べて、高い加熱効率を実現し得る。
【0051】
実施の形態1に係る加熱冷却撹拌装置100では、さらに、被処理物20を冷却するための冷媒14を通流させる冷却管13を容器21の内部に有している。本願明細書では、このように被処理物20を冷却するための冷却手段を容器21に有する冷却方式を「内部冷却方式」と称する。これに対して、冷却手段を容器21の外部に有する冷却方式を「外部冷却方式」とも称する。
【0052】
以上説明したように、実施の形態1に係る加熱冷却撹拌装置100は、内部加熱方式および内部冷却方式(以下、まとめて「内部加熱・冷却方式」とも称する)を採用する。以下、内部加熱・冷却方式における熱伝達特性および熱応答特性について、外部加熱方式および外部冷却方式(以下、まとめて「外部加熱・冷却方式」とも称する)における熱伝達特性および熱応答特性と対比しながら考察する。
【0053】
内部加熱・冷却方式とは、図1に示したように、撹拌翼を加熱および冷却することで被処理物を加熱および冷却するものである。一方、外部加熱・冷却方式とは、抵抗ヒータ、蒸気、温水および油などの加熱手段および、冷媒路などの冷却手段を容器(撹拌槽)外部に配置し、撹拌槽壁を加熱および冷却することで被処理物を加熱および冷却するものである。
【0054】
図4は、外部加熱・冷却方式および内部加熱・冷却方式における熱伝達特性および熱応答性を説明するための図である。図4の横軸は撹拌レイノルズ数Reを示し、縦軸はヌッセルト数Nuを示す。
【0055】
なお、撹拌レイノルズ数Reは、容器内部の被処理物の撹拌流れの状況を表わすパラメータであり、Re=dN/νで定義される。dは撹拌翼の幅、Nは撹拌翼の回転数(1/s)、νは動粘性係数(m/s)である。ヌッセルト数Nuは、被処理物への熱の伝わり易さを表わすパラメータであり、Nu=hd/kで定義される。hは伝熱係数(W/mK)、kは熱伝導率(W/mK)である。
【0056】
図4中の直線は、非特許文献2に記載される、外部冷却時における撹拌槽壁と被処理物としての水との間の熱伝達特性を表わす相関式を示している。図4中の丸印は、本願発明者らが撹拌翼の電磁誘導加熱実験で得た測定データであり、図4の左上に示される形状を有する撹拌翼と水との間の加熱時における熱伝達特性を示している。
【0057】
なお、非特許文献2に記載の伝熱相関式は冷却時の熱伝達特性を表わし、本願発明者らの測定データは加熱時の熱伝達特性を表わすものであるが、図4の特性図は基本的には加熱時および冷却時の両方の熱伝達特性を表わすものである。
【0058】
図4を参照して、内部加熱・冷却方式は、外部加熱・冷却方式に比べて、ヌッセルト数Nuが高く、熱伝達性能が良いことが分かる。これは、撹拌翼を加熱および冷却する構成では、被処理物に対して撹拌翼が回転するために、撹拌翼の回転方向において、被処理物と撹拌翼との間に回転速度と同じ大きさの相対的な速度が常に生じているのに対して、撹拌槽壁を加熱および冷却する構成では、撹拌翼が回転していても撹拌槽壁の近傍において、被処理物の粘性のために被処理物の流速が減衰し、撹拌翼の回転速度よりも遅くなるためである。
【0059】
さらに、所定の温度に素早く制御するためには、(i)加熱および冷却時の時定数が小さいこと、または(ii)加熱および冷却時の熱量が大きいことが必要条件とされる。
【0060】
熱伝達特性は、上記(i)の時定数に影響を及ぼす。たとえば、ステップ状に加熱および冷却を切り換えて撹拌翼または撹拌槽を加熱および冷却する場合の熱応答性を考える。一般的に、熱応答性は、時定数τ(sec)で評価され、τ=mCp/(hA)で求められる。
【0061】
ここで、hは伝熱係数(W/mK)、Aは伝熱面積(m)であり、hAは熱コンダクタンス(W/K)、mは撹拌翼または撹拌槽の質量(kg)、Cpは撹拌翼または撹拌槽の比熱(J/kgK)であり、mCpが熱容量(J/K)である。つまり、熱コンダクタンスhAが大きく、熱容量mCpが小さい方が時定数τが小さく、結果的に熱応答性が良い。
【0062】
図4によれば、内部加熱・冷却方式は、外部加熱・冷却方式と比較して、その熱伝達特性が1.3~2.2倍優れており、さらに、実機において、撹拌翼の熱容量は、撹拌槽の熱容量の約1/4以下であると考えられる。この結果、内部加熱・冷却方式の時定数は、外部加熱・冷却方式の時定数の約1/5以下となり、その熱応答性は大幅に改善される。これらの効果は、被処理物の粘度が大きくなるほど、顕著になるものと予想される。
【0063】
特に、実施の形態1に係る加熱冷却撹拌装置100においては、つまり、内部冷却方式では、冷却管13を、撹拌翼1との間で熱交換可能に配置している。そのため、撹拌翼1によって被処理物20の撹拌と冷却とを一元化することができ、冷却効率の向上および装置の小型化を実現することができる。
【0064】
図5は、実施の形態1に係る加熱冷却撹拌装置100における熱伝達経路を概略的に示す図である。図5では、2つの構成要素間の電気的接続または電気的結合が破線で示され、2つの構成要素間の熱的接続が実線で示されている。
【0065】
図5を参照して、給電部3、通電部10および撹拌翼1は電気的に接続されている。これにより、給電部3から高周波電流の供給を受けて通電部10が発生する交番磁界によって撹拌翼1が電磁誘導加熱される。そして、撹拌翼1と被処理物20との間の熱的接続により、被処理物20が加熱される。
【0066】
さらに、通電部10は、撹拌翼1に熱的に接続されるとともに、被処理物20に熱的に接続されている。通電部10に高周波電流を流すと、通電部10の電気抵抗によってジュール熱が発生する。通電部10が発生したジュール熱は、撹拌翼1および被処理物20にそれぞれ伝達される。
【0067】
このように、内部通電型によれば、撹拌翼1が発生するジュール熱に加えて、通電部10が発生するジュール熱を被処理物20の加熱に用いることができる。したがって、投入熱量が同じであれば、内部通電型は、外部通電型に比べてより大きな熱量を被処理物20の加熱に使用することができる。このため、被処理物20の加熱速度を高めることができる。逆に言えば、同じ加熱速度を得るために、内部通電型は、外部通電型に比べて投入熱量を小さくできる。よって、加熱効率が高くなり、消費電力を低減することができる。
【0068】
また、内部通電型は、上述したように、外部通電型に比べて効率が良く、大きな熱量を投入でき、被処理物20の加熱速度が高くできることから、被処理物20の温度制御において高い応答性を実現することができる。
【0069】
冷却管13は、冷却部8に熱的に接続されるとともに、被処理物20に熱的に接続されている。これにより、冷却部8が冷却管13内に冷媒14を循環させると、冷媒14および被処理物20の間で熱交換が行なわれ、被処理物20が冷却される。
【0070】
冷却管13は、さらに、撹拌翼1に熱的に接続されている。よって、冷媒14および撹拌翼1の間で熱交換が行なわれ、撹拌翼1が冷却される。このように、内部冷却方式では、冷媒14を用いて被処理物20および撹拌翼1を冷却できるため、外部冷却方式に比べて、被処理物20の冷却速度を高めることができる。よって、被処理物20の温度制御において高い応答性を実現することができる。
【0071】
以上説明したように、実施の形態1に係る加熱冷却撹拌装置100は、内部通電型内部加熱方式による被処理物の加熱と、内部冷却方式による被処理物の冷却とを実行可能に構成されている。このような構成とすることにより、被処理物の加熱および冷却を必要とする反応操作において、その必要性に応じて、加熱と冷却とを選択的に切り換えて実行することが可能となる。また、給電部3および冷却部8を互いに独立して駆動させることができるため、加熱時間および冷却時間の各々を任意に設定することができる。
【0072】
さらに、上述したように、内部通電型内部加熱方式は高効率かつ高伝熱なことから高い加熱速度を実現する。また、内部冷却方式は高伝熱なことから高い冷却速度を実現する。したがって、加熱および冷却による被処理物の温度制御において高い応答性を発揮することができる。
【0073】
図6に、実施の形態1に係る加熱冷却撹拌装置100による被処理物20の温度制御の一例を示す。図6では、被処理物の加熱および保温と、被処理物の冷却および保温とを、交互に実行する操作が示されている。
【0074】
図6に示す操作において、被処理物の加熱時には、冷却部8を停止させた状態で給電部3を駆動し、通電部10に高周波電流を供給する。そして、被処理物の温度が加熱目標温度に到達すると、給電部3の運転を停止させる。また、被処理物の冷却時には、給電部3を停止させた状態で冷却部8を駆動し、冷却管13内に冷媒14を循環させる。そして、被処理物の温度が冷却目標温度に到達すると、冷却部8の運転を停止させる。
【0075】
図6(A)は、比較例として、外部加熱方式および外部冷却方式を採用した加熱冷却装置を用いて、被処理物の加熱冷却処理を実行したときの、被処理物の温度の時間的変化を示している。図6(B)は、実施の形態1に係る加熱冷却撹拌装置100を用いて、被処理物の加熱冷却処理を実行したときの、被処理物の温度の時間的変化を示している。
【0076】
図6(A)および図6(B)を比較すると、本実施の形態では、比較例に比べて、加熱速度および冷却速度がともに速く、制御応答性に優れていることが分かる。これによると、被処理物の温度を高精度に制御することが可能となる。
【0077】
また、加熱および冷却の各々において、所望の目標温度に高速に制御することができるため、加熱および冷却を高速に切り換えることが可能となる。また、加熱および冷却の各々の処理時間が短縮されることで、1回の加熱冷却処理に要する加熱冷却撹拌装置100の運転時間も短縮される。これにより、1回の加熱冷却処理における加熱冷却撹拌装置100の消費電力を削減することができ、結果的に加熱冷却撹拌装置100のランニングコストの低減が可能となる。
【0078】
[実施の形態2]
実施の形態1に係る加熱冷却撹拌装置100においては、さらに、給電部3および冷却部8を同時に駆動することによって、被処理物の加熱および冷却を並行して実行することができる。これを利用して、容器21の内部において、任意の温度分布を能動的に形成することができる。
【0079】
実施の形態2では、容器21の内部における温度分布の形成に好適な加熱冷却撹拌装置100の構成について説明する。
【0080】
図7は、本発明の実施の形態2に係る加熱冷却撹拌装置100の構成を概略的に示した図である。図7は、実施の形態2に係る加熱冷却撹拌装置100の軸方向AXに沿った断面構造を示している。実施の形態2に係る加熱冷却撹拌装置100は、図1に示した加熱冷却撹拌装置100と比較して、通電部10および冷却管13の配置が異なる。
【0081】
図7を参照して、通電部10は、撹拌翼1の第1の部分110の表面に近接して配置されている。図7の例では、通電部10は、撹拌翼1の第1の部分110の表面に接合されている。実施の形態1で説明したように、撹拌翼1の表面と通電部10との間に閾値以下の大きさの隙間があってもよい。
【0082】
冷却管13は、撹拌翼1の第2の部分120の表面に近接して配置されている。図7の例では、冷却管13は、撹拌翼1の第2の部分120の表面に接合されている。実施の形態1で説明したように、撹拌翼1の表面と冷却管13との間に閾値以下の大きさの隙間があってもよい。
【0083】
図7に示すように、第1の部分110は、第2の部分120よりも、容器21の深さ方向(紙面垂直方向)の上部に位置する。すなわち、通電部10は、容器21の深さ方向の上部に配置され、冷却管13は、容器21の深さ方向の下部に配置されている。
【0084】
給電部3から通電部10に高周波電流を供給すると、電磁誘導加熱作用によって、撹拌翼1の第1の部分110が加熱される。一方、冷却部8が冷却管13内に冷媒14を循環させると、撹拌翼1の第2の部分120が冷却される。これにより、容器21の深さ方向の上部に位置する被処理物20は加熱される一方で、深さ方向の下部に位置する被処理物20は冷却される。その結果、被処理物20全体では、容器21の深さ方向の上側における温度が、深さ方向の下側における温度よりも高くなるという温度分布が形成されることになる。
【0085】
図7の左端には、容器21の深さ方向における被処理物20の温度分布が模式的に示されている。これによると、被処理物20は、容器21の底部から上部に向かって上昇するような温度勾配を有している。
【0086】
なお、図7に示す温度分布のうち、高温側の温度は、給電部3から通電部10に供給される電流の大きさまたは通電時間を可変することにより調整することができる。また、低温側の温度は、冷却部8にて冷却管13内に通流させる冷媒14の温度、流量または通流時間を可変することで調整することができる。すなわち、給電部3および冷却部8を互いに独立して制御することによって、最大温度および最小温度を任意に設定できるため、任意の温度勾配および温度分布に自在に変化させることができる。
【0087】
このように、実施の形態2に係る加熱冷却撹拌装置100においては、給電部3および冷却部8を同時に駆動することによって、容器21の内部に温度分布を能動的に形成することができる。これによれば、たとえば被処理物を結晶化させる処理において、結晶の粒径を制御することが可能となる。
【0088】
結晶化(晶析と呼ばれる)の推進力は、原則として被処理物の濃度と溶解度との濃度差であり、この濃度差を与えるには、冷却もしくは蒸発などの複数の方法がある。代表的には、冷却により溶解度を下降させて結晶を析出させる場合と、加熱蒸発により被処理物の濃度を上げて結晶を析出させる場合とがある。これらの操作により過飽和な状態が作り出されると、結晶化が開始される。図7のように、容器21の深さ方向の上部を高温部分とし、深さ方向の下部を低温部分とする温度分布を形成した場合、低温部分で生成された結晶のうち粒径が大きいものは、容器21の底部に沈下する。一方、粒径が小さい結晶は、撹拌によって容器21の上部に運ばれ、高温部分において溶解される。このサイクルが繰り返されることで、容器21の底部には、一様に粒径が大きい結晶が蓄積されていくことになる。したがって、粒径が均一化された結晶を得ることができる。
【0089】
[実施の形態3]
実施の形態3では、実施の形態1に係る加熱冷却撹拌装置100における通電部10および冷却管13の変形例について説明する。なお、実施の形態3に係る加熱冷却撹拌装置100は、通電部10および冷却管13を除いて、実施の形態1に係る加熱冷却撹拌装置100と同じ構成を備える。
【0090】
図8は、本発明の実施の形態3に係る加熱冷却撹拌装置100の構成を概略的に示した図である。図8は、実施の形態3に係る加熱冷却撹拌装置100の軸方向AXに沿った断面構造を示している。図9は、図8のIX-IX線での断面図である。
【0091】
図8および図9を参照して、実施の形態3に係る加熱冷却撹拌装置100において、通電部10の少なくとも一部分は、撹拌翼1の内部に配置されている。通電部10は、導電体11と、導電体11の外周を覆う絶縁体12とを有している。したがって、通電部10は、撹拌翼1と電気的に絶縁されている。
【0092】
冷却管13の少なくとも一部分は、撹拌翼1の内部に配置されている。具体的には、撹拌翼1の平板部分には、その表面に対して平行な方向に延在する開口部が形成されている。この開口部の一方端部は冷媒路9aに接続され、開口部の他方端部は冷媒路9bに接続されている。これにより、開口部は、冷媒14を通流させる冷却管13として機能し得る。冷却管13を冷媒14が循環することにより、撹拌翼1と冷媒14との間で熱交換を行なうことができるため、撹拌翼1を冷却することができる。
【0093】
図8および図9の例では、冷却管13は、撹拌翼1の平板部分の側部および底部の外周に沿って延在している。通電部10は、撹拌翼1の平板部分に螺旋状に配置されており、その一部分が冷却管13の内部に位置している。通電部10において、導電体11は、たとえばリッツ線などの線径の細い導電線からなる導電コイルを用いることができる。
【0094】
実施の形態3に係る加熱冷却撹拌装置100によれば、実施の形態1に係る加熱冷却撹拌装置100と同様に、内部通電型内部加熱方式による被処理物の加熱と、内部冷却方式による被処理物の冷却とを選択的に切り換えて実行することができる。
【0095】
具体的には、被処理物20の加熱時には、冷却部8を停止させた状態で給電部3を駆動し、通電部10に高周波電流を供給する。一方、被処理物20の冷却時には、給電部3を停止させた状態で冷却部8を駆動し、冷却管13の内部に冷媒14を循環させる。なお、給電部3および冷却部8を互いに独立して駆動させることができるため、加熱時間および冷却時間の各々を任意に設定することができる。
【0096】
あるいは、給電部3および冷却部8を同時に駆動することによって、被処理物20の加熱および冷却を並行して実行することができる。これを利用して、容器21の内部において撹拌翼1ならびに、結果として被処理物20の温度分布を能動的に形成することができる。
【0097】
図8の例では、通電部10に高周波電流を通電させた状態で、冷却管13に冷媒14を循環させると、撹拌翼1の外周部分が冷却される一方で、撹拌翼1の中央部分が加熱される。これにより、撹拌翼1の外周部分には温度が低い部分が形成され、撹拌翼1の中央部分には温度が高い部分が形成されることになる。
【0098】
なお、高温部分の温度は、給電部3から通電部10に供給される電流の大きさまたは通電時間を可変することにより調整することができる。また、低温部分の温度は、冷却部8にて冷却管13内に通流させる冷媒14の温度、流量または通流時間を調整することで調整することができる。すなわち、給電部3および冷却部8を互いに独立して制御することによって、温度勾配を自在に変化させることができる。このように、撹拌翼1自体を加熱および冷却することによって容器21の内部に任意の温度分布を形成することができるため、能動的な加熱冷却手段を実現できる。
【0099】
[実施の形態4]
実施の形態1から3では、通電部10と冷却管13とが互いに別部材として形成される構成について説明したが、通電部10と冷却管13とを一体として形成してもよい。
【0100】
実施の形態4では、通電部および冷却管が一体化された加熱冷却撹拌装置について説明する。
【0101】
図10は、本発明の実施の形態4に係る加熱冷却撹拌装置100の構成を概略的に示した図である。図10は、実施の形態4に係る加熱冷却撹拌装置100の軸方向AXに沿った断面構造を示している。
【0102】
図10を参照して、実施の形態4に係る加熱冷却撹拌装置100は、図1に示した加熱冷却撹拌装置100と比較して、通電部10および導電線7a,7b、ならびに冷却管13および冷媒路9a,9bに代えて、通電部15および中空の導電管19a,19bを備える点が異なる。
【0103】
導電管19a,19bの一方端部はロータリージョイント86に接続されている。ロータリージョイント86は、導電管19aに冷媒14を供給するとともに、導電管19bから排出される冷媒14を、排出管8bを通じて熱交換器82に供給する。
【0104】
導電管19a,19bは、回転軸2の内部に形成された空間を通って容器21の内部に延びている。スリップリング4は、高周波トランス6に電気的に接続されるカーボンブラシ(図示せず)を回転体である導電管19a,19bに面接触させることにより、導電線19a,19bに高周波電流を供給する。
【0105】
通電部15は、容器21の内部に配置されている。容器21の内部において、導電管19aの他方端部は、通電部15の一方端部に電気的に接続されている、導電管19bの他方端部は、通電部15の他方端部に電気的に接続されている。これにより、給電部3から通電部15に対して高周波電流が供給される経路が形成される。
【0106】
図11は、図10のXI-XI線での断面図である。図11を参照して、通電部15は、導電体16(第2導電体)と、導電体16の外周を覆う絶縁体17とを有している。
【0107】
導電体16は、内部に中空部分が設けられた管状の形状を有している。導電体16は、代表的に金属で形成されている。導電体16は、中空部分に冷媒14を通流させることができる構造となっている。導電体16には、たとえばホローコンダクタまたはマイクロチャンネルなどを用いることができる。これにより、冷却部8と通電部15との間を冷媒14が循環する経路が形成される。
【0108】
通電部15は、撹拌翼1との間で熱交換可能に配置されている。実施の形態4では、通電部15は、撹拌翼1の平板部分の表面に近接して配置されている。図11の例では、通電部15は、たとえば接着剤を用いて撹拌翼1に接合されている。ただし、実施の形態1で説明したように、撹拌翼1の表面と通電部15との間に閾値以下の大きさの隙間があってもよい。これにより、撹拌翼1と冷媒14との間で熱交換を行なうことができるため、撹拌翼1を冷却することができる。
【0109】
以上説明したように、実施の形態4に係る加熱冷却撹拌装置100において、通電部15は、内部に冷媒14を通流させるように構成されている。したがって、通電部15は、冷却管としても機能し得る。言い換えれば、冷却管は、導電体で形成されており、給電部3から高周波電流が供給されるように構成されている。すなわち、冷却管は、通電部としても機能し得る。
【0110】
なお、実施の形態4に係る加熱冷却撹拌装置100においても、実施の形態1から3に係る加熱冷却撹拌装置100と同様に、内部通電型内部加熱方式による被処理物の加熱と、内部冷却方式による被処理物の冷却とを実行可能に構成されている。したがって、高い加熱速度および高い冷却速度が実現されるため、加熱および冷却による被処理物の温度制御において高い応答性を発揮することができる。
【0111】
特に、実施の形態4に係る加熱冷却撹拌装置100においては、給電部3と冷却部8とを選択的に切り換えて駆動することで、通電部15を介して、被処理物20の加熱と冷却とを選択的に切り換えて実行することができる。このとき、給電部3および冷却部8を互いに独立して駆動させることができるため、加熱時間および冷却時間の各々を任意に設定することができる。
【0112】
具体的には、被処理物20の加熱時には、冷却部8を停止させた状態で給電部3を駆動し、通電部15に高周波電流を供給する。また、被処理物20の冷却時には、給電部3を停止させた状態で冷却部8を駆動し、通電部15内に冷媒14を循環させる。
【0113】
上述した加熱冷却操作においては、被処理物20の温度を高速制御することができるため、加熱および冷却を高速に切り換えることが可能となる。また、加熱および冷却の各々の処理時間が短縮されるため、1回の加熱冷却処理に要する加熱冷却撹拌装置100の運転時間も短縮される。これにより、加熱冷却撹拌装置100の省電力化が可能となる。
【0114】
図12は、実施の形態4に係る加熱冷却撹拌装置100の他の構成を概略的に示した図である。図12は、実施の形態4に係る加熱冷却撹拌装置100の軸方向AXに沿った断面構造を示している。図13は、図中の線XIII-XIIIに沿った断面図である。
【0115】
図13を参照して、撹拌翼1は、第1の翼部分1Aと、第2の翼部分1Bとを有する。第1の翼部分1Aと第2の翼部分1Bとは軸方向AXに沿って対向するように配置されている.図13の例では、第1の翼部分1Aおよび第2の翼部分1Bは、撹拌翼1の平板部分を軸方向AXに沿って2分割することによって形成されている。
【0116】
通電部15は、第1の翼部分1Aおよび第2の翼部分1Bの間に配置されている。具体的には、通電部15は、第1の翼部分1Aおよび第2の翼部分1Bの少なくとも一方に近接して配置されている。
【0117】
なお、通電部15は、図13に示されるように、コイルの巻き数が1である単巻きコイルであってもよく、コイルの巻き数が2以上である複数巻きコイルであってもよい。
【0118】
図13の例によれば、通電部15は、第1の翼部分1Aの表面および第2の翼部分1Bの表面に接合されているため、加熱時において、通電部15で発生したジュール熱を第1の翼部分1Aおよび第2の翼部分1Bに対して均等に伝達することができる。また、冷却時において、通電部15の内部を通流する冷媒14は、第1の翼部分1Aおよび第2の翼部分1Bから均等に熱を吸収することができる。これにより、撹拌翼1と被処理物20との間の熱伝達率を向上させることができるため、加熱冷却効率を向上させることができる。
【0119】
[実施の形態5]
実施の形態5では、図14から図17を参照して、上述した実施の形態3に係る加熱冷却撹拌装置100に適用され得る撹拌翼、および通電部15の構成例について説明する。加熱冷却撹拌装置100は、内部通電型内部加熱方式および内部冷却方式を採用するため、撹拌翼の位置および形状に対する制約がない。したがって、被処理物の粘度および撹拌翼の回転速度に応じて適当な形状の撹拌翼を用いることができる。
【0120】
最初に、図14および図15を参照して、ディスクタービン翼からなる撹拌翼および通電部15の構成例を説明する。ディスクタービン翼は、主に低粘度の被処理物の撹拌に使用される撹拌翼である。
【0121】
図14(A)は、撹拌翼1を回転軸2の上方から見た図である。図14(A)は、図14(A)中の線XIV-XIVに沿った断面図である。
【0122】
図14(A)に示されるように、撹拌翼1は、その外周に沿って複数枚の羽根が配置された円盤形状を有している。通電部15は撹拌翼1の外周面に巻回されている。通電部10において、導電体16はたとえば導電コイルである。導電コイルはたとえばアルミで形成されている。導電体16の外周を覆う絶縁体17はたとえばアルミナで形成されている。
【0123】
図14(B)を参照して、通電部15は、撹拌翼1の外周面に形成された溝部1a内に配置されている。なお、通電部15を巻回した後、溝部1a内に熱硬化性樹脂を含浸させることにより、撹拌翼1の内部に通電部15を配置することができる。
【0124】
撹拌翼1の外周面に通電部15を巻回すると、撹拌翼1の表面に出っ張りが生じるため、本来の撹拌翼の形状が損なわれてしまう場合がある。このような場合、撹拌翼の動力数が設計値からずれてしまい、撹拌動力も設計値からずれてしまう可能性がある。図14(B)に示すように、通電部15を撹拌翼1に埋め込んだ構成とすることにより、本来の撹拌翼1の形状を損なうことなく、撹拌翼1に近接して通電部15を配置することができる。
【0125】
図15(A)は、撹拌翼1を回転軸2の上方から見た図である。図15(B)は、図15(B)中の線XV-XVに沿った断面図である。
【0126】
図15(A)を参照して、通電部15は、撹拌翼1の平面部分の内部に配置されている。具体的には、図15(B)に示されるように、通電部15は、撹拌翼1の表面の平面部分に形成された溝部1a内に配置されている。通電部15を配置した後、溝部1a内に熱硬化性樹脂を含浸させることにより、撹拌翼1の内部に通電部15を配置するとともに、撹拌翼1の表面を平滑にすることができる。これにより、本来の撹拌翼1の形状を保つことができる。
【0127】
次に、図16および図17を参照して、ヘリカル翼からなる撹拌翼および通電部の構成例を説明する。ヘリカル翼は、主に高粘度の被処理物の撹拌に使用される撹拌翼である。
【0128】
図16は、撹拌翼1を回転軸2に垂直な方向から見た図である。図16を参照して、撹拌翼1は、帯状の翼を螺旋状に配置させたものである。通電部15は帯状の翼の外周面に巻回されている。通電部15において、導電体16はたとえば導電コイルである。通電部15は、撹拌翼1の外周面に形成された溝部(図示せず)内に配置されている。なお、通電部15を巻回した後、溝部内に熱硬化性樹脂を含浸させることにより、撹拌翼1に近接して通電部15を配置させるとともに、撹拌翼1の外周面を平滑にすることができる。
【0129】
容器21は、少なくとも一部分に導電体(第3導電体)が形成されている。容器21の導電体は、通電部15に近い位置に形成されていることが好ましい。通電部15に近い位置とは、通電部15が発生した交番磁界を十分鎖交することができる位置を意味する。図16の例では、容器21の壁面に、通電部15と対向するように導電体を配置することが好ましい。このようにすると、通電部15が発生した交番磁界を容器21の導電体に鎖交させることにより、容器21を電磁誘導加熱することができる。よって、加熱効率を一層向上させることができる。
【0130】
図17(A)は、撹拌翼1を回転軸2に垂直な方向から見た図である。図17(B)は、図中の線XVII-XVIIに沿った断面図である。図17(A)、(B)を参照して、通電部15は、螺旋状の翼に形成された溝部(図示せず)内に配置されている。図15と同様に、図15と同様に、図17においても、通電部15を翼の表面に形成された溝部内に配置することで、本来の撹拌翼1の形状を保つことができる。
【0131】
なお、実施の形態5では、通電部と冷却管とが一体に形成された通電部15の構成例について説明したが、図14および図15のディスクタービン翼および図16および図17のヘリカル翼に対して、通電部10および冷却管13が互いに別部材として形成された構成を適用することも可能である。
【0132】
[実施の形態6]
上述した実施の形態1から4では、通電部10(または通電部15)に高周波電流を供給するための給電部3において、交流電源5と通電部10とを接触させて給電する構成について説明したが、交流電源5から通電部10に非接触で給電する構成としても、実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0133】
図18は、本発明の実施の形態6に係る加熱冷却撹拌装置100の構成を概略的に示した図である。図18は、実施の形態6に係る加熱冷却撹拌装置100の軸方向AXに沿った断面構造を示している。実施の形態6に係る加熱冷却撹拌装置100の基本的構成は、給電部3を除いて、図1に示した加熱冷却撹拌装置100と同じである。
【0134】
実施の形態6において、給電部3は、スリップリング4に代えて、送電コイルL1および受電コイルL2を有している。送電コイルL1は、高周波の交流電力を高周波トランス6から受けると、送電コイルL1の周囲に生成される電磁界を通じて、受電コイルL2へ非接触で送電する。すなわち、送電コイルL1および受電コイルL2は、非接触で電力を伝送する非接触給電を実現する。図18に示されるように、送電コイルL1は、回転軸2の外周を囲うように配置されている。送電コイルL1は、回転軸2の回転に対して静止状態を保ち得る。
【0135】
受電コイルL2は、送電コイルL1から出力される高周波の電力を非接触で受電する。受電コイルL2は、回転軸2の外周を囲うように配置されている。受電コイルL2は、回転軸2と一体的に回転するように構成されている。
【0136】
受電コイルL2の一方端部には、導電線7aが電気的に接続されている。受電コイルL2の他方端部には、導電線7bが電気的に接続されている。これにより、受電コイルL2から導電線7a,7bを通じて通電部10に対して高周波電流が供給される経路が形成される。
【0137】
[加熱冷却撹拌装置の適用例]
上述した実施の形態では、モノマー同士を組み合わせて巨大高分子物質を生成する重合反応器に本発明の加熱冷却撹拌装置を適用する構成について説明したが、本発明の加熱冷却撹拌装置は、重合反応器に限らず、様々な分野に適用することができる。たとえば、下水汚泥からエネルギー源であるメタンガスを回収する汚泥処理装置、有機物を発酵させる発酵処理装置、高粘度物質の脱溶剤、脱モノマーおよび脱揮を行なう蒸発器、食材を加熱冷却しながら撹拌する調理器などに本発明の加熱冷却撹拌装置を適用することができる。
【0138】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0139】
1 撹拌翼、1a 溝部、1A 第1の翼部分、1B 第2の翼部分、2 回転軸、3 給電部、4 スリップリング、5 交流電源、6 高周波トランス、7a,7b,19a,19b 導電線、8 冷却部、8a 供給管、8b 排出管、9a,9b 冷媒路、10,15 通電部、11,16 導電体、12,17 絶縁体、13 冷却管、14 冷媒、20 被処理物、21 容器、22 蓋部、22a 貫通孔、23 封止部材、82 熱交換器、84 ポンプ、86 ロータリージョイント、100 加熱冷却撹拌装置、110 第1の部分、120 第2の部分、L1 送電コイル、L2 受電コイル。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15
図16
図17
図18