(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】雪庇防止装置
(51)【国際特許分類】
E04D 13/00 20060101AFI20220520BHJP
E04H 9/16 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
E04D13/00 C
E04H9/16 A
(21)【出願番号】P 2020002476
(22)【出願日】2020-01-09
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】305038588
【氏名又は名称】株式会社 三和物産
(73)【特許権者】
【識別番号】000175021
【氏名又は名称】三井化学産資株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083437
【氏名又は名称】佐々木 實
(72)【発明者】
【氏名】鈴 木 忠 弘
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-208552(JP,A)
【文献】特開2008-138376(JP,A)
【文献】特開2004-084377(JP,A)
【文献】登録実用新案第3146840(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/00- 3/40
E04D 13/00-15/07
E04H 9/00- 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体ネットが、平網部、半筒網部および掬い網部が連続する1枚の合成樹脂製ネットからなり、その中、平網部が、対象建築物の屋根の棟がわに配される棟がわ端に繋着部が設けられ、軒先端がわに端鈎が設けられ、半筒網部が、当該平網部の軒先端がわから空中に向け半円筒形状に延伸され、掬い網部が、当該半筒網部から該屋根の棟がわに向け延伸された先端を、当該平網部の棟がわ端と軒先端がわとの間の中途部に積層状に結合され、雪の堰き止め迎角姿勢とされ、同平網部の当該掬い網部が積層状に結合された中途部から当該半筒網部および当該掬い網部に至る範囲がトンネル状ループ網部分となり、該トンネル状ループ網部分内に円筒型骨格が内装されてなることを特徴とする雪庇防止装置。
【請求項2】
装置本体ネットが、平網部、半筒網部および掬い網部が連続する1枚の合成樹脂製ネットからなり、その中、平網部が、対象建築物の屋根の棟がわに配される棟がわ端に繋着部が設けられ、軒先端がわに端鈎が設けられ、半筒網部が、当該平網部の軒先端がわから空中に向け半円筒形状に延伸され、掬い網部が、当該半筒網部から該屋根の棟がわに向け延伸された先端を、当該平網部の棟がわ端と軒先端がわとの間の中途部に積層状に結合され、雪の堰き止め迎角姿勢とされ、同平網部の該掬い網部が積層状に結合された中途部から当該半筒網部および当該掬い網部に至る範囲がトンネル状ループ網部分となり、該トンネル状ループ網部分内に円筒型骨格が内装され、対象建築物の屋根を滑り落ちようとする積雪が、当該平網部の表面上に乗り上げ、当掬い網部に緩やかに堰き止められ、当該トンネル状ループ網部分が弾性変形して積雪の荷重を分散し、円筒型骨格が同トンネル状ループ網部分を内がわから緩やかに支え、
当該屋根の表面上と積雪の底面との間に通気を確保し、融雪を促進するものとされたことを特徴とする雪庇防止装置。
【請求項3】
装置本体ネットが、対象建築物の外壁の直上に対応する屋根葺き材の表面上の棟から軒先までの間の中途部から、該中途部の直下となる軒先端に至る長さに設定され、裏面が当該屋根葺き材の表面に対峙し、表面が空に向けられ、棟がわ端が屋根の棟がわに向けられ、該棟がわ端に屋根への繋着部が設けられ、当該軒先端がわに該屋根の軒先端に係合する端鈎が設けられた平網部と、該平網部の軒先端がわから空中に向け半円筒形状に延伸され、屋根の棟がわに向け180°湾曲された半筒網部と、該半筒網部の空中部分から延伸され該屋根の棟がわに向けられた先端が、当該平網部の表面がわの棟がわ端と軒先端がわとの間の中途部に対し積層状に結合され、雪の堰き止め迎角姿勢とされた掬い網部とを有し、これら平網部、半筒網部および掬い網部からなる装置本体ネットが、1枚の矩形シート状で弾発性を有する合成樹脂製ネットからなり、当該平網部の棟がわ端と軒先端がわとの間の中途部から軒先端がわ、同平網部の軒先端がわから、これら半筒網部および掬い網部に至る範囲がトンネル状ループ網部分となり、該トンネル状ループ網部分内には、仮想水平軸心の回りの同トンネル状ループ網部分の内径よりも僅かに小さな外径に設定された円筒型骨格が、水平姿勢に内装され、当該トンネル状ループ網部分と当該円筒型骨格との複数箇所が結合されたものとしてなることを特徴とする雪庇防止装置。
【請求項4】
対象建築物の屋根よりも熱伝導率の高い伝熱線状体からなり、請求項1ないし3何れか一記載雪庇防止装置の平網部の裏面下に沿って棟がわ端から軒先端がわまで延伸された伝熱線状体が設けられ、該伝熱線状体の棟がわ端が、該平網部の棟がわ端に結合され、該伝熱線状体の棟がわ端に繋着部が結合され、該伝熱線状体の軒先端がわに、該屋根の軒先端に係合する端鈎が一体化されたスガモレ防止金具とされ、該スガモレ防止金具の該伝熱線状体の棟がわ端ないし端鈎の間の中途部が該平網部に結合されてなる、請求項1ないし3何れか一記載の雪庇防止装置。
【請求項5】
トンネル状ループ網部分の棟方向の断面形状が、涙滴形断面形状に設定されてなる、請求項1ないし4何れか一記載の雪庇防止装置。
【請求項6】
円筒型骨格が、トンネル状ループ網部分の半筒網部の内径よりも僅かに小さな直径、該トンネル状ループ網部分の棟方向の幅に一致する全長、および、該全長に渡りピッチが一定に設定されたコイル型骨格とされた、請求項1ないし5何れか一記載の雪庇防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築物の屋根に積もった雪を落下させずに自然に消滅させてしまう技術に関連するものであり、既存または新設を問わず何れの屋根にも設置可能であって、しかも屋根軒先に発生する雪庇や、雪庇に伴って発生するスガモレ防止にも繋がる雪庇防止装置を製造、販売する分野を初め、その分野には属していないものの、そこでの技術的思想の創作内容を取り入れたと同定されるような類いのものを製造、提供する分野についてまでをも含むのは勿論のこと、それらの分野に係わって行う輸送、保管、組み立ておよび設置に必要となる設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
一般的住宅の切妻屋根や寄棟屋根の外、招き、片流れ、腰折、下屋付きなどといった勾配の付いた様々な屋根には、該屋根葺き材上に降り積もった雪が、日中の気温の上昇によって雪崩現象を発生し、軒先下まで一気に滑落して危険を伴うため、その屋根葺き材上の軒先寄りとなる複数適所に雪留め金具が設けられており、これら雪留め金具によって軒先寄りの屋根葺き材上に留められた雪塊は、日中の気温の上昇による表面的な融雪と、夜間の気温の低下による再凍結とを繰り返し、軒先付近に次第に土手状の雪庇を生長させることとなり、これを放置すると、軒先よりも外がわに張り出した雪庇部分が、自らの重みに耐えられずに、突然地上に落下し、付近の地上の施設や設置物または歩行者などに当たってしまうと大きな被害を生じる虞があった。
【0003】
また、一般的住宅の屋根葺き材上に積もった雪が、日中の気温の上昇に伴って解け出すと、その融雪水が、軒先の屋根葺き材上に積もって固化、土手状に隆起する雪庇によって堰き止められ、行き場を失ってしまい、この屋根葺き材の接合部などの僅かな隙間を伝って屋内に侵入、流出し、躯体構造や室内備品、家財道具などに多大な被害を及ぼす、所謂スガモレ現象を発生してしまう原因となっていた。
【0004】
(従来の技術)
こうした状況を反映し、その打開策となるような提案もこれまでに散見されない訳ではない。
例えば、下記の特許文献1(1)に提案されているものに代表されるように、屋根と建物壁面の延長線とが交わる部分の近傍の屋根の上部から軒先に向かって、電熱線または端部に発熱部を設けたヒートパイプを傾斜して配置して、少なくともその先端側を軒先に接触させると共に先端部を空中に突出させて取付け、この電熱線またはヒートパイプを軒先に直交して所定の間隔で複数本取付けると共に、前記電熱線またはヒートパイプの発熱部に給電線を接続されてなり、雪を積極的に融かすのではなく、屋根に接触している雪が融けて流れ出る融雪水を凍らせず、空中に導く穴を確保するだけの僅かのエネルギーがあれば良く、設備費も運転コストも安く極めて経済的であり、しかも氷の成長とダムの形成を防止し、大部分の融雪水を空中に導くから、スガモレを確実に防止できると共に雪を速く沈ませることができ、また軒先の先端でくびれたツララを積極的に形成するから、雪崩による危険を少なくすることができるものとされた屋根融雪装置や、同特許文献1(2)に見られるような、矩形状の平面格子部に屋根面への止着部を設けると共に、一端側に膨出格子部を設けた枠体と、該枠体に沿って配設した合成樹脂製ネットとからなり、前記枠体の膨出格子部側が屋根面の低位側となるように設置するようにしてなり、軒先に沿って設置すれば、屋根面からの落氷雪を防止しつつ、その融水を屋根面へ落下させ屋根面での流下を増大させ、氷柱、雪庇やスガモレの発生を抑制し、また、合成樹脂製ネットの糸が雪の結晶同士の凝固を分断することから、氷柱や雪庇の成長を防止することになり、更に、軽量な合成樹脂製ネットを使用することにより、屋根面への荷重負担を軽減化することができるものとされた屋根用落雪防止装置などが散見される。
【0005】
しかし、前者特許文献1(1)に示されているような屋根融雪装置などは、屋根面の軒先に雪庇が生長するのを防止することはできるものの、屋根面の積雪が、日中の気温の上昇などに伴って棟がわから軒先に向けて一気に滑り出す現象を効果的に堰き止めることができないという欠点を残すものであり、また、特許文献1(2)の屋根用落雪防止装置などは、合成樹脂製ネットが設置される範囲の略全面に渡って平面格子部および膨出格子部からなる枠体が設けられており、屋根面への荷重負担を軽減する効果が貧しく、しかも積雪を受け止める合成樹脂製ネットが、硬質な枠体に支えられているため、屋根面を滑り移動してくる積雪の荷重を分散することができず、金属製の網に比べて強度の劣るこれら合成樹脂製ネットは、枠体と積雪との間で大きな剪断力を受け、応力の集中によって破損してしまう虞が極めて高くなるという弱点を有していた。
【文献】(1)特開平6-42122号公報 (2)特開2008-138376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(問題意識)
上述したとおり、従前までに提案のある建築物の屋根の軒先に電熱線またはヒートパイプが設置された屋根融雪装置などは、建築物の屋根から積雪や雪庇などが落下するのを防止する効果が弱く、また、枠体に対して合成樹脂製ネットが組み合わせられた屋根用落雪防止装置などは、合成樹脂製ネットを支える枠体が、建築物の屋根への荷重負担を大きくし、建築物の屋根に対し強固に固定された枠体が、屋根全体の重量増加を招き、更に、屋根の表面上を滑り落ちる積雪を堰き止める際の静的荷重や動的荷重および振動などが緩衝および減衰されることなく直接的に屋根に伝わるため、屋根およびその葺き材に大きな負担となってしまう場合があり、また、重量物となる枠体は、生産、保管、輸送および屋根上への設置までの各段階で、大きな作業負担を強いるものとなり、更にまた、枠体が、合成樹脂製ネットの柔軟な変形を強制的に抑止してしまうから、合成樹脂製ネットの枠体に接触する部分に荷重が集中し、剪断力や摩耗などを受け易いなどの欠点に着目し、装置全体の構造を簡素化して製造容易であって安価に提供、普及を図ることができ、且つ更に軽量化が可能で、対象建築物の屋根に掛かる荷重負担を大幅に軽減することができる上、屋根の表面上を滑り落ちる積雪を堰き止める際の静的荷重や動的荷重および振動などをより効果的に緩衝および減衰し、屋根に加わる負担を大幅に軽減する上、耐久強度に優れ、屋根からの落雪や、雪庇の発生およびスガモレをより確実に防止できる新規な雪庇防止装置の開発の可能性を痛感するに至ったものである。
【0007】
(発明の目的)
そこで、この発明は、屋根からの落雪や、雪庇の発生およびスガモレ現象を、より確実に防止できる上、屋根の表面上を滑り落ちる積雪の静的荷重や動的荷重および振動などを更に効果的に緩衝および減衰し、屋根への動的静的荷重負担を大幅に軽減する新たな雪庇防止技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に亘る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の雪庇防止装置を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の雪庇防止装置は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、装置本体ネットが、平網部、半筒網部および掬い網部が連続する1枚の合成樹脂製ネットからなり、その中、平網部が、対象建築物の屋根の棟がわに配される棟がわ端に繋着部が設けられ、軒先端がわに端鈎が設けられ、半筒網部が、当該平網部の軒先端がわから空中に向け半円筒形状に延伸され、掬い網部が、当該半筒網部から該屋根の棟がわに向け延伸された先端を、当該平網部の棟がわ端と軒先端がわとの間の中途部に積層状に結合され、雪の堰き止め迎角姿勢とされ、同平網部の当該掬い網部が積層状に結合された中途部から当該半筒網部および当該掬い網部に至る範囲がトンネル状ループ網部分となり、該トンネル状ループ網部分内に円筒型骨格が内装されてなるものとした構成を要旨とする雪庇防止装置である。
【0009】
この基本的な構成からなる雪庇防止装置は、その表現を変えて示すならば、装置本体ネットが、平網部、半筒網部および掬い網部が連続する1枚の合成樹脂製ネットからなり、その中、平網部が、対象建築物の屋根の棟がわに配される棟がわ端に繋着部が設けられ、軒先端がわに端鈎が設けられ、半筒網部が、当該平網部の軒先端がわから空中に向け半円筒形状に延伸され、掬い網部が、当該半筒網部から該屋根の棟がわに向け延伸された先端を、当該平網部の棟がわ端と軒先端がわとの間の中途部に積層状に結合され、雪の堰き止め迎角姿勢とされ、同平網部の該掬い網部が積層状に結合された中途部から当該半筒網部および当該掬い網部に至る範囲がトンネル状ループ網部分となり、該トンネル状ループ網部分内に円筒型骨格が内装され、対象建築物の屋根を滑り落ちようとする積雪が、当該平網部の表面上に乗り上げ、当掬い網部に緩やかに堰き止められ、当該トンネル状ループ網部分が弾性変形して積雪の荷重を分散し、円筒型骨格が同トンネル状ループ網部分を内がわから緩やかに支え、当該屋根の表面上と積雪の底面との間に通気を確保し、融雪を促進するものとされた構成からなる雪庇防止装置となる。
【0010】
より具体的には、装置本体ネットが、対象建築物の外壁の直上に対応する屋根葺き材の表面上の棟から軒先までの間の中途部から、該中途部の直下となる軒先端に至る長さに設定され、裏面が当該葺き材の表面に対峙し、表面が空に向けられ、棟がわ端が屋根の棟がわに向けられ、該棟がわ端に屋根への繋着部が設けられ、当該軒先端がわに該屋根の軒先端に係合する端鈎が設けられた平網部と、該平網部の軒先端がわから空中に向け半円筒形状に延伸され、該屋根の棟がわに向け180°湾曲された半筒網部と、該半筒網部の空中部分から延伸され該屋根の棟がわに向けられた先端が、当該平網部の表面がわの棟がわ端と軒先端がわとの間の中途部に対し積層状に結合され、雪の堰き止め迎角姿勢とされた掬い網部とを有し、これら平網部、半筒網部および掬い網部からなる装置本体ネットが1枚の矩形シート状で弾発性を有する合成樹脂製ネットからなり、当該平網部の棟がわ端と軒先端がわとの間の中途部から軒先端がわ、同平網部の軒先端がわから当該半筒網部および当該掬い網部に至る範囲がトンネル状ループ網部分となり、該トンネル状ループ網部分内には、仮想水平軸心の回りの同トンネル状ループ網部分の内径よりも僅かに小さな外径に設定された円筒型骨格が、水平姿勢に内装され、当該トンネル状ループ網部分と当該円筒型骨格との複数箇所が結合されたものとした構成からなる雪庇防止装置となる。
【発明の効果】
【0011】
以上のとおり、この発明の雪庇防止装置によれば、従前までの装置の全体を支持するための金属製や強化樹脂製などの枠体が対象建築物の屋根に設置され、該枠体に対し合成樹脂製ネットが張設されてなるものとは違い、上記したとおり、重量増加の要因となっていた当該枠体を廃止し、主要な部分が合成樹脂製ネットからなり、遙かに軽量で柔軟性に富むという固有の特徴ある構成から、対象建築物の屋根の荷重負担を格段に軽減することができ、しかも、生産から保管、輸送、および屋根上への設置までの各段階の作業負担を大幅に軽減するものとなり、更に、円筒型骨格が内装されたトンネル状ループ網部分は、その掬い網部で、当該屋根の表面上を滑り落ちる積雪を、弾発力を持ってしなやかに堰き止めるから、これら滑り落ちる積雪の静的荷重や動的荷重および振動などをより効果的に緩衝および減衰し、対象建築物の屋根に過大な荷重負担を掛けず、更に、当該掬い網部に加わる積雪の荷重を、トンネル状ループ網部分全体に分散し、当該円筒型骨格が、該トンネル状ループ網部分の内がわから緩やかな支持力を発揮するから、合成樹脂製ネットの耐久強度が高められ、廉価且つ簡素な構造でありながら、屋根と積雪との間に合成樹脂製ネットが介在されることによって通気性が確保され、融雪を促進し、屋根からの落雪や、雪庇の発生およびスガモレを、より一層確実に防止することができるものになるという秀でた特徴が得られるものである。
【0012】
加えて、この発明の雪庇防止装置の装置本体ネットの平網部が、対象建築物の外壁の直上に対応する屋根葺き材の表面上の棟から軒先端までの間の中途部から、該中途部の直下となる軒先端に至る長さに設定されたものによれば、当該雪庇防止装置が、対象建築物の屋根の軒先基部から軒先端までの必要にして最小限の範囲に設置されるから、装置本体ネットの小型化および軽量化を最大に達成することができる上、落雪や雪庇の発生およびスガモレを確実に防止することができるものとなる。
【0013】
更に、この発明の雪庇防止装置は、装置本体ネットの平網部の裏面下に沿って棟がわ端から軒先端がわまで延伸されたスガモレ防止金具が設けられたものとされたことにより、人為的な外部エネルギーの供給を受けずとも、該スガモレ防止金具が積雪の融雪を促進し、該スガモレ防止金具の伝熱線状体の周囲の積雪を消雪し、屋根と積雪との間に、棟がわから軒先端がわに縦貫された排水路を形成し、当該スガモレ防止金具よりも棟がわの積雪の融雪水を格段に速やかに軒先端まで排水し、スガモレ現象をより確実に防止することができる。
表現を変えて示すならば、トンネル状ループ網部分の棟方向の断面形状が、涙滴形断面形状に設定されてなるこの発明の雪庇防止装置によると、積雪から受けた荷重をトンネル状ループ網部分の全体に分散するように受け止めることができ、円筒型骨格が、内がわから半筒網部の半円筒形状を維持するよう支持するから、該トンネル状ループ網部分の形状を緩やかに維持し、一部に応力が集中してしまうのを未然に防止し、折損などの破損に至るのを防止できるものとなる。
【0014】
更には、該円筒型骨格が、このトンネル状ループ網部分の半筒網部の内径よりも僅かに小さな直径、該トンネル状ループ網部分の全幅に一致する全長、および、該全長に渡ってピッチが一定に設定されたコイル型骨格とされたものにあっては、円筒型骨格に必要とされる支持強度を最小限の構成によって達成可能になる上に、トンネル状ループ網部分の半筒網部に対しては、該半筒網部を設けた装置本体ネットを先に形成しておき、その半筒網部に対し、後からこのコイル型骨格を半筒網部の仮想水平軸心(筒状部軸心)方向何かの端から挿入、螺旋進行方向に向けて回転させながら挿入、組み込み、この発明の雪庇防止装置に完成することもできるから、簡便な組立て工程によって完成させた安価なもので、より簡素且つ軽量化されたものとすることができるという秀でた形状的特徴を有するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
この発明の雪庇防止装置の装置本体ネットは、雪庇防止装置の主要な構成要素となり、該雪庇防止装置の全体的な形状および強度を維持し、積雪を堰き止め、対象建築物の屋根と積雪との間に介在して通気性および排水性を確保する機能を分担し、平網部、半筒網部および掬い網部が連続する1枚の合成樹脂製ネットからなるものとすべきであり、この合成樹脂製ネットは、この発明の雪庇防止装置の主要部分をなし、盛土や地盤補強、法面保護、ジオグリッド、ジオネットなどの土木工事を目的として開発された土木用合成樹脂製ネット、または、土木用合成樹脂製ネットと同等の形状および強度を有するものとして製造された、例えば合成樹脂製の防鳥ネットなどの土木用以外の目的で製造された合成樹脂製ネットとすることが可能であり、より具体的には、例えばポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの高分子素材を原材料とする高強度プラスチック製網とすることができ、より具体的には、トリカルネット(登録商標)、ユカロンネット(商品名)、テンサー(登録商標)などの土木用合成樹脂製ネットとすることができる。
【0016】
該装置本体ネットは、後述する実施例にも示しているが、例えば、合成樹脂製ネットの網の目の糸部の表裏面間の厚みが1mmないし7mmとされ、網の目1個の孔径が5mmないし100mm、より望ましくは10mmないし50mmに設定されてなるものとするのが良く、該網の目の糸部の表裏面間の厚みが1mm未満のものは、充分な強度および弾発力が得られず、7mmを超えたものは、柔軟性が得られ憎くなってしまうという欠点を生じ、網の目1個の孔径が5mm未満のものは充分な通気性および排水性が得られず、網の目1個の孔径が100mmを超えたものは積雪を堰き止める作用が低下してしまうという欠点を生じる虞があるという理由から、網の目1個の孔径は10mmないし50mmに設定されてなるものとするのが良いということができるものの、これらに限定されず、該合成樹脂製ネットの網の目の糸部の表裏面間の厚みおよび網の目1個の孔径は、自由に選択されたものとすることができる。
【0017】
装置本体ネットの平網部は、対象建築物の屋根の棟から軒先端までの間の中途部から、該中途部の直下となる軒先端に至る範囲の屋根に固定され、積雪との間に摩擦力をもって介在し、積雪の滑落を阻止すると共に、積雪の底面と該屋根との間に通気性および排水性を確保可能とし、同屋根上の積雪の融雪、消雪および融雪水の排水を促進可能とする機能を担い、対象建築物の屋根の棟がわに配される棟がわ端に繋着部が設けられ、軒先端がわに端鈎が設けられたものとしなければならず、より具体的には、対象建築物の屋根葺き材の表面上の棟から軒先端までの間の中途部から、該中途部の直下となる軒先端に至る長さに設定され、裏面が該葺き材の表面に対峙し、表面が空に向けられ、棟がわ端が該屋根の棟がわに向けられ、該棟がわ端に屋根への繋着部が設けられ、該屋根の軒先端がわに配される軒先がわ端に同屋根の軒先端に係合する端鈎が設けられたものとすべきである。
【0018】
この平網部を、更に、具体的に示すと、対象建築物の外壁の直上に対応する屋根葺き材の表面上の棟から軒先端までの間の中途部から、該中途部の直下となる軒先端に至る長さに設定され、裏面が屋根葺き材の表面に対峙し、表面が空に向けられ、棟がわ端が、屋根の棟がわに向けられ、該棟がわ端に屋根への繋着部が設けられ、該軒先端がわに屋根の軒先端に係合する端鈎が設けられたものとするのが良く、これは、屋根の棟から軒先基部に至る範囲は、対象建築物の屋内からの熱が屋根に伝わり易く、屋根上の積雪が効果的に融雪されるが、軒先基部から軒先端に至る範囲には、屋内からの熱が伝わらず融雪され難いという性質があるため、軒先基部から軒先端に至る範囲に平網部が配設されたものとするのが望ましいという理由から採用された構造であり、また、対象建築物の屋根の棟方向となる左右幅寸法は、対象建築物の屋根の棟方向幅に合わせて自由に設定することが可能であり、設置作業性やメンテナンス作業性などを考慮すると、例えば2mの棟方向単位幅に設定されたものとすることができ、後述する実施例にも示すように、これら繋着部または端鈎の少なくとも何れか一が、スガモレ防止金具の伝熱線状体の棟がわ端に設けられた繋着部、または、伝熱線状体の軒先端がわに設けられた端鈎の何れか一に置き換えられたものとすることが可能である。
【0019】
この平網部は、該平網部の棟がわ端と軒先端がわとの間の中途部から、軒先端がわの半筒網部に至る部分までの範囲が、トンネル状ループ網部分の一部を構成するものとなり、表現を変えると、この平網部の、掬い網の先端が結合された該平網部の棟がわ端と軒先端がわとの間の中途部から、当該平網部の棟がわ端までの範囲が、該トンネル状ループ網部分の対象建築物の屋根に吊り下げ支持する部分であり、しかも屋根上を滑り移動して来る積雪を、当該トンネル状ループ網部分の掬い網部に向けて誘導する案内用の下敷き部分になる範囲であるということができる。
【0020】
装置本体ネットのトンネル状ループ網部分は、対象建築物の屋根上の積雪が、棟がわから軒先端に向けて滑り移動して来るのを、しなやかに圧縮変形させながら堰き止め、屋根を滑り落ちる積雪の静的荷重や動的荷重および振動を、弾性的に変形しながら、より効果的に緩衝および減衰するものとなり、しかも積雪と屋根との間に介在し、通気性および排水性を確保可能とし、これら屋根上の積雪の融雪、消雪および融雪水の排水を促進可能とする機能を担い、平網部の棟がわ端と軒先端がわとの間の中途部から軒先端がわ、該平網部の軒先端がわから半筒網部および掬い網部に至る範囲がトンネル状ループ網部分となり、該トンネル状ループ網部分内には、仮想水平軸心の回りの同トンネル状ループ網部分の内径よりも僅かに小さな外径に設定された円筒型骨格が、水平姿勢に内装され、当該トンネル状ループ網部分と円筒型骨格との複数箇所が結合されたものとしなければならず、より具体的には、後述する実施例にも示しているように、平網部の棟がわ端と軒先端がわとの間の中途部から軒先端がわ、この平網部の軒先端がわから半筒網部および掬い網部に至る範囲が、半筒網部の空がわに湾曲された部分から延伸され、屋根の棟がわに向けられた掬い網部の先端が、平網部の表面がわの棟がわ端と軒先端がわとの間の中途部に対し、雪の堰き止め迎角をもって積層状となるよう結合され、トンネル状ループ網部分が形成されたものとすべきである。
【0021】
トンネル状ループ網部分の半筒網部は、該トンネル状ループ網部分の下端がわ(最も軒先端がわ)の部分を弾性的に保持し、平網部の軒先端がわと掬い網部の軒先端がわとを互いの引張強度を維持するよう強固に連結すると共に、当該トンネル状ループ網部分の直径方向からの外的荷重を弾発的に変形しながら、しなやかに受け止めるよう、積雪荷重などの外的荷重を分散可能とする機能を担い、このトンネル状ループ網部分内に内装される円筒型骨格の外径よりも僅かに大きな内径のR形状を有するものとしなければならず、後述する実施例にも示しているが、平網部および掬い網部が互いに1枚の矩形シート状の合成樹脂製ネットからなるものとするのが望ましいが、これら平網部該半筒網部および掬い網部が、夫々1枚ずつの合計複数枚の合成樹脂製ネットからなり、互いに連結されて当該トンネル状ループ網部分が設けられたものとすることが可能である。
【0022】
トンネル状ループ網部分の掬い網部は、対象建築物の屋根の棟から軒先端がわへ滑る積雪を、堰き止め迎角をもって堰き止め、これら堰き止めた積雪を、その屋根から僅かに浮上させ、積雪の下がわの通気性および排水性を確保可能とし、この屋根上の積雪の融雪、消雪および融雪水の排水を促進可能とする機能を担い、当該トンネル状ループ網部分の半筒網部の空がわに湾曲された部分から延伸され、屋根の棟がわに向けられた先端を、平網部の表面がわの棟がわ端と軒先端がわとの間の中途部に対し連結されたものとしなければならず、これら平網部該半筒網部および掬い網部が、互いに1枚の矩形シート状の合成樹脂製ネットからなるものとするのが望ましいものの、平網部および半筒網部が、1枚の合成樹脂製ネットからなり、当該掬い網部だけが別の1枚の合成樹脂製ネットからなり、合計2枚の合成樹脂製ネットが互いに連結されてトンネル状ループ網部分が設けられてなる装置本体ネットとすることも可能であって、堰き止め迎角が20°ないし60°に設定されたものとすることができるが、当該トンネル状ループ網部分が過大な荷重を受けずに、屋根を滑り落ちる積雪の静的荷重や動的荷重および振動を、より効果的に緩衝および減衰すると共に、屋根を滑り落ちる積雪をより確実に堰き止めるようにするには、後述する実施例に示すように35°ないし45°に設定されたものとするのが良いといえる。
【0023】
円筒型骨格は、トンネル状ループ網部分を内部から補強し、対象建築物の屋根の棟から軒先端がわへ滑る積雪が、該トンネル状ループ網部分の直径を押し潰そうとする圧力や衝撃力などに抗するよう、このトンネル状ループ網部分を内がわから半筒網部の形状を維持するよう強化すると共に、当該トンネル状ループ網部分の内がわの通気性および排水性を確保可能とする機能を分担し、仮想水平軸心の回りのトンネル状ループ網部分の内径よりも僅かに小さな外径に設定されたものとしなければならず、金属や強化樹脂などの線、棒またはワイヤーなどが格子状に結合された矩形状シート材が、円筒型に組み立てられたものとすることができる外、ステンレス、防錆被膜を有する鋼、そのたの金属、強化樹脂などの何れかの線、棒またはワイヤーなどからなるコイル型骨格とすることが可能であり、後述する実施例にも示すとおり、該トンネル状ループ網部分の半筒網部の内径が11cmに設定され、コイル型骨格は、外径7mmの鋼線が、仮想水平軸心回りの外径10cm、ピッチ10cmのコイル形に成形され、当該コイル型骨格の全体に合成樹脂皮膜が密閉状に被着されてなるものとすることができ、更にまた、このトンネル状ループ網部分の内径、および、コイル型骨格の線材、棒材などの直径(外径)、コイル形の外径およびピッチなどの各部寸法は、これに限定されず、当該トンネル状ループ網部分の内径は、自由に設定することも可能であり、更に、当該コイル型骨格は、このトンネル状ループ網部分の内径よりも僅かに小さな外径に設定されたものとするのが良いと言える。
【0024】
スガモレ防止金具の伝熱線状体は、電力や給湯などの外部エネルギーの人為的供給を要さずとも、対象建築物の屋根上の積雪の底部の、該屋根の棟から軒先端までの間の中途部から、該中途部の直下となる軒先端に至る棒状範囲に、外気や日光などの自然現象によって生じる外部の熱や、対象建築物の屋内から該屋根に伝わる暖房伝達熱などを効率的に伝達して融雪し、積雪の底部に該屋根の棟から軒先端までの間の中途部から、該中途部の直下となる軒先端に達する排水路を形成し、自動的に融雪および融雪水の排水を可能とする機能を分担し、対象建築物の屋根葺き材よりも熱伝導率の高い耐水素材製のものとしなければならず、例えば、ステンレス、アルミニウム、チタン、合成樹脂被覆が施された鋼や銅、その他の高熱伝導率素材製の直線棒、細長いコイル、管などからなるものとするのが良く、後述する実施例にも示したとおり、伝熱線状体は、この発明の雪庇防止装置の平網部の裏面下に沿って棟がわ端から軒先端がわまで延伸され、該伝熱線状体の棟がわ端が、この平網部の棟がわ端に結合され、当該伝熱線状体の棟がわ端に繋着部が結合され、同伝熱線状体の軒先端がわに、この屋根の軒先端に係合する端鈎を一体化したものとすることができる。
【0025】
繋着部は、この発明の雪庇防止装置を対象建築物の屋根の棟から軒先端までの間の中途部に固定し、また、スガモレ防止金具が設けられたこの発明の雪庇防止装置の場合には、この発明の雪庇防止装置に組み込まれたスガモレ防止金具の棟がわ端を対象建築物の屋根の棟から軒先端までの間の中途部に固定する機能を担い、屋根葺き材の間から該屋根の野地板や瓦棒、垂木などの構造部分に結合されたものとすることができる外、屋根葺き材の表面上に露出するよう設置されている雪止め金具や、その他の繋着用の金具類などに繋着するものとすべきであり、軒先端に係合された端鈎に引張力を加えるよう棟がわに引き揚げる方向の張力を加えるよう、屋根の棟から軒先端までの間の中途部に確りと繋着されたものとするのが良く、後述する実施例にも示しているように、平網部またはスガモレ防止金具の少なくとも何れか一方の棟がわ端に結合された金属線や連結金具などとすることもできる。
【0026】
端鈎は、この発明の雪庇防止装置対象建築物の屋根の軒先端に係合し、また、スガモレ防止金具が設けられたこの発明の雪庇防止装置の場合には、この発明の雪庇防止装置に組み込まれたスガモレ防止金具の軒先がわを対象建築物の屋根の軒先端に係合する機能を担い、屋根の軒先端に係合する鈎形状のものとされ、繋着部が棟がわへの引張力を発揮するよう該屋根に繋着された場合に、該繋着部の引張力に抗して軒先端への係合を維持できる強度を持った鈎形状のものとしなければならず、平網部の軒先端がわに設けられた鈎金具とすることができる外、この発明の雪庇防止装置の棟がわに棟方向に沿って点在するよう設けられた複数個の繋着部と、該雪庇防止装置の端がわに棟方向に沿って点在するよう設けられた複数個の端鈎との牽引力が互いに均衡し、当該雪庇防止装置が屋根に対して傾いたり、捩れたりしないよう配設されたものとしなければならず、例えば、繋着部と端鈎とが、屋根の棟から軒先端に至る一直線上に配されたものとすることが可能であり、また、例えば棟方向に間隔を隔てて並んで配設された2個を1組とされた繋着部と、この1組の繋着部の間の棟方向の中央位置の直下に対応することとなる軒先端に係合された端鈎とが、仮想される二等辺逆三角形の各角部に夫々配されたものとすることも可能である。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図面は、この発明の雪庇防止装置の技術的思想を具現化した代表的な一実施例を示すものである。
【
図2】分解された雪庇防止装置を示す斜視図である。
【
図3】合成樹脂製ネットを示す平面図および側面図である。
【
図4】スガモレ防止金具の要部を示す斜視図である。
【
図5】屋根に設置されたスガモレ防止金具を有する雪庇防止装置を示す斜視図である。
【
図6】屋根に設置されたスガモレ防止金具を有する雪庇防止装置を示す側面図である。
【
図7】屋根に設置されたスガモレ防止金具を有する雪庇防止装置を示す正面図である。
【実施例1】
【0028】
図1ないし
図6に示す事例は、装置本体ネット10が、平網部3、半筒網部4および掬い網部5が連続する1枚の合成樹脂製ネット10からなり、該平網部3が、対象建築物9の屋根91の棟93がわに配される棟がわ端32に繋着部33が設けられ、軒先端がわ34に端鈎35が設けられ、該半筒網部4が、当該平網部3の軒先端がわ34から空中に向け半円筒形状に延伸され、該掬い網部5が、当該半筒網部4から該屋根91の棟93がわに向け延伸された先端50を、当該平網部3の棟がわ端32と軒先端がわ34との間の中途部36に積層状に結合され、屋根91に対し雪の堰き止め迎角α姿勢とされ、この平網部3の掬い網部5が積層状に結合された中途部36から該半筒網部4および該掬い網部5に至る範囲がトンネル状ループ網部分2となり、該トンネル状ループ網部分2内に円筒型骨格6が内装されてなる、この発明の雪庇防止装置における代表的な一実施例を示すものである。
【0029】
それら各図からも明確に把握できるとおり、この発明の雪庇防止装置1は、その装置本体ネット10が、平網部3、半筒網部4および掬い網部5が連続する1枚の矩形シート状の弾発性を有する、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの高分子素材を原材料とする高強度プラスチック製の合成樹脂製ネットからなり、例えば、トリカルネット(登録商標)、ユカロンネット(商品名)、テンサー(登録商標)などの土木用合成樹脂製ネットであり、網の目の糸部11の表裏面間の厚みが1mmないし7mm、網の目の糸部11の幅が2mmないし10mmとされ、網の目11の1個の孔径10mm(M1)ないし50mm(M2)、より効果的な雪止め効果を望むならば、20mm(M1)ないし30mm(M2)に設定されたものである。
【0030】
この装置本体ネット10の平網部3は、
図6に二点鎖線Vで示すように、対象建築物9の外壁90の直上に対応する屋根91の葺き材92の表面上の棟93から軒先端95までの間の中途部としての軒先基部94から、該中途部としての軒先基部94の直下となる軒先端95に至る長さLが45cm、1個の平網部3の棟方向の幅W(
図7)が2mに設定され、裏面30が屋根葺き材92の表面に対峙し、表面31が空に向けられ、棟がわ端32が屋根91の棟93がわに向けられ、該棟がわ端32に屋根91への繋着部33が設けられ、軒先端がわ34に屋根91の軒先端95に係合する端鈎35が設けられたものとなっており、これら繋着部33および端鈎35は、互いの1個ずつが上下方向に仮想される一直線上に対をなして配され、例えば、棟方向に50cm幅W1毎に配されたものとすることが可能であり、また、後述するように、棟方向の50cm幅W1毎に配されたスガモレ防止金具7,7,……の上下端に対し、これら繋着部33および端鈎35を夫々一体化したものとすることも可能である。
【0031】
装置本体ネット10の半筒網部4は、平網部3の軒先端がわ34から空中に向け内径D1が11cmの半円筒形状をなすよう延伸され、屋根91の棟93がわに向け180°向きが変えられるよう略一定の曲率で湾曲され、該装置本体ネット10の掬い網部5は、半筒網部4の空中部分から延伸され、屋根91の棟93がわに向けられた先端50が、平網部3の表面31がわの棟がわ端32と軒先端がわ34との間の中途部36であって、棟がわ端32から軒先端がわ34がわに寸法L1が25cmの位置(中途部36)に対し積層状に配された上、棟方向の適宜間隔置き毎に1箇所、例えば、棟方向に並ぶ網目の2個置き毎に1箇所ずつの割合で結束金具や結束バンドなどの結合部品Bによって結合され、掬い網部5は、雪の堰き止め迎角α姿勢、例えば、積雪を堰き止めるのに有効なαが20°ないし60°、望ましくは、より効果的に積雪を堰き止めることができる上、当該装置本体ネット10(合成樹脂製ネット)を破損から守る効果が期待できるよう、αが30°ないし50°とされたものとなっている。
【0032】
平網部3の棟がわ端32と軒先端がわ34との間Lの中の、当該掬い網部5の先端50が結合された中途部36から該軒先端がわ34の範囲L2、該平網部3の軒先端がわ34からこれら半筒網部4および掬い網部5に至る範囲L3,L4が、トンネル状ループ網部分2(L2,L3,L4)となり、該トンネル状ループ網部分2の棟方向の断面形状が、涙滴形断面形状に設定され、当該トンネル状ループ網部分2内には、直径7mmの鋼線が、仮想水平軸心(筒状部軸芯)の回りのトンネル状ループ網部分2の内径D1の11cmよりも僅かに小さな外径D2が10cm、棟方向のピッチが10cmのコイル形に成形され、全体に合成樹脂皮膜が密閉状に被着されてなる円筒型骨格6としてのコイル型骨格6が水平姿勢に内装され、当該トンネル状ループ網部分2の半筒網部4の上下端間の略中央(最も軒先端がわとなる周壁部分)となる網目の糸部に対し、コイル型骨格5の1ピッチまたは2ピッチ毎などの棟方向の等間隔置き毎の複数箇所が、結束金具や結束バンドなどの結合部品Bによって結合されたものとなっている。
【0033】
円筒型骨格6としてのコイル型骨格6の水平姿勢での内装、組み込みは、1枚の矩形シート状の弾発性合成樹脂製ネットから、平網部3の軒先端に当該コイル型骨格6を仮想水平軸心(筒状部軸芯)に沿わせて配置し、要所要所を結束バンドなどで平網部3に仮着するか、または仮着せずに仮置きしたまま、半筒網部4をその上に巻き返して掬い網部5を、対応する平網部3に対して結束金具や結束バンドなどの結合部品Bによって結合させることにより、この発明の雪庇防止装置に完成させる外、平網部3、半筒網部4および掬い網部5を連続して
図2に示す状態に形状した後、このコイル型骨格6を半筒網部4の仮想水平軸心(筒状部軸心)方向何かの端から挿入、螺旋進行方向に向けて回転させながら挿入、進行させて組み込みようにする、後からこのコイル型骨格6を
図2に示す状態の弾発性合成樹脂製ネットに一体化するようにしてこの発明の雪庇防止装置に完成することもでき、経済効果を期待して、場面に応じたこの発明の雪庇防止装置の完成を選択可能にする。
【0034】
更に、この発明の雪庇防止装置1は、装置本体ネット10の平網部3の裏面30に対してスガモレ防止金具7が設けられたものとすることも可能であり、該スガモレ防止金具7は、対象建築物9の屋根91の屋根葺き材92よりも熱伝導率の高い伝熱線状体8からなり、例えば、該伝熱線状体8は、屋根葺き材92が、粘土瓦、セメント瓦、石材瓦、アスファルトシングル材瓦、または、ススキ、稲藁、葦などの茅、檜皮、木の板の植物系の瓦などの場合には、メッキや塗装などの防錆被膜が施された鋼製の線材、棒材、管(パイプ)材、また、この屋根葺き材92が、トタン、ガルバニウム、ステンレス、チタンなどの金属製の場合には、銅製の線材、棒材、管(パイプ)材などからなるものとされる。
【0035】
伝熱線状体8は、この装置本体ネット10の、例えば棟方向に幅寸法W1が50cm毎となる位置毎に、平網部3の裏面30下に沿って棟がわ端32から軒先端がわ32まで延伸され、該伝熱線状体8の棟がわ端80が、平網部3の棟がわ端32に対し、結束金具や結束バンドなどの結合部品Bによって結合され、更に、当該伝熱線状体8の棟がわ端80に、例えばステンレス鋼線製の繋着部33が、結束金具や結束バンドなどの結合部品Bによって結合され、当該伝熱線状体8の軒先端がわに、屋根91の軒先端95に係合する端鈎35が一体化されたものとなっており、この伝熱線状体8に銅製の線材などを採用し、取付強度が不足する場合には、補強用の鋼線などの高強度線材を束ねて設置し、該高強度線材に対して繋着部33および端鈎35が一体化されたものとすることができる外、当該装置本体ネット10に対し、これら繋着部33および端鈎35が設けられていないスガモレ防止金具7が結合部品Bによって結合され、スガモレ防止金具7とは別に、これら繋着部33および端鈎35が設けられた高強度線材を、当該装置本体ネット10に対し、棟方向に並ぶ複数本の該スガモレ防止金具7の間に夫々配するようにし、結合部品Bによって結合されたものとすることができる。
【0036】
このスガモレ防止金具7で、伝熱線状体8の繋着部33および端鈎35は、伝熱線状体8とは別体のものを結合されたものとすることができる外、該端鈎35が、この伝熱線状体8の軒先端がわ80の端部を鈎状に折曲、形成されたものとすることができ、
図4に示すように、例えば、該伝熱線状体8は、平面視U字形またはV字形に折曲され、二本に分岐された棟がわ端80,80に対して繋着部33が設けられ、これら棟がわ端80,80とは反対がわとなる伝熱線状体8の軒先端がわの端部が、側面視J字形となるよう折曲され、屋根91の軒先端95に係合する端鈎35が一体に成形されたものとすることが可能であり、当該伝熱線状体8は、棟がわ端に繋着部33、軒先端に端鈎35が夫々設けられたものの場合に、これら棟がわ端および軒先がわが、装置本体ネット10の平網部3に対し、結束金具や結束バンドなどの結合部品Bによって結合されたものとされ、更に、繋着部33ないし端鈎35の間となる伝熱線状体8の中途の一箇所または複数箇所が、当該装置本体ネット10の該平網部3に対して結束金具や結束バンドなどの結合部品Bによって結合されたものとすることができる。
【0037】
(実施例1の作用・効果)
以上のとおりの構成からなるこの発明の雪庇防止装置1は、
図5ないし
図7に示すように、例えば切妻屋根の対象建築物9の屋根91の軒先端95に対し、装置本体ネット10の平網部3の裏面30に結合されたスガモレ防止金具7,7,……の伝熱線状体8,8,……の軒先端がわの端鈎35,35,……が係合され、該対象建築物9の外壁90の直上である、
図6中に二点鎖線Vで示した仮想鉛直線上に対応する屋根91の屋根葺き材92の表面上の棟93から軒先端95までの間の中途部としての軒先基部94に、該装置本体ネット10の平網部3の棟がわ端32が配され、当該スガモレ防止金具7の伝熱線状体8,8,……の棟がわ端80,80,……の、例えばステンレス鋼線製の繋着部33,33,……が、夫々の屋根91の棟93がわに配された雪止め金具96に対して確りと繋着され、屋根91の軒先端95と雪止め金具96との間に張力を有して強固に固定されたものとなっており、また、スガモレ防止金具7を持たない雪庇防止装置1の場合には、装置本体ネット10の平網部3の軒先端がわ34に結合部品Bを介して設けられた端鈎35,35,……が、対象建築物9の屋根91の軒先端95に係合され、平網部3の棟がわ端32に結合部品Bを介して設けられた繋着部33,33,……が、雪止め金具96に繋着され、この屋根91の軒先端95と雪止め金具96との間に張力を持って確り固定されたものとなる。
【0038】
そして、この雪庇防止装置1は、対象建築物9の外壁90の直上である、
図6中に二点鎖線Vで示した仮想鉛直線上に対応する屋根91の屋根葺き材92の表面上の棟93から軒先端95までの間の中途部としての軒先基部94に、装置本体ネット10の平網部3の棟がわ端32が配され、該平網部3の軒先端がわ34が屋根91の軒先端95に達するよう設置されるものとなっており、屋内の熱が伝わり難く消雪が困難な該屋根91の軒先の範囲(94ないし95)に、この雪庇防止装置1が設置された場合に、屋根91の雪庇やスガモレの発生を確実に防止できる上、該雪庇防止装置1の設置範囲(94ないし95)および屋根91への荷重負担を最小限に留めることが可能となる上、当該雪庇防止装置1の小型化、軽量化を促進して経済的にもより有利なものとなるが、この装置本体ネット10の平網部3の棟がわ端32の配設位置については、これに限定されることはなく、対象建築物9の外壁90の直上Vよりも棟93寄りに配置されるものとすることも可能であり、また、何れの場合にあっても、平網部3の軒先端がわ34、およびそれを含むトンネル状ループ網部分2は、上述のように対象建築物9の軒先端95上に配されたものとしなければならない。
【0039】
以上のような条件の下、対象建築物9の屋根91の屋根葺き材92の表面上に設置された、この発明の雪庇防止装置1は、該屋根91の屋根葺き材92の表面上に降り積もった積雪が、日中の気温の上昇に伴って軒先端95に向けて滑り落ちて来ると、装置本体ネット10の平網部3の棟がわ端32の上に乗り、該平網部3の網の目を通じて通気され、融雪が促進されるものとなり、更に、滑り移動した積雪が、掬い網部5に乗り上げるように移動して来ると、該掬い網部5は、積雪の荷重を受けて下向きの円弧面状をなすようしなやかに撓い、コイル型骨格6がト、ンネル状ループ網部分2の内側から半筒網部4の形状を維持するよう支え、積雪からの荷重を該トンネル状ループ網部分2の全体に分散し、応力の集中による合成樹脂製ネットの破損を防止するものとなり、更に、該トンネル状ループ網部分2の上に乗り上げた積雪の底部は、該トンネル状ループ網部分2の通気性によって外気に触れ、効率的に消雪されるから雪庇の発生を未然に防ぐこととなり、融雪水は、該屋根91の葺き材92と該平網部3との間を通じて速やかに雨樋97がわに排水されるからスガモレを防止するものとなる。
【0040】
スガモレ防止金具7は、該屋根91の葺き材92よりも高い熱伝導率の伝熱線状体8からなるから、該伝熱線状体8に接する積雪の底部に、外気から伝わる熱や日光による熱や、該対象建築物9の屋内から屋根91の葺き材92に伝わる暖房伝達熱などをより効率的に伝達し、電力や給湯などの外部エネルギーの供給を必要とせずに、該スガモレ防止金具7に接する積雪の底部を融雪し、該屋根91の葺き材92の表面上と該装置本体ネット10の平網部3との間に配された積雪の底部に排水路が形成され、該排水路を通じて該屋根91の棟93がわから流れ下る融雪水を堰き止めることなく速やかに雨樋97がわに排水し、より効果的にスガモレを防止するものとなる。
【0041】
(結 び)
叙述の如く、この発明の雪庇防止装置は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からの屋根の雪庇、落雪およびスガモレ防止用の融雪装置などの消雪技術に比較して大幅に簡素化および軽量化して耐久強度を高め、低廉化して遥かに経済的なものとすることができる上、簡素化および軽量化によって生産、保管、輸送、設置および保守管理などに要する作業負担を大幅に軽減し、より効率的且つ経済的に設置、利用できるものとなるから、建築業界およびエクステリア業界はもとより、より低廉且つ速やかな設置を希望する一般家庭や企業などにおいても高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【符号の説明】
【0042】
1 雪庇防止装置
10 同 装置本体ネット
11 同 網目の糸部
2 トンネル状ループ網部分
3 平網部
30 同 裏面
31 同 表面
32 同 棟がわ端
33 同 繋着部
34 同 軒先端がわ
35 同 端鈎
36 同 中途部
L 同 棟がわ端32から軒先端がわ34までの長さ
L1 同 棟がわ端32から中途部36までの長さ
L2 同 平網部3のトンネル状ループ網部分2の一部となる範囲
4 半筒網部
L3 同 半筒網部4がトンネル状ループ網部分2の一部となる範囲
D1 同 半筒網部4の内径
5 掬い網部
50 同 先端
α 雪の堰き止め迎角
L4 同 掬い網部5がトンネル状ループ網部分2の一部となる範囲
W 棟方向の幅
W1 スガモレ防止金具7の配設間隔幅寸法
B 結合部品
6 コイル型骨格(円筒型骨格)
D2 同 外径
P 同 ピッチ
7 スガモレ防止金具
8 伝熱線状体
80 同 棟がわ端
9 対象建築物
90 同 外壁
91 同 屋根
92 同 葺き材
93 同 棟
94 同 中途部(軒先基部)
95 同 軒先端
96 同 雪止め金具
97 同 雨樋