(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】外装塗膜及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/20 20060101AFI20220520BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20220520BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220520BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20220520BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20220520BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220520BHJP
E04F 13/02 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
B32B27/20 A
B05D7/00 L
B05D7/24 303B
B05D1/36 Z
C09D201/00
C09D7/61
E04F13/02 A
(21)【出願番号】P 2019118111
(22)【出願日】2019-06-26
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】504221602
【氏名又は名称】株式会社PGSホーム
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】池口 護
(72)【発明者】
【氏名】北村 透
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-143016(JP,A)
【文献】特開2003-025528(JP,A)
【文献】特開昭60-132679(JP,A)
【文献】特開2001-179176(JP,A)
【文献】特開2007-098849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B05D 1/00-7/26
C09D 201/00
C09D 7/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の外壁に塗装される塗膜であって、
建築物の外壁に塗装され第一無機顔料を30~50重量%含有する第一塗膜層と、
前記第一塗膜層に積層され前記第一無機顔料と同系色である第二無機顔料を2~10重 量%含有する第二塗膜層
と、
前記第二塗膜層における前記第一塗膜層とは反対側の面において前記第二塗膜層に積層 され、光触媒及びスルホン酸基を有するフッ素樹脂を含有する光触媒層を備えることを 特徴とする外装塗膜。
【請求項2】
前記第一無機顔料及び前記第二無機顔料が、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックか ら選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の外装塗膜。
【請求項3】
前記第一塗膜層が10~100μmであり、前記第二塗膜層が20~80μmであり、 前記光触媒層が1~20μmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の外 装塗膜。
【請求項4】
建築物の外壁に塗装される塗膜の施工方法であって、
建築物の外壁に塗装され第一無機顔料を30~50重量%含有する第一塗膜層を形成す る第一手段と、
前記第一無機顔料と同系色である第二無機顔料を2~10重量%含有する第二塗膜層を 前記第一塗膜層に積層して形成する第二手段
と、
光触媒及びスルホン酸基を有するフッ素樹脂を含有する光触媒層を前記第二塗膜層にお ける前記第一塗膜層とは反対側の面において前記第二塗膜層に積層して形成する第三手 段を備えることを特徴とする塗膜施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽からの紫外線などに曝される屋外環境下に設けられた建築物の外壁の表面に塗装される塗膜及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外環境下にある家屋やビルなどの建築物の外壁に対して、その外壁を保護するなどのために種々の塗料により下地塗装が施されているところ、建築物の使用期間が長いことから、建築基材よりも下地塗膜の方が先に太陽光からの紫外線などにより劣化するため、長期間にわたり耐光性を有する塗膜が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、建築基材に形成する下地塗膜において、ビニル樹脂、アクリルスチレン樹脂、エポキシ/ポリアミン樹脂又はウレタン樹脂等を結合剤とし、着色顔料等が添加された塗料を用いて、30年レベルの耐候性等を有する塗膜を形成し得る旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の下地塗膜では、着色顔料として金属酸化物などの無機顔料を使用する場合、そのような無機顔料は、太陽光に含まれる紫外線を吸収するので紫外線遮蔽効果を有するが、その一方で、その吸収した紫外線により活性化され塗膜中において周囲の樹脂を分解するなどにより劣化させるために耐候性が低下する原因となるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明では、太陽からの紫外線などに曝される屋外環境下に設けられた建築物の外壁の表面において30年レベルの耐候性を有する外装塗膜及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕すなわち、本発明は、建築物の外壁に塗装される塗膜であって、建築物の外壁に 塗装され第一無機顔料を30~50重量%含有する第一塗膜層と、前記第一塗膜層に積 層され前記第一無機顔料と同系色である第二無機顔料を2~10重量%含有する第二塗 膜層と、前記第二塗膜層における前記第一塗膜層とは反対側の面において前記第二塗膜 層に積層され、光触媒及びスルホン酸基を有するフッ素樹脂を含有する光触媒層を備え ることを特徴とする外装塗膜である。
【0008】
〔2〕そして、前記第一無機顔料及び前記第二無機顔料が、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記〔1〕に記載の外装塗膜である。
【0009】
〔3〕そして、前記第一塗膜層が10~100μmであり、前記第二塗膜層が20~ 80μmであり、前記光触媒層が1~20μmであることを特徴とする前記〔1〕又 は前記〔2〕に記載の外装塗膜である。
【0010】
〔4〕そして、建築物の外壁に塗装される塗膜の施工方法であって、建築物の外壁に 塗装され第一無機顔料を30~50重量%含有する第一塗膜層を形成する第一手段と 、前記第一無機顔料と同系色である第二無機顔料を2~10重量%含有する第二塗膜 層を前記第一塗膜層に積層して形成する第二手段と、光触媒及びスルホン酸基を有す るフッ素樹脂を含有する光触媒層を前記第二塗膜層における前記第一塗膜層とは反対 側の面において前記第二塗膜層に積層して形成する第三手段を備えることを特徴とす る塗膜施工方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の外装塗膜及びその施工方法により、太陽からの紫外線などに曝される屋外環境下に設けられた建築物の外壁の表面において30年レベルの耐候性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態の外装塗膜を示す側面図である。
【
図2】本発明の他の実施形態の外装塗膜を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に関する実施形態について詳しく説明する。なお、範囲を表す「~」の表現は、その上限と下限を含むものである。
【0014】
本発明の外装塗膜は、建築物の外壁である基材Bに塗装される第一塗膜層1と、第一塗膜層1に積層される第二塗膜層2を少なくとも備えている。そして、第二塗膜層2に光触媒層3などをさらに積層することもできる。
【0015】
第一塗膜層1は、建築物の外壁である基材Bに直接又は下塗り層を介して間接的に塗装されることにより形成され、所定の第一無機顔料P1を30~50重量%含有する塗膜である。第一塗膜層1は、基材Bに対して太陽からの紫外線、空気による酸化、風雨などによる劣化を防止するために、そして、基材Bに着色するために設けられる。
【0016】
第一塗膜層1にベース材料として使用される樹脂成分は、第一無機顔料P1を定着させるための結着剤であり、アクリルシリコンなどのアクリル樹脂、シリコン、ウレタン、フッ素樹脂など種々の樹脂を使用することができる。後述するように、上記樹脂は、水などの溶剤にて希釈され塗料として塗装されることから、溶剤に均一に溶解されるように水溶性であることが好ましい。また、第一塗膜層1に光沢感など付与するために、第一塗膜層1中に1~5重量%含有されるように、所定量のシロキサンを含有することもできる。
【0017】
第一塗膜層1に使用される第一無機顔料P1は、第一塗膜層1におおよそ均一に分散されており、太陽光における380nm以下の短波長紫外線を吸収して遮蔽することにより、基材Bに対してその紫外線を曝せないようにする。具体的に、第一無機顔料P1としては、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックなど種々の顔料を使用することができる。第一塗膜層1における第一無機顔料P1の含有割合は、30~50重量%であることが好ましく、35~45重量%であることがより好ましい。第一塗膜層1における第一無機顔料P1の含有割合であると、基材Bを紫外線による劣化から防ぐことができ、第一無機顔料P1による着色も十分視認することができるとともに、上記樹脂成分に定着して基材Bから剥がれ落ちないようにすることができる。
【0018】
第一塗膜層1の膜厚としては、10~100μmが好ましく、20~80μmがより好ましい。第一塗膜層1の膜厚がこの範囲であると、基材Bを紫外線、酸化、風雨などによる劣化から防ぐことができ、第一無機顔料P1による着色も十分視認することができるとともに、異なる箇所における膜厚の相違を抑制して色むらが生じないようにすることができる。
【0019】
また、第一塗膜層1を形成するために、あらかじめ上記樹脂成分や第一無機顔料P1に水やアルコールなどの溶剤を配合した液状の塗料としておき、その塗料を基材Bに塗装して、溶剤を揮発させて上記樹脂成分や第一無機顔料P1などの不揮発成分が残りため塗膜が形成される。
【0020】
第二塗膜層2は、第一塗膜層1における基材Bとは反対側の面において第一塗膜層1に積層されて塗装されることにより形成され、第一塗膜層1にて使用されている第一無機顔料P1と同系色の第二無機顔料P2を2~10重量%含有する塗膜である。第二塗膜層2は、第一塗膜層1へと透過する太陽光における380nm以下の短波長紫外線を90%以上吸収することにより、第一塗膜層1に対してその紫外線を極力曝せないようして、第一塗膜層1を保護するとともに、第二無機顔料P2の濃度を第一塗膜層1における第一無機顔料P1の濃度よりも低下させることで、紫外線を吸収したことにより活性化された第二無機顔料P2による第二塗膜層2自体の劣化を防止することができる。そして、第一塗膜層1の第一無機顔料P1と同系色である第二無機顔料P2を含有させることにより、第一塗膜層1に対して第二塗膜層2を積層させたときに、色調において第二塗膜層2が第一塗膜層1と同様となるために、第二塗膜層2の場所による膜厚の相違による色むらが生じず、外観上綺麗な仕上がりとなる。なお、同系色とは、白、黒、、グレー、ベージュなど視認したときに同程度の色調と捉えられる色を示している。
【0021】
第二塗膜層2にベース材料として使用される樹脂成分は、第二無機顔料P2を定着させるための結着剤であり、第一塗膜層1における樹脂成分と同様に、アクリルシリコン、シリコン、ウレタン、フッ素樹脂など種々の樹脂を使用することができる。後述するように、上記樹脂は、水などの溶剤にて希釈され塗料として塗装されることから、溶剤に均一に溶解されるように水溶性であることが好ましい。また、第二塗膜層2に光沢感など付与するために、第二塗膜層2中に20~50重量%含有されるように、所定量のシロキサンを含有することもできる。
【0022】
第二塗膜層2に使用される第二無機顔料P2は、第二塗膜層2におおよそ均一に分散されており、太陽光における380nm以下の短波長紫外線を吸収して遮蔽することにより、第一塗膜層1に対してその紫外線を極力曝せないようして、第一塗膜層1を保護する。具体的に、第二無機顔料P2としては、第一塗膜層1における第一無機顔料P1と同様に、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックなど種々の顔料を使用するなど、第一塗膜層1における第一無機顔料P1と同系色のものを使用する。すなわち、第二無機顔料P2は、第一無機顔料P1と同じであってもよいが、第一無機顔料P1と同系色の無機顔料を使用することができる。第二塗膜層2における第二無機顔料P2の含有割合は、2~10重量%であることが好ましく、4~7重量%であることがより好ましい。第二塗膜層2における第二無機顔料P2の含有割合であると、380nm以下の短波長紫外線を90%以上吸収することで、基材Bを紫外線による劣化から防ぐことができ、第二無機顔料P2による着色も十分視認することができるとともに、上記樹脂成分に定着して基材Bから剥がれ落ちないようにすることができる。第一塗膜層1に対してその紫外線を極力曝せないようして、第一塗膜層1を保護するとともに、第二無機顔料P2の濃度を第一塗膜層1における第一無機顔料P1の濃度よりも低下させることで、紫外線を吸収したことにより活性化された第二無機顔料P2による第二塗膜層2自体の劣化を防止することができる。
【0023】
第二塗膜層2の膜厚としては、20~80μmが好ましく、30~60μmがより好ましい。第二塗膜層2の膜厚がこの範囲であると、第一塗膜層1に対して380nm以下の短波長紫外線を極力曝せないようして、第一塗膜層1を保護するとともに、異なる箇所における膜厚の相違を抑制して第二塗膜層2における色むらが生じないようにすることができる。
【0024】
また、第二塗膜層2を形成するために、あらかじめ上記樹脂成分や第二無機顔料P2に水やアルコールなどの溶剤を配合した液状の塗料としておき、その塗料を第一塗膜層1に塗装して、溶剤を揮発させて上記樹脂成分や第二無機顔料P2などの不揮発成分が残りため塗膜が形成される。
【0025】
光触媒層3は、第二塗膜層2における第一塗膜層1とは反対側の面において第二塗膜層2に積層されて塗装されることにより形成され、所定量の光触媒P3を含有する塗膜である。
図2に示すように、光触媒層3は、最も外側の層として設けられ、含有される光触媒P3が太陽光における紫外線によって活性化されることにより、細菌・ウィルス・カビ、悪臭物質、汚れ物質などを分解することで無害化したり、親水化されて付着した汚れを洗い流したりする効果を奏する。
【0026】
光触媒層3における光触媒P3の結着剤となる樹脂成分は、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、スルホン酸基を有するフッ素樹脂などが好ましい。さらに、光触媒P3により酸化還元作用によってより分解されにくいスルホン酸基を有するフッ素樹脂が好ましい。
【0027】
スルホン酸基を有するフッ素樹脂としては、具体的には、例えば、パーフルオロ[2-(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]の重合体、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ[2-(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]との共重合体、ヘキサフルオロプロペンとパーフルオロ[2-(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]との共重合体などが好ましい。主鎖の炭素原子に結合する水素原子がすべてフッ素原子に置換された完全フッ素化樹脂でもよいし、主鎖の炭素原子に結合する水素原子が一部フッ素原子に置換された部分フッ素化樹脂でもよく、さらに、これらの共重合体であってもよい。市販品として、デュポン株式会社製のNAFION(登録商標)の分散液などを使用することができる。
【0028】
光触媒P3は、紫外線などの光を照射されることにより触媒作用、より具体的には強い酸化還元作用を生じる物質であり、例えば、TiSrO3 ,BaTiO3 ,TiO2 (二酸化チタン),Nb2 O5 ,MgO,ZnO,WO3 ,Bi2 O3 ,CdS,CdSe,CdTe,In2 O3 ,SnO2などの各種金属酸化物が好ましく、さらに、TiO2(二酸化チタン)を用いることが好ましい。また、TiO2(二酸化チタン)を用いる場合、結晶構造としてルチル型よりアナターゼ型の方がより好ましい。
【0029】
そして、光触媒P3は、微粒子で略球形状であり、複数の微粒子の凝集体からなる二次粒子であることが好ましい。また、他の実施形態において略球状に限られるものでなく、棒状、針状、円錐状などの形状からなる凝集体とすることができる。光触媒P3の平均粒子径は、0.1~1.0μmであることが好ましく、0.3~0.8μmであることがさらに好ましい。光触媒P3の平均粒子径が上記範囲であると、上述した光触媒作用を示しながらも光触媒層3を透明化でき第一塗膜層1及び第二塗膜層2の色を外観視することができる。なお、上記平均粒子径は、レーザ回折/散乱による光散乱法において、頻度の積算が50%になる粒子径(D50)である。また、光触媒P3は、光触媒層3において、0.5~5.0重量%含有されていることが好ましく、1.0~3.0重量%含有されていることがさらに好ましい。光触媒P3の含有割合が上記範囲であると、上述した光触媒作用を示しながらも光触媒層3を透明化でき第一塗膜層1及び第二塗膜層2の色を外観視することができる。
【0030】
そして、光触媒層3の膜厚としては、1~20μmが好ましく、3~15μmがより好ましい。光触媒層3の膜厚がこの範囲であると、上述した光触媒作用を示しながらも光触媒層3を透明化でき第一塗膜層1及び第二塗膜層2の色を外観視することができる。
【0031】
また、第一塗膜層1、第二塗膜層2及び光触媒層3には、あらかじめ、顔料分散剤、架橋剤、酸化防止剤、有機顔料、紫外線吸収剤、着色剤、レベリング剤などが添加されていてもよい。
【0032】
(実施例1)
〔第一塗膜層1〕
第一無機顔料P1として、酸化チタン白色顔料(ケマーズ社製、品名:タイピュアR960)を21.0重量部及びカーボンブラック黒色顔料(三菱化学製、品名:MA220)3.0重量部と、顔料分散剤として、酸基を有するアルキロールアンモニウム塩「(ビックケミー社製、品名:DISPERBYK-180)」を3.0重量部、溶剤として水を7.5重量部、樹脂として、水系アクリル樹脂(DIC製、品名:ボンコートCF8510<不揮発成分は55重量%>)を65.5重量部配合し、これらを均一になるまで攪拌して第一塗膜層成分とした。そして、第一塗膜成分において、形成した塗膜の不揮発分が酸化チタン白色顔料、カーボンブラック黒色顔料、水系アクリル樹脂の不揮発成分であるため、第一塗膜成分の不揮発分は60重量%、不揮発分中の顔料重量%は40%であり、また、塗膜比重1.9であった。そして、第一塗膜層成分を1平方メートルあたり95g塗布して乾燥させると、塗膜厚が30μmとなるグレーの色調を有する第一塗膜層1が形成された。
【0033】
〔第二塗膜層2〕
第二無機顔料P2として、酸化チタン白色顔料(ケマーズ社製、品名:タイピュアR960)を2.7重量部及びカーボンブラック黒色顔料(三菱化学製、品名:MA220)0.4重量部と、顔料分散剤として、酸基を有するアルキロールアンモニウム塩「(ビックケミー社製、品名:DISPERBYK-180)」を0.4重量部、溶剤として水を1重量部、樹脂として、水系アクリル樹脂(DIC製、品名:ボンコートCF8510<不揮発成分は55重量%>)を95.5重量部配合し、これらを均一になるまで攪拌して第二塗膜層成分とした。そして、上記水系アクリル樹脂の不揮発分が55重量%であるためこの塗料の不揮発分は55.7重量%、不揮発分中の顔料重量%は5.6重量%、塗膜比重1.2であり、そして、第一塗膜層1の上に第二塗膜成分を1平方メートルあたり64g塗布して乾燥させて、塗膜厚が30μmとなる、第一塗膜層よりも淡いがグレーの色調を有する第二塗膜層2を形成した。
【0034】
(実施例2)
第一無機顔料P1及び第二無機顔料P2として、カーボンブラック黒色顔料ではなく、緑色焼成顔料(大日精化工業社製、品名:ダイピロキサイドグリーン#320)を用いた以外は実施例1と同様に、第一塗膜層成分及び第二塗膜層成分を作製した。そして、第一塗膜層1の不揮発分は60重量%、不揮発分中の顔料重量%は40%、塗膜比重1.9であり、塗膜厚がほぼ30μmとなるうぐいす色の色調を有する第一塗膜層1を形成した。さらに、第二塗膜層1の不揮発分は55.7重量%、不揮発分中の顔料重量%は5.6重量%、塗膜比重1.2であり、第一塗膜層1の上に塗膜厚が30μmとなる、第一塗膜層よりも淡いがうぐいす色の色調を有する第二塗膜層2を形成した。
【0035】
(比較例1)
実施例1の塗膜層成分を用いて、実施例1と同様に30μmの第一塗膜層1を形成した。そして、同じ塗膜層成分を用いて30μmの第二塗膜層2を形成した。すなわち、実施例1の塗膜層成分を用いて60μmの塗膜を得たことと同じである。
【0036】
(比較例2)
実施例2の塗膜層成分を用いて、実施例2と同様に30μmの第一塗膜層1を形成した。そして、同じ塗膜層成分を用いて30μmの第二塗膜層2を形成した。すなわち、実施例2の塗膜層成分を用いて60μmの塗膜を得たことと同じである。
【0037】
(参考例1)
実施例1の水系アクリル樹脂(DIC製、品名:ボンコートCF8510<不揮発成分は55重量%>)に替えて、水系フッ素樹脂(AGC製、品名:ルミフロンFE4500<不揮発成分は50重量%>)を用いた以外は実施例1と同様に、第一塗膜層成分を作製した。そして、第一塗膜層1の不揮発分は56.8重量%、不揮発分中の顔料重量%は42%、塗膜比重2.0であり、1平方メートルあたり106g塗布して乾燥させて、塗膜厚がほぼ30μmとなるグレーの色調を有する第一塗膜層1を形成した。そして、第一塗膜層1の上に、同じ塗膜層成分を用いて同様に30μmの第二塗膜層2を形成した。なお、本参考例1は、一般に耐候性に優れているとして知れられているフッ素系樹脂が用いられており、アクリル樹脂が用いられる実施例1及び実施例2の対照例として作製した。
【0038】
〔光沢保持率〕
実施例1から2、比較例1から2、及び参考例1で得られた塗膜を用いて、光沢計(日本電色工業株式会社製、品名「PG-1」)を用いて60°鏡面光沢度を測定した。試験前の塗膜についても同様に測定し、下記計算式により光沢保持率(%)を求めた。
計算式;光沢保持率(%)=耐候試験後の光沢度÷初期の光沢度×100
光沢保持率が80%以上有するものを良好、80%未満のものを不良と判断した。
【0039】
〔耐候性〕
実施例1から2、比較例1から2、及び参考例1で得られた塗膜を用いて、ブルネイの首都のバンダルスリブガワンにおいて、屋外にて塗工した面を上にした状態で水平に載置して12ケ月間暴露試験を行った後に、その塗工面の退色及び汚れを目視にて確認した。塗膜に変化が全く見られないものを◎と評価し、その塗工面に全体的にうっすらと退色又は汚れが見られるものを△、その塗工面に全体的にはっきりと退色又は汚れが見られるものを×と評価し、◎及び○を良好、△及び×を不良と判断した。なお、おおよそ赤道直下に位置するブルネイにおいて1年に亘る耐候性試験は、日本においておおよそ5年間耐候性試験を行ったことに相当する。
【0040】
実施例1から2、比較例1から2、及び参考例1で得られた第一塗膜層1を形成するための第一塗膜層成分及び第二塗膜層2を形成するための第二塗膜層成分の配合割合と、塗装して得られた塗膜の性能の一覧を表1に示す。
【0041】
【0042】
表1の結果より、実施例1、実施例2に示すように、第二塗膜層2における第二無機顔料P2の含有割合を第一塗膜層1における第一無機顔料P1の含有割合よりも低下させ、それぞれの無機顔料の含有割合を所定の範囲とすることにより、塗膜の光沢を保つことができ、塗膜の屋外暴露において目視における退色及び汚れを視認することがなく、第一塗膜層1及び第二塗膜層2が同系色であるために塗膜の色むらも視認することはなかった。また、実施例1、実施例2では、樹脂として水系アクリル樹脂を用いているが、一般に耐候性に優れているとして知れられているフッ素系樹脂を用いた参考例1と匹敵する光沢保持率、耐候性を得られることが明らかになった。
【符号の説明】
【0043】
1・・・第一塗膜層
2・・・第二塗膜層
3・・・光触媒層
P1・・・第一無機顔料
P2・・・第二無機顔料
P3・・・光触媒
B・・・基材