(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】折り畳みベッド
(51)【国際特許分類】
A47C 19/12 20060101AFI20220520BHJP
【FI】
A47C19/12 Z
A47C19/12 A
(21)【出願番号】P 2019232528
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2020-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】597071803
【氏名又は名称】株式会社信防エディックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 正武
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開実用新案第20-2018-0000178(KR,U)
【文献】登録実用新案第3160445(JP,U)
【文献】登録実用新案第3129975(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0287699(US,A1)
【文献】実開平06-048451(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 19/12
A47C 17/64
A47C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝床となるシート体を張設するシート体張設フレームが、前記シート体の幅方向両端部に設けられていると共に、連結具により前記シート体の長手方向中央部分において折り畳み可能に連結されていて、
前記シート体張設フレームには、前記シート体の長手方向両端部および前記長手方向中央部分に折り畳み可能な接地脚が取り付けられていて、
前記連結具を含む所要範囲における前記シート体には開口部が形成されていると共に、前記開口部を被覆する被覆シートが跳ね上げ可能に取り付けられていて、
前記シート体の前記長手方向中央部分における前記接地脚には、
環状に形成された起床用把持ベルトが取り付けられていると共に、前記被覆シートに形成されたスリットから前記シート体の上面側に前記起床用把持ベルトが引き出されていることを特徴とする折り畳みベッド。
【請求項2】
前記シート体の長手方向両端部どうしを結ぶ対角線のうちの少なくとも一方の対角線両端部に位置する前記接地脚には、前記接地脚の展開状態を維持するストッパが配設されていることを特徴とする請求項1記載の折り畳みベッド。
【請求項3】
前記シート体には少なくとも外表面の一部が透明部材で形成された収容袋が取り付けられていることを特徴とする請求項1または2記載の折り畳みベッド。
【請求項4】
前記シート体張設フレームに着脱可能な枕および敷物固定体をさらに有することを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか一項記載の折り畳みベッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は折り畳みベッドに関する。
【背景技術】
【0002】
キャンプや災害避難場所において一時的な寝床を確保するためのものとして、いわゆる折り畳みベッドが好適に用いられている。このような折り畳みベッドとしては、例えば非特許文献1(折りたたみレジャーベッド)に開示されているような構成のものが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】通販の暁(株式会社通商国際)、”(楽天市場)アウトドア折りたたみ ベッド シングル仮眠 ベッド オフィスレジャー ベンチ いすイス キャンプ用品 荷物置きキャンプ バーベキュー BBQ 運動会 お花見 椅子丈夫 頑丈 仮眠 収納 コンパクト 簡易ベッド ad228:通販の暁”、[online]、楽天市場(通販の暁(株式会社通商国際))、[令和元年12月11日検索]、インターネット<URL:https://item.rakuten.co.jp/patri/ad228/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に開示されている折り畳みベッド200は、
図9に示すように、シート体210を張設するフレーム220が折り畳み脚230により支持されると共に補剛材240により補剛され、連結具250により折り畳み可能に形成されている。また、シート体210の補剛材取付部222や連結具取付部224には開口部212が形成されている。このため、使用者の体の一部が開口部212から露出したフレーム220に直接触れてしまうことがあり、寒い時期においては不快感があるといった課題や、使用時に補剛材取付部222や連結具取付部224に皮膚を挟み怪我をしてしまうといった課題がある。さらには、お年寄り等の体が不自由または体力が衰えた使用者が起床する際においては、折り畳みベッド200が不安定になってしまい、場合によっては使用者もろとも転倒してしまうおそれがあるといった重大な課題も有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は、フレームの折り畳み部分におけるフレームのシート体からの露出をなくすと共に、起床を安定した状態で行うことを可能にした折り畳みベッドの提供を目的としている。
【0006】
上記課題を解決すべく発明者は以下の構成に想到した。すなわち本発明は、寝床となるシート体を張設するシート体張設フレームが、前記シート体の幅方向両端部に設けられていると共に、連結具により前記シート体の長手方向中央部分において折り畳み可能に連結されていて、前記シート体張設フレームには、前記シート体の長手方向両端部および前記長手方向中央部分に折り畳み可能な接地脚が取り付けられていて、前記連結具を含む所要範囲における前記シート体には開口部が形成されていると共に、前記開口部を被覆する被覆シートが跳ね上げ可能に取り付けられていて、前記シート体の前記長手方向中央部分における前記接地脚には、環状に形成された起床用把持ベルトが取り付けられていると共に、前記被覆シートに形成されたスリットから前記シート体の上面側に前記起床用把持ベルトが引き出されていることを特徴とする折り畳みベッドである。
【0007】
これにより、フレームの折り畳み部分におけるフレームのシート体からの露出をなくすことができる。また、使用者は寝床からの起床の際には、起床用把持ベルトを掴むことで安定した状態で起床することが可能な折り畳みベッドを提供することができる。
【0008】
また、前記シート体の長手方向両端部どうしを結ぶ対角線のうちの少なくとも一方の対角線両端部に位置する前記接地脚には、前記接地脚の展開状態を維持するストッパが配設されていることが好ましい。
【0009】
これにより、使用状態にした折り畳みベッドをより安定した状態で使用することができる。
【0010】
また、前記シート体には少なくとも外表面の一部が透明部材で形成された収容袋が取り付けられていることが好ましい。
【0011】
これにより、就寝時や起床時に必要なメガネ等の物品を収容袋に収容しておくことができ、就寝直前までと起床直後から直ちに通常の行動を行うことができる。また、避難所などにおいては使用者の氏名等を表示することで、避難所内で同じような折り畳みベッドが多数ある場合においても、他人のベッドを使用してしまうことがなく、トラブルの発生を防止することができる。
【0012】
また、前記シート体張設フレームに着脱可能な枕および敷物固定体をさらに有することが好ましい。これによりシート体の上に敷物を敷いても敷物がずれ落ちてしまうことがなく、枕に使用も可能になるため、快適な睡眠を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明における折り畳みベッドの構成によれば、寝床を構成するシート体を保持するフレームの折り畳み部分において、シート体からのフレームの露出をなくすことができる。これにより使用者の身体がフレームに直接触れることがないため、不快感や怪我の発生を防止することができる。また、使用者は起床時に起床用把持ベルトを掴むことにより、寝床から起床する動作を安定した状態で行うことができ、使用者の転倒が防止される等安全な使用が可能な折り畳みベッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態における折り畳みベッドの正面図である。
【
図2】本実施形態における折り畳みベッドの右側面図である。
【
図3】本実施形態における折り畳みベッドの斜視図である。
【
図5】本実施形態における折り畳みベッドに使用者が寝ている状態を示す斜視図である。
【
図6】本実施形態における折り畳みベッドから使用者が起床する際における動作を示す斜視図である。
【
図7】本実施形態における折り畳みベッドから使用者が起床する際における動作を示す斜視図である。
【
図8】本発明にかかる折り畳みベッドにおける他の形態例の斜視図である。
【
図9】従来技術における折り畳みベッドの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~
図4に示すように、本実施形態の折り畳みベッド100は、寝床となるシート体10、被覆シート15、複数のシート体張設フレーム20、シート体張設フレーム20を折り畳み可能に連結する連結具30、接地脚40および起床用把持ベルト50を具備する。
【0016】
本実施形態におけるシート体10は、ポリエステル等に代表される合成樹脂製である。シート体10は平面視長方形に形成されていて、シート体10の長手方向における対向端縁にはシート体張設フレーム20を挿通させるための袋部12が形成されている。袋部12には、同じ長さの2本のシート体張設フレーム20が連結具30により折り畳み可能に連結された状態で挿通されている。
【0017】
シート体10の長手方向における中央部分には、連結具30が取り付けられたシート体張設フレーム20の連結部分を含む所要範囲を開口させた開口部14が形成されている(
図4参照)。袋部12の部分を含むシート体10にこのような開口部14を形成することにより、袋部12に挿通させたシート体張設フレーム20を連結部分で折り畳むことが可能になる。しかしながら開口部14をそのままの状態にしておくと、使用者の体の一部が開口部14から露出したシート体張設フレーム20および連結具30に接触して不快であると共に、シート体張設フレーム20の連結部分に皮膚を挟んで怪我をしてしまうおそれがある。そこで本実施形態における開口部14には、シート体10と同じ材料により形成され、開口部14を被覆するための被覆シート15が取り付けられている。
【0018】
被覆シート15は長方形に形成されており、被覆シート15の内側端縁と、開口部14の内側端縁14Aよりも内側の部分(または内側端縁14Aに重複させて)とを、袋部12と平行な方向に沿って縫製している。このようにしてシート体10に取り付けられた被覆シート15は、シート体10と縫製された部分を回動軸として被覆シート15の外側端縁部分が跳ね上げ可能(回動可能)になっている。また、跳ね上げ可能な被覆シート15の跳ね上げさせる際の回動軸の位置を開口部14よりも内側にしたことにより、使用者がシート体10の上で寝返りをしても被覆シート15による開口部14の被覆状態を確実に維持することができる点において好都合である。そして、被覆シート15には被覆シート15を厚さ方向に貫通するスリット16が形成されていて、後述する起床用把持ベルト50がスリット16に挿通されている。
【0019】
なお、スリット16の形状については特に限定されるものではないが、起床用把持ベルト50を挿通させる部分は起床用把持ベルト50を挿通させることができる範囲で可及的に小さい開口にすることが好ましい。さらには、スリット16の部分における被覆シート15が厚さ方向に重なるようにして、重ね合わせた被覆シート15の間をスリット16として用いる形態を採用することもできる。これにより、開口部14とスリット16の開口部分との重複部分からのシート体張設フレーム20の露出をさらに確実に防止することができる点において好都合である。
【0020】
また、シート体10の長手方向両端部および長手方向中央部分におけるシート体張設フレーム20の底面には、接地脚40が配設されている。接地脚40は、シート体張設フレーム20の底面に対して直交方向に取り付けられていると共に、側面視形状がX字状をなし、接地脚40の両端部分と交点部分がピン42により連結され、ピン42を中心として回動させることにより折り畳み可能に形成されている。これにより折り畳みベッド100を収納する際において、接地脚40の幅方向寸法を大幅に縮小させることができる。
【0021】
また、シート体10の長手方向両端部に配設された接地脚40は、シート体張設フレーム20に取り付けられたブラケットを介してピン42により連結されている。これにより、これらの接地脚40はシート体張設フレーム20に対して平行な状態に折り畳むことができる。さらにシート体10の長手方向両端部における接地脚40には、接地脚40の接地部とシート体張設フレーム20の底面との間に掛け渡され、両端部がピン42により連結された補剛材44が取り付けられている。
【0022】
本実施形態における補剛材44は、シート体張設フレーム20の底面に対して斜め方向に取り付けられていて、補剛材44とシート体張設フレーム20の底面との間には接地脚40を展開した状態を維持させるための折り畳み可能なストッパ60が配設されている。本実施形態においては、寝床であるシート体10を平面視した際に、長手方向両端部どうしを結ぶ対角線のうち一方の対角線両端部の位置にストッパ60を配設しているが、この形態に限定されるものではない。ストッパ60は、シート体10を平面視した際の四隅位置(2本の対角線の両端部のすべて)に配設することもできる。
【0023】
一方、シート体10の長手方向中央部分における接地脚40には、起床用把持ベルト50が取り付けられている。起床用把持ベルト50は環状に形成されていて、シート体10の幅方向両端部における開口部14および被覆シート15に形成されたスリット16から寝床であるシート体10の上面に引き出されている。この起床用把持ベルト50は、
図5~
図7に示すように、使用者USRが折り畳みベッド100から容易に起床するために使用者USRが把持するものである。
【0024】
図5に示す状態の使用者USRが起床する際は、
図6に示すように、両手で起床用把持ベルト50を把持して肘をシート体10または袋部12の上に押しあてて、肘を始点にした梃子の原理を利用して上半身を起こせばよい。これにより使用者USRは、
図7に示すような状態に容易に起床することができる。このような起床用把持ベルト50を用いることで、体力が低下している使用者USRであっても起床動作を折り畳みベッド100の上で安定した状態で行うことができ、起床時における転倒等の事故の発生を防止することが可能になる。
【0025】
なお、起床用把持ベルト50の素材は特に限定されるものではないが、柔軟かつ使用者USRの体重に十分耐えることができる引張強度を有する素材により形成されている。本実施形態における起床用把持ベルト50はポリエステル製であるため、折り畳みベッド100を収納状態に折り畳む際の妨げになることはない。
【0026】
また、本実施形態における折り畳みベッド100には、枕70を装着することもできる。本実施形態における枕70の側面には枕固定紐72がそれぞれ取り付けられていて、枕固定紐72の先端部には一対の面ファスナー(図示せず)が取り付けられている。枕固定紐72をシート体10が張設されているシート体張設フレーム20の外表面に周回させて一対の面ファスナーを係合することで、枕70をシート体10の長手方向における任意の位置に着脱することができる。
【0027】
さらに、本実施形態における折り畳みベッド100の正面には、日用品等を収容する収容袋80を取り付けることもできる。収容袋80はシート体10と同じ材料により形成されていて、外表面の一部に透明部材で形成されたポケット82が形成されている。このような収容袋80はシート体10の袋部12に縫製により取り付けられている。これにより、折り畳みベッド100を避難場所等において多数設置した際においては、収容袋80に名札等の識別具を入れておくことで、他人の折り畳みベッド100と自分の折り畳みベッド100との識別が可能になる点において好都合である。
【0028】
以上に説明したとおり本願発明にかかる折り畳みベッド100について実施形態に基づいて説明を行ったが、本願発明は以上の実施形態に限定されるものではない。例えば、
図8に示すように、寝床であるシート体10に配設した図示しないシーツやマットレスに代表される敷物(図示せず)を固定するための敷物固定体90を配設することもできる。このような敷物固定体90はシート体10が張設されたシート体張設フレーム20に着脱可能にするため、ゴム紐に代表される伸縮部材より形成されたリング体や、長さ方向の両端部分に係止部材を固定した紐体であることが好ましい。
【0029】
敷物固定体90は折り畳みベッド100に着脱可能な枕70と共に用いることが特に好ましく、枕70の配設位置とは反対側の端部位置に配設すれば、シート体10の上に配設した敷物を枕固定紐72と敷物固定体90によって確実に固定することができる。
【0030】
また、以上に説明した本実施形態においては、寝床であるシート体10の長手方向両端部における接地脚40には接地脚40の展開状態を維持するためのストッパ60が配設されているが、ストッパ60は必須構成ではないため省略することができる。また、枕70も必須構成ではないため省略することができる。敷物固定体90も配設を省略することができる。
【0031】
さらには、以上に説明した本実施形態の構成に対し、明細書中に記載されている変形例や、他の公知の構成を適宜組み合わせた形態を採用することもできる。
【符号の説明】
【0032】
10:シート体
12:袋部
14:開口部
14A:内側端縁
15:被覆シート
16:スリット
20:シート体張設フレーム
30:連結具
40:接地脚
42:ピン
44:補剛材
50:起床用把持ベルト
60:ストッパ
70:枕
72:枕固定紐
80:収容袋
82:ポケット
90:敷物固定体
100:折り畳みベッド
USR:使用者