(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】太陽光模倣照明システムの調整可能性
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1334 20060101AFI20220520BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
G02F1/1334
G02F1/13 505
(21)【出願番号】P 2019526544
(86)(22)【出願日】2017-03-24
(86)【国際出願番号】 EP2017057062
(87)【国際公開番号】W WO2018091150
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-01-30
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2016/001945
(32)【優先日】2016-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】316013194
【氏名又は名称】コエルクス・エッセ・エッレ・エッレ
【氏名又は名称原語表記】COELUX S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サンドロ ウッセーリオ ナノ
(72)【発明者】
【氏名】シモネ ボナノミ
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-238945(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0047356(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0052446(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1334
G02F 1/13
G02F 1/15-1/19
G02F 1/13357
G02B 5/02
G02B 5/08
F21S 2/00
F21V 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡散器ユニット(9)であって、指向性白色光(89)による照明によって前記拡散器ユニット(9)に入射する光のレイリー状散乱によって、彩色的に調整可能な透過光(33)
および拡散光(35)を提供するためのものであり、前記拡散器ユニット(9)は、
平均サイズが約30nmから約300nmまでの範囲の複数の透明なナノスケール散乱要素(19、63)と、
前記ナノスケール散乱要素(19、63)を分離するホスト材料(21、61)と
を備える散乱層(17)と、
特に前記ナノスケール散乱要素(19、63)および/または前記ホスト材料(21、61)と相互作用するための、電場(27)を提供するための一対の面電気コンタクト(23’)であり、前記散乱層(17)の対向する両面上に延在し、前記面電気コンタクト(23’)の少なくとも一方は、可視波長範囲において透明であるように構成されている、面電気コンタクト(23’)と
を備え、
前記散乱層(17)は、
照明方向と関連付けられる前記ナノスケール散乱要素(19、63)と前記ホスト材料(21、61)との間の相対屈折率、および
前記照明方向に関連付けられる前記ナノスケール散乱要素(19、63)の有効サイズ
に依存する前記可視波長範囲内の波長依存集合光散乱断面積量(σ
total)を有し、
前記散乱層(17)は、前記ナノスケール散乱要素(19、63)の前記相対屈折率および/または前記有効サイズを変更することによって前記集合光散乱断面積量(σ
total)
を変更できるように構成されており、結果、前記透過光(33)のスペクトルを変更可能にすることができる、
拡散器ユニット(9)。
【請求項2】
前記散乱層(17)は、前記ナノスケール散乱要素(19、63)の屈折率不整合の変動範囲および/または前記有効サイズの変動範囲によって規定される彩色調整可能範囲を有し、
前記散乱層(17)は、CIE1931標準観測者(2°)について、可視スペクトル内部で一定であるスペクトルパワー分布を有する非偏光白色光(E標準光源)が、
前記散乱層(17)に対するある入射角度で衝突するとき、前記正透過光(33)のスペクトルが、それぞれ0.20および0.465よりも大きいu’v’座標を有する、CIE1976u’v’色度図内の色点(ON
SUN、OFF
SUN)に対応するように、前記彩色調整可能範囲内の集合光散乱断面積量(σ
total)を提供するように構成されている、
請求項1に記載の拡散器ユニット(9)。
【請求項3】
前記散乱層(17)は、前記ナノスケール散乱要素(19、63)の屈折率不整合の変動範囲および/または前記有効サイズの変動範囲によって規定される彩色調整可能範囲を有し、
前記散乱層(17)は、CIE1931標準観測者(2°)について、
前記散乱層(17)に対するある入射角度にある非偏光白色光によって測定されるとき、正スペクトル透過率が、それぞれ0.20および0.465よりも大きいu’v’座標を有する、
CIE1976u’v’色度図内の色点(ON
SUN、OFF
SUN)に対応するように、前記彩色調整可能範囲内の集合光散乱断面積量(σ
total)を提供するように構成されている、
請求項1に記載の拡散器ユニット(9)。
【請求項4】
前記彩色調整可能範囲内の前記正透過光(33)のスペクトルまたは前記正スペクトル透過率に関連付けられる、少なくとも1つの色点(ON
SUN、OFF
SUN)、およびプランク軌跡(31)のユークリッド距離Δu’v’は、
0.1以下ある、
請求項2または3に記載の拡散器ユニット(9)。
【請求項5】
前記散乱層(17)は、前記ナノスケール散乱要素(19、63)の屈折率不整合の変動範囲および/または前記有効サイズの変動範囲によって規定される彩色調整可能範囲を有し、
前記散乱層(17)は、可視スペクトル内部で一定であるスペクトルパワー分布を有する衝突白色光(E標準光源)について、正透過角から20°未満だけ逸脱する角度を除くすべての散乱角にわたって積分された前記拡散光(35)のスペクトルが、それぞれ0.22および0.485よりも小さいu’v’座標を有する、
CIE1976u’v’色度図内の色点(ON
SKY、OFF
SKY)に対応するように、前記彩色調整可能範囲内の集合光散乱断面積量(σ
total)を提供するように構成されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の拡散器ユニット(9)。
【請求項6】
前記散乱層(17)は、前記ナノスケール散乱要素(19、63)の屈折率不整合の変動範囲および/または前記有効サイズの変動範囲によって規定される彩色調整可能範囲を有し、
前記散乱層(17)は、可視スペクトル内部で一定であるスペクトルパワー分布を有する衝突白色光(E標準光源)およびCIE1931標準観測者(2°)について、前記彩色調整可能範囲内の前記正透過光(33)のスペクトル、および/または前記彩色調整可能範囲内の前記正スペクトル透過率と関連付けられる色点(ON
SUN、OFF
SUN)と、前記拡散光(35)のそれぞれのスペクトルに関連付けられる色点(ON
SKY、OFF
SKY)との間のユークリッド距離Δu’v’が、
0.02以上であるように、前記彩色調整可能範囲内の集合光散乱断面積量(σ
total)を提供するように構成されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載の拡散器ユニット(9)。
【請求項7】
前記散乱層(17)は、前記ナノスケール散乱要素(19、63)の屈折率不整合の変動範囲および/または前記有効サイズの変動範囲によって規定される彩色調整可能範囲を有し、
CIE1931標準観測者(2°)についての、最大集合散乱断面積量(σ
total)に対応する前記彩色調整可能範囲内の前記構成について、前記正透過光(33)および/または前記正スペクトル透過率は、可視スペクトル内部で一定であるスペクトルパワー分布を有する非偏光白色光(E標準光源)が法線入射から約60°の入射角までの範囲内の、前記散乱層(17)に対するある入射角で衝突するとき、
それぞれ0.20および0.465より大きいu’v’座標を有する、
CIE1976u’v’色度図内の色点(10、20、...60)に対応し、かつ/または
前記最大集合散乱断面積量(σ
total)に対応する、前記彩色調整可能範囲内の前記構成について、CIE1931標準観測者(2°)について、前記正透過光(33)および/または前記正スペクトル透過率は、
0.465よりも小さいu’座標を有する、前記CIE1976u’v’色度図内の色点に対応する、
請求項2に記載の拡散器ユニット(9)。
【請求項8】
前記波長依存集合光散乱断面積量(σ
total)は、前記散乱層の光学的特性に影響を及ぼす、前記散乱層(17)の特性の特定の選択によって与えられ、前記特性は、
前記ナノスケール散乱要素(19、63)の屈折率、
前記屈折率における異方性、
前記ナノスケール散乱要素(19、63)の構成物質の
屈折率、
前記ナノスケール散乱要素(19、63)のサイズおよび/もしくは形状、
幾何学的形状における異方性、
前記ホスト材料(21、61)の屈折率、
前記屈折率および/もしくは前記ホスト材料(21、61)の構成物質の屈折率における異方性、
前記ナノスケール散乱要素(19、63)と前記ホスト材料(21、61)との間の体積分率、ならびに/または
前記散乱層(17)の層厚
を含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載の拡散器ユニット(9)
【請求項9】
前記ナノスケール散乱要素(19、63)
間の、または、液晶液滴と前記ホスト材料(21、61)との間の体積分率は、
約30%から約70%までの範囲内にあり、かつ/または
前記散乱層(17)の層厚は、
約10μmから約500μmまでの範囲内にあり、任意選択的に、前記層厚は、スペーサ要素(41)によって規定され、かつ/もしくは、前記散乱層(17)の10cm×10cmの領域にわたって10%未満の厚さの変動を有する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の拡散器ユニット(9)。
【請求項10】
青色(波長間隔440nm~460nm
内)中の前記波長依存集合光散乱断面積量(σ
total)は、黄色(波長間隔540nm~560nm
内)中よりも大きく、
黄色(波長間隔540nm~560nm
内)中の前記波長依存集合光散乱断面積量(σ
total)は、赤色(波長間隔640nm~660nm
内)中よりも大きく、
かつ/または
前記波長依存集合光散乱断面積量(σ
total)は、波長の増大とともに
低減する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の拡散器ユニット(9)。
【請求項11】
衝突白色光(89)に対する彩色的に調整可能な散乱相互作用を提供するための拡散器ユニット(13)であって、
ホストポリマー(21)内に埋め込まれている液晶を有するポリマー分散液晶層(17)であり、前記液晶は約30nmから約300nmの範囲内の液滴直径dを有するナノ液滴(19)を形成し、前記ポリマー(21)によって分離され、屈折率における異方性を有する、ポリマー分散液晶層(17)と、
前記ナノ液滴(19)内で前記液晶と相互作用するための電場(27)を提供するための一対の面電気コンタクト(23’)であり、
散乱層(17)としての前記ポリマー分散液晶層(17)の対向する両面上に延在し、前記面電気コンタクト(23’)の少なくとも一方は、可視波長範囲において透明であるように構成されている、面電気コンタクト(23’)と
を備える、
拡散器ユニット(13)。
【請求項12】
拡散器ユニット(9)であって、指向性白色光(89)による照明によって前記拡散器ユニット(9)に入射する光のレイリー状散乱によって、彩色的に調整可能な透過光(33)を提供するためのものであり、前記拡散器ユニット(9)は、
ポリマー分散液晶層と、面電気コンタクト(23’)とを備える散乱層(17)を備え、
前記ポリマー分散液晶層は、
約30nmから約300nm
までの範囲内にある液滴直径dを有するナノ液滴内で区切られている液晶であって、0.02≦|n
e-n
o|≦0.5の範囲内の異方性を有する液晶によって形成される複数のナノスケール散乱要素と、
前記ナノスケール散乱要素(19)を分離し、
1から3までの範囲内のホスト屈折率n
hを有するポリマーホスト材料(21、61)と
を有し、
最大化相対屈折率
【数1】
は、2つの値
【数2】
の間の値であり、該値によって、関数
【数3】
が最大化され、
液滴サイズ、ホスト屈折率、および最大化相対屈折率、ならびに定数cは、
2.918×10
7nm
4以上
である、前記定数cについての
【数4】
によって、
前記散乱層(17)の表面の単位面積あたりのナノ液滴の最小数Nを規定し、
前記面電気コンタクト(23’)は、特に前記ナノスケール散乱要素(19、63)および/または前記ホスト材料(21、61)と相互作用するための、電場(27)を提供するための一対の面電気コンタクト(23’)であり、前記散乱層(17)の対向する両面上に延在し、前記面電気コンタクト(23’)の少なくとも一方は、可視波長範囲において透明であるように構成され、
前記散乱層(17)は、
照明方向と関連付けられる前記ナノスケール散乱要素(19、63)と前記ホスト材料(21、61)との間の相対屈折率、および
前記照明方向に関連付けられる前記ナノスケール散乱要素(19、63)の有効サイズ
に依存する前記可視波長範囲内の波長依存集合光散乱断面積量(σ
total)を有し、
前記散乱層(17)は、前記ナノスケール散乱要素(19、63)の前記相対屈折率および/または前記有効サイズを変更することによって前記集合光散乱断面積量(σ
total)
を変更できるように構成されており、結果、前記透過光(33)のスペクトルを変更可能にすることができる、
拡散器ユニット(9)。
【請求項13】
拡散器ユニット(9)であって、指向性白色光(89)による照明によって前記拡散器ユニット(9)に入射する光のレイリー状散乱によって、彩色的に調整可能な透過光(33)を提供するためのものであり、前記拡散器ユニット(9)は、
面電気コンタクト(23’)と、液晶ベースのホスト材料内に埋め込まれている複数のナノ粒子としての静的散乱中心と、を備える散乱層(17)を備え、前記ホスト材料は、
約30nmから約300nmまでの範囲内
にある直径dを有する前記静的散乱中心と、
1.1から3.2までの範囲内である前記静的散乱中心の屈折率n
pと、
n
oとn
eとの間の値を有する前記液晶ホスト材料の最大化屈折率
【数5】
であり、前記液晶は、0.02≦|n
e-n
o|≦0.5の範囲内の異方性を有する、最大化屈折率と
を有し、
【数6】
は、関数
【数7】
を最大化する値であり、前記静的散乱中心サイズ、最大化ホスト屈折率、静的散乱中心屈折率、および定数cは、
2.918×10
7nm
4以上
である、前記定数cについての
【数8】
、によって、前記散乱層(17)
の表面の、単位面積あたりの静的散乱中心の最小数Nを規定し、
前記面電気コンタクト(23’)は、
前記ホスト材料と相互作用するための、電場(27)を提供するための一対の面電気コンタクト(23’)であり、前記散乱層(17)の対向する両面上に延在し、前記面電気コンタクト(23’)の少なくとも一方は、可視波長範囲において透明であるように構成され、
前記散乱層(17)は、
照明方向と関連付けられる
ナノスケール散乱要素(19、63)と前記ホスト材料(21、61)との間の相対屈折率、および
前記照明方向に関連付けられる前記ナノスケール散乱要素(19、63)の有効サイズ
に依存する前記可視波長範囲内の波長依存集合光散乱断面積量(σ
total)を有し、
前記散乱層(17)は、前記ナノスケール散乱要素(19、63)の前記相対屈折率および/または前記有効サイズを変更することによって前記集合光散乱断面積量(σ
total)
を変更できるように構成されており、結果、前記透過光(33)のスペクトルを変更可能にすることができる、
拡散器ユニット(9)。
【請求項14】
各々が前記面電気コンタクト(23’)のうちの1つを担持し、前記
ホスト材料を区切る一対のカバーシート、
をさらに備える、
請求項13に記載の拡散器ユニット(13)。
【請求項15】
拡散器ユニット(9)であって、指向性白色光(89)による照明によって前記拡散器ユニット(9)に入射する光のレイリー状散乱によって、彩色的に調整可能な透過光(33)を提供するためのものであり、前記拡散器ユニット(9)は、
面電気コンタクト(23’)と、幾何学的形状における異方性を有し、ホスト材料内に埋め込まれている透明なナノスケール散乱要素と、を備える散乱層(17)を備え、
有効直径
【数9】
、は、異方性形状ナノスケール散乱要素の長軸であり、約30nmから約300nmまでの範囲内
にあり、
アスペクト比(長軸と短軸との間の比)は、
1.2よりも大きく、
前記異方性形状ナノスケール散乱要素の屈折率は、
1.2から3.2までの範囲内であり、
前記ホスト材料の屈折率は、
1から3までの範囲内であり、
長軸のパラメータ異方性/最大サイズ、ホスト屈折率、相対屈折率、および定数cは、
2.918×10
7nm
4以上
である、前記定数cについての
【数10】
によって、前記散乱層(17)の単位面積あたりの異方性形状ナノスケール散乱要素の最小数Nを規定し、
前記面電気コンタクト(23’)は、特に前記ナノスケール散乱要素(19、63)および/または前記ホスト材料(21、61)と相互作用するための、電場(27)を提供するための一対の面電気コンタクト(23’)であり、前記散乱層(17)の対向する両面上に延在し、前記面電気コンタクト(23’)の少なくとも一方は、可視波長範囲において透明であるように構成され、
前記散乱層(17)は、
照明方向と関連付けられる前記ナノスケール散乱要素(19、63)と前記ホスト材料(21、61)との間の相対屈折率、および
前記照明方向に関連付けられる前記ナノスケール散乱要素(19、63)の有効サイズ
に依存する前記可視波長範囲内の波長依存集合光散乱断面積量(σ
total)を有し、
前記散乱層(17)は、前記ナノスケール散乱要素(19、63)の前記相対屈折率および/または前記有効サイズを変更することによって前記集合光散乱断面積量(σ
total)
を変更できるように構成されており、結果、前記透過光(33)のスペクトルを変更可能にすることができる、
拡散器ユニット(9)。
【請求項16】
前記ナノスケール散乱要素(103)は、幾何学的に非対称であり、
電場の存在下で双極子モーメントを提供し、
前記ホスト材料は、液状ホスト材料層であり、液状ホスト材料は、屈折率が、前記ナノスケール散乱要素の屈折率と異なり、前記ナノスケール散乱要素を分離し、前記ナノスケール散乱要素(103)の再配向を可能にし、
各々が前記面電気コンタクト(23’)のうちの1つを担持し、前記液状ホスト材料層を区切る一対のカバーシート、をさらに備える、
請求項15に記載の拡散器ユニット(101)。
【請求項17】
前記定数cは、
5.836×10
7nm
4以上で
あり、
かつ/または
前記定数cは、
3.363×10
9nm
4以下で
ある、
請求項12から16のいずれか一項に記載の拡散器ユニット(9)。
【請求項18】
反射層(55)、反射シート(57)面、
UVもしくはIR吸収/保護層(59)、および/もしくは波長無依存拡散層(53)、ならびに/または
前記面電気コンタクト(23’)の1つを提供する透明伝導性酸化物層をさらに備える、請求項1から17のいずれか一項に記載の拡散器ユニット(9)。
【請求項19】
周囲の彩色的に調整可能な照明を提供するための照明システム(1)であって、
指向性白色光(89)を生成するための白色光源(87)と、
前記白色光源(87)によって照明されるための散乱層(17)であり、透明なナノスケール要素(19、63)のナノ構造を備え、前記ナノスケール要素(19、63)は、屈折率および/または幾何学的形状における異方性を有する、散乱層(17)と、
前記散乱層(17)にわたる電場(27)を生成するための電場生成器(83)と
を備え、
前記電場生成器(83、23’)によって生成される前記電場(27)に応じて、前記ナノスケール要素(19、63)は、前記指向性白色光(89)に対する種々のレイリー状散乱条件を引き起こす、
照明システム(1)。
【請求項20】
周囲の彩色的に調整可能な照明を提供するための照明システム(1)であって、
指向性白色光(89)を生成するための白色光源(87)と、
前記白色光源(87)によって照明されるための、請求項1から18のいずれか一項に記載の拡散器ユニット(9、13)
と、
前記拡散器ユニット(9、13)の前記散乱層(17)にわたる電場(27)を生成するための電場生成器(83)と
を備え、
前記電場生成器(83、23’)は、前記面電気コンタクト(23’)の対と電気的に接触している電力ユニット(83)を含み、かつ/または
前記散乱層(17)の光学パラメータは、電場が印加されていない状態で、前記散乱層(17)を通過する前記白色光が、暖色寄りの正透過光部分
および寒色寄りの拡散光部分
に分離されるように、選択される、
照明システム(1)。
【請求項21】
前記電場生成器(83)は、前記白色光源(87)の前記指向性白色光の入射方向に対して前記ナノスケール散乱要素(19、63)の相対屈折率および/または有効サイズを設定することによって、少なくとも2つの動作状態を提供するように構成されており、
任意選択的に、前記少なくとも2つの動作状態は、前記周囲において生成される照度均一性が異なるレイリー状散乱条件を提供する、
請求項19または20に記載の照明システム(1)。
【請求項22】
前記電場生成器(83)によって生成される前記電場の強度を制御するための制御ユニットであって、結果、集合光散乱断面積量(σ
total)が
変更される、制御ユニット、
前記散乱層(17)に対する前記指向性白色光(89)の入射角を変更するための、
前記白色光源(87)を前記散乱層(17)に対して位置決めするか、もしくは、前記散乱層(17)を前記白色光源(87)に向けるように構成されている取り付け構造(100A、100B)であって、結果、前記ナノスケール散乱要素の屈折率および/もしくは有効サイズにおける異方性に起因して変化するレイリー状散乱相互作用をもたらす、前記散乱層(17)への前記指向性白色光(89)の複数の異なる入射角が提供される、取り付け構造(100A、100B)、ならびに/または
前記指向性白色光(89)の偏光を変化させるための
偏光器(100)
をさらに備える、
請求項19から21のいずれか一項に記載の照明システム(1)。
【請求項23】
請求項1から18のいずれか一項に記載の拡散器ユニット(9)の使用であって、前記拡散器ユニット(9)の散乱層(17)の少なくとも2つの異なる光学特性を設定することによって、指向性白色光によって照明されるときに、少なくとも2つの異なる照明条件を提供するための、照明システム内の、拡散器ユニット(9)の使用。
【請求項24】
指向性白色光(89)によって照明されるときに拡散器ユニット(9)に入射する光を散乱させることによって、彩色的に調整可能な透過光(33)を提供するための方法であって、前記拡散器ユニット(9)は、
平均サイズが約30nmから約300nmまでの範囲の複数の透明なナノスケール散乱要素(19、63)および前記ナノスケール散乱要素(19、63)を分離するホスト材料(21、61)を備える散乱層(17)と、前記ナノスケール散乱要素(19、63)および/または前記ホスト材料(21、61)と相互作用するための電場(27)を提供するための、前記散乱層(17)の各面に沿って延在する一対の面電気コンタクト(23’)とを備え、前記面電気コンタクト(23’)の対の少なくとも1つは、可視波長範囲において透過性であるように構成されており、前記散乱層(17)の光学特性は、前記可視波長範囲内で、
照明方向と関連付けられる前記ナノスケール散乱要素(19、63)と前記ホスト材料(21、61)との間の相対屈折率、および
前記照明方向に関連付けられる前記ナノスケール散乱要素(19、63)の有効サイズ
に依存する波長依存集合光散乱断面積量(σ
total)を提供するように構成されており、前記方法は、
指向性白色光(89)によって前記拡散器ユニット(9)を照明するステップと、
前記散乱層(17)にわたって電圧を印加するステップであって、結果、前記ナノスケール散乱要素(19、63)の第1の屈折率不整合および/または第1の有効サイズに基づく第1の動作状態が設定され、前記正透過光(33)は、CIE1976u’v’色度図内の第1の色点と関連付けられるスペクトルを有する、印加するステップと、
前記ナノスケール散乱要素(19、63)の第2の屈折率不整合および/または第2の有効サイズに基づく第2の動作状態を設定するために、前記電圧を変化させるステップであって、結果、前記ナノスケール散乱要素(19、63)の前記屈折率不整合および/または前記有効サイズを変化させ、前記正透過光(33)は、CIE1976u’v’色度図内の第2の色点と関連付けられるスペクトルを有する、変化させるステップと
を含む、方法。
【請求項25】
調整可能太陽-天空模倣照明のための方法であって、
屈折率および/または幾何学的形状における異方性を有するナノスケール要素(19、63)のナノ構造を備える散乱層(17)を提供するステップと、
指向性白色光(89)を前記散乱層(17)に向けるステップと、
前記散乱層(17)にわたる電場(27)を生成するステップと
を含み、
前記電場(27)に応じて、前記ナノスケール要素(19、63)は、前記白色光(89)に対する種々のレイリー状散乱条件を引き起こす、方法。
【請求項26】
前記ナノスケール要素のナノ構造は、ホスト材料(21)内に埋め込まれているナノ液滴(19)内の液晶を含み、前記方法は、
前記ナノ液滴(19)内の液晶の配向を整合または不整合させることによって、レイリー状散乱断面積を変化させるステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
指向性光に対する彩色的に調整可能な散乱相互作用を提供するための液晶拡散器ユニットを製造するための方法であって、
液体プレポリマーを提供するステップと、
屈折率における異方性を有する液晶を分散させるステップと、
任意選択的に前記液体プレポリマー中にスペーサ要素を分散させるステップと、
一対の面電気コンタクト(23’)の間に、前記プレポリマーおよび前記液晶、ならびに任意選択的に前記スペーサ要素の分散を提供するステップであって、前記面電気コンタクト(23’)の少なくとも一方は、可視波長範囲において透明であるように構成されている、分散を提供するステップと、
前記ポリマーによって分離される
、約30nmから約300nmの範囲内の液滴直径dを有する液晶のナノ液滴の形成をもたらすために、前記分散内の相分離を制限する
硬化条件において前記分散を硬化させるステップであって、結果、前記面電気コンタクト(23’)の対の間の中間層として、高分子分散液晶層が形成される、硬化させるステップと
を含む、方法。
【請求項28】
前記面電気コンタクト(23’)の対は、それぞれのポリエチレンテレフタレート層および/またはガラスシート上に設けられる、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して照明システムに関し、特に、自然の太陽光照明を模倣するための照明システムに関する。さらに、本開示は、概して拡散器ユニットに関し、特に、拡散器ユニットを有する照明システムに関し、拡散器ユニットは、レイリー状散乱に基づく。
【背景技術】
【0002】
閉鎖環境のための人工照明システムは、多くの場合、ユーザが体験する視覚的な快適さを改善することを目標とする。例えば、二色性光が二色性光出口表面から放出されることを可能にする自然照明、特に太陽光照明をシミュレートするための照明ユニットが知られており、二色性光は、第1の(より低い)相関色温度(CCT)を有する直接光の指向性光部分と、第2の(より大きい)CCTを有する拡散光の拡散光部分とを含む。
【0003】
例えば、レイリー状拡散層を使用したそのような照明システムの例示的な実施形態が、同じ出願人によって出願されているWO2009/156347A1、WO2009/156348A1、WO2014/076656A1、およびWO2015/172821A1のようないくつかの出願において開示されている。それらに開示されている照明システムは、例えば、可視光を生成する光源と、透過または反射に使用されるナノ粒子を含むパネルとを使用する。それらの照明システムの動作中、パネルは光源からの光を受け、いわゆるレイリー拡散器として作用し、すなわち、晴天状況における地球大気と同様に入射光を拡散させる。
【0004】
WO2014/075721A1、非公開の国際特許出願PCT/EP2015/077169、同じ出願人によって2016年8月28日に出願された未公開の国際特許出願PCT/EP2015/069790において開示されているようなさらなる実施形態において、CCTがより低い直接光およびCCTがより大きい拡散光の概念は、例示的に、直線的に延伸し、コンパクトな構成にある照明システムにおいて実施されている。
【0005】
言及されているように、上記で参照されている実施態様は、それらのナノサイズに起因してレイリー(またはレイリー状)散乱方式で光と相互作用し、ホスト材料(周囲のマトリックス)に埋め込まれるナノ粒子を使用する。マトリックスに対して異なる屈折率を有し、可視波長よりも(かなり)小さいサイズを有する透明ナノ粒子が、スペクトルの青色部分を優先的に散乱させ、赤色部分を透過させることは、光散乱の原理からよく知られている。具体的には、単一粒子散乱断面積は以下によって与えられ、
【0006】
【数1】
また、集合散乱断面積量は、以下によって与えられ、
σ(λ)
tot=N・σ(λ)
式中、Nは単位面積あたりのナノ粒子の数である(下記参照)。
【0007】
散乱の光学パラメータは、ナノ粒子のサイズおよび屈折率、ならびに、例えば、透明マトリックス中に分散した粒子の数によって、ならびに、そのマトリックスの屈折率によって規定される。ナノ粒子について、レイリー散乱過程は、以下に要約するような3つのパラメータD、m、およびNに依存する。
【0008】
Dは、ナノ粒子のサイズdに関係する。具体的には、有効粒子径D=dnhが考慮され、d[メートル]は球形粒子の場合の粒子分布にわたる平均粒子サイズであり、非球形粒子の場合は割り当てられる伝播方向における粒子の平均厚さとする。単一の粒子あたりの散乱効率の波長依存性が、波長λの1/10よりも小さいか、またはほぼ等しい粒子サイズのλ-4レイリー限界法則に近づく間、それぞれの許容可能な光学的効果は、ナノ粒子のサイズの上記範囲内に既に達する可能性があり、これは多くの場合、レイリー状散乱として参照される。他方、単一の粒子あたりの散乱効率は、粒子サイズD6に比例し、すなわち、粒子サイズが低減するとともに低減し、それによって、小さすぎる粒子の使用が不便になり、伝播方向に多数の粒子が必要になり、これは、許容される充填率によって制限される可能性がある。
【0009】
mは、ナノ粒子とマトリックスとの屈折率不整合に関係する。具体的には、色効果は、埋め込みマトリックスの屈折率とは異なる屈折率を有するナノ粒子に基づく。散乱するために、ナノ粒子は、光散乱が起こることを可能にするために、ホスト材料の屈折率nhとは十分に異なる実際の屈折率npを有する。例えば、上述した従来技術のシステムは、特定のホスト材料内の特定の固体粒子を使用して、それによって、粒子の屈折率とホスト媒質の屈折率との間の固定比の散乱条件
【0010】
【数2】
が設定され、mは相対屈折率として参照される。
Nは、散乱に関与するナノ粒子の数に関係する。具体的には、色効果は、所与の方向に伝播する衝突光によって見られる単位面積あたりのナノ粒子の数、ならびに、体積充填率fに基づく。具体的には、色効果は、例えば、色拡散層に埋め込まれている、単位面積あたりのナノ粒子の数Nに基づく。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本明細書において、特に、様々な条件の太陽-天空照明を模倣する照明システムにおいて実施するために使用することができる、レイリー状散乱のためのシステムおよび方法が開示される。
【0012】
したがって、本開示は、少なくとも部分的に、従来のシステムの1つまたは複数の態様を改善または克服することを対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様において、本開示は、拡散器ユニットに関し、拡散器ユニットは、白色光による照明によって拡散器ユニットに入射する光の散乱によって、彩色的に調整可能な透過光を提供するためのものである。拡散器ユニットは、複数のナノスケール散乱要素、および、ナノスケール散乱要素を分離するホスト材料を有する散乱層と、特にナノスケール散乱要素および/またはホスト材料と相互作用するための、電場を提供するための一対の面電気コンタクトであって、散乱層の対向する両面上に延在し、面電気コンタクトの少なくとも一方は、可視波長範囲において透明であるように構成されている、一対の面電気コンタクトとを備える。散乱層は、照明方向に関連付けられる(例えば、散乱層にほぼ垂直、または、ほぼ30°、45°、60°のような角度下など、照明システムにおける通常の実施態様内の方向において)ナノスケール散乱要素とホスト材料との間の相対屈折率、および、照明方向に関連付けられるナノスケール散乱要素の有効サイズに依存する、可視波長範囲内の波長依存光散乱断面積を有する。散乱層は、ナノスケール散乱要素の相対屈折率および/または有効サイズを変更することによって光散乱断面積内で適合可能であるように構成されており、それによって、透過光のスペクトルを変更可能にすることができる。
【0014】
別の態様は、衝突する白色光に対する彩色的に調整可能な散乱相互作用を提供するための拡散器ユニットを参照する。拡散器ユニットは、ホストポリマー内に組み込まれている液晶を有する高分子分散液晶層であって、液晶は、ナノ液滴を形成し、ポリマーによって分離され、屈折率において異方性を有する、高分子分散液晶層と、ナノ液滴内で液晶と相互作用するための電場を提供するための一対の面電気コンタクトであって、散乱層の対向する両面上に延在し、面電気コンタクトの少なくとも一方は、可視波長範囲において透明であるように構成されている、一対の面電気コンタクトとを備える。
【0015】
別の態様は、衝突する白色光に対する彩色的に調整可能な散乱相互作用を提供するための拡散器ユニットを参照する。拡散器ユニットは、屈折率において異方性を有する液晶を有する液晶層を有する散乱層と、液晶層に埋め込まれており、ある屈折率を有する複数のナノスケール散乱要素とを備える。拡散器ユニットは、液晶層内の液晶と相互作用するための電場を提供するための一対の面電気コンタクトであって、散乱層の対向する両面上に延在し、面電気コンタクトの少なくとも一方は、可視波長範囲において透明であるように構成されている、一対の面電気コンタクトと、各々が面電気コンタクトの一方を担持し、液晶層を境界する一対のカバーシートとをさらに備える。
【0016】
別の態様は、衝突する白色光に対する彩色的に調整可能な散乱相互作用を提供するための拡散器ユニットを参照し、拡散器ユニットは、幾何学的に非対称、特に棒状の/細長い形状であり、電場の存在下で、特に誘導される双極子モーメントを提供する複数のナノスケール散乱要素と、液体状ホスト材料層とを有し、液体状ホスト材料は、屈折率が、ナノスケール散乱要素の屈折率と異なり、ナノスケール散乱要素を分離し、ナノスケール散乱要素の再配向を可能にする。拡散器ユニットは、液体状ホスト材料層内のナノスケール散乱要素と相互作用するための電場を提供するための一対の面電気コンタクトであって、液体状ホスト材料層の対向する両面上に延在し、面電気コンタクトの少なくとも一方は、可視波長範囲において透明であるように構成されている、一対の面電気コンタクトと、各々が面電気コンタクトの一方を担持し、液体状ホスト材料層を境界する一対のカバーシートとをさらに備える。
【0017】
別の態様は、拡散器ユニットを参照し、拡散器ユニットは、白色光による照明によって拡散器ユニットに入射する光の散乱によって、彩色的に調整可能な透過光を提供するためのものである。拡散器ユニットは、約30nmから約300nmまでの範囲内のような、約20nmから約400nmまでの範囲内のような、約10nmから約500nmの範囲内の液滴直径dを有するナノ液滴内で境界されている液晶であって、0.02≦|ne-no|≦0.5の範囲内の異方性を有する、液晶と、ナノスケール散乱要素を分離し、1.25から1.75までの範囲内のような、1.2から2.2までの範囲内のような、1から3までの範囲内のホスト屈折率nhを有するポリマーホスト材料とを有する高分子分散液晶層を有する散乱層を備える。最大化相対屈折率
【0018】
【数3】
は、2つの値
【数4】
の間の値であり、この値によって、関数
【数5】
が最大化される。液滴サイズ、ホスト屈折率、および最大化相対屈折率、ならびに定数cは、2.918×10
7nm
4以上、特に8.32×10
7nm
4以上、例えば1.6175×10
8nm
4以上である、定数cについての
【数6】
によって、散乱層、特に散乱層の表面の、単位面積あたりのナノ液滴の最小数Nを規定する。(散乱層の単位面積あたりのナノ液滴の数は、少なくともその値Nである。)
【0019】
別の態様は、拡散器ユニットを参照し、拡散器ユニットは、白色光による照明によって拡散器ユニットに入射する光の散乱によって、彩色的に調整可能な透過光を提供するためのものである。拡散器ユニットは、液晶ベースのホスト材料内に埋め込まれている静的散乱中心(ナノ粒子)を有する散乱層を備え、静的散乱中心は、約30nmから約300nmまでの範囲内のような、約20nmから約400nmまでの範囲内のような、約10nmから約500nmの範囲内の直径dを有し、静的散乱中心の屈折率npは、1.3から2.8までの範囲内のような、1.2から3までの範囲内のような、1.1から3.2までの範囲内であり、液晶ホスト材料の最大化屈折率
【0020】
【数7】
はn
oとn
eとの間の値を有し、
【数8】
の範囲内の異方性を有する液晶は、関数
【数9】
を最大化する値である。散乱中心サイズ(例えば、液滴サイズ)、最大化ホスト屈折率、静的散乱中心屈折率および定数cは、2.918×10
7nm
4以上、特に8.32×10
7nm
4以上、例えば1.6175×10
8nm
4以上である、定数cについての
【0021】
【数10】
によって、特に散乱層の表面の、散乱層の単位面積あたりの静的散乱中心の最小数Nを規定し、ただし
【数11】
である。(散乱層の単位面積あたりの静的散乱中心の数は、少なくともその値Nである。)
【0022】
別の態様は、拡散器ユニットを参照し、拡散器ユニットは、白色光による照明によって拡散器ユニットに入射する光の散乱によって、彩色的に調整可能な透過光を提供するためのものである。拡散器ユニットは、幾何学的形状における異方性を有し、ホスト材料内に埋め込まれているナノスケール散乱要素を有する散乱層を備え、有効上部直径は
【0023】
【数12】
は異方性形状ナノスケール散乱要素の長軸であり、約30nmから約300nmまでの範囲内のような、約20nmから約400nmまでの範囲内のような、約10nmから約500nmまでの範囲内にあり、アスペクト比(長軸と短軸との間の比)は、23または25以上など、10など、5など、2など、1.2よりも大きく、異方性形状ナノスケール散乱要素の屈折率は、1.4から2.8までの範囲内のような、1.3から3までの範囲内のような、1.2から3.2までの範囲内にあり、ホスト材料の屈折率は、1.25から1.75までの範囲内のような、1.2から2.2までの範囲内のような、1から3までの範囲内にある。長軸のパラメータ異方性/最大サイズ、ホスト屈折率、相対屈折率、および定数cは、2.918×10
7nm
4以上、特に8.32×10
7nm
4以上、例えば1.6175×10
8nm
4以上である、定数cについての
【数13】
によって、散乱層の単位面積あたりの異方性形状ナノスケール散乱要素の最小数Nを規定する。(散乱層の単位面積あたりの異方性形状ナノスケール散乱要素の数は、少なくともその値Nである。)
【0024】
別の態様は、周囲の彩色的に調整可能な照明を提供するための照明システムを参照する。照明システムは、指向性白色光を生成するための白色光源と、白色光源によって照明されるための散乱層であって、ナノスケール要素のナノ構造を備え、ナノスケール要素は、屈折率および/または幾何学的形状における異方性を有する、散乱層と、散乱層にわたって電場を生成するための電場生成器とを備える。電場生成器によって生成される電場に応じて、ナノスケール要素は、指向性白色光に対する種々のレイリー状散乱条件を引き起こす。散乱層は、本明細書において開示されているような拡散器ユニットの一部であってもよい。電場生成器は、面電気コンタクトの対と電気的に接触している電力ユニットを含んでもよい。
【0025】
別の態様は、拡散器ユニットの散乱層の少なくとも2つの異なる光学特性を設定することによって、白色光によって照明されるときに、少なくとも2つの異なる照明条件を提供するための、照明システムにおける、本明細書において開示されているような拡散器ユニットの使用を参照する。
【0026】
別の態様は、白色光によって照明されるときに拡散器ユニットに入射する光を散乱させることによって、彩色的に調整可能な透過光を提供するための方法を参照する。拡散器ユニットは、本明細書において開示されているように構成することができ、方法は、白色光によって拡散器ユニットを照明するステップと、散乱層にわたって電圧を印加するステップであって、結果、ナノスケール散乱要素の第1の屈折率不整合および/または第1の有効サイズに基づいて第1の動作状態が設定され、正透過光は、CIE1976u’v’色度図内の第1の色点と関連付けられるスペクトルを有する、電圧を印加するステップと、電圧を変更するステップであって、結果、ナノスケール散乱要素の屈折率不整合および/または有効サイズが変化して、ナノスケール散乱要素の第2の屈折率不整合および/または第2の有効サイズに基づく第2の動作状態が設定され、正透過光は、CIE1976u’v’色度図内の第2の色点と関連付けられるスペクトルを有する、電圧を変更するステップとを含む。
【0027】
別の態様は、調整可能太陽-天空模倣照明のための方法を参照し、方法は、屈折率および/または幾何学的形状における異方性を有するナノスケール要素のナノ構造を有する散乱層を提供するステップと、白色光を散乱層に向けるステップと、散乱層にわたって電場を生成するステップとを含む。電場に応じて、ナノスケール要素は、白色光に対する種々のレイリー状散乱条件を引き起こす。いくつかの実施形態において、調整可能太陽-天空模倣照明のための方法は、ナノ液滴内で液晶の配向を整合または不整合させることによって、レイリー状散乱断面積を変化させるステップを含むことができる。
【0028】
別の態様は、指向性光に対する彩色的に調整可能な散乱相互作用を提供するための液晶拡散器ユニットを製造するための方法を参照する。方法は、液体プレポリマーを提供するステップと、屈折率における異方性を有する液晶を分散させるステップと、任意選択的に液体プレポリマー中にスペーサ要素を分散させるステップと、一対の面電気コンタクトの間に、プレポリマーおよび液晶、ならびに任意選択的にスペーサ要素の分散を提供するステップであって、面電気コンタクトの少なくとも一方は、可視波長範囲において透明であるように構成されている、分散を提供するステップと、ポリマーによって分離される液晶のナノ液滴の形成をもたらすために、分散内の相分離を制限する時間スケールおよび/またはUV硬化光強度および/または硬化温度のような硬化条件において分散を硬化させるステップであって、結果、面電気コンタクトの対の間の中間層として、高分子分散液晶層が形成される、硬化させるステップとを含む。いくつかの実施形態において、面電気コンタクトの対は、それぞれのPET層および/またはガラスシート上に設けることができる。
【0029】
上記の態様のさらなる実施形態が、参照により本明細書に組み込まれる従属請求項に開示されている。例えば、いくつかの実施形態において、散乱層は、ナノスケール散乱要素の屈折率不整合の変動範囲および/または有効サイズの変動範囲によって規定される彩色調整可能範囲を有することができる。散乱層は、CIE1931標準観測者(2°)について、可視スペクトル内部で一定であるスペクトルパワー分布を有する非偏光白色光(E標準光源)が、特に法線入射、または、法線入射から45°のような、30°から50°までの角度範囲内のような、約20°、40°、もしくは60°の入射角までの角度範囲内の選択される1つもしくはすべての入射角度について、散乱層に対するある入射角度で衝突するとき、正透過光のスペクトルが、それぞれ0.20および0.465よりも大きいu’v’座標を有する、CIE1976u’v’色度図内の色点に対応するように、彩色調整可能範囲内の光散乱断面積を提供するように構成することができる。散乱層は、特に法線入射、または、法線入射から約20°、40°、もしくは60°の入射角までの角度範囲内の選択される1つもしくはすべての入射角度について、散乱層に対するある入射角度にある非偏光白色光によって測定されるとき、正スペクトル透過率が、それぞれ0.20および0.465よりも大きいu’v’座標を有する、CIE1976u’v’色度図内の色点に対応するように、彩色調整可能範囲内の光散乱断面積を提供するように構成することができる。散乱層は、可視スペクトル内部で一定であるスペクトルパワー分布を有する衝突白色光(E標準光源)について、正透過角から20°未満だけ逸脱する角度を除くすべての散乱角にわたって積分された拡散光のスペクトルが、それぞれ0.22および0.485よりも小さいu’v’座標を有する、CIE1976u’v’色度図内の色点に対応するように、彩色調整可能範囲内の光散乱断面積を提供するように構成することができる。散乱層は、可視スペクトル内部で一定であるスペクトルパワー分布を有する衝突白色光(E標準光源)およびCIE1931標準観測者(2°)について、彩色調整可能範囲内の透過光のスペクトルまたは彩色調整可能範囲内の正スペクトル透過率と関連付けられる色点と、拡散光のそれぞれのスペクトルに関連付けられる色点との間のユークリッド距離Δu’v’が、0.02以上であり、特にさらには0.03以上であり、またはさらには0.04以上であり、またはさらには0.05以上であるように、彩色調整可能範囲内の光散乱断面積を提供するように構成することができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、彩色調整可能範囲内の正透過光のスペクトルまたは正スペクトル透過率に関連付けられる、少なくとも1つの色点、およびプランク軌跡のユークリッド距離Δu’v’は、0.1以下、特にさらには0.08以下、またはさらには0.05以下、またはさらには0.03以下、またはさらには0.01以下であり得る。
【0031】
CIE1931標準観測者(2°)についての、最大散乱断面積に対応する彩色調整可能範囲内の構成について、正透過光または正スペクトル透過率は、可視スペクトル内部で一定であるスペクトルパワー分布を有する非偏光白色光(E標準光源)が法線入射から約60°の入射角までの範囲内の、散乱層に対するある入射角で衝突するとき、それぞれ0.2117および0.4851より大きい、またはさらにはそれぞれ0.212および0.485より大きい、またはさらにはそれぞれ0.225および0.5より大きい、またはさらにはそれぞれ0.2265および0.5029より大きい、またはさらにはそれぞれ0.24および0.514より大きい、またはさらにはそれぞれ0.243および0.5166より大きい、またはさらにはそれぞれ0.2598および0.5261より大きいなど、それぞれ0.20および0.465より大きいu’v’座標を有する、CIE1976u’v’色度図内の色点に対応することができる。加えてまたは代替的に、最大散乱断面積に対応する、彩色調整可能範囲内の構成について、CIE1931標準観測者(2°)について、正透過光または正スペクトル透過率は、0.42もしくは0.4よりも小さい、特に0.38もしくは0.3605よりも小さい、またはさらには0.35よりも小さいなど、0.465よりも小さいu’座標を有する、CIE1976u’v’色度図内の色点に対応することができる。
【0032】
いくつかの実施形態において、波長依存光散乱断面積は、ナノスケール散乱要素の屈折率、特に、屈折率における異方性および/もしくはナノスケール散乱要素の構成物質の屈折率、ナノスケール散乱要素のサイズおよび/もしくは形状、特に、幾何学的形状における異方性、ホスト材料の屈折率、特に、屈折率における異方性および/もしくはホスト材料の構成物質の屈折率、ナノスケール散乱要素とホスト材料との間の充填率、ならびに/または散乱層の層厚を含む、その光学特性に影響を与える散乱層の特性の特定の選択によって与えられる。いくつかの実施形態において、ナノスケール散乱要素の平均サイズは、約30nmから約300nmまでの範囲内のような、約20nmから約400nmまでの範囲内のような、約10nmから約500nmの範囲内であってもよく、かつ/または、ナノスケール散乱要素、特に液晶液滴と、ホスト材料との間の体積分率は、約40%から約60%までの範囲内のような、約30%から約70%までの範囲内であってもよく、かつ/または、散乱層の層厚は、例えば、約30μmから約200μmまでの範囲内またはさらには約50μmから約100μmまでの範囲内など、約20μmから約350μmまでの範囲内のような、約10μmから約500μmまでの範囲内であってもよく、任意選択的に、層厚は、スペーサ要素によって規定され、かつ/または、散乱層の10cm×10cmの面積にわたって10%未満の厚さの変動を有する。
【0033】
いくつかの実施形態において、定数cは、5.836×107nm4以上、特に、3.235×108nm4以上のような、1.664×108nm4以上である。その上、いくつかの実施形態において、定数cは、3.363×109nm4以下、特に、1.6499×109nm4以下のような、2.5×109nm4以下である。
【0034】
概して、拡散器ユニットは、特にナノスケール散乱要素および/またはホスト材料と相互作用するための、電場を提供するための一対の面電気コンタクトを備えることができ、面電気コンタクトは、散乱層の対向する両面上に延在し、面電気コンタクトの少なくとも一方は、可視波長範囲において透明であるように構成されている。拡散器ユニットは、反射層、反射シート面、特にUVもしくはIR吸収/保護層、および/または、波長無依存拡散層、および/または、面電気コンタクトの1つを提供する透明伝導性酸化物層をさらに備えることができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、散乱層の光学パラメータは、電場が印加されていない状態で、散乱層を通過する白色光が、暖色寄りの直接光部分(特により低いCCTを有する)および寒色寄りの拡散光部分(特により高いCCTを有する)に分離されるように、選択することができる。
【0036】
いくつかの実施形態において、青色(440nmから460nmまでの波長間隔内にあるなど)の波長依存光散乱断面積は、黄色(540nmから560nmまでの波長間隔内にあるなど)よりも大きいものであり得、特に、少なくとも約30%大きいなど、少なくとも約15%大きいものであり得る。その上、黄色(540nmから560nmまでの波長間隔内にあるなど)の波長依存光散乱断面積は、赤色(640nmから660nmまでの波長間隔内にあるなど)よりも大きいものであり得、特に、少なくとも約20%大きいなど、少なくとも約10%大きいものであり得る。その上、波長依存光散乱断面積は、波長の増大とともに低減し得、例えば、波長が増大するときに単調に低減する(λ1>λ2についてσ(λ1)<σ(λ2))。
【0037】
いくつかの実施形態において、電場生成器は、白色光源の指向性白色光の入射方向に対してナノスケール散乱要素の相対屈折率および/または有効サイズを設定することによって、少なくとも2つの動作状態を提供するように構成することができる。任意選択的に、少なくとも2つの動作状態は、周囲において生成される照度均一性が異なるレイリー状散乱条件を提供することができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、照明システムは、電場生成器によって生成される電場の強度を制御するための制御ユニットを備えることができ、結果、光散乱断面積が制御される。加えてまたは代替的に、照明システムは、散乱層に対する指向性白色光の入射角を変更するための、特に、白色光源を散乱層に対して位置決めするか、または、散乱層を白色光源に向けるように構成されている取り付け構造を備えることができ、結果、ナノスケール散乱要素の屈折率および/または有効サイズにおける異方性に起因して変化するレイリー状散乱相互作用をもたらす、散乱層への指向性白色光の複数の異なる入射角が提供される。加えてまたは代替的に、照明システムは、指向性白色光の偏光を変化させるための波長板のような偏光子を備えることができる。
【0039】
本開示の他の特徴および態様は、以下の説明および添付の図面から明らかになる。
【0040】
本明細書に組み込まれるとともに本明細書の一部を構成する添付の図面は、本開示の例示的な実施形態を示し、本明細書とともに、本開示の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1A-1B】知覚される照明状況を変更するために拡散器ユニットの透過率を彩色的に調整するための太陽-天空模倣照明システムの概略図である。
【
図2A-2B】透過率を彩色的に調整するための液晶液滴ベースの拡散器ユニットの動作状態の概略図である。
【
図3】例示的なPDLCベースの拡散器ユニットの入射角に依存する総断面の概略図である。
【
図4A-4B】例示的な屈折率波長依存関係およびPDLCベースの拡散器ユニットに使用される物質の例示的な組み合わせを示す図である。
【
図5A-5D】白色光源照明に関する拡散器ユニットの調整された透過率の色彩知覚および拡散光のそれぞれの色彩知覚の例示的な変化を示すための、概略的な均等色度図である。
【
図6A-6C】PDLCベースの拡散器ユニットの3つの動作状態に対しての、2つの例示的な可視波長に関する光相互作用の差を示す2つの概略的な極座標プロットおよび照度プロットを示す図である。
【
図7A-7J】LCナノ液滴ベースの拡散器ユニットの概略断面図である。
【
図8】LCナノ液滴ベースの拡散器ユニットを製造するための過程を概略的に示す図である。
【
図9A-9B】サイズ分布の概略プロットおよびそれぞれのSEM画像を示す図である。
【
図10A-10B】調整可能拡散器ユニットを透過および反射においてそれぞれ使用する例示的な照明システムの概略図である。
【
図11】整列したLCナノ液滴との光相互作用を彩色的に調整するための、可動光源を有する照明システムの動作の概略図である。
【
図12】傾斜した入射について偏光状態変動を伴う透過率を彩色的に調整するための、照明システムの動作の概略図である。
【
図13】透過率を彩色的に調整するための非対称形状散乱体を有する拡散器の動作状態の概略図である。
【
図14】整列した非対称形状散乱体との光相互作用を彩色的に調整するための、可動光源を有する照明システムの動作の概略図である。
【
図15】単位面積あたりの最小数Nのナノスケール散乱要素の例示的な三次元グラフ図である。
【
図16】単位面積あたりのナノスケール散乱要素の数Nの上限値を示す概略的な均等色度図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下は、本開示の例示的な実施形態の詳細な説明である。詳細な説明において説明されており、図面に示されている例示的な実施形態は、本開示の原理を教示するように意図されており、当業者が、多くの異なる環境において、多くの異なる用途のために、本開示を実施および使用することを可能にする。それゆえ、例示的な実施形態は、特許保護の範囲を限定する記載であるようには意図されておらず、そのように解釈されるべきではない。むしろ、特許保護の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されるものとする。
【0043】
本開示は、部分的に、大気を通じた様々な太陽光の光路長、すなわち、散乱に関与する散乱体の数の影響によって、自然に引き起こされる光学的効果を再現することができるという認識に基づく。具体的には、散乱体の屈折率および/または幾何学的寸法における異方性をもたらす散乱状況を使用して、自然に知られているような類似の多用途の太陽-天空外観、具体的には、直接太陽光照明の(および天空の)変化する色を生成することができることが認識された。
【0044】
より具体的には、屈折率における異方性が、レイリーまたはレイリー状散乱に寄与する相対屈折率mを変化させることを可能にし、一方、散乱体の幾何学的寸法における異方性が、照明を受けている散乱体の「見かけの」サイズd、および、したがって、レイリーまたはレイリー状散乱に寄与するナノ構造のその有効粒子径Dを変化させることを可能にすることが認識された。
【0045】
その上、最初に言及した照明システムのもののような構成において、所望の散乱条件(例えば、太陽-天空外観を模倣するために必要とされる)をもたらすために特定的に予め選択された数の散乱体を使用することは、散乱体の数が固定のプリセットパラメータであるため、その適応性が制限されることが認識された。しかしながら、散乱体の数が固定であるにもかかわらず、上記で認められたパラメータ指数不整合(相対屈折率m)および有効粒子径Dを変化させることによって、散乱条件を調整することを可能にする光学散乱構成が認められた。
【0046】
その上、本開示は、部分的に、上述した開示文献に記載されているような、ナノ粒子ベースのレイリー状散乱パネルが、様々な太陽-天空外観を模倣するのに必要な程度まで光学散乱条件の変化を可能にしない場合があるという認識に基づく。しかしながら、例えば、液晶ベースの構造を導入することによって、大きい範囲内で散乱パラメータが変化し、それによって、散乱パラメータを複数の値(すなわち、少なくとも2つの異なる散乱条件)に調整(設定/適合)することが可能であることに起因して、そのような拡散器パネルの透過率を調整可能にすることができることが認識された。例えば、(例えば、レイリー状散乱の)ナノサイズ範囲内の散乱中心として、固体透明ホスト材料内に分散された液晶液滴を使用して、液晶液滴にわたって印加される電圧を変化させることによって、寄与する相対屈折率を設定することができることが認識された。具体的には、電場を印加することによって、個別のナノ液滴内の液晶配向が、一定程度まで整列する。
【0047】
この文脈において、例えば、硬化光強度を増大させ、および/または、液晶/ポリマー混合物の充填率を増大させて、高分子分散液晶(PDLC)フィルム/層が形成されるようにすることによって、例えば、光重合反応内での相分離の動体を変化させることによって、液晶液滴のサイズを、ポリマーマトリックス内でナノスケールまで低減することができることが認識された。それによって、例えば、約50nmまたは約100以下の全幅半値(FWHM)値で、例えば、約100nmまたは約200nmのような、例えば、約10nmから約500nmまでの範囲内の平均サイズをもたらす液晶液滴サイズ分布を生成することができることが認識された。
【0048】
その上、マトリックスの選択される屈折率ならびに液晶の寄与する常光線屈折率および異常光屈折率に応じて、原則的に散乱条件を適合させるために利用可能である屈折率不整合の範囲を選択することができることが認識された。液晶液滴含有層の厚さを低減することによって、例えば、0Vから標準220V ACのような、約0Vから約500Vの範囲内の低電圧値で、必要な電場値を達成することができることがさらに認識された。それによって、調整可能拡散器ユニットの低電圧実施態様が可能になる。
【0049】
さらに、例えば、タイル構造の約10cm×10cmの範囲内の小さい閉領域サイズから始まって、例えば、大きい連続領域の1m×2m(またはそれ以上)のサイズを有する閉領域にわたって延伸する照明システム、特に面照明システムの光学レイアウトに適合される横方向寸法を有するPDLCフィルムを生成することができることが認識された。
【0050】
その上、例えば、例としてPDLC層の10cmの横方向寸法にわたって10%未満の均質性を有する、300μm、またはさらには200μm未満から100μm未満まで、またはさらには50μm未満のような、500μm未満の均質な厚さを有するPDLC層を生成することができることが認識された。したがって、特に天空として知覚される大きい領域を含む太陽-天空模倣照明システムに必要なサイズにわたって、均質な散乱体分布および均質な散乱挙動を達成することができる。
【0051】
例えば、適合可能なホスト屈折率内で静的散乱体光学条件が使用される反転構成において、屈折率における異方性を使用することができることがさらに認識された。その上、屈折率における異方性は、可変方向の入射光の文脈において使用することができる。
【0052】
さらに、幾何学的に非対称な散乱中心の整列の程度を変化させること、または、様々な方向の入射光の文脈において整列された幾何学的に非対称な散乱中心を使用することによって、同様の効果を達成することができることが認識された。
【0053】
最後に、本明細書において開示されている調整可能なレイリー散乱の概念を使用して、例えば、白色光源に基づいて、一日のうちの様々な時間で知覚されるように、太陽模倣光ビームの色を調整することができることが認識された。色の変化は、例えば、一日のうちの時間にリンクされる知覚における、知覚される時間変化を提供することを可能にする。方向性に変化を加えることによって、さらに、非静的な照明条件が可能になる。したがって、透過率の調整は、例えば、室内、特に照明される領域内で照明システムによって提供される照度の所望の均一性を設定することを可能にする調整可能照度プロファイルを可能にする。
【0054】
当業者であれば、様々な条件、実施態様、および/または応用形態について広範に適用および理解することができる、それらの光学的態様および本明細書において開示されている実施態様のそれらの態様を認めるであろう。したがって、少なくとも一定程度要約した開示に的を絞って、1つの条件、実施態様、および/または応用形態の中で、特定の態様がより詳細に例示され、当業者は、別の条件、実施態様、および/または応用形態における適切な転換および等しい適用可能性を諒解することが分かる。
【0055】
以下において、最初に光学的考察が全般的に説明され、次いで、液晶ナノ液滴実施態様の文脈で例示的に説明される(
図1A~
図9B)。次いで、概して、例えば、レイリー状散乱を使用する太陽-天空模倣に適用可能である、照明システムの例示的な構成が開示される(
図10Aおよび
図10B)。その後、入射光方向を変化させること(
図11および
図14)、入射光の偏光を変化させること(
図12)、および、有効散乱体サイズを変化させること(
図13)のような、散乱体の異方性を調整および/または提供するための種々の光学的手法を使用するさらなる(少なくとも部分的に組み合わせ可能な)構成が開示される。最後に、調整可能散乱と関連付けられる微視的パラメータ範囲が
図15および
図16に関連して開示される。
【0056】
図1Aおよび
図1Bは、太陽-天空模倣照明システム1を部屋3の中で例示的にどのように実施することができるか、および、照明が観察者5によってどのように知覚されるかを示す。具体的には、
図1Aは、モデル照明構成の写真のような図解であり、
図1Bは、
図1Aの図解を描画で再現したものである。照明システム1の例示的な設定において、天井7は、レイリー状散乱層を備える照明システム1のパネル形状拡散器ユニット9を備える。照明システム1の動作中、拡散器ユニット9は、照明システム1の白色光源(図示せず)によってある傾斜角の下で上方から照明される。
【0057】
部屋3は、白色光源の白色光に由来する2つのタイプの光によって照明される。具体的には、レイリー状散乱層と相互作用することによって、白色光は、暖色寄りの透過成分(より低いCCT)および寒色寄りの拡散成分(より高いCCT)に分離される。指向性光として、暖色寄りの成分は太陽光をシミュレートし、部屋3内の制限された領域11を照らして特定の彩色的色調に設定し、例えば、そのより低いCCTが、制限された領域11内の例示的な点12Aにおいて測定される。制限された領域11は、拡散器ユニット9のサイズおよび透過白色光の発散によって得られる。拡散光として、制限された領域11全体からの寒色寄りの成分が、天空をシミュレートし、別の特定の彩色的色調で実質的に部屋3全体を照明する。例えば、そのより高いCCTが、制限された領域11の外側の例示的な点12Bにおいて測定される。
【0058】
本明細書において開示されている概念について、光源自体の、すなわち、光源を見ているときの外観は、あまり関係なく、さらなる詳細については上述した応用形態が参照される。反射および/または透過における設定に関するさらなる詳細は、本明細書において、
図10Aおよび
図10Bに関連して説明される。上述した開示文献は、付加的に、例えば、壁および/または天井に設けられている拡散器ユニットの様々な形状を有する複数の実施形態を例示している。
【0059】
従来技術のシステムにおいて、レイリーパネル内の散乱パラメータは、ナノ粒子のタイプおよび数ならびにホスト材料のタイプによって固定される。したがって、例えば、晴れた青空の日の正午の状況に対応するように、2つのCCT値も固定される。
【0060】
本明細書において記載されている実施形態は、散乱中心の屈折率不整合および/または有効サイズを介して散乱断面積を適合させることによって、透過(および拡散)光の知覚される色を変化させることを可能にする。具体的には、白色-黄色(橙色を超える)で知覚される状態から赤みがかった色で知覚される状態へと散乱させることによって、拡散器ユニット9の透過率が調整され、したがって、透過光の色が調整されるような構成が可能となる。透過率、したがって、透過光の色の調整は、日中の太陽の色変動を模倣する可能性を開き、したがって、静的システムとは対照的に、時間の感覚をユーザに提供することができる。
【0061】
散乱によって透過光を調整することによって、吸収に基づく色調整とは対照的に、原則的に損失のない調整が可能になる。散乱光は、残りの透過指向性光とは異なる拡散放出特性によって周囲を照明することによって(再)使用される。点12Aおよび点12Bにおいて知覚される色は、波長依存散乱過程によって、すなわち、好ましくは、白色光ビームから青色側の波長寄与分を取り出すことによって生成される。
【0062】
散乱による調整に起因して、部屋の中の照明は、太陽光線領域(例えば、点12Aにおける)において低減し、散乱光による照明のみを受ける残りの領域(例えば、点12Bにおける)において増大する。
【0063】
言い換えれば、本明細書において開示されている概念は、晴れた青空の日の正午から朝(または夕方)における水平に差す太陽までの色範囲をカバーする照明システムの動作状態間の切り替えを可能にする。下記に説明するように、本明細書において開示されている実施形態は、例えば、日の出/日の入りにおいて太陽の周りで見ることができるような、太陽の色の、日暮れの赤みがかった色に向けての、および、濃い青空の色の、蒼白色へのシフトを可能にする。
【0064】
照明システムによってもたらされるCCTを参照すると、透過光のCCTは、拡散光のCCTよりも低い。しかしながら、異なる動作状態において、拡散器ユニット内の散乱活動の低減または増大に起因して、透過光のCCTおよび散乱光のCCTは、両方とも同じ方向に変化する、すなわち、両方とも増大または低減する。
【0065】
光源の放出される色スペクトルは、上記の調整効果を達成するように適合される必要はないことに留意されたい。概して、光源は、例えば、白色光源であってもよい。光源の例示的な実施形態は、LEDベースの発光器、または、放電ランプベースの発光器、または、水銀媒体アークヨウ素化合物ランプベースの発光器、または、ハロゲンランプベースの発光器、および、それぞれの発光器の下流のそれぞれの光学系を含んでもよい。
【0066】
本明細書において開示されているCCT値、u’v’値、および透過率を識別するために、白色光源は、例えば、可視スペクトル内の等エネルギー放射体である、E標準光源である。理論的基準であるが、E標準光源は、すべての波長に等しい重みを与え、したがって、特に波長依存散乱調整に適している。例えば、光学的特徴を基準サンプルと比較するときに、他の標準光源(大きい可視スペクトル範囲にわたってサンプルへの均一な照度(lux/m)を提供するD65標準光源など)が使用され得、例えば、単純にE標準光源のスペクトルによって結果もたらされるスペクトルを正規化することによって、測定結果をE標準光源に転換することができる。
【0067】
再び
図1Aおよび
図1Bを参照すると、制限された領域11を異なる色調で照明することができ、この色調が、部屋の知覚される色を支配し得る。同時に、拡散光の色が変化し、したがって、同様に部屋3の照明に影響を及ぼすことができる。知覚される色調に加えて、領域11の中および外部の照度も調整によって影響を及ぼされ、したがって、部屋3の中の照度分布の均一性を変更することが可能になる。
【0068】
以下において、液晶分子の集合の屈折率の調整可能性の態様が、
図2Aおよび
図2Bに関連して説明される。そのような集合を液晶(LC)ベースの拡散器ユニット内のナノ液滴を備えるナノ構造内に設ける結果として、光相互作用を彩色的に調整するために使用することができるレイリー状散乱がもたらされる。
【0069】
図2Aおよび
図2Bは、下記に説明するようなLCベースの拡散器ユニット13の2つの異なる動作状態を示す。LCベースの拡散器ユニット13は、ホスト材料21内のLCナノ液滴19から形成される層17を備える。例えば、層17は、高分子分散液晶(PDLC)フィルムであってもよい。層17の各面は、面電気コンタクト23’を提供するカバーシート、例えば、ITOガラスシート23と接触している。面電気コンタクト23’は、層17の側面に沿って二次元において延在する。面電気コンタクト23’に電圧(DCまたはAC)が印加されると(
図2Bにおいて矢印27によって概略的に示されているように)、面電気コンタクト23’の対は、二次元フィルム/層内に分散したLCナノ液滴19と相互作用するための(大面積)電場を生成することを可能にする。面電気コンタクト23’の対の少なくとも1つは、可視光を透過するように構成される。したがって、例えば、白色光源からの光は、層17に入り、ナノ液滴19において散乱することができる。したがって、ナノ液滴19は、ナノスケール散乱要素を表す。
【0070】
液晶が(少なくとも)光学一軸異方性を有すると仮定すると、その屈折率は、2つの主屈折率、光軸に直交する直線偏光状態と関連付けられている常光線屈折率no、および光軸に並行な直線偏光状態を有する異常光屈折率neによって近似することができる。したがって、光軸に沿ったまたは光軸に垂直な液晶中の光伝播は、異なる屈折率を受けることになる。それらの差の結果として、複屈折Δn=ne-noがもたらされる。複屈折Δnは、通常、LCについては正であり、例えば、約0.1または0.3など、0から約0.5までの範囲内で変動し得る。neおよびnoの潜在的な範囲を示す様々なタイプの液晶が下記に言及される。
【0071】
図2Aにおいて、複数のナノ液滴19の各々の結果もたらされる光軸の方向が、矢印25によって示される。いかなる外部影響もない(例えば、電場が印加されない)場合、複数のナノ液滴19の矢印25の向きは、すべての方向に任意に分散されていると仮定することができる。言い換えれば、そのようなポリマーフィルム内の、電場が印加されていない液晶液滴の集合において、各単一のナノ液滴の内部で、液晶分子は、LCの組織化特性に起因して特定の秩序を有し得、結果として、矢印25によって示される光軸がもたらされるが、各ナノ液滴内のその秩序はナノ液滴ごとに本質的にランダムに変化する。結果として、平均屈折率〈n〉を、液晶液滴の集合と関連付けることができる。
【0072】
【数14】
平均屈折率〈n〉は、入射角とは無関係であり、LCベースの拡散器ユニット13のOFF動作状態と関連付けることができる、すなわち、面電気コンタクト23’の間に電圧は印加されない(ΔV=0)。平均屈折率〈n〉は、本明細書においてn_OFFとしても参照される。
【0073】
図2Bを参照すると、面電気コンタクト23’の間に電場を印加することによって、下記にさらに説明するように、各ナノ液滴内のLC分子の整列が、電圧/電場の増大とともに、漸進的に導入される。例えば、例として約10~30V/μmの電場値が、
図2Bに示すように、すべての向きの最大整列とともに、ナノ液滴内のLCの最大の整列を強制するために必要とされ得る。
【0074】
整列は、特定の方向において伝播する光が経験する屈折率を変化させる。具体的には、整列は、LCの異方性が層17の光学的特徴に影響を及ぼし始めるように、光軸をもたらすナノ液滴のランダムな配向を除去する。少なくとも一定程度まで面電気コンタクト23’間の電圧を印加することによって(ΔV≠0)、LC/LCナノ液滴の任意の関連付けられる電気(永続的なまたは誘導される)双極子モーメントと一致する電場による矢印25の整列が強制される。
【0075】
整列は、電場の増大とともに増大する。ナノ液滴内の液晶相と周囲のホスト材料との間の界面には、ナノ液滴内のすべてのLCが電場によって整列し得るとは限らないような、ホスト材料とLCとの間の相互作用があり得る。層17の所与の構成について、一般的に、飽和電圧Vsatが、最大(または実質的に最大)の整列を達成する電場と関連付けられる。
図2Bは、すべての矢印25が矢印27の示されている電場方向に並行であることを示すことによって、VsatにあるLCの最大(または実質的に最大)の整列を概略的に示す。
【0076】
例えば、すべての分子の光軸が電場に沿って整列する(すなわち、PDLCフィルムにわたって飽和電圧が印加される)と仮定すると、電場/光軸に沿って伝播する光は、実質的に屈折率noを経験する。したがって、その特定の伝播方向について、ナノ液滴内で経験される屈折率の調整可能性範囲は、〈n〉からnoまで延伸し、これは本明細書においては調整範囲δn=|〈n〉-no|として参照される。
【0077】
ナノ液滴とホスト材料との間の界面の上述した影響に起因して、影響を受ける相対的に大きい体積部分を有する小さいナノ液滴、および、あまり影響されない小さい中央内側部分について、ホスト材料との相互作用によって影響を受けるそれらの液晶分子もまた再配向させるために、より大きい電場が必要とされる。例えば、ナノ液滴ベースのPDLCフィルムについて許容可能な低電圧にあってさえもVsatに達することができるように、より低い電圧についてナノ液滴のより大きい電場強度を可能にするために、層17の厚さを低減することができる。
【0078】
光軸の方向に対する一定の角度下での光伝播は、
図3から明らかになる光軸の方向における直線偏光方向の異常光屈折率n
eを少なくとも部分的に経験する。
図3において、総集合散乱断面積量σ
total(本明細書においては総散乱断面積としても参照される)が、下記により詳細に説明される、約550nmの波長、およびVsatにおける最大整列のNOA65およびE7のPDLCフィルム構成についてシミュレートされる。具体的には、レイリー状/ミー散乱モデルから導出される一定の値で、屈折率n
o、〈n〉、およびn
e(それぞれ線28A、28Bおよび28Cとして示されている)と関連付けられる等方性ナノ液滴の総散乱断面積の入射角θからの独立性がある。
【0079】
異方性LCナノ液滴およびp偏光状態にある入射光について、総散乱断面積の入射角θへの依存性が、概略曲線29として示されている。異方性LCナノ液滴およびs偏光状態における入射光について、異方性はs偏光した光に影響を及ぼさないため、ここでも、等方性のLCベースのナノ液滴の線28A(noと関連付けられる断面)に対応する値にある、総散乱断面積の入射角θからの独立性がある。直交入射について、noと関連付けられる総散乱断面積のみが適用され、一方、傾斜した入射については、異方性が散乱に寄与することが認められる。依存性は、単一粒子散乱断面積に関係する。
【0080】
NOA65およびE7のPDLCフィルム構成について(例えば、
図4Aも参照されたい)、n
oについて、実質的に屈折率不整合は存在せず、結果、総散乱断面積はゼロに近いことに留意されたい。n
eについて最大の屈折率不整合が得られ、結果として、「平行」入射についてp偏光状態において最大の総散乱断面積がもたらされる。
【0081】
図4Bを参照して、他のPDLCフィルム構成について、n
oはn
hと異なり得、結果、s偏光については常に屈折率不整合が存在することに留意されたい。しかしながら、n
hの相対位置がn
oおよびn
eによって画定される範囲の間にあるかまたは外側にあるかに応じて、当業者には理解されるように、単一の偏光については総断面の「ゼロ」交差が存在することもしないこともある。
【0082】
さらに、偏光されていない光ビームについては、p偏光およびs偏光の総散乱断面積の重ね合わせが適用される。
図3に示す例において、これは、光の50%がいかなる角度においても散乱されないこと、および、残りの50%の光が曲線29に従って散乱されることを意味する。言い換えれば、曲線29の総散乱断面積は半分になるが、その全体的な形状は維持される。同様の考察が、他のPDLCフィルム構成にも当てはまる。
【0083】
NOA65およびE7のPDLCフィルム構成について、
図3はまた、電場に基づく調整、入射角に基づく調整、および偏光に基づく調整のような、本明細書において論じられている様々なLCに基づく調整構成の調整可能性をも示す。具体的にはこの構成では、PDLCフィルムは、Norland optics Inc.によって製造されているNorland Optical Adhesive65(「NOA65」として知られている)に組み込まれたMerck KGaAによって製造されているネマチック混合液晶「E7」を含む。
【0084】
屈折率の不整合(および、したがって、相対屈折率mの調整に起因するレイリー状散乱断面積)の調整に関連して、LCベースの拡散器ユニット13の実施形態は、すべての入射方向に適用可能な平均屈折率n_OFF(すなわち、〈n〉)を有するOFF動作状態を可能にする。加えて、印加される電圧に応じて、各入射方向について、屈折率は、Vsatに達し、関連付けられる屈折率(実質的にすべてのLCが整列されることに基づく)が確立されるまで、変化することになる。これは、OFF動作状態において開始し、Vsat動作状態まで継続する、V動作状態の範囲に対応する。
【0085】
例えば、矢印30Aおよび30Bは、直交入射(0°)および傾斜した入射(45°)の電場に基づく調整の調整範囲を示す。総散乱断面積は、各入射角について、V=0で〈n〉に対応する非ゼロの値において開始し、直交入射については(ほぼ)ゼロまで低減し、一方、45°の入射については、曲線29の偏光されていない光に適合した値に達するまで増大する。
【0086】
その上、少なくとも一定程度の整列(すなわち、ランダムな分布がない)をもたらす印加電場について、入射角θが非ゼロであり、「散乱されることになる」光の偏光が変化するとき、屈折率は変化することになる。
【0087】
30°の入射角について、矢印30Cは、例えばVsatによって静電場が印加されると仮定して、s偏光からp偏光までの偏光変化の調整を示す。s偏光について、総散乱断面積は、各入射角についてほぼゼロにおいて開始し、(0°よりも大きい少なくとも一定の入射角を仮定して)入射角30°の矢印30Cによって概略的に示されているように、p偏光の総散乱断面積まで増大する。
【0088】
その上、少なくとも一定程度の整列(すなわち、ランダムな分布がない)をもたらす印加電場について、「散乱されることになる」光の入射角θが変化するとき、屈折率は変化することになる。本明細書において、入射角の変化は、例えば、「移動する太陽」の特徴を有する照明システムと関連付けられる。この態様は、(V依存)θ動作状態に対応する。言及したように、θ動作状態は、原則的に、任意のV≠0に適用可能であるが、レイリー散乱状態に対する移動する太陽の最大の効果は、Vsatについて与えられる。その上、彩色調整の方向は、〈n〉とnoとの間の相対サイズ、すなわち、より多くの散乱が、白色光の拡散器ユニットへの、例えば、法線入射の近くで発生するか、または、「平行」入射の近くで発生するかに依存する。移動する太陽の彩色的な外観は、電圧、すなわち、電場または位置調整の度合いを選択することによって、さらに精細に調整することができる。
【0089】
矢印30Dは、例えばVsatによって静電場が印加されると仮定した、入射角の変化の調整を示す。ここでも、ほぼゼロの総散乱断面積による直交入射から開始して、散乱活性は、入射角の増大とともに、偏光されていない光に適合した曲線29に沿って増大する。
【0090】
さらに、屈折率の不整合の同じ調整を、ホスト材料がLCから構成され、ナノ液滴が例えば固体ナノ粒子のような静的ナノ構造に置き換えられた構成において実現することができることが明らかになる。
【0091】
上述したように、調整挙動(散乱活性の増大と低減との間で増大/低減/変化する)は、他のPDLCフィルム構成については、本明細書において開示されている様々な調整手法を使用して、相対屈折率に応じて異なり得る(後述する
図4Bを参照されたい)。
【0092】
要約すると、予め選択されたもしくは変化する伝播方向、予め選択されたもしくは電場、および/または予め選択されたもしくは変化する偏光に応じて、異なる光学散乱パラメータを有する拡散器ユニット13の動作状態を選択することができる。
【0093】
上記に照らして、特定の層構成の不整合を特性化する特定の屈折率パラメータ、すなわち、(調整不可能な材料のPDLCフィルムにおける)ホスト材料の屈折率nh、平均屈折率〈n〉(ナノ液滴内のLCのランダムな平均配向と関連付けられるn_OFF)、および飽和における屈折率noが存在する。LC液滴ベースの散乱ユニットに対する直交入射について、それらのパラメータは、LCベースの散乱ユニットの彩色調整可能性を規定する。上記で指摘したように、彩色調整可能性は、入射角によってさらに変化する。
【0094】
図4Aは、可視波長範囲についての、上記のパラメータ、ならびに、したがって、NOE65およびE7の上記で言及した例示的なPDLCフィルムの調整可能性の範囲を示す。E7は、相対的に高い複屈折性および正の誘電異方性を有する。E7は、特定の組成において、いくらかのシアノビフェニルおよびシアノテルフェノールを含有する。これらの光学特性は、その後、PDLC散乱ユニットにおけるレイリー状散乱に使用することができるナノ液滴の屈折率の大きい調整可能範囲を可能にする。NOA65は、散乱ユニットの透明な構造的基礎を形成する透明で、無色の液体フォトポリマーである。NOA65の硬化は、紫外線光暴露によって実施することができ、硬化過程は主に、重合に使用されるUV光の強度に依存する。
【0095】
具体的には、
図4Aは、450nmにおける約1.540(20℃)から650nmにおける1.524まで低減するNOA65の屈折率n
hを示す(データ点「NOA65」)。さらに、
図4Aは、ランダムに配向した液晶分子に関するE7の平均屈折率n_OFFを示す(電圧は印加されない、データ点「n_OFF」)。しかし平均屈折率n_OFFは、450nmにおける約1.632(20℃)から650nmにおける1.590まで、概してNOA65ほどのより大きい屈折率において低減する。同様に、整列した液晶分子の常光線屈折率(すなわち、飽和n
o、すなわち印加される飽和電圧V=Vsatにおける常光線屈折率、データ点「no(20°)」)も、NOA65のものと同等の値において低減する。例えば、E7の常光線屈折率n
oは、450nmにおける約1.543(20℃)から650nmにおける1.518まで低減する。したがって、調整可能性の範囲δnは、450nmにおいて0.09かつ650nmにおいて0.07であり、したがって、可視波長範囲にわたって同等である。
図4Aにおいて、加えて、それぞれの液晶分子の異常光屈折率n
e(データ点「ne(20°)」)および代替的なホスト材料としてのNOA81の屈折率(データ点「NOA81」)が、完全を期すために示されている。代替的なポリマーNOA81の屈折率n
hは、450nmにおける約1.58(20℃)から650nmにおける1.56まで低減する(データ点「NOA81」)、すなわち、NOA65よりも大きい。
【0096】
NOA65のマトリックスnhおよび飽和no下での液晶の屈折率が同等であることに照らして、調整可能性の範囲は、実質的に散乱のない条件、すなわち、それぞれの入射角による光の、影響を受けない透過(散乱ユニットの透過モード)の状況をもカバーすることができることが明らかになる。その上、上記の状況について、ホスト材料と散乱ナノ液滴との間の屈折率不整合は、実質的に直交入射のVsatの屈折率不整合のないところで終端する、調整可能性の範囲δnによって与えられる。
【0097】
図4Bは、
図4AのNOA65およびNOA81、ならびに、NOA81と同様に、(直交入射の)E7の調整可能範囲の終端部において散乱ユニット透過モードが存在しない2つのさらなる代替的なホスト材料を含む、4つのホストポリマーについての、650nmにおける屈折率パラメータの概観を示す。E7について、常光線屈折率、異常光屈折率および平均屈折率が、比較のために示されている。
【0098】
ホスト材料NOA81について、屈折率nhはE7のn_OFFとnoとの間にある。ホスト材料NOA164について、屈折率nhは約1.64であり、すなわち、E7のn_OFFよりもさらに大きい。ホスト材料NOA1315について、屈折率nhは約1.32であり、すなわち、E7のnoよりも大幅に低い。同様に、多種多様な液晶およびn_OFF、no、およびneのそれぞれの値も存在し、結果、原則的に、調整可能性の範囲δnおよび反射率nhに基づいて拡散器ユニットの動作状態を規定する光学パラメータの選択の広い範囲が存在する。
【0099】
液晶ベースの拡散器ユニットのさらなる例示的な材料が、
図8に関連して説明される製造過程に関連して下記に開示される。
【0100】
図5A~
図5Dは、透過直接光および拡散光の色の変化を示すために、概略的に均等色度図(CIE1976u’v’色度図としても参照される)を示す。それらの図において、境界線32(三角形のような形状の2つの辺)上の点は単色スペクトル(デルタ状)に対応し、言い換えれば、波長は、左上側の湾曲面境界において、例えば、底点における420nmから左上隅における約510nmへ、右隅における約680nmまで増大する。座標は、u’色度座標およびv’色度座標として参照される。加えて、例えば、1000K未満から約100000Kまでの範囲内のそれぞれの温度におけるプランク放射体のスペクトルを表すプランク軌跡31が図面内に示されている。プランク軌跡31は、様々な温度のCCTをさらに規定する。
【0101】
図5Aにおいて、色領域が概略的に示されている。具体的には、赤色領域がIとして参照され、緑色領域がIIとして参照され、青色領域がIIIとして参照される。赤色領域Iおよび緑色領域IIは、2000Kから10000Kまでの範囲内でプランク軌跡31によって実質的に分離されており、プランク軌跡31は青色領域IIIを指す。プランク軌跡31の終端部の領域において、色が混合している結果として、色は白色に見える。
【0102】
太陽のように模倣するために、透過光の色は太陽状であり、プランク軌跡31に近く、これが第1のCCTであり、一方、散乱光の色は天空状であり、青色領域III内にあり、これが第2のCCTである。正午における太陽および天空と関連付けられる固有の知覚をもたらす第1のCCTと第2のCCTとの間の差を可能にするために、均等色度図内のそれぞれの色の座標は、少なくとも、0.5以上のような、少なくとも0.01、0.02、0.025、0.03または0.04のような、少なくとも0.008のΔu’v’の範囲内で異なり得る。例えば、約10000Kにおけるプランク軌跡31の範囲内の、または少なくともそれに近い第2のCCTを提供する結果として、青空の印象、および、800Kから6500Kまでの範囲内の第1のCCTにおける太陽の外観がもたらされる。
【0103】
図5Aにおいて、例示的な領域「太陽」/「天空」が、均等色度図内で概略的に示されている。下記に説明するように、領域「太陽」/「天空」内の関連付けられる点は、拡散器ユニットの特定のパラメータ設定と関連付けられる動作状態を表す。
図5Aは、
図4BのE7/NOA65散乱ユニットと同様の屈折率構成に関する第1のCCTおよび第2のCCTの調整可能性を示す。例示的に、第1のCCTおよび第2のCCTについて直交入射における上述したNOA65/E7構成のOFF状態(OFF)およびON状態(ON)が示されており、電場が増大すると総散乱断面積が低減する。異なる調整方向が設定されてもよいことが諒解されよう。
【0104】
「散乱されることになる」光のスペクトルを、プランク軌跡31から外方に動かすことによって調整することによって、人工的な(不自然な)効果を達成することができ、それによって、例えば、緑色の背景が提供されることに留意されたい。
【0105】
E標準光源(スペクトルパワー分布(SPD)が可視スペクトル内で一定の等エネルギー放射体)のような良好に定義された入力光源について、
図5B~
図5Dの均等色度図は、透過直接光の知覚される色の彩色的変化を示し、各色知覚は、拡散器ユニットのそれぞれの設定透過率、すなわち、動作状態と関連付けられる。したがって、
図5B~
図5Dは、増大する電場に関してより詳細に透過直接光の第1のCCTの調整可能性を概略的に示す。散乱によって第1のCCTを調整することによって、第2のCCTも影響を受ける。
【0106】
図5Aに照らして認められるように、散乱活性を増大させることによって透過光の色が赤色に向かって遷移し、拡散光の青色が白色に向かって遷移し、一方で、散乱活性を低減することによって透過光が白くなり、拡散光の青色が増強される。これは、自然におけるレイリー散乱体の数の増大/低減の場合と同様である。例えば、屈折率不整合が増大することによって透過光が白黄色(6000K/5500K/5000Kのプランク軌跡値周辺)へ、橙色(4000K/3000Kのプランク軌跡値周辺)へ、および、赤色(2000Kのプランク軌跡値周辺)へとシフトし、少なくとも大きい散乱活性について、拡散光の青色が白くなり得る。
【0107】
図5Bの均等色度図において、電場の増大による10個の動作状態が、前述したPDLCフィルムNOA65/E7、約100nmのLC液滴サイズ、サンプル厚さ100μm、および約50%の充填率についてのそれぞれのu’v’データ点に基づいて示されている。
【0108】
PDLCフィルムは、法線入射(0°における直交入射)下のE標準光源によって照明されるものと仮定される。色点Eは、E標準光源に関連付けられる色を示す。
【0109】
OFF状態(色点OFF)において、最大散乱が存在する(
図3における最大断面、〈n〉)。ON状態(色点ON)において、最小散乱が存在する(
図3における最小断面、no)。したがって、電場が増大すると、色点は(実質的に)プランク軌跡31に沿って色点Eに向かって移動する。したがって、色は橙色/黄色から、(5455KのCCTを有するDシリーズ光源と同様である)色点Eに関連付けられる色に変化する。
【0110】
均等色度図である
図5Cおよび
図5D(
図5Cのそれぞれの領域の拡大図)において、3つの基準色点が、それぞれu’値およびv’値0.212/0.485、0.225/0.5、および0.24/0.514によって与えられる線u’1/v’1、u’2/v’2、u’3/v’3によって規定される。基準色点は、それらのu’値およびv’値が、色点Eよりも漸進的に大きくなっている(すなわち、色点Eまでのそれらのユークリッド距離が増大する)。
【0111】
加えて、上記のPDLCフィルムNOA65/E7(OFF状態においては約100nmのLC液滴サイズ)について、ここでもE標準光源による照明を仮定して、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、および60μmのサンプル厚さが、それぞれ色点10、20、30、40、50、および60によって示されている。厚さが増大することによって、残りのパラメータが同じままであると仮定すると、単位面積あたりのナノスケール散乱要素の数Nが変化する。上記の厚さに関連付けられる単位面積あたりのナノスケール散乱要素の数Nはそれぞれの線u’1/v’1、u’2/v’2、u’3/v’3を超える(それらよりも大きい値にある)。したがって、散乱層について、本明細書において論じられているパラメータ、(最大)相対屈折率、ホスト材料/散乱要素の屈折率、および有効サイズは、上記の値を超える色点を生成するのに必要である、単位面積あたりのナノスケール散乱要素の最小数Nに関係する。他方、二色性照明に与えられるべきであり、少なくともいくらかの正透過光が維持すべきである要件によって、単位面積あたりのナノスケール散乱要素の最大数Nおよび特定の必要な最小透過率と関連付けられるそれぞれのu’制限がもたらされる。
【0112】
さらに諒解されるように、単位面積あたりのナノスケール散乱要素の数Nは、一般的に、散乱層が層厚と関連付けられる層状二次元形状を有するため、正透過光をもたらす衝突光と関連付けられる入射方向に依存する。これは、一般的に湾曲した層にも当てはまる。したがって、法線入射については、単位面積あたりのナノスケール散乱要素の所望の数Nに達し得ないが、何らかの入射角については、単位面積あたりのナノスケール散乱要素の所望の数Nが適用され得、所望の色点において正透過光を生成し得る。特に、大面積拡散器ユニットを使用する照明システムの分野において、通常、25°、30°、または45°のような、最大約60°の入射角が実施される。
【0113】
図6A(ON状態)および
図6B(OFF状態)において、それらの彩色的効果が、光度、すなわち、単位立体角あたりの特定の方向において拡散器ユニットから放出される光パワー(発光効率関数によって重み付けされ、NOA65/E7ベースの拡散器ユニットへの衝突白色光の法線入射を仮定する)の極座標プロットを使用してさらに説明される。その挙動は、任意のタイプの白色光照明を表すが、6500KのCCTにおける黒体放射体による仮定された照明について概略的に示される。光度分布は2つの角度座標θ、φに依存し、示されているプロットにおいて、角度座標φは、白色光ビームが平面拡散器ユニットに直交入射するという仮定に起因して、任意の選択可能な入射平面に方向付けられる。極座標プロットにおいて、光度は青色成分(450nm、本線)および赤色成分(600nm、破線)に対応する2つの波長について任意の対数スケールで示されている。
【0114】
具体的には、指向性光部分33および拡散光部分35が認められる。指向性光部分33は依然として0°の方向において伝播するが、例えば、約5°の角度幅がある。加えて、レイリー状散乱が、低減した強度における小さい半円状の曲線部によって示される光度分布を有する拡散光部分35の生成をもたらしている。
【0115】
青空散乱条件が
図6Aに示されており、これは主に、拡散光部分35に寄与する青色成分を示しており、一方で、指向性光部分33(黒体状波長依存光度分布を仮定する)は、青色および赤色成分の同等の寄与を示す。
【0116】
図6Bを参照すると、低い太陽の散乱条件と同様の赤色成分の散乱の増大に起因して、赤色寄与分が、拡散光部分35について大幅に増大されている。同時に、より多くの青色光が散乱されるため、赤色成分は、指向性光部分33において相対的に増大されている。したがって、太陽はより橙色/赤色に見え、一方、天空の青色はより白みがかって見える。
【0117】
指向性光と拡散光との間の相対強度差が増大した散乱活性についてより小さくなるため、
図6Bにおいては、均一性が
図6Aに対して増大していることが留意され得る。
【0118】
図6Cは、それぞれ、領域11およびその外側における太陽状の照明について、点12Aおよび点12Bにおいて測定される照度の挙動を概略的に示す。それらの点と関連付けられる照度値の差は大きく変化し得、それによって、スポット状の照明および周囲の均一な照明が可能であることが明瞭に分かる。
【0119】
その上、例えば、直接光の90%の散乱を達成することができるが、レイリー状散乱によって明瞭さが維持されるため、装置に面するときに深さの知覚を維持することができる。言い換えれば、赤色の太陽は照度が低いにもかかわらず、依然として、青空の状況について上記で引用した開示文献において論じられている効果を伴って、無限遠において光源を知覚することができる。
【0120】
ここでも、LCの屈折率および少なくとも部分的な整列における異方性を仮定して、指向性光部分33の方向が変化されるか、または、偏光状態が変化されるときに、外観における同様の効果が生成されることに留意されたい。角度タイプまたは偏光タイプの調整手法に対する例示的なPDLCフィルムは、例えば、NOA65またはNOA1315ポリマーフィルムに埋め込まれているE7 LC液滴に基づいてもよい。
【0121】
図7A~
図7Gは、液晶液滴ベースの散乱ユニットの概略断面図を示す。
図7Hは、静的散乱中心(ナノ粒子)が液晶ベースのホスト材料に埋め込まれている、反転した概念を示す。
図7Iは、PET層間の液晶液滴ベースの散乱ユニットを示し、
図7Jは、ガラスサンドイッチ構造内のそのようなPET-PDLC構成を示す。
【0122】
図7Aは再び、例えば
図2Aに既に示した基本設定を示す。伝導性であり、少なくとも一方の面が透過性のカバー層の例として、2つのITOガラスシート23の間で、散乱要素/中心として、ホスト材料21内に埋め込まれたLCナノ液滴19を備える層17によって、散乱が実施される。
【0123】
図7Bの実施形態においては、2つの、例えば、剛性のカバーシートの間で層17の層厚43が規定されることを可能にするために、スペーサ要素41が層17に含まれる。例えば、ITOガラスが、カバーシートとして、実質的に視覚的知覚に影響を及ぼさない要素間の平均距離45を可能にするのに十分に剛性である。一般的に、スペーサ要素41の例は、ポリマーまたはガラスビーズを含む。その上、基礎形状が、例えば、光源のような照明システムの任意の基礎となる構造特徴に適合されている、スペーサ格子またはスペーサネットを使用することができる。スペーサ要素41を使用することによって、層厚43を低減することが可能になり、したがって、層17にわたる所望の電場を達成する(例えば、標準220V AC電圧で動作する)ために印加される必要がある電圧が低下する。その上、スペーサ要素41を使用することによって、層17の厚さがより均質になり、したがって、層17の平面内の散乱要素分布がより均質になることに起因して、層17の光学特性の均一性を増大させることが可能である。しかしながら、スペーサ要素41の密度は、それらの存在自体が視覚的外観に影響を及ぼさないように、十分に低くすべきである。
【0124】
図7Cの実施形態において、例えば、印加される電場または光の入射方向に依存しない追加の散乱特徴を提供するために、「静的」散乱要素51が層17内に含まれている。静的散乱要素51の量は、例えば、散乱ユニットにわたって所望の度合いで均質な散乱特徴を提供するように選択することができる。静的散乱要素51は、ナノスケールにおいて、レイリー状散乱の一定の基礎を提供するようなサイズにすることができる。代替的にまたは付加的に、静的散乱要素51は、例えば、マイクロスケールにおいて、「散乱されることになる」光ビームにわたる光強度分布の任意の構造を不鮮明化するために、大きい粒子散漫散乱を提供するようなサイズにすることができる。一般的に、静的散乱要素51の例は、有機または無機粒子を含む。
【0125】
追加の静的散乱特徴を提供するための代替的な手法が、
図7Dに示されている。具体的には、例えば、拡散層53が、カバーシートの一方の外面に追加される(または、両方のカバーシートに、もしくは、間にある別個の層として追加されるか、または、1つのもしくは別個の拡散層内に異なる散乱特徴を有する)。例えば、拡散層53は、支持マトリックス内に埋め込まれたそれぞれの静的散乱要素51を例えば使用して、レイリー散乱および/または
図7Cの実施形態と同様の大きい粒子散漫散乱の一定の基礎を提供することができる。
【0126】
図7A~
図7Dの実施形態は、透過において使用されるように意図されているが、
図7Eおよび
図7Fの実施形態は、反射構成において使用される。例えば、
図7Eに概略的に示されているように、反射層55が、カバーシートの一方に設けられる。したがって、他方のカバーシートに衝突する光は、反射層55における反射の前後に1回ずつの2回、層17を通過することになる。
【0127】
図7Fの実施形態において、カバーシートのうちの一方自体が反射シート57として構成される。その場合、反射シート57は、面電気コンタクトとして作用するようにさらに構成されてもよい。
【0128】
屈折率構成が透過モードを可能にすると仮定すると、
図7Eおよび
図7Fの構成は、調整可能太陽-天空知覚に加えて、透過モードにおいて、従来のミラーの機能を含むことができ、したがって、従来のミラーとしてまたは照明システム設備の一部として使用することができる切り替え可能ミラーを形成することができる。
【0129】
図7Gの実施形態において、吸収層59が、カバーシートの一方の外面に追加される(または、両方のカバーシートにおいて、もしくは、間にある別個の層として追加されるか、または、1つのもしくは別個の拡散層内に異なる吸収特徴を有する)。例えば、吸収層59は、UVおよび/またはIR吸収を可能にすることができる。それぞれの散乱ユニットが、特に、外部での使用に適し得る。加えて、プレポリマーおよびLCの開始混合物内に直接的に、UVおよび/またはIR吸収種を導入することが可能である。
【0130】
図7A~
図7Gの実施形態は、ナノ液滴内にLCを設けることに基づいているが、
図7Hの実施形態は、LCを、それらの液体形態において、「静的」ナノスケール散乱体63が埋め込まれているホスト材料61として設けている。LCナノ液滴について上記で開示されている光学的態様が、その構成にも同様に適用される。
【0131】
図7Iに示すように、PETフィルムベースの拡散器ユニット65は、層17を規定するために、プラスチック可撓性伝導性透明フィルム(例えば、ITO PETフィルム65A、65B)を使用する。層17の厚さは、ここでも、例えば、いくつかのスペーサ要素(図示せず)を追加することによって規定することができる。これによって、
図7Jに示すような拡散器窓要素67を製造することを可能にすることができ、最終的なPDLC拡散器ユニットは、その後、2つのガラスシート67A、67Bの間で層を成す、2つの、例えばITO PETフィルム65A、65Bの間に挟まれたPDLCフィルムである。
【0132】
図7A~
図7Jに関連して論じられているような基本設定の例示的な修正は、一般的に、散乱ユニット内の追加の光学特徴(規定の厚さ、追加の散乱、吸収、反射)の組み合わせを可能にするために、組み合わせることができることが、当業者には認められる。その上、単一の追加要素(例えば、吸収スペーサ要素)によって、追加の特徴を提供することができる。さらに、装置は、エッチングされた、アンチグレア反射防止面のような追加の光学特徴を有することができる。
【0133】
一般的に、拡散器ユニットのサイズは、例えば1m×2m以上の閉鎖領域にわたる大面積照明システムにするために拡大することができ、それによって、大きい連続的な天空模倣領域を提供することができる。タイル構造に基づく照明システムについて、拡散器ユニットは、例えば、単一のタイルに対応する約10cm×10cmの範囲内で閉鎖領域にわたって拡大することができる。
【0134】
特に
図7Iおよび
図7Jを参照すると、PDLC層を挟むためのITO-PET支持フィルムは、大規模な拡散器ユニットのためのフィルムタイプベースの材料の長いロールを作成する、標準的な過程によって製造することができる。他方、例えば
図7Aを参照すると、PDLSフィルムを挟むためのITOガラスシートは、より小規模な拡散器ユニットに使用することができる。
【0135】
LCナノ液滴含有物を有するポリマーネットワークの形成は、選択される材料の化学特性に応じて採用することができる異なる技法によって達成することができる。開始プレポリマー(またはモノマー)中に液晶を高度に溶解することができる場合、相分離を誘起することが好都合である。この技法は、重合誘起相分離(PIPS)として知られており、一般的に、プレポリマーおよび液晶(LC)の均質な混合物が重合過程を受けるときに発生する。重合が開始すると、LC分子が初期ポリマーマトリックスから自然に分離して、拘束液滴の核形成および成長がもたらされる。これらの液滴の最終的なサイズは、実質的に、重合速度に依存する。一般的に、この過程が高速であるほど、結果もたらされる液滴は小さくなる。
【0136】
重合速度に加えて、材料の相対濃度、使用される液晶およびポリマーのタイプ、ならびに、最終的な液滴サイズに寄与する粘度および温度のような様々な他の物理的パラメータのような、追加の要因が存在する。
【0137】
エポキシ樹脂の場合の縮合反応、ビニル基が関与するときのラジカル開始剤(BPO、AIBN)に基づく反応、および、特定の放射線(ガンマ線、UV-可視光、および/またはIR放射線)に暴露されるときにラジカル種を生成する光活性分子に基づく反応のような、種々の方法で重合過程を活性化することが可能であり、後者は光重合としても参照される。
【0138】
UV開始重合は、光強度を変更することによって重合の速度を調節することができるため、ナノスケール液滴を生成するのに特に適していると考えられる。これによって、50nmから最大20μmまでのサイズ範囲内で良好な均一性をもって変更することができる液滴サイズのより高度な制御を達成することが可能であるため、他の技法と比較して重要な利点がもたらされる。
【0139】
図8は、光重合を使用して2枚のシートの間に薄く均質な散乱層を形成するための例示的な製造過程を概略的に示す。
【0140】
この過程は一般的に、LC71Aおよびプレポリマー71Bのような必要な成分を混合するための混合ステップ71によって開始し、それによって、プレポリマー-LC混合物71Cが形成される。過程は、シート73A、73Bの間にプレポリマー-LC混合物71Cを積層するステップ73によって継続し、それによって、散乱ユニットのサンドイッチ型基礎構造が形成される。この過程は、大面積UV照明源75Bによって均質に生成されており、プレポリマー-LC混合物71Cが、内部でナノスケールLC液滴(ナノ液滴19)が相分離されているPDLC層17に遷移するように、サンドイッチ型基礎構造を照明するUV光75Aに基づくUV硬化ステップ75によって完了する。
【0141】
混合ステップ71は、体積分率V
LC/V
totalを規定する。一般的に、相分離を達成するためには、LCの体積分率は20%から70%までの範囲内であり得る。混合ステップ71は、
図7A~
図7Hに関連して上述したさらなる要素71Dを追加するステップをさらに含むことができる。
図7Bを参照すると、製造過程の間に、数マイクロメートルサイズの透過ナノスフェアのようなスペーサ要素41を、液晶と基礎ポリマーとの混合物に追加することができ、それによって、(大きい)μm粒子によって有効層厚が規定される。
【0142】
積層ステップ73は、例えば、10μmから500μmまでの範囲内のフィルム厚を規定し、それによって、散乱要素の最終的な面密度NLC/m2が規定される。スペーサ要素の代わりに、例えば、マスク内の空隙にわたって十分に剛性であるシートが使用されるときに、マスクがスペーサとして作用することができる。マスクは、複数の光源要素を備える光源に形状が適合され得る。
【0143】
UV硬化ステップ75は、重合誘起相分離を開始させる。上述したように、液滴の結果もたらされるサイズは、UV光強度、固有硬化速度、および体積分率VLC/Vtotalに依存する。UV光強度は、例えば、E7/NOA65ベースのPDLCフィルムについては、40~600mW/cm2の範囲内である。
【0144】
図9Aおよび
図9Bは、ともにLCベースのレイリー拡散器を形成するNOA65ホスト材料中のE7から作成されるナノ液滴のナノスケール構造を示す。上述したようなUV光重合を使用して、再現されたSEM画像から測定されるそれぞれの直径分布プロットから分かるように、平均サイズが約100nm(
図9A)および200nm(
図9B)のナノ液滴分布が製造された。直径分布は平均サイズを中心として非常に狭く、これは、形成過程が均質であり、相分離が制御されて終了していることを示していることが留意される。したがって、相分離過程を良好に制御することができ、したがって、時間を制限することができるため、実質的に1つのみのサイズのナノ液滴が形成される。
図9Aおよび
図9Bから分かるように、実質的に、それぞれの光重合過程においてμmサイズ範囲の液滴は生成されない。
【0145】
当業者には認められるように、ナノ液滴の例示されている直径分布では、実質的にレイリー状散乱のみが行われる。
【0146】
PDLCを調製するために使用することができる他の技法は、熱誘起相分離(TIPS)および溶媒誘起相分離(SIPS)である。TIPSにおいて、液晶は、ポリマー融点を上回る温度において、熱可塑性ポリマー(例えば、PMMA)と混合される。この均質な混合物を冷却することによって、相分離が行われ、液滴がポリマーマトリックスの内部に捕捉されたままになる。結果もたらされる液滴のサイズは主に冷却速度に依存する。逆に、SIPSでは、液晶および熱可塑性ポリマーが同じ溶媒中に溶解され、単一層混合物が生成される。この場合、相分離は溶媒蒸発によって誘起され、これによって、液滴サイズが決定される。必要な場合、蒸発速度を増大させ、したがって粒子サイズを低減するために、作業温度を増大させることが可能である。
【0147】
PDLCを製造するために使用される別の方法は、エマルションに基づくものである。この場合、LCは、フィルム形成ポリマーの水溶液によって乳化される。このエマルションは、伝導性基板上に堆積され、乾燥される。この過程の間、ポリマーは、一般的に、元のフィルムの収縮に起因して細長い形状を有するLC液滴を含有する固相を形成する。この方法の例は、ポリビニルアルコールおよびネマチックLCの水溶液を使用する。
【0148】
いくつかの異なるタイプの液晶(LC)が、本明細書において開示されている態様に適していると考えられ得る。原則的に、多種多様なLCが市販されている。LC分野の主要企業は、Merck KGaA(ドイツ)である。本発明に有用な一般的なクラスの液晶は、限定ではないが、シアノビフェニルおよびフッ素化化合物を含み得る。シアノビフェニルは、シアノテルフェニルおよび様々なエステルと混合することができる。このクラスに属する市販のネマチック液晶の例は、「E7」(Merck KGaA製のLicrilite(登録商標)BL001)である。E7は、51%の4‘-n-ペンチル n-シアノビフェニル(5CB)、21%の4‘-n-ヘプチル-n-シアノビフェニル(7CB)、16%の4‘-n-オクトキシ-4-シアノビフェニル、および12%の4‘-n ペンチル-4‘-n-ペンチル-4-シアノテルフェニルの混合物である。この混合物は、-10℃のネマチック相転移温度および60℃のネマチック-等方相転移温度までの結晶を有する。
【0149】
市販の液晶のさらなる例は、LCの混合物のためのE31、E44、E63、単一成分LCのためのK12、K21、K24、M15、M18、M24である。液晶混合物(例えば、Merck KGaAから入手できる)他の有用な例は、BL003、BL004、BL009、BL011、BL012、BL032、BL036、BL037、BL045、BL046、ML-1001、ML-1002、および、顕著に高い複屈折性を有するフッ素化化合物を含む混合物のシリーズTL202、TL203、TL204、TL205、TL215、TL216を含む。他の会社から入手できる液晶は、例えば、スイスのHoffman-LaRocheによるTOTN404およびROTN-570を含む。
【0150】
混合ステップ71におけるさらなる要素71Dの追加を参照すると、ポリマーとLCとの間の液滴の表面上に局在し、それによって、電場と整列するためのLC分子の移動性を増大させる分子を含む表面活性剤を追加することができる。したがって、表面活性剤は、飽和電圧を低減することを可能にすることができる。
【0151】
本明細書において、重合の文脈では、「プレポリマー」という用語は、液晶液滴のホスト材料としてのポリマーを形成することが可能な任意の種類のポリマー前駆物質を指す。プレポリマーは、例えば、モノマー、オリゴマー、短鎖ポリマーまたはこれら3つの成分の混合物であってもよい。TIPSおよびSIPSについては、プレポリマーはまた、誘起されて固化する液体状態のポリマーであってもよい。本発明に適したプレポリマーは、優れた光学的透明性を有するポリマーを形成することが可能な前駆物質である。プレポリマーは、熱可塑性、熱硬化性、および光硬化性樹脂から選択することができる。適切なプレポリマーは、(限定ではないが)以下のカテゴリ、すなわち、エステル、アルデヒド、フェノール、無水物、エポキシド、アクリレート、ビニル、アルケン、アルキン、スチレン、ハロゲン化物、アミド、アミン、アニリン、フェニレン、芳香族炭化水素、およびシロキサンに属し得る。加えて、フッ素化ポリマー前駆物質が使用されてもよい。Norland optics Inc.製のNOAシリーズの接着剤、ならびに、Croda International Plc.またはHenkel AG&Co.KGaA製のUV硬化可能接着剤および封止材のような、多種多様な商用の有用なプレポリマーが入手できる。
【0152】
例えば
図2Bを参照すると、カバーシートは、いくつかの実施形態において、LC液滴に可能な限り近い面電気コンタクトを提供する。具体的には、このシートは、例示的にITOガラスシート23として参照されている。ITOガラスシート23は、透明導電酸化物(TCO)を電極要素として使用する既知のシートの一例であり、可視スペクトルにおいて少なくとも90%の透過を可能にする。ガラスシートともに、さらに拡散障壁を形成することができる構造テンプレートを形成することができる。本実施形態のTCO材料の望ましい特性は、広いスペクトル、特に可視スペクトルにわたる高い光透過性、および低い抵抗性を含む。
【0153】
図10Aおよび
図10Bは、調整可能拡散器ユニットをそれぞれ透過および反射において使用する照明システムを示す。さらなる詳細については、本明細書における本開示が一般的な原理に限定されるように、本出願人による上記で言及されている開示文献が参照される。
【0154】
図10Aは、
図1Aに示すような照明システムの概略断面を示す。具体的には、天井7において、調整可能ナノ拡散器ユニット81が設置され、制御および電力ユニット83に電気的に接続される。制御および電力ユニット83は、それぞれの散乱要素の散乱断面積に影響を及ぼすために、散乱層にわたる電場を開始するように構成されている。例えば、暗箱85内で、調整可能ナノ拡散器ユニット81の散乱層を(直接的にまたは導光要素を介して)照明するために、光源87が取り付けられる。概略的に、
図10Aでは、少なくとも部分的に透過され、透過光ビーム91として調整可能ナノ拡散器ユニット81を出る白色光ビーム89が示されている。加えて、レイリー散乱をもたらす動作状態が制御および電力ユニット83によって選択された場合、拡散光93も、調整可能ナノ拡散器ユニット81から放出されることになる。
【0155】
図10Bは、例えば、
図7Eおよび
図7Fに示すような反射性調整可能ナノ拡散器ユニット81’を使用した照明システムの概略断面を示す。具体的には、壁95において、反射性調整可能ナノ拡散器ユニット81’が設置され、制御および電力ユニット83’に電気的に接続される。制御および電力ユニット83’もまた、それぞれの散乱要素の散乱断面積に影響を及ぼすために、散乱層にわたる電場を開始するように構成されている。
【0156】
この例示的な事例においては、調整可能ナノ拡散器ユニット81’の散乱層を直接的に照明するための光源87’が、天井7に取り付けられる。
図10Aに示すように、直接白色光ビーム89が、光源87’から放出され、反射性調整可能ナノ拡散器ユニット81’の散乱層を少なくとも部分的に透過する。その後、
図10Aの実施形態とは対照的に、反射性調整可能ナノ拡散器ユニット81’のミラー層97(例えば、それぞれ
図7Eおよび
図7Fの反射層55または反射シート57)に落ちるあらゆる光が反射性調整可能ナノ拡散器ユニット81’の散乱層に反射し戻され、散乱要素と再び相互作用して、その後、透過光ビーム91および拡散光93として出射する。
【0157】
上記で言及したように、調整可能ナノ拡散器ユニット81’について透過モードを終了すると仮定して、クリアミラー動作状態さえも含む複数の散乱条件を、制御および電力ユニット83によって設定することができる。
【0158】
透過光ビーム91および拡散光93の彩色的態様および調整可能性については、特に、
図5A~
図6Bに関連する上記の記載が参照される。
【0159】
図11は、例えば、
図10Aに例えば示すような透過において調整可能ナノ拡散器ユニット81を使用するさらなる照明システム構成を概略的に示す。調整可能ナノ拡散器ユニット81は、散乱層にわたる電場を開始するように構成されている制御および電力ユニットに電気的に接続されている。
【0160】
しかしながら、この実施形態において、それぞれの散乱要素の散乱断面積の調整は、光源の移動、すなわち、白色光ビーム89の入射方向の変化に起因する。例示的に、光源99の4つの位置が、
図11に概略的に示されている。具体的には、照明システムは、光源99をナノ拡散器ユニット81に対して移動させるためのマウント構造100Aのような、1つまたは複数の「入射方向変更」取り付けシステムを備えることができる。代替的にまたは加えて、光学素子(例えば、折り畳みミラー)が、マウント構造によって入射角を偏光するように向きを変更され得る。さらに、加えてまたは代替的に、ナノ拡散器ユニット81は、「入射方向変更」取り付けシステムのさらなる例として、例えば、回転ステージ100Bによって、入射光に対して向きを変更することができる(
図11に概略的に示す)。
【0161】
入射方向の変化に起因して、寄与する有効異常光屈折率n
effが変化する。したがって、(有効)複屈折Δn=n
eff-n
oは、異なる入射角について異なる適用可能な屈折率不整合をもたらす(
図3に関連する開示を参照されたい)。したがって、光源を移動させることによって、指向性光および拡散光部分に対する透過率および彩色的態様の上述した調整可能性と同様に、散乱条件が修正される。完全を期すために、OFF状態、すなわち、LCのランダムな配向において、入射角に対する彩色的散乱効果の依存性は観察されないことが留意される。したがって、この移動する光源の概念について、LCの少なくともいくらかの整列が必要とされる。
【0162】
図12は、散乱効果の調整を可能にするが、この場合は入射光の偏光を変化させることによってである、調整可能ナノ拡散器ユニット81を使用するさらなる実施形態である。例えば、照明システムは、少なくとも部分的に偏光した光を生成する白色光源と、例えば、p偏光状態とs偏光状態との間で偏光を変化させるための波長板のような偏光器100とを備える。また、偏光に基づく調整のために、LCの少なくともいくらかの整列が必要とされる(
図3に関連する開示も参照されたい)。異常光屈折率が寄与することを保証するために、入射光はさらに、
図12に概略的に示すように、LCの光軸に対して傾斜させられる。上記で説明したように、偏光状態を変化させることによって、観察される全体的な屈折率が変化し、したがって、上述したように指向性光および拡散光部分に対する透過率および彩色的態様の上述した調整可能性がもたらされる。
【0163】
図13および
図14は、拡散器ユニット101内の幾何学的形状における異方性を有する散乱要素を使用する実施形態に関係する。形状における異方性は、寄与する有効粒子径Dが変化するために、各散乱要素に対する異なる入射方向について異なる散乱条件を生成する。
【0164】
外部電場が印加されるときにそれらの向きを調整する様々な異方性粒子が知られている。異方性粒子は有機であっても無機であってもよい。例示的な有機粒子は、例えば、ポリハライドまたは金属ハロゲン化物のようなハロゲン化物を含む。無機粒子は、例えば、オキシ塩化ビスマス、グラファイト、リン酸水素鉛のような化合物材料、または、銀、タンタル、チタンのような金属、または、酸化スズもしくは五酸化バナジウムのような金属酸化物を含む。異方性粒子は、棒、針、またはフレーク形状として参照されることが多い形状を有してもよい。一般的に、形状は「異方性」であり、それゆえ、粒子の形状は、1つの向きにおいて、別の向きよりも多くの/少ない光を遮るようなものである。本明細書において論じられている適用について、異方性粒子は、可視スペクトルの所望の波長範囲を透過し(好ましくは実質的に非吸収性である)、例えば、約200nmの範囲内のサイズを有するように選択することができる。
【0165】
埋め込み材料は、異方性粒子の再配向を可能にする。例示的な埋め込み材料は、良好な絶縁特性を有し、ブラウン運動を保証することを可能にし、粒子沈殿を防止する適切な粘性を有する液体誘電体物質を含む。一般的な懸濁化剤は、オルガノシロキサン系材料のような中/高分子量を有する高分子液体である。例えば、細長い形状を有する有機粒子を、液相材料中に埋め込むことができる。電場を受けて、粒子のそれぞれの再配向を行うことができ、それによって、平均的な入射方向の制御が可能になる。
【0166】
図13は、拡散器ユニット101にわたって電場を印加することまたは印加しないことに応じた、細長い粒子105の任意の向き103A(OFF状態105A)および細長い粒子105の整列された向き103B(ON状態105B)を示す。白色光源99によって照明されているとき、光学的調整効果は、
図2A、
図2Bおよび
図3に関連して説明した効果と同様である。
【0167】
手短に言えば、整列の程度は、観察される有効ナノ粒子サイズ、したがって、散乱効率に影響を及ぼす。例示的なナノスケール要素について、ON状態において、直交入射下では、光源99からの入射白色光によって最小サイズが観察され、したがって、総散乱断面積が最小になる。他の実施形態では、総散乱断面積は、整列した状態で最大になり得る。したがって、電場を印加することによって、LCの整列による調整と同様に透過率を調整することが可能になる。
【0168】
図14は、
図11と同様の実施形態を示す。光源99の位置/向きの変化が、整列した細長い粒子105への複数の異なる入射角がON状態105Bにあるようにする。結果として、異なる有効サイズが散乱に寄与し、総散乱断面積が変化し、したがって、透過率を調整することができる。
図11に関連して開示されているように、拡散器ユニット101への入射方向の変化を可能にするために「入射方向変更」取り付けシステムを設けることができる。
【0169】
図14に示す例示的な実施形態において、集合散乱断面積量は、直交入射について最小であり、入射角θの増大とともに増大する。したがって、自然においてより低い位置にある太陽についてそうであるように、散乱活性が増大する、すなわち、より短い波長に対して拡散器ユニット101の透過率が漸進的に低減し、結果として、傾斜した入射については、直交入射と比較してより赤みがかった太陽になる。
【0170】
本明細書において開示されている拡散器ユニットの光学的特徴が、E標準光源に関連して以下において規定される。本明細書において、Standard Terminology of Appearance、ASTMインターナショナル、E284-09aにおいて定義されているように、スペクトルパワー分布SPDは、波長の関数としての、放射輝度または放射束のような放射量の分光組成によって光源を指定する。E標準光源は、可視スペクトル内で一定であるSPDを有する等エネルギー放射体である。光学的特徴は、本明細書において開示されている様々な構成および材料パラメータに基づいて選択される。
【0171】
本明細書において開示されている拡散器ユニットは、E標準光源によって特徴付けられるように白色光によって照明されるとき、拡散器ユニットの彩色調整可能範囲内の任意の構成について、それぞれ0.20および0.465(
図5Dの線u’1/v’1)よりも大きい座標u’、v’を有するCIE1976u’v’色度図上の色点に対応する指向性光を透過する。その上、いくつかの実施形態において、透過直接光の色点とプランク軌跡との間のユークリッド距離Δu’v’は、彩色調整可能範囲内の任意の構成について、0.1よりも小さいΔu’v’を満たす。(概略的に、ユークリッド距離δu’v’が
図5Dに示されている。)その上、それぞれの散乱光は、拡散器ユニットの彩色調整可能範囲内の任意の構成について、それぞれ0.20および0.465(
図5Dの線u’1/v’1)よりも小さい座標u’、v’を有するCIE1976u’v’色度図上の色点に対応する。拡散器ユニットの彩色調整可能範囲内の任意の構成について、CIE1976u’v’色度図内の散乱光および透過光に関連付けられる色点の間の距離に関して、これらの点の間のユークリッド距離δu’v’は、0.02以上のδu’v’を満たす(概略的に、ユークリッド距離δu’v’は
図5Aに示されている)。
【0172】
特に、いくつかの実施形態において、透過直接光の色点は、それぞれの実施形態の調整範囲と関連付けられる最大散乱断面積について、それぞれ0.20および0.465(
図5Dの線u’1/v’1)よりも大きい座標u’、v’を有する。その上、いくつかの実施形態において、それぞれの実施形態の調整範囲と関連付けられる最大散乱断面積について、透過直接光の色点は、それぞれ0.2117および0.4851よりも大きい、またはそれぞれ0.2265および0.5029よりも大きい(例えば、
図5Dの線u’2/v’2を超える)、またはそれぞれ0.243および0.5166よりも大きい(例えば、
図5Dの線u’3/v’3を超える)、またはそれぞれ0.2598および0.5261よりも大きい座標u’、v’を有する。
【0173】
その上、透過直接光の色点とプランク軌跡との間のユークリッド距離Δu’v’は、彩色調整可能範囲内の任意の構成について、0.1よりも小さいΔu’v’を満たす。その上、それぞれの散乱光は、拡散器ユニットの彩色調整可能範囲内の任意の構成について、それぞれ0.20および0.465(
図5Dの線u’1/v’1)よりも小さい座標u’、v’を有するCIE1976u’v’色度図上の色点に対応する。拡散器ユニットの彩色調整可能範囲内の任意の構成について、CIE1976u’v’色度図内の散乱光および透過光に関連付けられる色点の間の距離に関して、これらの点の間のユークリッド距離δu’v’は、0.02以上のδu’v’を満たす。
【0174】
本明細書において開示されている実施形態は、例えば、5500Kの範囲内のCCT(白色-黄色)から4000Kの範囲内のCCT(黄色/橙色)へ、3000Kの範囲内のCCT(赤みがかった太陽)およびさらにそれ以上への、透過光における大きな赤方偏移を生成することを可能にする。そのような赤方偏移は、10μmから500μmまでの範囲内の厚さ、30%から70%までの範囲内の充填率、および50nmから300nmまでのナノ範囲内の平均粒子サイズを仮定して、例えば、最大屈折率不整合または最大サイズ変動によって与えられる、屈折率の調整機能を必要とする。
【0175】
以下において、本明細書において説明されている光学特性が、彩色的に調整可能な(例えば、正常な)透過光を提供するために拡散器ユニットにおいて使用することができる散乱層の特定の実施態様について一般的な概念を記述することを可能にする特定の材料パラメータにリンクされる。この文脈において、
図5A~
図5Dおよび
図15および
図16が参照される。調整機能は、特定の色に関係付けられ得る拡散器ユニットの透過率の変化に対応する。この透過率の変化は、方向を変化させない光ビームについて与えることができ(例えば、電場変化によるナノ液滴の個々の散乱断面積の調整)、かつ/または、入射方向における光ビームの変化によって達成することができる(例えば、ナノ液滴中の整列したLCの寄与する異方性屈折率を使用した調整もしくは散乱要素の寄与する異方性形状を使用した調整)。
【0176】
等方性粒子のレイリー散乱の場合を考察し、一定の、すなわち、波長に依存しない屈折率を仮定し、光の任意の吸収を無視すると(またはその追加される効果を低減するために光吸収を再正規化すると)、(
図5Cおよび
図5Dに関連して上記で)言及されているu’値およびv’値0.212/0.485、0.225/0.5、および0.24/0.514によって与えられるCIE1976色空間内の点u’1/v’1、u’2/v’2、u’3/v’3を、標準光源EおよびCIE1931標準観測者(2°)を仮定した正スペクトル透過の値に関連付けることが可能である。一般的に、正スペクトル透過率T(λ)は、波長の関数であり、米国商務省のNIST(米国標準技術局)特別刊行物250-69に従って測定することができる。
【0177】
正スペクトル透過率とCIE1976色空間上のその関連付けられる色点との間の遷移は、周知の手順である。例えば、標準光源および標準観測者を所与として色点を得るための手順を規定する規格ASTM E308-01が参照される。結果として、正透過光(非偏光E標準光源およびCIE1931標準観測者(2°)による照明のための)の色(CIE1976色座標において表現される)に関して説明されている拡散器ユニットのあらゆる特徴は、拡散器ユニットの正スペクトル透過率に関連付けられるCIE1976色座標に関して等価に説明することができ、同じ色空間へのマッピングは、言及されている標準的技法ASTM E308-01において説明されている手順に従って実施される。
【0178】
例えば、本明細書においてはT(450nm)として参照される、450nmの波長における正スペクトル透過率は、色点u’1/v’1については、T1(450nm)=0.748に関係し、色点u’2/v’2についてはT2(450nm)=0.437に関係し、色点u’3/v’3についてはT3(450nm)=0.200に関係する。
【0179】
透過率は微視的な規定を可能にする。微視的には、正スペクトル透過率T(λ)はナノスケール散乱要素の散乱断面σ、および、(三次元)数密度と層厚との積である単位面積あたりのナノスケール散乱要素の数Nの関数である。正スペクトル透過率T(λ)は、以下によって与えられる。
【0180】
【数15】
そこで、レイリー散乱断面積σは、上記で与えられたように、
【数16】
であり、n
hはホスト材料の屈折率であり、D=dn
hは有効粒子径であり、mは相対屈折率である。
【0181】
正スペクトル透過率T(450nm)および上記2つの式を考慮すると、450nmについて、単位面積あたりのナノスケール散乱要素の数Nは、以下によって与えられる。
【0182】
【数17】
式中、固定値のTについて、定数cは以下によって与えられる。
【数18】
【0183】
それらの式から、NとTとの間の関係は明白である。特に、単位面積あたりのナノスケール散乱要素の数Nを、Tの値(450nm)に、したがって、d、nhおよびmのような材料特徴の関数としてのu’v’点に関連付けることが可能である。
【0184】
具体的には、色点u’1/v’1について、単位面積あたりのナノスケール散乱要素の数N1は、
【数19】
であり、定数c1_transmission=2×2.918×10
7nm
4である。
色点u’2/v’2について、単位面積あたりのナノスケール散乱要素の数N2は、
【数20】
であり、定数c2_transmission=2×8.32×10
7nm
4である。
【0185】
色点u’3/v’3について、単位面積あたりのナノスケール散乱要素の数N3は、
【数21】
であり、定数c3_transmission=2×1.6175×10
8nm
4である。
この段階において、
図10Aおよび
図10Bに示す2つのクラスの構成を参照して、散乱層の光学的活性は、反射構成において使用される場合は2倍になり得ることが留意される。それゆえ、反射モード(
図10B)において同じ彩色的効果を達成するためには、透過モード(
図10A)において必要とされる単位面積あたりのナノスケール散乱要素の数の半分のみが必要とされる。定数cについて上記で認められている値は、透過モードについて導出されており(c_transmission)、結果、反射モードにおいては、それらの値の半分が、c_reflectionに適用される。したがって、c_transmissionは2×c_reflectionに等しく、結果、2の因数が上記の値から分離される。
【0186】
定数c_transmission(c_reflection)に基づいて、屈折率n
hを有する特定のホスト材料について、単位面積あたりのナノスケール散乱要素の個々の数は、パラメータDおよび
【数22】
の関数であり、これらは、最終的な(所望される彩色的)効果に達するように選択される必要がある。
【0187】
上記で認められている値/色点を参照すると、単位面積あたりのナノスケール散乱要素の関連付けられる(光学的に)有効な数
【数23】
であり、拡散器ユニットが反射層または反射シート面を含まない場合、
【数24】
であり、拡散器ユニットが反射層または反射シートを含む場合、
【数25】
である。
【0188】
例えば、u’v’色度図内の特定の色点に関連付けられる単位面積あたりのナノスケール散乱要素の数Nは、以下の範囲内のパラメータを用いて、ポリマーマトリックス内に埋め込まれているLCナノ液滴について決定することができる。
・0.02≦|ne-no|≦0.5
・dは、約30nmから約300nmまでの範囲内のような、約20nmから約400nmまでの範囲内のような、約10nmから約500nmまでの範囲内にある。
・nhは、1.25から1.75までの範囲内のような、1.2から2.2までの範囲内のような、1から3までの範囲内にある。
【0189】
【数26】
は、2つの値
【数27】
の間の値であり、この値によって、関数
【0190】
【数28】
が最大化される。
・それぞれ選択される定数である
【数29】
およびcによる、散乱層、特に散乱層の表面の単位面積あたりのナノ液滴の最小数N。
【0191】
同様に、静的散乱中心(ナノ粒子)がLCベースのホスト材料内に埋め込まれる、反転された概念において、u’v’色度図内の特定の色点に関連付けられる単位面積あたりのナノスケール散乱要素の数Nは、以下の範囲内のパラメータによって決定することができる。
・nh(LCホスト材料の屈折率)、ここで、0.02≦|ne-no|≦0.5
・ナノスケール散乱要素のdは、約30nmから約300nmまでの範囲内のような、約20nmから約400nmまでの範囲内のような、約10nmから約500nmまでの範囲内にある。
・np(静的散乱中心の屈折率)は、1.3から2.8までの範囲内のような、1.2から3までの範囲内のような、1.1から3.2までの範囲内のような、1から3までの範囲内にある。
・noとneとの間の値を有する液晶ホスト材料の最大化屈折率
【0192】
【数30】
、液晶は、0.02≦|n
e-n
o|≦0.5の範囲内の異方性を有し、
【数31】
は、関数
【数32】
を最大化する値である。
【0193】
【数33】
によって与えられる、散乱層、特に散乱層の表面の単位面積あたりの静的散乱中心の最小数N、
【数34】
およびcはそれぞれ選択される定数である。
【0194】
その上、幾何学的形状における異方性を有するナノスケール散乱要素の場合、u’v’色度図内の特定の色点に関連付けられる単位面積あたりのナノスケール散乱要素の数Nは、以下の範囲内のパラメータによって決定することができる。
【0195】
【数35】
は、異方性要素の長軸であり、約30nmから約300nmまでの範囲内のような、約20nmから約400nmまでの範囲内のような、約10nmから約500nmまでの範囲内にある。
・23以上のような、10のような、5のような、2のような、1.2よりも大きいアスペクト比(長軸と短軸との間の比)。
・1.4から2.8までの範囲内のような、1.3から3までの範囲内のような、1.2から3.2までの範囲内のnp(静的散乱中心の屈折率)。
・n
hは、1.25から1.75までの範囲内のような、1.2から2.2までの範囲内のような、1から3までの範囲内にある。
・それぞれ選択される定数である
【数36】
およびcによって与えられる、散乱層の単位面積あたりの異方性形状ナノスケール散乱要素の最小数N。
【0196】
図15において、nh=1.5396(例示的にホスト材料としてのNOA65に対応する)のホスト材料を仮定し、450nmの波長について計算され、波長450nmにおけるT=0.748の正スペクトル透過率についてのレイリー散乱式の近似を使用して、関数log10(N)、Nはm^-2単位、の三次元グラフが、Dおよびmの関数として示されている。
【0197】
図15に示すように、Dが低減すると、必要なナノスケール散乱要素の数が増大し、これは小さい粒子について特に顕著である。その上、
図15において、m=1について、散乱断面積σが0になるため(例えば
図3に関連して上述した透過モードに対応する)、m=1においては平面に近づく発散が存在する。
【0198】
表面上またはその上方の値をもたらす任意のパラメータ集合は、色点u’1/v’1上にあるか、または、u’1およびv’1以上のu’および/またはv’値を有する色点に関係する。同様の表面を、例えば、色点u’2/v’2(T2(450nm)=0.437)および色点u’3/v’3(T3(450nm)=0.200)について決定することができる。
【0199】
図16および二色性照明を参照すると、例えば、暗赤色の太陽による適切な太陽状照明を保証しながら、単位面積あたりのナノスケール散乱要素の数Nの上限を決定することができる。同様に、正スペクトルおよび総透過率のそれぞれの下限を導出することができる。具体的には、nh=1.5396のホスト材料を仮定した(例示的に、ホスト材料としてのNOA65に対応する、450nmの波長について計算され、レイリー散乱式の近似を使用する)、0.465(
図16の線111)のu’値に対応する正スペクトル透過率は(v’を制限することによって、
図16の破線113によって示されているように、プランク軌跡31の一部が除外されることに留意されたい)、T(450nm)=5.410×10
-8、T(650nm)=0.02の透過率を特徴とする。そのN(max)値に関係付けられる、結果としての定数cは、3.363×10
9nm
4に等しい。
【0200】
0.3605のu’値(
図16の線115)を仮定すると、結果として、透過率はT(450nm)=2.724×10
-4、T(650nm)=0.150になる。そのN(max)値に関係付けられる、それぞれの結果としての定数cは、1.6499×10
9nm
4に等しい。
【0201】
加えて、色点の点線117が
図16に示されており、これは、正透過光の色の調整、および、それぞれ、透過率の関連付けられる変化を示している。完全を期すために、3つの上述した色点のu’v’値も示されている。
【0202】
言い換えれば、本明細書において開示されている拡散器ユニットは、高透明度状態から高拡散状態へなどの、拡散状態間で切り替えることができる材料組成を表す。拡散器ユニットは、付加的に、知覚される画像の明瞭さを低減することなく、周波数依存的に光を拡散させる、色度選択的フィルタである。
【0203】
いくつかの実施形態において、散乱ユニットの、特に大きい面積にわたって、複数の面電気コンタクト領域を設けることができる。各電気コンタクト領域は、それぞれの面電気コンタクトにわたってそれぞれの電圧を印加することによって、所望の電場を設定することを可能にすることができる。例えば、直接光の特徴(入射角、放射束またはスペクトルなど)が、照明される散乱ユニットにわたって変化する場合、それぞれの選択される電圧パラメータを、それに従って適合させることができる。その上、例えば、散乱体ユニットにわたる色の変動を提供するために、複数の異なる領域を制御することができる。
【0204】
本明細書において使用される場合、指向性光、直接光、および(正)透過光は、文脈に応じて、意味的に等価であり得る。その上、可視波長範囲内の面電気コンタクトの透明度は、好ましくは、少なくとも80%、特に、さらには95%または99%以上のような、少なくとも90%である。
【0205】
特に均一な外観のために、いくつかの実施形態において、ナノスケール散乱要素は、ホスト材料中に(実質的に)ランダムに分散されることが、本明細書においてさらに理解されよう。それによって、光散乱過程において発生する可能性がある干渉現象を回避することができる。事実、この干渉効果は、一般的に、角度に対する散乱色の依存をもたらす可能性があり、それによって、天空景観に非現実的な外観を生成する可能性がある。具体的には、散乱要素がランダムに分布する態様は、調整可能な人工オパールまたは調整可能なフォトニック結晶のような、散乱体の秩序立った分布によって、スペクトル的に調整可能な透過および散乱光を提供するシステムに関する差を示す。言い換えれば、本明細書において開示されている実施形態において、サンプル構造係数S(q)は、ナノスケール散乱要素のブラッグピークを呈しない。
【0206】
本発明の好ましい実施形態を本明細書において説明してきたが、添付の特許請求項の範囲から逸脱することなく、改善および修正を組み込むことができる。