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特許7076148バチルス・コアグランスMTCC5856を含む飲料組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】バチルス・コアグランスMTCC5856を含む飲料組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/38 20210101AFI20220520BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20220520BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20220520BHJP
   A23F 3/14 20060101ALI20220520BHJP
   A23F 3/34 20060101ALI20220520BHJP
   A23L 33/125 20160101ALN20220520BHJP
【FI】
A23L2/38 G
A23L2/00 F
A23L33/135
A23F3/14
A23F3/34
A23L2/38 K
A23L33/125
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019565292
(86)(22)【出願日】2017-11-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 US2017060508
(87)【国際公開番号】W WO2018217228
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2019-12-10
(31)【優先権主張番号】62/511,412
(32)【優先日】2017-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【微生物の受託番号】MTCC  MTCC5856
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501394435
【氏名又は名称】サミ-サビンサ グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】マジード ムハンメド
(72)【発明者】
【氏名】ナガブシャナム カリヤナム
(72)【発明者】
【氏名】マジード シャヒーン
(72)【発明者】
【氏名】アルムガム シヴァクマール
(72)【発明者】
【氏名】アリ フルカン
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-089626(JP,A)
【文献】国際公開第2016/033572(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0313951(US,A1)
【文献】International Journal of Food Science and Technology,2016年,51,pp.894-901
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L,C12N
CAPlus/REGISTRY/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA(STN),
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胞子およびバクテリアの形態のバチルス・コアグランスMTCC5856を含む抽出飲料組成物であって、前記バクテリア胞子が、前記抽出飲料組成物の極度のストレス、温度処理および通気処理に生き残る能力を有し、前記抽出飲料が前記バチルス・コアグランスMTCC5856の存在下で抽出された茶である、抽出飲料組成物。
【請求項2】
胞子が、バチルス・コアグランスMTCC5856の、生存胞子または加熱死胞子または死亡胞子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
バクテリアが、バチルス・コアグランスMTCC5856の、生細胞または加熱死細胞または死細胞または溶解した栄養細胞を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
茶が、緑茶、紅茶、ウーロン茶、黄茶、白茶、またはカフェイン抜き茶と、ローズヒップ茶、カモミール茶、アマチャヅル茶、ペパーミント茶、ルイボス茶、生姜茶、高麗人参茶、もしくはレモングラス茶からなる群から選択される薬草茶とからなる群から選択される、請求項1~3の何れかに記載の組成物。
【請求項5】
さらにプレバイオティクス水溶性繊維を含む、請求項1~4の何れかに記載の組成物。
【請求項6】
水溶性繊維が、FOS、GOS、イヌリン、およびポリデキストロースからなる群から選択される、請求項1~5の何れかに記載の組成物。
【請求項7】
プレバイオティクス水溶性繊維ならびに胞子およびバクテリアの形態のバチルス・コアグランスMTCC5856を含む相乗的抽出飲料組成物であって、前記バクテリア胞子が、耐熱性であり、茶を前記バチルス・コアグランスMTCC5856の存在下で抽出した後、95%より高い生存率を有前記抽出飲料が前記バチルス・コアグランスMTCC5856の存在下で抽出された茶である、相乗的抽出飲料組成物。
【請求項8】
茶が、緑茶、紅茶、ウーロン茶、黄茶、白茶、またはカフェイン抜き茶と、ローズヒップ茶、カモミール茶、アマチャヅル茶、ペパーミント茶、ルイボス茶、生姜茶、高麗人参茶、もしくはレモングラス茶からなる群から選択される薬草茶とからなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
水溶性繊維が、FOS、GOS、イヌリン、およびポリデキストロースからなる群から選択される、請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
胞子が、バチルス・コアグランスの、生存胞子または加熱死胞子または死亡胞子を含む、請求項7~9の何れかに記載の組成物。
【請求項11】
バクテリアが、バチルス・コアグランスの、生細胞または加熱死細胞または死細胞または溶解した栄養細胞を含む、請求項7~10の何れかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
これは、2017年5月26日出願の米国特許仮出願第62511412号の優先権を主張する、通常の特許出願である。
本発明は、一般にプロバイオティクスに関連する。より詳細には、本発明は、プロバイオティクスのバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)株MTCC5856を含む飲料組成物に関連する。
【背景技術】
【0002】
プロバイオティクスは、胃腸のミクロフローラを改質して健康上の利益を増す、その能力のために、栄養補助食品としての重要性を得ている。これらのプロバイオティクスは、胃および小腸の酸性環境を生き残ることができるが、胃腸管に定着することは認められていない。したがって、治療的利益が持続するために、プロバイオティクスを常に補う必要がある。
飲料は、広く消費される食品成分であり、プロバイオティクスを共投与するための源としてみなすことができる。飲料組成物は、極度のストレス、抽出または通気などの、温度条件および圧力条件の下で処理されることに留意すべきである。ただし、プロバイオティクス胞子の生存率は、処理後に維持されるべきであり、その結果、投与の成功がもたらされる。
米国特許出願第20090232941号に、バチルス・コアグランス株GBI-30、バチルス・コアグランス株GBI-20、およびバチルス・コアグランス株GBI-40を含む飲料組成物が開示されている。米国特許出願第20130295226号に、ラクトバチルス・パラカセイ(Lactobacillus paracasei)を含む果実飲料組成物が開示されている。これらの出願は共に、抽出の方法および厳しい条件でのプロバイオティクスバクテリアの生き残りを開示していない。また、学術的分野で、プロバイオティクスまたはその製品の生物学的効果は、株特異性であり、属、種、および株の間で一般化することはできないことが周知である(プロバイオティクス:Depth/NCCIH、アメリカ合衆国保健福祉省、アメリカ国立衛生研究所において)。したがって、極度のストレス、温度条件および圧力条件を受けるとき、より効率的であり、生存可能であるプロバイオティクス株を見つける必要が依然としてある。
本発明では、飲料と共投与されるときに、生存可能であり、効率的であるプロバイオティクス株を開示することによって、上記の技術的問題を解決する。
本発明の原則的な目的は、胞子生存率が処理後に維持されるバチルス・コアグランスMTCC5856を含む飲料組成物を開示することである。
本発明は、前述された目的を満たし、さらに関連する利点をもたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、極度のストレス、抽出または通気などの、温度条件および圧力条件の下、処理された飲料組成物であって、胞子生存率が前記処理後に維持される、バチルス・コアグランスMTCC5856胞子および水溶性プレバイオティクス繊維を含む、飲料組成物を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0004】
原則的な一実施形態において、本発明は、胞子およびバクテリアの形態のバチルス・コアグランスMTCC5856を含む飲料組成物であって、前記バクテリア胞子が、前記飲料組成物の極度のストレス、温度処理および通気処理に生き残る能力を有する、飲料組成物を開示する。関連する一実施形態において、飲料は、コーヒー、茶、果汁、炭酸ソーダ、麦芽、栄養飲料、チョコレート、ココア、果実飲料、スムージー、ミルクセーキ、ミネラルウォーター、コーラ、チーズスプレッド、蜂蜜、トマトケチャップ、ジャム、マヨネーズ、タンパク質飲料、およびアイスクリームからなる群から選択される。別の関連する実施形態において、胞子は、バチルス・コアグランスMTCC5856の、生存胞子または加熱死胞子または死亡胞子を含む。さらに別の関連する実施形態において、バクテリアは、バチルス・コアグランスMTCC5856の、生細胞または加熱死細胞または死細胞または溶解した栄養細胞(lysed vegetative cell)を含む。
【0005】
別の好ましい実施形態において、本発明は、胞子およびバクテリアの形態のバチルス・コアグランスMTCC5856を含むコーヒー組成物であって、前記バクテリア胞子が、耐熱性であり、コーヒーを抽出した後、95%より高い生存率を有する、コーヒー組成物を開示する。関連する一実施形態において、コーヒーは、カフェイン抜きコーヒー、未焙煎生コーヒー、および焙煎コーヒーからなる群から選択される。別の関連する実施形態において、胞子は、バチルス・コアグランスMTCC5856の、生存胞子または加熱死胞子または死亡胞子を含む。さらに別の関連する実施形態において、バクテリアは、バチルス・コアグランスMTCC5856の、生細胞または加熱死細胞または死細胞または溶解した栄養細胞を含む。
【0006】
別の関連する実施形態において、本発明は、胞子およびバクテリアの形態のバチルス・コアグランスMTCC5856を含む茶組成物であって、前記バクテリア胞子が、耐熱性であり、茶を抽出した後、95%より高い生存率を有する、茶組成物を開示する。関連する一実施形態において、茶は、緑茶、紅茶、ウーロン茶、黄茶、白茶、またはカフェイン抜き茶と、ローズヒップ茶、カモミール茶、アマチャヅル茶、ペパーミント茶、ルイボス茶、生姜茶、高麗人参茶、もしくはレモングラス茶からなる群から選択される薬草茶とを含む。別の関連する実施形態において、胞子は、バチルス・コアグランスMTCC5856の、生存胞子または加熱死胞子または死亡胞子を含む。さらに別の関連する実施形態において、バクテリアは、バチルス・コアグランスMTCC5856の、生細胞または加熱死細胞または死細胞または溶解した栄養細胞を含む。
【0007】
別の実施形態において、果汁の果実成分は、オレンジ、リンゴ、ナシ、イチゴ、ラズベリー、クランベリー、ブルーベリー、アプリコット、パイナップル、モモ、バナナ、マンゴー、ライム、ブドウ、トマト、ザクロ、パパイヤ、テンダーココナッツウォーター、キウイ、および果実混合物からなる群から選択される。
別の好ましい実施形態において、本発明は、胞子およびバクテリアの形態のバチルス・コアグランスMTCC5856を含む炭酸ソーダ組成物であって、前記バクテリア胞子が、通気に生き残る能力を有する、炭酸ソーダ組成物を開示する。別の関連する実施形態において、胞子は、バチルス・コアグランスMTCC5856の、生存胞子または加熱死胞子または死亡胞子を含む。さらに別の関連する実施形態において、バクテリアは、バチルス・コアグランスMTCC5856の、生細胞または加熱死細胞または死細胞または溶解した栄養細胞を含む。
【0008】
別の好ましい実施形態において、本発明は、水溶性プレバイオティクス繊維ならびに胞子およびバクテリアの形態のバチルス・コアグランスを含む相乗的飲料組成物であって、前記バクテリア胞子が、前記飲料組成物の極度のストレス、温度処理および通気処理に生き残る能力を有する、相乗的飲料組成物を開示する。関連する一実施形態において、飲料は、コーヒー、茶、果汁、炭酸ソーダ、麦芽、栄養飲料、チョコレート、ココア、果実飲料、スムージー、ミルクセーキ、ミネラルウォーター、コーラ、チーズスプレッド、蜂蜜、トマトケチャップ、ジャム、マヨネーズ、タンパク質飲料、およびアイスクリームからなる群から選択される。別の関連する実施形態において、水溶性プレバイオティクス繊維は、フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、イヌリン、およびポリデキストロースからなる群から選択される。別の関連する実施形態において、胞子は、バチルス・コアグランスの、生存胞子または加熱死胞子または死亡胞子を含む。さらに別の関連する実施形態において、バクテリアは、バチルス・コアグランスの、生細胞または加熱死細胞または死細胞または溶解した栄養細胞を含む。
【0009】
別の好ましい実施形態において、本発明は、プレバイオティクス水溶性繊維ならびに胞子およびバクテリアの形態のバチルス・コアグランスを含む相乗的コーヒー組成物であって、前記バクテリア胞子が、耐熱性であり、コーヒーを抽出した後、95%より高い生存率を有する、相乗的コーヒー組成物を開示する。関連する一実施形態において、コーヒーは、カフェイン抜きコーヒー、未焙煎生コーヒー、および焙煎コーヒーを含む。別の関連する実施形態において、水溶性プレバイオティクス繊維は、フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、イヌリン、およびポリデキストロースからなる群から選択される。別の関連する実施形態において、胞子は、バチルス・コアグランスの、生存胞子または加熱死胞子または死亡胞子を含む。さらに別の関連する実施形態において、バクテリアは、バチルス・コアグランスの、生細胞または加熱死細胞または死細胞または溶解した栄養細胞を含む。好ましい関連する一実施形態において、バチルス・コアグランス株は、好ましくはバチルス・コアグランスMTCC5856であり、バチルス・コアグランスハンマー株受託番号ATCC31284およびATCC7050から誘導される株でもある。
【0010】
別の関連する実施形態において、本発明は、プレバイオティクス水溶性繊維ならびに胞子およびバクテリアの形態のバチルス・コアグランスを含む相乗的茶組成物であって、前記バクテリア胞子が、耐熱性であり、茶を抽出した後、95%より高い生存率を有する、相乗的茶組成物を開示する。関連する一実施形態において、茶は、緑茶、紅茶、ウーロン茶、黄茶、白茶、またはカフェイン抜き茶と、ローズヒップ茶、カモミール茶、アマチャヅル茶、ペパーミント茶、ルイボス茶、生姜茶、高麗人参茶、もしくはレモングラス茶からなる群から選択される薬草茶とを含む。別の関連する実施形態において、水溶性プロバイオティクス繊維は、フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、イヌリン、およびポリデキストロースからなる群から選択される。別の関連する実施形態において、胞子は、バチルス・コアグランスの、生存胞子または加熱死胞子または死亡胞子を含む。さらに別の関連する実施形態において、バクテリアは、バチルス・コアグランスの、生細胞または加熱死細胞または死細胞または溶解した栄養細胞を含む。好ましい関連する一実施形態において、バチルス・コアグランス株は、好ましくはバチルス・コアグランスMTCC5856であり、バチルス・コアグランスハンマー株受託番号ATCC31284およびATCC7050から誘導される株でもある。
本発明の技術的特徴および技術的効果が組み込まれた、前述された最も好ましい実施形態は、本明細書で以下の、実例となる例によって説明される。
【0011】
(例1)
バチルス・コアグランスMTCC5856を含むコーヒーおよび茶の抽出に用いられる方法
コーヒー抽出中のバチルス・コアグランスMTCC5856の安定性
バチルス・コアグランスMTCC5856胞子の市販製剤は、15×109cfu(胞子)毎グラムで規格化され、挽いた未焙煎生コーヒーまたは焙煎コーヒーに添加され、室温で、低いr.p.m.で60分間ブレンドされた。さらに、水溶性プレバイオティクス繊維(フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イヌリン、およびポリデキストロース)1.0gを、未焙煎生コーヒーまたは焙煎コーヒー4.0gに添加し、室温で、低いr.p.m.で60分間ブレンドした(表1)。組成物およそ5.0gを、電気ブルーワーを用いて抽出し、先行して説明された方法により生存胞子の総数を調べた(Majeed et al., World J Microbiol Biotechnol (2016) 32:60)。胞子の生存可能な総数の平均は、log10CFUで表される。
【0012】
【表1】
【0013】
茶(紅茶、緑茶、およびウーロン茶)抽出中のバチルス・コアグランスMTCC5856の安定性
バチルス・コアグランスMTCC5856の市販製剤は、15×109cfu(胞子)毎グラムで規格化され、紅茶、緑茶、またはウーロン茶に添加され、室温で、低いr.p.m.で60分間ブレンドされた。さらに、水溶性プレバイオティクス繊維(フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イヌリン、およびポリデキストロース)1.0gを、紅茶、緑茶、またはウーロン茶4.0gに添加し、室温で、低いr.p.m.で60分間ブレンドした(表2)。これらの茶組成物およそ5.0gを、電気ブルーワーを用いて抽出し、先行して説明された方法により生存胞子の総数を調べた(Majeed et al., World J Microbiol Biotechnol (2016) 32:60)。胞子の生存可能な総数の平均は、log10CFUで表される。
【0014】
【表2】
【0015】
胃によるストレスおよび抽出条件の、バチルス・コアグランスMTCC5856胞子の発芽への影響
胃によるストレスの、バチルス・コアグランスMTCC5856胞子への影響は、抽出済みの、コーヒーまたは茶(上記の段落で説明されたように)を酸性条件で処理することによって調べた。抽出済みの、コーヒーまたは茶のpHを、無菌で、2NのHClを用いて1.5に調節し、37℃で、低いr.p.m.で3時間インキュベートした。インキュベート3時間後、再びpHを、無菌で、2NのNaOHを用いて7.0に調節して戻し、牛胆汁0.5%(w/v)を茶またはコーヒーのフラスコに添加した。酸素還元酵素オキシラーゼ(ブロス用のOxyrase(登録商標)、Oxyrase,Inc、Mansfield、OH、USA)もまた、それぞれのフラスコに添加した。さらに、フラスコを37℃で、低いr.p.m.で24時間インキュベートした。インキュベート0時間でのpH値およびインキュベート24時間後のpH値も記録した。試料を殺菌された脱塩水で1:5に希釈することによって、600nmでの光学密度(OD)を、インキュベート0時間およびインキュベート24時間後に記録した。
【0016】
(例2)
バチルス・コアグランスMTCC5856を含むコーヒーおよび茶を抽出した結果
バチルス・コアグランスMTCC5856を含む抽出済みコーヒー
コーヒーのバチルス・コアグランスMTCC5856胞子の熱安定性および相溶性を、電気ブルーワーを用いて抽出する間に評価した。プロバイオティクス抽出の実行可能性を理解するために、ブルーワーでステンレス鋼フィルターおよびろ紙を用いた。抽出後、0.5Log10cfu(胞子)減少し、室温でのインキュベート10分後でさえも、ほぼ同じのままであった(表3)。データによると、バチルス・コアグランスMTCC5856胞子は、ステンレス鋼フィルターを用いた抽出の後、94.83%生存可能なままであったことが示唆された。コーヒーをステンレス鋼フィルターまたはろ紙を用いて抽出したとき、有意な違いは観測されなかった。
【0017】
【表3】
【0018】
バチルス・コアグランスMTCC5856を含む抽出済み茶
紅茶、緑茶、およびウーロン茶に、バチルス・コアグランスMTCC5856胞子を補充し、抽出して、抽出中の胞子の生き残りを測定した。バチルス・コアグランスMTCC5856胞子は、高度に安定であり、生存率は、抽出の後、99%より高いままであることが分かった(表4および表5)。
【表4】
【0019】
同じ抽出済み茶試料を72時間冷やし、その後胞子生存率を測定した。72時間冷やした後の、紅茶、緑茶、およびウーロン茶の、胞子の生存率はそれぞれ、95.13%、93.58%、および94.51%であった(表4および表5)。
【0020】
【表5】
【0021】
胞子の発芽
生存可能なバチルス・コアグランスMTCC5856胞子の、適切な量をヒトの胃腸に届けるために、抽出条件および胃によるストレスの、バチルス・コアグランスMTCC5856胞子の発芽への影響を実施した。バチルス・コアグランスMTCC5856胞子を含む、茶およびコーヒーを抽出し、その後胃によるストレス(酸および胆汁)にさらし、続いて37℃で胆汁塩と共に嫌気性インキュベーションを行って、模倣的なヒトの状態にした。この実験セットを実施して、バチルス・コアグランスMTCC5856が抽出され、ヒトによって消化されるときの胞子発芽を理解した。さらに、茶およびコーヒーに併せて、B.コアグランスMTCC5856を、水溶性プレバイオティクス繊維(フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イヌリン、およびポリデキストロース)と共に抽出した。実験結果によると、B.コアグランスMTCC5856胞子は、抽出され、茶またはコーヒーを唯一の栄養源として用いることによって、胃によるストレスの厳しい条件で生き残った後、発芽することができたことが明らかとなった(表6)。さらに、水溶性プレバイオティクス繊維を添加することによって、発芽がさらに増加した(表6)。これにより、可溶性プレバイオティクス繊維は、茶およびコーヒーに併せて、B.コアグランスMTCC5856胞子の発芽に相乗的効果を有することが示唆された。
【0022】
【表6】
【0023】
(例3)
バチルス・コアグランスMTCC5856を含む飲料組成物
バチルス・コアグランスMTCC5856の生存率を、炭酸ソーダ/コーラ、果汁、ミネラルウォーター、チョコレート、ココア、果実飲料、スムージー、ミルクセーキ、チーズスプレッド、蜂蜜、トマトケチャップ、ジャム、マヨネーズ、タンパク質飲料、およびアイスクリームなどの他の飲料でも調べた。結果を、表7および表8に一覧にする。
【0024】
【表7】
【0025】
【表8】
【0026】
結果によると、B.コアグランスMTCC5856は、全ての飲料組成物で安定であり、生存率および回復率が増大したことが示された。
【0027】
本発明に対する、他の改変および変更は、先行の開示および教示より、当業者に明らかになるであろう。したがって、本発明の、ある特定の実施形態のみが、本明細書において詳細に説明されているが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明に多くの改変をすることができることが明らかになるであろう。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕胞子およびバクテリアの形態のバチルス・コアグランスMTCC5856を含む飲料組成物であって、前記バクテリア胞子が、前記飲料組成物の極度のストレス、温度処理および通気処理に生き残る能力を有する、飲料組成物。
〔2〕飲料が、コーヒー、茶、果汁、炭酸ソーダ、麦芽、栄養飲料、チョコレート、ココア、スムージー、ミルクセーキ、ミネラルウォーター、コーラ、チーズスプレッド、蜂蜜、トマトケチャップ、ジャム、マヨネーズ、タンパク質飲料、およびアイスクリームからなる群から選択される、前記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕胞子が、バチルス・コアグランスMTCC5856の、生存胞子または加熱死胞子または死亡胞子を含む、前記〔1〕に記載の組成物。
〔4〕バクテリアが、バチルス・コアグランスMTCC5856の、生細胞または加熱死細胞または死細胞または溶解した栄養細胞を含む、前記〔1〕に記載の組成物。
〔5〕前記〔2〕に記載された、胞子およびバクテリアの形態のバチルス・コアグランスMTCC5856を含むコーヒー組成物であって、前記バクテリア胞子が、耐熱性であり、コーヒーを抽出した後、生存率95%を有する、コーヒー組成物。
〔6〕コーヒーが、カフェイン抜きコーヒー、未焙煎生コーヒー、および焙煎コーヒーからなる群から選択される、前記〔5〕に記載の組成物。
〔7〕胞子が、バチルス・コアグランスMTCC5856の、生存胞子または加熱死胞子または死亡胞子を含む、前記〔5〕に記載の組成物。
〔8〕バクテリアが、バチルス・コアグランスMTCC5856の、生細胞または加熱死細胞または死細胞または溶解した栄養細胞を含む、前記〔5〕に記載の組成物。
〔9〕前記〔2〕に記載された、胞子およびバクテリアの形態のバチルス・コアグランスMTCC5856を含む茶組成物であって、前記バクテリア胞子が、耐熱性であり、茶を抽出した後、95%より高い生存率を有する、茶組成物。
〔10〕茶が、緑茶、紅茶、ウーロン茶、黄茶、白茶、またはカフェイン抜き茶と、ローズヒップ茶、カモミール茶、アマチャヅル茶、ペパーミント茶、ルイボス茶、生姜茶、高麗人参茶、もしくはレモングラス茶からなる群から選択される薬草茶とからなる群から選択される、前記〔9〕に記載の組成物。
〔11〕胞子が、バチルス・コアグランスMTCC5856の、生存胞子または加熱死胞子または死亡胞子を含む、前記〔9〕に記載の組成物。
〔12〕バクテリアが、バチルス・コアグランスMTCC5856の、生細胞または加熱死細胞または死細胞または溶解した栄養細胞を含む、前記〔9〕に記載の組成物。
〔13〕果汁の果実成分が、オレンジ、リンゴ、ナシ、イチゴ、ラズベリー、クランベリー、ブルーベリー、アプリコット、パイナップル、モモ、バナナ、マンゴー、ライム、ブドウ、トマト、ザクロ、パパイヤ、テンダーココナッツウォーター、キウイ、および果実混合物からなる群から選択される、前記〔2〕に記載の果実組成物。
〔14〕前記〔2〕に記載された、胞子およびバクテリアの形態のバチルス・コアグランスMTCC5856を含む炭酸ソーダ組成物であって、前記バクテリア胞子が、通気に生き残る能力を有する、炭酸ソーダ組成物。
〔15〕胞子が、バチルス・コアグランスMTCC5856の、生存胞子または加熱死胞子または死亡胞子を含む、前記〔14〕に記載の組成物。
〔16〕バクテリアが、バチルス・コアグランスMTCC5856の、生細胞または加熱死細胞または死細胞または溶解した栄養細胞を含む、前記〔14〕に記載の組成物。
〔17〕水溶性プレバイオティクス繊維ならびに胞子およびバクテリアの形態のバチルス・コアグランスを含む相乗的飲料組成物であって、前記バクテリア胞子が、前記飲料組成物の極度のストレス、温度処理および通気処理に生き残る能力を有する、相乗的飲料組成物。
〔18〕飲料が、コーヒー、茶、果汁、炭酸ソーダ、麦芽、栄養飲料、チョコレート、ココア、果実飲料、スムージー、ミルクセーキ、ミネラルウォーター、コーラ、チーズスプレッド、蜂蜜、トマトケチャップ、ジャム、マヨネーズ、タンパク質飲料、およびアイスクリームからなる群から選択される、前記〔17〕に記載の組成物。
〔19〕水溶性繊維が、FOS、GOS、イヌリン、およびポリデキストロースからなる群から選択される、前記〔17〕に記載の組成物。
〔20〕バチルス・コアグランス株が、好ましくはバチルス・コアグランスMTCC5856であり、バチルス・コアグランスハンマー株受託番号ATCC31284およびATCC7050から誘導される株でもある、前記〔17〕に記載の組成物。
〔21〕胞子が、バチルス・コアグランスの、生存胞子または加熱死胞子または死亡胞子を含む、前記〔17〕に記載の組成物。
〔22〕バクテリアが、バチルス・コアグランスの、生細胞または加熱死細胞または死細胞または溶解した栄養細胞を含む、前記〔17〕に記載の組成物。
〔23〕プレバイオティクス水溶性繊維ならびに胞子およびバクテリアの形態のバチルス・コアグランスを含む相乗的コーヒー組成物であって、前記バクテリア胞子が、耐熱性であり、コーヒーを抽出した後、生存率95%を有する、相乗的コーヒー組成物。
〔24〕コーヒーが、カフェイン抜きコーヒー、未焙煎生コーヒー、および焙煎コーヒーを含む、前記〔23〕に記載の組成物。
〔25〕水溶性繊維が、FOS、GOS、イヌリン、およびポリデキストロースからなる群から選択される、前記〔23〕に記載の組成物。
〔26〕バチルス・コアグランス株が、好ましくはバチルス・コアグランスMTCC5856であり、バチルス・コアグランスハンマー株受託番号ATCC31284およびATCC7050から誘導される株でもある、前記〔23〕に記載の組成物。
〔27〕胞子が、バチルス・コアグランスの、生存胞子または加熱死胞子または死亡胞子を含む、前記〔23〕に記載の組成物。
〔28〕バクテリアが、バチルス・コアグランスの、生細胞または加熱死細胞または死細胞または溶解した栄養細胞を含む、前記〔23〕に記載の組成物。
〔29〕プレバイオティクス水溶性繊維ならびに胞子およびバクテリアの形態のバチルス・コアグランスを含む相乗的茶組成物であって、前記バクテリア胞子が、耐熱性であり、茶を抽出した後、95%より高い生存率を有する、相乗的茶組成物。
〔30〕茶が、緑茶、紅茶、ウーロン茶、黄茶、白茶、またはカフェイン抜き茶と、ローズヒップ茶、カモミール茶、アマチャヅル茶、ペパーミント茶、ルイボス茶、生姜茶、高麗人参茶、もしくはレモングラス茶からなる群から選択される薬草茶とからなる群から選択される、前記〔29〕に記載の組成物。
〔31〕水溶性繊維が、FOS、GOS、イヌリン、およびポリデキストロースからなる群から選択される、前記〔29〕に記載の組成物。
〔32〕バチルス・コアグランス株が、好ましくはバチルス・コアグランスMTCC5856であり、バチルス・コアグランスハンマー株受託番号ATCC31284およびATCC7050から誘導される株でもある、前記〔29〕に記載の組成物。
〔33〕胞子が、バチルス・コアグランスの、生存胞子または加熱死胞子または死亡胞子を含む、前記〔29〕に記載の組成物。
〔34〕バクテリアが、バチルス・コアグランスの、生細胞または加熱死細胞または死細胞または溶解した栄養細胞を含む、前記〔29〕に記載の組成物。