(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】ホルムアルデヒド又はVOC排出量の測定及び前処理のための簡易チャンバ
(51)【国際特許分類】
G01N 1/22 20060101AFI20220520BHJP
【FI】
G01N1/22 B
(21)【出願番号】P 2020529738
(86)(22)【出願日】2018-08-02
(86)【国際出願番号】 CN2018098216
(87)【国際公開番号】W WO2019109648
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-06-19
(31)【優先権主張番号】201711290125.2
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512265766
【氏名又は名称】東莞市升微机電設備科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】夏可瑜
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-258124(JP,A)
【文献】特開2007-327857(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106093311(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルムアルデヒド又はVOC排出量の測定及び前処理のための簡易チャンバであって、
チャンバ(1)を含み、前記チャンバ(1)には、チャンバ扉(2)と、予め定められた湿度及び流量の清浄空気を導入するための吸気口(3)と、排気及び減圧のための排気口(4)が設けられており、
前記チャンバ(1)の壁には、冷却及
び加熱を可能とする少なくとも1つの半導体冷却チップ(5
)が設けられており、
前記チャンバ(1)の内部には撹拌ファン(6)が設けられており、
前記チャンバ(1)の壁には、前記半導体冷却チップ(5)の熱伝導領域に位置す
る温度センサ(7)が設けられており、
前記チャンバ(1)の内部には、前記チャンバ内の温度と湿度を検出するための温湿度センサ(17)が装着されており、
前記チャンバ(1)の前記排気口(4)には、排気により前記チャンバ(1)の内圧を制御するための、排気ポンプ(14)及び/又
は調節可能な排気弁が接続されて
おり、
前記温度センサ(7)の検出結果に基づいて、前記半導体冷却チップ(5)を冷却又は加熱することにより、前記チャンバ(1)の壁の最低温度の限界値を制御する
ことを特徴とする簡易チャンバ。
【請求項2】
前記チャンバ(1)の外部には、前記チャンバ(1)の内部と連通するフィルタダクト(8)が接続されており、
前記フィルタダクト(8)には、吸気開閉弁(9)、排気開閉弁(10)、前記吸気開閉弁(9)と前記排気開閉弁(10)との間に位置するフィルタ装置及びフィルタファン(11)が設けられており、
前記フィルタ装置は、ホルムアルデヒド及び/又はVOCフィルタ(18)、及び/又は粉塵フィルタ(12)を含み、
前記ホルムアルデヒド及び/又はVOCフィルタ(18)、及び/又は前記粉塵フィルタ(12)は前記フィルタダクト(8)に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載のホルムアルデヒド又はVOC排出量の測定及び前処理のための簡易チャンバ。
【請求項3】
前記撹拌ファン(6)は、周波数を変換可能なファンとすることを特徴とする請求項1に記載のホルムアルデヒド又はVOC排出量の測定及び前処理のための簡易チャンバ。
【請求項4】
前記チャンバ(1)の内部には、前記チャンバ内の温度を調節するためのヒータ(13)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のホルムアルデヒド又はVOC排出量の測定及び前処理のための簡易チャンバ。
【請求項5】
前記チャンバ(1)の内部には、圧力センサ(15)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のホルムアルデヒド又はVOC排出量の測定及び前処理のための簡易チャンバ。
【請求項6】
前記チャンバ(1)の内壁には、前記内壁に対するホルムアルデヒド又はVOCの付着を防止するための付着防止コーティング層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のホルムアルデヒド又はVOC排出量の測定及び前処理のための簡易チャンバ。
【請求項7】
前記チャンバ(1)は恒温室内に位置するか、前記チャンバ(1)の外部に断熱層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のホルムアルデヒド又はVOC排出量の測定及び前処理のための簡易チャンバ。
【請求項8】
前記チャンバ(1)は、ガラス、非金属プレート及び/又はステンレス材料で構成されることを特徴とする請求項1に記載のホルムアルデヒド又はVOC排出量の測定及び前処理のための簡易チャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定機器の技術分野に関し、より具体的には、ホルムアルデヒド又はVOC排出量の測定及び前処理のための簡易チャンバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の家具、自動車用品等の材料に存在するホルムアルデヒド、揮発性有機化合物(VOC)等の揮発性有害ガスは、濃度が一定範囲を超えると人体にとって有害となる。そのため、材料中のホルムアルデヒド、VOC等の揮発性有害ガスを合理的に収集することは、検出技術における重要事項の一つとなっている。
【0003】
現在、工業においては、ホルムアルデヒド、VOC等の揮発性有害ガスの排出量を測定するための数多くの機器が存在している。しかし、従来の測定機器には次のような欠点がある。
【0004】
1.構造が複雑でコストが嵩む。
2.周辺環境の温度、湿度及び空気成分等の環境要因が測定精度に影響を及ぼしやすい。
3.測定時に、測定チャンバ内に元々存在する汚染空気を予め排出しないため、測定精度が影響を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術における上記の瑕疵を解消し、構造がシンプルで測定精度の高いホルムアルデヒド又はVOC排出量の測定及び前処理のための簡易チャンバを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を実現するために、本発明は、ホルムアルデヒド又はVOC排出量の測定及び前処理のための簡易チャンバを提供する。当該簡易チャンバはチャンバを含む。前記チャンバには、チャンバ扉と、予め定められた湿度及び流量の清浄空気を導入するための吸気口と、排気及び減圧のための排気口が設けられている。前記チャンバの外壁には、冷却及び/又は加熱を可能とする少なくとも1つの半導体冷却チップ又は液体温度調整カバーが設けられている。前記チャンバの内部には撹拌ファンが設けられている。前記チャンバの外壁には、半導体冷却チップの熱伝導領域に位置するか、液体温度調整カバーの温度を測定するための温度センサが設けられており、前記チャンバの内部には、チャンバ内の温度と湿度を検出するための温湿度センサが装着されている。前記チャンバの外部には、チャンバの内部と連通するフィルタダクトが接続されている。前記フィルタダクトには、吸気開閉弁、排気開閉弁、吸気開閉弁と排気開閉弁の間に位置するフィルタ装置及びフィルタファンが設けられている。
【0007】
好ましくは、前記フィルタ装置は、ホルムアルデヒド及び/又はVOCフィルタ、及び/又は粉塵フィルタを含み、前記ホルムアルデヒド及び/又はVOCフィルタ、及び/又は粉塵フィルタはフィルタダクトに接続される。
【0008】
好ましくは、前記液体温度調整カバーは、チャンバの外壁の少なくとも1か所において液体を流動可能とする空間である。前記空間の内部及び/又は流動ダクトには、液体の温度を制御するための加熱及び冷却装置が設けられている。前記温度センサは液体の温度を感知して、加熱及び冷却装置が空間を流動する液体の温度を調節するよう制御することで、チャンバ内部の温度を間接的に制御する。
【0009】
好ましくは、前記撹拌ファンは、周波数を変換可能なファンである。
【0010】
好ましくは、前記チャンバの内部には、チャンバ内の温度を調節するためのヒータが設けられている。
【0011】
好ましくは、前記チャンバの排気口には、排気によりチャンバの内圧を制御するための排気ポンプ及び/又は排気弁が接続されている。
【0012】
好ましくは、前記チャンバの内部には圧力センサが設けられている。
【0013】
好ましくは、前記チャンバの内壁には、内壁に対するホルムアルデヒド又はVOCの付着を防止するための付着防止コーティング層が設けられている。
【0014】
好ましくは、前記チャンバは恒温室内に位置するか、チャンバの外部に断熱層が設けられている。
【0015】
好ましくは、前記チャンバは、ガラス、フッ化物プレート及び/又はステンレス材料で構成される。
【発明の効果】
【0016】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は下記の通りである。
【0017】
本発明によれば、環境要因又はその他の不確定要因による測定結果への干渉を回避可能である。半導体冷却チップ又は液体温度調整カバーは冷却及び/又は加熱を可能とする。チャンバ内の温度を検出することで、半導体冷却チップ又は液体温度調整カバーの冷却又は加熱を制御し、チャンバ内の温度を一定とすることが可能である。また、外部のフィルタ装置はチャンバ内に元々存在する汚染空気を濾過可能である。本発明は構造がシンプルで低コストである。また、温度、相対湿度及びバックグラウンド濃度を制御できる恒温及び/又は恒湿の清浄チャンバを提供可能である。これにより、測定のために安定的な標準測定環境が提供されるため、環境要因又はその他の不確定要因による測定結果への影響が回避される。
【0018】
本発明の実施例又は従来技術の技術方案につきより明瞭に説明するために、以下に、実施例又は従来技術の記載に要する図面について簡単に説明する。なお、言うまでもなく、以下で記載する図面は本発明の実施形態の一部であって、当業者であれば、創造的労働を要することなく、これらの図面からその他の図面を得ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1で提供するホルムアルデヒド又はVOC排出量の測定及び前処理のための簡易チャンバの構造を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例2で提供するホルムアルデヒド又はVOC排出量の測定及び前処理のための簡易チャンバの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施例の目的、技術方案及び利点をより明確にすべく、以下に、本発明の実施例にかかる図面を組み合わせて、本発明の実施例における技術方案につき明瞭簡潔に述べる。なお、ここで記載する実施例は本発明の実施例の一部であって、全ての実施例でないことはいうまでもない。本発明の実施例に基づき、当業者が創造的労働を要することなく取得するその他あらゆる実施例はいずれも本発明の保護の範囲に属する。
【実施例1】
【0021】
図1を参照して、本発明の実施例1は、ホルムアルデヒド又はVOC排出量の測定及び前処理のための簡易チャンバを提供する。当該簡易チャンバはチャンバ1を含む。チャンバ1には、チャンバ扉2と、予め定められた湿度及び流量の清浄空気を導入するための吸気口3と、排気及び減圧のための排気口4が設けられている。チャンバ1の外壁には、冷却及び/又は加熱を可能とする少なくとも1つの半導体冷却チップ5が設けられている。また、チャンバ1の内部には撹拌ファン6が設けられている。チャンバ1の外壁には、半導体冷却チップ5の熱伝導領域に位置する温度センサ7が設けられており、チャンバ1の内部には、チャンバ内の温度と湿度を検出するための温湿度センサ17が装着されている。
【0022】
本実施例において、当該チャンバ1は、ガラス、フッ化物プレート及び/又はステンレス材料で構成すればよい。好ましくは、半導体冷却チップ5を複数設けておき、1つの半導体冷却チップ5が故障した場合でも、その他の半導体冷却チップで正常に動作可能とする。言うまでもなく、半導体冷却チップ5の数は実際の必要性に応じて変更してもよい。
【0023】
動作時において、半導体冷却チップ5はチャンバ壁を介して熱を伝導可能であり、温度センサ7はチャンバ壁の温度を検出可能である。これにより、半導体冷却チップ5の冷却又は加熱を制御してチャンバ内の温度を一定とする。また、チャンバ壁の最低温度の限界値を制御することで、結露の発生を防止することも可能である。撹拌ファン6は、チャンバ壁の冷却量又は加熱量を気流によって除去可能である。好ましくは、撹拌ファン6は、周波数を変換可能なファンとすればよい。
【0024】
図1に示すように、チャンバ1の外部には、チャンバ1の内部と連通するフィルタダクト8が接続されている。フィルタダクト8には、吸気開閉弁9、排気開閉弁10、吸気開閉弁9と排気開閉弁10の間に位置するフィルタ装置及びフィルタファン11が設けられている。本実施例において、具体的に、当該フィルタ装置は、ホルムアルデヒド及び/又はVOCフィルタ18、及び/又は粉塵フィルタ12を含み得る。ホルムアルデヒド及び/又はVOCフィルタ18、及び/又は粉塵フィルタ12はフィルタダクト8に接続される。フィルタファン11は、ガスの流動を加速して濾過速度を向上させることが可能である。測定前に、外部のフィルタ装置は、チャンバ内に元々存在する汚染空気を濾過することで測定精度を向上させることが可能である。
【0025】
半導体冷却チップ5を用いてチャンバ内の温度を制御するだけでなく、チャンバ1の内部には、チャンバ内の温度を調節するためのヒータ13を設けてもよい。
【0026】
図1に示すように、チャンバ1の排気口4には排気ポンプ14及び/又は排気弁を接続し、これに対応して、チャンバ1の内部に圧力センサ15を設けてもよい。動作時には、排気ポンプ14から排気するか排気弁を調節することで、チャンバ1の内圧の制御及びチャンバ内に元々存在する汚染空気の排出が可能となる。測定前には、清浄空気を吸気口3からチャンバ内に導入し、チャンバ内に元々存在する汚染空気を排出する。
【0027】
好ましくは、チャンバ1の内壁に、内壁に対するホルムアルデヒド又はVOCの付着を防止するための付着防止コーティング層を設けることで、測定精度を更に向上させてもよい。
【0028】
実際に使用する際には、チャンバ1を恒温室内に配置するか、チャンバ1の外部に断熱層を設けて断熱すればよい。
【実施例2】
【0029】
図2を参照して、本発明の実施例2は、その他のホルムアルデヒド又はVOC排出量の測定及び前処理のための簡易チャンバを提供する。当該簡易チャンバはチャンバ1を含む。チャンバ1には、チャンバ扉2と、予め定められた湿度及び流量の清浄空気を導入するための吸気口3と、排気及び減圧のための排気口4が設けられている。チャンバ1の外壁には、冷却及び/又は加熱を可能とする少なくとも1つの液体温度調整カバー16が設けられている。また、チャンバ1の内部には撹拌ファン6が設けられている。チャンバ1の外壁には、液体温度調整カバー16の温度を測定するための温度センサ7が設けられており、チャンバ1の内部には、チャンバ内の温度と湿度を検出するための温湿度センサ17が装着されている。
【0030】
本実施例において、液体温度調整カバー16は、チャンバの外壁の少なくとも1か所において液体を流動可能とする空間である。空間の内部には、液体の温度を制御するための加熱及び冷却装置が設けられている。前記温度センサ7は液体の温度を感知して、加熱及び冷却装置が空間を流動する液体の温度を調節するよう制御することで、チャンバ内部の温度を間接的に制御する。
【0031】
なお、本実施例2のホルムアルデヒド又はVOC排出量の測定及び前処理のための簡易チャンバにおけるその他の構造は、実施例1のホルムアルデヒド又はVOC排出量の測定及び前処理のための簡易チャンバにおける構造と同様のため、ここでは改めて詳述しない。
【0032】
以上述べたように、本発明は構造がシンプルで低コストである。また、温度、相対湿度及びバックグラウンド濃度を制御できる恒温及び/又は恒湿の清浄チャンバを提供可能である。これにより、測定のために安定的な標準測定環境が提供されるため、環境要因又はその他の不確定要因による測定結果への影響が回避される。
【0033】
上記実施例は本発明の好ましい実施形態であるが、本発明の実施形態は上記実施例に限らない。本発明の精神の本質及び原理を逸脱することなく実施されるその他あらゆる変形、補足、置き換え、組み合わせ、簡略化は等価の置換形態とみなすべきであり、いずれも本発明の保護の範囲に含まれる。