(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】上衣
(51)【国際特許分類】
A41D 27/20 20060101AFI20220520BHJP
【FI】
A41D27/20 C
(21)【出願番号】P 2020557073
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 JP2018042878
(87)【国際公開番号】W WO2020105127
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】520421064
【氏名又は名称】株式会社インストアメディア社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 隆是
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第4293(JP,Z1)
【文献】特開2006-28720(JP,A)
【文献】実開昭58-160207(JP,U)
【文献】実開昭59-117628(JP,U)
【文献】実開昭52-148207(JP,U)
【文献】実開昭49-140209(JP,U)
【文献】実開平7-19322(JP,U)
【文献】実開平1-141723(JP,U)
【文献】登録実用新案第3116170(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 27/20
A41B 9/00-9/16
A41B 1/00-1/22
A41D 1/00-1/22
A41D 13/00-13/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右が一体
に形成され、上体の前側を覆う2枚の前身頃と、
前記上体の後ろ側を覆
うと共に1枚の布で構成され、前記前身頃と一体
に縫製された後ろ身頃と、
を備え、
前記前身頃は、
当該前身頃の表側の布を構成する表布と当該前身頃の裏側の布を構成する裏布とが同じ大きさ
で形成され
ると共に、当該表布側からは当該裏布が見えないように重ねられて周縁部が縫製されており、かつ、前記表布と前記裏布とで形成されると共に前記前身頃の左右
に亘って設けられた少なくともA4サイズ又はレターサイズの大きさの用紙が収容可能な収容部と、
前記収容部と繋がる口部と、
を含んで構成されている上衣。
【請求項2】
左右が一体
に形成され、上体の前側を覆う2枚の前身頃と、
前記上体の後ろ側を覆
うと共に1枚の布で構成され、前記前身頃と一体に縫製された後ろ身頃と、
を備え、
前記前身頃は、
当該前身頃の表側の布を構成する表布と当該前身頃の裏側の布を構成し上部が前記表布よりも短く形成された裏布と
で形成され
ると共に、当該表布側からは当該裏布が見えないように重ねられて周縁部が縫製されており、かつ、前記表布と前記裏布とで形成されると共に前記前身頃の左右
に亘って設けられた少なくともA4サイズ又はレターサイズの大きさの用紙が収容可能な収容部と、
前記収容部と繋がる口部と、
を含んで構成されている上衣。
【請求項3】
前記表布と前記裏布とが縫製される縫製部の脇下部に前記口部が形成されている請求項1又は請求項2に記載の上衣。
【請求項5】
前記表布に胸ポケットが設けられ、
前記裏ポケットは、正面視で前記胸ポケットからはみ出さず当該胸ポケットと重なる位置に設けられている請求項4に記載の上衣。
【請求項6】
前記裏ポケットには、当該裏ポケットの一部を構成し、前記裏布と縫製されたポケット用布の上端部に形成されて当該裏ポケット内に収容された収容物の取り出しを阻害する返し部が前記裏ポケット内へ向かって延出されている請求項4又は請求項5に記載の上衣。
【請求項7】
前記裏ポケットは、パスポートが収容可能な大きさとなるように設定され、正面視で前記返し部は前記パスポートの上端部と重なるように形成されている請求項6に記載の上衣。
【請求項8】
前記裏布には、前記収容部内に内ポケットが設けられている請求項1~請求項7の何れか1項に記載の上衣。
【請求項9】
前記口部は、前記前身頃の右側又は左側のみに設けられている請求項1~請求項8の何れか1項に記載の上衣。
【請求項10】
前記上衣は、Tシャツである請求項1~請求項9の何れか1項に記載の上衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上衣に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、実開昭60-152648515号公報には、トレーナーやTシャツ等の上衣において、前身頃の腹部の中央にポケットが取付けられた技術が開示されている。つまり、この先行技術において、上衣の収容部は、前身頃の腹部の中央となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記問題を考慮し、できるだけ大きい収容部が設けられた上衣を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、左右が一体に形成され、上体の前側を覆う2枚の前身頃と、前記上体の後ろ側を覆うと共に1枚の布で構成され、前記前身頃と一体に縫製された後ろ身頃と、を備え、前記前身頃は、当該前身頃の表側の布を構成する表布と当該前身頃の裏側の布を構成する裏布とが同じ大きさで形成されると共に、当該表布側からは当該裏布が見えないように重ねられて周縁部が縫製されており、かつ、前記表布と前記裏布とで形成されると共に前記前身頃の左右に亘って設けられた少なくともA4サイズ又はレターサイズの大きさの用紙が収容可能な収容部と、前記収容部と繋がる口部と、を含んで構成されている。
【0005】
本発明の第1の態様では、左右が一体に形成されて上体の前側を覆う2枚の前身頃には、上体の後ろ側を覆うと共に1枚の布で構成された後ろ身頃が前身頃と一体に縫製されている。ここで、前身頃は、当該前身頃の表側の布を構成する表布と、前身頃の裏側の布を構成する裏布と、が同じ大きさで形成されると共に、当該表布側からは当該裏布が見えないように重ねられて周縁部が縫製されている。
【0006】
さらに、当該前身頃は、収容部と口部を含んで構成されている。収容部は、前身頃の表布と裏布とで形成されると共に当該前身頃の左右に亘って設けられており、少なくともA4サイズ又はレターサイズの大きさの用紙が収容可能な大きさとなるように設定されている。この収容部と口部が繋がっており、当該口部を通じて収容部内へ収容物を収容可能とされる。
【0007】
前述のように、本態様では、前身頃を、当該前身頃の表側の布を構成する表布と、前身頃の裏側の布を構成する裏布とで構成し、前身頃の左右を繋げて当該表布と裏布とで収容部を形成することによって、少なくともA4サイズ又はレターサイズの大きさの用紙が収容可能な収容部を形成することができる。つまり、本態様では、収容部内には、A4サイズ又はレターサイズ以上の大きさの用紙が収容可能となる。
また、本態様では、表布と裏布とが同じ大きさで形成されており、前身頃の表側の布を構成する表布と当該前身頃の裏側の布を構成する裏布とが二枚重なった状態で前身頃が形成されている。したがって、当該表布と裏布とで形成された収容部は、前身頃全体に及ぶ大きさとなる。
【0008】
なお、ここでの「一体」は、例えば、前身頃と後ろ身頃とが、縫製、接着、溶着等により一つに繋がった状態を称する。裏を返せば、前身頃と後ろ身頃が一つに繋がっていればよく、必ずしも縫製や接着を行う必要はない。
【0009】
また、A4サイズは、ISO216で規定されている用紙サイズであり、210mm×297mmである。また、レターサイズは、アメリカ合衆国で規格化された用紙サイズであり、8.5in×11in(215.9mm×279.4mm)である。
【0010】
本発明の第2の態様は、左右が一体に形成され、上体の前側を覆う2枚の前身頃と、 前記上体の後ろ側を覆うと共に1枚の布で構成され、前記前身頃と一体に縫製された後ろ身頃と、を備え、前記前身頃は、当該前身頃の表側の布を構成する表布と当該前身頃の裏側の布を構成し上部が前記表布よりも短く形成された裏布とで形成されると共に、当該表布側からは当該裏布が見えないように重ねられて周縁部が縫製されており、かつ、前記表布と前記裏布とで形成されると共に前記前身頃の左右に亘って設けられた少なくともA4サイズ又はレターサイズの大きさの用紙が収容可能な収容部と、前記収容部と繋がる口部と、を含んで構成されている。
【0011】
本発明の第2の態様では、左右が一体に形成されて上体の前側を覆う2枚の前身頃には、上体の後ろ側を覆うと共に1枚の布で構成された後ろ身頃が前身頃と一体に縫製されている。ここで、前身頃は、当該前身頃の表側の布を構成する表布と、前身頃の裏側の布を構成し上部が当該表布よりも短く形成された裏布と、が当該表布側からは当該裏布が見えないように重ねられて周縁部が縫製されている。
さらに、当該前身頃は、収容部と口部を含んで構成されている。収容部は、前身頃の表布と裏布とで形成されると共に当該前身頃の左右に亘って設けられており、少なくともA4サイズ又はレターサイズの大きさの用紙が収容可能な大きさとなるように設定されている。
【0012】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様又は第2の態様において、前記表布と前記裏布とが縫製される縫製部の脇下部に前記口部が形成されてもよい。
【0013】
本発明の第3の態様では、表布と裏布とが縫製される縫製部の脇下部に口部が形成されているため、当該縫製部以外の部位に口部が形成された場合と比較して、当該口部の位置が特定され難い。
【0014】
本発明の第4の態様は、本発明の第2の態様又は第3の態様において、前記裏布には、前記収容部の外側に裏ポケットが設けられてもよい。
【0015】
本発明の第4の態様では、前身頃の裏布側において、収容部の外側に裏ポケットが設けられている。本態様では、前身頃は、表布と裏布の二枚重ねとなっているため、裏布側に裏ポケットを設けることで、前身頃の表側から当該裏ポケットの存在の確認がし辛くなる。つまり、本態様では、上衣に当該裏ポケットが設けられていることが第三者から見て分かりづらく、セキュリティーを確保することができる。
【0016】
本発明の第5の態様は、本発明の第4の態様において、前記表布に胸ポケットが設けられ、前記裏ポケットは、正面視で前記胸ポケットからはみ出さず当該胸ポケットと重なる位置に設けられてもよい。
【0017】
本発明の第5の態様では、表布に胸ポケットが設けられている。このため、本態様では、正面視で、裏ポケットが当該胸ポケットからはみ出さず胸ポケットと重なる位置に設けられることで、上衣が濡れた状態であったとしても裏ポケットが上衣の表側から見えないようにしている。
【0018】
本発明の第6の態様は、本発明の第4の態様又は第5の態様において、前記裏ポケットには、当該裏ポケットの一部を構成し、前記裏布と縫製されたポケット用布の上端部に形成されて当該裏ポケット内に収容された収容物の取り出しを阻害する返し部が前記裏ポケット内へ向かって延出されてもよい。
【0019】
本発明の第6の態様では、裏ポケットにおいて、当該裏ポケットの一部を構成し裏布と縫製されたポケット用布の上端部に返し部が裏ポケット内へ向かって延出されており、当該裏ポケット内に収容された収容物の取り出しを阻害するようにしている。つまり、本態様では、裏ポケットに返し部が形成されることによって、裏ポケット内に収容された収容物を取り出すときに、当該収容物が返し部に引っ掛かることで、収容物が容易に取り出せないようにしている。
【0020】
本発明の第7の態様は、本発明の第6の態様において、前記裏ポケットは、パスポートが収容可能な大きさとなるように設定され、正面視で前記返し部は前記パスポートの上端部と重なるように形成されてもよい。
【0021】
本発明の第7の態様では、裏ポケットは、表布と裏布の二枚重ねで形成された前身頃の裏布側に設けられており、前身頃の表側からの確認がし辛いため、当該裏ポケット内にパスポート(91mm×128mm)が収容できるようにすることで、当該パスポートを肌身離さず持ち運ぶことが可能となる。
【0022】
本発明の第8の態様は、本発明の第1の態様~第7の態様の何れか1の態様において、前記裏布には、前記収容部内に内ポケットが設けられている。
【0023】
本発明の第8の態様では、裏布には、収容部内に内ポケットが設けられている。
本態様では、前身頃は、表布と裏布の二枚重ねとなっているため、裏布側に内ポケットを設けることで、前身頃の表側から当該内ポケットの存在の確認がし辛く、セキュリティーを確保することができる。
【0024】
本発明の第9の態様は、本発明の第1の態様~第8の態様の何れか1の態様において、前記口部は、前記前身頃の右側又は左側のみに設けられてもよい。
【0025】
本発明の第9の態様では、口部は、前身頃の右側又は左側のみに設けられており、収容部への入口は一つとなる。
【0026】
本発明の第10の態様は、本発明の第1の態様~第9の態様の何れか1の態様において、上衣は、Tシャツでもよい。
【0027】
本発明の第10の態様では、本発明がTシャツに適用されることによって、当該Tシャツに多様性を持たせることができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明の第1の態様は、上衣にできるだけ大きい収容部を設けることができる、という優れた効果を有する。
【0029】
本発明の第2の態様は、縫製部をデザインの一部として利用することができる、という優れた効果を有する。
【0030】
本発明の第3の態様は、縫製部の脇下部に口部が形成されているため当該口部の位置が分かり難い。
【0031】
本発明の第4の態様は、裏ポケットの存在が前身頃の表側から見えないため、セキュリティーを確保することができる、という優れた効果を有する。
【0032】
本発明の第5の態様は、裏ポケットが上衣の表側から見えないため、セキュリティーを強化することができる、という優れた効果を有する。
【0033】
本発明の第6の態様は、裏ポケット内に収容された収容物を容易に取り出せないようして、セキュリティーをさらに強化することができる、という優れた効果を有する。
【0034】
本発明の第7の態様は、裏ポケット内にパスポートを収容して当該パスポートを肌身離さず持ち運ぶことができる、という優れた効果を有する。
【0035】
本発明の第8の態様は、内ポケットが上衣の表側から見えないため、セキュリティーを強化することができる、という優れた効果を有する。
【0036】
本発明の第9の態様は、収容部への入口を一つにすることで、収容部内の収納物の管理をし易くすることができる、という優れた効果を有する。
【0037】
本発明の第10の態様は、当該Tシャツに多様性を持たせることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本実施の形態に係る上衣が適用されたTシャツの正面図である。
【
図2】本実施の形態に係る上衣が適用されたTシャツの裏ポケットが透けていない状態を示す正面図である。
【
図3】本実施の形態に係る上衣が適用されたTシャツの作用を説明するための正面図である。
【
図4】本実施の形態に係る上衣が適用されたTシャツの作用を説明するために一部を切り欠いた状態を示す正面図である。
【
図5】
図1のA-A線に沿って切断したときの断面図である。
【
図6】本実施の形態に係る上衣が適用されたTシャツの作用を説明するための
図5に対応する断面図である。
【
図7】本実施の形態に係る上衣が適用されたTシャツの第1変形例としての正面図である。
【
図8】本実施の形態に係る上衣が適用されたTシャツの第2変形例としての正面図である。
【
図9】本実施の形態に係る上衣が適用されたTシャツの第3変形例としての正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を用いて、本発明に係る上衣の一実施形態について説明する。なお、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、Tシャツの前後、Tシャツの上下方向の上下、Tシャツの前身頃を基準として左右を示すものとする。
【0040】
(上衣の構成)
まず、本実施形態に係る上衣の構成について説明する。
【0041】
図1には、本実施の形態に係る上衣が適用されたTシャツ10の正面図が示されている。
図1に示されるように、Tシャツ10は、素材として、例えば、綿が用いられており、上体の前側を覆う前身頃12と、上体の後ろ側を覆い前身頃12と縫製された後ろ身頃14と、前身頃12及び後ろ身頃14の上部側の左右にそれぞれ縫製された右袖部15、左袖部17と、を備えている。なお、Tシャツ10の素材は、綿以外にポリエステルが用いられてもよいし、綿とポリエステルがブレンドされた繊維やそれ以外の繊維が用いられてもよい。
【0042】
ここで、本実施形態では、Tシャツ10の前身頃12は、当該前身頃12の表側の布を構成する表布16と、当該前身頃12の裏側の布を構成する裏布18と、が重なって縫製されている。
【0043】
具体的に説明すると、本実施形態では、表布16と裏布18は略同じ大きさに形成され、表布16と裏布18の縫製部20は、右肩部20A、左肩部20B、襟ぐり部20C、右側袖ぐり部20D、左側袖ぐり部20E、右側脇下部20F、左側脇下部20G、裾部20Hとなっている。そして、これにより、本実施形態では、Tシャツ10の前身頃12の表布16と裏布18とで収容部22が形成される。
【0044】
また、本実施形態では、Tシャツ10の前身頃12の縫製部20の一部、具体的には、前身頃12の右側脇下部20Fにおいて、前身頃12の上下方向の略中央部には、収容部22と繋がる口部24が形成されている。
【0045】
この口部24を通じて、収容部22が大きなポケットとして機能することとなる。以下、収容部22を「前ポケット22」という。つまり、本実施形態では、Tシャツ10の前身頃12全体が前ポケット22となり、当該前ポケット22内には、
図4に示されるように、少なくともA4サイズやレターサイズの大きさの用紙26が展開された状態で収容可能とされる。なお、
図4には、Tシャツ10の一部が切り欠かれた状態で示された正面図である。
【0046】
さらに、本実施形態では、
図1に示されるように、Tシャツ10の前身頃12の胸部28には、表布16の左側に胸ポケット30が設けられている。一方、前身頃12の裏布18には、正面視で胸ポケット30と重なる位置において、前ポケット22の外側に裏ポケット32が設けられている(
図5参照)。ここで、裏ポケット32は胸ポケット30よりも若干小さくなるように形成されており、正面視で裏ポケット32は胸ポケット30と完全に重なっている。なお、
図5は、
図1のA-A線に沿って切断したときの断面図が示されている。
【0047】
この裏ポケット32は、
図5に示されるように、裏布18にポケット用布34が縫製されることによって形成されており、当該ポケット用布34と裏布18との間で収容部36が設けられる。この収容部36は、収容物としてのパスポート40が収容可能な大きさとなるように設定されている。
【0048】
そして、本実施形態では、ポケット用布34の上端部34Aに、当該裏ポケット32内に収容された収容物(ここでは、パスポート40)の取り出しを阻害する返し部38が設けられている(
図6参照)。当該返し部38の両端部は、裏布18と縫製されており、返し部38は収容部36の外側へはみ出さないようになっている。つまり、返し部38は、裏ポケット32の収容部36側を開口とする袋状となっている。
【0049】
(上衣の作用及び効果)
次に、本実施形態に係る上衣の作用及び効果について説明する。
【0050】
図1に示されるように、本実施形態では、Tシャツ10の前身頃12は、表布16と裏布18とが略同じ大きさで二枚重なり縫製されて形成され、前身頃12の表布16と裏布18とで前ポケット22が形成されている。また、Tシャツ10の前身頃12の右側脇下部20Fには、口部24が形成されており、当該口部24が前ポケット22と繋がっている。
【0051】
すなわち、本実施形態では、Tシャツ10の前身頃12には、
図4に示されるように、当該前身頃12全体を収容部とする大きな前ポケット22が設けられている。このため、当該前ポケット22内には、例えば、A4サイズやレターサイズの用紙26を展開した状態で収容させることができる。
【0052】
一方、本実施形態では、前身頃12の縫製部20に形成された口部24は、右側脇下部20Fの一部に形成されることとなる。つまり、前ポケット22の広さに対して口部24は狭くなっている。このため、A4サイズやレターサイズの用紙26を前ポケット22内に収容させる際には、
図3に示されるように、当該用紙26を丸める等して変形させた状態で口部24を通過させなければならない。そして、
図4に示されるように、前ポケット22内に収容された状態で用紙26を元の状態に復元(展開)させることとなる。
【0053】
裏を返すと、前ポケット22内に収容された用紙26は、当該前ポケット22内で丸める等して変形させないと、口部24から取り出すことはできない。つまり、前ポケット22内の用紙26は展開させた状態のままでは取り出すことはできないため、前ポケット22において、セキュリティーを確保することができる。
【0054】
以上のように、前ポケット22は、少なくともA4サイズやレターサイズの用紙26が収容可能な大きさとなるように形成され、かつセキュリティーが確保されることで、当該前ポケット22内に重要書類を収容することができる。つまり、当該重要書類を肌身離さず持ち運ぶことができる。
【0055】
また、
図1に示されるように、本実施形態では、Tシャツ10の前ポケット22は、前身頃12全体を収容部とするため、当該前ポケット22内に新聞紙等を入れることによって、Tシャツ10において、保温効果を得ることも可能となる。
【0056】
さらに、本実施形態では、
図1に示されるように、口部24は、前身頃12の右側12Aに設けられている。つまり、前ポケット22への入口は一つとなっており、前ポケット22への入口が二つ設けられている場合と比較して、セキュリティーを強化することができる。
【0057】
また、本実施形態では、Tシャツ10の前身頃12の裏布18側において、前ポケット22の外側に裏ポケット32が設けられている。前述のように、前身頃12は、表布16と裏布18の二枚重ねとなっているため、裏布18側に裏ポケット32を設けることで、
図1、
図2に示されるように、前身頃12の表側から当該裏ポケット32の存在の確認がし辛くなる。つまり、Tシャツ10に当該裏ポケット32が設けられていることが第三者から見て分かりづらく、セキュリティーを強化することができる。
【0058】
さらに、本実施形態では、Tシャツ10の表布16に胸ポケット30が設けられており、正面視で、裏ポケット32が当該胸ポケット30と完全に重なる位置に設けられることで、Tシャツ10が濡れた状態であったとしても裏ポケット32がTシャツ10の表側から見えないようにしている。また、裏ポケット32内に収容物を入れた場合、当該収容物による膨らみが出てしまう可能性があるが、正面視で裏ポケット32が胸ポケット30と完全に重なることで、その膨らみを胸ポケット30で誤魔化すことが可能となる。
【0059】
これにより、セキュリティーをさらに強化することができる。このため、本実施形態では、裏ポケット32が、収容物としてのパスポート40が収容可能な大きさとなるように設定されてもよい。これにより、裏ポケット32内にパスポート40を収容することで、当該パスポート40を肌身離さず持ち運ぶことができる。
【0060】
また、本実施形態では、
図5に示されるように、Tシャツ10の裏ポケット32には返し部38が形成されている。これにより、
図6に示されるように、裏ポケット32内に収容されたパスポート40を取り出す際、当該パスポート40が返し部38に引っ掛かり、パスポート40の取り出しが阻害される。つまり、裏ポケット32に収容されたパスポート40を簡単に取り出すことができないようにしている。
【0061】
これにより、例えば、前屈みになったときにおいても、当該裏ポケット32に収容されたパスポート40が簡単に落下しないようにしている。なお、図示はしないが、当該返し部38に代えて、裏ポケット32の開口を覆うフラップが裏布18に設けられてもよい。
【0062】
(本実施形態の補足事項)
以上の実施形態では、
図1に示されるように、Tシャツ10の前身頃12において、表布16と裏布18が略同じ大きさとなるように形成されている。しかし、本態様では、表布16と裏布18とで形成される収容部としての前ポケット22が、A4サイズ及びレターサイズのうち少なくとも一方のサイズの用紙26が収容可能な大きさであればよい。このため、当該表布16と裏布18は必ずしも同じ大きさである必要はない。
【0063】
例えば、第1変形例として、
図7に示されるように、Tシャツ42の裏布44が、表布16の肩部46を除く大きさとなるように設定されている。このため、表布16と裏布44の縫製部48は、胸部48A、右側袖ぐり部48Bの下部、左側袖ぐり部48Cの下部、右側脇下部48D、左側脇下部48E、裾部48Fとなる。なお、胸部48Aの位置によっては、右側袖ぐり部48B、左側袖ぐり部48Cの縫製は不要となる。ここでの縫製部48は、デザインの一部として利用することもできる。
【0064】
また、本実施形態では、表布16と裏布18とを縫製により一体化させているが、必ずしも縫製に限るものではない。例えば、接着、溶着等により表布16と裏布18とを一体化させるようにしてもよい。
【0065】
さらに、本実施形態では、Tシャツ10の前身頃12が表布16と裏布18の二枚重ねとなっている。本態様では、これ以外にも、図示はしないが、Tシャツ10の後ろ身頃14が二枚重ねとなるようにしてもよく、また、前身頃12及び後ろ身頃14がそれぞれ二枚重ねとなるようにしてもよい。さらに、前身頃12に設けられた前ポケット22が、図示はしないが、後ろ身頃14に設けられるポケットと繋がっていてもよい。
【0066】
また、本実施形態では、
図1に示されるように、Tシャツ10の前身頃12の縫製部20の一部を成す右側脇下部20Fに口部24が形成されているが、前ポケット22と繋がる口部24が前身頃12に形成されていればよいため、必ずしも縫製部20上に口部24を形成する必要はない。例えば、第2変形例として、
図8に示されるように、前身頃12の表布16側に口部50が形成されてもよい。
【0067】
さらに、本実施形態では、
図1に示されるように、Tシャツ10の口部24は、前身頃12の右側12Aに設けられているが、前身頃12の左側12Bに設けられてもよいし、右側12A及び左側12Bに設けられてもよい。
【0068】
また、図示はしないが、口部24に、裏ポケット32と同様の、返し部が設けられてもよく、また、当該返し部に代えてフラップが設けられてもよい。勿論、口部24を開閉可能にするボタンやファスナー等が設けられてもよい。
【0069】
さらに、本実施形態では、Tシャツ10の前身頃12が表布16と裏布18の二枚重ねとなっている。図示はしないが、Tシャツ10の後ろ身頃14が二枚重ねとなるようにしてもよく、また、前身頃12及び後ろ身頃14がそれぞれ二枚重ねとなるようにしてもよい。
【0070】
また、本実施形態では、Tシャツ10の素材として綿が用いられ、前身頃12は、表布16と裏布18が重なり縫製されて形成されている。つまり、表布16及び裏布18は、素材として同じ綿が用いられているが、表布16と裏布18とは必ずしも同じ素材である必要はない。例えば、裏布18側にはメッシュ素材のものが用いられてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、Tシャツ10の前身頃12において、裏布18側に設けられた裏ポケット32が表布16側に設けられた胸ポケット30と、正面視で完全に重なる位置に設けられているが必ずしも完全に重なる必要はなく、一部が重なっていてもよい。また、裏ポケット32が胸ポケット30と重ならなくてもよい。このため、裏ポケット32は、必ずしもTシャツ10の胸部28の左側に設けられる必要はない。さらに、当該胸ポケット30は必ずしも必要ではない。
【0072】
さらに、本実施形態では、当該裏ポケット32は、Tシャツ10の前身頃12の裏布18側において、前ポケット22の外側に設けられているが、これに限るものではない。例えば、第3変形例として、
図9に示されるように、前ポケット22内に内ポケット52が設けられてもよい。この場合、口部24を通じて当該内ポケット52へ収容物を入れることとなる。
【0073】
また、当該内ポケット52を複数設け(内ポケット52A、52B、52C)、各内ポケット52A、52B、52C内にパスポート、携帯電話、お財布等の収容物が個々に収容可能とされるようにしてもよい。この場合、各収容物が移動しないように各内ポケット52A、52B、52C内に収容することができる。
【0074】
以上のように、裏ポケット32(
図1参照)、内ポケット52A、52B、52Cに収容物を収容すると、裏布18側にはテンションが掛かることとなる。前述のように、本実施形態では、Tシャツ10の前身頃12が表布16と裏布18の二枚重ねとなっている。このため、当該テンションにより裏布18側に弛みが生じたとしても、裏布18は表布16で覆われているので、裏ポケット32(
図1参照)、内ポケット52A、52B、52C内に収容物が収容されていることがTシャツ10の表側からは目立たないようにすることができる。なお、内ポケット52の数、配置、向きについてはこれに限るものではない。
【0075】
さらにまた、本実施形態では、上衣としてTシャツ10を例に挙げて説明したが、これに限るものではない。例えば、生地を裁断・縫製して形成されたカットソー全般に適用可能である。このため、Tシャツ以外に、例えば、キャミソール、タンクトップ、ポロシャツ等に適用可能であり、トレーナー、タートルネック等を含む長袖タイプでも適用可能である。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論のことである。