IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 畠山 昭弘の特許一覧

<>
  • 特許-吸引装置 図1
  • 特許-吸引装置 図2
  • 特許-吸引装置 図3
  • 特許-吸引装置 図4
  • 特許-吸引装置 図5
  • 特許-吸引装置 図6
  • 特許-吸引装置 図7
  • 特許-吸引装置 図8
  • 特許-吸引装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】吸引装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 9/00 20060101AFI20220520BHJP
   F24F 13/08 20060101ALI20220520BHJP
   F04D 25/16 20060101ALI20220520BHJP
   F04D 29/54 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
F24F9/00 M
F24F9/00 E
F24F13/08 A
F04D25/16
F04D29/54 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021169611
(22)【出願日】2021-10-15
【審査請求日】2021-10-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516163578
【氏名又は名称】畠山 昭弘
(74)【代理人】
【識別番号】100190230
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 良吉
(72)【発明者】
【氏名】畠山 昭弘
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第212204658(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第110454830(CN,A)
【文献】特開2003-329280(JP,A)
【文献】特開2000-234773(JP,A)
【文献】特開2001-082778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 9/00
F24F 13/08
F04D 25/16
F04D 29/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
局部排気を行うための吸引装置であって、
略円形の吸引口を吸引対象方向の端部に有し、吸引流を流す吸引流通路と、
前記吸引流通路に前記吸引流を発生させる第1のファンと、
前記吸引口を包囲する略円環状の出口を前記吸引対象方向の端部に有するとともに前記吸引流通路を同軸に包囲する略円筒状に形成されて吹出流を流す円筒状吹出流通路と、
前記円筒状吹出流通路に前記吹出流を導入する第2のファンと、
前記略円環状の出口に固定的に接続され、前記吹出流を前記円筒状吹出流通路の軸に直交する円板状に拡げる円板状通路と、
前記円板状通路内に固定的に設けられ、円板状に広がる前記吹出流を旋回させる旋回ガイドと、
前記円板状通路の外周に設けられ、前記吸引対象方向に開口する円環状の吹出口を形成し、円板状に広がった前記吹出流を前記円環状の吹出口から前記吸引対象方向に吹出させる、略円筒状の吹出流ガイドと、を備えた吸引装置。
【請求項2】
前記円板状通路は、前記略円環状の出口の内周に一端部が接続された略円筒状の内側ガイドと、前記内側ガイドの他端部から外側に広がる第1の環状円板と、前記略円環状の出口の外周から外側に広がるように前記第1の環状円板に平行に設けられた第2の環状円板と、によって形成され、
前記吹出流ガイドは、前記第2の環状円板の外周に連続して設けられ、前記第1の環状円板の外周との間に前記円環状の吹出口を形成している、請求項1に記載の吸引装置。
【請求項3】
前記吹出流ガイドは、前記円筒状吹出流通路の軸を含む縦断面視で、前記第1の環状円板の外周部を中心とする略円弧状に形成され、前記吸引対象方向の先端部の壁面の角度は、前記吸引対象方向に向かって開く場合を+、閉じる場合を-とすると、±30度の範囲内である、請求項2に記載の吸引装置。
【請求項4】
前記内側ガイドは、前記吸引対象方向に向かって直線的又は曲線的に径が拡大している、請求項2に記載の吸引装置。
【請求項5】
前記円筒状吹出流通路の他端部側は閉塞し、前記第2のファンは、前記円筒状吹出流通路に、当該円筒状吹出流通路の軸に直交する平面内の複数の方向から前記吹出流を導入するように、複数設けられたことを特徴とする請求項1に記載の吸引装置。
【請求項6】
前記第2のファンは、前記円筒状吹出流通路に、対向する2方向から前記吹出流を導入するように、2つ設けられたことを特徴とする請求項5に記載の吸引装置。
【請求項7】
前記第1のファンは、前記吸引流通路の他端部に接続された遠心ファンであり、前記第2のファンは、前記円筒状吹出流通路の他端部に接続された遠心ファンである、請求項1に記載の吸引装置。
【請求項8】
前記吹出流ガイドの先端に前記吸引対象方向に向かって連続して設けられた略筒状又は略スカート状の外側延長ガイドと、前記第1の環状円板の外周から前記吸引対象方向に向かって連続して設けられた略筒状又は略スカート状の内側延長ガイドと、の少なくとも一方をさらに備えた請求項3に記載の吸引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、局所排気のための吸引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、局部排気のための吸引装置が種々提案されている。
例えば、特許文献1の装置では、外側部分で吹き出し流を発生させ内側部分で吸引流を発生させるように羽が配置された同軸二重構造のプロペラファンを用い、外側部分で吹き出し流を発生させてエアカーテンを形成する一方、内側部分でその内側の空気を吸引している。プロペラファンの回転により、吹出流と吸引流を同方向に回転させ、竜巻流を発生させて、効果的な吸引を行っている。
特許文献2の装置では、2台のシロッコファンを用い、一方のファンで周辺部からの吹出しを行ってエアカーテンを発生させるとともに、他方のファンで中心部からの吸引を行っている。このとき、吹出流の通路の途中に傾斜羽根を設けて吹き出し流を旋回させ、それにより、安定的にエアカーテンを形成するとともに竜巻流を発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-60088号公報
【文献】特開平8-75208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の吸引装置では、吹出流の旋回を同軸二重構造のプロペラファンの回転だけで生じさせているが、フードによって吹出流を拡げると旋回速度が低下して、大きなエアカーテンを発生させにくいという懸念がある。また、吸引流と吹出流の出力比を吸引対象に応じて柔軟に調整できないという問題もある。
【0005】
特許文献2に記載の吸引装置も、傾斜羽根によって旋回された吹出流をフードで拡げているので、旋回速度が低下し、大きなエアカーテンを発生させにくいという懸念がある。その結果、竜巻流を発生させて吸引距離を伸ばすには風量を大きくする必要があり、騒音が懸念される。また、傾斜羽根を有する吹出流通路の製造が必ずしも容易でないという問題もある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、吸引する対象範囲を絞り込むエアカーテンを安定的に形成でき、小型化や低騒音化が図れ、製造が容易で竜巻流の長さや吸引力を使用する用途によって容易に調整可能な吸引装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係る吸引装置は、
局部排気を行うための吸引装置であって、
略円形の吸引口を吸引対象方向の端部に有し、吸引流を流す吸引流通路と、
前記吸引流通路に前記吸引流を発生させる第1のファンと、
前記吸引口を包囲する略円環状の出口を前記吸引対象方向の端部に有するとともに前記吸引流通路を同軸に包囲する略円筒状に形成されて吹出流を流す円筒状吹出流通路と、
前記円筒状吹出流通路に前記吹出流を導入する第2のファンと、
前記略円環状の出口に固定的に接続され、前記吹出流を前記円筒状吹出流通路の軸に直交する円板状に拡げる円板状通路と、
前記円板状通路内に固定的に設けられ、円板状に広がる前記吹出流を旋回させる旋回ガイドと、
前記円板状通路の外周に設けられ、前記吸引対象方向に開口する円環状の吹出口を形成し、円板状に広がった前記吹出流を前記円環状の吹出口から前記吸引対象方向に吹出させる、略円筒状の吹出流ガイドと、を備えたことを特徴とする。
この構成により、円板状通路に導入された吹出流は、旋回ガイドで旋回されながら円板状に拡げられるので、径を大きくしても旋回速度が維持された吹出流が実現できる。その結果、広範囲をカバーできる安定したエアカーテンが実現でき、その内側では安定した竜巻流による吸引が実現できる。
【0008】
前記円板状通路は、前記略円環状の出口の内周に一端部が接続された略円筒状の内側ガイドと、前記内側ガイドの他端部から外側に広がる第1の環状円板と、前記略円環状の出口の外周から外側に広がるように前記第1の環状円板に平行に設けられた第2の環状円板と、によって形成され、
前記吹出流ガイドは、前記第2の環状円板の外周に連続して設けられ、前記第1の環状円板の外周との間に前記円環状の吹出口を形成している、構成としても良い。
【0009】
前記吹出流ガイドは、前記吹出流通路の軸を含む縦断面視で、前記第1の環状円板の外周を中心とする略円弧状に形成され、前記吸引対象方向の先端部の壁面の角度は、前記吸引対象方向に向かって開く場合を+、閉じる場合を-とすると、±30度の範囲内である、ことが好ましい。
この構成により、円板状通路出口から吹出流ガイドで吹出方向を吸引対象方向に変える間の流路断面積が一定になるので、吹出流が層流になり、吹出流により実現するエアカーテンを安定化して、吸引可能距離を伸ばすことができると考えられる。
【0010】
前記内側ガイドは、前記吸引対象方向に向かって直線的又は曲線的に径が拡大している、構成としても良い。
この構成により、内側ガイドの内側に流れる吸引流が、スムーズに吸引流通路に導入される。特に、第1のファンと吸引流路の長さと断面積で決まる一定の排気能力に対し吸引する煙等の発生量が時間と共に変化して瞬間的にその排気量を超えるような場合でも、内側ガイドの内側に形成される略円錐状の空間に一時的に蓄えてから排気するといった排気量の変動に対するバッファとして機能させることができる。
【0011】
前記円筒状吹出流通路の他端部側は閉塞し、前記第2のファンは、前記円筒状吹出流通路に、当該円筒状吹出流通路の軸に直交する平面内の複数の方向から前記吹出流を導入するように、複数設けられた構成であってもよい。
この構成により、吹出流を強化することができると同時に円筒状吹出流通路内の圧力が周方向で均一になり、円板状通路における吹出流の各方向への広がり速度が均一にでき、エアカーテンを一層安定化できる。
【0012】
前記第2のファンは、前記円筒状吹出流通路に、対向する2方向から前記吹出流を導入するように、2つ設けられた構成であってもよい。
【0013】
前記第1のファンは、前記吸引流通路の他端部に接続された遠心ファンであり、前記第2のファンは、前記円筒状吹出流通路の他端部に接続された遠心ファンである、構成であってもよい。
【0014】
前記吹出流ガイドの先端に前記吸引対象方向に向かって連続して設けられた略筒状又は略スカート状の外側延長ガイドと、前記第1の環状円板の外周から前記吸引対象方向に向かって連続して設けられた略筒状又は略スカート状の内側延長ガイドと、の少なくとも一方をさらに備えていてもよい。
この構成により、吹出流の吹き出し方向がより確実に案内されるので、吹出流の発散を防ぎ、吹出流により実現するエアカーテンを安定化して、吸引可能距離を拡大できるとともに、本吸引装置の製造精度がばらついても安定して竜巻流を形成できると考えられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る吸引装置によれば、円板状通路に導入された吹出流は、旋回ガイドで旋回されながら円板状に拡げられるので、径を大きくしても旋回速度が維持された吹出流が実現できる。その結果、広範囲をカバーできる安定したエアカーテンが実現でき、その内側では安定した竜巻流による吸引が実現できる。その結果、均一に回転する吹出流により円筒型のエアカーテンが実現できるため、その内側では距離の大きい竜巻流による吸引が実現できる。この構造は製造が容易であり、吸引装置を薄型化できる。また第1のファン及び第2のファンの風量が小さくても効率的に竜巻流を生成させる事ができるので、小型で音の静かな吸引装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る吸引装置の第1の実施形態を概念的に示す縦断面図である。
図2図1の吸引装置のA-A断面図である。
図3図1の吸引装置のB-B断面図である。
図4】吹出ガイドの形状を示す縦断面図である。
図5図1の装置の変形例を示すA-A断面図である。
図6】本発明の第2の実施形態を概念的に示す縦断面図である。
図7】本発明の第3の実施形態を概念的に示す縦断面図である。
図8】本発明の第4の実施形態を概念的に示す縦断面図である。
図9】本発明の吸引装置の適用例を概念的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係る吸引装置の第1の実施形態を概念的に示す縦断面図である。
この吸引装置1は、いわゆる局部排気を行う吸引装置であり、吸引流通路10と、第1のファン20と、円筒状吹出流通路30と、第2のファン40と、円板状通路50と、旋回ガイド60と、吹出流ガイド70と、を含む。尚、円板状通路50と、旋回ガイド60と、吹出流ガイド70とを合わせて、吹出流旋回円板通路(50,60,70)と呼ぶこともある。
【0018】
吸引流通路10は、吸引対象90方向の端部に略円形の吸引口10aを有し、吸引流を流す通路である。本実施形態では、吸引流通路10は、ダクト(内管10bともいう)により形成されている。
【0019】
第1のファン20は、吸引流通路10に吸引流を発生させるもので、本実施形態では、吸引流通路10内に配置されている。この第1のファン20は、その羽根20aがモータ20b等の駆動手段によって回転されることにより吸引流を発生させる、いわゆる軸流タイプのプロペラファンである。この構成において、第1のファン20の回転方向を、後述する吹出流の旋回方向と同方向にすると、吸引流が若干竜巻流化しやすくなるという効果がある。但し、第1のファン20は、送風できるファンであればいずれでもよく、例えばシロッコファン等の遠心ファンでもよい。
【0020】
円筒状吹出流通路30は、吸引口10aを包囲する略円環状の出口30aを吸引対象90方向の端部に有するとともに、他端部(30c)が閉塞し、吸引流通路10の吸引口10a近傍部分を同軸で包囲する通路である。本実施形態では、円筒状吹出流通路30は、内管10bを包囲するダクトである外管30bとの間に形成され、他端部側が閉塞板30cで閉塞されている。
【0021】
第2のファン40は、円筒状吹出流通路30に吹出流を導入するもので、本実施形態では、図2に示すように、円筒状吹出流通路30に、当該円筒状吹出流通路30の軸30eに直交する平面内の対向する2方向から吹出流を導入するように、2つ設けられている。
2つ設けることにより、円筒状吹出流通路30内の圧力が周方向で均一になり、後述する円板状通路50における吹出流の各方向への広がりを均一にできる。
尚、第2のファン40の個数は1つでもよく、3以上の第2のファン40を円筒状吹出流通路30に対して放射状に配置してもよい。
【0022】
具体的には、外管30bの対向する2つの位置に導入孔30dとその周囲のフード台座(図示省略)を設け、各フード台座(図示料略)にそれぞれフード41を固定し、そのフード41内に第2のファン40が設けられている。
この第2のファン40は、本実施形態では、第1のファン20と同様にいわゆる軸流タイプのプロペラファンであり、フード41内で羽根40aをモータ40b等の駆動手段によって回転させて吹出流を発生させる。但し、第2のファン40は、送風できるファンであればいずれでもよく、例えばシロッコファン等の遠心ファンでもよい。
【0023】
円板状通路50は、図1に示すように、略円環状の出口30aに接続され、吹出流を円筒状吹出流通路30の軸30e方向に直交する円板状に拡げる通路である。本実施形態では、円板状通路50は、略円環状の出口30aの内周に一端部が接続された略円筒状の内側ガイド51と、内側ガイド51の他端部(下端部)から外側に広がる第1の環状円板52(下側環状円板ともいう)と、略円環状の出口30aの外周から外側に広がるように第1の環状円板52に平行に設けられた第2の環状円板53(上側環状円板ともいう)とによって形成されている。第2の環状円板53の外周に連続して吹出流ガイド70が設けられ、第1の環状円板52の外周との間に円環状の吹出口71を形成しているが、吹出流ガイド70については後述する。
これらの部材は、互いに溶接、螺子止め等により、結合されていてもよく、一体的に形成されていてもよい。また、内側ガイド51と第1の環状円板52との接続部等は、断面視で角部や隅部に適宜Rを設けて曲線的に接続する形状にしてもよい。
【0024】
旋回ガイド60は、円板状通路50内に設けられ、円板状に広がる吹出流を旋回させるガイドである。本実施形態では、旋回ガイド60は、直線的な板状部材で、図3に示すように複数を螺旋状に配置している。但し、旋回ガイド60は、吹出流を旋回できるものであればよく、例えば、曲線状のものでもよく、個数も適宜変更できる。
【0025】
吹出流ガイド70は、図1に示すように、円板状通路50の第2の環状円板53(上側環状円板ともいう)の外周に設けられ、吸引対象90方向に開口する円環状の吹出口71を形成し、円板状に広がった吹出流を円環状の吹出口71から吸引対象90方向に吹出させる、略円筒状のガイドである。
本実施形態では、吹出流ガイド70は、第2の環状円板(上側環状円板)53の外周に連続して設けられ、吹出流通路の軸30eを含む縦断面視で、図4に示すように、第1の環状円板(下側環状円板)52の外周を中心とする略円弧状に形成されている。
この構成により、円板状通路50の出口から吹出流ガイド70で吹出方向を変える間の流路断面積が一定になるので、吹出流が層流になり、吹出流により実現するエアカーテンACを安定化できると考えられる。
【0026】
吹出流ガイド70の吸引対象90方向の先端部(下端部)の壁面の角度は、吸引対象方向に向かって開く場合を+、閉じる場合を-とすると、±30度の範囲内である、ことが好ましい。
図4は、吹出流ガイド70の断面を示す図であり、(a)は先端部(下端部)の壁面の角度を内側に閉じる場合(角度は-)を示しており、この場合は、エアカーテンACで包囲される範囲が狭くなるため、吸引対象90が近く、かつ狭い範囲に存在する場合の吸引に適している。一方、(b)は先端部(下端部)の壁面の角度を外側に開く場合(角度は+)を示しており、この場合は、エアカーテンACで包囲される範囲が広くなるため、吸引対象90が広い範囲にある場合の吸引に適している。尚、この場合は、エアカーテンACを拡げるため、第2のファン40の出力を大きくして吹出流を強化する必要がある。
【0027】
次に、前記のように構成された本実施形態の吸引装置1の動作について、図1図3を参照して説明する。
第1のファン20及び2つの第2のファン40が回転駆動されると、第2のファン40によって空気が導入孔30dを通って円筒状吹出流通路30内に導入される。このとき、空気が2つの導入孔30dから導入されるので、円筒状吹出流通路30の円周方向に略均一に行き渡り、圧力分布が平滑化される。円筒状吹出流通路30の他端部側は、閉塞板30cで閉塞されているので、この吹出流は、出口30aから円板状通路50に流入する。吹出流は、円板状通路50で、円筒状吹出流通路30の軸方向に直交する円板状(水平の円板状)に拡げられるが、この際、円筒状吹出流通路30内の圧力が周方向で平滑化されるので、円板状通路50における吹出流の各方向への広がりを平滑化できる。円板状に拡がる吹出流は、円板状通路50内に配置された旋回ガイド60で旋回され、円板状通路50の外周に設けられた吹出流ガイド70により、円環状の吹出口71から吸引対象90方向に吹出される。この吹出流は、旋回するエアカーテンAC(図1参照)を形成する。
【0028】
一方、第1ファンの20の回転により吸引流が発生し、エアカーテンACの内側の空気は、内側ガイド51と内管10bを通って吸引される。このため、エアカーテンACを形成した吹出流は、その風速で決まる到達点、または物理的な床面や平面で折り返し、内側ガイド51の吸引口51a側に向きを変えて、そのまま旋回しながら内側ガイド51の吸引口51aに向かって上昇する。このとき、吹出流は、折り返されることによって、回転運動エネルギーが維持されたまま旋回する半径が小さくなるので、旋回が高速になり、吸引対象90まで達する竜巻状の渦が形成される。この竜巻状の渦により、吸引対象90(例えば、調理用レンジ台91から発生する湯気や煙等)を効率的に吸引することができる。
【0029】
吸引されたガス等の吸引対象90は、図1に示すように、吸引流として吸引流通路10を成す内管10bの内側を通って排気される。
【0030】
尚、本実施形態では、図1,3等に示すように、吹出流及び吸引流とも上面側から見て反時計方向に回転させているが、本発明はこれに限らず、時計方向に回転させるようにしてもよい。
【0031】
本実施形態の吸引装置1によれば、円板状通路50と、旋回ガイド60と、吹出流ガイド70とにより、吹出流旋回円板通路(50,60,70)を構成したので、吹出流は、円板状通路50内を円板状に広がりながら、複数の旋回ガイド60により旋回されるので、大きな旋回径と旋回速度で、円環状の吹出口71から吹き出し、エアカーテンACを形成するように構成されている。
この構成により、製造が容易で、広範囲を囲い込むエアカーテンACを安定的に形成でき、囲い込んだ範囲を竜巻流で効率的に吸引でき、また、風の流れをスムーズにできるため静粛性にも優れた吸引装置を実現できる。
【0032】
また、本実施形態では、吸引流を発生させる第1のファン20と、吹出流を発生させる第2のファン40を別々に制御する構成としているので、2つのファンの出力バランスを調整することにより、吸引流と吹出流の流量を最適に設定することが可能となり、これにより、使用環境に合わせた最適な吸引を可能とすることができる。
【0033】
(変形例)
図5は、本発明の第1の実施形態の吸引装置1の変形例を概念的に示す横断面図であり、図1のA-A断面図で、図2に対応する。本変形例は、第1の実施形態の吸引装置1において、第2のファン40を、円筒状吹出流通路30の対向位置の代わりに、周囲3箇所に設け、かつ導入方向を円筒状吹出流通路30の軸30eに対して偏心させて、吹出流を円筒状吹出流通路30内で旋回させるようにした形態である。
この円筒状吹出流通路30内での旋回方向は、円板状通路50において吹出流を旋回ガイド60により旋回させる方向と同じに設定している。これにより、円板状通路50における吹出流の旋回をスムーズにすることができる。これにより、第2のファン40への負荷や発生音を低減させる効果も期待できる。
尚、本例では、第2のファン40を円筒状吹出流通路30の周囲3箇所に設けたが、1箇所や対向位置2箇所又は4箇所以上に設けても、導入方向を円筒状吹出流通路30の軸30eに対して偏心させれば、同様の効果が得られる。
【0034】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態の吸引装置101を概念的に示す縦断面図である。本実施形態は、第1の実施形態の吸引装置1において、円板状通路50の内側ガイド51を吸引対象90方向に向かって直線的又は曲線的に径が拡大するように形成した形態である。これにより、内側ガイド51の内側に略円錐状又は略漏斗状の空間10gを形成し、吸引対象90がよりスムーズに吸引流通路10に導入されるようにした。
それ以外の構成は第1の実施形態と同一なので、重複する説明は省略する。
【0035】
前記のように構成された本実施形態の吸引装置1の動作は、第1の実施形態の吸引装置1の動作と基本的に同じである。
但し、この構成により、内側ガイド51の内側に略円錐状又は略漏斗状の空間10gが形成されるので、内側ガイド51の内側に流れる吸引流がスムーズに吸引流通路10に導入される。
特に、吸引対象90を一気に排気したい場合、例えば、鍋料理の鍋の蓋を開けた直後に一時的に大量に発生する湯気を排気する場合等、第1のファン20と吸引流通路10の長さと断面積で決まる一定の排気能力に対し吸引する湯気の発生量が瞬間的にその排気量を超えるような場合でも 内側ガイド51の内側に形成される略円錐状又は略漏斗状の空間10gに一時的に蓄えてから排気するといった排気量の変動に対するバッファとして機能させることができる。
【0036】
尚、第1の実施形態と同様に、内側ガイド51と第1の環状円板52との接続部等は、断面視で角部や隅部に適宜Rを設けて曲線的に接続する形状にしても良い。内側ガイド51を吸引対象90方向に向かって径が拡大する形状にしたことに伴い、円筒状吹出流通路30の出口30aにおける外管30bと第2の環状円板53との接続部も、適宜、縦断面視で曲線状や斜めの直線状等にして流路断面積を確保するようにして良い。
【0037】
(第3の実施形態)
図7は、本発明の第3の実施形態の吸引装置201を概念的に示す縦断面図である。本実施形態は、第1の実施形態の吸引装置1において、前記第1のファン20及び第2のファン40を、プロペラファンの代わりに遠心ファンとした構成である。
この吸引装置201は、吸引流通路10の他端部に接続された吸引流発生室25と、この中に設けられた第1の遠心ファン20Aと、吸引流発生室25の奥側に配置されて円筒状吹出流通路30に接続された吹出流発生室45と、この中に設けられた第2の遠心ファン40Aと、を含む。
【0038】
吸引流発生室25は、吸引流通路10の他端部側に接続され、第1の遠心ファン20Aを収容し、当該第1の遠心ファン20Aの回転により吸引流を発生させるとともに、側面に設けた排気管26から排気するものである。
この「遠心ファン」とは、遠心力によって送風させるファンの総称で、シロッコファンも含む。
本実施形態では、第1の遠心ファン20Aは、回転軸が吸引流通路10の軸10cと同軸になるように配置され、モータ20bにより回転駆動される。また、図7に示すように、吸引流発生室25の外周部は、内管10bの一部により略円筒状に形成され、その外側の側面に排気管26が接続されている。また、図7に示すように、吸引流発生室25の下端部及び上端部は、略円板状の下端板25a及び上端板25bで封止され、下端板25aには吸気口25cが設けられている。尚、モータ20bは、上端板25bの上側に形成されるモータ室27に配置されている。
但しこの構成に限られず、例えば、吸引流発生室25として、ケーシング付きの市販のシロッコファン装置等の遠心ファン装置を用い、内管10bの内側に配置して、排気管26だけ内管10b及び外管30bから突設させても良い。
【0039】
吹出流発生室45は、吸引流発生室25の吸引流通路10とは反対側に配置され、空気導入口45c及び第2の遠心ファン40Aを有し、この第2の遠心ファン40Aの回転により空気導入口45cから空気を導入して、吹出流を発生させるものである。
この「遠心ファン」とは、遠心力によって送風させるファンの総称で、シロッコファンも含む。
本実施形態では、第2の遠心ファン40Aは、回転軸が吸引流通路10の軸10cと同軸になるように配置され、モータ40bにより回転駆動される。また、吹出流発生室45の外周部は、円筒状吹出流通路30の外管30bにより略円筒状に形成されている。また、図7に示すように、吹出流発生室45の下端部及び上端部は、略円板状の下端板45a及び上端板45bで封止され、上端板45bには空気導入口45cが設けられている。
下端板45aの外周と外管30bの内周との間には、円環状の隙間があり、この隙間を通して吹出流発生室45から円筒状吹出流通路30に吹出流を送風するようになっている。
但し、吹出流発生室45の構成は、これに限られず、例えば、ケーシング付きの市販のシロッコファン装置等の遠心ファン装置を用い、内管10bと外管30bの端部に接続しても良い。
【0040】
このように構成された本実施形態の吸引装置201の動作は、第1の吸引装置1の動作と同様である。
但し、第2の遠心ファン40Aの回転により発生する吹出流は、吹出流発生室45において第2の遠心ファン40Aの回転方向に回転し、円筒状吹出流通路30でも(吸引流の排気管26が若干障害になるが)同方向に旋回しながら、出口30aから円板状通路50に吹き出される。
したがって、第2の遠心ファン40Aの回転方向を円板状通路50における旋回ガイド60による回転方向と同一にすることにより、第2の遠心ファン30Aにより発生する吹出流の回転エネルギーを有効に利用して、旋回する吹出流を形成することができる。
【0041】
(第4の実施形態)
図8は、本発明の第4の実施形態の吸引装置301を概念的に示す縦断面図である。本実施形態の吸引装置301は、第1の実施形態の吸引装置1において、吹出流ガイド70の先端に吸引対象90方向に向かって連続して設けられた略筒状又は略スカート状の外側延長ガイド72と、第1の環状円板52の外周から記吸引対象方向に向かって連続して設けられた略筒状又は略スカート状の内側延長ガイド73と、をさらに備えた構成である。
ここで、外側延長ガイド72と内側延長ガイド73は、それぞれ、略筒状でもよく、吸引対象90方向に向かって開いたスカート状又は閉じたスカート状でもよい。吸引対象90の大きさや吸引対象90までの距離等に応じて様々に設定できる。
尚、本実施形態では、外側延長ガイド72は吹出流ガイド70の両方を設けたが、どちらか一方だけ設けてもよい。
また、外側延長ガイド72は吹出流ガイド70と一体的に形成されていてもよく、内側延長ガイド73も第1の環状円板52と一体的に形成されていてもよい。また、内側延長ガイド73と第1の環状円板52との接続部は、断面視で角部や隅部に適宜Rを設けて曲線的に接続する形状にしてもよい。
それ以外の構成は第1の実施形態と同一なので、重複する説明は省略する。
【0042】
このように構成された本実施形態の吸引装置301の動作は、第1の実施形態の吸引装置1の動作と基本的に同じである。
この構成により、吹出流の吹き出し方向がより確実に案内されるので、吹出流の発散を防ぎ、吹出流により実現するエアカーテンACを安定化して、吸引可能距離を拡大できるとともに、本吸引装置の製造精度がばらついても安定して竜巻流を形成できるという効果が期待できる。
【0043】
(適用例)
図9は、本発明の第1の実施形態の吸引装置1の適用例を概念的に示す図である。本例では、屋内に設置した調理用レンジ台91から発生する湯気や煙を吸引対象90とし、吸引装置1によって吸引した後、吸引装置1の本体から離れた地点、例えば屋外へ内管10bに接続された排気用ダクト10dを介して排気する。一方、吹出流は屋内から取り入れている。図1において、92は調理用レンジ台91の載置台、93は建物の外壁をそれぞれ示す。
【0044】
図9に示す吸引装置1は、図1の吸引装置1に比べて、吸引流を発生させる第1のファン20を、吸引流通路10内のより下流位置、すなわち、内管10bに接続された排気用ダクト10d内に配置しているが、基本的構成は同じである。
この吸引装置1の動作は、前記したとおりである。すなわち、第1のファン20及び第2のファン40が回転駆動されると、第2のファン40によって、屋内の空気が円筒状吹出流通路30へ導入され、円板状通路50で円板状に拡げられるとともに旋回され、円環状の吹出口71から吸引対象90の方向に吹き出されて、旋回するエアカーテンACを形成する。
【0045】
エアカーテンACを形成した吹出流は、吸引対象90(調理用レンジ台91から発生する湯気や煙等)を囲い込んで竜巻流を形成するので、この吸引対象90を、効率的に吸引することができる。
【0046】
吸引されたガス等の吸引対象90は、図1に示すように、吸引流として吸引流通路10を成す内管10b及び排気用ダクト10dの内側を通って、排出口10eから外部に排気される。
【0047】
第2、第3、第4の実施形態の吸引装置101,201,301も、本例の用途に同様に適用することが可能である。
尚、吸引装置1,101,201,301は、吸引流を発生させる第1のファン20と、吹出流を発生させる第2のファン40を別個に設けているので、吸引流と吹出流の流量を最適に設定することが可能で、これにより、使用環境に合わせた最適な吸引を行うことができる。
また、複数の吸引装置1,101,201,301を設置する場合は、第1のファン20を1台設置し、その吸引流を複数台の吸引装置101,201,301で共有することもできる。
【0048】
吸引装置1,101,201,301は、調理用レンジ台以外にも、焼き肉用テーブルコンロ等から発生する煙の排気や、局所的に発生する悪臭や粉塵などを吸引して外部へ排出する用途にも適用することができる。
【0049】
なお、上記各実施形態の吸引装置1,101,201,301の特徴を組み合わせた吸引装置を構成してもよい。例えば、第3の実施形態の遠心ファンを用いた吸引装置201において、第2の実施形態のように円板状通路50の内側ガイド51を吸引対象90方向に向かって直線的又は曲線的に径が拡大させてもよく、第4の実施形態のように外側延長ガイド72や内側延長ガイド73をさらに備えてもよい。このような吸引装置でも本発明の効果が期待できる。
【符号の説明】
【0050】
1:吸引装置
10:吸引流通路
10a:吸引口
10b:内管
10c:(吸引流通路の)軸
10d:排気用ダクト
10e:排出口
10g:略円錐状又は略漏斗状の空間
20:第1のファン
20A:第1の遠心ファン
20a:羽根
20b:モータ(駆動手段)
25:吸引流発生室
25a:下端板
25b:上端板
25c:吸気口
26:排気管
27:モータ室
30:円筒状吹出流通路
30a:出口
30b:外管
30c:閉塞板
30d:導入孔
30e:(円筒状吹出流通路の)
40:第2のファン
40A:第2の遠心ファン
40a:羽根
40b:モータ(駆動手段)
41:フード
45:吹出流発生室
45a:下端板
45b:上端板
45c:空気導入口
50:円板状通路
51:内側ガイド
51a:吸引口
52:第1の環状円板(下側環状円板)
53:第2の環状円板(上側環状円板)
60:旋回ガイド
70:吹出流ガイド
71:円環状の吹出口
72:外側延長ガイド
73:内側延長ガイド
90:吸引対象
91:調理用レンジ台
92:載置台
93:建物の外壁
101:(第2の実施形態の)吸引装置
201:(第3の実施形態の)吸引装置
301:(第4の実施形態の)吸引装置
AC:エアカーテン
【要約】
【課題】製造が容易で、広範囲を囲い込むエアカーテンを安定的に形成でき、囲い込んだ範囲を強い竜巻流で効率的に吸引することができる吸引装置を提供する。
【解決手段】 略円形の吸引口10aを有し吸引流を流す吸引流通路10と、吸引流通路10に吸引流を発生させる第1のファン20と、吸引口10aを包囲する略円環状の出口30aを有するとともに吸引流通路10を同軸に包囲して吹出流を流す円筒状吹出流通路30と、円筒状吹出流通路に吹出流を導入する第2のファン40と、略円環状の出口30aに接続され、吹出流を円筒状吹出流通路30の軸に直交する円板状に拡げる円板状通路50と、円板状通路50内に設けられ、円板状に広がる吹出流を旋回させる旋回ガイド60と、円板状に広がった吹出流を円環状の吹出口71から吸引対象90方向に吹出させる吹出流ガイド70と、を備えた。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9