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  • 特許-気動車用歯車装置 図1
  • 特許-気動車用歯車装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】気動車用歯車装置
(51)【国際特許分類】
   B61C 9/00 20060101AFI20220520BHJP
   F16H 1/14 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
B61C9/00
F16H1/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018043465
(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公開番号】P2019156069
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】303025663
【氏名又は名称】株式会社日立ニコトランスミッション
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】田邉 修
(72)【発明者】
【氏名】柄沢 亮
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 博己
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-067456(JP,U)
【文献】特開2011-208715(JP,A)
【文献】特開平09-210144(JP,A)
【文献】特開2003-113906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61C 9/00
F16H 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの駆動力が伝達される入力軸と、油圧クラッチにより動力伝達の制御が成される変速歯車を介して前記入力軸から伝達される駆動力を外部へ出力する出力軸と、を有し、前記入力軸と前記出力軸とが直交配置されている油圧クラッチ内蔵型の歯車装置であって、
前記出力軸の後端側に前記入力軸の先端側を配置し、
前記入力軸の先端に油圧ポンプの駆動軸への動力伝達部を備え
前記入力軸に前記油圧クラッチを備える構成としたことを特徴とする気動車用歯車装置。
【請求項2】
前記入力軸と、前記出力軸との間に介在される変速歯車の回転軸を1軸のみとしたことを特徴とする請求項1に記載の気動車用歯車装置。
【請求項3】
前記入力軸は、前記駆動力入力部となる基端側と、前記油圧クラッチとの間に、前記変速歯車への駆動力伝達用の歯車を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の気動車用歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気動車に用いられる歯車装置に係り、特に、小型、軽量、および静音化に適した歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンにて動力を発生させる気動車は、発熱するエンジンを冷却するためにラジエータが備えられている。そして、ラジエータには、冷却ファンによる強制通風が成されるように構成されていることが一般的である。一例として、特許文献1に開示されている気動車には、複数のラジエータから成るラジエータユニットが搭載されている。そして、特許文献1に開示されているラジエータユニットには、走行風が採り込まれると共に、冷却ファンによる空気の引き込み(強制通風)が成されるように構成されている。
【0003】
図2に示す例は、冷却ファンを駆動させるための歯車装置(増速機)1であり、入力軸2と出力軸3が直交して配置される形態が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-59172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今、気動車の燃費向上や、客室、あるいは荷室スペースの拡大などを目的として、歯車装置1についても、小型化、軽量化が要求されるようになってきている。しかし、図2に示すような油圧クラッチ4を内蔵した直交歯車型の歯車装置1の場合、単純に入力軸2と出力軸3との間に介在される歯車の段数を減らす構造としただけでは、油圧機構用のポンプ(油圧ポンプ5)を駆動させるための機構を配置することができなくなるといった問題が生じることとなる。
【0006】
そこで本発明では、クラッチを内蔵した直交歯車型の歯車装置であっても、小型軽量化を図る事のできる気動車用歯車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る気動車用歯車装置は、エンジンからの駆動力が伝達される入力軸と、油圧クラッチにより動力伝達の制御が成される変速歯車を介して前記入力軸から伝達される駆動力を外部へ出力する出力軸と、を有し、前記入力軸と前記出力軸とが直交配置されている油圧クラッチ内蔵型の歯車装置であって、前記出力軸の後端側に前記入力軸の先端側を配置し、前記入力軸の先端に油圧ポンプの駆動軸への動力伝達部を備える構成としたことを特徴とする。
【0008】
また、上記のような特徴を有する気動車用歯車装置では、前記入力軸と、前記出力軸との間に介在される変速歯車の回転軸を1軸のみとすると良い。このような特徴を有する事によれば、部品点数や設置スペースの削減に伴い、歯車装置の小型化、軽量化に寄与することができる。
【0009】
また、上記のような特徴を有する気動車用歯車装置では、前記入力軸に前記油圧クラッチを備える構成とすることができる。このような特徴を有する事によれば、クラッチ脱時に空回りする歯車が無くなり、歯車同士の断続的な接触に伴う騒音(ガラ音)を抑制することができる。
【0010】
さらに、上記のような特徴を有する気動車用歯車装置における前記入力軸は、前記駆動力入力部となる基端側と、前記油圧クラッチとの間に、前記変速歯車への駆動力伝達用の歯車を備える構成とすると良い。このような特徴を有する事によれば、入力軸や、変速歯車の回転軸を短くすることが可能となり、歯車装置の小型化、軽量化に寄与することができる。
【発明の効果】
【0011】
上記のような特徴を有する気動車用歯車装置によれば、クラッチを内蔵した直交歯車型の歯車装置であっても、小型軽量化を図る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る気動車用歯車装置の概略構成の一例を示す図である。
図2】従来の気動車用歯車装置の概略構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の気動車用歯車装置に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、実施形態に係る気動車用歯車装置の概略構成の一例を示す図である。
【0014】
[構成]
本実施形態に係る気動車用歯車装置(以下、単に歯車装置10と称す)は、入力軸12と出力軸14が直交配置されると共に、両者の間に変速歯車16を備えることを基本とし、これらの要素をケーシング20により覆う事により構成されている。入力軸12は、エンジン(例えばディーゼルエンジン:不図示)からの駆動力が伝達される回転軸である。本実施形態に係る回転軸には、油圧クラッチ12aと、この油圧クラッチ12aの嵌脱により駆動力の伝達を制御される歯車12bを有する。
【0015】
油圧クラッチ12aは、図示しない油圧経路からの作動油の供給の有無に応じて嵌脱、および滑り状態が制御され、歯車12bへの動力の伝達状態が調整されることとなる。歯車12bは、入力軸12に伝達された駆動力を変速歯車16へ伝達するための要素である。入力軸12と歯車12bとの間には、摺動部材が介在されている。このため、油圧クラッチ12aが脱状態の時には、入力軸12と歯車12bと間での動力伝達が解除され、入力軸12のみが回転状態となる。一方、油圧クラッチ12aが嵌状態、あるいは滑り状態の時には、歯車12bに対して動力が伝達されることとなる。この結果、歯車12bは入力軸12の回転に伴って回転することとなる。なお、油圧クラッチ12aが滑り状態の時には、滑りの割合に応じて、入力軸12から歯車12bへ伝達される駆動力の割合が変化することとなる。
【0016】
出力軸14は、入力軸12に伝達された駆動力を、後段の動力系(例えば冷却ファン:不図示)へ伝達するための回転軸である。本実施形態の場合、出力軸14は、入力軸12に対して直交配置されている。出力軸14の先端側Aを駆動力出力部とした場合、上述した入力軸12との関係において、出力軸14の後端側Bに、入力軸12の先端側Cが位置するように配置し、入力軸12の先端側Cと出力軸14の後端側Bとの間には、非干渉領域Eを構成している。
【0017】
入力軸12に対して軸心が交差(直交)して配置されている出力軸14には、駆動力を伝達するためのかさ歯車14aが備えられている。このような構成とすることで、回転軸の向きを変えた場合でも、駆動力の伝達が可能となるからである。
【0018】
また、入力軸12の先端側Cと出力軸14の後端側Bとの間に形成された非干渉領域Eには、油圧クラッチ12aやその他の潤滑系に作動油、あるいは潤滑油を供給するための油圧ポンプ18が設けられている。
【0019】
非干渉領域Eに設けられた油圧ポンプ18の駆動軸は、入力軸12に接続されている。このような構成とすることで、油圧ポンプ18の駆動軸には、入力軸12を介してエンジンからの動力が常に伝達されることとなり、常時、作動油および潤滑油を供給することが可能となる。
【0020】
入力軸12の先端側Cに出力軸14の後端側Bが位置するようにして、両者を直交配置すると共に、入力軸12の先端側Cに設けられた非干渉領域Eに油圧ポンプ18を配置する構成としたことで、入力軸12を出力軸14の先端側Aに設ける場合に比べ、両者の距離を近づけることができるようになる。出力軸14に対する接続空間を確保する必要がなくなるため、入力軸先端側へ突出部(油圧ポンプ18)を設けることが可能となるからである。また、非干渉領域Eに油圧ポンプ18を配置することで、歯車装置10の外観にデッドスペース、あるいは突出部が少なくなり小型化を図ることができる。
【0021】
変速歯車16は、入力軸12と出力軸14の間における駆動力の伝達を担う要素である。本実施形態では、変速歯車16を1段のみとする事で、部品点数の削減、並びに設置スペースの削減を図り、歯車装置10の小型化、軽量化を実現する構成としている。変速歯車16は、回転軸16aと、入力軸側歯車16b、および出力軸側歯車16cとを有する。入力軸側歯車16bは、入力軸12に備えた歯車12bと係合する歯車であり、平歯車とすることができる。一方、出力軸側歯車16cは、出力軸14に備えられたかさ歯車14aと係合する歯車であり、その形態は、かさ歯車とされている。入力軸12から出力軸14までに噛み合わされる歯車の歯車比により、入力軸12と出力軸14との間における回転数の増速比、あるいは減速比が定められる。
【0022】
また、本実施形態に係る歯車装置10では、駆動力が常に伝達されることとなる入力軸12に油圧クラッチ12aを設け、入力軸12から歯車系への動力の伝達を切離可能としたことで、無負荷(低負荷)状態で回転し続ける歯車が存在しない構成とすることができる。このため、エンジンのトルク変動や回転変動に応じて歯車に不規則な動力伝達が成され、歯車同士に断続的な衝突が生じることを避けることができる。これにより、歯車同士の断続的な衝突に起因した騒音、いわゆるガラ音を抑制することも可能となる。
【0023】
なお、本実施形態に係る歯車装置10では、入力軸12の後端側(基端側)Dを駆動力入力部とした場合に、駆動力入力部と油圧クラッチ12aとの間に歯車12bを備える構成としている。このような構成とすることで、歯車の噛み合いや、軸の支持形態の関係より、入力軸12、および変速歯車16の回転軸16aを短くすることが可能となる。よって、歯車装置10の小型化、軽量化に寄与することができる。
【0024】
[効果]
上記のような構成の歯車装置10によれば、油圧クラッチ12aを内蔵した直交歯車型の歯車装置において、小型化、軽量化を実現することができる。さらに、入力軸12に油圧クラッチ12aを配置することで、いわゆるガラ音の抑制を図る事も可能となる。
【符号の説明】
【0025】
10………歯車装置、12………入力軸、12a………油圧クラッチ、12b………歯車、14………出力軸、14a………かさ歯車、16………変速歯車、16a………回転軸、16b………入力軸側歯車、16c………出力軸側歯車、18………油圧ポンプ、20………ケーシング。
図1
図2