(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】換気スリーブ
(51)【国際特許分類】
F24F 7/04 20060101AFI20220520BHJP
F24F 7/10 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
F24F7/04 B
F24F7/10 Z
(21)【出願番号】P 2018044498
(22)【出願日】2018-03-12
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】久野木 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 究
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-299978(JP,A)
【文献】実公昭58-003988(JP,Y2)
【文献】特開2015-021651(JP,A)
【文献】特開2005-061748(JP,A)
【文献】登録実用新案第3032090(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/04
F24F 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の壁の貫通孔に設置される換気スリーブであって、
金属製の外スリーブ部と、
前記外スリーブ部に収容された金属製の内スリーブ部と、
前記外スリーブ部と前記内スリーブ部との間に設けられた筒状の断熱層と、
前記断熱層の屋外側の端部に被さる環状の金属製の蓋部材と、
を備え
、前記蓋部材の中心穴の内周縁と前記内スリーブ部の外周面との間にクリアランスが形成され、前記蓋部材と前記内スリーブ部とが固定されていないことを特徴とする換気スリーブ。
【請求項2】
前記蓋部材が、前記断熱層の屋外側の端面に被さる平らな環状の蓋板部と、前記蓋板部の外周部から屋内側へ突出して前記断熱層の外周面に被さる筒状の周壁部とを含むことを特徴とする請求項1に記載の換気スリーブ。
【請求項3】
前記外スリーブ部が前記周壁部の外周面に被さり、前記内スリーブ部が前記蓋板部を貫通していることを特徴とする請求項2に記載の換気スリーブ。
【請求項4】
前記蓋部材が、前記壁の外装材の屋内側面に突き当てられることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の換気スリーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物における換気ダクトの先端部に連なるとともに外壁に設置される換気スリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、家屋等の建物には換気ダクトが配管されている。換気ダクトは、例えば厨房のレンジフード等から外壁へ延びている(特許文献1等参照)。例えば、特許文献1においては、換気ダクトの屋外側端部に換気スリーブが接続されている。換気スリーブは、外スリーブ部と、内スリーブ部を含む。外スリーブ部が建物の外壁の貫通孔に嵌められる。該外スリーブ部の内部に内スリーブ部が収容されている。内スリーブ部の内部空間が、換気ダクト内に連なる換気流路となっている。外スリーブ部と内スリーブ部の間には不燃性の断熱層が設けられている。内スリーブ部の屋外側の端部は、外壁のサイディング(外装材)を貫通している。外スリーブ部と断熱層の屋外側の端面がサイディングの屋内側面に当っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前掲特許文献1の換気スリーブにおいては、金属製の外スリーブ部がサイディングに到達することで、防火性能が確保されている。また、断熱層によって換気流路の保温性が確保されている。
一方、雨水や結露水がサイディングと断熱層との間から断熱層の内部に浸み込むおそれがある。この水分によって断熱層内でカビが発生することが懸念される。また、防火性能を確実に確保する必要もある。
本発明は、かかる事情に鑑み、換気スリーブにおける断熱層内への水分の浸み込みを防止するとともに、防火性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記問題点を解決するために、本発明は、建物の壁の貫通孔に設置される換気スリーブであって、
金属製の外スリーブ部と、
前記外スリーブ部に収容された金属製の内スリーブ部と、
前記外スリーブ部と前記内スリーブ部との間に設けられた筒状の断熱層と、
前記断熱層の屋外側の端部に被さる環状の金属製の蓋部材と、
を備えたことを特徴とする。
蓋部材が断熱層の屋外側の端部に被さることによって、雨水や結露水が断熱層内に浸み込むのが防止される。かつ蓋部材を金属製とすることによって防火性が高まる。
【0006】
前記蓋部材が、前記断熱層の屋外側の端面に被さる平らな環状の蓋板部と、前記蓋板部の外周部から屋内側へ突出して前記断熱層の外周面に被さる筒状の周壁部とを含むことが好ましい。
これによって、雨水や結露水が断熱層の屋外側の端面から断熱層内に浸み込むのを一層確実に防止できる。
【0007】
前記外スリーブ部が前記周壁部の外周面に被さり、前記内スリーブ部が前記蓋板部を貫通していることが好ましい。
これによって、金属製の外スリーブ部と内スリーブ部の屋外側部分どうし間を金属製の蓋部材で塞ぐことができる。このため、防火性が更に高まる。
【0008】
前記蓋部材が、前記壁の外装材の屋内側面に突き当てられることが好ましい。
これによって、防火性を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、換気スリーブにおける断熱層内への水分の浸み込みを防止でき、かつ防火性を確保することができる
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る換気スリーブが設けられた建物の外壁の縦断面図である。
【
図3】
図3は、前記換気スリーブの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、建物の外壁1(壁)に換気スリーブ10が設置されている。
図1において二点鎖線で示す換気ダクト3が厨房のレンジフード等から延びて換気スリーブ10に接続されている。
【0012】
図2及び
図3に示すように、換気スリーブ10は、外スリーブ部11と、内スリーブ部12を備えている。
図1に示すように、短筒形状の外スリーブ部11が、軸線を略水平に向けて外壁1の貫通孔1cに嵌められている。なお、外スリーブ部11ひいては換気スリーブ10の軸線が、屋外側へ向かって下へ僅かに傾けられていてもよい。外スリーブ部11の屋外側の端部は、外壁1のサイディング1f(外装材)の近傍に達している。または、外スリーブ部11がサイディング1fに当接されていてもよい。
【0013】
外スリーブ部11の屋外寄り部分の外周に、四角形状の鍔13が設けられている。鍔13が、外壁1の鉛直な屋外側合板1aにビス止めされている。外スリーブ部11及び鍔13の材質は、亜鉛メッキ鋼、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属である。
【0014】
図1及び
図2に示すように、外スリーブ部11に内スリーブ部12が収容されている。内スリーブ部12は、外スリーブ部11より長くかつ小径の筒形状になっている。内スリーブ部12の材質は、亜鉛メッキ鋼、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属である。内スリーブ部12の内部が、換気流路10aとなっている。換気流路10aが、換気ダクト3内に連なっている。
【0015】
内スリーブ部12の屋外側の端部は、外スリーブ部11及び後記断熱層14よりも屋外側へ突出され、外壁1のサイディング1f(外装材)を通して屋外に臨んでいる。サイディング1fにおける貫通孔1cの内周面と内スリーブ部12の外周面との間は、シリコーンなどの封止材15で封止されている。
内スリーブ部12の屋内側の端部は、外スリーブ部11及び後記断熱層14よりも屋内側へ突出され、換気ダクト3と接続されている。
【0016】
外スリーブ部11と内スリーブ部12との間に断熱層14が設けられている。断熱層14は、厚肉の環状ないしは筒状になっている。断熱層14の材質は、グラスウール、ガラス繊維フェルトなどの断熱材によって構成されている。好ましくは、断熱層14は、断熱性に加えて、不燃性を有している。該断熱層14の内周面が内スリーブ部12の外周面に接着等によって接合されている。断熱層14の外周に外スリーブ部11が被さっている。
【0017】
図示は省略するが、断熱層14と外スリーブ部11との間に、勾配付与金具が挿し入れられていてもよい。該勾配付与金具によって内スリーブ部12に屋外側へ向かって下向きの勾配が付けられていてもよい。これによって、換気流路10a内に入り込んだ雨水や結露水が屋内側へ流れるのを防止できる。
【0018】
図3に示すように、断熱層14の屋外寄り部分の外周には、環状のパッキン16(シール部材)が設けられている。パッキン16は、ポリエチレンなどの樹脂、ゴムその他の水密性材質によって構成されている。
図2に示すように、パッキン16によって、外スリーブ部11と断熱層14との間がシールされている。
【0019】
図1に示すように、断熱層14の屋外側(
図1において左側)の端面は、外スリーブ部11の屋外側の端面と略面一か又は外スリーブ部11より屋外側へ突出されている。
断熱層14の屋内側(
図1において右側)の端部は、外スリーブ部11よりも屋内側へ突出され、更には壁1の屋内側石膏ボード1dよりも屋内側へ突出されている。
屋内側石膏ボード1dにおける貫通孔1cの内周面と、断熱層14及び外スリーブ部11の外周面との間は、シリコーンなどの封止材17で封止されている。
【0020】
更に、
図3に示すように、換気スリーブ10には蓋部材20が設けられている。蓋部材20は、断熱層14の屋外側の端部に被さるように配置されている。蓋部材20の材質は、亜鉛メッキ鋼、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属である。
【0021】
蓋部材20は、蓋板部21と、周壁部22を有している。蓋板部21は、中心穴21cを有する環状の平板形状になっている。周壁部22は、筒状に形成され、蓋板部21の外周部から屋内側へ突出されている。
【0022】
図1に示すように、蓋板部21が、断熱層14の屋外側の端面に被さっている。かつ蓋板部21は、サイディング1fの屋内側面に突き当てられている。蓋板部21の中心穴21cを内スリーブ部12が貫通している。
図2に示すように、中心穴21cの内周縁と内スリーブ部12の外周面とのクリアランスCLは十分に小さく、好ましくはCL=0mm~1mmである。封止材15が蓋板部21まで達しており、該封止材15によって前記クリアランスが埋められている。
【0023】
周壁部22は、断熱層14の外周面における屋外側部分に被さっている。更には、周壁部22は、パッキン16の屋外側部分にも被さることでこれを押し潰している。パッキン16の屋内側部分が、周壁部22からはみ出して外スリーブ部11の内周面に密着されることで、外スリーブ部11と断熱層14との間のシール性が確保されている。
【0024】
周壁部22の外周面に外スリーブ部11が被さっている。
外スリーブ部11の屋外側端部と、内スリーブ部12の外周面との間が、蓋部材20によって塞がれている。
【0025】
換気スリーブ10によれば、蓋部材20が断熱層14の屋外側の端部に被さることによって、雨水や結露水が断熱層14内に浸み込むのを防止することができる。これによって、断熱層14の内部でカビが発生するのを防止できる。
また、断熱層14が不燃性であることに加えて、蓋部材20が金属製であるために、防火性を高めることができる。かつ、蓋部材20がサイディング1fの屋内側面に突き当てられることで、防火性を一層高めることができる。更には、金属製の内外のスリーブ部12,11の屋外側部分どうし間を金属製の蓋部材20で塞ぐことで、防火性をより一層高めることができる。
【0026】
本発明は、前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変をなすことができる。
例えば、内スリーブ部12に屋外側へ向かって下向きの勾配が付けられ、蓋部材20が内スリーブ部12と同軸をなすように傾けられていてもよい。このため、蓋部材20の上側部がサイディング1fの屋内側面に当たる一方で、蓋部材20の下側部はサイディング1fから屋内側へ少し離れていてもよい。
周壁部22を省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、例えば建物の換気用のダクト設備に適用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 外壁(壁)
1a 屋外側合板
1c 貫通孔
1d 屋内側石膏ボード
1f サイディング
3 換気ダクト
10 換気スリーブ
10a 換気流路
11 外スリーブ部
12 内スリーブ部
13 鍔
14 断熱層
15 屋外側封止材
16 パッキン
17 屋内側封止材
20 蓋部材
21 蓋板部
21c 中心穴
22 周壁部
CL クリアランス