(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】コイル部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 27/24 20060101AFI20220520BHJP
H01F 5/06 20060101ALI20220520BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20220520BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20220520BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
H01F27/24 Q
H01F5/06 H
H01F5/06 Q
H01F17/04 F
H01F27/32 101
H01F41/04 B
(21)【出願番号】P 2018046107
(22)【出願日】2018-03-14
【審査請求日】2019-10-23
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085143
【氏名又は名称】小柴 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 啓雄
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 勇治
【合議体】
【審判長】酒井 朋広
【審判官】須原 宏光
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-10999(JP,A)
【文献】特開昭59-191786(JP,A)
【文献】特開2000-87000(JP,A)
【文献】特開2007-59807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-19/08
H01F 41/00-41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯部ならびに前記巻芯部の軸線方向における互いに逆の第1および第2の端部にそれぞれ設けられた第1および第2の鍔部を有する、金属元素を含む磁性材料からなるドラム状コアと、
互いに逆方向に向く下方主面および上方主面を有する
板状であって、金属元素を含む磁性材料からなる板状コアと、
前記巻芯部に巻回された、少なくとも1本のワイヤと、
を備え、
前記第1および第2の鍔部の各々は、実装時において実装基板側に向けられる底面と、前記底面の反対側の天面と、前記巻芯部側に向きかつ前記巻芯部の各端部を位置させる内側端面と、前記内側端面の反対側の外側に向く外側端面と、を有し、前記天面には隆起部が設けられ、前記隆起部の頂部は、前記第1および第2の鍔部の各々の前記外側端面よりも前記内側端面により近い側に位置しており、
前記板状コアは、前記下方主面が前記第1および第2の鍔部の前記天面に対向した状態、かつ前記第1および第2の鍔部間に渡された状態で、前記第1および第2の鍔部に接着剤を介して固定され、
前記隆起部の頂部より前記外側端面側について、前記第1および第2の鍔部の各々の前記天面と前記板状コアの前記下方主面との間隔は、前記第1および第2の鍔部の各々の前記内側端面側から前記外側端面側に向かって広がっており、
前記第1および第2の鍔部の前記天面と前記板状コアの前記下方主面とは、前記隆起部の頂部において最も接近しており、前記接着剤が付与された、前記天面と前記下方主面との隙間は、前記隆起部の頂部に向かって次第に狭くなっており、
前記接着剤は、ジシアンジアミドを含むエポキシ系樹脂硬化物からなる、
コイル部品。
【請求項2】
前記ワイヤは絶縁皮膜を有し、前記絶縁皮膜は前記接着剤とは異なる樹脂からなる、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコイル部品を製造する方法であって、
前記ドラム状コアおよび前記板状コアをそれぞれ用意する工程と、
前記板状コアを、前記下方主面が前記天面に対向した状態、かつ前記第1および第2の鍔部間に渡された状態で、前記第1および第2の鍔部に接着剤を介して固定する工程と、
を備え、
前記板状コアを前記第1および第2の鍔部に固定する工程は、前記板状コアと前記第1および第2の鍔部との間に、エポキシ系樹脂を付与し、ジシアンジアミドを硬化剤として当該エポキシ系樹脂を硬化させて前記接着剤とする工程を含む、
コイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤを巻回した巻芯部と巻芯部の各端部にそれぞれ設けられた第1および第2の鍔部とを有するドラム状コア、ならびに第1および第2の鍔部間に渡された板状コアを備える、コイル部品およびその製造方法に関するもので、特に、鍔部と板状コアとを接着する接着剤についての改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば特許第5796603号公報(特許文献1)には、巻芯部を備える磁性材料からなるドラム状コアと、磁性材料からなる板状コアと、上記巻芯部に巻回された少なくとも1本のワイヤと、を備える、コイル部品が記載されている。
図5は、特許文献1の
図2(a)に基づいて作成されたもので、コイル部品におけるドラム状コア1の一方の鍔部2と板状コア3とが図示されている。
【0003】
ドラム状コア1は、ワイヤを巻回した巻芯部と巻芯部の各端部にそれぞれ設けられた第1および第2の鍔部とを有している。図5では、第1および第2の鍔部のうち、第1の鍔部2が図示されている。第1の鍔部2は、巻芯部側に向きかつ巻芯部の各端部を位置させる内側端面(図示しない。)と、内側端面の反対側の外側に向く外側端面4と、内側端面と外側端面4とを連結するものであって、実装時において実装基板側に向けられる底面5と、底面5の反対側の天面6と、を有している。第2の鍔部は、図示されないが、第1の鍔部2と対称的な形状を有している。
【0004】
他方、板状コア3は、互いに逆方向に向く下方主面7および上方主面8を有している。板状コア3は、下方主面7が天面6に対向した状態、かつ第1の鍔部2と第2の鍔部との間に渡された状態で、第1の鍔部2および第2の鍔部に接着剤9を介して固定される。
【0005】
特許文献1では、接着剤9が少ない量であるにも関わらず、ドラム状コア1と板状コア3との間で高い接着強度を得ることができる構造が提案されている。図示された鍔部2について、より具体的に説明すると、鍔部2の天面6において、最も高く位置する平坦面10を中央部11に形成しており、そして、平坦面10から各端部に向かってより低くなるような勾配面12および13を形成している。
【0006】
その結果、鍔部2の天面6と板状コア3の下方主面7とが、天面6の中央部11の平坦面10において接着剤9を介さずに直接接触するとともに、天面6の端部から天面6の中央部に向かって次第に狭くなる隙間を介して対向するようにされ、上記隙間に接着剤9が配置される。
【0007】
特許文献1に記載の技術によれば、上記隙間における天面6の平坦面10の近傍の中央部側で毛細管現象を起こすことができるので、鍔部2と板状コア3との間を少量の接着剤9によって充填することができる。したがって、ドラム状コア1と板状コア3との間で、比較的少ない接着剤9で比較的高い接着強度を得ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、上記接着剤9として、エポキシ系接着剤を用いることが記載されている。エポキシ系接着剤としては、取扱いが容易であること、保管期間を長くできること、といった利点を有することから、熱硬化型の1液性エポキシ系樹脂が広く用いられている。熱硬化型の1液性エポキシ系樹脂には、粒径が数μmの粉末が硬化剤として分散しているのが通常である。
【0010】
上述のような熱硬化型の1液性エポキシ系樹脂を
図5に示した接着剤9として用いると、液体であるエポキシ系樹脂は毛細管現象で広がるが、粉末状の硬化剤は毛細管現象に追従し得ないため、接着剤9中に未硬化部分が偏在することがある。このような未硬化部分の偏在は、接着強度の低下を招く。
【0011】
そこで、この発明の目的は、コイル部品において、特許文献1に記載のようなドラム状コアと板状コアとの接着部分の形状の改良によって接着強度を高めるのではなく、接着剤自体の改良によってドラム状コアと板状コアとの接着強度を高めようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、巻芯部ならびに巻芯部の軸線方向における互いに逆の第1および第2の端部にそれぞれ設けられた第1および第2の鍔部を有する、金属元素を含む磁性材料からなるドラム状コアと、互いに逆方向に向く下方主面および上方主面を有する板状であって、金属元素を含む磁性材料からなる板状コアと、巻芯部に巻回された、少なくとも1本のワイヤと、を備える、コイル部品にまず向けられる。
【0013】
上記第1および第2の鍔部の各々は、実装時において実装基板側に向けられる底面と、底面の反対側の天面と、巻芯部側に向きかつ巻芯部の各端部を位置させる内側端面と、内側端面の反対側の外側に向く外側端面と、を有し、天面には隆起部が設けられる。隆起部の頂部は、第1および第2の鍔部の各々の外側端面よりも内側端面により近い側に位置している。
また、上記板状コアは、その下方主面が第1および第2の鍔部の天面に対向した状態、かつ第1および第2の鍔部間に渡された状態で、第1および第2の鍔部に接着剤を介して固定される。
上記隆起部の頂部より外側端面側について、第1および第2の鍔部の各々の天面と板状コアの下方主面との間隔は、第1および第2の鍔部の各々の内側端面側から外側端面側に向かって広がっている。
第1および第2の鍔部の天面と板状コアの下方主面とは、隆起部の頂部において最も接近しており、上記接着剤が付与された、天面と下方主面との隙間は、隆起部の頂部に向かって次第に狭くなっている。
【0014】
このようなコイル部品において、この発明は、上記接着剤が、ジシアンジアミドを含むエポキシ系樹脂硬化物からなることを特徴としている。
【0015】
ジシアンジアミドを含むエポキシ系樹脂硬化物は、ジシアンジアミドを硬化剤としてエポキシ系樹脂を硬化させて得られたものである。
【0016】
この発明に係るコイル部品において、ワイヤは絶縁皮膜を有し、絶縁皮膜は上記接着剤とは異なる樹脂からなることが好ましい。上記接着剤とは異なる樹脂からなる絶縁皮膜は、少なくとも、ジシアンジアミドを含まないという条件を満たしている。
【0017】
この発明は、また、上述したコイル部品を製造する方法にも向けられる。
【0018】
この発明に係るコイル部品の製造方法は、上記ドラム状コアおよび上記板状コアをそれぞれ用意する工程と、板状コアを、その下方主面がドラム状コアの鍔部の天面に対向した状態、かつ第1および第2の鍔部間に渡された状態で、第1および第2の鍔部に接着剤を介して固定する工程と、を備えている。
【0019】
そして、この発明の特徴とするところは、上述した板状コアを第1および第2の鍔部に固定する工程は、板状コアと第1および第2の鍔部との間に、エポキシ系樹脂を付与し、ジシアンジアミドを硬化剤として当該エポキシ系樹脂を硬化させて上記接着剤とする工程を含むことである。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、ドラム状コアの鍔部と板状コアとの間での接着強度を高めることができる。したがって、耐衝撃性および耐振動性に優れたコイル部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】この発明の
参考例となるコイル部品20の外観を示すもので、(A)は正面図、(B)は左側面図である。
【
図2】この発明の
一実施形態によるコイル部品40の外観を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示したコイル部品40に備えるドラム状コア41および板状コア45を組み合わせ状態で示す斜視図である。
【
図4】
図3に示したドラム状コア41および板状コア45を組み合わせ状態で示すもので、(A)は正面図、(B)は左側面図である。
【
図5】特許文献1に記載されたコイル部品におけるドラム状コア1の一方の鍔部2と板状コア3とを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照して、この発明の
参考例となるコイル部品20について説明する。
このコイル部品20は、簡単に言えば、第1および第2の鍔部23および24の天面30および31の形態において、この発明の特徴的構成を備えていない点で、参考例となるものである。
【0023】
図1に示すように、コイル部品20は、たとえばフェライト等の磁性体またはフェライト粉もしくは金属磁性粉を含有する樹脂といった
金属元素を含む磁性材料からなるドラム状コア21を備える。ドラム状コア21は、巻芯部22ならびに巻芯部22の軸線方向における互いに逆の第1および第2の端部にそれぞれ設けられた第1および第2の鍔部23および24を有する。
【0024】
コイル部品20は、また、上記第1および第2の鍔部23および24間に渡された板状コア25を備える。板状コア25は、互いに逆方向に向く下方主面26および上方主面27を有する板状である。ドラム状コア21の場合と同様、板状コア25も、たとえばフェライト等の磁性体またはフェライト粉もしくは金属磁性粉を含有する樹脂といった金属元素を含む磁性材料からなり、それによって、板状コア25は、ドラム状コア21と協働して、閉磁路を構成する。
【0025】
第1および第2の鍔部23および24は、それぞれ、実装時において実装基板(図示せず。)側に向けられる底面28および29と、底面28および29の反対側の天面30および31と、を有している。第1および第2の鍔部23および24の天面30および31と、板状コア25の下方主面26とは、互いに対向している。
【0026】
第1の鍔部23の底面28側には、第1の端子電極32が設けられ、第2の鍔部24の底面29側には、第2の端子電極33が設けられる。端子電極32および33は、たとえば、Ag粉末等の導電性金属粉末を含む導電性ペーストを浸漬または印刷し、次いで、これを焼き付け、さらに、NiめっきおよびSnめっきを施すことによって形成される。あるいは、端子電極32および33は、たとえば、タフピッチ銅またはリン青銅等の銅系金属からなる導電性金属片を鍔部23および24に貼り付けることによって形成されてもよい。
【0027】
巻芯部22には、ワイヤ34が巻回される。ワイヤ34は、たとえば、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリエステルイミドのような樹脂によって絶縁被覆された銅線からなる。ワイヤ34の一方端は第1の端子電極32に接続され、同じく他方端は第2の端子電極33に接続される。端子電極32および33とワイヤ34との接続には、たとえば熱圧着や超音波溶着、レーザ溶着などが適用される。ワイヤ34は、必要に応じて多層巻きとされてもよい。
【0028】
板状コア25の下方主面26と第1および第2の鍔部23および24の天面30および31との間には、接着剤35が存在している。接着剤35によって、板状コア25はドラム状コア21に固定される。なお、
図1において、接着剤35は、これを図示可能とするため、その厚みが誇張されて図示されている。
【0029】
接着剤35は、ジシアンジアミドを含むエポキシ系樹脂硬化物からなることを特徴としている。このジシアンジアミドを含むエポキシ系樹脂硬化物は、ジシアンジアミドを硬化剤としてエポキシ系樹脂を硬化させて得られたものである。この場合、エポキシ系樹脂硬化物の中には、硬化剤としてのジシアンジアミドがいくらか残存している。したがって、接着剤35となるエポキシ系樹脂硬化物は、上述のように、ジシアンジアミドを含むことになる。このことは、FT-IR法(赤外線フーリエ分光吸光法)でシアン基が検出されることにより確認することができる。なお、硬化剤としてジシアンジアミドを含まないエポキシ系樹脂硬化物では、シアン基が検出されることはない。
【0030】
コイル部品20を製造するにあたっては、上記ドラム状コア21および上記板状コア25がそれぞれ用意され、板状コア25を、その下方主面26がドラム状コア21の鍔部23および24の天面30および31に対向した状態、かつ第1および第2の鍔部23および24間に渡された状態で、第1および第2の鍔部23および24に接着剤35を介して固定することが行なわれる。そして、上述した板状コア25を第1および第2の鍔部23および24に固定する工程では、板状コア25と第1および第2の鍔部23および24との間に、エポキシ系樹脂を付与し、ジシアンジアミドを硬化剤として当該エポキシ系樹脂を硬化させて上記接着剤35とする工程が実施される。この硬化工程では、通常、加熱される。
【0031】
ジシアンジアミドを硬化剤としてエポキシ系樹脂を硬化させて得られた接着剤35は、フェライト等の金属を含む材料に対して、高い接着強度を示すことがわかった。JIS K 6850に基づいて、エポキシ系樹脂の接着強度を評価したところ、硬化剤としてアミン系硬化剤を用いた場合には、破壊強度が17MPaであったのに対し、硬化剤としてジシアンジアミドを用いた場合には、破壊強度が25MPaというように、より高い値を示した。これは、ジシアンジアミドによりエポキシ基が付加反応する際に生成されるOH基が、ドラム状コア21や板状コア25に含まれる金属元素と水素結合することによるものと推測される。
【0032】
前述したように、ワイヤ34の絶縁皮膜の材料として、たとえば、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリエステルイミドのような樹脂が用いられる。すなわち、ワイヤ34の絶縁皮膜は、接着剤35とは異なる樹脂からなる。したがって、ワイヤ34の絶縁皮膜は、少なくともジシアンジアミドを含んでいない。これにより、ワイヤ34が過度に硬化されず、巻線時の作業性や巻線後の耐久性を向上できる。
【0033】
次に、
図2ないし
図4を参照して、この発明の
一実施形態によるコイル部品40について説明する。コイル部品40は、たとえばコモンモードチョークコイルを構成するものである。
【0034】
コイル部品40は、上述したコイル部品20の場合と同様、金属元素を含む磁性材料からなるドラム状コア41を備える。ドラム状コア41は、巻芯部42ならびに巻芯部42の軸線方向における互いに逆の第1および第2の端部にそれぞれ設けられた第1および第2の鍔部43および44を有する。
【0035】
コイル部品40は、また、上述したコイル部品20の場合と同様、金属元素を含む磁性材料からなり、ドラム状コア41と協働して、閉磁路を構成する板状コア45を備える。板状コア45は、互いに逆方向に向く下方主面46および上方主面47を有する。
【0036】
第1および第2の鍔部43および44は、それぞれ、実装時において実装基板(図示せず。)側に向けられる底面48および49と、底面48および49の反対側の天面50および51と、を有している。第1および第2の鍔部43および44の天面50および51と、板状コア45の下方主面46とは、互いに対向している。また、第1および第2の鍔部43および44は、それぞれ、巻芯部42側に向きかつ巻芯部42の各端部を位置させる内側端面63および64と、内側端面63および64の反対側の外側に向く外側端面61および62と、を有する。
【0037】
第1の鍔部43の底面48側には、第1および第2の端子電極52および53(
図4(B)参照)が設けられ、第2の鍔部44の底面49側には、第3および第4の端子電極54および55(
図2および
図3参照)が設けられる。端子電極52~55は、前述した端子電極32および33の場合と同様の方法で形成されることができる。
【0038】
巻芯部42には、
図2に省略的に図示するように、たとえば2本のワイヤ、すなわち、第1および第2のワイヤ56および57が同方向に螺旋状に巻回される。ワイヤ56および57は、前述したワイヤ34の場合と同様、たとえば、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリエステルイミドのような樹脂によって絶縁被覆された銅線からなる。
【0039】
具体的な図示を省略するが、第1のワイヤ56の第1端は第1の端子電極52に接続され、第1のワイヤ56の第1端とは逆の第2端は第3の端子電極54に接続される。第2のワイヤ57の第1端は第2の端子電極53に接続され、第2のワイヤ57の第1端とは逆の第2端は第4の端子電極55に接続される。これら端子電極52~55とワイヤ56および57との接続には、たとえば熱圧着や超音波溶着、レーザ溶着などが適用される。ワイヤ56および57は、必要に応じて多層巻きとされてもよい。
【0040】
板状コア45の下方主面46と第1および第2の鍔部43および44の天面50および51との間には、
図2に示すように、接着剤58が存在している。接着剤58は、前述した接着剤35と同様の機能を果たすものであり、同様の材料、すなわち、ジシアンジアミドを含むエポキシ系樹脂硬化物からなる。
【0041】
本実施形態に係るコイル部品40は、参考例に係るコイル部品20と以下の点で異なっている。
【0042】
第1および第2の鍔部43および44の天面50および51に注目すると、
図4(A)および
図4(B)によく示されているように、第1および第2の隆起部59および60がそれぞれ設けられている。第1の隆起部59の頂部59aは、第1の鍔部43の外側端面61よりも内側端面63により近い側に位置している。第2の隆起部60の頂部60aは、第2の鍔部44の外側端面62よりも内側端面64により近い側に位置している。その結果、第1および第2の鍔部43および44の天面50および51は、上記頂部59aおよび60aにおいて、その周辺部に比べて、板状コア45の下方主面46により接近している。
【0043】
この実施形態では、第1および第2の鍔部43および44の天面50および51が板状コア45の下方主面46に最も接近する箇所が、上記頂部59aおよび60aによって与えられる。そのため、接着剤58が付与された、第1および第2の鍔部43および44の天面50および51の各々と板状コア45の下方主面46との隙間は、隆起部59および60のそれぞれの頂部59aおよび60aに向かって次第に狭くなっている。この構成によれば、ドラム状コア41と板状コア45とで形成される磁路のうち、経路のより短い部分において、安定した磁路を実現することができる。
【0044】
上述のように、隆起部59および60の頂部59aおよび60aを鍔部43および44の内側端面63および64により近い側に位置させていると、ドラム状コア41と板状コア45とで形成される磁路のうち、経路のより短い部分において、磁気抵抗を低減することができる。そのため、インダクタンスを効率良く獲得することができる。
【0045】
また、ドラム状コア41と板状コア45とを接着するにあたり、特許文献1に記載の構造とは異なり、鍔部43および44の天面50および51を板状コア45の下方主面46に直接接触させるといった特定的な部分を積極的に設ける必要がないので、接着剤58による接着面積を広く確保することができる。
【0046】
特に、この実施形態では、接着剤58は、明確には図示されないが、隆起部59および60が板状コア45の下方主面46と対向する箇所も含めて、第1および第2の鍔部43および44の天面50および51と板状コア45の下方主面46とが対向する領域の全域またはほぼ全域にわたって存在するようにしている。この構成によれば、毛細管現象に頼ることなく、鍔部43および44と板状コア45との間に接着剤58を導入することができるとともに、鍔部43および44と板状コア45との間での接着面積をより確実に広げることができる。その結果、鍔部43および44と板状コア45との間での接着強度をより確実に向上させることができる。
【0047】
また、この実施形態では、
図4(A)によく示されているように、頂部59aおよび60aより外側端面61および62側について、第1および第2の鍔部43および44の天面50および51と、板状コア45の下方主面46と、の間隔は、鍔部43および44の内側端面63および64側から外側端面61および62側に向かって広がっているという特徴を有している。この構成によれば、接着剤58を鍔部43および44の天面50および51と板状コア45の下方主面46との間に円滑に導入することができる。
【0048】
また、巻芯部42の延びる方向に直交する方向であって、鍔部43および44の底面48および49と天面50および51とが対向する方向に直交する方向を幅方向としたとき、第1および第2の隆起部59および60の頂部59aおよび60aは、
図4(B)によく示されているように、第1および第2の鍔部43および44の天面50および51の幅方向の中央部に位置している。そして、第1および第2の鍔部43および44の天面50および51と、板状コア45の下方主面46と、の間隔は、鍔部43および44の各々の幅方向の中央部から側面65および66または側面67および68に向かって広がっている。この構成によっても、接着剤58を鍔部43および44の天面50および51と板状コア45の下方主面46との間に円滑に導入することができる。
【0049】
以上、この発明を図示した実施形態に関連して説明したが、この発明の範囲内において、その他種々の変形例が可能である。
【0050】
たとえば、この発明が向けられるコイル部品は、図示された実施形態のように、単一のコイルを構成するもの、あるいはコモンモードチョークコイルを構成するもの以外に、トランスやバランなどを構成するものであってもよい。したがって、ワイヤの数についても、コイル部品の機能に応じて変更され、それに応じて、各鍔部に設けられる端子電極の数も変更され得る。
【0051】
また、コイル部品に備えるドラム状コアおよび板状コアについての形状は、図示されたものに限らず、望まれる設計に応じて、任意に変更することができる。
【0052】
また、この発明に係るコイル部品を構成するにあたり、この明細書に記載された異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0053】
20,40 コイル部品
21,41 ドラム状コア
22,41 巻芯部
23,24,43,44 鍔部
25,45 板状コア
26,46 下方主面
27,47 上方主面
28,29,48,49 底面
30,31,50,51 天面
34,56,57 ワイヤ
35,58 接着剤