(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】酸化触媒の粉末、触媒担持構造体、酸化触媒の粉末の製造方法、および、触媒担持構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/889 20060101AFI20220520BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20220520BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220520BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
B01J23/889 A ZAB
B01J37/02 301C
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/035 A
(21)【出願番号】P 2018055160
(22)【出願日】2018-03-22
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】泉 有仁枝
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08765085(US,B2)
【文献】特開2017-185481(JP,A)
【文献】特開昭63-007841(JP,A)
【文献】特開昭62-071538(JP,A)
【文献】特開2009-285619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
B01D 53/86-53/90,53/94-53/96
F01N 3/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化触媒の粉末であって、
鉄を補助成分
として含む二酸化セリウム粒子と、
前記二酸化セリウム粒子に保持されるとともに、鉄およびマンガンを含む金属酸化物と、
を備え、
前記二酸化セリウム粒子において、前記補助成分が二酸化セリウムと共に凝集している、または、二酸化セリウムの結晶中に、前記補助成分が固溶していることを特徴とする酸化触媒の粉末。
【請求項2】
請求項1に記載の酸化触媒の粉末であって、
前記補助成分の質量の比率が、前記二酸化セリウム粒子に含まれるセリウムに対して酸化物換算で3~45質量%であることを特徴とする酸化触媒の粉末。
【請求項3】
請求項1または2に記載の酸化触媒の粉末であって、
前記金属酸化物の質量の比率が、前記酸化触媒の粉末の全体に対して5~40質量%であることを特徴とする酸化触媒の粉末。
【請求項4】
触媒担持構造体であって、
内部が隔壁により複数のセルに仕切られたセル構造体と、
前記隔壁に担持される、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の酸化触媒の粉末と、
を備えることを特徴とする触媒担持構造体。
【請求項5】
請求項4に記載の触媒担持構造体であって、
貴金属を含まないことを特徴とする触媒担持構造体。
【請求項6】
酸化触媒の粉末の製造方法であって、
鉄を補助成分
として含む二酸化セリウム粒子を生成する工程と、
鉄およびマンガンを含む金属酸化物を前記二酸化セリウム粒子に保持させる工程と、
を備え、
前記二酸化セリウム粒子において、前記補助成分が二酸化セリウムと共に凝集している、または、二酸化セリウムの結晶中に、前記補助成分が固溶していることを特徴とする酸化触媒の粉末の製造方法。
【請求項7】
触媒担持構造体の製造方法であって、
内部が隔壁により複数のセルに仕切られたセル構造体を準備する準備工程と、
請求項6に記載の酸化触媒の粉末の製造方法により製造された酸化触媒の粉末を、前記隔壁に担持させる担持工程と、
を備えることを特徴とする触媒担持構造体の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の触媒担持構造体の製造方法であって、
前記担持工程において、前記セル構造体に対して前記酸化触媒の粉末を分散させた液が付与されることを特徴とする触媒担持構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化触媒の粉末、触媒担持構造体、酸化触媒の粉末の製造方法、および、触媒担持構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および2では、鉄およびマンガンを含む遷移金属酸化物を、表面または内部に備える二酸化セリウム粒子が提案されている。このような二酸化セリウム粒子は、例えば、DOC(Diesel Oxidation Catalyst)およびCSF(Catalyzed Soot Filter)を含むDPF(Diesel Particulate Filter)において、酸化触媒として利用することが想定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-186220号公報
【文献】特開2017-185481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、DPFでは、捕集したススの燃焼により高温状態となる。上記酸化触媒における二酸化セリウム粒子は、通常、二酸化セリウムの微粒子の集合体(凝集粒子)であるため、上記高温状態において、二酸化セリウム粒子が部分的に焼結して比表面積が減少することがある。この場合、触媒性能が低下してしまう。したがって、二酸化セリウム粒子を含む酸化触媒において耐熱性を向上することが求められる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、二酸化セリウム粒子を含む酸化触媒において、耐熱性を向上することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る酸化触媒の粉末は、鉄を補助成分として含む二酸化セリウム粒子と、前記二酸化セリウム粒子に保持されるとともに、鉄およびマンガンを含む金属酸化物とを備える。前記二酸化セリウム粒子において、前記補助成分が二酸化セリウムと共に凝集している、または、二酸化セリウムの結晶中に、前記補助成分が固溶している。
【0007】
本発明の一の好ましい形態では、前記補助成分の質量の比率が、前記二酸化セリウム粒子に含まれるセリウムに対して酸化物換算で3~45質量%である。
【0008】
本発明の他の好ましい形態では、前記金属酸化物の質量の比率が、前記酸化触媒の粉末の全体に対して5~40質量%である。
【0009】
本発明に係る触媒担持構造体は、内部が隔壁により複数のセルに仕切られたセル構造体と、前記隔壁に担持される上記酸化触媒の粉末とを備える。
【0010】
好ましい触媒担持構造体は、貴金属を含まない。
【0011】
本発明に係る酸化触媒の粉末の製造方法は、鉄を補助成分として含む二酸化セリウム粒子を生成する工程と、鉄およびマンガンを含む金属酸化物を前記二酸化セリウム粒子に保持させる工程とを備える。前記二酸化セリウム粒子において、前記補助成分が二酸化セリウムと共に凝集している、または、二酸化セリウムの結晶中に、前記補助成分が固溶している。
【0012】
本発明に係る触媒担持構造体の製造方法は、内部が隔壁により複数のセルに仕切られたセル構造体を準備する準備工程と、上記酸化触媒の粉末の製造方法により製造された酸化触媒の粉末を、前記隔壁に担持させる担持工程とを備える。
【0013】
例えば、前記担持工程において、前記セル構造体に対して前記酸化触媒の粉末を分散させた液が付与される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、二酸化セリウム粒子を含む酸化触媒の粉末において、耐熱性を向上することができる。また、酸化触媒の粉末を担持したフィルタにおける酸化性能の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図6】酸化触媒を製造する処理の流れを示す図である。
【
図7】触媒担持構造体を製造する処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<排ガス浄化システム>
図1は、排ガス浄化システム8の構成を示す図である。排ガス浄化システム8は、エンジンから排出される排ガスを浄化するものである。排ガス浄化システム8は、DPF(Diesel Particulate Filter)81と、SCR(Selective Catalytic Reduction)触媒コンバータ85と、尿素噴射器86とを備える。DPF81、尿素噴射器86およびSCR触媒コンバータ85は、排ガスが流れる方向に沿って、この順にて配置される。
【0017】
DPF81は、DOC(Diesel Oxidation Catalyst)82と、CSF(Catalyzed Soot Filter)83とを備える。DOC82は、内部が隔壁により複数のセルに仕切られたハニカム構造体と、当該隔壁に担持された貴金属の酸化触媒とを備える。CSF83は、上記と同様のハニカム構造体と、当該ハニカム構造体の隔壁に担持された非貴金属系の酸化触媒とを備える。CSF83の構造の詳細については後述する。尿素噴射器86は、DPF81とSCR触媒コンバータ85との間における排ガスの経路に設けられる。SCR触媒コンバータ85は、上記と同様のハニカム構造体と、当該ハニカム構造体の隔壁に担持されたSCR触媒とを備える。
【0018】
エンジンから排出された排ガスは、DPF81のDOC82に流入する。排ガスには、一酸化窒素(NO)、酸素(O2)、窒素(N2)が含まれており、DOC82において、下記式1および式2の反応が起こる。式1の反応では、二酸化窒素(NO2)が生成される。なお、下記式2におけるSOF(可溶性有機成分:Soluble Organic Fraction)は、排ガス中のPM(粒子状物質)に含まれるものである。
【0019】
2NO+O2=2NO2 (式1)
【0020】
SOF+O2=CO,CO2,H2O (式2)
【0021】
CSF83では、排ガスに含まれる炭素(スス)が捕集される。また、CSF83では、当該ススとNO2との下記式3、式4および式5の反応(燃焼反応)が起こり、NO2からNOが生成される。
【0022】
C(スス)+2NO2=CO2+2NO (式3)
【0023】
C(スス)+NO2=CO+NO (式4)
【0024】
C(スス)+1/2O2+NO2=CO2+NO (式5)
【0025】
尿素噴射器86では、CSF83から排出された排ガスに尿素が混合され、尿素から分解生成されたアンモニア(NH3)を含む排ガスがSCR触媒コンバータ85に流入する。SCR触媒コンバータ85では、下記式6、式7および式8の反応が起こることにより、排ガスに含まれるNOxが浄化される。
【0026】
4NO+4NH3+O2=4N2+6H2O (式6)
【0027】
NO+NO2+2NH3=2N2+3H2O (式7)
【0028】
6NO2+8NH3=7N2+12H2O (式8)
【0029】
式7の反応は、Fast SCR反応と呼ばれており、式6および式8の反応よりも反応速度が速い。式7に従って、SCR触媒コンバータ85における反応を効率よく進めるには、SCR触媒コンバータ85に流入するNOの物質量とNO2の物質量とが1:1となることが求められる。一方、CSF83では、既述の式3、式4および式5のように、ススの燃焼により多くのNO2が消費され、NOが生成されてしまう。
【0030】
そこで、本発明に係る排ガス浄化システム8では、CSF83の下流側部位として、後述の酸化触媒を担持する触媒担持構造体が設けられる。触媒担持構造体は、一部のNOを酸化してNO2を生成する、すなわち、NOをNO2に変換する。これにより、SCR触媒コンバータ85に流入するNOの物質量とNO2の物質量とを1:1に近づけて、SCR触媒コンバータ85における反応を効率よく進めることが可能となる。
【0031】
<触媒担持構造体>
図2は、酸化触媒を担持する触媒担持構造体1を簡略化して示す図である。触媒担持構造体1は、一方向に長い筒状部材であり、
図2では、触媒担持構造体1の長手方向における一方側の端面を示している。
図3は、触媒担持構造体1を示す断面図であり、
図3では、触媒担持構造体1の長手方向に沿う断面の一部を示している。
【0032】
触媒担持構造体1は、ハニカム構造体10と、酸化触媒とを備える。ハニカム構造体10は、筒状外壁11と、隔壁12とを備える。筒状外壁11は、長手方向に延びる筒状である。長手方向に垂直な筒状外壁11の断面形状は、例えば円形であり、多角形等であってもよい。隔壁12は、筒状外壁11の内部に設けられ、当該内部を複数のセル13に仕切る。ハニカム構造体10は、内部が隔壁12により複数のセル13に仕切られたセル構造体である。筒状外壁11および隔壁12は、多孔質材料により形成される。酸化触媒は、多孔質材料の細孔内に担持される。後述するように、排ガスは隔壁12の細孔を通過する。触媒担持構造体1の強度を向上するには、隔壁12の厚さは、例えば、50μm(マイクロメートル)以上であり、好ましくは100μm以上であり、より好ましくは150μm以上である。隔壁12における圧力損失を低減するには、隔壁12の厚さは、例えば500μm以下であり、好ましくは450μm以下である。
【0033】
各セル13は、長手方向に延びる空間である。長手方向に垂直なセル13の断面形状は、例えば多角形(三角形、四角形、五角形、六角形等)であり、円形等であってもよい。複数のセル13は、典型的には同じ断面形状を有する。複数のセル13には、異なる断面形状のセル13が含まれてもよい。酸化性能を向上するには、セル密度は、例えば8セル/cm2(平方センチメートル)以上であり、好ましくは15セル/cm2以上である。圧力損失を低減するには、セル密度は、例えば95セル/cm2以下であり、好ましくは78セル/cm2以下である。
【0034】
CSF83に用いられる触媒担持構造体1では、長手方向におけるハニカム構造体10の一端側を入口とし、他端側を出口として、DOC82からの排ガスが流れる。所定数のセル13において、入口側の端部に封止部14が設けられ、残りのセル13において、出口側の端部に封止部14が設けられる。したがって、ハニカム構造体10内に流入する排ガスは、入口側が封止されないセル13から、隔壁12を通過して、出口側が封止されないセル13へと移動する(
図3中の矢印A1参照)。このとき、隔壁12に担持される酸化触媒によって排ガスが酸化される。ハニカム構造体10の入口側の端部、および、出口側の端部のそれぞれでは、セル13の配列方向に沿って1つ置きに封止部14が設けられることが好ましい。
【0035】
図4は、隔壁12の一部を拡大して示す図である。隔壁12を形成する多孔質材料には、多数の細孔121が設けられており、酸化触媒2は細孔121内に担持される。
図4では、黒い丸により酸化触媒2を示している。触媒担持構造体1において、NOからNO
2への変換率(以下、単に「NO
2変換率」という。)を向上するには、酸化触媒2の担持量は、例えば3g/L(グラム毎リットル)以上であり、好ましくは5g/L以上であり、より好ましくは8g/L以上である。圧力損失を低減するには、酸化触媒2の担持量は、例えば50g/L以下であり、好ましくは45g/L以下であり、より好ましくは40g/L以下である。酸化触媒2の担持量(g/L)は、ハニカム構造体10の単位容積(L)当たりに担持される酸化触媒2の量(g)を示す。酸化触媒2の詳細については後述する。
【0036】
隔壁12を形成する多孔質材料の好ましい一例は、セラミックである。強度、耐熱性、耐食性等の観点では、コージェライト、炭化珪素、アルミナ、ムライト、アルミニウムチタネート、窒化珪素、珪素-炭化珪素系複合材料等が用いられることが好ましい。なお、珪素-炭化珪素系複合材料は、炭化珪素を骨材とし、金属珪素を結合材として形成される。
【0037】
圧力損失を低減するには、多孔質材料(隔壁12)の開気孔率は、例えば25%以上であり、好ましくは30%以上であり、より好ましくは35%以上である。隔壁12の強度の観点では、多孔質材料の開気孔率は、例えば70%以下であり、好ましくは65%以下である。開気孔率は、例えば、純水を媒体としてアルキメデス法により測定可能である。。多孔質材料の平均細孔径は、例えば5μm以上であり、好ましくは8μm以上である。開気孔率と同様に、平均細孔径が大きいほど、圧力損失が低くなる。酸化性能を向上するには、多孔質材料の平均細孔径は、例えば40μm以下であり、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは25μm以下である。平均細孔径は、例えば水銀圧入法(JIS R1655準拠)により測定される。触媒担持構造体1の設計によっては、封止部14が省略され、セル13の表面に、酸化触媒2が層状に保持されてもよい。
【0038】
<酸化触媒>
図5は、酸化触媒2の1つの粒子を模式的に示す図である。酸化触媒2は、二酸化セリウム(CeO
2)粒子21と、二酸化セリウム粒子21により保持される金属酸化物22とを備える。各二酸化セリウム粒子21は、例えば二酸化セリウムの微粒子の集合体(凝集粒子)である。
図5では、凝集粒子である1つの二酸化セリウム粒子21を1つの丸により示している。二酸化セリウム粒子21は、ランタン(La)、アルミニウム(Al)および鉄(Fe)の少なくとも一種である補助成分を含む。補助成分は、ランタン、アルミニウムおよび鉄からなる群から選択される一種または二種以上である。後述するように、二酸化セリウム粒子21が補助成分を含むことにより、酸化触媒2の耐熱性が向上する。
【0039】
酸化触媒2の耐熱性をより確実に向上するには、補助成分の質量比率は、二酸化セリウム粒子21に含まれるセリウムに対して酸化物換算で、例えば3質量%以上であり、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上である。二酸化セリウムによる所定の性能を維持するという観点では、補助成分の質量比率は、例えば45質量%以下であり、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下である。補助成分が複数種の元素を含む場合には、上記質量比率は、当該複数種の元素における合計の質量比率である。酸化触媒2における構成成分の質量比率は、例えばICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光法により定量することが可能である。後述する酸化触媒2の製造の一例において、二酸化セリウム粒子21を生成する際に、二酸化セリウムと補助成分の原料との混合比を変更することにより、上記質量比率は調整可能である。
【0040】
二酸化セリウム粒子21の一例では、補助成分の酸化物(例えば、酸化ランタン(La2O3)、酸化アルミニウム(Al2O3)または酸化鉄(Fe2O3))の微粒子が、二酸化セリウムの微粒子と共に凝集する。二酸化セリウム粒子21の他の例では、二酸化セリウムの結晶中に、補助成分が固溶する。もちろん、二酸化セリウム粒子21において、補助成分の酸化物の微粒子、および、二酸化セリウムの結晶中に固溶した補助成分の双方が存在してもよい。
【0041】
多孔質材料の細孔径を考慮すると、二酸化セリウム粒子21の平均粒径は、例えば30μm以下であり、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは10μm以下である。また、二酸化セリウム粒子21の平均粒径は、例えば0.5μm以上であり、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは2μm以上である。二酸化セリウム粒子21の平均粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて酸化触媒2を所定の倍率で撮影した画像において、二酸化セリウム粒子21の粒径の平均値を算出することにより求められる。平均粒径は、レーザー回折法により求められてもよい。
【0042】
金属酸化物22は、鉄(Fe)およびマンガン(Mn)を含む。酸化触媒2では、金属酸化物22の存在により、排ガスに含まれるNOをNO
2に適切に酸化することが可能となる。典型的には、金属酸化物22は、二酸化セリウム粒子21の表面上において分散しつつ当該表面に付着する。すなわち、金属酸化物22は、二酸化セリウム粒子21に対する付着微粒子である。二酸化セリウム粒子21を担体と捉えると、金属酸化物22は被担持物である。
図5では、金属酸化物22に含まれる鉄酸化物22aおよびマンガン酸化物22bを小さい丸で示している。金属酸化物22は、二酸化セリウム粒子21の表面を被覆している状態であってもよい。また、一部の金属酸化物22の微粒子が、二酸化セリウム粒子21の内部(例えば、二酸化セリウムの微粒子の間)に保持されてもよい。金属酸化物22の平均粒径は、二酸化セリウム粒子21の平均粒径よりも小さく、例えば0.5μm以下である。金属酸化物22の平均粒径は、二酸化セリウム粒子21と同様に走査型電子顕微鏡を用いて求めることが可能である。
【0043】
金属酸化物22の一例は、鉄を含む酸化物、および、マンガンを含む酸化物のみにより構成される。本実施の形態では、金属酸化物22は、FeMnO3、Fe2O3、および、Mn2O3の少なくとも一種である。Fe2O3中にMnが固溶してもよく、Mn2O3中にFeが固溶してもよい。Fe2O3およびMn2O3は、200~800℃の温度範囲においても安定である。酸化触媒2の設計によっては、金属酸化物22が、他の金属元素を含んでもよい。典型的には、金属酸化物22は、遷移金属のみを含む遷移金属酸化物である。
【0044】
金属酸化物22による高い触媒性能を発揮するには、酸化触媒2における金属酸化物22の質量の比率、本実施の形態では、鉄を含む酸化物およびマンガンを含む酸化物の合計質量の比率は、酸化触媒2の全体に対して、例えば5質量%以上であり、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上である。金属酸化物22の質量の比率が過度に高くなると、二酸化セリウム粒子21の表面全体が金属酸化物22により被覆され、二酸化セリウム粒子21による一酸化窒素の吸着性能が低下する。したがって、二酸化セリウム粒子21による、ある程度の吸着性能を確保するという観点では、金属酸化物22の質量の比率は、例えば40質量%以下であり、好ましくは35質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。
【0045】
金属酸化物22におけるマンガンの質量比率は、鉄およびマンガンの合計質量に対して酸化物換算で、例えば10質量%以上であり、好ましくは20質量%以上である。マンガンの質量比率は、例えば90質量%以下であり、好ましくは80質量%以下である。後述する酸化触媒2の製造の一例において、二酸化セリウム粒子21に金属酸化物22を保持させる際に使用する溶液におけるマンガンおよび鉄の組成比を変更することにより、上記質量比率は調整可能である。さらに、焼成温度の変更により、金属酸化物22の結晶構造も調整することができる。金属酸化物22の結晶構造は、例えば、ヘマタイト型(Mn固溶Fe2O3)や、ビクスバイト型(Fe固溶Mn2O3)である。
【0046】
<酸化触媒の製造方法>
図6は、酸化触媒2を製造する処理の流れを示す図である。まず、補助成分の原料を水に溶解させ、補助成分の水溶液が得られる。補助成分の原料は、例えば、硝酸ランタン(La(NO
3)
3・6H
2O)、硝酸アルミニウム(Al(NO
3)
3・9H
2O)、硝酸鉄(Fe(NO
3)
3・9H
2O)である。続いて、二酸化セリウムの粉末が当該水溶液に混合される。当該水溶液から水を蒸発させ、補助成分および二酸化セリウムを含む混合物の粉末が得られる。そして、当該粉末を所定の温度(例えば、500~700℃)にて大気中で焼成することにより、補助成分を含む二酸化セリウム粒子21が生成される(ステップS11)。二酸化セリウム粒子21では、例えば、補助成分の酸化物の微粒子が、二酸化セリウムの微粒子と共に凝集する、または、二酸化セリウムの結晶中に、補助成分が固溶する。
【0047】
続いて、金属酸化物22の原料を水に溶解させた水溶液に、上記二酸化セリウム粒子21が混合される。金属酸化物22の原料は、鉄およびマンガンを含み、例えば硝酸鉄(Fe(NO3)3・9H2O)および硝酸マンガン(Mn(NO3)2・6H2O)である。当該水溶液から水を蒸発させ、鉄、マンガンおよび二酸化セリウム粒子21を含む混合物の粉末が得られる。そして、当該粉末を所定の温度(例えば、500~700℃)にて大気中で焼成することにより、鉄およびマンガンを含む金属酸化物22が二酸化セリウム粒子21に保持(担持)される(ステップS12)。以上の処理により、酸化触媒2が製造される。典型的には、金属酸化物22は、二酸化セリウム粒子21の表面上において分散しつつ当該表面に付着する。
【0048】
<触媒担持構造体の製造方法>
次に、酸化触媒2を用いた触媒担持構造体1の製造について説明する。
図7は、触媒担持構造体1を製造する処理の流れを示す図である。まず、ハニカム構造体10が作製されて準備される(ステップS21)。ハニカム構造体10の作製では、例えば、セラミック原料、バインダ、造孔材等を含む坏土を押出成形することにより、成形体が作製される。成形体は、筒状部材であり、内部が隔壁により複数のセルに仕切られる。各セルの一方の端部には、必要に応じて、封止部を形成するためのスラリーが充填される。そして、成形体を焼成することにより、ハニカム構造体10が作製される。成形体の焼成前に、成形体を乾燥および仮焼してもよい。
【0049】
ハニカム構造体10が準備されると、酸化触媒2を分散させた液(スラリー)が、ハニカム構造体10に対して付与される。一例では、酸化触媒2を水に分散させたスラリーにハニカム構造体10が浸漬される。ハニカム構造体10は、スラリーから取り出された後、乾燥される。そして、乾燥後のハニカム構造体10の重量が測定される。乾燥後のハニカム構造体10の重量が、予め測定したスラリー付与前の重量から所定量だけ増加するまで、ハニカム構造体10に対する上記スラリーの付与、および、乾燥が繰り返される。その後、ハニカム構造体10が、所定の温度(例えば、300℃)で焼成される。当該温度は、酸化触媒2の製造時の焼成温度、および、上記成形体の焼成温度よりも低いことが好ましい。このようにして、酸化触媒2がハニカム構造体10の隔壁12に担持される(ステップS22)。本実施の形態では、酸化触媒2は、隔壁12の細孔121内に担持される。以上の処理により、触媒担持構造体1が製造される。好ましい触媒担持構造体1は、貴金属の触媒を含まないため、低コストで製造することが可能である。
【0050】
<触媒担持構造体の比較例との比較>
ここで、酸化触媒の二酸化セリウム粒子が補助成分を含まない触媒担持構造体を比較例の触媒担持構造体として、上記触媒担持構造体1と比較する。比較例の触媒担持構造体は、二酸化セリウム粒子が補助成分を含まない点を除き、触媒担持構造体1と同様である。
【0051】
酸化触媒の担持量が互いに同じである触媒担持構造体1と比較例の触媒担持構造体とを比較した場合、触媒担持構造体1では、ススが堆積していないときの圧力損失(一定流量のガスに対する圧力損失であり、初期圧力損失とも呼ばれる。)が比較例の触媒担持構造体より小さくなる。圧力損失が小さくなる理由は明確ではないが、これらの触媒担持構造体の断面を走査型電子顕微鏡で観察した場合に、比較例の触媒担持構造体では、ある程度の量の酸化触媒が固まって(凝集して)隔壁に付着している部分が散見される。これに対し、触媒担持構造体1では、酸化触媒2の分散の度合いが、比較例の触媒担持構造体よりも高くなっている。したがって、触媒担持構造体1では、固まって存在する酸化触媒2(すなわち、細孔121をおよそ閉塞する酸化触媒2)が少ないことが、圧力損失が小さくなる一因であると考えられる。
【0052】
触媒担持構造体1において酸化触媒2の分散の度合いが高くなる理由としては、酸化触媒をハニカム構造体に担持させる際に、酸化触媒2の水中における分散状態が、比較例の酸化触媒と相違することが考えられる。具体的には、比較例の酸化触媒は、水中において凝集しやすいのに対し、酸化触媒2では、二酸化セリウム粒子21が補助成分を含むことにより、水中における表面電位が、比較例の酸化触媒の表面電位と相違し、水中において酸化触媒2が分散しやすくなると推測される。
【0053】
触媒担持構造体を、
図1の排ガス浄化システム8におけるCSF83に用いる場合、酸化触媒の担持量を増大することにより、NOからNO
2への変換率(すなわち、NO
2変換率)を向上することが可能となる。一方、酸化触媒の担持量を増大すると、初期圧力損失も増大してしまう。排ガス浄化システム8では、許容可能な初期圧力損失の最大値が設定されており、圧力損失が低くなる酸化触媒2では、比較例の酸化触媒よりも触媒担持構造体における担持量を増大することが可能となる。その結果、酸化触媒2を担持したフィルタである触媒担持構造体1において、酸化性能を向上することができる。
【0054】
実際には、触媒担持構造体1では、酸化触媒2の分散の度合いが高いことにより、酸化触媒2における排ガスとの接触面積が増大する。また、補助成分の影響により、金属酸化物22の活性が高くなると考えられる。したがって、二酸化セリウム粒子21が補助成分を含む触媒担持構造体1では、このような観点においても、NO2変換率が高くなると期待される。なお、触媒担持構造体1では、排ガスに含まれる炭化水素(HC)等のSOF(可溶性有機成分)や一酸化炭素(CO)の酸化も行われてよい。
【0055】
また、既述のように、CSF83は、捕集したススの燃焼により高温状態となる。上記高温状態を想定した熱処理(例えば、750℃での熱処理)を、比較例の触媒担持構造体、および、触媒担持構造体1の双方に行う場合、比較例の触媒担持構造体では、微粒子の凝集粒子である二酸化セリウム粒子が部分的に焼結して、酸化触媒の比表面積が大幅に減少する。その結果、酸化触媒と排ガスとの接触面積が減少し、比較例の触媒担持構造体では、熱処理後におけるNO2変換率が低くなる。
【0056】
これに対し、触媒担持構造体1では、二酸化セリウム粒子21が補助成分を含むことにより、焼結が抑制され、酸化触媒2の比表面積の減少を抑制することができる。その結果、熱処理前後におけるNO2変換率の劣化率が小さくなり、酸化触媒の担持量が同じである比較例の触媒担持構造体よりも、熱処理後におけるNO2変換率が高くなる。このように、酸化触媒2では、熱処理による触媒性能の低下を抑制する、すなわち、耐熱性を向上することができる。既述のように、酸化触媒2では、比較例の酸化触媒に比べて、触媒担持構造体における担持量を増大することができる。したがって、上記の比表面積の減少の抑制と相俟って、フィルタにおける酸化性能を大幅に向上することができる。なお、比表面積の測定は、例えばBET法が利用可能である。
【0057】
<実施例>
次に、実施例について述べる。ここでは、実施例1~11、並びに、比較例1~3として、表1中に示す条件にて酸化触媒および触媒担持構造体を作製した。
【0058】
【0059】
(実施例1~11)
酸化触媒の作製では、まず、補助成分の硝酸塩(La(NO3)3・6H2O、Al(NO3)3・9H2O、Fe(NO3)3・9H2O)の粉末および水を秤量し、硝酸塩を容器内の水に溶解させて補助成分を含む水溶液を得た。実施例1~6、9~11では、ランタン(La)を補助成分として用い、実施例7では、アルミニウム(Al)を補助成分として用い、実施例8では、鉄(Fe)を補助成分として用いた。
【0060】
次に、二酸化セリウム(CeO2)の粉末を秤量して上記水溶液に混合した。補助成分とセリウム(Ce)との混合比(モル比)は、表1中の「La/Ceモル比」、「Al/Ceモル比」および「Fe/Ceモル比」に示す通りである。ホットスターラーを用いて水溶液を90℃で5時間ほど攪拌した。容器内の水分が無くなったことを目視により確認した後、乾燥機において容器内の混合物を90℃で5時間ほど十分に乾燥させ、補助成分および二酸化セリウムを含む粉末を得た。当該粉末を大気中において500~700℃で焼成し、その後、乳鉢で解砕した。解砕した粉末を200メッシュの篩を通して整粒し、補助成分を含む二酸化セリウム粒子を得た。
【0061】
続いて、硝酸鉄(Fe(NO3)3・9H2O)の粉末、硝酸マンガン(Mn(NO3)2・6H2O)の粉末および水を秤量し、これらの粉末を容器内の水に溶解させて鉄(Fe)およびマンガン(Mn)を含む水溶液を得た。鉄とマンガンとの混合比(モル比)は、表1中の「Fe/Mnモル比」に示す通りである。補助成分を含む二酸化セリウム粒子を秤量して上記水溶液に混合し、ホットスターラーを用いて水溶液を90℃で5時間ほど攪拌した。容器内の水分が無くなったことを目視により確認した後、乾燥機において容器内の混合物を90℃で5時間ほど十分に乾燥させ、鉄、マンガンおよび二酸化セリウム粒子を含む粉末を得た。乾燥した当該粉末を大気中において700℃で焼成し、その後、乳鉢で解砕した。解砕した粉末を200メッシュの篩を通して整粒し、鉄およびマンガンの酸化物(金属酸化物)を保持する二酸化セリウム粒子を得た。このようにして、実施例1~11の酸化触媒を作製した。
【0062】
実施例1~11(並びに、比較例1~3)の酸化触媒における構成成分のモル比率を表2に示す。表2では、各構成成分のモル比率を質量比率に変換した値、および、二酸化セリウム粒子に含まれるセリウムに対する補助成分の酸化物換算での質量比率(すなわち、補助成分の酸化物の質量比率を二酸化セリウムの質量比率で割った値)も示している。なお、酸化触媒の全体に対する金属酸化物の質量比率は、いずれも20質量%である。
【0063】
【0064】
触媒担持構造体の作製では、まず、粉末状の炭化珪素(SiC)、結合材原料、造孔材、バインダ、および、水を混合して、成形原料を調製した。実施例1~8では、結合材原料として金属珪素を用い、実施例9~11では、結合材原料としてコージェライト化原料を用いた。コージェライト化原料とは、焼成によりコージェライト結晶が生成する原料である。成形原料を混練することにより坏土を形成し、坏土を押出成形することにより、ハニカム状の成形体を得た。そして、成形体を乾燥および焼成することにより、ハニカム構造体を得た。
【0065】
表1では、基材の材質の欄において、実施例1~8のハニカム構造体を「Si結合SiC」と示し、実施例9~11のハニカム構造体を「コージェライト」と示している。実施例1~8のハニカム構造体における開気孔率は41.0%であり、平均細孔径は11.0μmであった。実施例9~11のハニカム構造体における開気孔率は58.0%であり、平均細孔径は13.0μmであった。開気孔率はアルキメデス法を用いて測定し、平均細孔径は水銀圧入法(JIS R1655準拠)を用いて測定した。
【0066】
続いて、上記酸化触媒の粉末および水を秤量し、当該粉末を容器内の水に混合してスラリーを得た。当該スラリーにハニカム構造体の全体を浸漬し、暫くしてからハニカム構造体を取り出した。ハニカム構造体に対してエアーガンを用いてエアーを吹き付け、ハニカム構造体の外面に付着したスラリーを除去した。その後、乾燥機においてハニカム構造体を90℃で2時間ほど十分に乾燥させ、ハニカム構造体の重量を測定した。乾燥後のハニカム構造体の重量が、予め測定したスラリー付与前の重量から、表1の「触媒担持量」に示す酸化触媒の担持量に対応する量だけ増加するまで、ハニカム構造体のスラリーへの浸漬、ハニカム構造体の乾燥、および、ハニカム構造体の重量測定を繰り返した。その後、ハニカム構造体を300℃で焼成した。このようにして、ハニカム構造体の隔壁の細孔内に酸化触媒を担持させ、実施例1~11の触媒担持構造体を得た。
【0067】
(比較例1~3)
比較例1~3の触媒担持構造体の作製は、酸化触媒の作製において補助成分(ランタン、アルミニウムおよび鉄)を用いなかった点を除き、実施例1~11と同じである。なお、比較例1~3では、ハニカム構造体の作製の際に、結合材原料として金属珪素を用いた。
【0068】
(酸化触媒の構成結晶相の同定)
作製した酸化触媒における構成結晶相を同定した。構成結晶相の同定では、まず、X線回折装置を用いてX線回折パターンを得た。X線回折装置としては、回転対陰極型X線回折装置(理学電機社製、RINT)を用いた。X線回折測定の条件は、CuKα線源、50kV、300mA、2θ=10~60°とした。X線回折データの解析は、MDI社製の「X線データ解析ソフトJADE7」を用いて行い、酸化触媒の構成結晶相を同定した。実施例1~11、並びに、比較例1~3の酸化触媒に対する構成結晶相の同定結果を表3に示す。表3では、後述の熱処理の前後における構成結晶相の同定結果を示している。表3において、各結晶相の列に記す「〇」は当該結晶相の存在を意味し、「-」は当該結晶相の不存在を意味する。実施例1~4,7~11、並びに、比較例1~3では、熱処理後においてFeMnO3の存在が確認された。
【0069】
【0070】
(耐熱試験)
耐熱試験として、各触媒担持構造体において、熱処理前後におけるNO2変換率を測定した。実施例1~11、並びに、比較例1~3の触媒担持構造体に対する耐熱試験の結果を表4に示す。表4では、熱処理前の各触媒担持構造体に対する、一定流量のガスにおける初期の圧力損失(初期圧力損失)の測定結果も示している。
【0071】
【0072】
熱処理では、酸素(O2)10%、水蒸気(H2O)10%、窒素(N2)80%の混合ガスを750℃に加熱し、当該混合ガス中にて触媒担持構造体を16時間保持した。NO2変換率の測定では、各触媒担持構造体を直径25.4mm×長さ50.8mmの試料片に加工し、試料片の外周面をコートした。これを測定試料として自動車排ガス分析装置(堀場製作所社製、SIGU1000)を用いて評価を行った。具体的には、昇温炉内の反応管に上記測定試料をセットし、250℃に保持した。また、一酸化窒素(NO)200ppm、酸素10%、残りが窒素である混合ガスを250℃に加熱し、反応管内の測定試料に導入した。そして、測定試料から排出されたガス(排ガス)を排ガス測定装置(堀場製作所社製、MEXA-6000FT)を用いて分析し、排ガスのNO濃度およびNO2濃度を得た。NO2変換率は、NO濃度をa、NO2濃度をbとして、((b/(a+b)))により求めた。
【0073】
表4では、NO2変換率の劣化率も示している。NO2変換率の劣化率は、熱処理前のNO2変換率をc、熱処理後のNO2変換率をdとして、((c-d)/c)により求めた。表4では、さらに「総合評価」の項目を設けている。総合評価については、熱処理後のNO2変換率が15%以上であり、かつ、初期圧力損失が2.15kPa以下である触媒担持構造体に「〇」を付し、熱処理後のNO2変換率が15%未満である、または、初期圧力損失が2.15kPaを超える触媒担持構造体に「×」を付している。
【0074】
表4のように、二酸化セリウム粒子が補助成分(ランタン、アルミニウムおよび鉄)を含む実施例1~11の触媒担持構造体では、二酸化セリウム粒子が補助成分を含まない比較例1~3の触媒担持構造体に比べて、NO2変換率の劣化率が低くなった。よって、二酸化セリウム粒子が補助成分を含むことにより、酸化触媒において耐熱性が向上することが判る。また、基材の種類、触媒担持量、および、鉄とマンガンとの混合比(Fe/Mnモル比)が同じである比較例2と実施例1,3,4,7,8、比較例3と実施例2をそれぞれ比べると、実施例の触媒担持構造体では、比較例の触媒担持構造体よりも初期圧力損失が低くなった。さらに、NO2変換率の劣化率の低下により、熱処理後のNO2変換率も高くなった。
【0075】
<変形例>
上記酸化触媒2、触媒担持構造体1、酸化触媒の製造方法、および、触媒担持構造体の製造方法では様々な変形が可能である。
【0076】
酸化触媒2を担持するセル構造体では、内部が隔壁により複数のセルに仕切られものであるならば、様々な形状が採用されてよい。酸化触媒2において、二酸化セリウム粒子21が、金属酸化物22に加えて他の物質を保持してもよい。
【0077】
酸化触媒の製造方法、および、触媒担持構造体の製造方法は、上述のものには限定されず、様々に変更されてよい。酸化触媒2は、フィルタ以外の様々な用途に用いられてよい。
【0078】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0079】
1 触媒担持構造体
2 酸化触媒
10 ハニカム構造体
12 隔壁
13 セル
21 二酸化セリウム粒子
22 金属酸化物
S11,S12,S21,S22 ステップ