(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61D 37/00 20060101AFI20220520BHJP
B60N 3/02 20060101ALI20220520BHJP
B61D 19/02 20060101ALI20220520BHJP
B61D 33/00 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
B61D37/00 Z
B60N3/02 A
B61D19/02 Q
B61D33/00 F
B61D33/00 Z
(21)【出願番号】P 2018059918
(22)【出願日】2018-03-27
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】塩野 太郎
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-131926(JP,A)
【文献】中国実用新案第204124012(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 37/00
B61D 33/00
B60N 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の内壁面の出入口を開閉するドアが設けられた鉄道車両であって、
前記内壁面に設置された座席と、
前記内壁面において前記出入口の側縁の周辺から前記座席及び前記座席の周辺の部位のいずれかまで横方向に延在する手摺部と、
を備え
、
前記座席は、前記座席に着席した着席者の位置と前記手摺部の前記座席の側の端部との横方向の距離が長いほど、前記座席に着席した着席者の正面が前記手摺部に近い方向を向く形状を含む、鉄道車両。
【請求項2】
前記手摺部は、前記座席のいずれかの位置に着席した着席者の正面で横方向に延在する範囲を含む、請求項
1に記載の鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車室の内壁面の出入口を開閉するドアが設けられた鉄道車両において、出入口付近における乗客の行動を補助するために手摺を配置した構造が提案されている。例えば、特許文献1では、内壁面において出入口の側縁に沿って垂直方向に延在する手摺が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鉄道車両の乗客に高齢者や傷病者等が含まれることがある。握力や脚力等の体力が低下した高齢者等にとって、上記特許文献1のような手摺は把持し難く、行動を補助するために利用し難い欠点がある。また、上記特許文献1のような手摺では、高齢者等は手摺を伝って車室に設置された座席まで移動し難いため、高齢者等による車室の利用の快適さについては、改善の余地がある。
【0005】
そこで本発明は、高齢者等による車室の利用の快適さが向上する鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車室の内壁面の出入口を開閉するドアが設けられた鉄道車両であって、内壁面に設置された座席と、内壁面において出入口の側縁の周辺から座席及び座席の周辺の部位のいずれかまで横方向に延在する手摺部とを備えた鉄道車両である。
【0007】
この構成によれば、車室の内壁面の出入口を開閉するドアが設けられた鉄道車両において、内壁面において出入口の側縁の周辺から内壁面に設置された座席及び座席の周辺の部位のいずれかまで手摺部が横方向に延在するため、高齢者等が横方向に延在する手摺部に体重を預けつつ、手摺部を横方向に伝うことにより、出入口と座席との間を容易に移動することができ、高齢者等による車室の利用の快適さが向上する。
【0008】
この場合、座席は、座席に着席した着席者の位置と手摺部の座席の側の端部との横方向の距離が長いほど、座席に着席した着席者の正面が手摺部に近い方向を向く形状を含むことが好適である。
【0009】
この構成によれば、座席は、座席に着席した着席者の位置と手摺部の座席の側の端部との横方向の距離が長いほど、座席に着席した着席者の正面が手摺部に近い方向を向く形状を含むため、着席者が座席における手摺部の端部から離れた位置に着席する場合であっても、手摺部に近い方向を向いての着席及び離席が可能となるため、着席及び離席の際に手摺部を利用し易い。
【0010】
この場合、手摺部は、座席のいずれかの位置に着席した着席者の正面で横方向に延在する範囲を含むことが好適である。
【0011】
この構成によれば、手摺部は、座席のいずれかの位置に着席した着席者の正面で横方向に延在する範囲を含むため、当該位置に着席する着席者は、着席者が座席における手摺部の端部から離れた位置に着席する場合であっても、着席者の正面で横方向に延在する手摺部を利用しての着席及び離席が可能となるため、着席及び離席の際に手摺部をさらに利用し易い。
【発明の効果】
【0012】
本発明の鉄道車両によれば、高齢者等による車室の利用の快適さが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の鉄道車両の車室の内壁面の出入口付近を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態に係る鉄道車両について詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態の鉄道車両1は、車室2の内壁面3の出入口4を開閉するドア5が設けられている。出入口4及びドア5は、既存の鉄道車両の物を適用できる。ドア5は、自動又は手動で開閉する両開き及び片開きの扉であり、引き戸、プラグドア、スライドドアのいずれでもよい。本実施形態では、ドア5は自動で開閉する両開きの引き戸である。
【0015】
図1及び
図2に示すように、鉄道車両1は、内壁面3に設置された座席8を備えている。座席8は、出入口4の側縁6の戸柱7と袖仕切を介さずに隣接している。
図2に示すように、座席8は、平面視において曲部9で90°に屈曲する略L字型の形状を有する。座席8のL字型の一方の辺が内壁面3と密接しつつ一体化し、他方の辺が内壁面3に取り付けられた他の座席の袖仕切等の仕切板15と密接しつつ一体化している。
図1及び
図2に示すように、鉄道車両1は、座席8と一体化した仕切板15の端部に沿って縦方向に延在する手摺部16を備える。座席8は、例えば、最大で2~3名が座れる程度の座面を有する。
【0016】
鉄道車両1は、内壁面3において出入口4の側縁6の周辺から座席8及び座席8の周辺の部位のいずれかまで横方向に延在する手摺部10を備える。本実施形態では、手摺部10は、内壁面3において出入口4の側縁6の周辺から座席8の周辺の部位まで横方向に延在する。手摺部10は、円柱形状を有する。手摺部10の一方の端部11は出入口4の側縁6の周辺の戸柱7と一体化し、手摺部10は端部11から戸柱7から内壁面3に略垂直な方向に延在している。手摺部10の他方の端部12は座席8の周辺の部位の戸柱7と一体化し、手摺部10は端部12から戸柱7から内壁面3に略垂直な方向に延在している。手摺部10は、湾曲部13で滑らかに180°の角度で湾曲している。
【0017】
出入口4の側縁6の周辺とは、例えば、乗客が片方の手で出入口4の側縁6に触れつつもう片方の手で手摺部10を触れる範囲を意味する。あるいは、出入口4の側縁6の周辺とは、例えば、乗客が片方の手で出入口4の側縁6に触れつつ同じ片方の手で手摺部10を触れる範囲を意味する。座席8の周辺の部位とは、例えば、乗客が片方の手で手摺部10に触れつつ座席8のいずれかの座面に着席することが可能な範囲を意味する。横方向に延在するとは、
図1に示すように、車室2の床面に平行な水平方向に延在している態様の他に、例えば、車室2の床面に平行な水平方向から60°以内、45°以内及び30°以内の角度だけ傾斜している方向に延在している態様も含まれる。
【0018】
上述したように、座席8は、平面視において曲部9で90°に屈曲する略L字型の形状を有し、座席8のL字型の一方の辺が内壁面3と密接しつつ一体化している。そのため、
図2に示すように、座席8は、座席8に着席した着席者Sの位置と手摺部10の座席の側の端部12との横方向の距離d1,d2が長いほど、座席8に着席した着席者Sの正面Fが手摺部10に近い方向を向く形状を含む。
【0019】
例えば、着席者Sが手摺部10の座席の側の端部12と横方向に短い距離d1を隔てて着席した場合には、着席者Sの正面Fは内壁面3と略垂直方向に向き、手摺部10は着席者Sの正面Fから略90°左側の方向である。一方、着席者Sが手摺部10の座席の側の端部12と横方向に長い距離d2を隔てて着席した場合には、着席者Sの正面Fは手摺部10の方向に向く。
【0020】
手摺部10は、座席8のいずれかの位置に着席した着席者Sの正面Fで横方向に延在する範囲14を含む。着席者Sの正面Fで横方向に延在するとは、着席者Sの正面Fからの視点において、手摺部10が着席者Sの左右方向に延在することを意味する。左右方向に延在するとは、
図1に示すように車室2の床面に平行な水平方向に延在している態様の他に、例えば、車室2の床面に平行な水平方向から60°以内、45°以内及び30°以内の角度だけ傾斜している方向に延在している態様も含まれる。
【0021】
本実施形態では、手摺部10は出入口4の側縁6の周辺の戸柱7から座席8の周辺の部位まで延在しているが、手摺部10は戸柱7の周辺であって出入口4の側縁6の周辺の部位や、内壁面3の戸柱7が無い平坦な部位であって出入口4の側縁6の周辺の部位から座席8の周辺の部位と一体化していてもよい。また、手摺部10は、座席8まで延在し、その端部12が座席8と一体化していてもよく、内壁面3における座席8の周辺の部位まで延在していてもよい。また、手摺部10は、例えば、座席8の座面や背もたれの形状に沿って横方向に延在し、座席8のいずれの位置に着席した着席者Sについても、着席者Sの正面Fで横方向に延在する範囲14を含んでいてもよい。また、手摺部10は、上下に複数本備えられていてもよい。
【0022】
また、本実施形態では、手摺部10は内壁面3の戸柱7にその両方の端部11,12が取り付けられているが、例えば、手摺部10は内壁面3の近傍に位置し、車室2の床面から支持柱等により支持されていてもよい。つまり、必ずしも手摺部10が内壁面3により支持されていることを要しない。また、本実施形態では、円柱形状を有する手摺部10は内壁面3の戸柱7にその両方の端部11,12が取り付けられ、円柱形状を有する手摺部10と内壁面3との間に隙間を有するが、例えば板状の手摺部10の全体が内壁面3から突出しており、手摺部10と内壁面3との間に隙間が無くともよい。
【0023】
また、本実施形態では、座席8は、平面視において曲部9で90°に屈曲する略L字型の形状を有し、座席8のL字型の一方の辺が内壁面3と密接しつつ一体化しているが、例えば、座席8は、平面視において、着席者Sの正面Fが向く方向に全体的に湾曲する形状を有し、座席8の一部が内壁面3と密接しつつ一体化していてもよい。
【0024】
本実施形態によれば、車室2の内壁面3の出入口4を開閉するドア5が設けられた鉄道車両1において、内壁面3において出入口4の側縁6の周辺から内壁面3に設置された座席8及び座席8の周辺の部位のいずれかまで手摺部10が横方向に延在するため、高齢者等が横方向に延在する手摺部10に体重を預けつつ、手摺部10を横方向に伝うことにより、出入口4と座席8との間を容易に移動することができ、高齢者等による車室2の利用の快適さが向上する。
【0025】
つまり、握力が低下した高齢者等にとって、垂直方向に延在する手摺は下方向に滑り易いため、低下した握力で把持し難い欠点がある。また高齢者等が垂直方向に延在する手摺を把持したとしても、手摺を伝って横方向に移動することは難しい欠点がある。一方、本実施形態では、高齢者等は横方向に延在する手摺部10に手を介して体重を預けるだけでよいため、必ずしも手摺部10を強い握力で把持しないで済む利点がある。また、
図2に示すように、高齢者等は横方向に延在する手摺部10に体重を預けつつ、手摺部10を横方向に伝うことで、手摺部10を利用して出入口4と座席8との間を容易に移動することができる。
【0026】
また、本実施形態によれば、座席8は、座席8に着席した着席者Sの位置と手摺部10の座席8の側の端部12との横方向の距離d1,d2が長いほど、座席8に着席した着席者Sの正面Fが手摺部10に近い方向を向く形状を含むため、着席者Sが座席8における手摺部10の端部12から離れた位置に着席する場合であっても、
図2に示すように、手摺部10に近い方向を向いての着席及び離席が可能となるため、着席及び離席の際に手摺部10を利用し易い。
【0027】
また、本実施形態によれば、手摺部10は、座席8のいずれかの位置に着席した着席者Sの正面Fで横方向に延在する範囲14を含むため、当該位置に着席する着席者Sは、着席者Sが座席8における手摺部10の端部12から離れた位置に着席する場合であっても、
図2に示すように、着席者Sの正面Fで横方向に延在する手摺部10を利用しての着席及び離席が可能となるため、着席及び離席の際に手摺部10をさらに利用し易い。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。例えば、座席8及び手摺部10の位置、長さ、形状、範囲、個数等は適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0029】
1…鉄道車両、2…車室、3…内壁面、4…出入口、5…ドア、6…側縁、7…戸柱、8…座席、9…曲部、10…手摺部、11…端部、12…端部、13…湾曲部、14…範囲、15…仕切板、16…手摺部、S…着席者、d1,d2…距離、F…正面。