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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61D 37/00 20060101AFI20220520BHJP
   A47C 9/06 20060101ALI20220520BHJP
   B60N 2/005 20060101ALI20220520BHJP
   B60N 3/02 20060101ALI20220520BHJP
   B61D 33/00 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
B61D37/00 Z
A47C9/06
B60N2/005
B60N3/02 A
B61D33/00 F
B61D33/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018059927
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019171951
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】塩野 太郎
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07523993(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0229423(US,A1)
【文献】特開2007-230281(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第01551764(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 37/00
B61D 33/00
A47C 9/06
B60N 2/005
B60N 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客を収容する車室と、
前記車室に設けられ、立席で自重の少なくとも一部を自身の脚部により支えている立席の前記乗客の腰部を支持する立席乗客支持具と、
前記立席乗客支持具よりも前記立席乗客支持具によって前記腰部を支持された立席の前記乗客の前側に位置し、前記立席乗客支持具によって前記腰部を支持された立席の前記乗客が手を掛けることが可能な手摺部と、
を備え
前記手摺部は、
前記立席乗客支持具の高さで、前記立席乗客支持具よりも前記立席乗客支持具によって前記腰部を支持された立席の前記乗客の前側で上下方向に延在し、
前記立席乗客支持具よりも低い高さで、下方に到るにつれて前記立席乗客支持具によって前記腰部を支持された立席の前記乗客の後側の方向に湾曲して、前記立席乗客支持具の下方で前記立席乗客支持具によって前記腰部を支持された立席の前記乗客の前後方向に延在する、鉄道車両。
【請求項2】
前記手摺部は、前記立席乗客支持具により前記腰部を支持された立席の前記乗客が掌部を身体の側に向けつつ前記手を掛けることが可能である、請求項1に記載の鉄道車両。
【請求項3】
前記立席乗客支持具は、立席の前記乗客の臀部の形状に沿った臀部支持面により前記臀部を支持する臀部支持部を有する、請求項1又は2に記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記立席乗客支持具は、立席の前記乗客の腰背部の形状に沿った腰背部支持面により前記腰背部を支持する腰背部支持部を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の鉄道車両。
【請求項5】
前記立席乗客支持具は、前記車室の内壁面に設けられている、請求項1~のいずれか1項に記載の鉄道車両。
【請求項6】
前記立席乗客支持具は、前記車室の床面に設けられている、請求項1~のいずれか1項に記載の鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両において、立席の乗客の快適さを向上させるための技術が提案されている。例えば、特許文献1には、車椅子を利用する乗客及び立席の乗客を支持可能な乗客支持構造が開示されている。この乗客支持構造では、乗客が車椅子に乗ったまま乗車可能なスペースにおいて、車室の内壁面に沿って水平方向に延在する手摺が設けられている。手摺には、手摺に沿って水平方向に延在する長方形状の底板が取り付けられている。底板の上端部は手摺の内壁面とは反対側に取り付けられている。底板の下端部は内壁面から離れるように垂直方向に対して傾斜している。底板はクッション材により覆われている。車椅子を利用する乗客は手摺を利用することができる。一方、立席の乗客はクッション材に寄り掛かることができ、クッション材に寄り掛かった立席の乗客の腰部はクッション材により支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018‐012435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鉄道車両においては、鉄道車両が分岐器を通過するときや、鉄道車両が急減速をするときに、鉄道車両が大きく揺動することがある。しかし、上記のような乗客支持構造では、鉄道車両の揺動に対するクッション材に寄り掛かった立席の乗客の快適さについては、改善の余地がある。
【0005】
そこで本発明は、鉄道車両の揺動に対する立席の乗客の快適さが向上する鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、乗客を収容する車室と、車室に設けられ、立席で自重の少なくとも一部を自身の脚部により支えている立席の乗客の腰部を支持する立席乗客支持具と、立席乗客支持具よりも立席乗客支持具によって腰部を支持された立席の乗客の前側に位置し、立席乗客支持具によって腰部を支持された立席の乗客が手を掛けることが可能な手摺部とを備えた鉄道車両である。
【0007】
この構成によれば、鉄道車両において、乗客を収容する車室に設けられた立席乗客支持具により立席で自重の少なくとも一部を自身の脚部により支えている立席の乗客の腰部が支持されることに加えて、立席乗客支持具により腰部を支持された立席の乗客は立席乗客支持具よりも乗客の前側に位置する手摺部に手を掛けることが可能なため、鉄道車両の揺動に対する立席の乗客の快適さを向上させることができる。
【0008】
この場合、手摺部は、立席乗客支持具により腰部を支持された立席の乗客の腰部以下の高さで立席乗客支持具により腰部を支持された立席の乗客が手を掛けることが可能であることが好適である。
【0009】
この構成によれば、立席乗客支持具により腰部を支持された立席の乗客は腰部以下の高さで手摺部に手を掛けることが可能なため、乗客は腕を略伸ばした状態で手を介して手摺部に体重を預けることができ、鉄道車両の揺動に対する立席の乗客の快適さをより向上させることができる。
【0010】
また、手摺部は、立席乗客支持具により腰部を支持された立席の乗客が掌部を身体の側に向けつつ手を掛けることが可能であることが好適である。
【0011】
この構成によれば、立席乗客支持具により腰部を支持された立席の乗客は、掌部を身体の側に向けつつ手摺部に手を掛けることが可能であるため、乗客一人当たりに要する乗客の幅方向の空間を小さくしつつ、鉄道車両の揺動に対する立席の乗客の快適さを向上させることができる。
【0012】
また、立席乗客支持具は、立席の乗客の臀部の形状に沿った臀部支持面により臀部を支持する臀部支持部を有することが好適である。
【0013】
この構成によれば、立席の乗客の臀部は、立席乗客支持具の臀部支持部の臀部の形状に沿った臀部支持面により支持されるため、立席の乗客の快適さをより向上させることができる。
【0014】
また、立席乗客支持具は、立席の乗客の腰背部の形状に沿った腰背部支持面により腰背部を支持する腰背部支持部を有することが好適である。
【0015】
この構成によれば、立席の乗客の腰背部は、立席乗客支持具の腰背部支持部の腰背部支持面により支持されるため、立席の乗客の快適さをより向上させることができる。
【0016】
また、立席乗客支持具は、車室の内壁面に設けられていてもよい。
【0017】
この構成によれば、車室の内壁面に設けられている立席乗客支持具により、車室の内壁面付近の立席の乗客の快適さを向上させることができる。
【0018】
また、立席乗客支持具は、車室の床面に設けられていてもよい。
【0019】
この構成によれば、車室の床面に設けられている立席乗客支持具により、車室の内壁面から離れている立席の乗客の快適さを向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の鉄道車両によれば、鉄道車両の揺動に対する立席の乗客の快適さを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態の鉄道車両の立席乗客支持具と手摺部とを示す斜視図である。
図2】(A)は図1の鉄道車両の立席乗客支持具及び手摺部の正面図であり、(B)は図1の鉄道車両の立席乗客支持具及び手摺部の左側面図である。
図3】第2実施形態の鉄道車両の立席乗客支持具と手摺部とを示す斜視図である。
図4】(A)は図3の鉄道車両の立席乗客支持具及び手摺部の正面図であり、(B)は図3の鉄道車両の立席乗客支持具及び手摺部の左側面図である。
図5】第3実施形態の鉄道車両の立席乗客支持具と手摺部とを示す斜視図である。
図6】第4実施形態の鉄道車両の立席乗客支持具と手摺部とを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態に係る鉄道車両について詳細に説明する。図1図2(A)及び図2(B)に示すように、本発明の第1実施形態の鉄道車両1Aは、乗客を収容する車室2を備えている。車室2は、内壁面3と床面4とを有している。また、鉄道車両1Aは、車室2に設けられ、立席で自重の少なくとも一部を自身の脚部により支えている立席の乗客の腰部を支持する立席乗客支持具10Aを備えている。立席で自重の少なくとも一部を自身の脚部により支えているとは、乗客が完全に自重を立席乗客支持具10Aに預けておらず、立席で自重の少なくとも一部を自身の脚部により支えつつ、立席乗客支持具10Aに腰部を介して寄り掛かっていることを意味する。
【0023】
また、鉄道車両1Aは、立席乗客支持具10Aよりも立席乗客支持具10Aによって腰部を支持された立席の乗客の前側Fに位置し、立席乗客支持具10Aによって腰部を支持された立席の乗客が手を掛けることが可能な手摺部20Aを備えている。本実施形態では、立席乗客支持具10Aと手摺部20Aとは一体化している。
【0024】
立席乗客支持具10A及び手摺部20Aは、車室2の内壁面3に設けられている。本実施形態では、立席乗客支持具10A及び手摺部20Aは、車椅子を利用する乗客やベビーカーを利用する乗客のためのスペースの近傍の鉄道車両1Aの側構体の内壁面3に設けられている。なお、立席乗客支持具10A及び手摺部20Aは、鉄道車両1Aの妻構体の内壁面3に設けられていてもよい。
【0025】
立席乗客支持具10Aは、例えば、合成樹脂製又は木製である。立席乗客支持具10Aは、立席の乗客の臀部の形状に沿った臀部支持面11sにより臀部を支持する臀部支持部11を有する。臀部の形状に沿ったとは、乗客の臀部に接する前から臀部支持面11sが臀部の形状に沿った形状を有する態様の他、スポンジゴム、ウレタンフォーム及び鋼製ばね等の緩衝材が配置された臀部支持面11sが柔軟性を有し、乗客の臀部に接した後に臀部支持面11sが乗客の臀部の形状に沿った形状となる態様を含む。臀部支持面11sの下端部の床面4からの高さは、例えば、女性の床面4から臀部までの高さの1%タイル値~10%タイル値にすることができる。
【0026】
立席乗客支持具10Aは、立席の乗客の腰背部の形状に沿った腰背部支持面12sにより腰背部を支持する腰背部支持部12を有する。腰背部の形状に沿ったとは、乗客の腰背部に接する前から腰背部支持面12sが腰背部の形状に沿った形状を有する態様の他、スポンジゴム、ウレタンフォーム及び鋼製ばね等の緩衝材が配置された腰背部支持面12sが柔軟性を有し、乗客の腰背部に接した後に腰背部支持面12sが乗客の腰背部の形状に沿った形状となる態様を含む。
【0027】
立席乗客支持具10Aは、内壁面3に沿って横方向に延在し、立席乗客支持具10Aに腰部を介して寄り掛かっている複数の立席の乗客の腰部を支持する。本実施形態では、立席乗客支持具10Aは、同時に4人の立席の乗客の腰部を支持可能である。立席乗客支持具10Aの内壁面3に沿った横方向の両端部には、袖仕切13がそれぞれ設けられている。また、立席乗客支持具10Aにより腰部を支持される立席の乗客のそれぞれの間には、仕切板14が設けられている。互いに隣接する袖仕切13及び仕切板14の間隔は、例えば、350mm~450mmである。袖仕切13及び仕切板14の上下方向の長さは、例えば、230mm~330mmである。袖仕切13及び仕切板14の内壁面3から突出している長さは、例えば、90mm~190mmである。袖仕切13及び仕切板14の厚さは、例えば、20mm~100mmである。なお、袖仕切13及び仕切板14は省略されてもよい。
【0028】
手摺部20Aは、例えば、金属製である。鉄道車両1Aは、立席乗客支持具10Aにより腰部を支持される立席の乗客のそれぞれの間ごとに1つの手摺部20Aを備える。手摺部20Aは、内壁面3の側に仕切板14の形状に沿って曲がった円柱形状を有し、上下方向に延在している。手摺部20Aの上端部21は、立席乗客支持具10Aの仕切板14と一体化している。手摺部20Aの下端部22は立席乗客支持具10Aの下方で内壁面3と一体化している。手摺部20Aの上下方向に延在している範囲の長さは、例えば、190mm~290mmである。手摺部20Aの内壁面3から突出している範囲の長さは、例えば、120mm~220mmである。手摺部20Aの直径は、例えば、12mm~22mmである。
【0029】
手摺部20Aは、上端部21の近傍に、立席乗客支持具10Aによって腰部を支持された立席の乗客が手を掛けることが可能な上部把持部23を有する。手摺部20Aは、立席乗客支持具10Aの臀部支持部11の臀部支持面11sの下端部付近から立席乗客支持具10Aの下方まで、立席乗客支持具10Aによって腰部を支持された立席の乗客が手を掛けることが可能な下部把持部24を有する。上部把持部23及び下部把持部24の表面には、滑り止めのための凹凸が設けられている。
【0030】
手摺部20Aの下部把持部24は、立席乗客支持具10Aにより腰部を支持された立席の乗客の腰部以下の高さで立席乗客支持具10Aにより腰部を支持された立席の乗客が手を掛けることが可能である。また、手摺部20Aの上部把持部23及び下部把持部24は、立席乗客支持具10Aにより腰部を支持された立席の乗客が掌部を身体の側に向けつつ手を掛けることが可能である。
【0031】
立席乗客支持具10Aにより腰部を支持される立席の乗客のそれぞれは、互いに手摺部20Aの上部把持部23及び下部把持部24のいずれかに手を掛けることが可能である。なお、鉄道車両1Aは、立席乗客支持具10Aにより腰部を支持される立席の乗客のそれぞれの間の仕切板14等に、立席乗客支持具10Aにより腰部を支持される立席の乗客のそれぞれが単独で手を掛けられるように、2つの手摺部20Aを備えていてもよい。また、鉄道車両1Aは、袖仕切13に手摺部20Aを備えていてもよい。また、手摺部20Aは必ずしも立席乗客支持具10Aと一体化し、車室2の内壁面3に設けられていなくともよく、例えば、手摺部20Aは立席乗客支持具10Aと分離し、床面4に設けられ、床面4により支持されていてもよい。また、立席乗客支持具10Aは一人の立席の乗客の腰部のみを支持し、手摺部20Aは一人の立席の乗客が手を掛けることが可能であってもよい。
【0032】
本実施形態によれば、鉄道車両1Aにおいて、乗客を収容する車室2に設けられた立席乗客支持具10Aにより立席で自重の少なくとも一部を自身の脚部により支えている立席の乗客の腰部が支持されることに加えて、立席乗客支持具10Aにより腰部を支持された立席の乗客は立席乗客支持具10Aよりも乗客の前側Fに位置する手摺部20Aに手を掛けることが可能なため、鉄道車両1Aの揺動に対する立席の乗客の快適さを向上させることができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、立席乗客支持具10Aにより腰部を支持された立席の乗客は腰部以下の高さで手摺部20Aに手を掛けることが可能なため、乗客は腕を略伸ばした状態で手を介して手摺部20Aに体重を預けることができ、鉄道車両1Aの揺動に対する立席の乗客の快適さをより向上させることができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、立席乗客支持具10Aにより腰部を支持された立席の乗客は、掌部を身体の側に向けつつ手摺部20Aに手を掛けることが可能であるため、乗客一人当たりに要する乗客の幅方向の空間を小さくしつつ、鉄道車両1Aの揺動に対する立席の乗客の快適さを向上させることができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、立席の乗客の臀部は、立席乗客支持具10Aの臀部支持部11の臀部の形状に沿った臀部支持面11sにより支持されるため、立席の乗客の快適さをより向上させることができる。また、本実施形態によれば、立席の乗客の腰背部は、立席乗客支持具10Aの腰背部支持部12の腰背部支持面12sにより支持されるため、立席の乗客の快適さをより向上させることができる。また、本実施形態によれば、車室2の内壁面3に設けられている立席乗客支持具10Aにより、車室2の内壁面3付近の立席の乗客の快適さを向上させることができる。
【0036】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。図3図4(A)及び図4(B)に示すように、本実施形態の鉄道車両1Bは、車室2に設けられ、立席で自重の少なくとも一部を自身の脚部により支えている立席の乗客の腰部を支持する立席乗客支持具10Bと、上記第1実施形態と同様の車室2及び手摺部20Aとを備えている。立席乗客支持具10B及び手摺部20Aは、車室2の内壁面3に設けられている。上記第1実施形態と同様に、本実施形態では、立席乗客支持具10B及び手摺部20Aは、車椅子を利用する乗客やベビーカーを利用する乗客のためのスペースの近傍の鉄道車両1Aの側構体の内壁面3に設けられている。なお、立席乗客支持具10B及び手摺部20Aは、鉄道車両1Bの妻構体の内壁面3に設けられていてもよい。
【0037】
上記第1実施形態と同様に、立席乗客支持具10Bと手摺部20Aとは一体化している。しかし、本実施形態の立席乗客支持具10Bは、上記第1実施形態の立席乗客支持具10Aの腰背部支持面12sを含む腰背部支持部12を有していない。また、本実施形態の立席乗客支持具10Bは、上記第1実施形態の立席乗客支持具10Aの袖仕切13及び仕切板14を有していない。
【0038】
立席乗客支持具10Bは、例えば、金属製、合成樹脂製又は木製である。図4(B)に示すように、本実施形態の立席乗客支持具10Bは、側面視において略楕円形状を有する。側面視において立席乗客支持具10Bの略楕円形状の長辺は、長辺の上端部が内壁面3に近接し、長辺の下端部が内壁面3から離れるように傾斜している。側面視において立席乗客支持具10Bの略楕円形状の上部は、内壁面3と一体化している。立席乗客支持具10Bの略楕円形状の長辺の長さは、例えば、120mm~220mmである。立席乗客支持具10Bの略楕円形状の短辺の長さは、例えば、40mm~140mmである。
【0039】
立席乗客支持具10Bは、立席の乗客の臀部の形状に沿った臀部支持面11sにより臀部を支持する臀部支持部11を有する。スポンジゴム、ウレタンフォーム及び鋼製ばね等の緩衝材が配置された臀部支持面11sは柔軟性を有し、乗客の臀部に接した後に臀部支持面11sが乗客の臀部の形状に沿った形状となる。臀部支持面11sの下端部の床面4からの高さは、上記第1実施形態と同様である。
【0040】
図3図4(A)及び図4(B)に示すように、立席乗客支持具10Bは、内壁面3に沿って横方向に延在し、立席乗客支持具10Bに腰部を介して寄り掛かっている複数の立席の乗客の腰部を支持する。本実施形態では、立席乗客支持具10Bは、同時に4人の立席の乗客の腰部を支持可能である。立席乗客支持具10Bの内壁面3に沿った横方向の一方の端部には、側面視において略楕円形状を有する側端部材15が設けられている。また、立席乗客支持具10Bにより腰部を支持される立席の乗客のそれぞれの間には、側面視において略楕円形状を有する側端部材16が設けられている。互いに隣接する側端部材15及び側端部材16の間隔は、例えば、330mm~430mmである。側端部材15及び側端部材16の厚さは、例えば、20mm~40mmである。なお、側端部材15及び側端部材16は省略されてもよい。
【0041】
鉄道車両1Bは、立席乗客支持具10Bにより腰部を支持される立席の乗客のそれぞれの間ごとに1つの手摺部20Aを備える。手摺部20Aの上端部21は、立席乗客支持具10Bの側端部材16と一体化している。手摺部20Aの下端部22は立席乗客支持具10Bの下方の内壁面3と一体化している。
【0042】
なお、鉄道車両1Bは、立席乗客支持具10Bにより腰部を支持される立席の乗客のそれぞれの間の側端部材16等に、立席乗客支持具10Bにより腰部を支持される立席の乗客のそれぞれが単独で手を掛けられるように、2つの手摺部20Aを備えていてもよい。また、鉄道車両1Aは、側端部材15に手摺部20Aを備えていてもよい。また、手摺部20Aは必ずしも立席乗客支持具10Bと一体化し、車室2の内壁面3に設けられていなくともよく、例えば、手摺部20Aは立席乗客支持具10Bと分離し、床面4に設けられ、床面4により支持されていてもよい。また、立席乗客支持具10Bは一人の立席の乗客の腰部のみを支持し、手摺部20Aは一人の立席の乗客が手を掛けることが可能であってもよい。
【0043】
本実施形態によれば、腰背部支持部12、袖仕切13及び仕切板14が省略されたため、単純、安価及び省スペースである構成により、鉄道車両1Bの揺動に対する立席の乗客の快適さを向上させることができる。また、本実施形態によれば、腰背部支持部12、袖仕切13及び仕切板14が省略されたため、乗客は立席乗客支持具10B及び手摺部20Aを気軽に利用し易い。
【0044】
以下、本発明の第3実施形態について説明する。図5に示すように、本実施形態の鉄道車両1Cは、車室2に設けられ、立席で自重の少なくとも一部を自身の脚部により支えている立席の乗客の腰部を支持する立席乗客支持具10Cと、上記第1実施形態と同様の車室2及び手摺部20Aとを備えている。2つの立席乗客支持具10C及び手摺部20Aが車室2の内壁面3に設けられている。本実施形態では、車室2の出入口5の近傍の内壁面3に複数の乗客が着席可能な座席6が設置されている。立席乗客支持具10C及び手摺部20Aは、出入口5と座席6との間と、座席6の出入口5とは反対側の座席6の近傍とにそれぞれ設けられている。つまり、本実施形態では、立席乗客支持具10C及び手摺部20Aは、座席6を利用する一般の乗客のためのスペースの近傍の鉄道車両1Cの側構体の内壁面3に設けられている。本実施形態では、立席乗客支持具10Cと手摺部20Aとは一体化している。
【0045】
2つの立席乗客支持具10Cのそれぞれは、立席乗客支持具10Cが同時に4人ではなく1人の立席の乗客の腰部を支持可能である以外は、上記第2実施形態の立席乗客支持具10Bと略同様の構成を有する。立席乗客支持具10Bは、立席の乗客の臀部の形状に沿った臀部支持面11sにより臀部を支持する臀部支持部11を有する。スポンジゴム、ウレタンフォーム及び鋼製ばね等の緩衝材が配置された臀部支持面11sは柔軟性を有し、乗客の臀部に接した後に臀部支持面11sが乗客の臀部の形状に沿った形状となる。臀部支持面11sの下端部の床面4からの高さは、上記第2実施形態と同様である。
【0046】
鉄道車両1Cは、立席乗客支持具10Cごとに1つの手摺部20Aを備える。2つの立席乗客支持具10Cの内壁面3に沿った横方向の座席6の側の端部には側端部材15が設けられ、座席6とは反対側の端部には側端部材16が設けられている。手摺部20Aの上端部21は、立席乗客支持具10Cの側端部材16と一体化している。手摺部20Aの下端部22は立席乗客支持具10Cの下方の内壁面3と一体化している。なお、鉄道車両1Cは、側端部材15に手摺部20Aを備えていてもよい。
【0047】
また、上記第2実施形態と同様に、立席乗客支持具10Cは複数の立席の乗客の腰部を支持し、手摺部20Aは複数の立席の乗客が手を掛けることが可能であってもよい。この場合、鉄道車両1Cは、立席乗客支持具10Cにより腰部を支持される立席の乗客のそれぞれの間の側端部材16等に、立席乗客支持具10Cにより腰部を支持される立席の乗客のそれぞれが単独で手を掛けられるように、2つの手摺部20Aを備えていてもよい。また、手摺部20Aは必ずしも立席乗客支持具10Cと一体化し、車室2の内壁面3に設けられていなくともよく、例えば、手摺部20Aは立席乗客支持具10Cと分離し、床面4に設けられ、床面4により支持されていてもよい。
【0048】
本実施形態によれば、出入口5と乗客が着席可能な座席6との間等の座席6を利用する一般の乗客のためのスペースにおいても、立席の乗客の快適さを向上させることができる。例えば、出入口5と座席6との間や、座席6の出入口5とは反対側の座席6の近傍のスペースにおいて、従来は、内壁面3や座席6の袖仕切等に寄り掛かるしかなかった立席の乗客の腰部が立席乗客支持具10Cにより支持され、当該立席の乗客は手摺部20Aに手を掛けることが可能であるため、当該箇所での乗客の快適さは極めて向上する。
【0049】
以下、本発明の第4実施形態について説明する。図6に示すように、本実施形態の鉄道車両1Dは、立席乗客支持具10Dと、手摺部20Bと、上記第1実施形態と同様の車室2及び手摺部20Aとを備えている。本実施形態では、立席乗客支持具10D及び手摺部20Bは、車室2の内壁面3ではなく、車椅子を利用する乗客やベビーカーを利用する乗客のためのスペースの近傍の鉄道車両1Dの床面4の中央に設けられている。本実施形態では、立席乗客支持具10Dと手摺部20A,20Bとは一体化している。
【0050】
車椅子を利用する乗客やベビーカーを利用する乗客のためのスペースの近傍の鉄道車両1Dの床面4の中央には、略平板形状を有し、その表面が鉄道車両1Dの進行方向に平行であり且つ床面4に垂直なボード30Aが設けられている。立席乗客支持具10D及び手摺部20Bは、ボード30A一方の表面に設けられている。ボード30Aは、その上端部に手摺31を有する。また、ボード30Aは、立席乗客支持具10Dの下方の表面に、立席乗客支持具10Dによって腰部を支持された立席の乗客の脚部を温めるためのヒータ32を備えている。ボード30Aの立席乗客支持具10Dが設けられていない側と対向する車室2の内壁面3には、車椅子を利用する乗客やベビーカーを利用する乗客のための手摺40が設けられている。
【0051】
立席乗客支持具10Dは、立席乗客支持具10Dが同時に4人ではなく2人の立席の乗客の腰部を支持可能である以外は、上記第1実施形態の立席乗客支持具10Aと略同様の構成を有する。立席乗客支持具10Dは、車室2に設けられ、立席で自重の少なくとも一部を自身の脚部により支えている立席の乗客の腰部を支持する。立席乗客支持具10Dは、例えば、合成樹脂製又は木製である。立席乗客支持具10Dは、立席の乗客の臀部の形状に沿った臀部支持面11sにより臀部を支持する臀部支持部11と、立席の乗客の腰背部の形状に沿った腰背部支持面12sにより腰背部を支持する腰背部支持部12とを有する。臀部支持面11sの下端部の床面4からの高さは、上記第1実施形態と同様である。
【0052】
立席乗客支持具10Dは、鉄道車両1Dの進行方向に延在し、立席乗客支持具10Dに腰部を介して寄り掛かっている複数の立席の乗客の腰部を支持する。本実施形態では、立席乗客支持具10Dは、同時に2人の立席の乗客の腰部を支持可能である。
【0053】
手摺部20Aについては、手摺部20Aの下端部22が立席乗客支持具10Dの下方でボード30Aと一体化していること以外は上記第1実施形態と同様である。手摺部20Bは、立席乗客支持具10Dよりも立席乗客支持具10Dによって腰部を支持された立席の乗客の前側Fに位置し、立席乗客支持具10Dによって腰部を支持された立席の乗客が手を掛けることが可能である。手摺部20Bは、例えば、金属製である。鉄道車両1Dは、立席乗客支持具10Dの鉄道車両1Dの進行方向の両端部に一対の手摺部20Bを備える。手摺部20Bは、立席乗客支持具10Dの側に曲がった円柱形状を有し、上下方向に延在している。手摺部20Bの上端部21は、車室2の上部の支柱と一体化している。手摺部20Bの下端部22は立席乗客支持具10Dの下方でボード30Aと一体化している。
【0054】
手摺部20Bは、立席乗客支持具10Dにより腰部を支持された立席の乗客の腰部以下の高さで立席乗客支持具10Dにより腰部を支持された立席の乗客が手を掛けることが可能である。また、手摺部20Bは、立席乗客支持具10Dにより腰部を支持された立席の乗客が掌部を身体の側に向けつつ手を掛けることが可能である。図5の左側に示すように、ボード30Aの袖仕切13とは反対側の側端部には、ボード30Aと同様のボード30Bが一体化している。ボード30Bのボード30Aの立席乗客支持具10D及び手摺部20A,20Bが設けられている側とは反対側の表面には、ボード30Aと同様に立席乗客支持具10D及び手摺部20A,20Bが設けられている。
【0055】
なお、鉄道車両1Dは、立席乗客支持具10Dにより腰部を支持される立席の乗客のそれぞれの間の仕切板14等に、立席乗客支持具10Dにより腰部を支持される立席の乗客のそれぞれが単独で手を掛けられるように、2つの手摺部20Aを備えていてもよい。また、鉄道車両1Dは、袖仕切13に手摺部20Aを備えていてもよい。また、手摺部20A,20Bは必ずしも立席乗客支持具10Dと一体化し、ボード30Aを介して車室2の床面4に設けられていなくともよく、例えば、手摺部20A,20Bは立席乗客支持具10Dと分離し、床面4に設けられ、床面4により支持されていてもよく、内壁面3に設けられ、内壁面3により支持されていてもよい。また、立席乗客支持具10Dは一人の立席の乗客の腰部のみを支持し、手摺部20A,20Bは一人の立席の乗客が手を掛けることが可能であってもよい。
【0056】
本実施形態によれば、車室2の床面4に設けられている立席乗客支持具10Dにより、車室2の内壁面3から離れている立席の乗客の快適さを向上させることができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。例えば、立席乗客支持具10A,10B,10C,10D及び手摺部20A,20Bの位置、長さ、形状、範囲、個数等は適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0058】
1A,1B,1C,1D…鉄道車両、2…車室、3…内壁面、4…床面、5…出入口、6…座席、10A,10B,10C,10D…立席乗客支持具、11…臀部支持部、11s…臀部支持面、12…腰背部支持部、12s…腰背部支持面、13…袖仕切、14…仕切板、15,16…側端部材、20A…手摺部、21…上端部、22…下端部、23…上部把持部、24…下部把持部、30A,30B…ボード、31…手摺、32…ヒータ、40…手摺、F…前側。
図1
図2
図3
図4
図5
図6