(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】フィルムおよびフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20220520BHJP
B41M 5/50 20060101ALI20220520BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20220520BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20220520BHJP
G01N 3/42 20060101ALI20220520BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20220520BHJP
【FI】
B32B27/30 A
B41M5/50 100
C08J7/04 H CEY
C09J7/29
G01N3/42 B
C09D11/101
(21)【出願番号】P 2018070398
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】大久保 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】山田 晃史
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-177600(JP,A)
【文献】特開2011-075705(JP,A)
【文献】特開2005-144699(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0238879(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
B41M 5/00、 5/50、 5/52
C08J 7/04- 7/06
C09J 1/00- 10/00、101/00-201/10
G01N 3/00- 3/62
C09D 11/00- 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化性インクが付与されるフィルムであって、
基材と、
前記紫外線硬化性インクが付与され、前記基材よりも硬質なインク受容層と、を備え、
前記インク受容層は、アクリル
主鎖に、炭素-炭素不飽和結合
を有する側鎖が結合した構造を有するポリマーを含む材料で構成されており、
稜間角が115°の三角錐の圧子で、荷重が10mNになるまで負荷を与えて前記インク受容層を押し込み、1秒間保持した際の押し込み深さをAとし、前記荷重を除荷した後の押し込み深さをBとしたとき、B/Aが0.4以上0.65以下であることを特徴とするフィルム。
【請求項2】
前記インク受容層の鉛筆硬度は、1H以上である請求項
1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記インクは、主としてアクリル樹脂で構成されている請求項1
または2に記載のフィルム。
【請求項4】
紫外線硬化性インクが付与されるフィルムの製造方法であって、
基材を用意する用意工程と、
前記基材上に、紫外線を照射して硬化させることにより、前記紫外線硬化性インクが付与され、前記基材よりも硬質なインク受容層となるインク受容層形成材料を塗布する塗布工程と、
前記インク受容層形成材料に前記紫外線を照射して前記インク受容層形成材料を硬化させて前記インク受容層を形成する硬化工程と、を有し、
前記硬化工程後の前記インク受容層形成材料は、アクリル
主鎖に、炭素-炭素不飽和結合
を有する側鎖が結合した構造を有するポリマーを含
み、
稜間角が115°の三角錐の圧子で、荷重が10mNになるまで負荷を与えて前記インク受容層を押し込み、1秒間保持した際の押し込み深さをAとし、前記荷重を除荷した後の押し込み深さをBとしたとき、B/Aが0.4以上0.65以下であることを特徴とするフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記インク受容層形成材料は、炭素-炭素不飽和結合の数が3個以上6個以下のモノマーを含む請求項
4に記載のフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記
ポリマーの平均分子量は、30000以上200000以
下である請求項
4または
5に記載のフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記硬化工程における前記紫外線の照射量は、150mJ/cm
2以上250mJ/cm
2以下である請求項
4ないし
6のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムおよびフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
広告などが印刷されたいわゆる加飾フィルムが、店頭での広告ディスプレイをはじめ、各種商品の装飾などに広く採用されている。加飾フィルムには、内容を鮮やかに表示するために、透明性が求められる。
【0003】
フィルムには粘着剤層および該粘着剤層を保護する剥離ライナーが設けられており、使用時には、剥離ライナーを剥がして、粘着剤層側を店頭の表示板などに対向させて貼りつけている。
【0004】
このとき、フィルムと貼り付け面との間に気泡等が混入しないように、スキージーでならすことが行われるが、印刷されていない部位においては表面に微小な傷がついて白くなってしまう場合がある。
【0005】
そこで、表面に微小な傷がつくのを防ぐために、基材フィルムより硬い材料からなるハードコート層を設けることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
このハードコート層上に所定の手段によりインクを付与することにより各種内容が印刷される。また、形成される印刷部が硬くて傷つきにくいことから、印刷には、アクリル系の紫外線硬化性インクが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このようなアクリル系の紫外線硬化性インクは、ハードコート層との密着性が悪いという問題があった。特に、印刷後、すなわちハードコート層上に付与した紫外線硬化性インクを硬化させるときに、紫外線硬化性インクは硬化収縮するため、ハードコート層と印刷部との界面で内部応力が生じ、ハードコート層との密着性がさらに悪くなってしまう。
【0009】
特に、溶剤系インクは、印刷後にハードコート層中に浸透するために、このような密着性の問題はおこらないが、紫外線硬化性インクはハードコート層中に浸透せず硬化するため、上述したような密着性の問題が顕著となる。
【0010】
本発明の目的は、付与される紫外線硬化性インクとの密着性を向上したフィルムおよびフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記(1)~(7)に記載の本発明により達成される。
(1) 紫外線硬化性インクが付与されるフィルムであって、
基材と、
前記紫外線硬化性インクが付与され、前記基材よりも硬質なインク受容層と、を備え、
前記インク受容層は、アクリル主鎖に、炭素-炭素不飽和結合を有する側鎖が結合した構造を有するポリマーを含む材料で構成されており、
稜間角が115°の三角錐の圧子で、荷重が10mNになるまで負荷を与えて前記インク受容層を押し込み、1秒間保持した際の押し込み深さをAとし、前記荷重を除荷した後の押し込み深さをBとしたとき、B/Aが0.4以上0.65以下であることを特徴とするフィルム。
【0013】
(2) 前記インク受容層の鉛筆硬度は、1H以上である上記(1)に記載のフィルム。
【0014】
(3) 前記紫外線硬化性インクは、主としてアクリル樹脂で構成されている上記(1)または(2)に記載のフィルム。
【0015】
(4) 紫外線硬化性インクが付与されるフィルムの製造方法であって、
基材を用意する用意工程と、
前記基材上に、紫外線を照射して硬化させることにより、前記紫外線硬化性インクが付与され、前記基材よりも硬質なインク受容層となるインク受容層形成材料を塗布する塗布工程と、
前記インク受容層形成材料に前記紫外線を照射して前記インク受容層形成材料を硬化させて前記インク受容層を形成する硬化工程と、を有し、
前記硬化工程後の前記インク受容層形成材料は、アクリル主鎖に、炭素-炭素不飽和結合を有する側鎖が結合した構造を有するポリマーを含み、
稜間角が115°の三角錐の圧子で、荷重が10mNになるまで負荷を与えて前記インク受容層を押し込み、1秒間保持した際の押し込み深さをAとし、前記荷重を除荷した後の押し込み深さをBとしたとき、B/Aが0.4以上0.65以下であることを特徴とするフィルムの製造方法。
【0016】
(5) 前記インク受容層形成材料は、炭素-炭素不飽和結合の数が3個以上6個以下のモノマーを含む上記(4)に記載のフィルムの製造方法。
【0017】
(6) 前記ポリマーの平均分子量は、30000以上200000以下である上記(4)または(5)に記載のフィルムの製造方法。
【0018】
(7) 前記硬化工程における前記紫外線の照射量は、150mJ/cm2以上250mJ/cm2以下である上記(4)ないし(6)のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、付与される紫外線硬化性インクとの密着性を向上したフィルムおよびフィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のフィルムの好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[フィルム]
まず、本発明のフィルムについて説明する。
図1は、本発明のフィルムの好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【0022】
本発明のフィルム(以下、「粘着フィルム1」と言う)は、紫外線硬化性インクが付与されるフィルムであって、基材10と、紫外線硬化性インクが付与され、基材10よりも硬質なインク受容層11と、を備え、インク受容層11は、アクリル構造と、炭素-炭素不飽和結合とを含むポリマーを含む材料で構成されている。
【0023】
そして、粘着フィルム1は、稜間角が115°の三角錐の圧子で、荷重が10mNになるまで負荷を与えてインク受容層11を押し込み、1秒間保持した際の押し込み深さをAとし、前記荷重を除荷した後の押し込み深さをBとしたとき、B/Aが0.4以上0.65以下であることを特徴とする。
【0024】
粘着フィルム1は、インク受容層11を構成するポリマーが、炭素-炭素不飽和結合を含んでいることを特徴とする。従来は、ポリマーの、実質的にすべての炭素-炭素不飽和結合を反応させて硬化していた。これによりインク受容層11は硬くなりハードコート層としての硬度を付与することができる。しかしながら、インク受容層11が硬すぎても、付与された紫外線硬化性インクの硬化収縮により内部応力が生じ、紫外線硬化性インクが剥がれやすくなってしまう。
【0025】
本発明では、インク受容層11を構成するポリマーにおいて未反応の炭素-炭素不飽和結合をあえて残すことにより、紫外線硬化性インクとの密着性を高めている。すなわち、紫外線硬化性インクの硬化収縮に対し、インク受容層11にある程度の応力緩和性が担保されている。
【0026】
具体的には、上記の押し込み試験において、B/Aが上記範囲であることにより、インク受容層11の硬さと密着性とを両立することができる。B/Aが小さい(戻りが早い)と、紫外線硬化性インクとの密着性が得られない。B/Aが大きい(戻りが悪い)と、紫外線硬化性インクとの密着性に優れるが、ハードコート層としての硬さ、耐傷性として不十分である。
【0027】
また、インク受容層11上に付与した紫外線硬化性インクを硬化させるときに、インクの硬化収縮に伴ってインク受容層11も一緒に収縮するため、紫外線硬化性インクの硬化収縮による内部応力を緩和し、紫外線硬化性インクとの密着性が向上し、紫外線硬化性インクが剥がれてしまうことを防止できる。
【0028】
さらに、インク受容層11中のポリマーが、炭素-炭素不飽和結合を残していることにより、紫外線硬化性インクが付与されたときに、インク受容層11と紫外線硬化性インクとの結合を促し、密着性をより高めることができる。
【0029】
本実施形態の粘着フィルム1は、
図1に示すように、基材10と、インク受容層11と、粘着剤層12と、剥離ライナー13とを有する積層体とされている。
【0030】
(基材)
基材10としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、(メタ)アクリル樹脂フィルム、ポリスチレンフィルム、酢酸セルロースフィルム等の樹脂フィルムが挙げられる。
【0031】
なお、本明細書において(メタ)アクリル樹脂とは、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂を意味し、以下同様である。
【0032】
基材10は透明であってもよく不透明であってもよい。基材10として透明なものを用いた場合には、本実施形態の粘着フィルム1は、例えば、印刷面の裏面から印刷画像を鑑賞するディスプレイとしての用途、ウィンドウディスプレイの用途等に用いることができる。基材10の厚さは特に制限されず、適宜設定することができ、例えば15μm以上300μm以下であってもよく、例えば20μm以上200μm以下であってもよい。
【0033】
透明な粘着フィルム1としては、例えば、JIS K7136:2000に準拠して測定したヘーズが10%以下であるものが挙げられる。粘着フィルムのヘーズは、粘着フィルムが粘着剤層及び剥離ライナーを有する場合には、当該剥離ライナーを剥離した状態で測定するとよい。粘着フィルム1のヘーズは、用途に応じて適宜設定することができるが、例えば、ウィンドウディスプレイ等の用途に用いるものである場合には、透明性が高いことが好ましい観点から、例えば5%以下であってもよく、例えば3%以下であってもよく、例えば1%以下であってもよい。
【0034】
(インク受容層)
インク受容層11は、紫外線硬化性インクが付与される層であり、基材10よりも硬質な材料からなる。
【0035】
インク受容層11は、インク受容層形成材料を基材10上に塗布し、紫外線を照射して硬化させることにより形成される。そして硬化後のインク受容層11は、アクリル構造と、炭素-炭素不飽和結合とを含むポリマーを含む材料で構成されている。これにより、インク受容層11はハードコート層としての機能を備えるとともに、適度な応力緩和性を有することで、付与される紫外線硬化性インクとの密着性が高められたものとなる。
【0036】
インク受容層11が、アクリル構造を有することで、後述するように紫外線硬化性インクとしてアクリル系インクを用いた場合に、紫外線硬化性インクとの密着性をさらに高めることができる。
【0037】
(インク受容層形成材料)
インク受容層形成材料は、基本的な成分として、例えば、紫外線硬化ポリマーと、紫外線硬化モノマーと、光重合開始剤とを含む。
【0038】
<紫外線硬化ポリマー>
紫外線硬化ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、本実施形態では、アクリル構造または炭素-炭素不飽和結合を、主鎖または側鎖に含むポリマーが好ましい。
【0039】
このようなポリマーとしては、アクリルポリマー、ウレタンポリマー等を主鎖とし、側鎖に紫外線硬化性反応基が導入された化合物(例えば、ポリアクリル酸エステル)が挙げられる。紫外線硬化性反応基としては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0040】
紫外線硬化型のアクリルポリマーとしては、例えば、アクリルポリマーを主鎖とし、紫外線硬化性反応基としてメタクリル酸エステル系モノマーを側鎖に導入したポリマーが挙げられる。市販品として具体的には、大成ファインケミカル社製 8KX-078、8KX-089等が挙げられる。これらは、アクリルベースであるため透明性に優れる。
【0041】
紫外線硬化型のウレタンアクリルポリマーとしては、例えば、アクリルポリマーを主鎖とし、ウレタンポリマー(オリゴマー)を側鎖に導入したポリマーが挙げられる。市販品として具体的には、大成ファインケミカル社製 8BR等が挙げられる。これらを用いると、インク受容層11に応力緩和性を付与することができる。
【0042】
紫外線硬化型のウレタンポリマーとしては、例えばウレタンポリマーを主鎖とし、不飽和基としてメタクリロイル基を側鎖に導入したポリマーが挙げられる。市販品として具体的には、大成ファインケミカル社製 8UH等が挙げられる。これらを用いると、インク受容層11に応力緩和性を付与することができる。
【0043】
このようなモノマーは、炭素-炭素不飽和結合の数が3個以上6個以下のものであるのが好ましい。これにより、本発明の効果がより顕著に得られる。
【0044】
<紫外線硬化モノマー>
インク受容層形成材料に紫外線硬化モノマーを含むことにより、インク受容層11の硬度を調整することができる。
【0045】
紫外線硬化モノマーとしては、特に限定されるものではないが、多官能アクリレート系の紫外線重合性化合物であることが好ましい。
【0046】
本明細書における多官能アクリレート系の紫外線硬化モノマーとは、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性官能基を3個以上((メタ)アクリロイル基は少なくとも1個)有し、かつ、紫外線の照射により重合、硬化し得る化合物である。重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基、アルキニル基、オキセタニル基等が挙げられ、中でも(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0047】
多官能アクリレート系紫外線硬化モノマーとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)等が挙げられる。
【0048】
その中でも、インク受容層形成材料は、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA:6官能)を含むことが好ましい。これにより、より高硬度のインク受容層11が得られる。
【0049】
光重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光開始剤、アミンやキノン等の光増感剤などが挙げられ、具体的には、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β-クロールアンスラキノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどが例示される。光重合開始剤を配合することにより照射時間、照射量を少なくすることができる。その中でも、アルキルフェノン系の光重合開始剤が好ましい。
【0050】
本実施形態におけるインク受容層形成材料は、上記の成分以外に、各種添加剤、溶剤等の第三成分を含有してもよい。各種添加剤としては、例えば、表面調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、着色剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、消泡剤、有機系充填材、濡れ性改良剤、塗面改良剤等が挙げられる。
【0051】
表面調整剤(レベリング剤)としては、所望のレベリング効果、すなわち、コーティング時におけるハジキ等の塗布欠点抑制効果や、形成されるインク受容層11の表面平滑化効果が得られるものであれば、特に限定されるものではない。かかる表面調整剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、アクリル系、シロキサン変性アクリル系、ビニル系の各種表面調整剤等が挙げられる。その中でも、ポリアクリル系の表面調整剤が好ましい。
【0052】
アクリル系レベリング剤の市販品としては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製のBYK-350、BYK-352、BYK-354、BYK-355、BYK-358N、BYK-361N、BYK-380N、BYK-381、BYK-392等が挙げられる。
【0053】
溶剤としては、塗工性の改良、粘度調整の調整等のために使用することができ、上記各成分が溶解するものであれば、特に限定なく使用できる。
【0054】
溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソロブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソロブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソロブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類などが挙げられる。
【0055】
インク受容層11は、上述したようなインク受容層形成材料を基材10上に塗布し、紫外線を照射して硬化させることにより形成される。このとき、具体的には後述するように、紫外線の照射量を調整(半キュア)することにより、ポリマーの炭素-炭素不飽和結合をすべて反応させず、少なくとも一部を残している。
【0056】
本実施形態において、インク受容層11を構成する(硬化後の)ポリマーは、アクリル構造と、炭素-炭素不飽和結合とを含んでいる。アクリル構造と、炭素-炭素不飽和結合とは、それぞれ、主鎖であっても側鎖であっても構わない。すなわち、主鎖にアクリル構造を有し、側鎖に炭素-炭素不飽和結合を有していてもよいし、主鎖に炭素-炭素不飽和結合を有し、側鎖にアクリル構造を有していてもよい。また、主鎖にアクリル構造と炭素-炭素不飽和結合とを有していてもよいし、側鎖にアクリル構造と炭素-炭素不飽和結合とを有していてもよい。
【0057】
最終的にインク受容層11を構成するポリマーが、アクリル構造と、炭素-炭素不飽和結合とを含んでいればよく、インク受容層形成材料が、上述したような紫外線硬化ポリマーと紫外線硬化モノマーとの両方を含んでいる必要はなく、アクリル構造と炭素-炭素不飽和結合とを含む紫外線硬化ポリマー又は紫外線硬化モノマーの一方のみを含んでいても構わない。
【0058】
その中でも特に、インク受容層11を構成するポリマーは、アクリル主鎖に、炭素-炭素不飽和結合を有する側鎖が結合した構造を有することが好ましい。アクリルベースであるため透明性に優れるとともに、インク受容層11に適度な応力緩和性を付与することができる。
【0059】
インク受容層11を構成するポリマーの平均分子量(重量平均分子量)は、30000以上200000以下であることが好ましい。ポリマーの平均分子量が上記範囲であることで、高硬度を有するとともに、付与された紫外線硬化性インクの密着性が良好で、高画質が得られ、耐光性、耐熱湿性等の保存性にも優れたインク受容層11を得ることできる。
【0060】
インク受容層11の鉛筆硬度は、1H以上であることが好ましい。これにより、インク受容層11は十分な硬さおよび耐傷性を有するものとなり、ハードコート層としての機能も有するものとなる。
【0061】
なお、鉛筆硬度は、JIS K 5600-5-4:1999に記載の引っかき硬度(鉛筆法)試験に準拠した方法で測定されたものである。
【0062】
インク受容層11の耐擦傷性(耐スチールウール硬度)は100g/cm2以上であることが好ましい。さらに好ましくは150g/cm2以上であり、最も好ましくは200g/cm2以上である。耐スチールウール硬度が100g/cm2未満では、フィルム貼り付け時のスキージーとの擦れなどで容易に傷が付いてしまうので好ましくない。また、耐スチールウール硬度の荷重は大きい程良く、上限は特に限定されないが、250g/cm2程度が好ましい。
【0063】
なお、耐スチールウール硬度とは、#0000番のスチールウールをインク受容層11表面に一定荷重をかけながら10cmの距離を10往復させたときに表面に傷が付かなかった最大荷重のことである。
【0064】
そして、特に、本実施形態の粘着フィルム1は、稜間角が115°の三角錐の圧子で、荷重が10mNになるまでインク受容層11を押し込み、1秒間保持した際の押し込み深さをAとし、前記荷重を除荷した後の押し込み深さをBとしたとき、B/Aが0.4以上0.65以下であることにより、インク受容層11の硬さと応力緩和性とを両立したものとなる。
【0065】
B/Aが0.4以上0.65以下であれば、本発明の効果を得ることができるが、B/Aは0.45以上0.6以下であるのが好ましく、0.49以上0.56以下であるのがより好ましい。これにより、本発明の効果がより顕著に発揮される。
【0066】
インク受容層11の厚さは、溶媒を除去した後(乾燥後)において、例えば0.5μm以上50μm以下、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは1.5μm以上5μm以下とされる。
【0067】
さらに、本実施形態の粘着フィルム1は、基材10の一方の面上に上記のインク受容層11が積層されており、基材10のインク受容層11とは反対側の面上に粘着剤層12がさらに積層されている。また、粘着剤層12の基材10とは反対側の面上に剥離ライナー13がさらに積層されている。粘着フィルム1が粘着剤層12を有するため、ガラス等の被着体に貼付することができる。
【0068】
(粘着剤層)
粘着剤層12としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤から形成された層が挙げられる。例えば、粘着フィルム1をウィンドウディスプレイの用途等に用いる場合には、耐候性等の観点からアクリル系粘着剤から形成された粘着剤層であってもよい。また、被着体から再剥離することが要求される場合には、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤から形成された粘着剤層であってもよい。
【0069】
粘着剤層12には、必要に応じて、紫外線吸収剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、シランカップリング剤、充填剤等のその他の成分が配合されていてもよい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0070】
粘着剤層12の厚さは、例えば5μm以上100μm以下とされ、好ましくは10μm以上50μm以下とされる。
【0071】
(剥離ライナー)
剥離ライナー13としては、特に制限されず、粘着フィルムの分野で通常使用されるものであってよい。剥離ライナー13としては、例えば、フィルム基材又は紙基材の表面に剥離層が設けられたものが挙げられる。
【0072】
フィルム基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の各種樹脂フィルムが挙げられる。紙基材としては、ポリエチレンラミネート紙、ポリプロピレンラミネート紙、クレーコート紙、樹脂コート紙、グラシン紙、上質紙等の各種紙材が例示できる。
【0073】
剥離層としては、例えば、シリコーン、長鎖アルキル系樹脂、フッ素系樹脂等の剥離剤を含有するものが挙げられる。
【0074】
<紫外線硬化性インク>
紫外線硬化性インクは、溶剤をほとんど含んでおらず、紫外線の照射により硬化するインクである。
【0075】
紫外線硬化性インクは、基本的な成分として、例えば、光重合性モノマーと、顔料又は染料である着色剤と、重合反応を開始させる光重合開始剤とを含有する。
【0076】
本実施形態において、紫外線硬化性インクは、主としてアクリル樹脂で構成されていることが好ましい。
【0077】
紫外線硬化性インクがアクリル樹脂を有することで、上述したインク受容層11のポリマーが含むアクリル構造とのなじみが良くなり、密着性をさらに高めることができる。
【0078】
光重合性モノマーとしては、例えば、単官能アクリレート、二官能アクリレート、多官能アクリレート及びこれらの混合物を挙げることができる。なお、光重合性モノマーとしては、これら各種アクリレートを一つ又は複数組み合せたアクリルモノマーを用いてもよい。
【0079】
なお、単官能アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)、フェノールEO変性(n=2)アクリレート、2-エチルヘキシルEO変性(n=2)アクリレート、2-ヒドロキシー3-フェノキシプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート(IBXA)、アクリロイルモルホリン(ACMO)等を挙げることができる。
【0080】
二官能アクリレートとしては、例えば、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(NPGDA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート(MANDA)、ビスフェノールA EO変性(n=4)ジアクリレート(A-BPE4)等を挙げることができる。
【0081】
多官能アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、トリメチロールプロパンPO変性(n=3)トリアクリレート(TMPPOA)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)等を挙げることができる。
【0082】
また、着色剤としては、本実施形態では、公知の顔料及び染料の何れかを用いればよく、その種類等は特に限定されるものではない。
【0083】
さらに、光重合開始剤は、一般的に、紫外線(UV)照射により重合反応を開始させるものである。このような光重合開始剤としては、例えば、一剤又は複数の混合剤である光重合開始剤を用いてもよく、光重合開始剤と光増感剤とを組み合せたものを用いてもよい。例えば、励起波長の異なる複数の光重合開始剤を組み合せたものや、これに光増感剤を添加したものであってもよい。
【0084】
なお、上述した紫外線硬化性インクに、他の成分として、例えば、各種の分散剤、安定剤、界面活性剤等の従来公知のものを必要に応じてさらに配合することができる。
【0085】
このような粘着フィルム1には、インク受容層11に紫外線硬化性インクを付与して、種々の図柄、文字、記号等を印刷した後に、紫外線を照射して硬化させることにより硬化させ、印刷体とすることができる。印刷方法としては特に限定されるものではないが、例えばインクジェットプリンタを用いることが好ましい。
【0086】
インク受容層11中のポリマーが炭素-炭素不飽和結合を残していることにより、紫外線硬化性インクが付与されたときに、インク受容層11と紫外線硬化性インクとの結合を促し、密着性をより高めることができる。
【0087】
使用時には、剥離ライナー13を剥がして、ガラス等の被着体に貼着される。このとき、粘着フィルム1と貼り付け面との間に気泡等が混入しないように、スキージーで表面をならしながら貼着されることが一般的に行われるが、インク受容層11は高い硬度を有しているため、表面に微小な傷がつくことが防止される。本実施形態の粘着フィルム1の用途は特に限定されるものではないが、例えば、店頭における広告などが印刷されたディスプレイ用粘着フィルムとして好適である。
【0088】
[フィルムの製造方法]
次に、このようなフィルム(粘着フィルム1)の製造方法について説明する。
【0089】
本発明のフィルムの製造方法は、紫外線硬化性インクが付与されるフィルムの製造方法であって、基材10を用意する用意工程と、基材10上に、紫外線を照射して硬化させることにより、紫外線硬化性インクが付与され、基材10よりも硬質なインク受容層11となるインク受容層形成材料を塗布する塗布工程と、インク受容層形成材料に紫外線を照射してインク受容層形成材料を硬化させてインク受容層11を形成する硬化工程と、を有し、硬化工程後のインク受容層形成材料は、アクリル構造と、炭素-炭素不飽和結合とを含むことを特徴とする。
【0090】
以下、各工程順に説明する。
(用意工程)
上述したような基材10を用意する。
【0091】
この基材10には、その一方の面に設けられるインク受容層11との密着性を向上させる目的で、インク受容層11が設けられる面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法はプラスチックフィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。また、プライマー層を設けることもできる。
【0092】
(塗布工程)
基材10上に、インク受容層形成材料を塗布する。
【0093】
インク受容層形成材料の塗布は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0094】
インク受容層11は、基材10の一方面上のみに形成されていてもよく、基材10の両面上に形成されていてもよい。
【0095】
(硬化工程)
インク受容層形成材料に紫外線を照射してインク受容層形成材料を硬化させてインク受容層11を形成する。インク受容層形成材料は、紫外線を照射して硬化させることにより、基材よりも硬質なインク受容層となる。
【0096】
紫外線を照射する場合には、取り扱いの容易さから波長200nm以上380nm以下程度の紫外線を用いればよい。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、UV-LEDなどが用いられる。
【0097】
ここで、従来はポリマーの炭素-炭素不飽和結合を実質的にすべて反応させて硬化していた。本発明では、紫外線の照射量を調整(半キュア)することで、ポリマーの炭素-炭素不飽和結合をすべて反応させず、少なくとも一部を未反応で残すことができる。ポリマーに紫外線を照射しているので、モノマーに紫外線を照射する場合に比べて炭素-炭素不飽和結合を残しやすい。
【0098】
具体的に、硬化工程における紫外線の照射量は、150mJ/cm2以上250mJ/cm2以下であることが好ましい。紫外線の照射量が少なすぎると、インク受容層形成材料の硬化反応が十分に進まない。一方、紫外線の照射量が多すぎると、インク受容層形成材料のポリマーの不飽和結合がほとんど反応してしまい、本発明の目的を達成できない。紫外線の照射量を上記範囲とすることで、インク受容層形成材料のポリマーの不飽和結合を適度に残しつつ、インク受容層形成材料を硬化させることができる。
【0099】
紫外線は、インク受容層11の全面に照射してもよい。これによりインク受容層11をハードコート化することができる。
【0100】
このようにして形成されたインク受容層11は、アクリル構造と、炭素-炭素不飽和結合とを含むポリマーを含む材料で構成されたものとなる。
【0101】
さらに、基材10のインク受容層11とは反対側の面上に粘着剤層12を形成する粘着剤層形成工程と、粘着剤層12の基材10とは反対側の面上に剥離ライナー13を積層する剥離ライナー積層工程とを、さらに有していてもよい。粘着剤層12および剥離ライナー13の形成・積層方法としては特に限定されるものではなく、公知の方法により行うことができる。
【0102】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例】
【0103】
以下に具体的な実施例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に温度条件を示していない処理は、室温(23℃)、相対湿度50%において行ったものである。また、各種測定条件についても特に温度条件を示していないものは、室温(23℃)、相対湿度50%における数値である。
【0104】
(実施例1)
(1)インク受容層形成材料の調整工程
紫外線硬化モノマーと、紫外線硬化ポリマーと、光重合開始剤と、表面調整剤とから、インク受容層形成材料を調製した。
【0105】
具体的には、紫外線硬化モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を50重量部と、紫外線硬化ポリマーとして紫外線硬化型アクリルポリマー(大成ファインケミカル社製 8KX-089)を50重量部と、光重合開始剤としてアルキルフェノン系光重合開始剤を10重量部と、表面調整剤としてポリアクリル系表面調整剤を0.1重量部とを、トルエンに溶解又は分散させてインク受容層形成材料(固形分濃度40重量%)を調製した。
【0106】
(2)インク受容層形成材料の塗布工程
次いで、インク受容層形成材料を、基材として、易接着層付のPETフィルム(膜厚50μm)の易接着層面に、マイヤーバーを用いて、乾燥後の膜厚が2μmとなるように塗布した。
【0107】
(3)乾燥工程
次いで、基材に塗布したインク受容層形成材料に含まれる溶媒を除去した。
【0108】
すなわち、熱風乾燥装置を用いて、70℃、1分間の条件で加熱乾燥し、溶媒を十分に除去した。
【0109】
(4)硬化工程
次いで、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を170mJ/cm2で照射して、インク受容層形成材料を光硬化させてインク受容層を形成し、フィルムを得た。
【0110】
得られたインク受容層を構成するポリマーのIRスペクトルにより、炭素-炭素不飽和結合が残存していることを確認した。
【0111】
(実施例2)
紫外線硬化ポリマーとして紫外線硬化型アクリルポリマー(大成ファインケミカル社製 8KX-078)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてインク受容層形成材料を調製し、フィルムを作製した。
【0112】
得られたインク受容層を構成するポリマーのIRスペクトルにより、炭素-炭素不飽和結合が残存していることを確認した。
【0113】
(実施例3)
紫外線硬化モノマーとしてジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)を用い、紫外線硬化ポリマーとして紫外線硬化型アクリルポリマー(大成ファインケミカル社製 8KX-089)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてインク受容層形成材料を調製し、フィルムを作製した。
【0114】
得られたインク受容層を構成するポリマーのIRスペクトルにより、炭素-炭素不飽和結合が残存していることを確認した。
【0115】
(実施例4)
紫外線硬化モノマーを用いず、紫外線硬化ポリマーとして紫外線硬化型アクリルポリマー(大成ファインケミカル社製 8KX-078)を単体で用いたこと以外は、実施例1と同様にしてインク受容層形成材料を調製し、フィルムを作製した。
【0116】
得られたインク受容層を構成するポリマーのIRスペクトルにより、炭素-炭素不飽和結合が残存していることを確認した。
【0117】
(実施例5)
紫外線硬化モノマーを用いず、紫外線硬化ポリマーとして紫外線硬化型アクリルポリマー(大成ファインケミカル社製 8KX-089)を単体で用いたこと以外は、実施例1と同様にしてインク受容層形成材料を調製し、フィルムを作製した。
【0118】
得られたインク受容層を構成するポリマーのIRスペクトルにより、炭素-炭素不飽和結合が残存していることを確認した。
【0119】
(実施例6)
紫外線硬化モノマーを用いず、紫外線硬化ポリマーとして紫外線硬化型ウレタンアクリルポリマー(大成ファインケミカル社製 8BR)を単体で用いたこと以外は、実施例1と同様にしてインク受容層形成材料を調製し、フィルムを作製した。
【0120】
得られたインク受容層を構成するポリマーのIRスペクトルにより、炭素-炭素不飽和結合が残存していることを確認した。
【0121】
(実施例7)
紫外線硬化モノマーを用いず、紫外線硬化ポリマーとして紫外線硬化型ウレタンポリマー樹脂(大成ファインケミカル社製 8UH)を単体で用いたこと以外は、実施例1と同様にしてインク受容層形成材料を調製し、フィルムを作製した。
【0122】
得られたインク受容層を構成するポリマーのIRスペクトルにより、炭素-炭素不飽和結合が残存していることを確認した。
【0123】
(比較例1)
表面に易接着処理が施された易接着層付のPETフィルムを、比較例1のフィルムとした。
【0124】
(比較例2)
表面に易接着処理が施されていないPETフィルムを、比較例2のフィルムとした。
【0125】
(比較例3)
紫外線硬化ポリマーを用いず、紫外線硬化モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を単体で用いたこと以外は、実施例1と同様にしてインク受容層形成材料を調製し、フィルムを作製した。
【0126】
得られたインク受容層を構成するポリマーのIRスペクトルにより、炭素-炭素不飽和結合が残存していることを確認した。
【0127】
(比較例4)
実施例1と同様にしてインク受容層形成材料を調製した。
【0128】
インク受容層形成材料を基材上に塗布し、次いで、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を260mJ/cm2で照射して、インク受容層形成材料を光硬化させてインク受容層を形成し、フィルムを作製した。
【0129】
得られたインク受容層を構成するポリマーのIRスペクトルにより、炭素-炭素不飽和結合がすべて反応し、残存していないことを確認した。
【0130】
(比較例5)
実施例1と同様にしてインク受容層形成材料を調製した。
【0131】
インク受容層形成材料を基材上に塗布し、次いで、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を140mJ/cm2で照射して、インク受容層形成材料を光硬化させてインク受容層を形成し、フィルムを作製した。
【0132】
得られたインク受容層を構成するポリマーのIRスペクトルにより、炭素-炭素不飽和結合が残存していることを確認した。
【0133】
[物性評価]
上記の各実施例および各比較例で作製されたフィルムについて、以下のような評価試験を行った。
【0134】
(1)インク受容層に対する負荷-除荷試験
島津製作所製ダイナミック超微小硬度計(DUH-W201S)を、また圧子には稜間角115°の三角錐圧子を使用し、フィルムに対し、負荷-除荷試験を行った。
【0135】
具体的には、荷重が10mNになるまで負荷を与えてインク受容層を押し込み、1秒間保持した際の押し込み深さをAとし、除荷した後の押し込み深さをBとし、B/Aの値を測定した。評価結果を表1に示す。
【0136】
(2)耐擦傷性(耐スチールウール硬度)の測定
スチールウール#0000を、フィルム表面に一定荷重下で押しつけ、10往復(長さ10cm、速度10cm/s)摩擦し、耐擦傷性(傷が付かなかった)があった最大荷重を測定し、以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
【0137】
◎:最大荷重が250g/cm2以上
〇:最大荷重が200g/cm2以上250g/cm2未満
△:最大荷重が100g/cm2以上200g/cm2未満
×:最大荷重が100g/cm2未満
【0138】
(3)インク密着性の測定
(印刷条件)
各実施例および各比較例で得られたフィルムのそれぞれについて、インク受容層面に、UVインクジェットプリンター(富士フィルム社製、Acuity LED 1600)を用いてホワイトのベタ画像を印刷した。
【0139】
(密着性評価)
上記の印刷を行うことにより印刷画像が形成されたフィルムのそれぞれを、23℃、相対湿度50%の環境下に24時間静置した。その後、印刷画像が形成されたフィルムの印刷画像が形成された側の面に、JIS K 5600-5-6:1999(ISO 2409:1992)のクロスカット法に基づき、カット間隔1mm、カットライン11本×11本としてマス目数100のクロスカット部を作製し、紫外線硬化性インクとフィルムとの密着性を評価した。クロスカット部にニチバン社製セロテープ(登録商標)を貼付し、テープ引きはがし後に残存するマス目の数をxとして、残存率をx/100で表した。x/100の値が80/100以上を合格とし、以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
【0140】
◎:x/100の値が95以上
〇:x/100の値が90以上95未満
△:x/100の値が80以上90未満
×:x/100の値が80未満
【0141】
【0142】
表1から明らかなように、インク受容層が、アクリル構造と炭素-炭素不飽和結合とを含むポリマーを含む材料で構成された実施例では、紫外線硬化性インクとの密着性が高く、また十分な硬度をもち耐傷性にも優れていることがわかる。
【0143】
本発明によるフィルムを用いることで、付与される紫外線硬化性インクとの密着性が向上したフィルムとなり、店頭における広告などが印刷されたディスプレイ用フィルムとして広く利用することができる。
【符号の説明】
【0144】
1 粘着フィルム(フィルム)
10 基材
11 インク受容層
12 粘着剤層
13 剥離ライナー