(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】調整可能な減衰力を有する振動ダンパ
(51)【国際特許分類】
F16F 9/34 20060101AFI20220520BHJP
F16F 9/46 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
F16F9/34
F16F9/46
(21)【出願番号】P 2018076617
(22)【出願日】2018-04-12
【審査請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】10 2017 209 609.8
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マンガー
(72)【発明者】
【氏名】ベルント・ツァイスナー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス・ルーマン
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-063076(JP,A)
【文献】特開平11-030264(JP,A)
【文献】特開平06-330977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00- 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動方向毎にそれぞれ少なくとも1つの調整可能な減衰弁(3;5)を有し、補償室(23)と作動室(13;15)の間の流体接続部(25;27)が、逆止弁体(49)を備える逆止弁(45;47)によって制御され、この逆止弁が、調整可能な減衰弁(3;5)に対して並列に油圧接続され、逆止弁(45;47)が、
作動室(13;15)を構成するシリンダチューブ(7)と、シリンダチューブ(7)と共に補償室(23)を構成する容器チューブ(17)との間に配置された、シリンダチューブ(7)と共に流体接続部(25;27)を構成する中間チューブ(29;31)によって保持され、この中間チューブが、接続された調整可能な減衰弁(3;5)への接続口(37;39)を備える、調整可能な振動ダンパ(1)において、
逆止弁(45;47)の逆止弁体(49)が、
接続口(37;39)を構成する接続管(41;43)に支持されること、
及び、逆止弁体(49)が、調整可能な減衰弁(3;5)への永続的に開放された1つの排出口(55)と、これに対して半径方向外側に位置をずらして形成された少なくとも1つの戻し口(57)を備えること、を特徴とする調整可能な振動ダンパ。
【請求項2】
逆止弁体(49)が、接続管(41;43)を
接続管(41;43)の半径方向外側から包囲すること、を特徴とする請求項
1に記載の調整可能な振動ダンパ。
【請求項3】
逆止弁体(49)が、接続口(37;39)に係合すること、を特徴とする請求項
1に記載の調整可能な振動ダンパ。
【請求項4】
逆止弁体(49)が、接続管(41;43)と軸方向に重なったガイドスリーブ(51)を備えること、を特徴とする請求項
2又は
3に記載の調整可能な振動ダンパ。
【請求項5】
逆止弁体(49)が、支持面(59)を備え、この支持面を介して、逆止弁体(49)が、中間チューブ(29;31)に支持されること、を特徴とする請求項
1に記載の調整可能な振動ダンパ。
【請求項6】
逆止弁体(49)が、調整可能な減衰弁(3;5)への移行管(61)によって保持されること、を特徴とする請求項1に記載の調整可能な振動ダンパ。
【請求項7】
移行管(61)と逆止弁体(49)が、互いに不動に結合可能であること、を特徴とする請求項
6に記載の調整可能な振動ダンパ。
【請求項8】
逆止弁(45;47)の閉鎖バネ(63)が、移行管(61)に支持されること、を特徴とする請求項
6に記載
の調整可能な振動ダンパ。
【請求項9】
閉鎖バネ(63)が、移行管(61)に半径方向に支持されること、を特徴とする請求項
6に記載の調整可能な振動ダンパ。
【請求項10】
反ピストンロッド側の作動室(15)の圧縮運動を減衰させるために、調整可能な減衰弁(5)に対して逆止弁(47)が並列に接続され、反ピストンロッド側の作動室(15)が、終端側の閉じた底(19)を介して補償室(23)に対して分離されていること、を特徴とする請求項1に記載の調整可能な振動ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に応じた調整可能な減衰力を有する振動ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第10 2005 053 394号明細書には、ピストンロッド退出運動を減衰させるための第1の調整可能な減衰弁と、ピストンロッド進入運動を減衰させるための第2の減衰弁とを備える、調整可能な減衰力を有する振動ダンパが記載されている。厳密に別々に接続可能な両減衰弁は、非常に高い特性曲線の多様性の利点を提供する。しかしながら、他方では、中間チューブの部分としてリング状の逆止弁を使用することに起因する、比較的大きい容器直径の欠点が生じる。
【0003】
前記逆止弁は、調整可能な減衰弁と、作動室と接続された減衰弁との間の流体通路と、補償室との間の流れを管理するために使用される。両調整可能な減衰弁は、主貫流方向を有し、共通の補償室に接続されている。逆止弁は、補償室を介したピストンロッド側の作動室と反ピストンロッド側の作動室の間の油圧的な短絡を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第10 2005 053 394号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、大きい容器直径の問題が解決されているように、汎用の振動ダンパを発展させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、逆止弁の逆止弁体が、少なくとも間接的に接続口の領域に支持されること、によって解決される。
【0007】
逆止弁のこの立体的な配置により、振動ダンパの直径を縮小することができる。
【0008】
具体的には、逆止弁体は、接続口を構成する接続管に支持される。従って、中間チューブに逆止弁用の別の保持面を設ける必要はない。
【0009】
1つの実施形態の場合は、逆止弁体が、接続管を外側から包囲する。このバリエーションは、接続管の流れ横断面を限定するものではなく、これは、特に補償室から作動室への還流に対して有利である。何故なら、キャビテーションが生じ得ないからである。
【0010】
選択的に、逆止弁体が、接続口に係合すること、を企図できる。このタイプは、前記バリエーションよりもさらに省スペースである。
【0011】
逆止弁体は、接続管と軸方向に重なったガイドスリーブを備える。これにより、逆止弁体は、振動ダンパの主軸に対して軸方向に固定されている。
【0012】
できるだけ省取付けスペースな形成を顧慮して、逆止弁体は、調整可能な減衰弁への永続的に開放された1つの排出口と、これに対して半径方向に位置をずらした少なくとも1つの戻し口を備える。半径方向の配置に起因して、逆止弁体の造形は単純であり、従ってまた単純に例えば焼結部品として製造することもできる。
【0013】
できるだけ絞りの少ない還流を顧慮した別の措置として、少なくとも1つの戻し口は、永続的に開放された排出口の半径方向外側に形成されている。
【0014】
機械的な固定をするための別の措置として、逆止弁体は、支持面を備え、この支持面を介して、逆止弁体が、中間チューブに支持される。
【0015】
別の支承箇所に関して、逆止弁体が、調整可能な減衰弁への移行管によって保持されること、が企図されている。
【0016】
予組立てされた構造ユニットを顧慮して、移行管と逆止弁体は、互いに不動に結合可能である。これにより、この構造ユニットは、簡単に中間チューブに固定することができる。
【0017】
有利には、逆止弁の閉鎖バネが、移行管に支持される。閉鎖バネは、逆止弁ディスクの所定の運転位置を、従って所定の操作モードを保証する。
【0018】
閉鎖バネは、移行管に半径方向に支持される。従って、逆止弁は、完全に予組立てし、振動ダンパ外でその機能性を試験することができる。
【0019】
1つのタイプの場合、反ピストンロッド側の作動室の圧縮運動を減衰させるために、調整可能な減衰弁に対して逆止弁が並列に接続され、反ピストンロッド側の作動室が、終端側の閉じた底を介して補償室に対して分離されていること、が企図されている。振動ダンパにおいて通常の、逆止弁機能を有する底弁は、もはや設けられていないので、ピストンロッドのためのストロークパスの利得が達成され得る。
【0020】
以下の図面の説明により、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】2つの調整可能な減衰弁を有する振動ダンパの全体図
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、作動方向毎にそれぞれ少なくとも1つの調整可能な減衰弁3;5を有する調整可能な振動ダンパ1を示す。このような調整可能な減衰弁3;5は、たとえば独国特許出願公開第10 2013 218 658号明細書から公知である。シリンダチューブ7内に、ピストンロッド9は、ピストン9と共に軸方向に移動可能に案内されている。ピストン11は、シリンダチューブ7をピストンロッド側と反ピストンロッド側の作動室13;15に分割する。分割は、特に空間形成に関するものであると理解すべきである。オプションで、ピストン11に、減衰弁又はリリーフ弁を形成することもできる。
【0023】
シリンダチューブ7は、外側の容器チューブ17によって包囲されている。終端側の底19とピストンロッドガイド21は、容器中部17とシリンダチューブ7の両方を閉鎖する。シリンダチューブ7と容器チューブ17の間の環状空間は、補償室23を構成し、この補償室は、部分的に減衰媒体で満たされ、また部分的に圧縮ガスで満たされている。補償室23は、ピストンロッド運動時のピストンロッド9によって排除された容積を補償するものであり、即ち、作動室13;15の容積増大は、常に、補償室23から該当する作動室への減衰媒体の取出しと結び付いている。
【0024】
ピストンロッド側の作動室13と両調整可能な減衰弁3;5の第1の減衰弁との間に、第1の流体接続部25が存在し、反ピストンロッド側の作動室15と両減衰弁3;5の第2の減衰弁との間に、第2の流体接続部27が存在し、これら流体接続部のために、それぞれ1つの別個の中間チューブ29;31が使用される。各中間チューブ29;31は、シールされたガイド部分33でもってシリンダチューブ7上に載っている。管体35以外に、各中間チューブ29;31は、接続口37;39を有し、この接続口は、接続管41;43によって構成される。各接続口37;41は、直接的に、それぞれ接続された調整可能な減衰弁に到達する。
【0025】
各調整可能な減衰弁3;5に対して、逆止弁45;47が並列に油圧接続されている。第2の減衰弁5の場合は、逆止弁47の機能が、それ自身公知の底弁によって引き受けられる。第1の調整可能な減衰弁3のため、逆止弁45は、流体接続部25を構成する中間チューブ29によって保持される。この場合、逆止弁45の逆止弁体49は、少なくとも間接的に接続口37の領域に、具体的には接続口37を構成する接続管41に支持される。
【0026】
特に
図2からわかるように、逆止弁45の逆止弁体49は、接続管41を外側から包囲する。これにより、接続口37の全横断面が、流れ横断面として使用可能である。
【0027】
このため、逆止弁体49は、接続管41と軸方向に重なったガイドスリーブ51を備える。重なり部は、振動ダンパ1の縦軸53に対する逆止弁45のシール機能及び軸方向の保持機能を担う。
【0028】
逆止弁体49は、調整可能な減衰弁3への永続的に開放された1つの排出口55と、これに対して半径方向に位置をずらした少なくとも1つの還流口57を備える。この場合、還流口57は、永続的に開放された排出口55の半径方向外側に形成されている。これにより、大きい部分円上に配置された貫流開口57のために、比較的大きい全横断面が使用可能である。
【0029】
半径方向の固定のため、逆止弁体49は、支持面59を備え、この支持面を介して、逆止弁体49が中間チューブ29に支持される。更なる支承のため、逆止弁体49は、調整可能な減衰弁3への移行管61によって保持される。移行管61は、カップ状の基本形状を有し、逆止弁体49と不動に結合されている。
【0030】
逆止弁45の閉鎖バネ63は、移行管61の底65に支持される。半径方向にも、閉鎖バネ63は、移行管61に支持される。このため、移行管61の底65から延在する環状の壁65が使用される。
【0031】
ピストンロッド押出し運動時に、ピストンロッド側の作動室13が圧縮される。排除された減衰媒体は、ガイド部分33の直下のシリンダチューブ7内の流体ポート69を介して、第1の調整可能な減衰弁3への第1の流体接続部25へ流れる。減衰媒体が調整可能な減衰弁3を通過したら、減衰媒体は、移行管61の外周面71と容器チューブ側のパイプソケット73によって構成される環状通路75を経て補償室23へ流れることができる。
【0032】
このピストンロッド押出し運動時に、反ピストンロッド側の作動室15が拡大する。作動室15の容積増大は、底弁の部分としての逆止弁47を介して補償室23から減衰媒体が流入することによって補償される。
【0033】
ピストンロッド9がシリンダチューブ7内へ進入すると、減衰媒体は、反ピストンロッド側の作動室15から第2の流体ポート70を介して第2の調整可能な減衰弁5へ排除される。この場合、この場合、調整可能な減衰弁5から補償室23へ流れ、同時に減衰媒体は、補償室23から取り出され、逆止弁45の弁ディスク77の浮上運動に起因して開放される還流口57と、永続的に開放された排出口55とを経て、第1の流体接続部25へ案内される。
【0034】
図3及び4は、第1の流体接続部25と、第1の調整可能な減衰弁3への逆止弁45とに関係させた
図1及び2の構成と同一のバリエーションを示す。反ピストンロッド側の作動室15の圧縮運動を減衰させるための調整可能な減衰弁5に対して並列に、逆止弁47が接続されていることが違いであり、反ピストンロッド側の作動室15は、外側の容器チューブ17の終端側の閉じた底19を介して補償室23に対して分離されている。最終的に、第2の逆止弁47は、全ての点で、第1の調整可能な減衰弁における第1の逆止弁45の機能に対応する。
図1に対する違いは、古典的な底弁が存在しない点にある。底弁を介した補償室23からの流れの代わりに、ここでも、減衰媒体は、接続管43における開放された逆止弁47を経て流れる。
【0035】
図5及び6の概観は、
図1による構成をベースとするバリエーションを示す。逆止弁体49が、接続口37に係合することが違いである。基本的に、逆止弁体49の直径を縮小すること、又は、還流口57の全横断面を拡大することができる。この図により、付加的に、逆止弁45;47用の移行管61と、調整可能な減衰弁3;5への流入管79を、共通の1つのブランクをベースとして寸法設定し得ることが示されている。ブランク、特に永続的な排出口55と、逆止弁45;47の弁ディスク77用の弁座面81の再加工を介してだけ、流入管79から、逆止弁体49を製造することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 振動ダンパ
3 調整可能な減衰弁
5 調整可能な減衰弁
7 シリンダチューブ
9 ピストンロッド
11 ピストン
13 ピストンロッド側の作動室
15 反ピストンロッド側の作動室
17 容器チューブ
19 底
21 ピストンロッドガイド
23 補償室
25 第1の流体接続部
27 第2の流体接続部
29 中間チューブ
31 中間チューブ
33 ガイド部分
35 管体
37 接続口
39 接続口
41 接続管
43 接続管
45 逆止弁
47 逆止弁
49 逆止弁体
51 ガイドスリーブ
53 縦軸
55 排出口
57 還流口
59 支持面
61 移行管
63 閉鎖バネ
65 底
67 壁
69 流体ポート
70 流体ポート
71 外周面
73 パイプソケット
75 環状通路
77 弁ディスク
79 流入管
81 弁座ディスク