(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】テアニン吸着剤
(51)【国際特許分類】
B01J 20/12 20060101AFI20220520BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
B01J20/12 A
B01J20/28 Z
(21)【出願番号】P 2018083935
(22)【出願日】2018-04-25
【審査請求日】2021-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2017148422
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000193601
【氏名又は名称】水澤化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】塚原 大補
(72)【発明者】
【氏名】森谷 まどか
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 祐太
(72)【発明者】
【氏名】村上 達朗
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-010545(JP,A)
【文献】特開2000-344513(JP,A)
【文献】特開2010-095436(JP,A)
【文献】特開2006-212597(JP,A)
【文献】特開2004-049297(JP,A)
【文献】特開2009-072759(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0040762(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28,20/30-20/34
B01D 15/00-15/42
C01B 33/20-39/54
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理物からなり、
水蒸気吸着法により測定されるBET比表面積(A)と窒素吸着法により測定されるBET比表面積(B)との比、(A)/(B)が
1.10~5.00の範囲にあることを特徴とする、テアニン吸着剤。
【請求項2】
Ho≦-3.0の固体酸量が0.10~0.70mmol/g-dry clayの範囲にある、請求項1に記載のテアニン吸着剤。
【請求項3】
窒素吸着法により測定されるBET比表面積の値が65~400m
2/gの範囲にある、請求項1または2に記載のテアニン吸着剤。
【請求項4】
前記(A)/(B)が
1.10~2.80の範囲にある、請求項1~3の何れかに記載のテアニン吸着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶葉中に含まれるアミノ酸の一種であるテアニンの吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
テアニン、即ち、γ-グルタミルエチルアミドは、茶葉中に多く含まれ、お茶の旨味成分の一つとして知られている。また、テアニンは、リラックス効果、抗ストレス効果、睡眠の質改善効果を有していることも報告されており、例えば、特許文献1には、テアニンを脳機能改善剤として使用することが提案されており、さらに、各種サプリメントや飲料などに添加して販売もされている。
【0003】
上記の特許文献1には、テアニンは、植物または微生物などの培養法により生合成されることや茶葉から抽出されること、さらには化学合成できることも記載されている。しかるに、生合成や化学合成などによりテアニンを得ることは、高コストとなってしまうため、工業的には茶葉からの抽出によりテアニンを得ることが望まれる。
【0004】
ところで、特許文献2には、活性炭、酸性白土、活性白土を用いて緑茶(茶成分抽出水性液)を精製することにより、カテキンとテアニンを高濃度で含む緑茶が開示されている。このことから理解されるように、酸性白土(ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土)や活性白土(酸性白土の酸処理物)は、テアニンに対して吸着性を有していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平05-068578号
【文献】特開2009-274969号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等は、テアニンの吸着剤について検討した結果、酸処理の程度が調整されて得られたジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理物が、テアニンの水溶液からテアニンを有効に吸着し得るという極めて意外な知見を得た。
【0007】
従って、本発明の目的は、テアニンの水溶液からテアニンを有効に吸着し得るテアニン吸着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理物からなり、水蒸気吸着法により測定されるBET比表面積(A)と窒素吸着法により測定されるBET比表面積(B)との比、(A)/(B)が1.10~5.00の範囲にあることを特徴とする、テアニン吸着剤が提供される。
【0009】
本発明のテアニン吸着剤においては、
(1)Ho≦-3.0の固体酸量が0.10~0.70mmol/g-dry clayの範囲にあること、
(2)窒素吸着法により測定されるBET比表面積の値が65~400m2/gの範囲にあること、
(3)前記(A)/(B)が1.10~2.80の範囲にあること、
が好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明において、テアニン吸着剤として用いるジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理物は、種々の用途に使用されている従来公知の活性白土と呼ばれる領域までの酸処理をせず、それよりも弱いレベルで酸処理されているものである。即ち、特許文献2に記載されているように、酸処理されていないジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土(酸性白土)や、あるレベル以上に酸処理されている活性白土は、テアニン吸着剤としては全く機能しないのであるが、本発明では、あるレベル以下に酸処理の程度が調整されている結果、テアニンの水溶液からテアニンを有効に吸着することができる。
【0011】
従って、茶葉が投入されている茶成分抽出水性液や、酵素等を用いての合成反応等により得られたテアニンを含む水溶液に、本発明のテアニン吸着剤を投入することにより、これらの液中からテアニンを吸着することができる。
【0012】
また、本発明のテアニン吸着剤は、酸性白土に比して濾過性も高く、吸着処理後の溶液から容易に分離され、かかる使用済み吸着剤からテアニンを放出させることにより、テアニンを容易に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1で用いた本発明の吸着剤の面指数(06)に由来するX線回折チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<テアニン吸着剤(弱酸処理白土)>
本発明の吸着剤は、ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理物からなるものであるが、一般的に活性白土と称されるものに比して弱い酸処理によって得られ、弱酸処理白土というべきものである。従って、以下、テアニン吸着剤として使用される酸処理物を「弱酸処理白土」と呼ぶことがある。
例えば、本出願人による特開2009-072759には、ジオクタヘドラル型粘土を酸処理して得られる半活性白土と呼ばれる酸処理物がポリ乳酸解重合用触媒として使用されることが開示されているが、本発明で使用する弱酸処理白土は、この半活性白土よりも更に弱い酸処理によって得られる。
即ち、本発明で吸着剤として用いる上記の弱酸処理白土は、ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の結晶構造に由来する特有のX線回折ピークを示し、例えば、X線回折測定において、面指数(06)に由来する回折ピークを2θ=62度(d=1.49~1.50Å)付近に有している。
【0015】
かかる弱酸処理白土は、ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理レベルが非常に低いため、水蒸気吸着法により測定されるBET比表面積(A)と窒素吸着法により測定されるBET比表面積(B)との比(A)/(B)が0.90以上であり、吸着性の観点から、好ましくは1.10以上、特に好ましくは1.20以上である。また、5.00以下であり、濾過性の観点から、好ましくは4.20以下、特に好ましくは3.30以下、最も好ましくは2.80以下である。
【0016】
本発明においては、かかる弱酸処理白土が、上記範囲のBET比表面積比(A/B)を有することが、テアニンに対して優れた吸着性能を発揮する一因であるものと推察される。
即ち、BET比表面積を測定する方法として、窒素を用いた方法(窒素法)が一般的であるが、水蒸気を用いて測定する方法(水蒸気法)も存在する。粘土ハンドブック(第三版)によれば、窒素法では、単位質量当たりの端面を含む全外部表面積が測定され、ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土のように三層構造を有するものでは、窒素分子が液体窒素温度で層間に侵入しないので、外部表面積のみが測定される。一方、水蒸気のような極性の吸着質を用いた水蒸気法においては、かかる吸着質が粘土の層間に十分侵入するので、内部表面が測定される。従って、A/Bが上記範囲内にあるということは、非常に弱い酸処理によって微細孔が増大し、且つ、スメクタイト系粘土の基本三層の層間が拡大していることを意味している。微細孔の増大はテアニンのような比較的分子の小さいアミノ酸化合物に対する選択吸着性を向上させ、基本三層の層間の拡大は、適度な表面親水性をもたらし、水溶液中からのテアニンに対する吸着性を高めている。
即ち、上記A/Bの値を有する本発明の吸着剤(弱酸処理白土)は、酸処理工程において基本三層の層間の適度な拡大と層間内での微細孔の形成がバランスよく生じるため、テアニンに対して極めて高い選択吸着性を示すものと信じられる。
例えば、強い酸で処理して得られる従来公知の活性白土や半活性白土では、基本三層の層間の拡がりが大きくなり、しかも層間に形成されている微細孔をつぶしてしまう。そのため、A/Bの値は小さくなり、従って、特許文献2にも記載されているようにテアニンに対する吸着性はほとんど示さない。
【0017】
また、本発明において吸着剤として用いる上記の弱酸処理白土は、弱いながらも酸処理されているため、窒素法によるBET比表面積が、酸処理を施していないスメクタイト系粘土に比して向上しており、好適には65~400m2/g、特に好適には100~400m2/gの範囲にある。
【0018】
さらに、本発明において吸着剤として用いる弱酸処理白土は、一般的に活性白土と称されるものに比して弱い酸処理によって得られるため、固体酸点として働くAlやMgを覆っているNa分やCa分が取り除かれ、さらには、酸処理の進行に伴ってAl分やMg分が溶出することに起因する固体酸量の減少が抑えられている。その結果、従来の酸処理で得られる一般的に活性白土と称されるもの、或いは、酸処理を行っていない酸性白土に比して同等以上の固体酸量を示す。例えば、Ho≦-3.0の固体酸量が0.10~0.70mmol/g-dry clayの範囲にあり、比較的強い固体酸を多く含んでいる。
上記の弱酸処理白土が、このような強い固体酸を多く含んでいることも、テアニンに対して優れた吸着性を示す要因であると考えられる。
【0019】
即ち、上記の弱酸処理白土を水溶液中に投入すると、水溶液のpHは低下する。
一方、テアニンはアミノ酸であり、水溶液中では、陽イオン、双性イオン及び陰イオンが平衡状態にあり、水溶液中のpH変化にしたがって平衡移動を生じる。
例えば、テアニンを、H2N-C(R)H-COOHで表したとき、pHが高い側(塩基性側)からpHが低い側(酸性側)に移行するにしたがい、テアニンの平衡は、
H2N-C(R)H-COO- (陰イオン)
→ H3N+-C(R)H-COO- (双イオン)
→ H3N+-C(R)H-COOH (陽イオン)
に移行する。即ち、強い固体酸を含んでいる本発明の吸着剤(弱酸処理白土)を水溶液中に添加することにより、テアニンの平衡は、陽イオン側に移行し、陽イオンが増加する。従って、このテアニンの陽イオンが弱酸処理白土の層間に有する負電荷により捕捉され、この結果、テアニンの吸着性が発現することとなる。このように、弱酸処理白土が強い固体酸を有していることも、テアニンに対しての吸着性が発現している要因であると推定される。
【0020】
さらに、かかる弱酸処理白土は、酸処理を施されているために優れた濾過性を有する。
酸処理を施していないスメクタイト系粘土(酸性白土)は、基本層の間にNa等のカチオンを含む大きな層間を有しているために、水に対して高い膨潤性を示し、膨潤による微分散化によって濾過性が悪いと考えられている。しかるに、本発明で用いる弱酸処理白土の場合、スメクタイト系粘土中の塩基成分の一部が酸と反応し、ある種、水やアルコールなどに対して不溶性のバインダーとなって粒子間を結合するために、溶液中での微分散化が抑制され、優れた濾過性を示すものと考えられる。
よって、酸処理の程度が弱いほどA/Bが大きくなり、濾過性が損なわれる虞がある。
【0021】
<弱酸処理白土の製造>
上記のような特性を有する弱酸処理白土は、ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土を粗砕、混練して所定濃度の酸水溶液を用いて、所定の条件で酸処理することにより製造される。即ち、この弱酸処理白土は、半活性白土と同様にして得られるが、半活性白土に比してマイルドな条件での酸処理によって得られるものである。
【0022】
原料粘土として用いるジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土は、火山岩や溶岩等が海水の影響下で変成したものと考えられており、主要成分であるジオクタヘドラル型スメクタイトはSiO4四面体層-AlO6八面体層-SiO4四面体層からなり、且つこれらの四面体層と八面体層が部分的に異種金属で同形置換された三層構造を基本構造(単位層)としており、このような三層構造の積層層間には、Ca,K,Na等の陽イオンや水素イオンとそれに配位している水分子が存在している。また、基本三層構造の八面体層中のAlの一部にMgやFe(II)が置換し、四面体層中のSiの一部にAlが置換しているため、結晶格子はマイナスの電荷を有しており、このマイナスの電荷が基本層間に存在する金属陽イオンや水素イオンにより中和されている。このようなスメクタイト系粘土には、酸性白土、ベントナイト、フラーズアース等があり、基本層間に存在する金属陽イオンの種類や量、及び水素イオン量等によってそれぞれ異なる特性を示す。例えば、ベントナイトでは、基本層間に存在するNaイオン量が多く、このため、水に懸濁分散させた分散液のpHが高く、一般に高アルカリサイドにあり、また、水に対して高い膨潤性を示し、さらにはゲル化して固結するという性質を示す。一方、酸性白土では、基本層間に存在する水素イオン量が多く、このため、水に懸濁分散させた分散液のpHが低く、一般に酸性サイドにあり、また、水に対して膨潤性を示すものの、ベントナイトと比較すると、その膨潤性は総じて低く、ゲル化には至らない。
【0023】
本発明において、弱酸処理白土の製造に用いるジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土は、特に限定されるものではなく、上述した各種の何れをも使用することができる。また、かかる原料粘土は、粘土の成因、産地及び同じ産地でも埋蔵場所(切羽)等によっても相違するが、一般的には、酸化物換算で以下のような組成を有している。
SiO2;50~75質量%
Al2O3;11~25質量%
Fe2O3;2~20質量%
MgO;2~7質量%
CaO;0.1~3質量%
Na2O;0.1~3質量%
K2O;0.1~3質量%
その他の酸化物(TiO2等);2質量%以下
Ig-loss(1050℃);5~11質量%
【0024】
また、原料粘土は、産地等によっては、石英等の不純物を多く含んでいることもある。従って、上記のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土を、必要により石砂分離、浮力選鉱、磁力選鉱、水簸、風簸等の精製操作に賦して不純物をできるだけ除去した後に酸処理を行うのがよい。このような処理を行った後に、以下に述べるマイルドな条件での酸処理を行うことにより、A/Bが上記範囲内にある弱酸処理白土を得ることができる。
【0025】
酸処理は、酸水溶液中に原料粘土を投入し、混合攪拌することにより行われる。酸処理に用いる酸水溶液は、特に限定されるものではないが、コスト、環境への影響等の観点から硫酸水溶液が一般に使用される。
【0026】
また、かかる酸処理は、既に述べたように、従来公知の活性白土や半活性白土を製造する際の酸処理に比してマイルドな条件下で行われ、例えば硫酸水溶液を使用する場合には、原料粘土中に含まれる水分も硫酸水溶液を構成するものとして算出した硫酸水溶液量が、原料粘土100質量部(110℃乾燥物として)当り250~800質量部、その時の硫酸水溶液の濃度が1~15質量%程度になるような条件で酸処理を行えばよい。酸処理にあたっては、必要により25~95℃程度に加熱することもできる。このようにして、原料の組成、用いる酸水溶液の酸濃度、処理温度等によって、比表面積比(A/B)が所定の範囲となる程度の時間(0.5~12時間程度、好ましくは0.5~8時間程度、特に好ましくは0.5~4時間程度)、酸処理を行えばよい。
【0027】
上記のような酸処理により、窒素法によるBET比表面積と水蒸気法によるBET比表面積の比A/Bや固体酸量、窒素法によるBET比表面積の値が上述の範囲にあり、テアニンに対する吸着性能に優れた本発明の吸着剤(弱酸処理白土)が得られる。
【0028】
また、上述した酸処理によって得られる弱酸処理白土は、一般に、酸化物換算で、下記の化学組成を有している。
SiO2;50~85質量%
Al2O3;8~23質量%
Fe2O3;1~10質量%以下
MgO;1~5質量%以下
CaO;0.1~2質量%以下
Na2O;0.1~1質量%
K2O;0.1~1質量%
その他の酸化物(TiO2等);2質量%以下
Ig-loss(1050℃);4~9質量%
【0029】
<用途>
本発明において吸着剤として使用する弱酸処理白土は、テアニンを含む水溶液からテアニンを有効に吸着することができるため、例えば、茶成分抽出水性液に投入し、この抽出液からテアニンを吸着し、回収することができる。また、酵素や微生物等を用いての各種の合成反応により得られたテアニンを含んでいる水溶液等に投入してテアニンを吸着することもできる。
また、本発明の吸着剤は、一部或いは全部がテアニンから構成されるペプチドが含まれる溶液、またはリン酸塩などの各種塩類と結合しているテアニン化合物が含まれる溶液などに対して、何ら制限なく使用することができる。
【0030】
テアニンが吸着されて液中に存在している本発明の吸着剤は、ろ過により分離回収され、回収された使用済吸着剤から吸着したテアニンを放出させ、これによりテアニンを回収することができる。
吸着したテアニンの放出方法には特に制限がなく、従来公知の溶媒抽出法等により実施することができるが、好ましくは、テアニンが吸着保持されている本発明の吸着剤を、大量の純水中に投入し、超音波振動等の撹拌操作に供することにより吸着したテアニンを放出させ、濃縮または溶媒除去することによりテアニンを回収することができる。
回収されたテアニンは、各種飲料あるいはサプリメント、或いは医薬品などの用途に供される。
【実施例】
【0031】
本発明の優れた効果を、次の実験例により説明する。
【0032】
(1)窒素吸着法によるBET比表面積(B)
マイクロメリティクス社製TriStar 3000を用いて窒素吸着法により測定を行ない、BET法により算出した。なお、前処理は150℃で2時間行った。
【0033】
(2)水蒸気吸着法によるBET比表面積(A)
日本ベル株式会社製BELSORP MAXを用いて水蒸気吸着法により測定を行ない、BET法により算出した。なお、前処理は150℃で2時間行った。
【0034】
(3)pH
イオン交換水に吸着剤濃度が5質量%になるように吸着剤粉末を添加し、30分間撹拌した後、東亜ディーケーケー製pHメーターHM-30Rにて測定を行った。
【0035】
(4)固体酸量
n-ブチルアミン滴定法にてHo≦-3.0の固体酸量を測定した。試料は、予め、150℃で3時間乾燥したものについて測定を行った{参考文献:「触媒」Vol.11,No6,P210-216(1969)}。
【0036】
(5)X線回折
(株)リガク製RINT―UltimaIV(X線=CuKα線)にて測定した。
【0037】
(6)テアニン吸着試験
テアニン吸着能は、0.2g/Lのテアニン水溶液から、1gの吸着剤(無水)が吸着できるテアニン量(mg)とし、下記の方法により測定し、算出した値を表2に示した。
先ず、L―テアニン(東京化成工業(株)製)を蒸留水に溶かし、0.2g/Lのテアニン水溶液を得た。この0.2g/L濃度のテアニン水溶液30gを50ml容量の遠沈管に秤取し、吸着剤1g(対液3.3質量%)を加えて水平振とう式振とう機(アズワン シェイキングバスSB―13)により150rpmで2.5時間振とうした。
次に遠心分離機(日立工機製CR22GIII)により遠心加速度18000rpmで20分処理した液の上澄みを蒸留水により10%に希釈して液(試料液)を得た。試料液の190nm波長光の吸光度を分光光度計(島津製作所製SPECTROPHOTOMETER UV―3600)により測定した。このとき、試験粉末の水溶性塩類等の影響を差し引くため、あらかじめテアニン未溶解の蒸留水に試験粉末を加えて同様の操作をしたときの吸光度を試料液の吸光度から差し引き、試料液の補正吸光度とした。そして、予め作成したテアニン濃度と190nm波長光の吸光度の関係を示す検量線を用いて試料液のテアニン残存量を算出し、吸着剤添加前のテアニン量から差し引いた値を吸着剤のテアニン吸着量とした。
【0038】
(比較例1)
水澤化学工業(株)製の酸性白土ミズカエースNo.20(pH4.9)。
【0039】
(実施例1)
ビーカーに5質量%硫酸水溶液220mlを採り、90℃に加熱した。そこへ比較例1の酸性白土30gを添加し、液温を90℃に維持した状態で撹拌し、30分間酸処理を行った。酸処理終了後、酸処理物を水でろ過洗浄し、洗浄後のろ過ケーキを110℃にて乾燥し、粉砕、分級して弱酸処理白土粉末を得た(pH3.1)。得られた弱酸処理白土粉末をXRD測定装置により測定した。X線回折チャートを
図1に示した。
【0040】
(比較例2)
水澤化学工業(株)製の活性白土ガレオンアースV2(pH3.5)。
【0041】
(比較例3)
水澤化学工業(株)製の二酸化ケイ素ミズカソーブC-6(pH6.5)。
【0042】
(比較例4)
水澤化学工業(株)製の二酸化ケイ素と酸化マグネシウムを主成分とする複合吸着剤ミズカライフF-2G(pH8.9)。
【表1】
【0043】
【0044】
<テアニンの回収試験>
先ず、51mg/L濃度のテアニン水溶液30gを50ml容量の遠沈管に採取し、吸着剤0.5g(対液1.7質量%)を加えて振とう機(ヤマト科学(株)製SA300、振とうスピード5)により2.5時間振とうした。
次に遠心分離機((株)クボタ製7780II)により遠心加速度10000rpmで10分処理した液の上澄みをメンブレンフィルター(ADVANTEC製A045A025A)で濾過した液(試料液)を得た。試料液の193nm波長光の吸光度を分光光度計((株)島津製作所製UV―2600)により測定した。このとき、吸着剤の溶解性塩類等の影響を差し引くため、あらかじめテアニン未溶解の蒸留水30gに0.5gの吸着剤を加えて同様の操作をしたときの吸光度を試料液の吸光度から差し引き、試料液の補正吸光度とした。そして、予め作成したテアニン濃度と193nm波長光の吸光度の関係を示す検量線を用いて試料液のテアニン残存量を算出し、吸着剤添加前のテアニン量から差し引いた値を回収試験におけるテアニン吸着量とした。
試料液を回収した後に残った吸着剤(テアニン含有吸着剤)に蒸留水30gを添加し、振とう機(ヤマト科学(株)製SA300、振とうスピード5)により2.5時間振とうした。
次に遠心分離機((株)クボタ製7780II)により遠心加速度10000rpmで10分処理した液の上澄みをメンブレンフィルター(ADVANTEC製A045A025A)で濾過した液(回収液)を得た。上記吸着試験と同様の操作により補正吸光度を測定し、回収液中のテアニン量を測定した。このテアニン量から残存していた吸着試験液由来のテアニン量を差し引いた値をテアニン回収量とした。
テアニンの回収試験におけるテアニン吸着量と回収量を表3に示した。
【0045】
(実施例2)
比較例1の酸性白土の代わりに、山形県鶴岡市産のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土を用いた他は、実施例1と同様の操作で弱酸処理白土粉末を得た(pH3.3、水蒸気吸着法によるBET比表面積(A);181m2/g、窒素吸着法によるBET比表面積(B);125m2/g、(A)/(B);1.45)。
【0046】
(比較例5)
水澤化学工業(株)製の二酸化ケイ素ミズカソーブC-1。
【0047】
(比較例6)
水澤化学工業(株)製の二酸化ケイ素と酸化マグネシウムを主成分とする複合吸着剤ミズカライフF-1G。
【0048】