(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】放電ランプおよび放電ランプ用電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01J 61/073 20060101AFI20220520BHJP
H01J 61/88 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
H01J61/073 B
H01J61/88 C
(21)【出願番号】P 2018129391
(22)【出願日】2018-07-06
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】林 武弘
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-133994(JP,A)
【文献】特開2006-221934(JP,A)
【文献】特開2007-287705(JP,A)
【文献】特開2013-257968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 61/073
H01J 61/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電管と、
前記放電管内に対向配置される一対の電極とを備え、
少なくとも一方の電極が、
電極先端面側とは逆方向を向く軸方向に沿った筒状凹部と、
前記筒状凹部に囲まれる柱状部と、
少なくとも前記柱状部の側面周囲に軸方向に沿って形成される放熱空間とを備え、
前記筒状凹部の底面と電極先端面とを繋げる貫通孔が、形成されていることを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記放熱空間が、前記筒状凹部の底面と前記柱状部の端面との間に軸垂直方向に沿って形成されている軸垂直方向放熱空間をさらに備え、
前記貫通孔が、前記軸垂直方向放熱空間と繋がっていることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記貫通孔が、電極軸の通る空間領域を有することを特徴とする請求項1または2に記載の放電ランプ。
【請求項4】
前記柱状部および前記筒状凹部の中心軸が、電極軸と一致し、
前記貫通孔が、電極軸を中心軸にして形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項5】
放熱部が、前記柱状部の端面および側面の少なくとも一方に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項6】
前記筒状凹部の底面において、前記貫通孔に向けて電極先端面へ近づく方向に傾斜する傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項7】
前記筒状凹部が、電極先端面を有する先端側部材に形成され、
前記柱状部が、電極支持棒と繋がる後端側部材に形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項8】
電極先端面を有する柱状の先端側固体部材に対して筒状凹部を中心軸回りに形成し、
前記筒状凹部に対し、中心軸周りに貫通孔を形成し、
柱状の後端側固体部材に対し、前記筒状凹部よりもサイズが小さい柱状部を中心軸回りに形成し、
前記柱状部が前記筒状凹部に同軸配置されるように、前記先端側固体部材と前記後端側固体部材とを組み合わせ、
固相接合によって、前記先端側固体部材と前記後端側固体部材とを含む電極を形成することを特徴とする放電ランプ用電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電極を備えた放電ランプに関し、特に、電極の内部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
放電ランプは、点灯中に電極先端部が高温となり、タングステンなどの電極材料が溶融、蒸発し、放電管が黒化して、ランプ照度低下を招く。電極先端部の過熱を防ぐため、耐久性のある金属から成る電極先端部と、熱伝導性のより高い金属から成る胴体部とを別々に成形し、固相接合などによって接合する。例えば、SPSなどの固相接合によって電極を構成することができる(特許文献1参照)。複数の部材を接合して電極を構成することによって、電極が大型化しても耐久性を持たせることができると同時に、熱伝導性の優れた電極を構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
露光対象物の大型化、スループット向上のためにランプの高出力化(大電力化)が求められている。これに伴ってランプ点灯中の電極温度も高くなり、単に先端側部材と胴体部側部材とを固相接合するだけでは、電極過熱を効果的に抑えることが難しい。
【0005】
したがって、放電ランプの点灯中、電極の温度上昇を効果的に抑えることができる電極構造が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の放電ランプは、放電管と、放電管内に対向配置される一対の電極とを備え、少なくとも一方の電極が、電極先端面側とは逆方向を向く軸方向に沿った筒状凹部と、筒状凹部に囲まれる柱状部と、少なくとも柱状部の側面周囲に軸方向に沿って形成される放熱空間とを備える。ここでの「柱状部」および「筒状凹部」は、複数の部材間の接合によって形成された電極を断面で見たときに接触面あるいは接合面を含めて規定される部分であり、例えば、柱状部の端面と筒状凹部底面との接触、非接触は問わない。筒状凹部は、電極先端面を有する先端側部材に形成され、柱状部は、電極支持棒と繋がる後端側部材に形成される。例えば、柱状部および筒状凹部の中心軸が、電極軸と一致するように構成することができる。
【0007】
さらに電極には、筒状凹部の底面と電極先端面とを繋げる貫通孔が形成されている。放熱空間は、筒状凹部の底面と柱状部の端面との間に軸垂直方向に沿って形成されている軸垂直方向放熱空間を含むように構成することが可能である。その場合、貫通孔は、軸垂直方向放熱空間と空間的に繋がる。
【0008】
貫通孔は、電極軸の通る空間領域を含むように構成することが可能である。例えば電極軸と一致する中心軸をもつ貫通孔を形成することが可能である。
【0009】
電極には放熱部を設けることが可能であり、例えば、放熱部は、柱状部の端面および側面の少なくとも一方に形成される。また、筒状凹部の底面において、貫通孔に向けて電極先端面へ近づく方向に傾斜する傾斜面を形成することが可能である。
【0010】
本発明の放電ランプ用電極の製造方法は、電極先端面を有する柱状の先端側固体部材に対して筒状凹部を中心軸回りに形成し、筒状凹部に対し、中心軸周りに貫通孔を形成し、柱状の後端側固体部材に対し、筒状凹部よりもサイズが小さい柱状部を中心軸回りに形成し、柱状部が筒状凹部に同軸配置されるように、先端側固体部材と後端側固体部材とを組み合わせ、固相接合する。例えば、先端側固体部材と後端側固体部材とを直接固相接合する。あるいは、先端側固体部材と後端側固体部材との間に中間部材を挟んで固相接合することも可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、放電ランプにおいて、効果的に放熱を行って電極温度を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態である放電ランプの平面図である。
【
図3】電極の製造工程の一部を簡略して示した図である。
【
図4】第2の実施形態である電極の概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、第1の実施形態である放電ランプの平面図である。
【0015】
ショートアーク型放電ランプ10は、高輝度の光を出力可能な大型放電ランプであり、透明な石英ガラス製の略球状放電管(発光管)12を備え、放電管12内には、タングステン製の一対の電極20、30が対向(同軸)配置される。放電管12の両側には、石英ガラス製の封止管13A、13Bが放電管12と連設し、一体的に形成されている。放電管12内の放電空間DSには、水銀とハロゲンやアルゴンガスなどの希ガスが封入されている。
【0016】
陰極である電極20は電極支持棒17Aによって支持されている。封止管13Aには、電極支持棒17Aが挿通されるガラス管(図示せず)と、外部電源と接続するリード棒15Aと、電極支持棒17Aとリード棒15Aを接続する金属箔16Aなどが封止されている。陽極である電極30についても同様に、電極支持棒17Bが挿通されるガラス管(図示せず)、金属箔16B、リード棒15Bなどのマウント部品が封止されている。また、封止管13A、13Bの端部には、口金19A、19Bがそれぞれ取り付けられている。
【0017】
一対の電極20、30に電圧が印加されると、電極20、30の間でアーク放電が発生し、放電管12の外部に向けて光が放射される。ここでは、1kW以上の電力が投入される。放電管12から放射された光は、反射鏡(図示せず)によって所定方向へ導かれる。例えば露光装置に放電ランプ10が組み込まれた場合、放射光はパターン光となって基板などに照射される。
【0018】
図2は、電極(陽極)30の概略的断面図である。なお、電極(陰極)20についても同様の構造にすることが可能である。
【0019】
電極30は、電極支持棒17Bと繋がる後端側部材32と、電極先端面30Sを有する先端側部材34からなり、後端側部材32と先端側部材34を接合することで電極30が構成されている。ここでは、後端側部材32と先端側部材34がSPSなどの固相接合によって接合されている。
【0020】
後端側部材32は、電極軸X(以下では、軸方向Xともいう)を中心軸とした円柱状の部材であり、電極先端面30Sに向けて突出する柱状部50(ここでは円柱状)が形成されている。先端側部材34では、柱状部50を囲う筒状凹部40が同軸的に形成されている。筒状凹部40は電極先端面30Sとは逆方向を向く、すなわち逆方向に凹んでいる。後端側部材32は、その端部32Eにおいて、先端側部材34の端部34Eと固相接合している。
【0021】
柱状部50と筒状凹部40との間には、軸方向Xおよびそれに垂直な軸垂直方向に沿って、隙間60が柱状部50の周囲全体に渡って形成されている。ここでは、軸垂直方向に沿った隙間部分を60D、軸方向Xに沿った隙間部分を60Vとしている。隙間部分60D、60Vは空間的に繋がっている。
【0022】
柱状部50および筒状凹部40は、ともにその中心軸が電極軸Xと一致し、電極軸Xに対して対称的形状になっている。そして、筒状凹部40の底面40Bも電極軸Xに関して対称的であり、隙間60も電極軸Xに関して対称的空間形状になっている。
【0023】
隙間部分60Vの径方向幅W、すなわち柱状部50の側面50Sと筒状凹部40の側面40Sの径方向距離間隔は、柱状部50の直径Rと比べて短い(W<R)。隙間部分60Dの軸方向幅Tは、ここでは隙間部分60Vの径方向幅Wと同じ幅であり、柱状部50の高さHよりも短い(T<H)。隙間60は電極30内に形成され、有底管状の空間領域になっている。
【0024】
ここでは、径方向幅W、軸方向幅Tは、それぞれ柱状部50の直径R、高さHと比べて十分短く、柱状部50の側面50S、端面50Eは、それぞれ筒状凹部40の側面40S、底面40Bに近接し、隙間60が形成するスペースの容積は、柱状部50の体積よりも小さい。また、隙間60には、伝熱体のような部材は設けられていない。
【0025】
筒状凹部40には、電極軸Xに沿って貫通孔80が形成されている。貫通孔80は、断面円状であって、電極先端面30Sと筒状凹部40の底面40Bとの間に形成され、電極外部と隙間60とを空間的に繋げている。ここでは、貫通孔80の中心軸が電極軸Xと一致している。貫通孔80の直径rは、柱状部50の直径Rよりも小さい。
【0026】
貫通孔80の筒状凹部底面側の端部には、傾斜面70が形成されている。傾斜面70は、筒状凹部40の底面40Bにおいて電極軸Xに垂直な平面と連続的に繋がり、電極先端面30Sに向けて近づく方向、すなわち柱状部50から離れる方向に傾斜している。傾斜面70は、貫通孔80の端部において電極軸Xに関し対称的な環状面として形成され、ここではその傾きが一定である。
【0027】
ランプ点灯中、電極の先端側部材34の温度が上昇し、電極先端側部材34の熱が柱状部50に伝わる。また、柱状部50は、その端面50Eが電極先端面30S付近と空間的に繋がっているため、貫通孔80によってアーク放電の熱を直接吸収する。柱状部50の熱は、隙間60に対して放射され、また電極支持棒17B側へ伝わる。軸方向Xだけでなく軸垂直方向にも移動した熱は、電極外表面30Mから放電空間DSへ伝わる。
【0028】
放熱空間として機能する隙間60を設けることにより、電極先端側の過熱を抑えることができる。特に、隙間60へ放熱する部分の形状を柱状部50とすることによって表面積が増え、熱容量が上がり、電極の温度上昇を効果的に抑えることができる。また、隙間60が、電極軸Xに対して対称的な有底管状空間として形成されることにより、柱状部50の軸方向Xと軸垂直方向、周方向に関して均等に放熱することができ、電極30からの放熱に対しても偏った放熱を防ぐことができる。
【0029】
隙間部分(軸垂直方向放熱空間)60Dの軸方向幅Tは柱状部50の高さHよりも小さい(T<H)。これによって、柱状部50の熱容量が上がるだけでなく、先端側部材34の熱(アーク放電の熱)が柱状部50に伝わりやすくなる。また柱状部50(端面50E)から後端側部材32へ熱を速やかに輸送することができる。一方、隙間部分60Vの径方向幅Wは、柱状部50の直径Rよりも小さく定められている(W<R)。これによって、柱状部50の熱容量が上がるだけでなく、柱状部50(側面50S)の熱が筒状凹部40(側面40S)を経由して電極外表面30M側へ伝わりやすくなる。
【0030】
さらに本実施形態では、電極先端面30Sから柱状部50に向けて貫通孔80が形成されている。これにより、アーク放電が貫通孔80の空間領域周辺で安定する。特に、貫通孔80の直径rが柱状部50の直径Rよりも小さいため、アーク放電が貫通孔80に集中しやすい。その結果、アーク放電の揺らぎが抑えられ、高照度化される。また、電極先端面30Sの中心付近が開口していることにより、電極先端面30Sの消耗を防ぎ、ランプ寿命が長くなる。柱状部50の直径Rが貫通孔80の直径rよりも大きく、その中心軸同士が一致しているため、アーク放電からの熱を柱状部50が受けやすい。さらに、放電空間DS内のガスが、貫通孔80を通じて電極内部に流入、流出する。これによって、電極内部の温度上昇を抑えることができる。
【0031】
一方で、貫通孔80は、電極製造工程時における電極洗浄において、洗浄液を排出する孔として機能する。特に、傾斜面70を設けることにより、洗浄液が残留し、放電管が汚れるのを防ぐことができる。
【0032】
以上のような特徴をもつ電極は、以下のように製造することができる。
【0033】
図3は、電極の製造工程の一部を簡略して示した図である。
【0034】
まず、筒状凹部40を形成した先端側部材34の電極軸垂直方向に沿った底面に対し、中心軸周りに貫通孔80を形成する。また、貫通孔80の底面側端部に対し、その中心軸周りに傾斜面70を形成する。そして、筒状凹部40に収容可能な柱状部50を有し、電極支持棒用の挿入孔32Bを形成した後端側部材32と、先端側部材34とを固相接合する。このとき、柱状部50が筒状凹部40に同軸配置されるように接合する。なお、先端側部材34と後端側部材32との間に中間部材を挟んで接合してもよい。電極には、固相接合によって金属粉末などが電極内部(筒状凹部40内)や電極表面に残ったり、汚れが付着していたりする。これを除去するため、固相接合の後に電極洗浄を行う。具体的には、水やアルコール成分を含む洗浄液によって電極を洗う。例えば、超音波洗浄などが適用できる。隙間60は電極外部と貫通孔80を通じて空間的に繋がっているため、洗浄液が隙間60に入り込む。
【0035】
洗浄後、電極先端面30Sを下側にし、接合した電極に対して乾燥処理を行う。隙間60に残った洗浄液(
図3において符号“K”で示す)は、筒状凹部40の底面40Bに流れ落ち、傾斜面70によって貫通孔80に流れ込み、そのまま電極外部に流れていく。これによって、電極内部に残った洗浄液は電極外部に排出される。乾燥処理が終了すると、定められた時間、温度に従い、熱処理を行う。熱処理後、電極支持棒17Bを挿入孔32Bに挿入する。なお、
図3においては、接合前に先端側部材34と後端側部材32を電極形状に加工しているが、接合後に円錐台部分を形成するなどの電極形状加工を実施してもよく、このときの金属粉末や汚れを洗浄するようにしてもよい。
【0036】
貫通孔80に対しては、面取り加工を行ってもよい(例えば、貫通孔と電極先端面が繋がる角など)。また、傾斜面70の形状は角度が一定の環状面(テーパー面)に限定されず、曲面形状にすることが可能であり、また、筒状凹部40の底面40Bを全体的に傾斜面にしてもよい。
【0037】
このように本実施形態によれば、筒状凹部40を形成した先端側部材34と、柱状部50を形成した後端側部材32とを固相接合した電極30において、筒状凹部40と柱状部50との間に隙間60が形成される。それとともに、電極先端面30Sと筒状凹部40の底面40B、すなわち隙間60とを空間的に繋げる貫通孔80が電極軸Xに沿って形成されている。なお、筒状凹部40と柱状部50との隙間60Dを設けず、柱状部50(端面50E)が筒状凹部40の底面40Bに接する構成にしてもよい。
【0038】
次に、
図4を用いて第2の実施形態である放電ランプについて説明する。第2の実施形態では、放熱構造(以下、放熱部ともいう)をもつ電極が構成されている。
【0039】
図4は、第2の実施形態である電極130(陽極)の断面図である。なお、陰極についても同様の構造にすることが可能である。
【0040】
後端側部材132の側面には、放熱部210が周方向全体に渡って形成されている。例えば、アルミナブラスト処理などによって酸化膜などの層を形成した放熱部210を形成することが可能である。一方、先端側部材134の側面140Sおよびテーパー面140Mには、周方向に渡って放熱部250、240が形成されている。放熱部240、250は、例えば放電やレーザー、切削加工による凹部として形成することができる。
【0041】
柱状部150の側面150Sには、放熱部220として凹部が周方向に沿って周全体に形成されており、また、軸方向Xに柱状部150の高さに応じた長さをもって形成されている。先端側部材134の放熱部250の形成位置は、放熱部220の形成位置に対応し、二重放熱構造となっている。放熱部220は、例えばレーザーや切削加工などの手段によって形成することができる。ただし、凹部以外の構成によって放熱構造(放熱部)を実現してもよく、既知の表面積増加構造や放熱素材(例えば炭化膜や酸化膜の放熱層)などで側面150Sを覆うように構成してもよい。また、カーボンナノチューブのような放射率の高い部材も適用できる。
【0042】
柱状部150の端面150Eにも、微細な凹部の放熱部230が形成されている。放熱部230は、いくつもの環となって中心部の周りに(周方向に)形成されている。これにより、アーク放電の熱の吸収を高め、隙間160への効率の良い放熱や、電極支持棒側へ効率よく熱輸送することができる。ただし、端面150Eに対して放射状に(径方向に)放熱部230を形成してもよい。
【0043】
このような放熱部210、220、230、240、250を設けることにより、効果的に熱を電極外部へ放出することができる。ただし、放熱部210、220、230、240、250の形成位置については他の位置に形成することも可能である。また、放熱部210、220、230、240、250のうち、一部のみ設けることも可能である。
【0044】
一方で、電極130には、隙間(放熱空間)160と電極外表面130Mとを空間的に繋げる一対の貫通孔178A、178Bが対称的な位置に形成されている。貫通孔178A、178Bを形成することにより、放電空間DS内のガスの流入、流出が多くなり、電極温度を効果的に抑制することができる。ここでは一対の貫通孔178A、178Bとしたが、数、孔径、位置、軸方向Xに対する孔の形成角度は、ランプサイズ、電極サイズなどに応じて適宜定められる。
【0045】
本実施形態で示した電極は、ショートアーク型放電ランプ以外の放電ランプに対して適用することも可能である。電極の温度上昇を抑えることができることから、1kW以上の比較的大きな電力の放電ランプに好適である。また、接合方法は固相接合(SPS、HPなど)が好適だが、他の接合方法(例えば溶融接合)も適用できる。接合の際、先端側部材と後端側部材との間に中間部材を挟み、接合面間の密着化をしてもよい。中間部材としては、例えばレニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、あるいはこれらの合金が挙げられる。
【0046】
柱状部と筒状凹部の形状、サイズなどは任意であり、例えば軸方向Xに沿って径が変化する柱状部や、底面に縮径面を有する筒状凹部などでもよい。また、柱状部と筒状凹部をそれぞれ違う部材で構成することが可能である。例えば、熱放射性が優れて軽量な部材によって柱状部を形成し、耐熱性や熱伝導性の優れた部材によって先端側部材を形成することが可能である。さらに、柱状部を後端側部材に接合して構成してよい。具体的には、タングステンやモリブデン、あるいはこれらの合金、セラミックなどでもよく、またエミッターを含有させてもよく、また、これらの合金を適用することも可能であり、適宜選択できる。
【符号の説明】
【0047】
10 放電ランプ
30 電極(陽極)
32 後端側部材
34 先端側部材
40 筒状凹部
50 柱状部
60 隙間(放熱空間)
70 傾斜面
80 貫通孔