(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】小型成形品の供給中継装置および該装置を用いた小型成形品の処理システム
(51)【国際特許分類】
B65G 47/52 20060101AFI20220520BHJP
B65G 47/30 20060101ALI20220520BHJP
B65G 47/31 20060101ALI20220520BHJP
B65G 15/58 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
B65G47/52 A
B65G47/30 L
B65G47/31 D
B65G15/58 B
(21)【出願番号】P 2018130788
(22)【出願日】2018-07-10
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000209751
【氏名又は名称】池上通信機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 章雄
(72)【発明者】
【氏名】込谷 太一
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-131355(JP,A)
【文献】特開昭53-91178(JP,A)
【文献】特開2004-323210(JP,A)
【文献】特開2009-2692(JP,A)
【文献】特開平9-263321(JP,A)
【文献】特開平9-77242(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0221932(US,A1)
【文献】独国実用新案第08518948(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/52
B65G 47/30
B65G 47/31
B65G 47/14
B65G 47/28
B65G 15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に対向する2端面を有する小型成形品の一端面を下向きとした所定姿勢として搬送ベルトにより搬送する搬送装置と、前記小型成形品を前記所定姿勢として整列させてから、前記搬送装置に向けて直線状に供給する整列供給装置と、の間で前記小型成形品を中継する小型成形品の供給中継装置であって、
前記中継を行うために前記整列供給装置と前記搬送装置とをつなぐように、前記整列供給装置と前記搬送装置との間の間隙部分に配置された中継板と、
該中継板と対向し、前記小型成形品の厚みに応じた中継路を画成する高さ規制ガイドと、
前記中継板を通過する前記小型成形品の他端面に当接し、前記搬送ベルトに向けて移動させる力を付与する付勢手段と、
を備えたことを特徴とする小型成形品の供給中継装置。
【請求項2】
前記付勢手段は、弾性を有する付勢ローラを含むことを特徴とする請求項1に記載の小型成形品の供給中継装置。
【請求項3】
前記中継板は、弾性を有する薄板を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の小型成形品の供給中継装置。
【請求項4】
前記小型成形品の厚みに応じ、前記中継板からの前記高さ規制ガイドおよび前記付勢手段の高さ方向の位置が調整可能であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の小型成形品の供給中継装置。
【請求項5】
前記小型成形品の形状に応じ、前記付勢手段の搬送方向の位置が調整可能であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の小型成形品の供給中継装置。
【請求項6】
前記小型成形品の供給、中継および搬送を行う系統を複数有し、系統毎に前記位置が調整可能であることを特徴とする請求項4または5に記載の小型成形品の供給中継装置。
【請求項7】
厚み方向に対向する2端面を有する小型成形品に対して所定の処理を施す処理装置、および、該処理装置による処理に供するために前記小型成形品の一端面を下向きとした所定姿勢として搬送ベルトにより搬送する搬送装置と、を有する処理ラインと、
前記小型成形品を前記所定姿勢として整列させてから、前記搬送装置に向けて直線状に供給する整列供給装置と、
前記処理ラインおよび前記整列供給装置の間で前記小型成形品を中継する、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の小型成形品の供給中継装置と、
を備えたことを特徴とする小型成形品の処理システム。
【請求項8】
前記整列供給装置は、前記供給中継装置への前記小型成形品の排出部分から、前記搬送ベルトの搬送方向における上流側の領域まで延在し、前記小型成形品の寸法に応じて前記搬送方向と交差する方向における前記中継路の幅方向の寸法を設定可能な幅規制ガイドを備えたことを特徴とする請求項7に記載の小型成形品の処理システム。
【請求項9】
前記処理ラインは、前記小型成形品を前記搬送ベルトに吸着させる吸引手段を有し、前記幅規制ガイドは、前記吸引手段によって前記搬送ベルトに前記小型成形品を吸着して拘束する実効的な吸引力が作用する領域に至るまで延在していることを特徴とする請求項8に記載の小型成形品の処理システム。
【請求項10】
前記整列供給装置による前記小型成形品の供給速度をV1、前記整列供給装置の前記付勢手段との当接による前記小型成形品の移動速度をV2、前記搬送装置による前記小型成形品の搬送速度をV3とするとき、V1≦V2<V3の関係を満たすことを特徴とする請求項7ないし9のいずれか一項に記載の小型成形品の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型成形品の供給中継装置および該装置を用いた小型成形品の処理システムに関する。詳しくは、所要の処理を施すために小型成形品を搬送する搬送装置と、その搬送装置に対して小型成形品を整列させた状態として供給する整列供給装置との間に介挿される供給中継装置、およびこれらの装置を用いた小型成形品の処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型成形品、例えば厚み方向に対向する2端面を有する錠剤に対しては、製造後に種々の処理が施される。例えば、外観に関しては、欠け、割れ、変形、ひび、傷、汚れ、変色、コーティング層の剥がれその他の形状の異常の有無を判定する検査が施される。また、昨今では錠剤種別などを認識するために、錠剤表面に識別情報などを印刷する処理を行う場合も増えてきている。これらの処理は、錠剤を搬送装置によって搬送する過程で行われるのが一般的である。したがって、搬送装置には、すべての錠剤に対して一様で安定した処理を行う上で、錠剤を処理に適した目標姿勢に維持し、且つ揺れのない安定した状態で搬送することが求められる。また、整列供給装置には、錠剤を予め目標姿勢として整列させた上で、搬送装置に供給することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、整列供給装置および搬送装置がともに、一端面を下向きとした姿勢(すなわち厚み方向が搬送面に垂直となった姿勢)として錠剤を搬送する構成である場合、両者間では、錠剤の姿勢を崩さず、且つ揺らぎが生じず、しかも滞留(詰り)が生じない円滑な受け渡しを行うことが要望される。また、そのような円滑な受け渡しを行う上で、整列供給装置および搬送装置を含んだ搬送系の大型化や、製造およびメンテナンスコストの増大を生じさせないことが要望される。
【0005】
よって本発明は、これらの要望を充足することのできる小型成形品の供給中継装置を提供し、ひいては搬送過程で施される処理が正確に行われるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために、本発明は、厚み方向に対向する2端面を有する小型成形品の一端面を下向きとした所定姿勢として搬送ベルトにより搬送する搬送装置と、前記小型成形品を前記所定姿勢として整列させてから、前記搬送装置に向けて直線状に供給する整列供給装置と、の間で前記小型成形品を中継する小型成形品の供給中継装置であって、前記中継を行うために前記整列供給装置と前記搬送装置とをつなぐように、前記整列供給装置と前記搬送装置との間の間隙部分に配置された中継板と、該中継板と対向し、前記小型成形品の厚みに応じた中継路を画成する高さ規制ガイドと、前記中継板を通過する前記小型成形品の他端面に当接し、前記搬送ベルトに向けて移動させる力を付与する付勢手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、錠剤の姿勢を崩さず、しかも滞留が生じない円滑な受け渡しを行うことができる構成を廉価に実現できる。また、この結果、錠剤に対し所要の処理を施す処理装置による正確な処理が担保される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態を適用可能な錠剤の処理システムの概略構成を説明するための模式的立面図である。
【
図2】
図1のシステムに用いられる整列供給装置をほぼ上方から見た斜視図である。
【
図3】
図2の整列供給装置に用いられる錠剤の搬送部を示す斜視図である。
【
図4】
図1のシステムに用いられる水平搬送装置を含む錠剤の処理ラインを示す斜視図である。
【
図5】
図2の整列供給装置と
図4の水平搬送装置との連結部位を拡大して示す斜視図である。
【
図6】
図5の連結部位に、一実施形態に係る供給中継装置を配置した状態を示す斜視図である。
【
図7】整列供給装置の一部の部品を取り外した状態で連結部位を示す側面図である。
【
図8】
図6の供給中継装置の上下ユニットを分離させた状態で示す斜視図である。
【
図9】一実施形態による錠剤の供給中継の態様を説明するための説明図である。
【
図10】一実施形態による錠剤の供給中継の態様を説明するための説明図である。
【
図11】一実施形態による錠剤の供給中継の態様を説明するための説明図である。
【
図12】一実施形態による錠剤の供給中継の態様を説明するための説明図である。
【
図13】(a)および(b)は、供給される錠剤の姿勢が崩れている状態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
なお、以下においては、小型成形品として錠剤を例示する。また、着目位置における錠剤の供給ないしは搬送方向をX方向、これと交差する方向をY方向と定義する。さらに、「搬送面」とは、錠剤を搬送している部材(搬送ベルト等)において、錠剤の支持および搬送に関与する面を言い、以下の実施形態では搬送面が水平である構成を例示するが、好ましくない滑りなどの不都合な搬送が生じない範囲で、水平面に対して搬送面が傾いた構成であってもよい。加えて、「上流」および「下流」とは、搬送方向Xに関し搬送面上の位置または部位を説明するために使用され、「上向き」(または「上側」」および「下向き」(または下側))とは、必ずしも鉛直方向ではなく、搬送面に対する垂直方向に関して定義される。
【0010】
(処理システムの概要)
図1は、一実施形態に係る錠剤の処理システムの概略を示す立面図である。錠剤を搬送する過程で所要の処理を施す処理ライン1に対しては、供給部3から錠剤が供給される。供給部3は、ホッパ31と、整列供給装置32と、これらを接続する搬送台33と、から構成される。ホッパ31は、処理システムに供給すべき錠剤を貯留し、適宜の量の錠剤を搬送台33に供給する。搬送台33は整列供給装置32に向かって下方に傾斜する傾斜面を有し、例えば振動フィーダの振動が伝達されることで、錠剤は整列供給装置32に向かって傾斜面を円滑に滑落して行く。整列供給装置32は、搬送台33から供給された個々の錠剤を重なり合うことなく整列させ、且つ所定姿勢である目標姿勢とした状態(一端面が搬送面に支持された姿勢、すなわち厚み方向が搬送面に垂直となった姿勢)で処理ライン1の水平搬送装置100に受け渡す。
【0011】
(整列供給装置)
図2は、整列供給装置32をほぼ直上からみた斜視図である。ここでは、リターン機構323を挟んで線対称に配され、搬送台33を滑落してくる錠剤を受容して処理ライン1に向けて搬送する同一構成の2系統の搬送部321を有しているものが例示されている。また、
図3は処理ライン1に対する搬送部321の一方を示している。
【0012】
搬送部321の搬送路325は、搬送台33の傾斜面に接続され、供給されてきた錠剤Tを整列させ、且つ所定の姿勢に規制しながら処理ライン1に向かって搬送する。各搬送路325は、錠剤Tを矢印Xで示す搬送方向に搬送する搬送ベルト327と、錠剤Tを案内するガイド側面329aが形成されたガイド部材329とを含む。各搬送ベルト327は無端式のベルトコンベアの形態であり、錠剤Tの搬送面が前段の搬送台33から後述する供給中継装置まで延在するように、2つのローラ330間に張架され、駆動される。
【0013】
ガイド部材329は搬送ベルト327の直上に配置され、そのガイド側面329aは、搬送方向Xの下流に向かって搬送ベルト327を斜めに遮って横断するように形成されている。すなわち、ガイド部材329のガイド側面329aは、錠剤Tの上流側の錠剤受容部位(搬送台33の傾斜面との接続部位)では搬送ベルト327の幅にほぼ等しい搬送路325を画成する一方、下流に行くに従ってリターン機構323側に近づき、錠剤Tの搬送路325の幅を漸次狭めて行く。ガイド側面329aは、搬送方向Xの最下流部位に位置する規制部340の入口近傍において幅が最も狭くなり、搬送される錠剤Tの直径にほぼ等しい幅となる搬送路325を画成する。
【0014】
ガイド部材329は、搬送面と平行な方向であって且つY方向に移動可能であり、位置調整部材331によりガイド部材329ひいてはガイド側面329aを移動させることで、搬送される錠剤Tの大きさに対応して搬送路325の幅を調整できるように構成されている。ガイド部材329は、搬送方向最下流側に配される規制部340を支持している。規制部340は、処理ライン1との連結部分に配置され、搬送されてくる錠剤Tの幅および高さを最終的に規制し、目標姿勢となって1錠ずつ分離した状態で整列した錠剤Tのみの通過を許容する一方、その他の錠剤Tをリターン機構323側に排除する機能を果たす。
【0015】
規制部340は、搬送ないし検査の対象となる錠剤Tの高さ寸法(厚み)に応じた開口部347を搬送路325上で画成する高さ規制ゲート346を有する。高さ規制ゲート346は、ガイド側面329aに連続する部分から下流に向うにつれてリターン機構323側に近づくよう、搬送路325の上を斜めに横切る形状とされる。高さ規制ゲート346は、調整部材344により高さ方向の位置を調整することで、錠剤Tの厚みに対応した高さを設定することが可能である。開口部347は規制部340を貫通する貫通路の一端をなしており、貫通路の他端は錠剤Tを処理ユニット1の水平搬送装置100に向けて排出する排出部分となっている。
【0016】
符号351で示すものは、その排出口から水平搬送装置100上まで延在して、錠剤TのY方向のずれを規制し、1列に整列した状態とするための幅規制ガイドである。幅規制ガイド351は、錠剤Tの幅(平面視にて円形状の錠剤であれば直径)に対応した間隔をおいて配置される2本のガイド要素351a,351bからなり、調整部材342によりガイド要素351bのY方向の位置を調整することで、錠剤Tの幅に対応した間隔を設定可能である。調整部材342および344としては、例えば、マイクロメータなどで採用されている定圧機構を備えた精密ねじ送り機構を用いたものとすることがでる。これによれば、オペレータは、間隔を目視しながら自らの感覚に基づいて、または、錠剤Tの搬送状態を確認しながら、調整部材342および344の位置調整を簡単に行うことができる。
【0017】
幅規制ガイド351の搬送中心軸は、水平搬送装置100の搬送ベルト109の搬送中心軸と位置合わせされていることが強く望ましい。そのため、調整部材342の調整によりガイド要素351aに対するガイド要素351bの位置を変化させた場合、位置調整部材331によりガイド部材329全体の位置を変化させることで、両搬送中心軸の位置合わせを行うことができる。
【0018】
高さ規制ゲート346の搬送方向最下流側の端部に連続して排除部材348が設けられており、この排除部材348は当該連続部分から下流に向うにつれてリターン機構323の上方に張り出す形状とされる。これにより、開口部347を通過できなかった錠剤Tは、排除部材348に当接して案内されることで、リターン機構323に排除される。排除された錠剤Tはリターン機構323によって搬送方向Xと反対方向に導かれ、搬送路325の上流側に戻される。
【0019】
(処理ライン)
処理ライン1は、矢印Xの方向に錠剤Tを搬送する水平搬送装置100と、錠剤を水平搬送装置100からピックアップし、矢印Rの方向に回転搬送する回転搬送装置(第2搬送部)200とを備える。それぞれの搬送面に対向して、検査または印刷に係る処理を行うための処理装置が配設される。つまり処理装置は、錠剤の搬送の過程で、上面側すなわち搬送装置の搬送面に接していない側の錠剤の他端面の側の部分に対して所要の処理を施す。そして、処理ライン1を錠剤の形状検査ラインとして構成する場合には、搬送方向X,回転方向Rのそれぞれの上流側から下流側にかけて並置される処理装置150,250;160,260および170,270として、それぞれ、側面検査装置;端面検査装置および色検査装置を配置することができる。処理ライン1を印刷ラインとして構成する場合には、上流側から下流側にかけて並置される処理装置150,250;160,260および170,270として、それぞれ、側面検査装置(または色検査装置);印刷装置および色検査装置を配置することができる。なお、水平搬送装置100の側および回転搬送装置200の側に配置される処理装置の種類、個数および配置の順序は任意である。
【0020】
図4は、水平搬送装置100および回転搬送装置200の構成を説明するための処理ライン1の斜視図である。水平搬送装置100は、複数のローラ101間に張架された無端式の搬送ベルト103を備えるとともに、その裏面側に配され、搬送ベルト103の搬送面に錠剤Tを吸着させる吸引力を作用する吸引装置105を備える。搬送ベルト109は、整列供給装置32の2系統の搬送部321に対応して2列備えられている。各搬送ベルト109は、Y方向における錠剤の寸法(平面視にて円形端面を有する錠剤であれば直径)より小さい間隔を挟んで平行に配設され、錠剤を跨った状態として搬送する2本のベルト要素からなるものとすることができる。あるいは、吸引装置105の吸引力を錠剤に作用するための吸引口を設けた細長い平ベルト状のものであってもよい。搬送ベルト103に対向して配置された処理装置150、160および170による処理を経た錠剤は、搬送ベルト103と回転搬送装置200との対向部分に搬送されて行く。この途中に、不良錠剤を排除する機構が設けられていてもよい。一方、水平搬送装置100の搬送過程では欠陥や印刷不良などの異常が検出されなかった錠剤は、回転搬送装置200にピックアップされる。
【0021】
回転搬送装置200は、概して、軸Oを中心として矢印R方向に回転するドラムユニット201と、処理ライン1の不図示のベースプレートに固定されて、ドラムユニット201を回転可能に支持する吸引シャフトユニット230と、を備える。ドラムユニット201は、中空円筒状のドラム本体207と、その両端に配設された2つのディスク208とを有する。各ディスク208は、錠剤の寸法より小さい間隔をおいてディスク208の外周に沿って配置され、錠剤を跨った状態として搬送する一対のベルト要素からなる搬送ベルト209を担持している。搬送ベルト209の中心位置は、水平搬送装置100の搬送ベルト109の中心位置と位置合わせされている。
【0022】
吸引シャフトユニット230は、中空円筒状のシャフトの形態を有し、一端側の部分はドラム本体207に挿入されるとともに、その側面にはドラム本体207の内部空間に連通する吸引孔を有する。一方、吸引シャフトユニット230の他端側の部分は真空ポンプ,真空ブロワ,真空エジェクタなどの吸引手段(不図示)に接続される。したがって、吸引手段の吸引力は、ドラム本体207およびディスク208の内部空間を介して、ベルト要素間の間隙部分に作用する。これにより、水平搬送装置100の搬送ベルト109によって搬送されてきた錠剤はディスク208に吸引されてピックアップされて搬送される。
【0023】
このように、本実施形態は、水平搬送装置100から回転搬送装置200へと錠剤を搬送することで、錠剤の表裏端面が反転する構造となる。したがって、処理装置150、160および170と、処理装置250、260および270とを、錠剤に対して処理を施す面を下向きとしたほぼ同じ姿勢で配置することができ、錠剤の両端面に対する処理を均一な精度で実施することができる。
【0024】
(整列供給装置と水平搬送装置との連結部位)
図5は、整列供給装置32と処理ユニット1の水平搬送装置100との連結部位を拡大して示す図である。この図に示すように、幅規制ガイド351は、規制部340の錠剤排出口から、整列供給装置32の搬送ベルト327の最下流端と、整列供給装置32および処理ユニット1の間隙部分Gとを越え、水平搬送装置100の搬送ベルト109の上流側の実効的な吸着領域E(後述)まで延在している。
【0025】
ここで、整列供給装置32および処理ユニット1との間隙部分Gを越えて錠剤が受け渡されるようにするために、従来は間隙部分Gの下側に中継部材を配置することが一般的であった。しかしながら、間隙部分Gでは、搬送ベルト327による搬送が終了して慣性力のみで錠剤が移動すること、また実際には中継部材から摩擦抵抗を受けることになる。すると錠剤が減速し、後続の錠剤が追突することで姿勢が乱れ、この結果滞留が生じることがあった。本発明者らは、間隙が僅か30mm程度でも滞留が生じる場合があることを確認している。これに対処するために、移動して行く錠剤の後方より送風を行う構成が採用されているものもあるが、送風による姿勢の乱れが生じたり、また特に、対向する一対の端面の各々が外方に膨出する曲面をなす膨出部を有しているR付き錠と称される錠剤では揺らぎが生じたりすることがあった。
【0026】
さらに、特許文献1に記載された技術を応用し、吸引力の作用に伴って錠剤を吸着する吸着孔を配列した吸着ベルトを含んだ中継装置を間隙部分の上方に配置し、整列供給装置32の搬送ベルト327の搬送面の最下流端部位から錠剤を吸着孔に吸着させて移送した後に、吸着解除位置で水平搬送装置100の搬送ベルト109に受け渡すようにする構成も考えられる。しかし本実施形態のように基本的に錠剤を1列に整列させて搬送する構成に対しては、ランニングコストの増大や、中継装置を配置するスペースに起因したシステムの大型化を防ぐ観点から、より好ましい供給中継装置の適用が要望される。
【0027】
(供給中継装置の実施形態)
そこで本実施形態では、以下のような供給中継装置を採用する。
図6は、
図5に示した連結部位に、一実施形態に係る供給中継装置を配置した状態を示す斜視図、
図7は、供給中継装置400の一部の部品を取り外した状態で連結部位を示す側面図、
図8は
図6の供給中継装置400の上下のユニットを分離させた状態で示す斜視図である。特に
図8に最もよく示されているように、本実施形態の供給中継装置400は、概して、間隙部分Gの下方に位置する下側ユニット410と、上方に位置する上側ユニット430とから構成される。
【0028】
下側ユニット410は、ねじ412により水平搬送装置100の2つの搬送ベルト109間に位置する支持板120に固定されるベース414を有する。ベース414は、整列供給装置32および処理ユニット1との間隙を埋めて幅規制ガイド351の直下に位置する部分を有する中継板416を、押さえ部材418との間で挟み込んだ状態で支持する。中継板416は、極力間隙部分Gの全体にわたるように、すなわち、整列供給装置32側の搬送ベルト327の搬送面の最下流端と水平搬送装置100側の搬送ベルト109の最上流位置とに極力近接できるようにするために、薄いほうが望ましい。また、摩擦抵抗が少なく、静電気が発生せず、且つ擦れが生じないようにするために滑らかな表面を有していることが好ましい。さらに、錠剤や食品である場合には、食品衛生法に適合していることが必要である。そのために、本実施形態では、厚さ0.1mm~0.2mm程度のステンレス製の薄板にフッ素樹脂含有無電解ニッケルめっきを施した中継板416を用いる。
【0029】
上側ユニット430は、ねじ432により下側ユニット410のベース414に固定される第2ベース434を有する。第2ベース434は、錠剤Tに対し搬送ベルト109へと押しやる力を作用する付勢手段、および、錠剤の寸法や形状に応じて付勢手段の位置を調整する調整機構などを支持する。
【0030】
第2ベース434には、ねじ436によってプレート438が取り付けられる。プレート438のねじ436の挿通穴を長穴とすることで、第2ベース434に対するプレート438の前後方向(X方向およびこれと反対の方向)の位置を調整可能としてもよい。プレート438には、モータ440を支持する立ち上がり部438aが設けられている。
【0031】
モータ440の出力軸は、タイミングベルト442を介し、2列の搬送路に対応して設けられた一対の付勢ローラ444を連結するシャフト448に接続されている。付勢ローラ444は、
図6および
図7において矢印R1で示す方向へ回転しつつ、傾きのない目標姿勢となっている錠剤Tの上側端面の最高位部位(すなわち頂部)に当接する。このため、付勢ローラ444の幅方向の寸法は、幅規制ガイド351a,351b間に設定され得る最小の隙間の寸法未満とされ、その隙間から中継板416の搬送面方向に移動できるものとされる。
【0032】
なお、錠剤Tに負荷を与えて損傷することのないよう、付勢ローラ444は弾性を有することが強く望ましく、例えばシリコーンゴムやウレタンゴムなどの各種ゴム製、あるいはスポンジ製のローラを用いることができ、硬度についても錠剤Tとの関係において適宜定めることができる。また、付勢ローラ444の主たる機能は錠剤Tを搬送ベルト109へと押しやる力を付与することであり、モータ440の負荷は大きくないので、駆動源としてのモータ440には小型のDCモータを用いれば十分である。
【0033】
符号450で示すものは、中継板416と対向し、錠剤Tの厚みに応じた中継路を画成する高さ規制ガイドであり、幅規制ガイド351によって左右方向(Y方向およびこれと反対の方向)のずれが規制されながら中継板416上を移動する錠剤Tに対し、さらに中継板416からの高さを規制して錠剤の傾きや揺らぎを抑制する。高さ規制ガイド450は、その下端面から錠剤Tに対する付勢ローラ444の当接部分を僅かに突出させるように、付勢ローラ444をはさんで前後に分割されており、付勢ローラ444に対向する部分は付勢ローラ444の曲率に対応した曲率をもつ曲面となっている。付勢ローラ444の当接部分が幅規制ガイド351a,351b間に進入して錠剤Tと当接させるために高さ規制ガイド450の下端面側も進入させる必要があれば、高さ規制ガイド450の幅方向の寸法は、幅規制ガイド351a,351b間の隙間よりも小さいものとすればよい。
【0034】
分割された高さ規制ガイド450は、取り付けブロック452を介して連結ブロック454に支持されている。付勢ローラ444、高さ規制ガイド450、取り付けブロック452、連結ブロック454およびシャフト448は一体に組み立てられており、その一体の組立体は、プレート438に対して高さ調整部材456により上下可能である。したがって、錠剤Tの高さ(厚み)に応じて高さ調整部材456を操作することで、中継板416からの付勢ローラ444および高さ規制ガイド450の適切な高さを設定できる。また、錠剤の形状に応じて付勢ローラ444の前後方向の位置を調整する場合には、ねじ436を緩め、第2ベース434に対してプレート438を長穴方向に移動させ、適切な位置でねじ436を締めればよい。なお、高さ調整部材456としては、上述した調整部材342および344と同等の構成を有するものを採用できる。
【0035】
(錠剤の供給中継の態様)
図9~
図12を用いて錠剤の供給中継の態様を説明する。
図9は、整列供給装置32側の搬送ベルト327から供給中継装置400の中継板416に錠剤が移動するときの状態を示している。ここで、搬送ベルト327の搬送面から中継板416の搬送面へと錠剤Tが円滑に搬送されるようにするためには、両搬送面が同一平面上にあり、且つ隙間なく連続していることが理想的である。しかし搬送ベルト327は中継板416に接近する方向に駆動されているので、中継板が搬送ベルト327と接触またはあまりに接近していると、両者が干渉し、搬送ベルト327が損傷され得る。したがって、そのような干渉が生じないようにしつつ搬送ベルト327に対して中継板416をできるだけ近い位置とするために、上述のように厚み0.1~0.2mm程度の中継板416を採用し、さらに、搬送ベルト327の搬送面よりも中継板416の搬送面を必要最低限(例えば0.1~0.2mm程度)だけ低い位置に設定する。これに対し、水平搬送装置100の搬送ベルト109は中継板416から離隔する方向に駆動されるので、仮に干渉が生じても損傷は生じにくい。このため、搬送ベルト109に対して中継板416をできるだけ近い位置に配置し、両者の搬送面を実質的に同一平面上にあるようにすることができる。
【0036】
この結果、搬送ベルト327の搬送面と中継板416の搬送面との間には段差Dが生じる。
図9はその段差Dによって錠剤Tが傾いた状態を示しており、この状態では、錠剤Tはまだ付勢ローラ444に接していない。錠剤Tは段差Dを通過し、高さ規制ガイド450によって傾きや揺らぎが抑制されつつ、中継板416上を移動する。したがって、仮に後続の錠剤が追いついても、先行錠剤の下端側に潜り込むような状態が生じることなく、滞留が防止される。
【0037】
付勢ローラ444は、
図10に示すように、傾きや揺らぎが解消された目標姿勢となってから錠剤Tの頂部に当接して付勢力を作用する。付勢力は、錠剤Tを中継板416に対して押圧する力と、搬送ベルト109に向けて押しやる力となる。したがって、錠剤Tは、中継板416と高さ規制ガイド450とによって、
図11に示すように、目標姿勢が維持されながら搬送される。
【0038】
高さ規制ガイド450は、
図7に示すように、搬送ベルト109の実効的な吸着領域(吸引装置105により、搬送ベルト103に錠剤Tを吸着して拘束する吸引力が作用する領域)の手前の、吸引は開始されるが拘束には至らない領域Sに至るまで延在する。換言すると、搬送ベルト109の実効的な吸着領域Eより上流側の端部領域では、錠剤Tを拘束するような吸着力は作用しない。これは、実効的な吸着領域Eに至るまでは、高さ規制ガイド450および幅規制ガイド351によって錠剤は傾きやY方向のずれのない目標姿勢および位置に維持または矯正されるためであり、また、万一錠剤Tに傾きが生じていても、その姿勢のまま搬送ベルト109上に拘束されてしまうのを防止するためでもある。
【0039】
以上の構成は、
図13(a)および(b)に示すように、整列供給装置32側の搬送ベルト327から供給中継装置400の中継板416に錠剤Tが移動するときの姿勢が傾いていても有効である。すなわち、傾きにより目標姿勢の頂部より高くなっている部位があって、そこに付勢ローラ444が当接しても、付勢ローラ444は錠剤Tに過剰な負荷を与えることなく弾性変形しつつ、錠剤の姿勢を目標姿勢に矯正するからである。
【0040】
錠剤には、種々の寸法や形状を有したものがある。そこで、上述したように、錠剤Tの高さ(厚み)に応じて高さ調整部材456を操作することで、中継板416からの付勢ローラ444および高さ規制ガイド450の適切な高さを設定できる。また、錠剤には、長径および短径をもつ、平面視にて楕円形状または長円形状を呈する、異形錠と称されるものがある。この異形錠が、長径方向をX方向として搬送される場合、その長径の寸法によっては、段差Dを通過する際の傾いた姿勢の状態で前端部が付勢ローラ444に当接し得る。すると、後端側が搬送面から浮き上がることで、後続の異形錠の前端部がそこに潜り込み、滞留が生じる恐れがある。このような場合は、第2ベース434に対するプレート438の取り付けねじ436と、これを挿通する長穴とで構成される前後方向位置の調整手段を操作し、付勢ローラ444をX方向に偏倚させればよい。
【0041】
また、錠剤の形状や寸法に応じ、整列供給装置32の搬送ベルト327の速度が調整される。したがって、これに応じて付勢ローラ444の周速度が設定されるように、モータ440が制御される。なお、搬送ベルト327の搬送速度すなわち錠剤の供給速度をV1、付勢ローラ444の周速度すなわち錠剤の移動速度をV2、搬送ベルト109の搬送速度をV3とすると、V1≦V2<V3の関係があることが好ましい。V2<V3とすることで、搬送ベルト109に移行した後、先行する錠剤と後続の錠剤との間に所定距離を確保できる。所定距離とは、先行錠剤と後続錠剤との間に適切な間隔を置くことで検査や印刷などの処理に支障を来たさない距離であり、速度V3はその所定距離が確保されるように設定される。また、速度V2は速度V1と等しく設定されてもよいが、搬送ベルト109に移行するまでにある程度の錠剤間距離を確保することが望ましい場合には、速度V2が速度V1より若干高くなるように設定を行うことができる。なお、速度V1については、錠剤の寸法や形状等に基づいて、理論的または実験的に設定することができるので、その設定速度に連動して自動的に速度V2およびV3を設定するようにしてもよい。また、速度センサ等を用いて速度V1を検出し、これに応じて速度V2およびV3が設定されてもよい。
【0042】
(その他)
本発明は、以上説明した実施形態および随所に述べた変形例に限られない。
例えば、上述した実施形態では、錠剤の整列供給、供給中継および処理に関し、2系統で搬送を行う構成を例示したが、1系統のみを備えた構成でもよいし、3以上の複数の系統を備えた構成でもよい。
【0043】
また、上述した実施形態に係る供給中継装置では、2系統に対応した組立体として一括した高さ調整を行うようにしたが、組み立て精度を考慮し、系統毎に高さ調整を行える構成を採用してもよい。この場合、各付勢ローラ444に対して、それぞれ高さ規制ガイド450、取り付けブロック452、連結ブロック454、シャフト448およびタイミングベルト442を設ければよい。駆動源については、2つのモータを用意してもよいし、両軸モータを用いて各軸と各シャフトとを連結してもよい。
【0044】
さらに、上述の実施形態では各系統について1つの付勢ローラを設けた付勢手段について説明したが、搬送方向Xに沿って2以上の付勢ローラを配置した構成とすることもできる。あるいは、付勢ローラを用いる代わりに、2つのプーリ間に張架した無端ベルトを用いる構成であってもよい。
【0045】
加えて、付勢手段の当接によって錠剤Tは中継板416にも付勢されることになるが、中継板416を弾性を有する材料(例えばステンレスのばね材)で形成し、錠剤Tに過剰な負荷が作用しないようにすることもできる。
【0046】
さらに加えて、上述の実施形態では、ほぼ直線状に錠剤を搬送しながら整列させる整列供給装置を用いた処理システムを説明した。しかし本発明は、中継供給装置との接続部分において直線状に錠剤を搬送する構成であれば好ましく適用できる。例えば、円運動させながら遠心力を利用して錠剤を整列させた後、直線状すなわち接線方向に錠剤を搬送する整列供給装置を用いた構成であってもよい。
【0047】
また、以上の実施形態では小型成形品として錠剤を例示したが、本発明は、錠剤のみならず粒状の菓子その他の小型成形品の処理システムにも適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
1 処理ライン
100 水平搬送装置
109 搬送ベルト
3 供給部
32 整列中継装置
321 搬送部
327 搬送ベルト
329 ガイド部材
331 位置調整部材
340 規制部
346 高さ規制ゲート
351 幅規制ガイド
400 供給中継装置
416 中継板
440 モータ
444 付勢ローラ
450 高さ規制ガイド
456 高さ調整部材