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▶ ジーエムシーシー アンド ウェリング アプライアンス コンポーネント (タイランド) カンパニー リミテッドの特許一覧

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  • 特許-圧縮機及びこれを備える機器 図1
  • 特許-圧縮機及びこれを備える機器 図2
  • 特許-圧縮機及びこれを備える機器 図3
  • 特許-圧縮機及びこれを備える機器 図4A
  • 特許-圧縮機及びこれを備える機器 図4B
  • 特許-圧縮機及びこれを備える機器 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】圧縮機及びこれを備える機器
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/02 20060101AFI20220520BHJP
【FI】
F04B39/02 S
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018159907
(22)【出願日】2018-08-29
(65)【公開番号】P2020033914
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】521161750
【氏名又は名称】ジーエムシーシー アンド ウェリング アプライアンス コンポーネント (タイランド) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】堀田 海斗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓愛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 遵自
(72)【発明者】
【氏名】永田 修平
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-096351(JP,A)
【文献】特開2015-166580(JP,A)
【文献】特開2010-107032(JP,A)
【文献】米国特許第07104240(US,B1)
【文献】特開2011-106532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/02
F16J 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンと、
該ピストンが摺動するシリンダと、を有し、
前記シリンダの内周下側にポケット状の凹部を有し、
前記ピストン部は、鉛直方向に貫通した油路穴を有し、
前記ピストン部の下死点で、前記油路穴と前記凹部とが鉛直方向に重なる、圧縮機。
【請求項2】
前記ピストン部は、
ピストンピンと、
前記ピストンピンを嵌装させることが可能な孔を有するピストンと、
前記ピストンピンが嵌装されたコネクティングロッドと、を有し、
前記油路穴は、前記ピストンピンに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記シリンダは、前記ピストンが摺動可能な周壁として上側壁と下側壁とを有し、
前記下側壁に前記凹部が位置し、
前記凹部の鉛直上方より上死点側に、前記上側壁の下死点側の端面が位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記ポケット状の凹部として、
底部と、
該底部から上死点側に向かうにつれて前記ピストンに近付く方向に傾斜した上死点側傾斜、及び/又は
該底部から下死点側に向かうにつれて前記ピストンに近付く方向に傾斜した下死点側傾斜を有することを特徴とする請求項1乃至3何れか一項に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記ポケット状の凹部として、さらに、
該底部から左側に向かうにつれて前記ピストンに近付く方向に傾斜した左側傾斜、及び/又は
該底部から右側に向かうにつれて前記ピストンに近付く方向に傾斜した右側傾斜を有し、
前記左側は、前記下死点側から前記シリンダを見た際に水平方向において左側となる一方側であり、前記右側は、前記左側とは反対の他方側であり、
前記上死点側傾斜の角度θと、前記左側傾斜又は前記右側傾斜の角度φとが、不等式θ<φの関係を満たすことを特徴とする請求項4に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記上死点側傾斜の角度は、前記ピストン側から前記底部に向かうにつれて急峻になることを特徴とする請求項4又は5に記載の圧縮機。
【請求項7】
請求項1乃至6何れか一項に記載の圧縮機を備える機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機及びこれを備える機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ピストンとシリンダ間の摩擦を低減させるため、油膜による流体潤滑を行う圧縮機が広く知られている。流体潤滑のためにはピストンとシリンダ間に十分な潤滑油が入り込む必要がある。特許文献1では、シリンダ5aの端面に面取り5aaが設けられている(図4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-41879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ピストン下部は上部と比べ潤滑油に触れる機会が少なく、油膜の形成が不完全になる場合がある。しかし、特許文献1の面取り5aaは、シリンダの下死点側の端部が開放されており、潤滑油が下死点側に流れ出す構造である。このため、潤滑油をピストン下側に貯留することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記事情に鑑みてなされた本発明は、
ピストンと、
該ピストンが摺動するシリンダと、を有し、
前記シリンダの内周下側にポケット状の凹部を有する圧縮機である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】ピストン部の鉛直方向断面図
図2】ピストン部とシリンダの鉛直方向断面図
図3】ピストン部とシリンダの鉛直方向断面拡大図
図4A】ピストン部とシリンダを下死点側から見た図
図4B】ピストン部とシリンダを下死点側から見た図
図5】ピストン部とシリンダの鉛直方向断面拡大図
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施例を詳細に説明する。同様の構成要素には同様の符号を付し、また、同様の説明は繰り返さない。
【0008】
本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、或る構成要素が他の構成要素の一部であること、或る構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【実施例1】
【0009】
図1は本実施例のピストン部の鉛直方向断面図である。ピストン部100は、ピストンピン102を嵌装させることが可能な孔を有するピストン101と、鉛直方向に貫通した油路穴1021を持つピストンピン102と、ピストンピン102が嵌装されたコネクティングロッド103と、を備える。
【0010】
図2は本実施例のピストン部100とシリンダ200の鉛直方向断面図である。シリンダ200は、内周をピストン101が摺動可能な壁を有しており、上側壁210と下側壁220とを含む周壁と、上死点側端部に位置しピストン103の頂面と対向する閉塞壁230とを有する。
【0011】
シリンダ200の下側内周には、潤滑油を貯留可能にポケット状に形成された凹部201を有し、凹部201の真上より上死点側には、上側壁210の下死点側端面が位置する。そして、ピストン101の下死点位置では、油路穴1021の下方に凹部201が位置する。
【0012】
ここで、潤滑油(不図示)は、オイルポンプ(不図示)によって噴射され、シリンダ200やピストン100の上面に付着したり滴下したりする。潤滑油は、ここからピストン101の側周や油路穴1021を伝っていき、一部は凹部201に滴下して溜められる。ピストン101が上死点に向かって運動すると、凹部201内の潤滑油がこの運動に伴って移動して、ピストン101とシリンダ200との隙間に運ばれる。
【0013】
凹部201は、底部2013と、底部2013から上死点側に向かうにつれてピストン101に近付く上死点側傾斜2011と、底部2013から下死点側に向かうにつれてピストン101に近付く下死点側傾斜2012とを有する。鉛直方向断面視で、凹部201は三角形でも矩形型でもよい。凹部201は、例えばシリンダ200の下側壁220をドリルで穿つことで形成できる。
【0014】
図3図2の鉛直方向断面図のピストン部100と凹部201に着目した断面拡大図である。本実施例では、上死点側傾斜2011は、底部2013に向かって角度θでピストン101から離れる方向に傾斜している。このことにより、ピストン部100に付着した潤滑油が往復運動によりピストン部100とシリンダ200の隙間に運ばれやすくなる。凹部201とシリンダの上死点側の境界のすべてがこの傾斜を持ってもよいし、一部でもよい。
【0015】
ピストン101がシリンダ200内を往復運動することで、シリンダ200内の流体の圧縮と膨張を行う。シリンダ200の内側とピストン部100の外側で圧力差が生じる。図3では凹部201の形状は底部を角とした逆三角形になっている。このような凹部201とシリンダの下死点側の境界に傾斜があることで、圧縮工程にて差圧が発生する場合、シリンダ200の内側の圧力がピストン部100の外側の圧力より大きくなるため、上死点側から下死点方向へ、凹部201の底部に沿って潤滑油の流れが生じ、潤滑油がピストン部100に付着しやすくなる。その後、ピストン部100に付着した潤滑油が往復運動によりピストン部100とシリンダ200の隙間に運ばれやすくなる。また吸入工程にて差圧が発生する場合、シリンダ200の内側の圧力がピストン部100の外側の圧力より小さくなるため、下死点方向から上死点側へ、凹部201の底部に沿って潤滑油の流れが生じ、圧力差によりピストン部100とシリンダ200の隙間に運ばれやすくなる。
【0016】
図4A図4Bはピストン部100とシリンダ200を下死点側から見た図である。凹部201は、底部2013から左右方向それぞれに向かうにつれてピストン101に近付く左側傾斜2014、右側傾斜2015を有し、これらはそれぞれ角度φの傾斜を有する。傾斜は左側と右側夫々で異なる角度でもよい。本実施例では、不等式θ<φが成立する。
【0017】
凹部201の形状は図4Aのように、底部2013が略一点で与えられる円錐形でもよいし、図4Bのように面状の底部2013となる形状でもよい(図4Bでは、左右方向を軸方向とする三角柱である)。その他、凹部201はシリンダ周方向を例えば一周する円環溝でもよい(底部2013が一点、かつφ=180°の凹部201が集合したものに相当すると考えることができる)。
本実施例の圧縮機は、冷蔵庫、空気調和機等種々の機器に適用できる。
【実施例2】
【0018】
本実施例の構成は次の点を除き実施例1と同様にできる。図5は、本実施例の鉛直方向断面図のピストン部100と凹部201に着目した断面拡大図である。上死点側傾斜20111は、ピストン101に近い側で傾斜が緩く、底部2013に近付くにつれて傾斜が急峻になる。例えば、上死点側から底部2013にかけて一定の曲率となるようにすることができる。
【符号の説明】
【0019】
100…ピストン部
101…ピストン
102…ピストンピン
1021…油路穴
103…コネクティングロッド
200…シリンダ
201…凹部
2011…上死点側傾斜
2012…下死点側傾斜
2013…底部
2014…左側傾斜
2015…右側傾斜
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5