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特許7076346異物除去方法、検査方法、露光方法、異物除去装置、検査装置及び露光装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】異物除去方法、検査方法、露光方法、異物除去装置、検査装置及び露光装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/82 20120101AFI20220520BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220520BHJP
   G03F 1/24 20120101ALI20220520BHJP
   G03F 1/84 20120101ALI20220520BHJP
   B08B 1/04 20060101ALI20220520BHJP
   B08B 7/00 20060101ALI20220520BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
G03F1/82
G03F7/20 521
G03F1/24
G03F1/84
G03F7/20 503
B08B1/04
B08B7/00
H01L21/304 644Z
H01L21/304 648G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018173397
(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公開番号】P2020046491
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115902
【氏名又は名称】レーザーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】田島 敦
(72)【発明者】
【氏名】楠瀬 治彦
(72)【発明者】
【氏名】坪内 隆雅
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-220495(JP,A)
【文献】特開平06-260464(JP,A)
【文献】特開平06-061124(JP,A)
【文献】特開平10-070069(JP,A)
【文献】特開2001-027812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
G03F 7/20
B08B 1/04
B08B 7/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面及び前記主面の反対側の裏面を有する試料の前記裏面に照射された光の反射光または散乱光を検出することによって、前記裏面の画像データを研磨前データとして取得する第1検査ステップと、
前記研磨前データを用いて検出された第1異物の少なくとも一部を、研磨部材によって除去する研磨ステップと、
前記研磨ステップの後で、前記裏面の前記画像データを研磨後データとして取得する第2検査ステップと、
前記研磨後データを用いて検出された第2異物の少なくとも一部を、粘着部材によって除去する粘着ステップと、
を備え
前記第2検査ステップの後で、前記研磨前データ及び前記研磨後データの差分を差分データとして抽出する抽出ステップをさらに備え、
前記粘着ステップにおいて、前記第2異物は、前記研磨後データを用いた前記差分データにより検出された、
異物除去方法。
【請求項2】
前記第1検査ステップの前に、前記裏面の前記画像データを粘着前データとして取得する第3検査ステップと、
前記第3検査ステップの後で、前記粘着前データを用いて検出された第3異物の少なくとも一部を、粘着部材によって除去する研磨前粘着ステップと、
をさらに備え、
前記第1検査ステップは、前記研磨前粘着ステップの後に行われる、
請求項に記載の異物除去方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の異物除去方法により異物を除去した後で、前記主面の検査を行う検査方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の異物除去方法により異物を除去した後で、前記主面に形成されたマスクパターンを用いて露光を行う露光方法。
【請求項5】
主面及び前記主面の反対側の裏面を有する試料の前記裏面に照射された光の反射光または散乱光を検出することによって、前記裏面の画像データを取得する光学検査部と、
前記画像データを用いて検出された異物の少なくとも一部を除去する研磨部材を含む研磨除去部と、
前記画像データを用いて検出された異物の少なくとも一部を除去する粘着部材を含む粘着除去部と、
を備え、
前記光学検査部は、前記研磨部材によって前記異物の少なくとも一部を除去する前の前記画像データとして研磨前データを取得し、
前記研磨除去部は、前記研磨前データを用いて検出された前記異物の少なくとも一部を前記研磨部材によって除去し、
前記光学検査部は、前記研磨部材によって前記異物の少なくとも一部を除去された後の前記画像データとして研磨後データを取得し、
前記粘着除去部は、前記研磨後データを用いて検出された前記異物の少なくとも一部を前記粘着部材によって除去し、
前記研磨前データ及び前記研磨後データの差分を差分データとして抽出する制御部をさらに備え、
前記粘着除去部は、前記研磨後データを用いた前記差分データにより検出された前記異物を除去する、
異物除去装置。
【請求項6】
前記光学検査部は、前記研磨部材によって前記異物の少なくとも一部を除去する前の前記裏面の前記画像データとして粘着前データを取得し、
前記粘着除去部は、前記粘着前データを用いて検出された前記異物の少なくとも一部を除去する、
請求項に記載の異物除去装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の異物除去装置を備え、
前記異物除去装置により前記裏面の前記異物を除去した後で、前記主面の検査を行う検査装置。
【請求項8】
請求項5または6に記載の異物除去装置を備え、
前記異物除去装置により前記裏面の前記異物を除去した後で、前記主面に形成されたマスクパターンを用いて露光を行う露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物除去方法、検査方法、露光方法、異物除去装置、検査装置及び露光装置に関するものであり、例えば、試料の裏面の異物を除去する異物除去方法、検査方法、露光方法、異物除去装置、検査装置及び露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の微細化を担うリソグラフィ技術に関しては、現在、露光波長193nmのArFエキシマレーザを露光光源としたArFリソグラフィが量産適用されている。また、露光装置の対物レンズとウエハとの間を水で満たして、解像度を高める液浸技術(ArF液浸リソグラフィと呼ばれる。)も量産に利用されている。さらに、一層の微細化を実現するために、露光波長13.5nmのEUV(Extreme Ultravioled)光を用いたEUVL(EUV Lithography)の実用化に向けて様々な技術開発が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-096484号公報
【文献】特開2014-220495号公報
【文献】特開2014-006314号公報
【文献】特開2004-327485号公報
【文献】特開2011-081282号公報
【文献】特開平06-260464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、EUV光を用いたEUVLでは、従来の光マスクと異なり、露光時のマスク保持方式は、裏面吸着である。この際、マスク裏面とチャックとの間に異物があると、マスクが変形する。マスクの変形によって、転写パターンの位置ずれを起こす場合がある。
【0005】
マスクの裏面のクリーニング方法として、ウェットクリーニングが用いられる場合がある。しかしながら、ウェットクリーニングを行うと、パターンにダメージを与える恐がある。また、ウェットクリーニングにおいては、洗浄されたかどうかの確認工程の追加が必要である。したがって、パターンへの影響が懸念されるとともに、リソグラフィ工程が増大する。
【0006】
本発明の目的は、パターンへの影響及びクリーニング工程の増大を抑制するとともに、試料の裏面の異物を高確度で除去することができる異物除去方法、検査方法、露光方法、異物除去装置、検査装置及び露光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る異物除去方法は、主面及び前記主面の反対側の裏面を有する試料の前記裏面に照射された光の反射光または散乱光を検出することによって、前記裏面の画像データを研磨前データとして取得する第1検査ステップと、前記研磨前データを用いて検出された第1異物の少なくとも一部を、研磨部材によって除去する研磨ステップと、前記研磨ステップの後で、前記裏面の前記画像データを研磨後データとして取得する第2検査ステップと、前記研磨後データを用いて検出された第2異物の少なくとも一部を、粘着部材によって除去する粘着ステップと、を備える。このような構成とすることにより、試料の裏面の異物を高確度で除去することができる。
【0008】
また、本発明に係る異物除去装置は、主面及び前記主面の反対側の裏面を有する試料の前記裏面に照射された光の反射光または散乱光を検出することによって、前記裏面の画像データを取得する光学検査部と、前記画像データを用いて検出された異物の少なくとも一部を除去する研磨部材を含む研磨除去部と、前記画像データを用いて検出された異物の少なくとも一部を除去する粘着部材を含む粘着除去部と、を備え、前記光学検査部は、前記研磨部材によって前記異物の少なくとも一部を除去する前の前記画像データとして研磨前データを取得し、前記研磨除去部は、前記研磨前データを用いて検出された前記異物の少なくとも一部を前記研磨部材によって除去し、前記光学検査部は、前記研磨部材によって前記異物の少なくとも一部を除去された後の前記画像データとして研磨後データを取得し、前記粘着除去部は、前記研磨後データを用いて検出された前記異物の少なくとも一部を前記粘着部材によって除去する。このような構成とすることにより、試料の裏面の異物を高確度で除去することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、試料の裏面の異物を高確度で除去することができる異物除去方法、検査方法、露光方法、異物除去装置、検査装置及び露光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係る異物除去装置を例示した構成図である。
図2】(a)及び(b)は、実施形態1に係る異物除去装置において、研磨除去部の動作を提示した図である。
図3】(a)~(c)は、実施形態1に係る異物除去装置の粘着除去部の動作を例示した図である。
図4】実施形態1に係る異物除去方法を例示したフローチャート図である。
図5】(a)及び(b)は、実施形態1に係る異物除去方法において、研磨前データ及び研磨後データを例示した図である。
図6】(a)及び(b)は、実施形態1に係る異物除去方法において、研磨前データ及び研磨後データを例示した図である。
図7】(a)及び(b)は、実施形態1に係る異物除去方法において、研磨前データ及び研磨後データを例示した図である。
図8】(a)及び(b)は、実施形態1に係る異物除去方法において、研磨前データ及び研磨後データを例示した図である。
図9】(a)は、実施形態1に係る異物除去方法において、研磨前データを例示した図であり、(b)及び(c)は、研磨後データを例示した図であり、(d)は、粘着部材によって異物を除去した後の画像データを例示した図である。
図10】実施形態2に係る異物除去方法を例示したフローチャート図である。
図11】実施形態3に係る異物除去方法を例示したフローチャート図である。
図12】実施形態4に係る検査装置を用いた検査方法を例示したフローチャート図である。
図13】実施形態5に係る露光装置を用いた露光方法を例示したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態の具体的構成について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0012】
(実施形態1)
実施形態1に係る異物除去装置を説明する。異物除去装置は、試料の裏面の異物を除去することにより、試料の裏面をクリーニングする。試料は、例えば、EUVマスクである。なお、試料は、裏面の異物を除去してクリーニングすることができれば、EUVマスクに限らず、光学マスクでもよいし、半導体ウエハ等でもよい。
【0013】
図1は、実施形態1に係る異物除去装置を例示した構成図である。図1に示すように、異物除去装置1は、光学検査部10、変位センサ部20、研磨除去部30、粘着除去部40及び制御部50を備えている。
【0014】
光学検査部10は、試料60の裏面62に照射光11を照射して、試料60の裏面62の画像データを取得する。試料60は、主面61及び主面61の反対側の裏面62を有している。試料60がEUVマスクの場合には、試料60の主面61にはマスクパターンが形成されている。EUVマスクの裏面は、露光装置等のチャック部に吸着される。光学検査部10は、試料60の裏面62に照射された光の反射光または散乱光を検出することによって、裏面62の画像データを取得する。
【0015】
光学検査部10は、画像データを用いて裏面62における異物63を検出する。異物63は、例えば、パーティクルである。なお、異物63は、パーティクルに限らず、ホコリ、ゴミ等、裏面62を吸着させた場合に試料60を変形させる原因となるあらゆる物質を含む。光学検査部10は、例えば、共焦点光学系により設定された照射光11を異物63に対して照射することにより、裏面62における異物63の位置及び大きさ、並びに、裏面62から突出した異物63の高さを検出する。
【0016】
変位センサ部20は、異物除去装置1と、試料60の裏面62との間の距離を測定する。変位センサ部20は、レーザ光21を出射するレーザと、裏面62で反射したレーザ光21を検出するセンサとを有している。変位センサ部20は、裏面62で反射したレーザ光21を検出することによって、異物除去装置1における研磨除去部30及び粘着除去部40の裏面62までの距離を測定する。また、変位センサ部20は、異物63で反射したレーザ光21を検出することによって、研磨除去部30及び粘着除去部40の異物63までの距離を測定してもよい。
【0017】
研磨除去部30は、研磨部材31を含んでいる。研磨部材31は、画像データを用いて検出された異物63の少なくとも一部を除去する。研磨部材31は、例えば、研磨テープである。研磨テープは、中心軸32に巻かれた部分33と、中心軸32から延びた部分34を含んでいる。中心軸32から延びた部分34は、中心軸32から試料60の裏面62の方へ延びている。
【0018】
図2(a)及び(b)は、実施形態1に係る異物除去装置1において、研磨除去部30の動作を提示した図である。図2(a)に示すように、光学検査部10において異物63の位置を検出した異物除去装置1は、研磨除去部30の研磨部材31を、異物63の直上に位置させるように移動させる。そして、異物除去装置1は、変位センサ部20により研磨部材31の先端の位置及び裏面62からの高さH1を測定しながら、研磨部材31を異物63に接触させて異物63を除去する。
【0019】
例えば、研磨除去部30は、異物63が研磨部材31によって研磨されるように研磨部材31を動かす。具体的には、裏面62に平行に延びた中心軸32の周りに研磨部材31を回転させることにより、異物63の頂点に接触させた研磨部材31を、裏面62に平行な面内における一方向に移動させて研磨する。一方向を研磨方向35という。これにより、異物63の頂点部分から除去する。
【0020】
例えば、研磨部材31として、研磨テープを用いた場合には、研磨テープの張力を70[gF]とする。研磨テープを研磨方向35に移動させる速度を10[mm/sec]とする。研磨部材31で異物63を除去する時間を4000[msec]とする。研磨部材31の先端の形状をR5の球状とする。
【0021】
そして、図2(b)に示すように、異物63の裏面62からの高さが目標の高さH2以下になるまで変位センサ部20で測定しながら異物63を除去する。
【0022】
粘着除去部40は、粘着部材41を含んでいる。粘着部材41は、画像データを用いて検出された異物63の少なくとも一部を除去する。粘着部材41は、例えば、接着剤である。粘着部材41は、支持棒42の先端に設けられている。なお、粘着除去部40は、異物除去装置1の本体から分離して動作させてもよい。
【0023】
図3(a)~(c)は、実施形態1に係る異物除去装置1の粘着除去部40の動作を例示した図である。光学検査部10において異物63の位置を検出した異物除去装置1は、図3(a)に示すように、粘着除去部40の粘着部材41が異物63の直上に位置するように移動させる。そして、図3(b)に示すように、異物除去装置1は、変位センサ部20により粘着部材41の先端の位置及び裏面62からの高さを測定しながら、支持棒42を降下させ、粘着部材41を異物63に接触させる。これにより、異物63は、粘着部材41に付着する。
【0024】
例えば、粘着部材41の先端の大きさをΦ3[mm]としてもよい。また、粘着部材41の接触角、すなわち、支持棒42と裏面62とのなす角を31[°]にしてもよい。粘着部材41が裏面62より0.02[mm]程度下方に沈み込むような圧力を支持棒42にかけて支持棒42を撓ませてもよい。粘着部材41を異物63に対して3[sec]押し付けて付着させてもよい。
【0025】
次に、図3(c)に示すように、粘着除去部40は、粘着部材41に異物63を付着させたまま、支持棒42を試料60の裏面62から上昇させる。このようにして、粘着除去部40は、異物63を除去する。
【0026】
制御部50は、異物除去装置1の動作を制御する。また、制御部50は、画像データのモニター等への表示、画像データの保存、画像データの加工等の処理を行う。制御部50は、例えば、PC(Personal Computer)である。
【0027】
次に、異物除去装置1の動作として、異物除去方法を説明する。図4は、実施形態1に係る異物除去方法を例示したフローチャート図である。
【0028】
図4のステップS11に示すように、試料60の裏面62の画像データを研磨前データとして取得する。具体的には、例えば、異物除去装置1の光学検査部10により、試料60の裏面62に照射された光の反射光または散乱光を検出することによって、試料60の裏面62の画像データを取得する。ステップS11における画像データを研磨前データという。このように、光学検査部10は、研磨部材31によって異物63の少なくとも一部を除去する前の画像データとして研磨前データを取得する。
【0029】
図5(a)は、実施形態1に係る異物除去方法において、研磨前データを例示した図である。図5(a)に示すように、試料60の裏面62には、異物63aが検出されている。研磨前データにおける異物63を、異物63aと呼ぶ。異物63aは、例えば、パーティクルである。異物63aは、試料60の裏面62に固着している場合もあれば、固着していない場合もある。光学検査部10は、研磨前データにおける異物63aの位置、大きさ及び裏面62から突出した異物63aの高さを検出する。例えば、異物63aの裏面62からの高さは、5.28[μm]である。
【0030】
次に、図4のステップS12に示すように、研磨前データを用いて検出された異物63aを、研磨部材31によって除去する。具体的には、異物除去装置1における研磨除去部30は、図2(a)及び(b)で示した動作により、研磨前データを用いて検出された異物63aの少なくとも一部を、研磨部材31によって除去する。研磨除去部30は、異物63aの裏面62からの高さが目標の高さH2以下になるまで、異物63aの少なくとも一部を除去する。研磨部材31を移動させる方向は、研磨方向35である。異物63aが試料60の裏面に固着している場合には、研磨除去部30は、異物63aを研磨部材31によって研磨することにより、除去してもよい。一方、異物63aが試料60の裏面62に固着していない場合には、研磨除去部30は、異物63aを検出された位置から移動させることにより、除去してもよい。
【0031】
次に、図3のステップS13に示すように、試料60の裏面62の画像データを研磨後データとして取得する。具体的には、ステップS11と同様の手法を用いて、光学検査部10は、試料60の裏面62に照射された光の反射光または散乱光を検出することによって、試料60の裏面62の研磨後データを取得する。ステップS13における画像データを研磨後データと呼ぶ。
【0032】
図5(b)は、実施形態1に係る異物除去方法において、研磨後データを例示した図である。図5(a)及び(b)は、試料60の裏面62の同位置を撮像した図である。図5(b)に示すように、試料60の裏面62において、異物63aは検出されていない。すなわち、異物63aは除去されている。このように、研磨除去部30により、異物63aを除去することができる。
【0033】
図6(a)及び(b)は、実施形態1に係る異物除去方法において、研磨前データ及び研磨後データを例示した図である。図6(a)及び(b)は、試料60の裏面62の同位置を撮像した図である。図6(a)に示すように、研磨前データには、異物63aが検出されている。例えば、異物63aの裏面62からの高さは、5.85[μm]である。
【0034】
一方、図6(b)に示すように、研磨後データにおいて、異物63aが検出された位置には、異物63aは検出されていない。しかしながら、異物63aが検出された位置よりも研磨方向35側には、異物63bが検出されている。異物63bの裏面62からの高さは、例えば、最大値で0.32[μm]である。研磨後データにおいて、異物63aと異なる位置に検出された異物63を、異物63bと呼ぶ。異物63は、異物63a及び異物63bを含んだ総称として用いる。異物63bは、例えば、異物63aを研磨したことにより異物63aが分離されたパーティクルである。すなわち、異物63aが分離した異物63bは、依然として、試料60の裏面62に残っている。しかしながら、異物63bの高さは、1[μm]よりも小さくなっている。
【0035】
図7(a)及び(b)は、実施形態1に係る異物除去方法において、研磨前データ及び研磨後データを例示した図である。図7(a)及び(b)は、試料60の裏面62の同位置を撮像した図である。図7(a)に示すように、研磨前データには、異物63aが検出されている。例えば、異物63aの裏面62からの高さは、14.43[μm]である。
【0036】
一方、図7(b)に示すように、研磨後データにおいて、異物63aが検出された位置には、異物63aは検出されていない。しかしながら、異物63aが検出された位置よりも研磨方向35側には、異物63bが検出されている。異物63bの裏面62からの高さは、例えば、最大値で0.77[μm]である。異物63bは、例えば、異物63aを研磨したことにより異物63aが粉々に粉砕されたパーティクルである。すなわち、異物63aが粉々に粉砕された異物63bは、依然として、試料60の裏面62に残っている。しかしながら、異物63bの高さは、1[μm]よりも小さくなっている。
【0037】
図8(a)及び(b)は、実施形態1に係る異物除去方法において、研磨前データ及び研磨後データを例示した図である。図8(a)及び(b)は、試料60の裏面62の同位置を撮像した図である。図8(a)に示すように、研磨前データには、異物63aが検出されている。例えば、異物63aの裏面62からの高さは、2.76[μm]である。
【0038】
一方、図8(b)に示すように、研磨後データにおいて、異物63aは、依然として、同位置に残存している。よって、異物63aは、試料60の裏面に固着しているものと考えられる。図8(b)における異物63aの裏面62からの高さは、例えば、0.38[μm]である。よって、異物63aの高さは、1[μm]よりも小さくなっている。
【0039】
図9(a)は、実施形態1に係る異物除去方法において、研磨前データを例示した図であり、(b)及び(c)は、研磨後データを例示した図である。図9(a)及び(b)は、試料60の裏面62の同位置を撮像した図である。図9(c)は、(a)及び(b)と倍率が異なっており、(c)中の四角枠は、(b)に該当する。
【0040】
図9(a)に示すように、研磨前データには、異物63aが検出されている。例えば、異物63aの裏面62からの高さは、8.88[μm]である。
【0041】
一方、図9(b)に示すように、研磨後データにおいて、異物63aが検出された位置には、異物63aは検出されていない。また、図9(b)には、異物63bが検出されていない。しかしながら、図9(b)を拡大した図9(c)に示すように、異物63aが検出された位置よりも研磨方向35側には、異物63bが検出されている。異物63bの裏面62からの高さは、例えば、7.44[μm]である。異物63bは、試料60の裏面62に固着されておらず、研磨部材31の動きによって、単に異物63bの位置が移動したものとなっている。そして、異物63bは、依然として、試料60の裏面62に残存している。異物63aの高さは、7.44[μm]である。
【0042】
次に、図4のステップS14に示すように、研磨後データを用いて検出された異物63bを、粘着部材41によって除去する。具体的には、異物除去装置1における粘着除去部40は、図3(a)~(c)で示した動作により、研磨後データを用いて検出された異物63bの少なくとも一部を、粘着部材41によって除去する。
【0043】
図9(d)は、実施形態1に係る異物除去方法において、粘着部材41によって異物63bを除去した後の画像データを例示した図である。図9(c)及び(d)は、試料60の裏面62の同位置を撮像した図である。図9(d)に示すように、異物63bが検出された位置には、異物63bは検出されていない。よって、異物63bは、粘着部材41によって除去されている。このように、本実施形態の異物除去方法では、研磨部材31及び粘着部材41により試料60の裏面62の異物63を除去することができる。
【0044】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態では、研磨部材31及び粘着部材41を用いることにより、試料60の裏面62のほとんどすべての異物63を除去することができる。よって、裏面62の異物63を高確度で除去することができる。
【0045】
異物63には、試料60の裏面62に固着しているもの、及び、固着していないものに分けられる。固着している異物63に関しては、研磨部材31によって異物63を研磨し、裏面62からの異物63の高さを、目標値よりも低くすることができる。よって、試料60がマスクの場合には、マスクをチャック部上に配置させたときの変形によるパターンずれを抑制することができる。
【0046】
固着していない異物63に対して、研磨部材31による研磨を試みると異物63が移動するだけで、試料60の裏面62から除去することができない。したがって、固着していない異物63に対しては、粘着部材41に付着させて除去することができる。
【0047】
このように、本実施形態の異物除去装置1及び異物除去方法は、研磨部材31及び粘着部材41の組み合わせにより、パターンずれに影響するほとんどすべての試料60の裏面62の異物63を除去することができる。
【0048】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る異物除去方法を説明する。本実施形態は、実施形態1の異物除去方法と、研磨前データ及び研磨後データの差分を抽出する点が異なっている。
【0049】
図10は、実施形態2に係る異物除去方法を例示したフローチャート図である。図10のステップS21~ステップS23に示すように、試料60の裏面62の画像データを研磨前データとして取得すること、研磨前データを用いて検出された異物63を研磨部材31によって除去すること、及び、試料60の裏面62の画像データを研磨後データとして取得することは、図4のステップS11~ステップS13と同様である。
【0050】
図10のステップS24に示すように、本実施形態では、研磨後データを取得した後で、研磨前データ及び研磨後データの差分を差分データとして抽出する。研磨前データ及び研磨後データの差分を差分データという。差分データは、研磨前データ及び研磨後データを用いて算出される。例えば、制御部50は、研磨前データ及び研磨後データの差分を差分データとして抽出する。
【0051】
次に、図10のステップS25に示すように、差分データを用いて検出された異物を粘着部材41によって除去する。具体的には、異物除去装置1における粘着除去部40は、差分データにより検出された異物63bの少なくとも一部を、粘着部材41によって除去する。このように、本実施形態では、異物63は、研磨後データを用いた差分データにより検出されている。
【0052】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態では、差分データを用いて検出した異物63を粘着部材41で除去する。差分データにおいては、研磨前データでは検出されず、研磨後データにおいて検出された異物63を抽出することができる。したがって、試料60の裏面62において、研磨部材31による除去後の異物63を漏れなく検出することができる。例えば、研磨部材31による除去では、裏面62に固着していない異物63の位置を移動させただけとなる場合がある。そのような場合には、差分データにより、漏れなく検出することができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1の記載に含まれている。
【0053】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係る異物除去方法を説明する。本実施形態は、研磨部材31によって異物63を除去する前に、粘着部材41によって異物63を除去する点で、実施形態1と異なっている。
【0054】
図11は、実施形態3に係る異物除去方法を例示したフローチャート図である。図11のステップS31に示すように、試料60の裏面62の画像データを粘着前データとして取得する。具体的には、例えば、異物除去装置1の光学検査部10により、試料60の裏面62に照射された光の反射光または散乱光を検出することによって、試料60の裏面62の粘着前データを取得する。
【0055】
次に、図11のステップS32に示すように、粘着前データを用いて検出された異物63の少なくとも一部を、粘着部材41によって除去する。具体的には、異物除去装置1における粘着除去部40は、粘着前データを用いて検出された異物63の少なくとも一部を、粘着部材41によって除去する。
【0056】
次に、図11のステップS33~S36に示すように、試料60の裏面62の画像データを研磨前データとして取得すること、研磨前データを用いて検出された異物63aを研磨部材31によって除去すること、試料60の裏面62の画像データを研磨後データとして取得すること、及び、研磨後データを用いて検出された異物63を粘着部材41によって除去することは、実施形態1のステップS11~S14と同様である。
【0057】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態では、研磨部材31で異物63を除去する前に、粘着部材41によって異物63を除去している。そして、研磨部材31で異物63を除去した後に、もう一度、粘着部材41で異物63を除去している。よって、研磨部材31による異物63の除去の前後で、粘着部材41による異物63の除去を行っている。これにより、試料60の裏面62の異物63を漏れなく、より高確度で除去することができる。また、裏面62に固着していない異物63が、固着している異物63よりも多い場合には、研磨部材31により除去する回数を低減することができ、効率よく異物63を除去することができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1及び2の記載に含まれている。
【0058】
(実施形態4)
次に、実施形態4を説明する。本実施形態は、異物除去装置1を備えた検査装置についてのものである。検査装置における検査対象は、異物除去装置1で異物63を除去された試料60であり、例えば、EUVマスクである。なお、試料60は、異物63を除去してクリーニングすることができれば、EUVマスクに限らず、光学マスクでもよいし、半導体ウエハ等でもよいことは前述のとおりである。
【0059】
図12は、実施形態4に係る検査装置を用いた検査方法を例示したフローチャート図である。図12のステップS41に示すように、実施形態1~3の異物除去方法により、試料60の裏面62の異物63を除去する。実施形態1~3のいずれかの異物除去方法を用いてもよいし、実施形態1~3の異物除去方法を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0060】
次に、図12のステップS42に示すように、試料60の主面61の検査を行う。試料60の主面61には、例えば、マスクパターンが形成されている。
【0061】
本実施形態によれば、検査装置における試料60の保持方式として、裏面62の吸着方式を採用している場合に、試料60の裏面62と、チャック部との間の異物63を低減することができる。よって、試料60の変形を抑制し、高精度で試料60の主面61を検査することができる。特に、試料60の主面にマスクパターンが形成されている場合には、マスクパターンの検査を高精度で行うことができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1~3の記載に含まれている。
【0062】
(実施形態5)
次に、実施形態5を説明する。本実施形態は、異物除去装置1を備えた露光装置についてのものである。露光装置における試料60は、EUVマスク等のマスクである。
【0063】
図13は、実施形態5に係る露光装置を用いた露光方法を例示したフローチャート図である。図13のステップS51に示すように、実施形態1~3の異物除去方法により、試料60の裏面62の異物63を除去する。実施形態1~3のいずれかの異物除去方法を用いてもよいし、実施形態1~3の異物除去方法を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0064】
次に、図13のステップS52に示すように、試料60の主面61に形成されたマスクパターンを用いて露光を行う。
【0065】
本実施形態によれば、露光装置における試料60の保持方式として、裏面62の吸着方式を採用している場合に、試料60の裏面62と、チャック部との間の異物63を低減することができる。よって、試料60の変形を抑制し、試料60の主面61に形成されたマスクパターンにおける転写の位置ずれを抑制することができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1~4の記載に含まれている。
【0066】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態よる限定は受けない。また、実施形態1~5における構成は、適宜、組み合わせてもよい。また、異物除去方法及び異物除去装置を、試料60の裏面62における異物63の除去に適用した場合について説明したが、異物除去方法及び異物除去装置を、試料60の主面61における異物63の除去に適用してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 異物除去装置
10 光学検査部
11 照射光
20 変位センサ部
21 レーザ光
30 研磨除去部
31 研磨部材
32 中心軸
33 巻かれた部分
34 延びた部分
35 研磨方向
40 粘着除去部
41 粘着部材
42 支持棒
50 制御部
60 試料
61 主面
62 裏面
63 異物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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図13