(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】浴槽
(51)【国際特許分類】
A47K 3/02 20060101AFI20220520BHJP
A47K 3/00 20060101ALI20220520BHJP
E03C 1/02 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
A47K3/02
A47K3/00 Q
E03C1/02
(21)【出願番号】P 2019004717
(22)【出願日】2019-01-15
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】313014077
【氏名又は名称】トクラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】行森 直志
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 悠
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-328064(JP,A)
【文献】実開昭55-045833(JP,U)
【文献】特開2007-278029(JP,A)
【文献】実開昭51-057844(JP,U)
【文献】実開昭58-185665(JP,U)
【文献】特開2013-106942(JP,A)
【文献】米国特許第4551869(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/02
A47K 3/00
E03C 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽本体と、
前記浴槽本体の下面に設けられ、前記浴槽本体を接地面との間で支持する複数の脚部と、を備え、
複数の前記脚部のうち少なくとも1つの前記脚部には、配管を挿通するための貫通部が形成されている浴槽。
【請求項2】
複数の前記脚部は水平断面が筒状である請求項1に記載の浴槽。
【請求項3】
隣り合う複数の前記脚部の間を連結するリブを備える請求項1又は2に記載の浴槽。
【請求項4】
前記浴槽本体の底面における幅方向及び奥行き方向の略中央部分には、前記浴槽本体を洗浄するための洗浄用湯水を前記浴槽本体に噴射する噴射部が設けられ、
前記配管は、前記噴射部に前記洗浄用湯水を供給するための洗浄配管である請求項1、2、又は3に記載の浴槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽には、給湯機から浴槽本体に湯水を供給する湯水供給配管や追い焚き機能を実現するための追い焚き用配管等の複数の配管が配置されている。また、浴槽には、入水動作を容易にするために浴槽の跨ぎ高さを低くすることが求められている。
【0003】
一方で特許文献1には、浴槽本体を支持する板状のリブの下方に配管を配置する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の構成では、浴槽本体の下方に配管を配置するための空間を確保する必要があり、浴槽の跨ぎ高さが高くなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、浴槽の跨ぎ高さを高くすることなく配管を浴槽の下部に配置しつつ、配管の配置箇所の選択性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様の浴槽は、浴槽本体と、前記浴槽本体の下面に設けられ、前記浴槽本体を接地面との間で支持する複数の脚部と、を備え、複数の前記脚部のうち少なくとも1つの前記脚部には、配管を挿通するための貫通部が形成されている。
【0008】
第2の態様の浴槽は、第1の態様の浴槽であって、複数の前記脚部は水平断面が筒状である。
【0009】
第3の態様の浴槽は、第1又は第2の態様の浴槽であって、隣り合う複数の前記脚部の間を連結するリブを備える。
【0010】
第4の態様の浴槽は、第1、第2、又は第3の態様の浴槽であって、前記浴槽本体の底面における幅方向及び奥行き方向の略中央部分には、前記浴槽本体を洗浄するための洗浄用湯水を前記浴槽本体に噴射する噴射部が設けられ、前記配管は、前記噴射部に前記洗浄用湯水を供給するための洗浄配管である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、浴槽の跨ぎ高さを高くすることなく配管を浴槽の下部に配置しつつ、配管の配置箇所の選択性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】本実施の形態における浴槽の拡大正面図である。
【
図4】本実施の形態における脚部及びリブを示す斜視図である。
【
図5】本実施の形態の変形例における脚部及びリブを示す斜視図である。
【
図6】本実施の形態の変形例における脚部及びリブを下方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施の形態における浴槽10について説明する場合は、浴槽10を基準とする方向を用いて説明する。まず、
図1に示すX方向が浴槽10の幅方向であり、その左側を左方とし、その反対側を右方とする。また、
図1に示すY方向が浴槽10の奥行き方向であり、その手前側を前方とし、その反対側を後方とする。さらに、
図1に示すZ方向が浴槽10の高さ方向であり、その上側を上方とし、その反対側を下方とする。
【0014】
図1は、本実施の形態における浴槽10の平面図であり、
図2は、本実施の形態における浴槽10の正面図である。なお、
図2は、
図1に示す浴槽10の構成を簡略化して図示した正面図であるため、
図1に示す一部の構成が省略されている。
【0015】
図1に示すように、浴槽10は、浴槽本体20と、4個の脚部40と、リブ50と、洗剤タンク60と、複数の配管70と、機能ユニット80と、を備えている。そして、図示を省略しているが、浴槽10の前方に洗い場が存在し、浴槽10の後方、左方、及び右方に浴室の壁部が存在する。なお、浴槽10は、その下方に設けられた浴槽パン等の接地面T(
図2参照)の上に設置されている。
【0016】
浴槽本体20は、底面部22と、底面部22から上方に延びる複数の側壁部24、26、28、30と、側壁部24、26、28、30の上端から奥行き方向外側又は幅方向外側に突出するフランジ状のフランジ部32と、を備えている。
【0017】
図2に示すように、底面部22は、下面に4個の脚部40が設けられた下段部22Aと、下段部22Aと連続し、下段部22Aよりも上方に位置する上段部22Bと、を備えている。
【0018】
また、
図1に示すように、底面部22における幅方向及び奥行き方向の略中央部分には、浴槽本体20を洗浄するための洗浄用湯水を浴槽本体20に噴射する噴射部12が設けられている。噴射部12は、洗浄用湯水を側壁部24、26、28、30に向けて拡散して噴射する図示しない噴射ノズルを備えている。
【0019】
ここで、「洗浄用湯水」には、図示しない給湯機又は図示しない給水管から供給される湯水である「通常湯水」と、この通常湯水に洗剤タンク60内の洗剤が混合された「混合湯水」とが含まれる。以下、単に「洗浄用湯水」と記載する場合は、通常湯水と混合湯水との双方を含んでいる。
【0020】
さらに、底面部22における噴射部12の前方には、浴槽本体20内の湯水を排水する排水栓14が設けられている。この排水栓14には、図示しない排水配管が接続されており、排水栓14を開くことにより浴槽本体20内の湯水が排水配管に排水される。一方、排水栓14を閉じることにより浴槽本体20内に湯水を溜めることができる。
【0021】
フランジ部32における前端かつ右端には、排水栓14を開閉するための開閉駆動機構16が設けられている。この開閉駆動機構16は、排水栓14に開閉駆動力を伝達し、排水栓14を開いたり閉じたりする。
【0022】
図3は、
図1のA-A断面図である。なお、
図3においては、
図1に示す一部の構成の図示を省略している。
図3に示すように、4個の脚部40は、浴槽本体20を接地面Tとの間で支持する部材であって、下段部22Aの下面に設けられている。4個の脚部40は、水平断面が円筒状を呈している。
【0023】
図4は、脚部40を示す斜視図である。
図3及び
図4に示すように、脚部40は、下段部22Aの下面から下方に延びる立設部44と、立設部44の下面であって、接地面Tと接触する接触部46と、を備えている。4個の脚部40のうち、前方かつ左方の脚部40の立設部44には、噴射部12に洗浄用湯水を供給するための洗浄配管76が挿通される立設部44を貫通した貫通部42が2ヶ所形成されている。貫通部42は、洗浄配管76の外径よりもやや大きい外径を有する円形の孔となっている。
【0024】
リブ50は、隣り合う4個の脚部40を連結する板状部材である。このリブ50は、上面視にて噴射部12を取り囲むようにして隣り合う脚部40を連結している(
図1参照)。そして、リブ50は、立設部44の外周面から幅方向及び奥行き方向に延びている。
【0025】
図1に示す洗剤タンク60は、洗剤を貯留するタンクである。この洗剤タンク60は、図示しない浴室の壁部と側壁部28との間において、フランジ部32の下方に設置されている。
【0026】
ここで、本実施の形態は、複数の配管70として、開閉チューブ72、湯水供給配管74、洗浄配管76、及び洗剤供給配管78を少なくとも備えている。
【0027】
開閉チューブ72は、その内部に排水栓14を開閉させるための駆動部材(例:ワイヤ)を備えている。この開閉チューブ72は、
図1に示すように、その一端が開閉駆動機構16に接続され、その他端が排水栓14に接続されている。
【0028】
湯水供給配管74は、図示しない給湯機及び図示しない給水管に接続されており、給湯機により所定温度まで加熱された湯や給水管から水道水が供給される。そして、湯水供給配管74は、供給された湯水を浴槽本体20内に供給可能となっている。
【0029】
洗浄配管76は、
図1に示すように、その一端が機能ユニット80に接続され、その他端が噴射部12に接続されている。これにより、洗浄配管76は、機能ユニット80から圧送された洗浄用湯水を噴射部12に供給可能となっている。
【0030】
洗剤供給配管78は、その一端が洗剤タンク60に接続され、その他端が機能ユニット80に接続されている。これにより、洗剤供給配管78は、洗剤タンク60内の洗剤を機能ユニット80に供給可能となっている。
【0031】
図1に示す機能ユニット80は、洗浄用湯水を洗浄配管76に圧送するものである。この機能ユニット80は、図示しない浴室の壁部と側壁部24との間において、フランジ部32の下方に設置されている。機能ユニット80には、給湯機により所定温度まで加熱された湯、及び給水管からの水道水が供給可能となっている。また、機能ユニット80は、洗浄配管76及び洗剤供給配管78に接続されている。
【0032】
これにより、機能ユニット80は、例えば、図示しない洗浄リモコンの操作に基づき浴槽本体20を洗浄する洗浄運転が行われる場合に、洗浄用湯水を洗浄配管76に圧送する。具体的には、機能ユニット80は、洗浄運転において、洗浄用湯水として、通常湯水と混合湯水とを図示しない電磁弁を適宜切り替えて洗浄配管76に圧送する。そのため、洗浄配管76を通じて洗浄用湯水が供給された噴射部12からは、通常湯水と混合湯水とが適宜切り替えられて浴槽本体20に噴射され、混合湯水による洗浄や通常湯水によるすすぎが行われる。
【0033】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
浴槽10は、上記のように、開閉チューブ72、湯水供給配管74、洗浄配管76、及び洗剤供給配管78等の複数の配管70が配置される。また、浴槽10には、入水動作を容易にするために浴槽本体20の跨ぎ高さを低くすることが求められる。
【0034】
配管70を浴槽10の下部に配置するには、例えば、浴槽10の下方に配管70を配置するための空間を確保し、その確保した空間に配管70を配置することが考えられる。しかし、この場合は、浴槽10の下方に確保した空間だけ、浴槽本体20の跨ぎ高さが高くなってしまう。
【0035】
そこで、本実施の形態は、浴槽本体20の跨ぎ高さを低くしつつ、配管70を浴槽10の下部に配置するために、浴槽本体20を接地面Tとの間で支持する4個の脚部40の1つに貫通部42を形成している。そして、この貫通部42には、噴射部12に洗浄用湯水を供給するための洗浄配管76が挿通されている。なお、浴槽本体20の全荷重を支える脚部40は、浴槽本体20の下面(裏面)の四方に一体成形で配置されることが多い。加えて、脚部40は、浴槽本体20の水勾配を得るのに十分な高さで形成されているため、浴槽本体20の下面と接地面Tとの間の空間を広くすることができる。その結果、脚部40の高さ寸法内に上記の洗浄配管76を挿通するための貫通部42を形成することができる。
【0036】
本実施の形態は、前方かつ左方の脚部40に貫通部42を形成したが、その他の脚部40に貫通部42を形成することもできるため、浴室の構造に合わせて貫通部42を形成することで洗浄配管76の配置箇所に選択性を持たせることができる。
【0037】
また、本実施の形態は、浴槽10の下方に配管70を配置するための空間を確保することなく、洗浄配管76を配置できるため、浴槽本体20の跨ぎ高さを高くすることなく洗浄配管76を浴槽10の下部に配置することができる。
【0038】
以上より、本実施の形態は、浴槽10の下方に配管70を配置するための空間を設けた構成に比べて、浴槽本体20の跨ぎ高さを高くすることなく洗浄配管76を浴槽10の下部に配置しつつ、洗浄配管76の配置箇所の選択性を高めることができる。
【0039】
また、浴槽本体20の跨ぎ高さを低くしつつ、配管70を浴槽10の下部に配置するには、例えば、浴槽本体20を支持する板状のリブ50に切り欠きを設け、その切り欠きに配管70を配置することが考えられる。しかし、この場合は、リブ50に切り欠きを設けない場合に比べて、リブ50の強度が低下し、浴槽本体20を支持する剛性が低下してしまう。
【0040】
本実施の形態は、上記のように、水平断面が円筒状の4個の脚部40の1つに貫通部42を形成しているため、板状のリブ50に切り欠きを設けた構成に比べて、浴槽本体20を支持する剛性の低下を抑制することができる。また、本実施の形態は、脚部40に貫通部42を形成することで、必要な強度を確保しつつ、最適な配管経路を選ぶことができる。
【0041】
また、本実施の形態は、隣り合う4個の脚部40を連結するリブ50を設けつつ、4個の脚部40により浴槽本体20を接地面Tとの間で支持している。そして、脚部40の周囲には空間があるため、リブ50を交差させることで、浴槽本体20を支持する剛性を高めることができる。そのため、本実施の形態は、脚部40のみで浴槽本体20を支持する構成に比べて、浴槽本体20を支持する剛性を高めることができる。
【0042】
本実施の形態と異なり、例えば、噴射部12を側壁部24の近傍に設けた場合は、側壁部24と幅方向で対向する側壁部28と噴射部12との距離が遠くなってしまい、側壁部28に噴射ノズルから噴射された洗浄用湯水が届かないことが想定される。
【0043】
これに対し、本実施の形態は、底面部22における幅方向及び奥行き方向の略中央部分に噴射部12を設け、この噴射部12が備える噴射ノズルにより側壁部24、26、28、30の各々に洗浄用湯水が噴射される。そのため、本実施の形態によれば、噴射部12を側壁部24、26、28、30の近傍に設けた場合に比べて、浴槽本体20内の洗浄ムラを抑制することができる。
【0044】
(その他)
上記の実施形態は、4個の脚部40の水平断面を円筒状としたが、これに限らず、水平断面を角筒状としてもよい。つまり、脚部40を多角形の角筒状としてもよい。
【0045】
上記の実施形態は、4個の脚部40の1つに貫通部42を形成したが、これに限らず、4個の脚部40の2つ以上の脚部40に貫通部42を形成してもよい。
【0046】
上記の実施形態は、脚部40を4個設けたが、これに限らず、脚部40は3個でもよく、4個以上でもよい。
【0047】
上記の実施形態は、機能ユニット80を図示しない浴室の壁部と側壁部24との間に設置したが、これに限らず、浴室の壁部と側壁部28との間に機能ユニット80を配置してもよい。つまり、機能ユニット80は、側壁部24、26、28、30のうち、幅方向側の側壁部24、28と浴室の壁部との間に配置することが望ましい。側壁部24、26、28、30のうち、側壁部26と図示しないバスエプロンとの間、及び、側壁部30と浴室の壁部との間に配置することは、機能ユニット80を配置するための空間の確保が困難だからである。以上のように、浴槽10における機能ユニット80等の各構成の配置箇所は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0048】
上記の実施形態は、貫通部42に挿通する配管70を洗浄配管76としたが、これに限らず、他の配管70を貫通部42に挿通してもよい。洗浄配管76以外の他の配管70を貫通部42に挿通した場合は、当該配管70を接続する構成が機能ユニット80に代えて幅方向側の側壁部24、28と浴室の壁部との間に設置される。例えば、ジェットバス機能付きの浴槽10とした場合は、機能ユニット80に代えてジェットバス機構が設置される。
【0049】
上記の実施形態は、貫通部42を円形の孔としたが、貫通部42の形状はこれに限られない。
【0050】
図5は、上記の実施形態の変形例における脚部40及びリブ50を示す斜視図である。
図5に示すように、貫通部42は、立設部44の下端から上方に向かって形成された略逆U字状の溝としてもよい。貫通部42を略逆U字状の溝とすることにより、浴槽本体20と脚部40とが一体成形の場合、貫通部42を容易に成形加工することができる。
【0051】
上記の実施形態は、脚部40の水平断面を円筒状としたが、脚部40の形状はこれに限られない。
【0052】
図6は、上記の実施形態の変形例における脚部40及びリブ50を下方から見た図である。
図6(A)に示すように、立設部44は、下面視にて略C字状を呈する曲部44Aと、曲部44Aに連続し、幅方向又は奥行き方向に延びる延出部44Bとから構成されてもよい。この場合は、曲部44Aに貫通部42が1ヶ所形成されている。また、
図6(B)に示すように、立設部44は、下面視にて略L字状を呈するように構成されてもよい。この場合は、立設部44の湾曲部分に貫通部42が1ヶ所形成されている。なお、
図6では、貫通部42を破線で示し、貫通部42が円形の孔である場合を想定しているが、これに限らず、貫通部42を実線で示し、貫通部42を略逆U字状の溝としてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 浴槽 12 噴射部
20 浴槽本体 40 脚部
42 貫通部 50 リブ
70 配管 76 洗浄配管