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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】レーダカバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/16 20060101AFI20220520BHJP
   H01Q 1/42 20060101ALI20220520BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20220520BHJP
   G01S 13/93 20200101ALN20220520BHJP
   B60R 13/00 20060101ALN20220520BHJP
   B60R 13/04 20060101ALN20220520BHJP
【FI】
B29C45/16
H01Q1/42
G01S7/03 246
G01S13/93
B60R13/00
B60R13/04 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019156574
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021030682
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】504136889
【氏名又は名称】株式会社ファルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 祐一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】太田 耕志朗
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-017125(JP,A)
【文献】特開2016-182866(JP,A)
【文献】特開平03-130119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明部材と、前記透明部材の背面に配置されると共に前記透明部材を支持する支持部材と、前記透明部材と前記支持部材との間に配置される有色層とを有するレーダカバーの製造方法であって、
樹脂からなる前記透明部材と、前記透明部材と異なる樹脂によって形成されると共に前記透明部材の前記背面に前記透明部材の一部を露出させるようにパターニングされて設けられるマスク樹脂層と、を射出成形によって形成する射出成形工程と、
前記マスク樹脂層を介して前記透明部材の背面に前記有色層を形成する有色層形成工程と、
前記マスク樹脂層を前記透明部材から剥離する剥離工程と、
前記剥離工程後に前記透明部材の背面に前記支持部材を形成する支持部材形成工程と を有し、
前記射出成形工程にて、前記マスク樹脂層に前記透明部材から離間する方向に突出する突出部を設け、
前記剥離工程にて、前記突出部を摘まんで前記マスク樹脂層を前記透明部材から剥離する
ことを特徴とするレーダカバーの製造方法。
【請求項2】
前記射出成形工程にて、背面に凹部が設けられた前記透明部材と、前記凹部を露出するようにパターニングされた前記マスク樹脂層とを形成することを特徴とする請求項1記載のレーダカバーの製造方法。
【請求項3】
前記有色層形成工程にて、前記マスク樹脂層を介して前記透明部材の背面に光沢を有する光沢層を前記有色層として真空蒸着あるいはスパッタリングによって形成することを特徴とする請求項1または2記載のレーダカバーの製造方法。
【請求項4】
前記有色層形成工程にて、前記マスク樹脂層を介して前記透明部材の背面に塗料を塗布することで前記有色層を形成することを特徴とする請求項1または2記載のレーダカバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダカバーの製造方法及びレーダカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波等の電波を用いて車両の周囲の障害物等を検知するレーダユニットが車両に搭載されている。このようなレーダユニットは、エンブレム等の識別マークが形成されたレーダカバーに前方から覆われた状態で車両の内部に配置されている。
【0003】
レーダカバーは、レーダユニットにおいて送受信される電波を極力減衰させずに透過可能である必要がある。一方で、レーダカバーは、車両前方の外部から視認されやすい位置に配置されることが一般的であることから、車両の外観印象を形成する重要な部品である。このため、レーダカバーには、車両メーカのエンブレム等の識別マークや質感を高めるための模様等が施されている。このような識別マークや模様は、透明部材の背面に電波を透過可能な金属や塗料からなる有色層をパターニングすることで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-141355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような有色層を透明部材の背面にパターニングして形成する場合には、透明部材の背面にマスキングテープや印刷層からなるマスクを形成し、マスクに重ねるようにして有色層を形成している。しかしながら、このような場合には、形成された透明部材に対して作業者がマスキングテープ等を貼付したり印刷層を形成したりする工程が必要となり、レーダカバーの製造工程が煩雑なものとなる。また、透明部材の背面に凹凸がある場合、マスキングテープ等の貼付や印刷層の形成は困難であった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、レーダカバーの製造方法及びレーダカバーにおいて、透明部材の形成後に透明部材に対してマスクを形成する工程を行うことなく、透明部材の背面に設けられる有色層をパターニング可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、透明部材と、上記透明部材の背面に配置されると共に上記透明部材を支持する支持部材と、上記透明部材と上記支持部材との間に配置される有色層とを有するレーダカバーの製造方法であって、樹脂からなる上記透明部材と、上記透明部材と異なる樹脂によって形成されると共に上記透明部材の上記背面に上記透明部材の一部を露出させるようにパターニングされて設けられるマスク樹脂層と、を射出成形によって形成する射出成形工程と、上記マスク樹脂層を介して上記透明部材の背面に上記有色層を形成する有色層形成工程と、上記マスク樹脂層を上記透明部材から剥離する剥離工程と、上記剥離工程後に上記透明部材の背面に上記支持部材を形成する支持部材形成工程とを有するという構成を採用する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記射出成形工程にて、背面に凹部が設けられた上記透明部材と、上記凹部を露出するようにパターニングされた上記マスク樹脂層とを形成するという構成を採用する。
【0010】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記有色層形成工程にて、上記マスク樹脂層を介して上記透明部材の背面に光沢を有する光沢層を上記有色層として真空蒸着あるいはスパッタリングによって形成するという構成を採用する。
【0011】
第4の発明は、上記第1または第2の発明において、上記有色層形成工程にて、上記マスク樹脂層を介して上記透明部材の背面に塗料を塗布することで上記有色層を形成するという構成を採用する。
【0012】
第5の発明は、透明部材と、上記透明部材の背面に配置されると共に上記透明部材を支持する支持部材と、上記透明部材と上記支持部材との間に配置される有色層とを有するレーダカバーであって、上記有色層が上記透明部材の背面に固着されていると共に上記有色層の全体が上記透明部材を介して露出されており、上記有色層の配置領域を避けて上記支持部材が上記透明部材を介して露出されているという構成を採用する。
【0013】
第6の発明は、上記第5の発明において、上記有色層として、光沢を有する光沢層が設けられているという構成を採用する。
【0014】
第7の発明は、上記第5または第6の発明において、上記有色層として、塗料によって形成された塗料層が設けられているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のレーダカバーの製造方法によれば、射出成形工程によって、パターニングされたマスク樹脂層が背面に設けられた状態にて透明部材が形成される。このため、透明部材の形成後にマスキングテープを貼付したり印刷層を形成したりすることなく、マスクを形成することができる。さらに、マスク樹脂層が透明部材と異なる樹脂材料によって形成されていることから、マスク樹脂層と透明部材との境界領域を明確にし、マスク樹脂層を透明部材から正確に剥離させることが可能となる。このようなマスク樹脂層を有色層形成工程後に透明部材から剥離することで有色層を容易にパターニングすることができる。したがって、本発明のレーダカバーの製造方法によれば、透明部材の形成後に透明部材に対してマスクを形成する工程を行うことなく、透明部材の背面に設けられる有色層をパターニングすることが可能となる。また、本発明のレーダカバーは、有色層が透明部材の背面に固着されていると共に有色層の全体が透明部材を介して露出されており、有色層の配置領域を避けて支持部材が透明部材を介して露出されている。このような本発明のレーダカバーは、上述の本発明のレーダカバーの製造方法によって、製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)が本発明の第1実施形態におけるレーダカバーを備えるラジエータグリルの正面図であり、(b)が本発明の第1実施形態のレーダカバーの拡大正面図である。
図2】本発明の第1実施形態におけるレーダカバーの断面図である。
図3】本発明の第1実施形態におけるレーダカバーの製造方法について説明するための概略図である。
図4】本発明の第2実施形態におけるレーダカバーの断面図である。
図5】本発明の第2実施形態におけるレーダカバーの製造方法について説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係るレーダカバーの製造方法及びレーダカバーの一実施形態について説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1(a)は、本実施形態のレーダカバー10を備えるラジエータグリル1の正面図である。また、図1(b)は、本実施形態のレーダカバー10の拡大正面図である。また、図2は、本実施形態のレーダカバー10の断面図である。
【0019】
ラジエータグリル1は、車両のエンジンルームに通じる開口を塞ぐように車両の前面に設けられており、エンジンルームへの通気を確保しかつエンジンルームへの異物の進入を防止している。ラジエータグリル1の中央には、エンジンルーム内に配置されるレーダユニットR(図2参照)に対向するようにしてレーダカバー10が設けられている。レーダユニットRは、例えばミリ波を発信する発信部、反射波を受信する受信部、及び、演算処理を行う演算部等を有している。このレーダユニットRは、レーダカバー10を透過する電波の送受信を行い、受信した電波に基づいて車両の周囲状況を検知する。例えば、レーダユニットRは、障害物までの距離や障害物の相対速度等を算出して出力する。
【0020】
レーダカバー10は、レーダユニットRを車両の正面側から見て覆うように配置されている。このレーダカバー10は、図2に示すように、車両の正面側から見て、車両メーカのエンブレム等の認識マークを示す図形や文字等を表す光輝領域10Aと、この光輝領域10Aの視認性を向上させる黒色領域10Bとを有する部品である。
【0021】
このようなレーダカバー10は、図2に示すように、透明部材11と、光輝性膜12(有色層)と、ベース部材13(支持部材)とを備えている。透明部材11は、最も車両の外側に配置される略矩形状の透明樹脂材料により形成される部位である。この透明部材11は、車両の外部からの光輝性膜12の視認性を高めるため、表側の面が円滑面とされている。また、透明部材11の背面には、光輝性膜12が内壁面に形成される光輝性膜形成凹部11a(凹部)が形成されている。
【0022】
光輝性膜形成凹部11aは、内壁面に光輝性膜12が形成されており、光輝性膜12を車両の前方側から立体的に視認可能とする。この光輝性膜形成凹部11aは、車両メーカのエンブレム等の認識マークの図形や文字等の形状に沿って設けられている。図2に示すように、このような光輝性膜形成凹部11aの内壁面に光輝性膜12が成膜されることによって、上述の光輝領域10Aが形成される。
【0023】
このような透明部材11は、例えば、無色のPC(ポリカーボネート)やPMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)等の透明合成樹脂によって形成されており、1.5mm~10mm程度の厚さとされている。また、透明部材11の表側の面には、必要に応じて、傷付き防止のためのハードコート処理、又はウレタン系塗料のクリヤコート処理が施される。なお、耐傷性を備える透明合成樹脂であれば、これらの傷付き防止処理は不要である。
【0024】
光輝性膜12は、透明部材11の光輝性膜形成凹部11aの内壁面に対して固着された金属光沢(金属色)を有しかつ電波透過性を有する薄膜からなる光沢層である。この光輝性膜12は、例えば真空蒸着やスパッタリングによって形成されるインジウム(In)からなる金属製の薄膜であり、多数の微細な隙間を有する不連続膜とされている。また、光輝性膜12は、半導体と金属とを含む合金によって形成された薄膜とすることもできる。具体的には、シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)等の半導体と、アルミニウム(Al)やクロム(Cr)等の金属との合金によって光輝性膜12を形成することができる。このような合金によって形成された光輝性膜12は、金属と比較して自由電子の少ない半導体を含んでおり、電磁波を透過する性質を有している。
【0025】
本実施形態においては、光輝性膜12は、光輝性膜形成凹部11aの内壁面のみに設けられており、透明部材11を介して全体を視認することができる。つまり、光輝性膜12は、透明部材11の背面に固着されており、その全体(ベース部材13と反対側の面の全面)が透明部材11を介して露出されている。
【0026】
ベース部材13は、透明部材11の側面に固着(接合)される部位であり、透明部材11を背面側から支持する。このベース部材13は、エンジンルーム側に突出する係合部13aを有している。この係合部13aは、先端部が爪状に成形されており、当該先端部が例えばラジエータグリル本体に係止される。また、ベース部材13は、透明部材11側の面に、透明部材11の光輝性膜形成凹部11aに埋設される凸部13bを有している。
【0027】
このようなベース部材13は、黒色の樹脂材料によって形成されており、光輝性膜12の形成領域を除いて、透明部材11を介して外部から視認可能とされている。このようなベース部材13によって、上述の黒色領域10Bが形成されている。つまり、本実施形態においては、光輝性膜12の配置領域を避けて(光輝性膜12の配置領域を除いて)ベース部材13が透明部材11を介して露出されている。
【0028】
このようなベース部材13は、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)、AES(アクリロニトリル・エチレン・スチレン共重合合成樹脂)、ASA(アクリロニトリル・スチレン・アクリレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、黒色のPC、PET等の合成樹脂、又はこれらの複合樹脂からなり、0.5mm~10mm程度の厚さとされている。
【0029】
続いて、本実施形態のレーダカバー10の製造方法について、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態のレーダカバー10の製造方法について説明するための概略図である。まず、図3(a)に示すように、マスク樹脂層30が設けられた透明部材11を形成する。
【0030】
マスク樹脂層30は、透明部材11の背面に設けられた光輝性膜形成凹部11aの内壁面(透明部材11の一部)を露出させるようにして設けられており、光輝性膜12を形成する場合のマスクとして機能する層である。このマスク樹脂層30は、光輝性膜形成凹部11aを露出させる開口を有するようにパターニングされて透明部材11の背面に設けられている。
【0031】
このマスク樹脂層30は、透明部材11と異なる樹脂材料によって形成されている。例えば、透明部材11がPCによって形成されている場合には、マスク樹脂層30は、ポリ塩化ビニルによって形成することができる。このようにPCによって形成された透明部材11に対してポリ塩化ビニルによって形成されたマスク樹脂層30を形成することで、マスク樹脂層30を透明部材11から容易に剥離することが可能となる。
【0032】
ここでは、透明部材11及びマスク樹脂層30は、射出成形により形成される。例えば、先にマスク樹脂層30となる樹脂材料を金型内部に射出し、その後に透明部材11となる樹脂材料を同一金型内部に射出する二色成形によって、透明部材11及びマスク樹脂層30を有する構造体を形成する。このような図3(a)に示す工程は、樹脂からなる透明部材11と、透明部材11と異なる樹脂によって形成されると共に透明部材11の背面に透明部材11の一部を露出させるようにパターニングされて設けられるマスク樹脂層30と、を射出成形によって形成する射出成形工程に相当する。
【0033】
次に、図3(b)に示すように、光輝性膜12を形成する。ここでは、マスク樹脂層30を介して光輝性膜形成凹部11aの背面に真空蒸着やスパッタリングによって光輝性膜12を形成する。このとき、透明部材11の光輝性膜形成凹部11aの内壁面はマスク樹脂層30によって覆われておらず、露出された状態とされている。このため、光輝性膜形成凹部11aの内壁面に対して光輝性膜12が固着形成される。このような図3(b)に示す工程は、マスク樹脂層30を介して透明部材11の背面に光輝性膜12を形成する光輝性膜形成工程(有色層形成工程)である。
【0034】
次に、図3(c)に示すように、マスク樹脂層30を透明部材11から剥離する。ここでは、例えば、マスク樹脂層30の一部を工具等によって摘まみ、透明部材11からマスク樹脂層30を遠ざけるように引っ張ることによって、透明部材11からマスク樹脂層30を剥離する。このようにマスク樹脂層30を剥離することで、マスク樹脂層30に付着された光輝性膜12は、マスク樹脂層30と共に透明部材11から取り除かれる。この結果、本実施形態においては、透明部材11の背面のうち、光輝性膜形成凹部11aの内壁面のみに光輝性膜12が残存することとなる。このような図3(c)に示す工程は、マスク樹脂層30を透明部材11から剥離する剥離工程に相当する。
【0035】
次に、図3(d)に示すように、ベース部材13を形成する。ここでは、光輝性膜12が形成された透明部材11を金型の内部に配置し、透明部材11の背面側に溶融した樹脂を射出するインサート成形(射出成形)を行うことでベース部材13を形成する。このようなベース部材13は、透明部材11の背面の光輝性膜形成凹部11aの内壁面を除く領域に溶着される。このような図3(d)に示す工程は、透明部材11の背面にベース部材13を形成するベース部材形成工程(支持部材形成工程)に相当する。
【0036】
以上のような工程で本実施形態のレーダカバー10が製造される。このような本実施形態のレーダカバー10の製造方法によれば、射出成形工程によって、パターニングされたマスク樹脂層30が背面に設けられた状態にて透明部材11が形成される。このため、透明部材11の形成後にマスキングテープを貼付したり印刷層を形成したりすることなく、マスクを形成することができる。さらに、マスク樹脂層30が透明部材11と異なる樹脂材料によって形成されていることから、マスク樹脂層30と透明部材11との境界領域を明確にし、マスク樹脂層30を透明部材から正確に剥離させることが可能となる。このようなマスク樹脂層30を光輝性膜形成工程後に透明部材11から剥離することで光輝性膜12を容易にパターニングすることができる。
【0037】
したがって、本実施形態のレーダカバー10の製造方法によれば、透明部材11の形成後に透明部材11に対してマスクを形成する工程を行うことなく、透明部材11の背面に設けられる光輝性膜12をパターニングすることが可能となる。
【0038】
また、本実施形態のレーダカバー10は、光輝性膜12が透明部材11の背面に固着されていると共に光輝性膜12の全体が透明部材11を介して露出されており、光輝性膜12の配置領域を避けてベース部材13が透明部材11を介して露出されている。このような本実施形態のレーダカバー10は、上述のレーダカバー10の製造方法によって、製造することができる。また、本実施形態のレーダカバー10によれば、光輝性膜12を外部から視認される部位のみに形成することでできるため、光輝性膜12を部分的に隠すマスクを残しておく必要がない。このため、透明部材11とベース部材13とが固着される面を広く確保することが可能となり、透明部材11とベース部材13との密着性を向上させることができる。
【0039】
また、本実施形態のレーダカバー10の製造方法においては、透明部材11の背面に光輝性膜形成凹部11aを設け、この光輝性膜形成凹部11aの内壁面が露出されるようにマスク樹脂層30を形成した。このため、光輝性膜形成凹部11aの内壁面に対して光輝性膜12が形成され、光輝領域10Aに立体感を付与することが可能となる。
【0040】
また、上述のように、本実施形態のレーダカバー10の製造方法によれば、上述のように、透明部材11の形成後にマスキングテープを貼付したり印刷層を形成したりすることなく、マスクを形成することができる。このため、例えば、透明部材11の背面にマスキングテープの貼付や印刷層の形成が困難な凹凸部が設けられていたとしても、この凹凸部にマスク(マスク樹脂層30)を容易に形成することができる。このため、従来と異なるデザインのレーダカバーとすることが可能となる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、図4及び図5を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0042】
図4は、本実施形態のレーダカバー20の断面図である。この図に示すように、本実施形態においては、透明部材11の光輝性膜形成凹部11aには、光輝性膜12が直接的に設けられておらず、光輝性膜を有するインナコア14が収容されている。また、透明部材11の背面には、光輝性膜形成凹部11aに加えて、加飾層15(有色層)を形成するための加飾層形成凹部11b(凹部)が形成されている。これらの加飾層形成凹部11bは、光輝性膜形成凹部11aよりも浅い凹部である。この加飾層形成凹部11bは、内壁面に形成された加飾層15を車両の前方側から立体的に視認可能とする。本実施形態においては、このような加飾層形成凹部11bの内壁面に加飾層15が形成されることによって、光輝領域10Aの外側に加飾領域10Cが形成される。例えば、このような加飾領域10Cは、光輝領域10Aの周囲に対して模様を形成している。
【0043】
加飾層15は、透明部材11の背面に設けられた加飾層形成凹部11bの内壁面の全面に形成されている。このような加飾層15は、塗料を乾燥させることで形成された塗膜によって形成されている。つまり、本実施形態において加飾層15は、塗料によって形成された塗膜である。このような加飾層15は、ベース部材13と異なる色とされている。
【0044】
本実施形態においては、加飾層15は、加飾層形成凹部11bの内壁面のみに設けられており、透明部材11を介して全体を視認することができる。つまり、加飾層15は、透明部材11の背面に固着されており、その全体(ベース部材13と反対側の面の全面)が透明部材11を介して露出されている。
【0045】
続いて、本実施形態のレーダカバー20の製造方法について、図5を参照して説明する。図5は、本実施形態のレーダカバー20の製造方法について説明するための概略図である。まず、図5(a)に示すように、マスク樹脂層30が設けられた透明部材11を形成する。本実施形態においては、マスク樹脂層30は、透明部材11の背面に設けられた加飾層形成凹部11bの内壁面を露出させるようにして設けられており、加飾層15を形成する場合のマスクとして機能する。つまり、本実施形態においてマスク樹脂層30は、加飾層形成凹部11bを露出させる開口を有するようにパターニングされて透明部材11の背面に設けられている。
【0046】
次に、図5(b)に示すように、加飾層15を形成する。ここでは、加飾層15の形成材料である塗料を、マスク樹脂層30を介して透明部材11の背面に対して塗布する。その後、塗布した塗料を乾燥させることによって、塗料層からなる加飾層15が形成される。このような加飾層15は、加飾層形成凹部11bのみにおいて、透明部材11と直接接触する。このような図5(b)に示す工程は、マスク樹脂層30を介して透明部材11の背面に加飾層15を形成する加飾層形成工程(有色層形成工程)である。
【0047】
次に、図5(c)に示すように、マスク樹脂層30を透明部材11から剥離する。このようにマスク樹脂層30を剥離することで、マスク樹脂層30に付着された加飾層15は、マスク樹脂層30と共に透明部材11から取り除かれる。この結果、本実施形態においては、透明部材11の背面のうち、加飾層形成凹部11bの内壁面のみに加飾層15が残存することとなる。
【0048】
次に、図5(d)に示すように、光輝性膜が形成されたインナコア14を光輝性膜形成凹部11aに収容する。次に、図5(e)に示すように、ベース部材13を形成する。
【0049】
以上のような本実施形態のレーダカバー20の製造方法によれば、射出成形工程によって、パターニングされたマスク樹脂層30が背面に設けられた状態にて透明部材11が形成される。このため、透明部材11の形成後にマスキングテープを貼付したり印刷層を形成したりすることなく、マスクを形成することができる。さらに、マスク樹脂層30が透明部材11と異なる樹脂材料によって形成されていることから、マスク樹脂層30と透明部材11との境界領域を明確にし、マスク樹脂層30を透明部材から正確に剥離させることが可能となる。このようなマスク樹脂層30を加飾層形成工程後に透明部材11から剥離することで加飾層15を容易にパターニングすることができる。
【0050】
したがって、本実施形態のレーダカバー20の製造方法によれば、透明部材11の形成後に透明部材11に対してマスクを形成する工程を行うことなく、透明部材11の背面に設けられる加飾層15をパターニングすることが可能となる。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態において、射出成形工程において、マスク樹脂層30に透明部材11から離間する方向に突出するような突出部を設ける構成を採用することも可能である。このような構成を採用することによって、後の剥離工程にて、マスク樹脂層30の突出部を摘まむことで、マスク樹脂層30を容易に透明部材11から剥離することが可能となる。
【0053】
また、上記第1実施形態においては、光輝性膜形成凹部11aの内壁面に対して光輝性膜12を形成する構成について説明した。また、上記第2実施形態においては、加飾層形成凹部11bの内壁面に対して加飾層15を形成する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、凹部以外の透明部材11の背面の一部領域に光輝性膜12や加飾層15を形成する構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0054】
1……ラジエータグリル、10……レーダカバー、11……透明部材、11a……光輝性膜形成凹部(凹部)、11b……加飾層形成凹部(凹部)、12……光輝性膜(有色層)、13……ベース部材(支持部材)、14……インナコア、15……加飾層(有色層)、20……レーダカバー、30……マスク樹脂層、R……レーダユニット
図1
図2
図3
図4
図5