(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】冷却食用製品を製造するための冷却システムおよび器具
(51)【国際特許分類】
A23G 9/08 20060101AFI20220520BHJP
F25D 17/00 20060101ALI20220520BHJP
F28D 7/00 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
A23G9/08
F25D17/00
F28D7/00
(21)【出願番号】P 2019531132
(86)(22)【出願日】2017-12-13
(86)【国際出願番号】 IL2017051345
(87)【国際公開番号】W WO2018109765
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-11-30
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】516183462
【氏名又は名称】ソロ ジェラート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ベス ハラヒミ,バラク
(72)【発明者】
【氏名】ランド,ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】クリガー,イナヴ
(72)【発明者】
【氏名】ダベルスティーン,イラン
(72)【発明者】
【氏名】アトラス,アディ
(72)【発明者】
【氏名】サウディ,ビラル
【審査官】緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-508755(JP,A)
【文献】特開平01-159570(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0064717(US,A1)
【文献】特開2009-041861(JP,A)
【文献】特開昭60-133840(JP,A)
【文献】米国特許第05617734(US,A)
【文献】特表2015-507920(JP,A)
【文献】国際公開第2015/022678(WO,A1)
【文献】特表平02-504423(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0128833(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 9/16
F25D 17/00
F28D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端壁と周方向の軸方向壁との間に規定された軸を有するほぼ円筒形の形状を有する冷却チャンバにおいて、
冷却流体の供給源および排出口のそれぞれに接続可能な冷却流体入口ポートおよび冷却流体出口ポートと、
前記供給源と前記排出口との間で冷却流体を循環させるための、前記冷却チャンバの壁の
中にある熱交換器とを備え、
前記熱交換器が、
前記端壁の一つの中の空洞として規定され、前記入口ポートと関連および流体連通する入口マニホールド要素と、
前記端壁の前記一つの中の空洞として規定され、前記出口ポートと関連および流体連通する出口マニホールド要素と
、を含み、
前記入口マニホールド要素および出口マニホールド要素が、少なくとも2つの導管システムと流体連通し、前記少なくとも2つの導管システムが、
前記入口マニホールド要素と出口マニホールド要素との間の
少なくとも2つの冷却流体流路を規定し、
前記導管システムが、連続する導管セグメントにより構成され、前記導管セグメントが、前記冷却チャンバの壁内に形成された孔または空洞で
あり、
前記少なくとも2つの導管システムの各々が、2つの前記端壁間の距離にわたり前記周方向の軸方向壁内の孔として規定された複数の軸方向セグメントと、前記端壁内に形成された複数の外周セグメントとを含み、前記外周セグメントの各々が、前記流路内で連続する2つの軸方向セグメントを連結することを特徴とする冷却チャンバ。
【請求項2】
請求項
1に記載の冷却チャンバにおいて、
前記周方向の壁の対向する部分に2つの導管システムを備えることを特徴とする冷却チャンバ。
【請求項3】
請求項
2に記載の冷却チャンバにおいて、
前記部分の各々が円周の半分であることを特徴とする冷却チャンバ。
【請求項4】
請求項1に記載の冷却チャンバにおいて、
前記孔または空洞が、熱伝導性ライニングで裏打ちされていることを特徴とする冷却チャンバ。
【請求項5】
請求項4に記載の冷却チャンバにおいて、
前記熱伝導性ライニングが銅ライニングであることを特徴とする冷却チャンバ。
【請求項6】
請求項1に記載の冷却チャンバにおいて、
前記入口マニホルド要素および前記出口マニホルド要素が3つの平行な導管システムと流体連通しており、前記3つの平行な導管システムの各々が前記周方向の壁において異なる周方向の部分を占めていることを特徴とする冷却チャンバ。
【請求項7】
請求項1に記載の冷却チャンバにおいて、
前記入口マニホルド要素および前記出口マニホルド要素が4つの平行な導管システムと流体連通しており、前記4つの平行な導管システムの各々が前記周方向の壁において異なる周方向の部分を占めていることを特徴とする冷却チャンバ。
【請求項8】
請求項1に記載の冷却チャンバにおいて、
前記少なくとも2つの導管システムが、互いに組み合わされた流路を形成していることを特徴とする冷却チャンバ。
【請求項9】
材料から冷却食用製品を製造するための器具において、
請求項
1乃至8の何れか一項に記載の冷却チャンバを備えることを特徴とする器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アイスクリーム、シャーベット、フローズンヨーグルト、発泡冷却飲料などの冷却食用製品を製造するための冷却チャンバ、冷却システムおよび器具に関する。
【背景技術】
【0002】
本開示の主題に対する背景として関連があると考えられる文献を以下に列挙する。
-国際公開第2013/121421号
-国際公開第2015/022678号
【0003】
本明細書における上記文献の確認は、それらが本開示の主題の特許性に何らかの形で関連することを意味すると解釈されるべきではない。
【0004】
上述した国際公開第2013/121421号および国際公開第2015/022678号などから、冷却食用製品を調製するための家庭用器具が知られている。アイスクリームのような高品質の冷却食用製品を、特に家庭での使用に適した小型装置で効率的に製造することは、課題である。その課題は、とりわけ、冷却システム、および冷却食用製品の製造プロセス中に使用される特定の物理的パラメータにある。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、本明細書で「冷却態様」と呼ばれるその第1の態様によって、アイスクリームのような冷却食用製品の調製のために家庭用器具で使用される冷却チャンバと、これを含む冷却システムまたは器具とを提供する。
【0006】
本明細書で「処理態様」と呼ばれる本開示の第2の態様は、冷却食用製品を製造するための器具および方法に関する。
【0007】
これらの態様は組み合わせることができるが、互いに独立して使用することができる。例えば、冷却態様の冷却チャンバまたはシステムは、処理態様の器具または方法において使用されるようにしてもよく、その逆も同様である。
【0008】
これらの態様の各々は別々に説明されるが、添付図面に示される特定の例示的な実施形態では、すべてが同じモジュールおよび器具で具現化される。
【0009】
冷却態様は、冷却流体の供給源および排出口のそれぞれ(例えば、冷却ユニット、冷却ポンプなどの出口および入口のそれぞれ)に接続可能な冷却流体入口ポートおよび冷却流体出口ポートを有する冷却チャンバを提供する。熱交換器は、冷却チャンバの壁内に規定されているか、または冷却チャンバの壁と関連しており、それによりチャンバの壁を冷却する。入口ポートと出口ポートとの間の冷却流体のための2つの機能的に平行な流路を規定する(2つの流路において冷却流体の同時の流れを可能にする)冷却流体用の少なくとも2つの導管システム(典型的には、非排他的であるが、2つ)がある。この目的のために、入口ポートが、入口マニホールド要素と関連付けられて流体連通することができ、出口ポートが、出口マニホールド要素と関連付けられて流体連通することができる。これらのマニホールド要素は、少なくとも2つの導管システムと流体連通し、入口マニホールドと出口マニホールドとの間に対応する少なくとも2つの冷却流体流路を規定している。
【0010】
典型的には、導管システムは、連続する導管セグメントからなり、各々が、チャンバの異なる壁部分に形成されているか、または関連している。そのような導管セグメントは、例えば管の形態であって、少なくとも1つのそのような壁部分の内面に取り付けられる熱伝導性材料、特に金属で作られるものであってもよく、あるいは、別の例として、壁部分内に形成された穴または空洞によって構成されるものであってもよい。穴または空洞は、任意の適切な熱伝導性ライニング、例えば、銅ライニングで裏打ちされるようにしてもよい。
【0011】
このため、いくつかの実施形態では、導管システムが、連続する導管セグメントによって構成され、導管セグメントが、冷却チャンバの壁内に形成された穴または空洞である。外部冷却コイルに基づく冷却システムとは異なり、(例えば、冷却流体が循環する壁内のボアまたは空洞として)冷却チャンバの壁内に形成される導管システムは、冷却チャンバのサーマルマスを利用することを可能にし、それにより、チャンバの内容物を効率的に冷却するとともに、チャンバ内の温度変動を補償することができる。
【0012】
このような冷却チャンバおよびシステムの特定の非排他的な使用は、前述した国際公開のパンフレットに開示されている種類の、冷却食用製品を製造するための器具、特に家庭用器具にある。
【0013】
特定の実施例は、2つの対向する端壁の間に延びる軸を有するほぼ円筒形状の冷却チャンバの場合であり、この円筒形状が円周方向の軸方向壁によって規定される。導管セグメントは、2つの端壁の間に延びるセグメントを含むことができる。そのようなセグメントは、軸方向に向けられるようにしてよく、軸に対して角度を付けられるようにしてもよく、螺旋経路を規定するように構成されるものであってもよく、あるいは他の任意の有用な構成を有するものであってもよい。
【0014】
導管システムの特定の実施例は、対向する端壁の間に延びる、例えば軸方向に向けられた、複数の第1のセグメントを含むものであり、それら第1のセグメントが、各端部で、端壁に形成された複数の第2の外周セグメントのうちの一つに連結され、第2のセグメントの各々が、流路において連続する2つの第1のセグメントを連結する。このため、流路は一連の第1および第2のセグメントを含む。
【0015】
第1のセグメントは、周方向壁内の孔によって規定され、第2のセグメントは、端壁または端壁部分またはその内部にある空洞によって規定されるようにしてもよく、あるいは連続する2つの第1のセグメントを連結するチューブによって構成されるようにしてもよい。
【0016】
2つの導管システムを有する冷却システムにおいて、典型的な配置は、それらの各々が周方向壁の対向部分に配置されているというものである。例えば、円筒形の冷却チャンバの場合には、一方の導管システムが、周方向壁の円周の半分に及ぶ一方の部分に配置され、他方の導管システムが、壁の反対側の部分に配置される。別の例示的な構成は、3つまたは4つの平行な導管システムを有するもので、各々が異なる円周方向部分を占めるものであり、または、異なる流路が互いに組み合わされるものである。
【0017】
チャンバの効率的な冷却を提供することに加えて、熱交換器の構造は、熱交換器の底部での流体(例えば、オイル)の蓄積も最小限に抑え、それによって冷却流体のより良好な循環を可能にするとともに、冷却システムの冷却効率を維持することができる。また、そのような構成は、(当技術分野で知られているような)冷却流体伝導コイルをチャンバの壁の周りに巻き付けて変形させる(複雑になることが多い製造プロセスの)必要がないため、冷却チャンバの製造可能性も高め、それにより製造コストも低減することができる。
【0018】
本開示の冷却態様は、上述した冷却チャンバまたはシステムを含む器具も提供する。器具は、冷却チャンバと関連する少なくとも1つ、典型的には2つ以上の温度センサも含むことができる。温度センサは、冷却チャンバ内の様々な位置で温度を監視および測定するために使用することができ、それにより、温度センサからの指示を受信するコントローラは、冷却流体の温度、冷却流体の循環/流量、チャンバの壁の温度等を制御および変更することが可能となる。また、温度センサは、冷却食用製品の調製プロセス中の冷却チャンバ内の温度の変化についてのデータを収集するために使用されるようにしてもよく、そのようなデータに基づいて、調製プロセスの調整が実行されるようにしてもよい。
【0019】
本開示の処理態様による器具は、周方向壁を有する円筒形の処理チャンバと、冷却食用製品の製造に使用される材料を導入するための少なくとも1つ(典型的には1つ)の材料の入口と、ガス、例えば空気をチャンバ内に導入するための少なくとも1つ(典型的には1つ)の圧力入口と、チャンバの壁を冷却するように構成された関連する冷却装置とを備える。少なくとも1つの圧力入口は、少なくとも1つの材料の入口と同じでも異なっていてもよい。典型的な構成の場合、それら両方の機能を果たす1つの入口によって、(典型的には水、ミルク、クリームなどの水性媒体を含む)材料のチャンバ内への強制的な導入が、それに伴うガス、典型的には空気の強制的な導入を伴い、それにより、チャンバ内の圧力が上昇する。すなわち、いくつかの実施形態では、入口が、材料を導入するための材料の入口と、チャンバを加圧するための圧力入口とを構成する(すなわち、材料の入口と材料および圧力入口が、両方の機能を果たす単一の入口によって構成される)。
【0020】
なお、同じ入口からの材料および圧力の統合導入は材料の噴霧効果をもたらし、それによって処理チャンバの冷却壁と接触する材料混合物の表面積を最大にし、材料の効率的な冷却および材料を冷却食用製品に変えるプロセスにおける初期の結晶化を可能にすることに留意されたい。
【0021】
そのような噴霧を改善するために、いくつかの実施形態では、入口にバッフルまたは内部リブが形成されて、材料流入物を分割して処理チャンバ内に流入させるか、かつ/または材料を乱流で処理チャンバ内に導入することができる。
【0022】
別の実施形態では、大気圧より高い圧力のガス(通常は空気)がチャンバ内に導入される。
【0023】
後述するように、上質の質感と口当たりを有する冷却食用製品(例えば、アイスクリーム、ソフトクリームなど)の調製のための物理的条件を提供するのは、冷却とともに、混合装置によって与えられるそのような圧力および剪断力の組み合わせである。
【0024】
処理態様に係る器具は、上述したように、周方向壁の内面に近接する少なくとも1つのブレードを有する混合装置も含む。少なくとも1つのブレードは、処理チャンバ内で回転可能であり、そのような回転を通して内面を擦ることができる。混合装置は、典型的には、2,3,4、または時にはそれ以上のブレードを含み、それらブレードが、軸を中心に回転するとともに、回転中の角度モーメントを回避するように軸対称に配置されている。混合装置は、軸を回転させるためのモータに結合されている。典型的な例では、ブレードが、200rpmを超える速度、典型的には400rpmを超える速度、時には600rpmを超える速度で回転し、特定の例では、約800rpm以上で回転する。また、ブレードは、冷却食用製品の調製プロセスのパラメータに応じて、製造プロセス全体を通じて一定の速度で、または上述した範囲内の可変速度で回転することができることに留意されたい。
【0025】
また、回転を一連の異なる回転速度で実行することができることにも留意されたい。例えば、混合装置は、最初に400rpm未満の速度で回転することができ、それにより、処理チャンバ内の材料の初期混合を容易にするとともに、処理チャンバの冷却された壁と混合物の十分な接触時間を与えて、初期の氷晶形成を可能にし、その後、速度を400rpm超に(時には、600rpm超に、または800rpm超にまで)増加させて、冷却食用製品を調製する。
【0026】
上述したように、処理チャンバは、冷却態様の冷却チャンバとすることができる。
【0027】
また、処理態様の器具は、加圧下で処理チャンバ内に材料を強制的に導入するための機構も含む。材料をガス(典型的には空気)で送り込んで処理チャンバ内の圧力を高めるポンプは、そのような機構の具体的な例である。
【0028】
理論に拘束されるものではないが、材料、特にその液体部分をチャンバ内に強制的に導入して、その結果としてチャンバの冷却された壁にそれらを噴霧することは、冷却食用製品の最終的に滑らかで口当たりの良い食感の役割を果たすと考えられる。また、液体が急激に減圧され、他の材料が、チャンバへの進入点でその液体中に溶解または分散されて、それと同時に冷却されることも、最終的に口当たりの良い食感に寄与する。さらに、高められた圧力と高い混合速度との組合せは、冷却食用製品のバッチの調製のプロセス期間を、典型的には調製サイクル当たり2分未満、90秒未満、または60秒未満にまで短縮することを可能にする。
【0029】
本開示の一実施形態によれば、少なくとも1つの材料の入口は、加熱要素と関連している。加熱要素の機能は、それがなければ生じ得る凍結による目詰まりを防ぐことにある。代替的には、そのような目詰まり防止は、入口の局所加熱および振動の両方を引き起こしてその中の材料の凍結を防ぐ振動要素(典型的には超音波トランスデューサ)によっても得ることができる。
【0030】
器具は、液体、溶液、エマルジョン、スラリー、懸濁液の形態または他の液体形態で材料をチャンバ内に導入するために、固体(例えば、粉末)材料を液体材料と予備混合することを可能にする予備混合チャンバをさらに含むことができる。予備混合チャンバは、材料の入口と液体的に関連するように構成されている。予備混合チャンバは、器具の一体部分であってもよく、または材料容器(材料の一部を含む使い捨てポッドまたはカプセルなど)によって構成されて、材料と液体の予備混合が材料容器内で行われるようにしてもよい。
【0031】
上述したように、また理解できるように、本開示の処理態様の処理チャンバは、本開示の冷却態様の特徴、すなわち冷却態様に関して本明細書に開示されるものの特徴を具現化する熱交換器を具現化することができる。
【0032】
前述した種類の冷却食用製品を調製する方法は、大気圧以上、典型的には大気圧よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、75%または100%高い圧力を維持しながら、冷却処理チャンバに材料を導入するステップを含む。一実施形態によれば、材料の導入は、チャンバ内の圧力の上昇を引き起こす。材料は、非水性材料が溶解または分散した水性媒体を含む。非水性材料(例えば、カプセルから取り出される)は、先に、水性媒体中に溶解もしくは分散されるか、または上記導入中に水性媒体と混合される。このため、カプセルが材料の供給源として使用される場合、カプセルは、乾燥材料(適当な水性媒体と混合される)のみを含むことができ、またはペーストまたは濃縮形態の材料(水性媒体でさらに希釈される)を含むことができ、または、時には、冷却食用製品の一回使用分量を製造するために(すなわち、更なる水性媒体の添加を不要とするように)材料すべてを含むことができる。水性媒体は、水、風味付けされた水、ミルク、乳成分非含有ミルク、生クリームまたは乳成分非含有クリーム、ヨーグルトなどである。その後、圧力および連続する冷却を維持しながら、剪断力が食品材料に加えられ、それによって冷却食用製品が形成される。
【0033】
圧力は、例えばポンピングにより、ガス、例えば空気とともに、チャンバ内に材料を押し入れることにより、増加させて維持することができる。
【0034】
剪断力は、少なくとも1つの回転ブレードを含む混合装置によって形成することができる。チャンバは典型的には円筒形であり、ブレードは、チャンバの周方向壁の内面に沿って延び、内面に近接するエッジを有する。ブレードは、典型的には少なくとも200,300,400,500,600または700rpmの回転速度で回転し、約800rpmであってもよく、いくつかの実施形態では、さらに高い速度となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本明細書に開示の主題をよりよく理解し、それが実際にどのように行われるのかを例示するために、添付の図面を参照しながら、非限定的な例として実施形態を説明することとする。
【
図1】
図1は、アイスクリームの製造のための、本開示の一実施形態に係る器具の概略斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係る、冷却および処理チャンバおよび関連するモータの概略斜視図である。
【
図3】
図3は、チャンバ内のブレードを示す、
図2のチャンバの異なる角度からの概略斜視図である。
【
図5】
図5は、混合装置の構造を説明するために壁を取り除いた冷却チャンバの概略図である。
【
図6】
図6Aは、導管システムを例示するために、壁が透明にされてブレードが取り除かれた状態の冷却チャンバの概略図を示している。
図6Bは、
図6Aと同じ図であり、矢印が冷却流体の流れの方向を示している。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態に係る器具の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に示される添付図面に開示される実施形態は、本開示の様々な態様を組み込んでいる。特に、第1の態様の特徴を具体化する、熱交換装置を有する冷却チャンバは、第2の態様に係る冷却食用製品調製ユニットの一部として利用されている。しかしながら、以下で理解されてさらに指摘されるように、様々な態様を他の実施形態において独立に採用することができる。
【0037】
本開示の様々な態様の例示的な実施形態を組み込んだ器具100は、
図1に示す通りである。器具100は、冷却食用製品、特にアイスクリームの製造を目的としている。この器具は、概して、国際公開第2013/121421号および国際公開第2015/022678号に開示されているいくつかの構造上および操作上の態様に基づくものであり、特に、アイスクリームの調製に乾燥材料または湿潤材料を含む使い捨てカプセルを使用している。
【0038】
器具100は、カプセルベイ102を含み、このカプセルベイが、その上にカプセルの配置を可能にする開状態(図示省略)と、
図1に示す閉状態との間で矢印106によって表される方向に垂直に往復運動することができるカプセル配置トレイ104を含み、閉状態では、トレイ104が完全に上方位置にあり、カプセルがベイ102内に収容されている。
【0039】
器具は、冷却食用製品を製造するために、カプセルの内容物と混合される水、ミルク、クリーム、乳成分非含有ミルクなどの水性液体を含むリザーバ(図示省略)も含むことができる。当然のことながら、水性液体は、異なる供給源から、すなわち外部リザーバ、供給ライン(例えば、家庭用給水源)、ユーザによるバッチ式供給などから器具内に導入されるものであってもよい。
【0040】
器具100の主ハウジング部分108は、冷却食用製品の製造に使用される機械を収容し、それには、冷却チャンバおよびその関連モータ(後述)と、冷却流体を供給するための冷却ユニットと、ポンピング機構であって、カプセルから食品材料を取り出し、それらを水性液体と混合し、それらを冷却チャンバ内に導入するポンピング機構と、その他(とりわけ、そのような器具に含まれ得るモジュールを開示する前述した2つの国際公開パンフレットを参照されたい)とを含む。
【0041】
図1に見られるのは、チャンバを洗浄するために取り外すことができる冷却ユニットの前面112である。面112には、その準備プロセスが完了したときに冷却食用製品を分配するための分配開口部114が形成されている。
【0042】
以下では、本開示の様々な態様において具現化されている冷却システムの構成要素に重点が置かれている。他の補助的な要素およびモジュールは、上述したように、例えば、上記国際公開のパンフレットなどに開示されている。システムを説明する際には、
図2-
図6Bを組み合わせて参照する。
【0043】
図2-
図6Bに示すモジュール110は、冷却チャンバ116と、関連する電気モータ118とを含み、電気モータが、ベルト122を介して混合装置に連結された一体型スプロケットホイール120を有している。混合装置は、
図3-
図5に関連して以下に説明するように、アクセル126および3つの回転ブレード128に軸方向に結合されたスプロケットホイール124を含む。冷却チャンバ116は、チャンバ116内で処理される食品材料を導入するための材料入口ポート130と、例えば洗浄流体の循環を含む洗浄サイクルにおいて、チャンバの内容物を除去するための出口ポート132とを有する。冷却チャンバは、冷却流体入口ポート134および冷却流体出口ポート136も含む。冷却流体は底部で導入されて頂部で除去されることが好ましい(これが、ポート134および136がそのように配置されている理由である)が、ポート134および136の役割を逆にすることもできる。
【0044】
冷却チャンバ116は、典型的には円筒形であり、前端板162と後端板164との間に延びる周方向壁160によって規定されている。冷却チャンバは、
図3に見られるように、長手方向軸113を規定している。
【0045】
ブレード128は、回転プレート140に固定され、回転プレートは、アクセル126に結合されて、軸113を中心に回転し、それによりブレード128の回転を引き起こす。ブレードはそれぞれ、円筒形冷却チャンバ116の内側周方向壁144に近接する周縁エッジ142を有する。混合装置の軸方向の回転の結果として、ブレードは常に冷却チャンバの内壁を擦り、壁から凍結/固化した食品を取り除き、チャンバの内容物全体をかき混ぜる。上述したように、混合装置は、典型的には少なくとも200rpm、好ましくは少なくとも400,500,600,700rpm、そして時には約800rpm以上の速度で回転する。ブレード128は、図から分かるように、軸113に対して軸外の角度(off-axial angle)で配置されている。理解できるように、他の実施形態では、このような斜めの向き以外に、ブレードは軸方向に向いていても、湾曲等していてもよい。ブレードは、攪拌を改善するとともに、チャンバ内の形成された冷却食用製品の内容物に剪断力を誘導するために、付随する横方向内側突出端部150,152を有する。
【0046】
冷却チャンバ116の内壁は、これから説明するように、周方向壁と端壁に形成された導管内を流れる冷却流体によって冷却される。これらの導管は、全体的に上述した冷却流体フローシステムの一実施形態であり、このため冷却チャンバ116も、上述した冷却チャンバの態様の一実施形態である。
【0047】
端壁162内には、軸方向導管174および176を介してそれぞれ入口ポート134および出口ポート136と流体連通する入口マニホールド要素170および出口マニホールド要素172が形成されている。入口マニホールドおよび出口マニホールドは、端壁162に形成された空洞によって規定されるか、または端壁162の面と関連する平面要素によって規定される。この具体的な実施例では、マニホールド要素が、2つの導管システムと流体連通し、それら導管システムが、入口マニホールドと出口マニホールドの間の対応する2つの冷却流体流路を規定している。
【0048】
2つの導管システムのうちの一方は、周方向壁160内に形成された複数の軸方向を向く第1導管セグメント178A,180A,…,190A,192Aと、端壁に形成された複数の外周の第2セグメント179A,181A,…,189A,191Aによって規定されている。各外周セグメントは、2つの連続する軸方向セグメント間を連結し、それにより入口ポート134から出口ポート136への流路を形成する。2つの導管システムのうちの他方は、同様に、周方向壁160内に形成された複数の軸方向を向く第1導管セグメント178B,180B,…,190B,192Bと、端壁に形成された複数の外周の第2セグメント179B,181B,…,189B,191Bとによって規定されている。
【0049】
ここで、冷却流体が導管システムを通って流れる方法を、2つの導管システムのうちの一方を参照しながら説明する。2つの導管システムのうちの他方は、関連する導管セグメントから同様に形成されることを理解されたい。
【0050】
冷却流体は、入口ポート134を介して導管システムに導入される。入口ポートは、軸方向セグメント174を介して入口マニホールド要素170と流体連通しており、入口マニホールド要素が、冷却流体の流れを2つの流れに分割するように機能し、そのような各流れが、2つの導管システムのうちの1つに流れ込む。
図6B(システムを通る流れの方向が示されている)においてよく分かるように、冷却流体は、分割されると、マニホールド要素から軸方向セグメント178A内に流れ、そこから(端壁164に形成された)外周セグメント179Aに流れ、そこから軸方向セグメント180Aに流れる。すなわち、外周セグメント179Aは、連続する軸方向セグメント178Aおよび180A間を流体的に連結する。同様に、各外周セグメントは、流路に沿って2つの連続する軸方向セグメント間を連結する。第2の流路(同じ数字の要素によって示されるが、Aの代わりにBの添字を有する)も、同様に形成される。軸方向セグメント192Aおよび192Bからの流体は、出口マニホールド要素172に入り、そこで2つの流れは単一の出口流れに統合されて、軸方向導管176を介して出口ポート136に向かって冷却システムから出る。
【0051】
上記のようにして、チャンバ全体の効率的な冷却が行われる。そのような構造は、熱交換器の底部での冷却流体の蓄積を最小限に抑え、それにより冷却流体のより良好な循環を可能にするとともに、冷却システムの冷却効率を維持することができる。
【0052】
なお、様々な設計構成を通じて、本開示の冷却チャンバ内の冷却液のための3以上の流路を規定することが可能であることに留意されたい。例えば、流れを2つに分割する1つのマニホールドがあり、それが次に2つのマニホールドに導かれ、それらが周方向壁の4分の1毎に平行な流れを生じるように再び分割することができ、あるいは、流れを4つの異なる導管システムに分けるマニホールドの使用等も考えられる。
【0053】
図7は、器具のいくつかの構成要素を説明するブロック図である。冷却チャンバ200は、上述したものであってもよく、矢印220,230で示すように、冷却ユニット210から循環流路を介して冷却流体の供給を受ける。ポンプ240は、カプセル結合ユニット250および水性液体の供給源260に連結されており、よって、流体ライン270で示すように、カプセルの内容物および液体を含む混合物をチャンバ200内に送り込むことができる。
【0054】
ポンピング作用により食品材料がチャンバ内に押し込まれ、この強制的な導入によりチャンバ内の圧力が上昇する。先に述べたように、理論に拘束されることを望むものではないが、この組合せはチャンバ内の圧力を増加させると考えられる。チャンバ内への食品材料の進入点における急激な導入と、剪断力によって引き起こされる撹拌とは、アイスクリームなどの高品質の冷却食用製品の調製のための最適化された条件、並びに、非常に短い製造期間(典型的には、製造サイクルあたり90秒未満または60秒未満)を提供する。