(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】時計の機能を調節するための装置
(51)【国際特許分類】
G04B 27/00 20060101AFI20220520BHJP
G04B 27/02 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
G04B27/00 N
G04B27/02 A
(21)【出願番号】P 2019550148
(86)(22)【出願日】2018-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2018055775
(87)【国際公開番号】W WO2018172093
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-02-22
(32)【優先日】2017-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】510283546
【氏名又は名称】マニュファクチュア・ドーロジュリー・オードゥマール・ピゲ・エスアー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ナタシャ・ワニエール
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-183649(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0124388(US,A1)
【文献】米国特許第03470687(US,A)
【文献】中国特許出願公開第103513562(CN,A)
【文献】実公昭48-033336(JP,Y1)
【文献】特開2016-206002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計の時計学的機能を調節するための調節装置であって、前記調節装置は、選択および作動のための機構を備え、前記機構は、
駆動手段(9、109)と、
駆動ピニオン(1、101)であって、前記駆動手段は、前記駆動ピニオンを時計回り方向および反時計回り方向に駆動するように構成されている、駆動ピニオンと、
前記駆動ピニオン(1、101)が前記時計回り方向に回った場合、および前記駆動ピニオン(1、101)が前記反時計回り方向に回った場合に、前記駆動ピニオン(1、101)によって駆動されるように構成されている少なくとも1つの従動ピニオン(2、3、102、103)と、
を備え、
前記従動ピニオン(2、3、102、103)は、前記駆動ピニオンが前記時計回り方向に回ると、前記駆動ピニオン(1、101)の影響下で、前記従動ピニオン(2、3、102、103)が第1の時計学的機能の作動手段(A、A')を作動させる第1の位置へと動くように、かつ、前記駆動ピニオンが前記反時計回り方向に回ると、前記駆動ピニオン(1、101)の影響下で、前記従動ピニオン(2、3、102、103)が第2の時計学的機能の作動手段(B、B')を作動させる第2の位置へと動くように構成され、前記従動ピニオン(2、3、102、103)は、その前記第2の位置にあるときに前記第1の時計学的機能の前記作動手段(A、A')を作動させず、逆に、前記従動ピニオン(2、3、102、103)は、その前記第1の位置にあるときに前記第2の時計学的機能の前記作動手段(B、B')を作動させない装置において、
前記選択および作動のための機構は、少なくとも2つの従動ピニオン(2、3、102、103)を含み、前記調節装置は、前記駆動ピニオン(1、101)を選択的に前記従動ピニオン(2、3、102、103)のそれぞれと噛み合わせるように構成された制御機構をさらに含むことを特徴とする、調節装置。
【請求項2】
前記選択および作動のための機構は、2つの従動ピニオン(2、3)を含み、前記制御機構は、並進運動によって、前記駆動ピニオン(1)を交互に前記2つの従動ピニオン(2、3)のそれぞれと接触させるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の調節装置。
【請求項3】
前記駆動ピニオン(1)は、スライドピニオンであり、前記スライドピニオンの軸は、前記軸に垂直にスライドすることができるように、プレートに形成された楕円形のハウジングに収容されたピンによって構成され、前記制御機構は、前記ハウジング内での前記ピンのスライドを制御することを特徴とする、請求項2に記載の調節装置。
【請求項4】
前記駆動ピニオン(1)の前記軸の前記楕円形のハウジングのそれぞれの端部は、前記従動ピニオン(2、3)の前記第1および第2の位置のそれぞれにおいて前記従動ピニオン(2、3)のそれぞれと有効に係合することができるように、配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の調節装置。
【請求項5】
制御装置は、ウィグワグ(6)によって制御されるヨーク(4)、および制御レバー(7)によって構成される組立体を含み、前記組立体は、前記プレートに装着されていることを特徴とする、
請求項3または4に記載の調節装置。
【請求項6】
前記選択および作動のための機構は、2つ以上である、いくつかの従動ピニオン(102、103)を含み、前記制御機構は、回転アーム(112)を含み、この上に前記駆動ピニオン(101)が配置され、前記制御機構は、連続回転によって前記駆動ピニオン(101)を前記従動ピニオン(102、103)のそれぞれとの噛み合い位置に導くように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の調節装置。
【請求項7】
前記制御機構は、前記回転アーム(112)の関節運動軸と同軸である星状部
(106)によっ
て、ジャンパー(105)によって、かつ、前記星状部(106)と協働するばねヨーク(104)によって、形成された組立体を含み、前記星状部(106)の1つの枝部に対応する角度値にわたり前記星状部(106)が回転すると、前記駆動ピニオン(101)が、従動ピニオン(102)との噛み合い位置から、隣接する従動ピニオン(103)との噛み合い位置に導かれることを特徴とする、請求項6に記載の調節装置。
【請求項8】
前記駆動ピニオン(101)は、前記回転アーム(112)の前記関節運動軸と同軸であるセッティングホイール(109a)を介して、その駆動手段(109)に運動学的に接続されていることを特徴とする、
請求項7に記載の調節装置。
【請求項9】
前記従動ピニオン(2、3、102、103)は、スライドピニオンによって構成され、前記スライドピニオンは、前記従動ピニオン(2、3、102、103)が前記時計回り方向への前記駆動ピニオン(1、101)の回転の影響下で前記第1の位置へと動き、また前記従動ピニオン(2、3、102、103)が、前記反時計回り方向への前記駆動ピニオン(1、101)の回転の影響下で前記第2の位置へと動くように、その回転軸に垂直にスライドすることができることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の調節装置。
【請求項10】
前記従動ピニオン(2、3、102、103)は、スライドピニオンであり、前記スライドピニオンの軸は、前記従動ピニオン(2、3、102、103)に固定され、かつプレート(110)に形成された楕円形のハウジングに収容されたピンによって、前記ピンが前記軸に垂直にスライドすることができるように、構成され、前記ハウジングは、前記従動ピニオン(2、3、102、103)の前記ピンが前記時計回り方向への前記駆動ピニオン(1、101)の回転の影響下で前記楕円形のハウジングの第1の端部まで動き、したがって、前記従動ピニオン(2、3、102、103)が前記第1の位置に位置するように、かつ、前記ピンが前記反時計回り方向への前記駆動ピニオン(1、101)の回転の影響下で前記楕円形のハウジングの他端部まで動き、したがって前記従動ピニオン(2、3、102、103)が前記第2の位置に位置するように、配されていることを特徴とする、請求項9に記載の調節装置。
【請求項11】
前記従動ピニオン(2、3、102、103)は、スライドピニオンであり、前記スライドピニオンの軸は、プレート(110)に固定され、2つの対向した円弧(2b、2c、3b、3c)を含む偏心器(2a、3a)によって構成され、前記スライドピニオンは、外歯および円形の内周部(2d、3d)を有するリングによって構成され、前記円形の内周部は、前記リングが前記軸に垂直にスライドすることができるように前記偏心器(2a、3a)の前記2つの対向した円弧(2b、2c、3b、3c)のうちの1つと交互に接触することができ、それによって前記従動ピニオン(2、3、102、103)を構成する前記リングの前記円形の内周部(2d、3d)は、前記時計回り方向への前記駆動ピニオン(1、101)の回転の影響下で前記偏心器の第1の円弧と接触し、したがって前記従動ピニオン(2、3、102、103)が前記第1の位置に位置し、かつ、前記従動ピニオン(2、3、102、103)を構成する前記リングの前記円形の内周部(2d、3d)は、前記反時計回り方向への前記駆動ピニオン(1、101)の回転の影響下で前記偏心器の第2の円弧と接触し、したがって前記従動ピニオン(2、3、102、103)が前記第2の位置に位置することを特徴とする、請求項9に記載の調節装置。
【請求項12】
前記従動ピニオン(2、3、102、103)は、一方では前記駆動ピニオン(1、101)の歯と噛み合うように構成された歯を保持し、他方では
、時計学的機能の歯または作動手段(A、A'、B、B')と協働するように構成され
た歯(11、111)または作動フィンガーを備える同軸可動物を保持することを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の調節装置。
【請求項13】
前記駆動ピニオン(1、101)は、特にセッティングホイール(9、109、109a)を介して、前記時計の巻き上げおよび/または調節クラウンと、運動学的に接続されていることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の調節装置。
【請求項14】
時計であって、請求項1から13のいずれか一項に記載の時計学的機能を調節するための調節装置を含むことを特徴とする、時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計の機能を調節するための装置に関する。
【0002】
さらに具体的には、本発明は、時計の時計学的機能を調節するための装置に関し、この装置は、駆動手段と、駆動ピニオンであって、前記駆動手段が、時計回り方向および反時計回り方向に前記駆動ピニオンを駆動するように構成されている、駆動ピニオンと、駆動ピニオンが時計回り方向に回ったとき、および前記駆動ピニオンが反時計回り方向に回ったときに前記駆動ピニオンと噛み合うように配置された、少なくとも1つの従動ピニオンと、を含む、選択および作動のための機構を備える。
【背景技術】
【0003】
このタイプの調節装置は、月の日、週の曜日、月の位相、さまざまなタイムゾーンなどの時間から導かれる時計学的機能のインジケータ、ならびに他の機能を含む機械式時計に使用される。多くの先行技術文献が実施形態を記載している。
【0004】
特許文献1は、時計ムーブメントのn個の機能を選択し作動させるための機構を開示しており、これは巻真を含み、巻真は1つの機能の作動装置と噛み合うことができ、作動装置は、転置して、n個の選択位置およびn個の作動位置を占めることができるように配置され、作動装置は、問題の機能の作動を可能にするために作動手段に運動学的に接続される。この機構はまた、作動装置を選択位置に転置させるのに使用され得るセレクター装置を含む。機構は、基部も含み、作動装置は、前記セレクター装置の作動を受けると選択位置に位置付けられ得、また、巻真の軸方向転置の作用を受けると選択位置に位置付けられ得るように、移動可能に基部の上に装着される。この文献では、提案された選択および作動のための機構が双方向的に動作すると述べている。
【0005】
特許文献2は、時計機構のための、クラッチヨーク、または実際にはクラッチ装置を開示しており、これは、修正可動物(correction mobile)が回転するのをガイドするための少なくとも1つの要素と、前記可動物の一部と協働することを目的とした少なくとも1つの摩擦要素と、前記摩擦要素を弾性的に戻すことを目的とした少なくとも1つの弾性要素と、を含む。これらの要素は、ヨークのシャフトとヨークに回転可能に装着された前記可動物のシャフトとの間の回転に抵抗するトルクの分布が確立されるのを可能にし、それによって、可動物の回転方向が変化すると、最初にヨークが旋回し、やがてヨークが安定位置に到達した後で、可動物自体がこの位置へと回り始める。これは、ヨークが1つの位置で妨害されたままになるのを防ぐためであり、妨害されると、第2の帰属機能(second attributed function)を実行させず、かつ/または機構を固定させる。
【0006】
特許文献3は、巻き上げ、および少なくとも2つのインジケータ手段を修正するための機構を開示しており、この機構は、この機構が、2つの機能を制御すると共に時間から導かれた表示の修正などの第3の機能を実行することができる従来の巻き上げ機構の利点を有するように、重ね合わせた2つの第1のセッティングホイールおよび2つの第2のセッティングホイール、ならびに巻き上げるための2つの揺動ピニオン(wig-wag pinions)それぞれを、修正のために、対応するヨークを用いて旋回可能に装着させて設けることによって、スライドピニオンがセッティング位置において巻き上げピニオン(winding pinion)から係合解除されるのみであるように、配されている。
【0007】
特許文献4は、対応する機能を選択するために、自己の裁量で、差動装置、または遊星歯車列を介して、駆動輪を少なくとも2つの従車のうちの1つと接続するのに使用され得る、機能を、特に時計ムーブメントの機能を選択するための装置を開示している。
【0008】
特許文献5は、時計学的機能および表示を調節するための装置を備えた時計を開示しており、これは、調節される各時計表示を選択するための手段と、選択された時計表示を調節するための手段と、を含む。少なくとも調節される表示を選択するための手段は、非選択状態および選択状態にそれぞれ対応する2つの状態を有する、対応するプロファイルを含む選択カムに運動学的に接続され、調節装置は、調節手段を、選択された時計表示のそれぞれに接続するための手段を含む。
【0009】
特許文献6は、時計によって表示される機能の修正のための装置を開示しており、これは、その時計によって表示される複数の時間に関する機能の情報を修正するのに使用され得る。これは、機能を変更するためのプッシャであって、これを作動させると、操縦輪が転置されて、選択された機能のために修正ピニオン(corrector pinion)と係合させられる、プッシャと、ステムであって、これを一方向または反対方向に回転させると、操縦輪が旋回され、これによって修正ピニオンのうちの1つを駆動して、選択された機能に関する情報を上方または下方修正し、それによってその装置が双方向修正を実行する、ステムと、を含む。
【0010】
特許文献7は、巻き上げ、かつ/または少なくとも2つの時計学的機能を修正するための機構と、巻き機能および複数の修正機能から時計学的機能を選択するための装置と、を開示し、これは、制御部材、例えばステムを含み、これは、制御手段を第1の方向に転置させることで巻き上げ機能を選択し、制御部材を第2の方向に転置させることで複数の修正機能の中からある機能を順次選択するのに使用され得る。
【0011】
特許文献8は、所与の方向に回ると巻き上げ歯車列に運動学的に接続され、反対方向に回ると日付リングに運動学的に接続される、巻真の回転によって、カレンダー時計の日付表示を迅速に修正するための装置を開示している。このために、この装置は、巻真が一方向に回るとつめ車と噛み合い、巻真が逆方向に回ると日付表示を修正するための可動物と噛み合うように、円弧の形態をした2つの相対するセグメントを含む、偏心軸上に回転するように装着された可動冠歯車を含む。
【0012】
特許文献9は、遅延機構を有する巻真を用いて腕時計を設定し修正するための装置を記載している。さらに、この装置はスライドピニオンを含み、これは、巻真の中間位置では、セッティングホイールと噛み合うことができ、これは、軸がレバーの細長い開口部に転置可能に装着されている曜日および日付修正ホイールを駆動する中間ホイールと噛み合う。中間ホイールおよび修正ホイールは、旋回レバーを介して接続され、これらのホイールの軸は、旋回レバーが中間ホイールを中心として旋回すると修正ホイールが前記細長い開口部内で旋回し、それによって曜日および日付修正ホイールが日付リングまたは曜日スター駆動ホイール(day star drive wheel)と係合することができるように、接触摩擦で旋回レバーを圧迫する。よって、巻真がその中間位置で一方向に回ると、曜日および日付修正ホイールは、日付リングと噛み合い、表示される日付を変更するのに使用され得、巻真がその中間位置で反対方向に回ると、曜日および日付修正ホイールは、駆動ホイールと噛み合い、表示される曜日を変更するのに使用され得る。
【0013】
特許文献10は、時間設定および修正装置を備えた時計に関し、この装置は、巻き上げ、設定、修正などの可動物と交互に係合され得る修正ホイールを保持するヨークを含む。このために、前記ヨークは、操縦ステムを、その押し込み位置で回すことによって、所望の位置に導かれ得、そうすると、前記操縦ステムのスライドピニオンが、操縦ステム上に緩く装着されたピニオンを介してヨークを駆動する。操縦ステムの引き出し位置では、前記操縦ステムのスライドピニオンは、表示される日付もしくは曜日の巻き上げ、設定、修正、または任意の他の類似の時計学的機能を許容するように、ヨークの角度位置に応じて、可動物のうちの1つを駆動する。
【0014】
手短に言えば、当分野において現時点で既知である先行技術の解決策は、構造が複雑であり、多数の可動部品を要し、また、厚さに関してかさばる。さらに、それらが調節に使用され得る機能の数は、一般的には3つまたは4つの機能に限られており、それは、特に単一の従動ピニオンが使用されるか、または転置不可能な従動ピニオンが使用されるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】スイス特許出願公開第707870号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2701014号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1152303号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2444861号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2012199号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2701015号明細書
【文献】国際公開第2016/155814号パンフレット
【文献】スイス特許第592325号明細書
【文献】仏国特許出願公開第2169861号明細書
【文献】スイス特許第548632号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、既知の装置の不都合を克服し、特に、機械式腕時計の多数の時計学的機能を、少数の可動部品を用いて調節するのを可能にすることである。さらなる目的は、厚さに関してかさばらない調節装置を製造することである。本発明のさらなる目的は、取り扱いがユーザにとって非常に容易な調節装置を提供することである。本発明のさらなる目的は、構造が頑丈で、信頼性のある調節装置を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このために、本発明は、請求項1に定めるような時計の時計学的機能を調節するための装置を提案する。
【0018】
このタイプの装置は、選択および作動のための機構を備え、この機構は、
駆動手段と、
駆動ピニオンであって、前記駆動手段は、前記駆動ピニオンを時計回り方向および反時計回り方向に駆動するように構成されている、駆動ピニオンと、
駆動ピニオンが時計回り方向に回った場合、および前記駆動ピニオンが反時計回り方向に回った場合に、前記駆動ピニオンによって駆動されるように配置されている少なくとも1つの従動ピニオンと、を含み、
前記従動ピニオンは、駆動ピニオンが時計回り方向に回ると、駆動ピニオンの影響下で、前記従動ピニオンが第1の時計学的機能の作動手段を作動させる第1の位置へと動くように、また、駆動ピニオンが反時計回り方向に回ると、駆動ピニオンの影響下で、前記従動ピニオンが第2の時計学的機能の作動手段を作動させる第2の位置へと動くように構成され、前記従動ピニオンは、その前記第2の位置にあるときに第1の時計学的機能の作動手段を作動させず、逆に、前記従動ピニオンは、その前記第1の位置にあるときに第2の時計学的機能の作動手段を作動させず、前記選択および作動のための機構は、少なくとも2つの従動ピニオンを含み、調節装置は、駆動ピニオンを選択的に前記従動ピニオンのそれぞれと噛み合わせるように構成された制御機構をさらに含む。
【0019】
一方、ゆえに、前記に定めた装置は、2つの機能、例えば日付および週の曜日の表示に独立して作用するように、単一の従動ピニオンを用いる。他方で、駆動手段の影響下でのこれらの作用は、それらがプッシャによって生じるか、またはクラウンステムによって生じるかにかかわらず、表示される表示の修正が、例えば日付の数字を増やすことによって、一方向において実行され得るのみであるという意味で「単方向」であり、これは、駆動手段の回転方向を逆にすると、第1の機能の作動手段と従動ピニオンとの間の分離、ならびにこの従動ピニオンと第2の機能の作動手段との連結を引き起こすためである。
【0020】
前述した装置の一実施形態によると、前記従動ピニオンは、スライドピニオンであり、スライドピニオンの軸は、前記軸に垂直にスライドするように、プレートに形成された楕円形ハウジングに収容されたピンによって構成され、前記ハウジングは、従動ピニオンのピンが時計回り方向への駆動ピニオンの回転の影響下で楕円形ハウジングの第1の端部まで動き、したがって、従動ピニオンが前記第1の位置にくるように、また、ピンが反時計回り方向への駆動ピニオンの回転の影響下で楕円形ハウジングの他端部まで動き、そして従動ピニオンが前記第2の位置にくるように、配される。
【0021】
一実施形態によると、従動ピニオンは、一方では、駆動ピニオンの歯と噛み合うように構成された歯を保持し、他方では、同軸可動物を保持し、その歯、またはアームは、時計学的機能の歯または作動手段と協働するように構成されている。
【0022】
一実施形態によると、駆動ピニオンは、特にセッティングホイールを介して、時計の巻き上げおよび/または調節クラウンと、運動学的に接続されている。
【0023】
前述した調節装置の一実施形態によると、前記選択および作動のための機構は2つの従動ピニオンを含み、前記制御機構は、並進運動によって、駆動ピニオンを交互に2つの従動ピニオンのそれぞれと接触させるように構成されている。
【0024】
一実施形態によると、駆動ピニオンは、スライドピニオンであり、スライドピニオンの軸は、前記軸に垂直にスライドするように、前記プレートに形成された楕円形ハウジングに収容されたピンによって構成され、前記制御機構は、前記ハウジング内でのピンのスライドを制御する。
【0025】
一実施形態によると、駆動ピニオンの軸の楕円形ハウジングのそれぞれの端部は、前記従動ピニオンの前記第1および第2の位置のそれぞれにおいて従動ピニオンのそれぞれと有効に係合することができるように、配置されている。
【0026】
一実施形態によると、制御装置は、ウィグワグ(wig-wag)によって制御されるヨーク、および制御レバーによって構成される組立体を含み、前記組立体は、前記プレートに装着されている。
【0027】
一実施形態によると、前記選択および作動のための機構は、2つ以上である、いくつかの従動ピニオンを含み、制御機構は、回転アームを含み、この上に駆動ピニオンが配置され、前記制御機構は、連続回転によって駆動ピニオンを従動ピニオンのそれぞれとの噛み合い位置に導くように構成されている。
【0028】
一実施形態によると、制御機構は、前記回転アームの関節運動軸と同軸である星状部(star)によって、ジャンパーによって、また、前記星状部と協働するばねヨークによって、形成された組立体を含み、星状部の1つの枝部に対応する角度値(angular value)にわたり星状部が回転すると、駆動ピニオンが、従動ピニオンとの噛み合い位置から、隣接する従動ピニオンとの噛み合い位置に導かれる。
【0029】
一実施形態によると、従動ピニオンは、スライドピニオンであり、スライドピニオンの軸は、プレートの楕円形ハウジングに収容されたピンによって構成され、前記楕円形ハウジングは、駆動ピニオンを保持する回転アームの関節運動軸と同軸である円に対して接線方向に配置されている。
【0030】
一実施形態によると、駆動ピニオンは、回転アームの関節運動軸と同軸であるセッティングホイールを介して、その駆動手段に運動学的に接続されている。
【0031】
最後に、本発明は、本明細書で前記に定めたような時計学的機能を調節するための装置を含む時計を提供する。
【0032】
他の特徴、ならびに対応する利点は、本発明の2つの実施形態をさらに詳細に論じる以下の説明から明らかになるであろう。
【0033】
添付図面は、一例として、本発明の2つの実施形態を図によって表す。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1a】4つの時計学的機能を調節することを可能にする、本発明による調節装置の第1の実施形態の平面図を示す。
【
図3a】制御装置を作動させた後の、
図1aによる調節装置の平面図である。
【
図3b】駆動手段の回転方向を逆にした後の、
図3aによる調節装置の平面図である。
【
図4a】本発明による調節装置の従動ピニオンの代替的な配置の平面図を示す。
【
図5a】12個の時計学的機能を調節することを可能にする、本発明による調節装置の第2の実施形態の平面図を示す。
【
図7a】駆動されている、
図5aによる調節装置の平面図である。
【
図7b】駆動方向を逆にした後の、
図7aによる調節装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1a~
図3bは、例えば表示修正装置の状況で、4つの利用可能な機能からある機能を選択し作動させるための機構を含む、第1の調節装置を示す。この機構は、回転運動を、駆動ピニオン1に時計回り方向および反時計回り方向において、自己の裁量で伝達することができる、駆動セッティングホイール9を含む。単にピンの形態で製造され得る、駆動ピニオン1の軸は、図面では図示されないブリッジまたはプレートの楕円形スロットに収容され得、この端部は、駆動ピニオン1の軸の第1および第2の端部位置を、駆動ピニオン1が時計回り方向および反時計回り方向の両方においてセッティングホイール9によりこれらの2つの位置で回転が駆動され得るままであるスライドピニオンとなるように、定める。前記プレートの楕円形スロットは、
図1aおよび
図1bならびに
図3aおよび
図3bで点線として象徴的に示されている。あるいは、駆動ピニオン1の軸は、単に以下に記載する制御装置上に配置され得、この制御装置は、駆動ピニオン1の軸がその第1および第2の端部位置に位置付けられることを許容する。この理由から中央位置にある、駆動ピニオン1の両側には、中央ピニオンがその第1または第2の端部位置において側方ピニオン2、3のうちの一方または他方の十分近くに動いて中央ピニオン1と交互に従動ピニオンになる側方ピニオン2、3のうちの一方または他方との間に運動学的接続を形成するように、2つの側方ピニオン2および3が存在している。
【0036】
ピンによって構成され得る、2つの側方ピニオン2、3それぞれの軸は、プレートに形成された2つのそれぞれの楕円形ハウジングに収容されてもよく、これは、駆動ピニオン1に運動学的に接続された側方ピニオン2または側方ピニオン3のピンが、時計回り方向への駆動ピニオン1の回転により生じる接線力の影響下でその楕円形ハウジングの第1の端部まで動き、それによって従動ピニオン2または従動ピニオン3が第1の駆動位置にくるように、ならびに、この側方従動ピニオン2または側方ピニオン3のピンが、反時計回り方向への駆動ピニオン1の回転により生じる接線力の影響下でその楕円形ハウジングの他端部まで動き、それによって従動ピニオン2または従動ピニオン3が第2の駆動位置にくるように、配置されている。
図3aおよび
図3bは、以下で説明する制御装置によって側方ピニオン2に運動学的に接続されている中央ピニオン1が時計回り方向に回るか反時計回り方向に回るかによって、前記側方ピニオン2の第1および第2の駆動位置のそれぞれへと中央ピニオン1によって駆動された側方ピニオン2を示すことによって、この機構を示す。2つの側方ピニオン2、3の軸を収容する前記プレートの楕円形ハウジングが、
図1aおよび
図1bならびに
図3aおよび
図3bで点線によって象徴的に示されており、駆動ピニオン1の軸を収容する前記プレートの楕円形スロットに実質的に垂直に向けられている。あるいは、従動ピニオン2、3はそれぞれ、外歯および円形の内周部2d、3dを備えたリングによって構成され得、この場合、これらの従動ピニオン2、3の軸はおそらくそれぞれ、偏心器2a、3aによって構成されており、偏心器は、前記プレートに固定されており、かつ2つの対向した円弧2b、2c、3b、3cを、リング2、3と運動学的に接続された中央ピニオン1が時計回り方向に回るか、反時計回り方向に回るかに応じてこれらの円弧2b、2c、3b、3cそれぞれが対応する従動リング2、3の前記円形の内周部2d、3dと接触され得るように、含んでいる。従動ピニオン2、3の軸がピニオンに固定されていないがプレートに固定されている、この代替的な構成は、
図4aおよび
図4bに図示されている。従動ピニオン2、3の特定の実施形態とは無関係に、従動ピニオン2、3の表面を圧迫する側方アームを含む摩擦ばね10が、前記プレート上に配
されて、対応する時計の空間における位置とは無関係に調節装置の動作を確実にするように、従動ピニオン2、3をそれぞれの軸方向位置に固定する。
【0037】
第1の時計学的機能の作動手段Aおよび第2の時計学的機能の作動手段Bが、
図3aおよび
図3bに図示されており、これらの手段A、Bは、この従動ピニオン2の位置に応じて従動ピニオン2と交互に噛み合うことができるように、従動ピニオン2の両側に配されている。実際、これらの2つの
図3aおよび
図3bで分かるように、従動ピニオン2は、駆動ピニオン1が時計回り方向に回ると、駆動ピニオン1の影響下で、前記従動ピニオン2が第1の時計学的機能の作動手段Aを作動させる第1の位置へと動くように、また、駆動ピニオン1が時計回り方向に回ると、駆動ピニオン1の影響下で、前記従動ピニオン2が第2の時計学的機能の作動手段Bを作動させる第2の位置へと動くように、構成されている。前記従動ピニオン2は、その第2の位置にあるときは第1の時計学的機能の作動手段Aを作動させず、逆に、前記従動ピニオン2は、その第1の位置にあるときは第2の時計学的機能の作動手段Bを作動させない。同じように、
図3aおよび
図3bには示されていない、第3の時計学的機能の作動手段および第4の時計学的機能の作動手段が、従動ピニオン3の両側に配され、これらの手段はおそらく、駆動ピニオン1がこの従動ピニオン3との噛み合い位置にあるとき、駆動ピニオン1の時計回りまたは反時計回りの回転方向との関係で、従動ピニオン3の位置に応じてこの従動ピニオン3と交互に噛み合う。
【0038】
作動手段AおよびBの構造は、対応する時計学的機能を形成する部品の構造によって決まる。従動ピニオン2または3は、一方では、駆動ピニオン1の歯と噛み合うように構成された歯を保持し、他方では、対応する時計学的機能の歯もしくは作動手段A、Bと協働するように構成された、歯もしくはフィンガーを含む同軸可動物を保持する。単に例示的な実施例として、
図2bは、対応する時計学的機能のディスクの内歯、例えば日付ディスクの内歯と相互作用し得る、4つのフィンガー11によって構成された同軸可動物を保持する従動ピニオン2を示す。
【0039】
手短に言えば、前述した機構は、3つの旋回スライドピニオンを含み、そのうちの2つは、好ましくは、対応する楕円形ハウジングに収容されるか、または、偏心軸の周りに装着されたリングによって形成され、3つのピニオンのうちの1つである、中央ピニオン1は、以下に説明するような制御装置を使用して、並進運動によって、2つの残りの側方ピニオン2、3のうちの一方に選択的に接近し得るように、収容される。セッティングホイール9は、中央ピニオン1を駆動するように作用し、このセッティングホイール自体は、例えば巻き上げおよび修正クラウン(図面では図示せず)を用いて、駆動される。したがって駆動ピニオンである中央ピニオン1は、回転運動を、選択された側方ピニオンに伝達し、さらに、その楕円形ハウジングの端部のうちの一方もしくは他方に向かって、または、一般化すると、その第1もしくは第2の駆動位置に向かって、選択された側方ピニオンの並進運動を引き起こし、これは、回転方向に応じて、選択された側方ピニオンが側方ピニオンによって調節され得る時計学的機能のうちの一方または他方を選択的に作動させるように、中央ピニオンの回転方向の関数である。
【0040】
図1a~
図3bに示す実施形態によると、制御装置は、ウィグワグ6によって制御されるヨーク4、および制御レバー7によって構成される組立体であり、前記組立体は、プレートに装着されている。ウィグワグ6は、ウィグワグばね8によってプレストレスを与えられる。ヨーク4は、ヨークジャンパー5および制御レバー7の突起を用いてロックされる。駆動ピニオン1の軸がプレートの楕円形スロットに収容されたピンの形態で製造された場合、ヨークのU字型凹部は、制御レバー7の作動後のヨーク4の回転により、ピニオン1の軸が前記楕円形スロット内でその2つの端部位置のうちの一方から他方に移るように、駆動ピニオン1の軸の一端部を収容する。駆動ピニオン1の軸がヨーク4に装着されると、その転置により、駆動ピニオン1の軸の端部位置が直接定められる。本発明による選択装置が時計に統合されると、ユーザは、
図3aおよび
図3bの矢印によって象徴的に示され、制御レバー7が作動されるのを可能にする、プッシャによって、ヨーク4の位置を制御することができ、セッティングホイール9に作用し得る、ステム、例えば巻真を作動させるクラウンによって、スライドピニオン1の回転方向を変更させることができる。
図1aに示す調節装置の状態から、例えば、ユーザは、制御レバー7に作用することによって、すなわち前記プッシャを作動させ、次に、セッティングホイール9の回転方向を逆にすることによって、すなわち巻真を反対方向に回すことによって、
図3bに示すように作動される時計学的機能を変化させることによって、
図3aに示すこの装置の状態にアクセスする。
【0041】
図5a~
図7bは、12個の利用可能な機能から1つの機能を選択し作動させるための機構を含む、第2の調節装置を示す。この装置は、ディスクの形態であってよいが、必ずしもディスクの形態である必要はない、プレート110に装着される。その機構は、自己の裁量で、時計回り方向および反時計回り方向において駆動ピニオン101に回転運動を伝達することができる、駆動セッティングホイール109を含む。図面に示す実施形態では、セッティングホイール109は、プレート110の片側に回転自在に装着され、その他の部品、特に、セッティングホイール109に固定して取り付けられ、これと同軸である、中間セッティングホイール109aは、プレート110のもう一方の側に配置される。駆動ピニオン101の軸(図面では見えない)は、回転アーム112に収容され、その関節運動軸は、好ましくはセッティングホイール109aと同軸である。角度的に等距離な6つの側方ピニオンは、プレート110の周辺部に配置される。この説明の残部では、それらのうちの2つ102および103のみが詳細に説明されるが、それは、この説明が、必要な変更を加えて、4つの残りのピニオンにも当てはまるためであり、この数は、さらに異なっていてもよい。駆動ピニオン101は、側方ピニオン102、103のうちの一方または他方に十分近づけられて、中央ピニオン101と、それぞれが交互に従動ピニオンになり得る、側方ピニオン102、103のうちのいずれか一方または他方との間に、運動学的接続を形成し得る。
【0042】
ピンによって構成され得る、側方ピニオン102、103それぞれの軸は、プレート110に形成されたスロットによって構成された楕円形ハウジングに収容され得、6つの楕円形ハウジングは、駆動ピニオン101を保持する前記回転アーム112の関節運動軸と同軸である円に接線方向に配され、特に
図7aおよび
図7bで分かるように、駆動ピニオン101に運動学的に接続された側方ピニオン102のピンが時計回り方向への駆動ピニオン101の回転の影響下でその楕円形ハウジングの第1の端部まで動き、したがって従動ピニオン102が第1の位置にくるように、また、この側方従動ピニオン102のピンが、反時計回り方向への駆動ピニオン101の回転の影響下でその楕円形ハウジングの他端部まで動き、したがって従動ピニオン102が前記第2の位置に来るように、配置される。
図7aおよび
図7bは、以下で説明する制御装置によって側方ピニオン102と運動学的に接続された中央ピニオン101が、時計回り方向に回るか、反時計回り方向に回るかに応じて、前記側方ピニオン102の第1および第2の位置それぞれにおいて、中央ピニオン101によって駆動される側方ピニオン102を示すことによって、この機構を示している。あるいは、
図1a~
図3bに示す第1の調節装置に関する対応する議論と同じように、
図5a~
図7bに示された第2の調節装置の従動ピニオン102、103はそれぞれ、外歯および円形の内周部を有するリングによって構成され得、この場合、これらの従動ピニオン102、103の軸は、おそらくはそれぞれが、前記プレート110に固定された偏心器によって構成され、偏心器は、
図4aおよび
図4bに示すような2つの対向した円弧を、リング102、103と運動学的に接続された中央ピニオン101が時計回り方向に回るか、反時計回り方向に回るかに応じて、これらの円弧それぞれが対応する従動リング102、103の前記円形の内周部と接触し得るように、含んでいる。同様に、従動ピニオン102、103の表面を圧迫する側方アームを含む摩擦ばね116が、前記プレート110上に配されて、対応する時計の空間における位置とは無関係に調節装置の動作を確実にするように、従動ピニオン102、103をそれぞれの軸方向位置に固定する。
【0043】
第1の時計学的機能の作動手段A'および第2の時計学的機能の作動手段B'が、
図7aおよび
図7bに図示されており、これらの手段A'、B'は、この従動ピニオン102の位置に応じて従動ピニオン102と交互に噛み合うことができるように、従動ピニオン102の両側に配されている。これら2つの
図7aおよび
図7bで分かるように、従動ピニオン102は、駆動ピニオン101が時計回り方向に回ると、駆動ピニオン101の影響下で、前記従動ピニオン102が第1の時計学的機能の作動手段A'を作動させる第1の位置へと動くように、また、駆動ピニオン101が反時計回り方向に回ると、駆動ピニオン101の影響下で、前記従動ピニオン102が第2の時計学的機能の作動手段B'を作動させる第2の位置へと動くように、構成されている。前記従動ピニオン102は、その前記第2の位置にあるときは第1の時計学的機能の作動手段A'を作動させず、逆に、前記従動ピニオン102は、その前記第1の位置にあるときは第2の時計学的機能の作動手段B'を作動させない。同じように、
図7aおよび
図7bには示されていない、2つの追加の時計学的機能の作動手段が、駆動ピニオン101の周囲に装着された他方の従動ピニオンの両側に配され、これらの手段は、駆動ピニオン101がこれらの従動ピニオンのうちの1つとの噛み合い位置にあるとき、駆動ピニオン101の時計回りまたは反時計回りの回転方向との関係で、従動ピニオンの位置に応じてこれらの従動ピニオンと交互に噛み合うことができる。したがって、一般化すると、駆動ピニオン101の回転方向ならびにその位置を選択することによって、本発明による装置は、装置に存在する従動ピニオンの数の2倍に相当する数の追加の機能を制御し得る。
【0044】
作動手段A'およびB'の構造は、対応する時計学的機能を形成する部品の構造によって決まる。従動ピニオン102、103
は、一方では、駆動ピニオン101の歯と噛み合うように構成された歯を保持し、他方では、時計学的機能の歯もしくは作動手段A'、B'と協働するように構成された、歯もしくはフィンガーを含む同軸可動物を保持する。単に例示的な実施例として、
図6bは、対応する時計学的機能のディスクの歯と相互作用し得るフィンガー111を有する同軸可動物を保持する従動ピニオンのうちの1つを示す。
【0045】
手短に言えば、前述した機構は、6つの旋回スライドピニオンを含み、これらはそれぞれ、好ましくは、対応する楕円形ハウジングに収容されるか、または偏心軸の周りに装着されたリングによって形成され、2×6=12個の機能が選択され作動されるのを可能にする。別のピニオンである、中央ピニオン101は、以下で説明する制御装置によって、アームの回転により6つの側方ピニオンのうちの1つに選択的に接近し得るように、回転アーム上に収容される。セッティングホイール109は、中央ピニオン101を駆動するように作用し、このセッティングホイール自体は、例えば巻き上げおよび修正クラウン(この図面では図示されず)を用いて、駆動される。したがって、駆動ピニオンである中央ピニオン101は、回転運動を、選択された側方ピニオンに伝達し、さらに、その楕円形ハウジングの端部のうちの一方もしくは他方に向かって、または、一般化すると、その第1もしくは第2の駆動位置に向かって、選択された側方ピニオンの並進運動を引き起こし、これは、回転方向に応じて、選択された側方ピニオンが側方ピニオンによって調節され得る2つの時計学的機能のうちの一方または他方を選択的に作動させるように、中央ピニオンの回転方向の関数である。
【0046】
図5a~
図7bに示す実施形態では、回転アーム112の制御装置は、回転アーム112に対して回転が固定された星状部106、ヨーク104、星状部106の枝部間を貫通することができ、プレテンションばね107によって星状部106に向かってプレストレスを与えられるジャンパー105によって構成される組立体であり、プレテンションばね自体は、前記プレテンションばね107のプレテンション力を調節するのに使用され得るねじ115を介して固定されている。前記組立体は、プレート110に装着されている。ヨーク104は、ヨークばね108を備えており、ヨークばね108は、ヨーク104の第1の自由端部を圧迫し、ヨーク104の第2の自由端部がジャンパー105を圧迫して星状部106の枝部間でジャンパーをブロックするように、ヨーク104の第1の自由端部にプレストレスを与える。よって、星状部は、ジャンパー105によってロックされる。ヨーク104の第1の自由端部は、
図7aおよび
図7bの矢印によって象徴的に示されるプッシャなどの外部推進手段に運動学的に接続されたアバットメント114を保持する。外部推進手段の作動後のアバットメント114に対する衝撃は、ヨーク104を旋回させ、ヨーク104の第2の自由端部を介してジャンパー105を解放し、よって、星状部106を解放し、かつ、ヨーク104の突起113を介して星状部106の枝部のうちの1つを推進する効果を有し、これにより、星状部の、ひいては回転アーム112の回転を引き起こす。制御装置は、この回転が2つの側方ピニオン102、103間の角度間隔に対応するように、較正され、星状部の枝部の数は、従動ピニオンの数に等しい。よって、駆動ピニオン101は、従動ピニオン102から従動ピニオン103へと移る。外部推進手段、またはヨーク104の第1の自由端部を解放すると、ジャンパー105は、星状部106の2つの枝部間に戻り、ピニオン101をその新たな位置でブロックする。本発明による選択装置が時計に統合されると、ユーザは、前記プッシャによってヨーク104の位置を制御することができ、これはヨーク104の前記第1の自由端部が作動され得ることを意味しており、また、ユーザは、セッティングホイール109に作用し得るステム、例えば巻真を作動させるクラウンによって、スライドピニオン101の回転方向を変更させることができる。
図5aに示す調節装置の状態から、例えば、ユーザは、巻真を一方向に回転させ、次にステムの回転方向を逆にすることによって、すなわち巻真を反対方向に回すことによって、
図7bに示すように作動された時計学的機能を変化させることによって、
図7aに示すこの装置の状態を達成する。
【0047】
当業者は、時計の機能の数に応じて従動ピニオンの数を変更することができる。さらに、本発明の範囲から逸脱せずに、前述したヨーク型制御装置は、駆動ピニオンを転置させるための他のシステムと置き換えられ得る。さらに、ヨークの所与の位置において調節され得る機能は、特に多数の時計学的機能を本発明による調節装置により制御しなければならない場合に、当業者によく知られている適切な手段を用いて、時計のダイヤルに表示され得る。
【0048】
本発明による装置の構造および機能に関する前述の議論を鑑みて、このような装置がいくつかの利点を提供し、導入部において定めた目的、特に、駆動ピニオンの位置および回転方向の選択を介して多数の時計学的機能を単方向に修正するための装置の製造を達成するのに、使用され得ることが明らかである。さらに、これらの構成要素は、その使用中、頑丈であると共に、単純で信頼性がある。このタイプの装置の比較的単純な構造により、これらの利点は、決して製造コストを増やすことなく、得られる。
【符号の説明】
【0049】
1 駆動ピニオン
2 従動ピニオン
3 従動ピニオン
4 ヨーク
5 ヨークジャンパー
6 ウィグワグ
7 制御レバー
8 ウィグワグばね
9 駆動セッティングホイール
10 摩擦ばね
11 同軸可動物のフィンガー
101 駆動ピニオン
102 従動ピニオン
103 従動ピニオン
104 ヨーク
105 ジャンパー
106 星状部
107 プレテンションばね
108 ヨークばね
109 駆動セッティングホイール
109a 駆動セッティングホイール
110 プレート
111 フィンガー
112 回転アーム
113 突起
114 アバットメント
115 ねじ
116 摩擦ばね