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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】モノリシックな秤量ブロック
(51)【国際特許分類】
   G01G 21/00 20060101AFI20220520BHJP
【FI】
G01G21/00
【請求項の数】 26
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020083914
(22)【出願日】2020-05-12
(65)【公開番号】P2020187125
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2020-05-29
(31)【優先権主張番号】10 2019 113 001.8
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506186673
【氏名又は名称】ヴィポテック ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】ADAM-HOFFMANN STRASSE 26, 67657 KAISERSLAUTERN,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ゴットフリードセン
(72)【発明者】
【氏名】ソーステン アサル
(72)【発明者】
【氏名】トビアス シュテルヴァーゲン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-デービッド クリンゲルヘーファ
【審査官】谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-508117(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0022929(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 1/00-23/48
G01L 1/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向(X)、長手方向(X)に対して直交する横方向(Y)、および前記両方の方向(X,Y)に対して直交する高さ方向(Z)に延びる秤量ブロック(B)であって、前記秤量ブロック(B)は、
a)リンケージまたはレバーを支持するための秤量受(F)と、
b)2つの前記リンケージ(Lo,Lu)とを含み、両方の前記リンケージのうちの各々は長手方向(X)で第1の端部領域から前記第1の端部に向かい合う第2の端部領域へと延び、各々の前記リンケージ(Lo,Lu)は少なくとも1つの支持ジョイント(GS)を介して前記秤量受(F)と結合され
c)高さ方向(Z)に沿って導入される重量の力を受容するための荷重受容部(A)を含み、両方の前記リンケージはそれぞれ第2の端部をもって少なくとも1つのリンケージジョイント(GR)を介して前記荷重受容部(A)と結合され、それにより前記荷重受容部(A)は前記秤量受に対して相対的に高さ方向(Z)で平行に案内される秤量ブロックにおいて、
d)前記秤量ブロック(B)の個々のコンポーネントはジェネレーティブな製作(3D印刷)の原理に基づいて層ごとに造形されてモノリシックにつながり合うように構成され、
e)前記秤量ブロック(B)が、前記ジェネレーティブな製作において材料層が造形されていないゾーンで形成されるアンダーカットを有し、
f)前記第1の端部領域(H 1 )と前記第2の端部領域(H 2 )の間に延びる第1のレバー(H)が設けられ、前記第1のレバー(H)は前記第1の端部領域(H 1 )で力をさらに伝えるために荷重ジョイント(G L )を含む少なくとも1つの連結部材(K)に後続し、前記第1のレバー(H)は前記支持ジョイント(G S )を介して前記秤量受(F)と結合され、前記支持ジョイント(G S )と前記荷重ジョイント(G L )はいずれも旋回軸(A GS ,A GL )をそれぞれ形成し、
g)第1の端部領域(M 1 )と第2の端部領域(M 2 )の間に延び、前記第1の端部領域(M 1 )で前記荷重ジョイント(G L )を有する前記連結部材(K)を介して前記第1のレバー(H)の前記第2の端部領域(H 2 )と結合されるとともに前記支持ジョイント(G S )を介して前記秤量受と結合される第2のレバー(M)が設けられ、前記支持ジョイント(G S )と前記荷重ジョイント(G L )はいずれも旋回軸をそれぞれ形成する、
ことを特徴とする秤量ブロック。
【請求項2】
前記荷重ジョイント(GL)は、前記秤量ブロックの2つの区域を互いに結合するために、少なくとも2つの材料ウェブが共同で第1の区域を第2の区域と結合する交差ばねジョイントとして構成され、前記材料ウェブのうちの1つは旋回軸に沿った投影で見たときに45°≦α≦135°をもって、好ましくはα=90°をもって角度(α)を他の材料ウェブとともに形成することを特徴とする、請求項に記載の秤量ブロック(B)。
【請求項3】
前記荷重ジョイント(GL)と同じレバーに、特に同じ端部領域に構成される前記支持ジョイント(GS)も、同じく請求項に記載の交差ばねジョイントとして構成されることを特徴とする、前記請求項又はに記載の秤量ブロック(B)。
【請求項4】
前記連結部材(K)は力をさらに伝える材料ウェブによって相互に間隔をおく2つの交差ばねジョイントを有することを特徴とする、請求項からのいずれか1項に記載の秤量ブロック(B)。
【請求項5】
前記リンケージ(Lo,Lu)に配置されたジョイント(GS,GR)の旋回軸は平行四辺形の頂点に位置することを特徴とする、先行請求項1からのうちいずれか1項に記載の秤量ブロック(B)。
【請求項6】
前記レバー(H,M)と結合された少なくとも1つの前記荷重ジョイント(GL)または前記支持ジョイント(GS)はその旋回軸の方向に関して一方または両方の側で当該レバーの材料区域により包囲されることを特徴とする、請求項からのいずれか1項に記載の秤量ブロック(B)。
【請求項7】
旋回軸が一直線上に並ぶのではない、同一のレバーに作用する少なくとも2つのジョイントはそれぞれの旋回軸の方向で、それぞれの旋回軸に対して垂直に形成されるジョイント横断面が旋回軸方向の投影で見て重なり合うように前後して位置することを特徴とする、請求項からのいずれか1項に記載の秤量ブロック(B)。
【請求項8】
同一のレバーと結合された2つのジョイントの1つの方向(X,Y,Z)に存在する旋回軸距離はゼロよりも大きく、かつ当該方向での前記ジョイントのうちの少なくとも1つの広がりよりも小さいことを特徴とする、請求項からのいずれか1項に記載の秤量ブロック(B)。
【請求項9】
少なくとも1つの前記レバー(H,M)は第1のジョイント(GL)を収容するためのポケット(T)を有することを特徴とする、請求項からのいずれか1項に記載の秤量ブロック(B)。
【請求項10】
前記ポケット(T)は壁区域(W)を有し、そこから一方の側で前記第1のジョイント(GL)との結合のための第1の支持区域が突出し、前記壁区域の他方の側では別の支持区域(V)が別のジョイント(GS)との結合のために突出することを特徴とする、前記請求項に記載の秤量ブロック(B)。
【請求項11】
前記両方の支持区域は前記壁とともにZ字型の横断面を形成することを特徴とする、前記請求項10に記載の秤量ブロック(B)。
【請求項12】
前記両方のレバー(H,M)のうちの一方は他方のレバー(M,H)の一区域が中に配置される切欠きを有することを特徴とする、前記請求項から11のいずれか1項に記載の秤量ブロック(B)。
【請求項13】
前記秤量受(F)は長手方向(X)で第1のブロック端部(B1)を起点として、
a)各平行リンケージ(Lo,Lu)の間に延び、および/または
b)前記荷重受容部(A)を通過して延びることを特徴とする、前記請求項1から12のいずれか1項に記載の秤量ブロック(B)。
【請求項14】
前記荷重受容部(A)および/または前記秤量受(F)は長手方向(X)に延びる切欠きによって貫通され、該切欠きの中に少なくとも1つのジョイント、特に前記支持ジョイント(GS)が配置されることを特徴とする、先行請求項1から13のうちいずれか1項に記載の秤量ブロック(B)。
【請求項15】
前記レバー(H,M)は横方向(Y)に両側で別のレバー(H,M)により取り囲まれ、この別のレバーがさらに横方向(Y)に両側で前記秤量受(F)により取り囲まれることを特徴とする、先行請求項1から14のうちいずれか1項に記載の秤量ブロック(B)。
【請求項16】
前記ジョイント(GR,GS,GL)は交差ばねジョイントとして構成され、少なくとも3つの材料ウェブが共同で第1の区域を第2の区域とジョイント式に結合し、前記材料ウェブのうちの少なくとも1つは旋回軸に沿った投影で見て角度(α)を45°≦α≦135°をもって、好ましくはα=90°をもって、少なくとも2つの他の材料ウェブとともに形成することを特徴とする、先行請求項1から15のうちいずれか1項に記載の秤量ブロック(B)。
【請求項17】
前記レバー(H,M)または前記ジョイント(GS,GR,GL)または前記リンケージ(Lo,Lu)または前記秤量受(F)または前記荷重受容部(A)または前記連結部材(K)の少なくとも1つの区域が、好ましくは前記秤量ブロックのすべてのコンポーネントが、ロッド構造として構成されることを特徴とする、先行請求項1から16のうちいずれか1項に記載の秤量ブロック(B)。
【請求項18】
主延在方向に対して垂直に前記レバー(H,M)を通って位置するすべての横断面の少なくとも50%、好ましくは80%超の横断面積が、それぞれの横断面の包絡線により周回される面積よりも小さいことを特徴とする、先行請求項1から17のうちいずれか1項に記載の秤量ブロック(B)。
【請求項19】
前記秤量ブロックの少なくとも2つのコンポーネント(1,2)は方向(X,Y,Z)に対して、特に長手方向(X)に対して横向きの断面で、それぞれ複数の分離された部分面(T1,T2)からなる横断面積を有する横断面を構成し、前記両方の横断面の前記包絡線(V1,V2)は少なくとも部分的に重なり合い、1つの横断面のそれぞれ少なくとも1つの部分面が他の横断面の包絡線の内部に位置し、前記コンポーネントに属するのは前記秤量受(F)、前記荷重受容部(A)、前記レバー(H,M)、前記連結部材(K)、前記リンケージ、前記ジョイント(GL,GS,GR)であることを特徴とする、先行請求項1から18のうちいずれか1項に記載の秤量ブロック(B)。
【請求項20】
2つのジョイントの、特に2つの前記支持ジョイントの、交点まで変位させた旋回軸は角度(β≠β0)をなすことを特徴とする、先行請求項1から19のうちいずれか1項に記載の秤量ブロック(B)。
【請求項21】
ジェネレーティブな製造(3D印刷)の原理に基づいて製造される請求項1から20のいずれか1項の秤量ブロック(B)のコンポーネントにおいて、前記コンポーネントはレバー(H,M)または秤量受(F)または荷重受容部(A)またはジョイント(GL,GS,GR)またはリンケージ(Lo,Lu)または連結部材(K)であるコンポーネント。
【請求項22】
先行請求項1から20のうちいずれか1項に記載の秤量ブロック(B)を製造する方法において、個々のコンポーネントが薄い材料層の上下の繰返しの塗布によって(3D印刷)構成される方法。
【請求項23】
方向(X,Y,Z)のうちの1つで、好ましくは長手方向(X)で、かつきわめて好ましくは第1のブロック端部(B1)で開始されるように材料造形が行われることを特徴とする、前記請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記秤量ブロックの1つのコンポーネントの材料造形が少なくとも1つの他のコンポーネントの材料造形によって中断されることを特徴とする、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
好ましくはモノリシックな請求項1から20のいずれか1項の秤量ブロック(B)の少なくとも1つのモノリシックなコンポーネントを製造する方法において、少なくとも1つのコンポーネントのジェネレーティブな製造(3D印刷)を含み、少なくとも1つの前記コンポーネントはレバー(H,M)および/または秤量受(F)および/または荷重受容部(A)および/またはジョイント(GL,GS,GR)および/またはリンケージ(Lo,Lu)または連結部材(K)である方法。
【請求項26】
請求項1から20のいずれか1項に記載の秤量ブロック(B)において、前記秤量ブロックは部分的または全面的に金属で、好ましくはアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成されることを特徴とする秤量ブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモノリシックな秤量ブロックに関し、およびこれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
秤量セルのためのモノリシックな秤量ブロック(「モノブロック」)が従来技術から知られている。これは、1つまたは複数のリンケージ、これと一体的に結合されたレバー機構の別のコンポーネント、たとえば平行リンケージ、荷重受容部、秤量受と呼ばれる区域などを含んでいる。ここで「秤量受」と呼ばれるのは、作動時に実質的に定置に保たれ、レバーの支持個所ないし旋回点を構成するための役目を果たす秤量ブロックの領域である。電磁式の力補償のコンポーネント(多くの場合に永久磁石)や、位置検出器も秤量受によって担持される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
モノリシックな設計形態は特に熱応力を回避し、秤量ブロックの個々のコンポーネントを組み立てることで発生する場合がある製造コストを不要にする。しかし、このような秤量ブロックの加工が任意に可能というわけではなく、それは、個々のコンポーネントが第1の方向で前後して位置している場合があり、この方向に対して垂直に相応に切断することで、互いに分断しなければならないからである(アンダーカット)。したがって、モノブロックからの材料の除去は、他のコンポーネントが工具へのアクセスを妨げない場所でしか、ないしはそのような方向でしか可能でない。さらに、除去はされなかったが、機能的に余分な材料はモノブロックに不必要な重量を与え、アンダーカットの製作が高コストになる。
【0004】
モノブロック構造の製造は、従来技術では、たとえばフライス加工、浸食、穿孔などによって材料を的確に除去することができる三次元の物体の加工に限られている。残りの材料領域が、モノブロックの互いに結合された個々の要素を形成する。モノブロック内部の任意の位置で材料除去が可能ではないため、個々の要素を構成するための、特に必要な剛性をできる限り少ない重量で実現するための、造形の余地も限られている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって本発明の課題は、このような欠点を克服することができる、モノブロックおよびこれを製造する方法を提供することにある。この課題は、請求項1に記載の秤量ブロックおよび請求項24に記載の方法によって解決される。
【0006】
本発明が依拠する知見は、3D印刷として知られるジェネレーティブな製造の原理に基づいて、特別に少ない重量を有するモノブロックを製造できるようにするというものである。このとき1つの方向で、たとえば長手方向Xで、薄い材料層が上下に重ねられて相互に結合され、そのようにして次第に1つの立体的な物体を構成する。中実材料からの材料除去によってモノブロックが製造される、これまで知られている従来技術とは異なり、ここではモノブロックはその各コンポーネントとともに材料付加によって層ごとに造形されていく。驚くべきことに出願人は実験において、モノブロックを製造するときの寸法精度に関わるマイクロメートル単位の高い要求事項を、3D印刷によって製造されたモノブロックでも実現できることを確かめることができた。従来式のモノブロックではしばしば密接に相並んで位置する平行な穴によって作成される、他ならぬ薄肉個所ないしジョイントの構成についても、3D印刷での低い製造精度という先入観を覆すことができた。モノブロックのためという特別な用途における3D印刷の利用は、複数の有意な利点を提供する:
【0007】
-公知のモノブロックでは、機能的に余分な材料を限定的にしか除去することができない。秤量ブロックの特定のコンポーネントが、工具のアクセスを難しくし、ないしは妨げるからである。それに応じて、秤量ブロックが必要以上に重くなる。さらに、比較的厚い材料領域は、周囲温度が変化したときに比較的薄い材料領域よりもゆっくりと加熱または冷却され、その結果、定常的な動作条件に達するまでに時間が不必要に経過する。本発明に基づいて製造されたモノブロックは、機能面で必要なところにのみ材料を有しており、その結果、総重量が最低限まで削減される。ロッド構造としての、または少なくとも可能な限り小さい個別断面を有する、モノブロックの個々のコンポーネントの構成は、温度変化のときの感受性をさらに低減する。
【0008】
-従来、未加工ブロックを工具(特にフライス加工工具)でそれぞれ異なる側から加工して、それにより材料を除去し、特に秤量ブロック内部の個々のコンポーネントを全体からフライス加工できるようにすることが必要であった。こうした高いコストのかかる加工を、本発明により省略することができる。
【0009】
-しばしば、(たとえば2以上のレバーを有する)複雑な秤量ブロックは、ブロックのアンダーカットなしでは製造することができない。そのために材料をブロック内部で第1の方向に、およびこれに続いてこれに対して垂直の第2の方向で除去しなければならない。これら両方のケースで工具によって加工位置に到達できるようにするために、しばしば秤量ブロックの他のコンポーネントに、特に平行リンケージに、その強度を弱くする加工開口部が必要である。それに対して3D印刷では、材料層が造形されていないゾーンによってアンダーカットを形成することができる。材料除去のための工具案内がここでは必要ない。
【0010】
-高い製造精度に基づき、モノブロックの個々のコンポーネントを3D印刷によって互いに非常に密接に位置するように構成することができ、その結果、従来式の工具で製造可能であるよりも小さい中間スペースで済ませることができる。モノブロックで薄い断面を製作するために浸食も知られているが、そのためには断面がブロック全体に通っていなくてはならず、このことは設計の自由度を著しく制約する。
【0011】
-秤量ブロックの個々のコンポーネントを、それらが互いに貫通し合うように、ないしは秤量ブロック容積の一部を共同で利用するように製作することができる。このことは特に、切欠きを有する、またはロッド構造としてのコンポーネントの構成によって可能であり、1つのロッド構造の各区域を他のロッド構造の各区域の内部に作成することができる。多数のアンダーカットが生じるこの技術は、モノブロックについての従来技術では知られていない。
【0012】
本発明による秤量ブロックは、長手方向X、これに対して直交する横方向Y、およびこれら両方の方向に対してさらに直交する高さ方向Zに延びる。秤量ブロックは第1のブロック端部に、特にリンケージまたはレバーを支持するために設けられる秤量受区域を含む。力補償システムの各部分も、秤量受に取り付けられていてよい。さらに秤量ブロックは、長手方向Xに延び、それぞれの第1の端部をもって支持ジョイントを介して秤量受と結合される2つのリンケージを有する。両方のリンケージは第1の端部に向かい合う第2の端部で、リンケージにより高さ方向Zへ秤量受に対して相対的に平行に案内される共通の荷重受容部に作用する。荷重受容部は、高さ方向で導入される重量の力を受容するための役目を果たす。もっとも単純な形態においては力変換をするレバーなしで済むこのようなシステムは、直接担持式のシステムと呼ばれ、重量の力によって引き起こされる荷重受容部の運動が、力補償システムを通じて生成される反力によって補償される。たとえばこの力補償システムの一部としてのコイルが、荷重受容部に直接的に配置されていてよい。
【0013】
すでにこのようなレバーのないシステムが、3D印刷で可能な限り少ない重量を有する各コンポーネントの構成を可能にする。さらに、たとえば力補償システムに属する磁石を受容するために荷重受容部のコイルの領域まで構成されていなければならない秤量受が、リンケージを貫通することができる。秤量受とリンケージを、このようにして部分的に互いに噛み合うように構成することができ、リンケージの個々のロッド、ストラット、またはその他の材料領域が、秤量受の材料領域に対して最小の間隔しか有さなくてよい。
【0014】
秤量ブロックの好ましい実施形態は、(好ましくは長手方向Xで)第1の端部領域と第2の端部領域の間に延びる少なくとも1つの第1のレバーを含む(レバーが力を変えるためのレバーアームを構成するこの延在方向を、主延在方向とも呼ぶことができる)。レバーは第1の端部領域で連結部材を介して荷重受容部と結合されて、荷重受容部からレバーへと力がさらに伝わることを保証する。連結部材は少なくとも1つの荷重ジョイントを含み、それにより、連結部材の一区域がレバーまたは荷重受容部に対して相対的に、荷重ジョイントによって形成される旋回軸を中心として旋回可能である。さらに、第1のレバーは同じく第1の端部領域で支持ジョイントを介して秤量受と結合され、このとき支持ジョイントも旋回軸を構成する。少なくとも1つのレバーを有する実施形態は、3D印刷によって特別に良好に製造することができるが、それは、その場合に前述した利点が全面的に作用するからである。
【0015】
「支持ジョイント」という概念は以下において、モノブロックの可動部分を、特にレバーやリンケージを秤量受と結合し、ないしはこれに支持するジョイントを意味する。「リンケージジョイント」と呼ぶのは、これを介してリンケージが荷重受容部と結合されるジョイントである。「荷重ジョイント」を介して、秤量ブロックの2つの可動の区域が相互に結合される。特に、荷重受容部は1つまたは複数の荷重ジョイントを介してレバーの端部と結合され、レバー相互の結合も荷重ジョイントを介して行われる。荷重ジョイントは、通常、連結部材の一部である。これらすべてのジョイントがそれぞれ旋回軸を構成し、これを中心として、ジョイントを介して相互に結合される2つの区域が互いに相対的に旋回可能である。
【0016】
本発明の特別に好ましい実施形態は、荷重ジョイントが交差ばねジョイントとして構成されることを意図する。このとき、ジョイント式に互いに結合されるべき両方の区域は、旋回軸の領域で互いに好ましくは接触しない少なくとも2つの材料ウェブを介して互いに結合され、材料ウェブのうちの1つは旋回軸に沿った投影で見て、他方の材料ウェブとともに角度(α≠0°)を形成する。いわゆる薄肉個所ジョイントとは異なり、ここでは軸方向に前後して位置して互いに交差する2つの材料ウェブによって、旋回軸が生成される。交差角度は45°<α<135°の範囲内にあり、多くともちょうど90°であるのが好ましい。
【0017】
軸方向に前後して位置する材料ウェブに基づき、交差ばねジョイントはアンダーカットなしではその旋回軸の方向に製作可能でない。それと同時に、交差する材料ウェブは水平方向ないし垂直方向の広がりを旋回軸に対して横向きに有し、すなわち、ジョイントは旋回軸に対して横向きにある程度のスペースを占める。レバー端部領域で力がレバーに導入される荷重ジョイントは、レバーの長手方向で、レバーを支持する支持ジョイントのごく近傍に配置されるのが好都合であり、それにより、短いレバーアームないし十分に高いレバー伝達比を実現することができ、このとき両方のジョイントの旋回軸は平行に延びる。ただし、交差ばねジョイントとしての荷重ジョイントの構成は、密接して隣接する支持ジョイントの構成にとって、両方のジョイントが従来の方式で、すなわちモノリシックなブロックからの材料除去により製作される限りにおいては、障害となる。すなわち、そこで各ジョイントが多くの場合に穴によって旋回軸方向に構成され、その直径が、他方の隣接するジョイントに対する最低間隔を規定する。そのようにして製作された交差ばねジョイントを、他のジョイントに対してわずかな軸間距離で構成することができるのは、両方のジョイントが軸方向で互いにオフセットされつつ前後して位置する場合に限られる。しかしその場合、一方のジョイントの穴が他方のジョイントの設計スペースを貫通し、このことは高いコストのかかるアンダーカットによってしか防ぐことができない。それに対して、本発明による秤量ブロックのジェネレーティブな造形は、支持ジョイントと荷重ジョイントのわずかな相互間隔での構成を可能にし、それに対して同時に、荷重ジョイントについての交差ばねジョイントの利点を適用可能である。このことは、荷重ジョイントと同じレバー端部領域に設けられるレバーの支持ジョイントが、前述した種類の交差ばねジョイントとして構成される場合にも、特別に好ましく作用する。このとき両方のジョイントは、それぞれの(互いに平行に延びる)旋回軸に沿って見たときに前後して位置し、それぞれの旋回軸に対して横向きの広がりは、レバーアームの長さを定義する各旋回軸の間隔よりも大きい。従来式の製造方法によっては、アンダーカットに基づき、および加工のためにジョイントの周囲で必要な材料のない領域に基づき、このような構造は少なくとも経済的に可能でなく、おそらく技術的にも可能でない。それに対して3D印刷では、ジョイントが上述した方式で構成して位置決めされていてよく、複雑な加工プロセスをそのために必要とすることがない。
【0018】
2つのレバーの間で、またはレバーと荷重受容部の間で力伝達をするための役目を果たすコンポーネントは、本発明の好ましい実施形態では、レバー力をさらに伝える材料ウェブによって相互に間隔をおく、前述した種類の少なくとも1つの、好ましくは2つの交差ばねジョイントを含む。旋回軸に対して横向きへのそれぞれのジョイントの広がりに応じて、ジョイントは、その平行な旋回軸に沿って見たとき、オフセットされて、前後して、または横に並んで/上下して配置されていてよい。連結部材においても、3D印刷は、1つまたは2つの交差ばねジョイント(およびこれに付属するアンダーカット)の相互間隔をおく配置を可能にし、少なくとも1つの交差ばねジョイントを有する連結部材の構成は、さらにこれとは関わりなく、旋回軸を薄肉個所を介してではなく定義して、この特別な設計形態を他ならぬ荷重ジョイントに設けるという利点ももたらす。(本発明による連結部材のこの構成は、必ずしも本発明による秤量ブロックに結びつけられるものではなく、これとは関わりなく、上述した好ましくは別個に権利保護能力のある利点を提供する)。
【0019】
本発明の別の好ましい実施形態は、リンケージに配置された支持ジョイントないしリンケージジョイントの旋回軸が平行四辺形の頂点に位置することを意図する。そしてリンケージは、上側および下側のリンケージの形態でZ方向に上下して位置するとともに、これに対して直交するX方向で荷重受容部と秤量受の間に延びる(これ以外の空間的な配置も同じく考えられる)。このような配置は、秤量受が各リンケージの間に延び、そのようにして新たな支持個所を形成できるようにすることを好ましい仕方で可能にする。
【0020】
本発明の別の好ましい実施形態は、レバーと結合された少なくとも1つの荷重ジョイントまたは支持ジョイントが、その旋回軸の方向で見て一方の側で、好ましくは両方の側で、当該レバーの外套区域によって包囲されることを意図する。そしてレバーはジョイントの側方にも(たとえば横方向Yで見て)延びて、そこで所望の剛性のために十分なZ寸法を有することができる。ジョイントと結合されたレバーに対して側方へのジョイントの配置は、設計上の利点を提供する。ジョイントによって互いに結合されるべき秤量ブロックの両方の部材は、旋回軸の方向で少なくとも部分的に、または全面的に前後して配置することができ、その結果、当該領域では両方の部材の全体設計高さが、これらの間に位置するジョイントを含めて、個々の部材とジョイントの設計高さの合計よりも少なくて済む。たとえばY軸を中心として旋回されるべきレバーは、Y方向で当該レバーの実質的に前ないし後ろにある支持ジョイントを介して秤量受に支持することができる。従来技術では、レバーは常にX方向またはZ方向で間隔をおいて旋回軸のそばを通過するが、それは、本発明による構成のためには、切削加工での製造ではほぼ製作可能でない(好ましくは)細いアンダーカットが必要になるからである。
【0021】
本発明の別の好ましい実施形態は、同一のレバーに作用する少なくとも2つのジョイントが、それぞれの相互間隔をおく旋回軸の方向で、それぞれの旋回軸に対して垂直方向に形成されるジョイント横断面が投影で見て旋回軸方向で重なり合うように前後して位置することを意図する。支持ジョイントが隣接する荷重ジョイントについて上ですでに説明した、交差ばねジョイントを使用するときの利点を、本発明による3D印刷では、旋回軸に対して横向きにある程度の横への広がりを有するその他のジョイント形態にも応用することができる。それにより、1つの方向(X,Y,Z)で間隔をおく、それぞれの旋回軸が一直線上に並ぶのでない、同一のレバーと結合された2つのジョイントの旋回軸間隔を、当該方向での各ジョイントのうちの少なくとも1つのジョイントの広がりよりも小さく選択することが可能であり、その結果、レバーのジョイント式の結合が狭いスペースで可能となる。ここで典型的に該当するのは、さまざまに異なる種類のジョイントの組み合わせであり、すなわち荷重ジョイントと支持ジョイント、リンケージジョイントと荷重ジョイントなどの組み合わせである。その場合に通常当てはまるのは、それぞれの旋回軸が相互に間隔をおいており、すなわち一直線上に並ぶのではないということである。
【0022】
1つのジョイントの旋回軸が本発明に基づき、当該ジョイントにより案内される部材を通過して動くこともできるという状況は、少なくとも1つのレバーが当該レバーと結合されたジョイントを収容するためのポケットを有する、さらに別の好ましい実施形態を可能にする。このようにポケットはジョイントを少なくとも1つの側で包囲し、これを不慮の付勢や汚れから防護する。レバーにより構成されるポケットおよびその中に位置する、レバーを旋回可能に結合するジョイントのモノリシックな施工形態での配置は、従来式の切削加工法ではほぼ製作可能でない。
【0023】
レバーに対して相対的なジョイントの省スペースな配置に加えて(旋回軸はやはりレバーを通過することができる)、ポケットの各要素は複数の機能を担うことができる。このときポケットは少なくとも1つの壁区域を含み、この壁区域から一方の側で第1の支持区域がジョイントとの結合のために突出し、それは、たとえばそこで交差ばねジョイントの2つの交差するウェブが作用することによる。壁区域の他方の側では、他のジョイントの部材を結合するための別の支持区域が突出することができる。たとえば、横方向Yで見てレバーのポケット壁の一方の側に、レバーを秤量受で支持する支持ジョイントが構成されるというケースが考えられる。そしてポケット壁は、ほぼX-Z平面に沿って延びる。支持ジョイントはレバー側で(たとえば下方から)、ポケット壁の上側領域から横方向Yに側方へ突出する支持区域に作用する。このときジョイントは実質的にポケット壁の横隣に、ないしはこれに沿って延び、その旋回軸は横方向Yに延びる。
【0024】
ポケット壁の他方の側には、第1の支持区域に直径上で向かい合うように、壁の下側領域から、連結部材の下側の作用点を形成するべき別の支持区域が横方向Yに(他方の側の支持区域と反対向きに)突出する。そのために連結部材は他の支持区域と結合されるべき荷重ジョイントを有し、この荷重ジョイントは、当該支持区域を起点としてこの側のポケット壁に沿って上方に延び、その旋回軸はやはり横方向Yに延びる。そしてポケット壁の両方の側に、ポケット壁のそれぞれ異なる側へと突出する支持区域にそれぞれ作用するジョイントがそれぞれ配置される。こうして両方の支持区域はポケット壁とともに、互いに直交して延びる区域を有するほぼ「Z」形の横断面を形成する。
【0025】
両方のジョイントの旋回軸が、このようにしてごく近傍に並んで位置することができ、それにより非常に高いレバー伝達比を生成し、それと同時にレバーがたとえばポケット壁の高さによって、Y軸を中心とする曲げモーメントに対する高い曲げ剛性を構成することができる。両方のジョイントはY方向で見てポケット壁の前側または後側に、好ましくはポケット壁に対してわずかなY間隔をおいて位置し、各々のジョイントの旋回軸に対して横向きのそれぞれの側方の広がりが、従来技術で知られる切削加工での方法によるものとは異なり、それぞれ他のジョイントの構成を制約することがない。
【0026】
本発明の別の好ましい実施形態では、第1のレバーと実質的に同じ目的を有する少なくとも1つの別のレバーが設けられ、それにより両方のレバーが前後して配列されることで、荷重受容部を介して導入される重量の力について、ただ1つのレバーをもって可能であるよりもさらに高い伝達比を実現する。2つよりも多くのレバーをこの目的のために前後して配列することもでき、この場合、中央で支持されるレバーは変わらない値で力をさらに伝えることもできる。
【0027】
別のレバーは第1の端部領域と第2の端部領域の間に延び、延在方向は長手方向Xに相当することができ、ないしは第1のレバーの延在方向に相当することができる。ただし、本発明による3D印刷でのモノブロックの構成は、互いに連結された複数のレバーの延在方向をそれぞれ別様に選択することを可能にする。たとえば第1のレバーは長手方向Xに延びることができ、それに対して、これと連結された別のレバーはこれに対して斜めに、または直交して延びることができ、たとえば横方向Yまたは高さ方向Zに延びることができる。そして、レバーを相互に結合する連結部材は、旋回軸が平行に延びるのでない2つのジョイントを有する。したがって、前後して配列された複数のレバーは、これらと結合されたジョイントの旋回軸と同様に空間内で任意に延びることができ、その結果、2つのジョイントの、特に2つの支持ジョイントの旋回軸はもはや互いに平行に延びるのではなく、(仮想的に交点まで変位させたときに)角度(β≠0)をなす(それに対して、従来知られているモノリシックな秤量ブロックの製造方法では加工上の都合により、すべてのレバーの旋回軸を互いに平行に構成するのが普通であったが、それは、互いに横向きに延びる旋回軸は、特に複数のレバーが連結されている場合、技術的ないし経済的に製作可能ではないからである)。このことは、さまざまに異なる空間方向に沿った高い伝達比の実現を可能にし、その結果、要求事項に応じて秤量ブロックの広がりをX方向、Y方向またはZ方向で最善に縮小させることができる。
【0028】
別のレバーはその第1の端部領域で、荷重ジョイントを有する連結部材を介して第1のレバーの第2の端部領域と結合され、さらには支持ジョイントを介して秤量受と結合される。別のレバーはその第2の端部領域で、さらに別のレバーと連結されていてよく、または、力補償システムのコンポーネントを担持することができ、その場合には「最後の」レバーとみなされる。
【0029】
第2のレバーが、これと連結された第1のレバーと実質的に同じ方向に延びている場合、3D印刷は、レバーを省スペースに配置ないし構成するという好ましい選択肢を提供する。たとえば両方のレバーのうちの一方は、それぞれの他方のレバーの一区域が突入する、または貫通する切欠きを有することができる。このとき各レバーは部分的または全面的に互いを貫通することができ、そのようにして省スペースな設計を可能にすることができる。たとえば第1のレバーは、長手方向Xに延びるとともに高さ方向Zで上方および/または下方に向かって開いた切欠きを有することができ、この切欠きがレバーを横方向Yに両方の側で包囲する。第2のレバーの一区域が、または秤量ブロックの他のコンポーネントが、この切欠きを通過するように延びることができる。このようにして、両方のレバーはY方向を中心とする曲げに対して高い面慣性モーメントおよびこれに伴って高い剛性を構成することができ、そのために高さ方向でのある程度の広がりが必要である。それと同時に各レバーはこのとき横方向Yで部分的に前後して、または互いに噛み合うように位置することができる。このようなレバーを有する従来式のモノブロックは困難を伴ってのみ製造可能であるか、製造可能ですらない。横方向Yでの各レバーの分離が、高さ方向Hに供給される工具によってしか可能でないからである。しかし、レバーが高さ方向Zで平行リンケージの間にあるときや、一方のレバーの個々の区域が他方のレバーへの工具供給を妨げるとき、このような加工は通常、リンケージないしレバーの追加的に必要な切欠きを通してしか可能でなく、そのためにその剛性が弱くなる。
【0030】
本発明の特別な実施形態は、モノブロックが、モノブロックの容積区域を共同で通過するように互いを貫通する少なくとも2つのレバーを含むことを意図する。このときモノリシックな秤量ブロックとの関連における3D印刷の特別な利点は、モノブロックのレバーが、特に電磁式の力補償との関連でバーチャルな運動しか行わないことにあり、それは、力補償システムによるどのようなレバー偏向も即座に再び修正され、すなわちレバーが事実上互いに相対的に運動しないが、そのための運動自由度は有するからである。レバーが実際の旋回運動を行わず、それに応じてそのためのスペースを必要としないので、これらのレバーは互いに噛み合うように構成されていてよく、それにより、第1のレバーが第2のレバーにより大部分、または完全に密接して隣接して、ないしは取り囲まれるようになっている。たとえば、レバーの延在方向に延びる長尺状の内部空間の周りでロッド構造として構成される第1のレバーが考えられる。第2のレバーは部分的または全面的に、第1のレバーの内部空間の中に配置される。
【0031】
このとき第1のレバーの個々の区域またはロッドは、このレバーを安定的に構成するために、内部空間を貫通することもできる。第2のレバーがその各区域ないしロッドをもって、第1のレバーと衝突しないことが確保されるだけでよい。レバーが実際の旋回運動を行わないので、両方のレバーの個々の区域を非常に互いに密接して位置するように、たとえば1000μmまたは500μmを下回る間隔で構成することができる。このとき各々のレバーの個々の区域ないしロッドはすべての空間方向で、またはこれに対して斜めに、あるいは湾曲した形状で延びることができ、それにより必要なレバー剛性を実現する。それと同時に、閉じた材料チェーンを形成する、一方のレバーの互いに懸架式の区域が、他方のレバーの対応する材料チェーンを通ることによって、それぞれのレバーが分離不能に貫通し合うことができる。
【0032】
ロッド構造としての構成に代えて、秤量ブロックのコンポーネントは、1つまたは複数の方向に沿ってコンポーネントを貫通するたとえば菱形などの規則的な四角形で形成される、できる限り薄い壁を有するハーフティンバー構造を示すこともできる。材料のない領域は、規則的な幾何学体の形態を有することができる(直方体、角錐、球、角柱など)。
【0033】
秤量ブロックの少なくとも2つのコンポーネントは方向X,Y,Zに対して、特に長手方向Xに対して横向きの断面で、複数の分離された部分面から構成される横断面を有する横断面積をそれぞれ形成するのが好都合であり、両方の横断面の包絡線は少なくとも部分的に重なり合い、一方の横断面のそれぞれ少なくとも1つの部分面は、他方の横断面の包絡線の内部に位置する。コンポーネントとしてここで特に考慮の対象となるのは、秤量受、荷重受容部、レバー、連結部材、リンケージ、またはジョイントである。「包絡線」によってここで意味されるのは、横断面の側方の区切りであって、それぞれ横断面のもっとも遠い外側に位置する点を互いに結んだものであり、横断面を中心としてその周りに位置する一種のゴムバンドのようなものである。そこから明らかとなるように、1つのコンポーネントの材料区域が、他のコンポーネントの材料区域を通過して延びることができ、それと同時に、これにより側方で周回される。各コンポーネントの省スペースな噛み合う配置が、このようにして特別に良好に可能である。
【0034】
相互の貫通は、1つのレバーが完全に他のレバーの内部に配置されるように行われる必要はない。部分的な貫通も可能であり、それは、1つのレバーによって囲まれる容積が、他のレバーによって囲まれる容積の中へ部分的に突入するような形式においてである。このことは、秤量ブロックを構成するために必要な容積を縮小し、特にその重量を低減する。
【0035】
本発明の別の好ましい実施形態では、秤量受が長手方向Xで、第1のブロック端部を起点として各平行リンケージの間に延び、および/または各荷重受容部を通過して延びることが意図される。特に荷重受容部を通過しての延在は、荷重受容部の向こう側でも力補償システムのコンポーネントを、たとえば永久磁石や位置検出器の部材を、支持することができるという利点を提供する。荷重受容部の領域まで引き出された秤量受は、レバーのための支持個所を、荷重受容部で囲まれたスペースの内部に構成することも可能にする。それにより、レバーを荷重受容部から第1のブロック端部まで、可能な限り長く施工することができ、その際に、これら両方のコンポーネントの間で利用できるスペースだけに制限されることがない。たとえば、部分的または全面的に荷重受容部の切欠きの内部に、荷重受容部から力が導入されるべき第1のレバーのための支持ジョイントを構成することが考えられる。秤量受もこれに匹敵する切欠きを有することができ、その結果、端部領域がレバーから秤量受の中まで延びることができ、それにより、そこでも可能な限り大きいレバー長さを実現することができる。「切欠き」とは、このケースでは、方向X,YまたはZに延びる材料のない領域であって、この方向に沿った投影で見て、それぞれのコンポーネントの材料によって全方位で取り囲まれるものとして理解されるべきである。(本発明に基づく荷重受容部を通過するこのような秤量受の案内は、必ずしも本発明による秤量ブロックに結びつけられるわけではなく、これに関わりないところでも、上に挙げた好ましくは別個に権利保護能力のある利点を提供する。)
【0036】
さらに、荷重受容部を上側と下側の平行リンケージの間の領域に構成することが考えられ、その結果、これらが荷重受容部を高さ方向Zで覆う。そしてリンケージを最大の長さで構成することができ、荷重受容部は実質的に、リンケージジョイントの旋回軸により横方向Yで見て形成される平行四辺形の頂点の内部に位置する。(このような荷重受容部の構成は、必ずしも本発明による秤量ブロックに結びつけられるわけではなく、これに関わりないところでも、上に挙げた好ましくは別個に権利保護能力のある利点を提供する。)
【0037】
本発明による秤量ブロックのジェネレーティブな造形は、レバーをたとえば横方向Yに両側で別のレバーにより取り囲み、この別のレバーがさらに同一の方向で秤量受Fにより両側で取り囲まれることも可能にする。すなわちレバーは秤量受の各区域の間に側方で取り囲まれて位置し、秤量ブロックの低減された設計高さのもとで特別に良好に防護される。
【0038】
上に説明した交差ばねジョイントは、本発明に基づくジェネレーティブな造形により、好ましい発展例で製作することもできる。このとき少なくとも3つの材料ウェブが共同で第1の区域を第2の区域とジョイント式に結合し、これらの材料ウェブのうち少なくとも1つは旋回軸に沿った投影で見て他の少なくとも2つの材料ウェブとともに角度(α)を形成する。このとき、それに応じて少なくとも3つの材料ウェブが構成され、好ましくは中央のウェブは、同じ方向を向く他の両方のウェブに対して角度(α)だけ傾いている。この角度は条件45°<α<135°の条件に従うのが好ましく、多くとも90°であるのが好ましい。このようなジョイントの構成のためには、旋回軸方向に前後して位置する複数の材料のない領域ないしアンダーカットが必要であるが、これらは切削加工法によってはほぼ製作可能でなく、それは特に、同じ種類の他のジョイントがこれと狭い間隔をおいて設けられるべき場合である。しかし、3つまたはそれ以上のウェブで構成される交差ばねジョイントの特別な安定性を、ジョイントのジェネレーティブな造形によって実現することができる。(本発明に基づく交差ばねジョイントの構成は、必ずしも本発明による秤量ブロックに結びつけられるものではなく、これに関わりないところでも、上に挙げた好ましくは別個に権利保護能力のある利点を提供する。)
【0039】
レバーまたはリンケージまたはジョイントまたは秤量受または荷重受容部または連結部材の少なくとも1つの区域は、ロッド構造として構成されるのが好ましい。これらのコンポーネントの全体がロッド構造として構成されるのが好ましく、秤量ブロック全体がこのような構造を有するのがきわめて好ましい。それによって秤量ブロックの重量を最小限に抑えることができ、それに対して同時に、ロッド構造が各コンポーネントの所要の剛性を保証する。2つのレバーについて上に説明した相互の貫通は、機能的に同種類または異種類の秤量ブロックの他の任意のコンポーネントについて具体化することもできる。「ロッド構造」という概念は、ここでは、個々の複数の材料区域が組み合わされてなる構造の代表として使用するものとし、個々の材料区域には主として長手方向力が発生するが、曲げモーメントは発生せず、もしくはわずかしか発生しない。
【0040】
本発明による秤量ブロックの3D印刷は、個々のコンポーネントの構成を少ない材料で、高い剛性と相互の省ペースな配置のもとで可能にする。したがって、本発明による1つの実施形態は、主延在方向に対して垂直にレバーによって占められるすべての横断面の少なくとも50%、好ましくは80%超の横断面積が、それぞれの横断面の包絡線により周回される面の横断面よりも小さいことを特徴とする。断面積を生じさせる個々の部分面の合算されるべき面積と、包絡線により包囲される面積との間の関係が明らかにするとおり、本発明による3D印刷はモノリシックな秤量ブロックの他ならぬ複雑な構造について顕著な材料節減を可能にし、それと同時に、材料節減によって空いた領域での個々のコンポーネントの巧みな配置を可能にする。
【0041】
秤量ブロックのジェネレーティブな作成は、全体としてのブロックだけに限定されるものではない。すなわち、驚くべきことに秤量ブロックの各コンポーネントについても見出された3D印刷の利点は、いずれのコンポーネントについてもそれ自体で該当する。したがって本発明の対象物は、このようにして製造された秤量ブロックのコンポーネントでもあり、ならびに、このような3D印刷としてのコンポーネントの製造でもある。
【0042】
秤量ブロックのコンポーネントないし全体としての秤量ブロックを製造する本発明の方法は、薄い材料層を上下に繰返し塗布することで(3D印刷)個々のコンポーネントを構成することに依拠する。このときブロックは第1の端部を起点として、たとえば第1のブロック端部を起点として、たとえば長手方向Xに薄い層で次第に造形されていくのが好ましい。このとき各層の内部の材料のない領域が、個々のコンポーネントを互いに分離する中間スペースないしアンダーカットを形成する。コンポーネントの製造が他のコンポーネントの製造と「同時に」行われるのが好ましく、ここで「同時に」とは、まず特定の層のすべての材料領域が特定の層高さで形成されてから、次いで、その次に高い層が付設されることであると理解される。このように、1つのコンポーネントの材料造形は少なくとも1つの別のコンポーネントの材料造形によって、これら両方のコンポーネントが同じ層高さで材料造形を必要とするときに中断される。ただし理論上では、まず1つのコンポーネントを部分的または全面的に構成し、引き続いて別のコンポーネントを作成することも可能である。
【0043】
秤量ブロックの材料としては、一方では高精度の3D印刷に関わる要求事項を満たし、他方ではモノリシックな秤量ブロックでの通常の材料挙動に関わる要求事項を満たす、どのような材料でも使用することができる。このとき秤量ブロックのモノリシックな構成は、秤量ブロックの異なる領域またはコンポーネントについて異なる材料が使用され、これらがそれにも関わらずモノリシックに相互に結合され得ることを排除するものではない。たとえば剛性に関して特別に高い要求が課せられる秤量受については、曲げ剛性が場合により副次的な意義しかない荷重受容部とは別の材料を選択することができる。さらに、たとえば最後のレバーに配置されるコイルまたは接続部を位置検出器またはその他のセンサに印刷するために、導電性材料を使用することも考えられる。
【0044】
1つの好ましい実施形態では、秤量ブロックは部分的または全面的に金属で、好ましくはアルミニウムもしくはアルミニウム合金で構成される。
【0045】
本発明による秤量ブロックは3D印刷として製造されるが、場合により必要な切削加工工具による後加工が排除されるわけではない。
【0046】
次に、本発明による秤量ブロックの実施形態について、図面の例を参照しながら詳しく説明する。図面は次のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明による秤量ブロックの秤量受を示す。
図2図1の実施形態を平行リンケージとともに示す。
図3図2の平行リンケージをこれに作用する荷重受容部とともに示す。
図4図3の荷重付加部の一部をこれに作用する第1のレバーとともに示す。
図5図4の第1のレバーをその下に位置する第2のレバーとともに示す。
図6】連結部材によって結合された図5の両方のレバーを示す。
図7】秤量受の一部をその中に突入するレバーとともに示す。
図8】秤量受を荷重受容部の各部分およびこれらの間に位置するレバーとともに示す。
図9】本発明による秤量ブロックの側面図を示す。
図10】互いに貫通し合う2つのレバーの模式的な断面図を示す。
図11】リンケージの一例としてのロッド構造を示す。
図12】秤量ブロックコンポーネントの各区域についての2つの設計例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図9は、本発明による完全な秤量ブロックBを模式的な側面図で示している。秤量ブロックBは、長手方向X、これに対して直交する、紙面に入るように向く横方向Y、およびこれら両方の方向に対してさらに直交する高さ方向Zに延びている。第1の(図9では左側の)ブロック端部B1が、Z高さ全体にわたって秤量受Fとして構成されている。秤量受Fは、第1のブロック端部B1を起点として長手方向Xで右方に向かって、第2のブロック端部B2に向かう方向に低減された高さで延びている。第1のブロック端部B1の上側および下側の区域には、上側および下側の平行リンケージLo,Luがそれぞれ横方向Yに前後して位置する2つの支持ジョイントGSを介して秤量受Fに作用し、リンケージジョイントによって構成される旋回軸は横方向Yに延びている(詳しくは図示していない)。
【0049】
平行リンケージLo,Luは長手方向Xで、矢印によって示唆する重量の力を受容するために設けられた荷重受容部Aまで延びている。平行リンケージLo,Luは、それぞれ横方向Yに前後して位置するリンケージジョイントGRを介して荷重受容部に作用する。リンケージジョイントと支持ジョイントにより形成される旋回軸は平行四辺形の頂点に位置しており、その結果、荷重受容部Aは平行リンケージLo,Luによって秤量受に対して相対的に高さ方向Zで平行に案内される。
【0050】
高さ方向Zで上側と下側の平行リンケージの間には、秤量受Fの突き出した区域が延びるだけでなく、第1のリンケージMおよびこれと連結された第2のリンケージHも延びている。第2のリンケージHは長手方向Xで荷重受容部Aを通過するように突き出し、その自由端で、光学センサの第2の部分Q2に対して相対的なレバーの偏向を検出する、光学センサQの第1の部分Q1と協同作用する。秤量受Fも長手方向Xで、荷重受容部Aにある切欠きに突入して、光学センサQの第2の部分Q2を担持する。
【0051】
図1は、図9に示す秤量ブロックの完成した秤量受Fを模式的な側面図で示している。秤量受Fは、ロッド構造状の構造部によって部分的に構成される。第1のブロック端部B1にある秤量受Fには、リンケージHおよびMの各区域を収容するために設けられる切欠きCが構成されている。秤量受Fはほぼ直方体の外側輪郭を有しており、内部空間はほぼ空いたまま保たれる。
【0052】
図2は、秤量受をこれに配置された平行リンケージLo,Luとともに示している。これらのリンケージは、横方向Yに延びる個々の角錐が組み合わされてなるハーフティンバー状の構造を有している。上側のリンケージLoの上面と、下側のリンケージLuの下面はほぼ閉じて構成されており、両方のリンケージは長手方向Xで第1のブロック端部B1と反対を向く側に、荷重受容部Aの各区域を収容するための切欠きを有している。支持ジョイントGSを介して、リンケージは秤量受Fとジョイント式に結合されている。支持ジョイントは、ここでは交差ばねジョイントとして構成されている。
【0053】
図3は、荷重受容部Aを模式的な図面で示している。荷重受容部はリンケージジョイントGRを介して平行リンケージLo,Luと結合されており、支持ジョイントはリンケージジョイントと同じく旋回軸AGSないしAGRを構成し、これらは図3の実施形態ではすべて互いに平行に横方向Yに延びており、完全には図示されていない。荷重受容部Aも、重量削減のためのハーフティンバー状の構造を有する区域を示している。荷重受容部Aの中央の区域AMは、長手方向Xで、上側のリンケージLoの切欠きに突入している。
【0054】
図4は、部分的に破断された荷重受容部Aを斜め下から示している。荷重受容部Aの区域AMの領域で、これに連結部材Kが作用する。連結部材は、それぞれ交差ばねジョイントとして構成されてそれぞれ横方向Yに延びる旋回軸AGLを有する、高さ方向Zに上下して配置された2つの荷重ジョイントGLを有している。上側の荷重ジョイントは荷重受容部Aの区域AMと結合されており、荷重受容部Aに導入される荷重を受容してさらに伝えるための役目を果たす。連結部材Kの両方の荷重ジョイントの間に、両方のジョイントを相互に結合するウェブが配置されている。下側の荷重ジョイントは第1のレバーHのポケットの中に収まっており、レバーHの第1の端部領域H1でこれに作用する。レバーは長手方向Xで第2の端部領域H2まで延びて、そこで第2のレバーMと連結される。
【0055】
図5は、第1のレバーHの配置を、これを貫通して延びる第2のレバーMとともに示している。第2のレバーMも、X方向で第1の端部領域M1から第2の端部領域M2まで延びている(図6参照)。レバーHはその第1の端部領域H1で、図示しない秤量受への支持のために、共通の旋回軸AGSを形成する、横方向Yに前後して位置する2つの支持ジョイントGSを備えている。レバーHは中央のX-Z平面に対してほぼ対称に構成されており、後側の支持ジョイントGSは、図5ではレバー構造の各区域で隠されている。両方の支持ジョイントGSは交差ばねジョイントとして構成されている(図1から9に示すすべての交差ばねジョイントは、旋回軸の方向に前後して位置する3つのウェブをそれぞれ含み、これらのウェブが、相互にジョイント式に案内されるべき両方の区域を相互に結合する。このとき中央のウェブは旋回軸に対して90°だけ、他の両方のウェブに対して傾いている)。
【0056】
両方のレバーを省スペースに配置するために、第1のレバーHは長手方向Xに延びる自由空間により貫通され、この自由空間が第2のレバーMによって占められる。両方のレバーは少なくとも部分的にハーフティンバー構造として構成される。
【0057】
図6は、第1のレバーHがその第2の端部領域H2で連結部材Kを介して、第2のレバーMの第1の端部領域M 1 とどのように結合されるかを、別の視線から示している。連結部材Kは、やはり高さ方向Zで相上下して配置された2つの荷重ジョイントを含んでいる(そのうち下側のものだけが図示されている)。両方の荷重ジョイント L は、図4の連結部材の実施形態に準じて、横方向Yに延びる旋回軸AGLをそれぞれ構成する。両方の荷重ジョイントは、これらの間に介在するウェブを介して互いに結合されている。図4の連結部材Kとは異なり、ここではウェブは重量を削減するために切欠きで貫通されている。
【0058】
下側の荷重ジョイントGLは、リンケージMのポケットTの中に配置されている。ポケットTは横方向Yに、下側の荷重ジョイントGLを間に収容する互いに平行な2つの壁区域Wを有している。両方の壁区域Wはその下側端部のところで、共通の支持区域Vによって互いに結合されている。下側の荷重ジョイントGLがこの支持区域Vに作用し、それにより、第1のレバーHから連結部材Kにより伝えられるレバー力をレバーMへと導入する。下側の荷重ジョイントとそれぞれ反対を向くほうの両方の壁区域の外側には、レバーMを図示しない秤量受に支持する支持ジョイントGSがそれぞれ設けられている(図6では両方のジョイントのうち前側のものだけが示されている)。この支持ジョイントを介してレバーMを支持するために、下側の荷重ジョイントGLと反対を向くほうの各々の壁区域Wの外面には、上側の支持区域Vが横方向Yで側方に外方に向かって突出しており、この支持区域はその下面で、交差ばねジョイントとして構成された支持ジョイントGSのウェブにより下方係合される。このようにポケットTの各々の壁区域Wは、横方向Yで向かい合う側に、高さ方向Zで互いにオフセットされて配置された2つの支持区域Vを有しており、その結果、各々の壁区域を通る、長手方向Xに対して垂直の横断面は、(互いに直交する区域を有する)ほぼZ字型の輪郭をもたらすことになる。
【0059】
レバーMの第1の端部領域M1にある両方の支持ジョイントGSは、レバーが秤量受に対して相対的に旋回可能である旋回軸を規定する。横方向Yに前後して位置する両方の支持ジョイントGSの共通の旋回軸AGSと、下側の荷重ジョイントGLの旋回軸AGLとの間の間隔が、レバーMの短いレバーアームを規定する。高い伝達比を実現するために、この間隔はできる限り短く選択されるのがよい。上述した軸間距離を規定するジョイントGL,GSは、それぞれの旋回軸に対して横向きにある程度の広がりを有しているが(この広がりは特に交差ばねジョイントのウェブによって形成される)、横方向Yで互いにオフセットされて選択されたそれぞれのジョイントの配置に基づき、これらの旋回軸を互いにごく近傍に形成することができる。
【0060】
レバーHの第2の端部領域H2で作用する、連結部材Kの上側の荷重ジョイントGLは、そのために切欠きを通して、上側の荷重ジョイントの旋回軸AGLが上側のレバーHを通過するようになる程度までレバーHの中に突入する。それによっても、特に高さ方向で低減された設計高さがもたらされる。
【0061】
前述したとおり図5は、レバーHの第1の端部領域H1に設けられる支持ジョイントGSのうちの1つを示している。図6は、このジョイントに横方向Yで向かい合う第2の支持ジョイントGSを示している(図6の右端)。そこにも、壁区域をもって少なくとも支持ジョイントの一方の側に延びるポケットTが設けられている。支持区域Vが横方向Yでこの壁区域から外方に向かって突出し、それにより、上方に向かって突出する支持ジョイントGSのウェブを収容できるようになっている。
【0062】
図7は、図6の配置を秤量受Fに埋設された状態で示している。ここでは、両方のレバーM,Hが連結部材Kによる連結の領域で、秤量受Fの切欠きの中へどのように突入して、最大のレバー長さを構成できるようにしているかを見ることができる。さらに、下側のレバーMの前側の支持ジョイントGSがどのように支持されるかを見ることができる。秤量受はX方向で後側の端部に、力補償システムのコンポーネントを配置するために、特に永久磁石Dを配置するために、取付区域E1を有している。さらにX方向で、位置検出器Qの部材Q2を収容するために設けられた別の区域E2が後続している。
【0063】
図8は、図9の構造を傾いた視線で、ただし上側および下側のリンケージLo,Luなしで示してしている。下側のレバーMによりこれにねじ止めされた延長部を介して担持されるコイルPを見ることができ、このコイルは、荷重受容部Aにより受容されてレバーで伝達される重量の力に依存して、秤量受Fにより担持される永久磁石Dに対して相対的に動く。コイルPと永久磁石Dは、電磁式の力補償システムの部材を構成し、これによってレバーMの旋回運動が補償されて、そのために必要なコイル電流から、測定されるべき重量の力を推定することができる。
【0064】
コイルPと永久磁石Dは長手方向Xで、可能な限り短い長手方向Xの設計スペースで最大のレバー長さないし伝達比を構成できるようにするために、荷重受容部Aに設けられた切欠きの内部に配置されている。
【0065】
本発明による秤量ブロックの個々のコンポーネントが互いに貫通し合うのが好ましく、それによって設計スペースを縮小する。この貫通はもっとも単純なケースでは、第1のコンポーネントが切欠きを有し、その中に他のコンポーネントが突入することによって行うことができる。しかし、各コンポーネントが相互にも互いに貫き合うことができるのが特別に好ましく、これについて図10を参照して説明する。そこでは長手方向Xに延びる2つのコンポーネント1,2を、長手方向Xに対して横向きに形成された横断面で見ることができる。コンポーネント1はこの断面では個々の部分面T1を有しており、それに対してコンポーネント2の横断面はそれぞれの部分面T2が組み合わされて、なっている。コンポーネント1の横断面は包絡線V1で周回されており、包絡線V2はコンポーネント2の横断面を周回する。両方のコンポーネントの相互の貫通は、それぞれ一方のコンポーネントの部分面が、他方のコンポーネントの包絡線の内部にあることによって特徴づけられる。それにより、安定的で特別に省スペースな各コンポーネントの配置が可能となる。当然ながら、2つを超える異なるコンポーネントがこのように互いに貫通し合うこともできる。
【0066】
さらに図10が明示するように、1つのコンポーネントの個々の部分面から組み合わされてなる横断面積は、当該横断面のそれぞれの包絡線によって周回される面積よりも明らかに小さい。たとえば、ロッド構造として構成されるレバーがコンポーネント1の横断面を有することができ、このとき個々の部分面T1は、寸法に関して変化のある各ロッドを通る断面に相当する。コンポーネント2は、このレバーと連結される別のロッド構造レバーであってよく、これら両方のレバーは、図10に例示として示す仕方で互いに貫通し合うことができる。図10は、噛み合うように配置されるコンポーネントの貫通原理を図解するためのものにすぎず、これらの横断面や部分面は要求事項に応じて別の帰結ともなり得る。
【0067】
図11は、2つの支持ジョイントGSを介して図示しない秤量受に、および2つのリンケージジョイントGRを介して同じく図示しない荷重受容部に、それぞれジョイント式に結合される、ロッド構造として構成されたリンケージLoの一例を示している。ロッド構造設計は、少ない重量のもとで、高い剛性を空間のすべての方向で提供する。それと同時に、各ロッドの間の材料のない空間は、リンケージを貫通させることができる別のコンポーネントのためのスペースを提供する。その追加または代替として、当然ながら、秤量ブロックの1つまたは複数の別のコンポーネントがこの範例に従ってロッド構造状に構成されていてよい。
【0068】
図12(a)は、個々の角柱から造形され、ないしは角柱状の切欠きにより貫通されるコンポーネントのハーフティンバー状の構造の一例を示している。別案の設計形態を、直方体のブロックが球形の切欠きで貫通されている図12(b)に見ることができる。当然ながら、このような設計形態およびその他の設計形態を(各コンポーネントの内部でも)、必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0069】
α 交差ばねジョイントにおけるウェブ角度
β 交点まで変位させた2つの旋回軸の間の角度
1,2 秤量ブロックのコンポーネント(全般)
A 荷重受容部
GL 荷重ジョイントの旋回軸
GR リンケージジョイントの旋回軸
GS 支持ジョイントの旋回軸
B 秤量ブロック
1,B2 第1/第2のブロック端部
C 切欠き
D 永久磁石
1,E2 秤量受の取付区域
F 秤量受
GL 荷重ジョイント
GR リンケージジョイント
GS 支持ジョイント
H 第1のレバー
1,H2 レバーHの第1/第2の端部領域
K 連結部材
L 荷重受容部
o 上側のリンケージ
u 下側のリンケージ
M 第2のレバー
1,M2 レバーMの第1/第2の端部領域
P コイル
Q 位置検出器
1,Q2 位置検出器の部材
T ポケット
1,T2 部分面
V 支持区域
1,V2 包絡線
X/Y/Z 長手方向/横方向/高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12