(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】トルク検出センサ用コア及びトルク検出センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 3/10 20060101AFI20220520BHJP
【FI】
G01L3/10 301J
(21)【出願番号】P 2020122676
(22)【出願日】2020-07-17
【審査請求日】2021-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 顕秀
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-200138(JP,A)
【文献】特開2019-203744(JP,A)
【文献】特開2019-211334(JP,A)
【文献】特許第6693352(JP,B2)
【文献】特許第6376028(JP,B2)
【文献】特公昭35-12447(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L3
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出体の周囲に設けられた環状のコアから複数箇所で突設されたティースに巻き付けられたコイルに通電して被検出体との間に形成される磁気回路において透磁率の変化をコイルインピーダンスの変化で測定するトルク検出センサ用コアであって、
磁性板材が複数積層された環状の第一コアバックより径方向に第一ティースが複数箇所で突設された第一積層コアと、
磁性板材が複数積層された環状の第二コアバックより径方向に第二ティースが複数箇所で突設された第二積層コアと、を備え、
前記第一積層コアと前記第二積層コアは、
磁性材よりなる環状の中間コアを介して積層され前記第一ティースと前記第二ティースとが周方向に千鳥配置となるように積層されていることを特徴とするトルク検出センサ用コア。
【請求項2】
前記第一ティースと前記第二ティースは、周方向に対して45度の傾きを有する位相差で千鳥配置されている請求項1記載のトルク検出センサ用コア。
【請求項3】
前記第一ティースと前記第二ティースの被検出体に対向する磁束作用面は幅広に形成されている請求項1又は請求項2記載のトルク検出センサ用コア。
【請求項4】
被検出体の周囲に設けられた環状のコアから複数箇所で突設されたティースに巻き付けられたコイルに通電して被検出体との間に形成される磁気回路において透磁率の変化をコイルインピーダンスの変化で測定するトルク検出センサ用コアであって、
磁性板材が複数積層された環状の第一コアバックより径方向に第一ティースが複数箇所で突設された第一積層コアと、
磁性板材が複数積層された環状の第二コアバックより径方向に第二ティースが複数箇所で突設された第二積層コアと、を備え、
磁性材よりなる環状の中間コアの外径が前記第一積層コア及び前記第二積層コアより大きくかつこれらが前記中間コアの両端開口から同心状に嵌め込まれて一体に組み付けられ
前記第一ティースと前記第二ティースとが周方向に千鳥配置となるように積層されていることを特徴とするトルク検出センサ用コア。
【請求項5】
前記第一ティースは第一コアバックの周面に設けられたアリ溝に係合部を軸心方向に嵌め合わせて組み付けられており、前記第二ティースは第二コアバックの周面に設けられたアリ溝に係合部を軸心方向に嵌め合わせて組み付けられている請求項1乃至請求項
4記載のいずれかに記載のトルク検出センサ用コア。
【請求項6】
前記第一ティースは第一コアバックの周面に設けられた凹部に凸部を軸心方向に嵌め合わせて組み付けられており、前記第二ティースは第二コアバックの周面に設けられた凹部に凸部を軸心方向に嵌め合わせて組み付けられている請求項1乃至請求項
4記載のいずれかに記載のトルク検出センサ用コア。
【請求項7】
請求項1乃至請求項
6のいずれかに記載のトルク検出センサ用コアと、前記第一ティース及び前記第二ティースの周囲に巻かれた巻き方向が異なる第一コイル及び第二コイルが直列に接続された複数の通電回路とを備えたことを特徴とするトルク検出センサ。
【請求項8】
前記トルク検出センサ用コアに千鳥配置で突設された第一ティースに巻かれた第一コイル及び第二ティースに巻かれた第二コイル通電して被検出体との間に形成される磁気回路において透磁率の変化をコイルインピーダンスの変化で測定する自己励磁型センサである請求項
7記載のトルク検出センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク検出センサ用コア及び自己励磁型のトルク検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
回転軸等の被検出体に作用するトルクを非接触で検出する方法として、磁歪式のトルク検出装置がある。例えば、歪みを検出する被検出体となる軸(シャフト)の表面に、磁歪特性を増加させる表面処理(たとえば、メッキまたは溝加工等)を施し、磁歪効果を測定することによってトルクを検出する。磁歪効果の測定は、シャフトと同軸に巻かれたコイルを配置し、インピーダンスの大きさに基づくビラリ効果により発生したシャフトの透磁率の変化を読み取ることによって行われる。
【0003】
トルク検出装置として、出願人は、被検出体に形成される磁路がその軸心に対して所定角度となるように絶縁筒体に組み付けられた複数のコアとの間に形成される磁路を各々増やすことでトルク検出感度を向上させた磁歪式トルク検出センサを提案した。複数のコアが被検出体の軸心方向に対して所定角度で傾斜して配列され、両側脚部の端面が絶縁筒体の内周面より被検出体に臨むように組み付けられている。また、コ字状に形成されたコアは被検出体の軸心に対して所定角度で傾斜して配列することで、一方の脚部(端面)-被検出体-他方の脚部(端面)-架橋部を通る独立した磁路が形成される。このように、複数のコアに同一のコイルが通っていることでコイルの周りに同一の磁界が発生するため同極となり、そのためコアに磁束を集中させることで隣り合うコア間同士を結ぶ磁路が形成されにくいため、検出感度が向上する構造となっている(特許文献1:特許第6483778号参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献のトルク検出装置においては、絶縁筒体の外周面に溝を設け、該溝に沿って複数の検出コイルを巻き付ける必要があり、かつ両側脚部を連結する架橋部に囲まれたコ字状空間部を検出コイルが通過するように複数のコアが絶縁筒体に組み付けられる。
【0006】
このため、検出コイル及びコアを絶縁筒体の径方向の厚みを利用して埋設する必要があることから、センサが径方向及び軸方向に大型化し易い。またコアを構成する両側脚部の端面は、被検出体に臨むように設けられることから、端面形状が平面ではなく弧状の曲面に形成する必要があり、加工コストがかかる。
また、被検出体の全周にわたって、検出感度を低下させずにきめ細かくトルクを検出したいというニーズもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、センサを小型化し安価に量産可能な自己励磁タイプのトルク検出センサ用コア及びこれを用いて被検出体の全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力を、検出感度を低下させずに検出することができる小型なトルク検出センサを提供することにある。
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
被検出体の周囲に設けられた環状のコアから複数箇所で突設されたティースに巻き付けられたコイルに通電して被検出体との間に形成される磁気回路において透磁率の変化をコイルインピーダンスの変化で測定するトルク検出センサ用コアであって、磁性板材が複数積層された環状の第一コアバックより径方向に第一ティースが複数箇所で突設された第一積層コアと、磁性板材が複数積層された環状の第二コアバックより径方向に第二ティースが複数箇所で突設された第二積層コアと、を備え、前記第一積層コアと前記第二積層コアは、磁性材よりなる環状の中間コアを介して積層され前記第一ティースと前記第二ティースとが周方向に千鳥配置となるように積層されていることを特徴とする。
環状の第一コアバックに第一ティースが設けられた第一積層コア及び環状の第二コアバックに第二ティースが設けられた第一積層コアは、モータの固定子コアに用いられる積層コアと同様な製造工程を経て製造することができ、第一ティース及び第二ティースに巻くコイルも巻線機を用いて巻くことができるので、径方向及び軸方向に小型化し安価に量産化することができる。
また、第一積層コアと第二積層コアは、磁性材よりなる環状の中間コアを介して積層されているので、第一ティースと第二ティースの周囲により多くのコイルを巻くことができるので、被検出体に作用する磁束量を増やして検出感度を向上させることができる。
【0009】
前記第一ティースと前記第二ティースは、周方向に対して45度の傾きを有する位相差で千鳥配置されていることが好ましい。
これにより、第一ティースと第二ティースとの間に、軸心方向に対して+45度の傾きを有する複数の磁路及び-45度の傾きを有する複数の磁路が各々形成されるので、複数の磁気回路において透磁率の変化をコイルインピーダンスの変化として測定することで、被検出体の全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力を、検出感度を低下させずにきめ細かく検出することができる。
【0010】
前記第一ティースと前記第二ティースの被検出体に対向する磁束作用面は幅広に形成されていてもよい。
これにより各ティースからより多くの磁束が被検出体を通過するので、検出感度が向上する。
【0012】
被検出体の周囲に設けられた環状のコアから複数箇所で突設されたティースに巻き付けられたコイルに通電して被検出体との間に形成される磁気回路において透磁率の変化をコイルインピーダンスの変化で測定するトルク検出センサ用コアであって、磁性板材が複数積層された環状の第一コアバックより径方向に第一ティースが複数箇所で突設された第一積層コアと、磁性板材が複数積層された環状の第二コアバックより径方向に第二ティースが複数箇所で突設された第二積層コアと、を備え、磁性材よりなる環状の中間コアの外径が前記第一積層コア及び前記第二積層コアより大きくかつこれらが前記中間コアの両端開口から同心状に嵌め込まれて一体に組み付けられ前記第一ティースと前記第二ティースとが周方向に千鳥配置となるように積層されていることを特徴とする。
このようにしても第一コアバックと第二コアバックの軸心方向の距離を設けることで、第一ティースと第二ティースの周囲により多くのコイルを巻くことができるので、被検出体に作用する磁束量を増やして検出感度を向上させることができる。
【0013】
前記第一ティースは第一コアバックの周面に設けられたアリ溝に係合部を軸心方向に嵌め合わせて組み付けられており、前記第二ティースは第二コアバックの周面に設けられたアリ溝に係合部を軸心方向に嵌め合わせて組み付けられていてもよい。
これにより、第一ティースを第一コアバックより取り外した状態で、第二ティースを第二コアバックより取り外した状態で、コイルが巻けるため、巻き線作業が容易となり、生産性を向上することができる。
【0014】
或いは前記第一ティースは径方向端部に設けられた凹部に第一コアバックの周面に設けられた凸部を軸心方向に嵌め合わせて組み付けられており、前記第二ティースは径方向端部に設けられた凹部に第二コアバックの周面に設けられた凸部を軸心方向に嵌め合わせて組み付けられていてもよい。
これにより、第一コアバックに対する第一ティース、第二コアバックに対する第二ティースの組み付けの自由度が高く生産性が向上する。
【0015】
トルク検出センサにおいては、前述したいずれかに記載のトルク検出センサ用コアと、前記第一ティース及び前記第二ティースの周囲に巻かれた巻き方向が異なる第一コイル及び第二コイルが直列に接続された複数の通電回路とを備えたことを特徴とする。
よって、被検出体の全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力をきめ細かく検出することができる。
【0016】
前記トルク検出センサ用コアに千鳥配置で突設された第一ティースに巻かれた第一コイル及び第二ティースに巻かれた第二コイルへ通電して被検出体との間に形成される磁気回路において透磁率の変化をコイルインピーダンスの変化で測定する自己励磁型センサであってもよい。
この場合、任意のタイミングで第一コイル及び第二コイルに通電することで被検出体に作用する圧縮応力又は引張応力を検出することができる。
【発明の効果】
【0017】
センサを小型化し安価に量産可能な自己励磁タイプのトルク検出センサ用コアを提供することができる。
また、これを用いて被検出体の全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力を、検出感度を低下させずに検出することができる小型なトルク検出センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】トルク検出センサ用コアの形態を示す平面図及びトルク検出センサの平面図である。
【
図2】分解されたトルク検出センサの正面図、平面図及び斜視図である。
【
図3】コアの展開図と通電回路の説明図及びティース間に形成される磁路の説明図である。
【
図4】
図3のティース間に形成される磁路の説明図である。
【
図5】トルク検出センサの正面図、右側面図、矢印Y-Y断面図及び斜視図である。
【
図6】
図5の他例に係るトルク検出センサの正面図、右側面図及び斜視図である。
【
図7】
図5の他例に係るトルク検出センサの正面図、右側面図及び斜視図である。
【
図8】他例に係るトルク検出センサ用コアの平面図及びトルク検出センサの平面図である。
【
図9】
図8のコアを用いた分解されたトルク検出センサの正面図、平面図及び斜視図である。
【
図10】他例に係るトルク検出センサの組立構成を示す説明図である。
【
図11】他例に係るトルク検出センサと被検出体の正面図、右側面図、及び斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るトルク検出センサ用コア及びトルク検出センサの一実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。先ず、トルク検出センサ1の概略構成について
図1乃至
図10を参照して説明する。
被検出体の一例としては、逆磁歪効果が大きい材料が好ましい。例えば、逆磁歪効果が高い材料として、パーメンジュール、Fe-Al(アルフェル)、Fe-Nix(パーマロイ)および球状黒鉛鋳鉄( JIS :FCD70 ) などがある。尚、逆磁歪効果とは、磁性体に外部から応力を加えると磁気特性が変化する現象である。また、被検出体には、必要に応じて磁性焼鈍を予め施しておくと、詳しくは後述するが被検出体に作用するトルクを好適に検出できる。また、非磁性材料であっても金属磁性材料を溶射等してコーティングしたり、磁性円筒を軸に圧入したりすることでトルク検出することが可能となる。尚、被検出体は、円柱状であるがこれに限定されない。被検出体は、外形が円柱状であれば、内部の構造は問わない。例えば、内径が軸方向において一定である円筒状、または内径が軸方向に位置により異なっている円筒状であってもよい。また、被検出体は、回転することが予定されているものであってもよいし、予定されていないものであってもよい。更には、被検出体は、中実な軸材料でもよいし、後述するように中空状の中空軸等であってもよい。
【0020】
図1A,Bは、トルク検出センサ用コアの一例を示す。磁性板材(電磁鋼板等)が複数積層された環状の第一コアバック2a1より径方向内側に第一ティース3aが複数箇所で突設された第一積層コア2aと、磁性板材が複数積層された環状の第二コアバック2b1より径方向内側に第二ティース3bが複数箇所で突設された第二積層コア2bと、を備えている。
図3に示すように、第一積層コア2aと第二積層コア2bは、第一ティース3aと第二ティース3bとが周方向に千鳥配置となるように積層されている。
【0021】
図1Aは第一ティース3aと第二ティース3bの被検出体に対向する磁束作用面(径方向内側端面)は同幅であるが、
図1Bでは幅広に形成されている。これにより各ティースより多くの磁束が被検出体を通過するので、検出感度が向上する。
また、
図2Aに示すように、第一積層コア2aと第二積層コア2bは、磁性材よりなる環状の中間コア2cを介して積層され、かしめ又は接着若しくはこれらの併用により一体化されていてもよい。これにより、第一ティース3aと第二ティース3bの周囲により多くのコイル5を巻くことができるので、被検出体に作用する磁束量を増やして検出感度を向上させることができる。
【0022】
図1Cに示すように、第一積層コア2aには周方向に所定の位相差でかつ対向位置に第一ティース3aが径方向内側に向けて合計4本突設されている。第二積層コア2bには、周方向に所定の位相差で勝つ対向位置に第二ティース3bが径方向内側に向けて合計4本突設されている。
図2B、Cに示すように、第一積層コア2aと第二積層コア2bは中間コア2cを介して第一ティース3aと第二ティース3bは、周方向に45度位相が異なるように積層されている。このため、
図3のコア2の展開図に示すように、コア2の内周面には、周方向に第一ティース3a及び第二ティース3bが千鳥配置で突設されている。尚、中間コア2cには径方向内側に向かうティースは設けられていない。また、中間コア2cは磁性板材が複数積層された積層コアであっても或いはブロック状コアであってもいずれでもよい。また、焼結体、金属粉末射出成形、圧粉体で製造されたものでもよい。
図3においては、複数のコア2a~2cが積層されたものを単にコア2と表記するものとする。
【0023】
本実施例では、第一ティース3aを有する第一積層コア2a、第二ティース3bを有する第二積層コア2b、中間コア2cは、例えば電磁鋼板を積層プレスしたものが用いられる。
【0024】
図1Cに示すように、第一積層コア2aは、環状の第一コアバック2a1に複数の第一ティース3aが、周方向に所定の位相差を設けかつ対向位置に径方向内側に向かって合計4本突設されている。各第一ティース3aには筒状の絶縁樹脂製の第一インシュレータ4aが嵌め込まれ、周囲には第一コイル5aが巻き付けられている。
【0025】
図2Bに示すように第二積層コア2bは、第一積層コア2aと同様に環状の第二コアバック2b1に複数の第二ティース3bが、周方向に所定の位相差を設けかつ対向位置に径方向内側に向かって合計4本突設されている。各第二ティース3bには筒状の絶縁樹脂製の第二インシュレータ4bが嵌め込まれ、周囲には第二コイル5bが巻き付けられている。
【0026】
図2A,Cに示すように、第一積層コア2aと第二積層コア2bの間には、環状の中間コア2cが設けられている。中間コア2cは、第一積層コア2aと第二積層コア2bとの間に第一ティース3a,第二ティース3bの周囲に第一コイル5a,第二コイル5bを各々巻くスペースを確保するスペーサとしての役割と、第一積層コア2aと第二積層コア2bとの間の磁路を兼用している。
【0027】
図3は、コア2の展開図と通電回路の一例を示す説明図及びティース間に形成される磁路の説明図である。第一ティース3aの周囲に巻かれた第一コイル5aと第二ティース3bの周囲に巻かれた第二コイル5bは巻方向が反対に巻かれている。また、第一コイル5a及び第二コイル5bが直列に接続された複数の通電回路を備えている。具体的には、第一通電回路6a(
図3上段破線)は、第一ティース3aに巻かれた第一コイル5aから周方向に+45度の位相差を有する第二ティース3bに巻かれた第二コイル5bへ通電し周方向に配線された他の第二ティース3bに巻かれた第二コイル5bから+45度の位相差を有する他の第一ティース3aに巻かれた第一コイル5aへ通電する。なお、より正確には第一ティース3aの被検出体と対向する先端部と第二ティース3bの被検出体と対向する先端部が中間コア2cを介して周方向に+45度の位相差を有するように積層されている。この第一通電回路6a(
図3上段破線)への通電により第一ティース3aと第二ティース3bとの間に被検出体を経て形成される軸心方向に対して+45度の傾きを有する複数の磁路が(
図3下段)される。
【0028】
また、第二通電回路6b(
図3上段実線)は、第一ティース3aに巻かれた第一コイル5aから-45度の位相差を有する第二ティース3bに巻かれた第二コイル5bへ通電し周方向に配線された他の第二ティース3bに巻かれた第二コイル5bから-45度の位相差を有する他の第一ティース3aに巻かれた第一コイル5aへ通電する。なお、より正確には第一ティース3aの被検出体と対向する先端部と第二ティース3bの被検出体と対向する先端部が中間コア2cを介して周方向に-45度の位相差を有するように積層されている。この第二通電回路6b(
図3上段実線)への通電により第一ティース3aと第二ティース3bとの間に被検出体を経て形成される軸心方向に対して-45度の傾きを有する複数の磁路(
図3下段)が各々形成される。また、第一通電回路6aを形成するコイルをコイルAとし、第二通電回路6bを形成するコイルをコイルBとすると、図中NAはコイルAによりN極に励磁されたティース、SAはコイルAによりS極に励磁されたティースを表示するものとし、同様に図中NBはBコイルによりN極に励磁されたティース、SBはBコイルによりS極に励磁されたティースを表示するものとする。より正確には被検出体Sと対向するティースの先端部がN極またはS極に励磁される。N極に励磁されるかS極に励磁されるかはAコイル及びBコイル(第一コイル5a及び第二コイル5b)の巻く向きを反対にすれば実現することができる。
【0029】
また、
図3下段に示すNA及びSAを囲む長枠E1、NB及びSBを囲む長枠E2は、第一ティース3a及び第二ティース3bとの間に形成される磁路において軸心方向(図の上下方向)に対する磁路の傾きを示す。尚、千鳥配置された第一ティース3aと第二ティース3bは、コイルが巻かれていないものが存在しても良い。
以上説明したトルク検出センサ1は、被検出体Sの周囲に複数箇所で対峙するティース3に巻き付けられたコイル5に通電して被検出体Sとの間に形成される磁気回路において透磁率の変化をコイルインピーダンスの変化で測定する自己励磁型のトルク検出センサが用いられる。なお、必ずしも第一ティース3aの周囲に巻かれた第一コイル5aと第二ティース3bの周囲に巻かれた第二コイル5bは巻方向が反対に巻かれていなければならないわけではなく、第一コイル5aと第二コイル5bの巻方向が同じ向きに巻かれていても良い。
【0030】
図4は第一ティース3aと第二ティース3b間に形成される磁路の説明図である。第一ティース3aがN極に励磁され、第二ティース3bがS極に励磁される複数の磁路を示す。NA及びSAを囲む長枠E1は、第一通電回路6aに通電した際の軸心方向(
図2の上下方向)に対する磁路の傾き(+45度)を示す。また、NB及びSBを囲む長枠E2は、第二通電回路6bに通電した際の軸心方向(
図2の上下方向)に対する磁路の傾き(-45度)を示す。+45度に傾く磁路と-45度に傾く磁路はコアの周方向に交互に形成されている(長枠E1,E2参照)。
この場合、周方向に隣合う第一ティース3aの極性は同磁極(N極)であり、周方向に隣合う第二ティース3bの極性も同磁極(S極)となるため、トルク検出に必要な磁路成分(±45度)のみが形成されるため、トルク検出が効率よく実現することができる。
【0031】
ここで、トルク検出センサ1の構成例について、
図5乃至
図10を参照して説明する。
図5A乃至
図5Dはコア2が、環状の第一積層コア2a、中間コア2c、第二積層コア2bが一体に積層されている。第一積層コア2aは、環状の第一コアバック2a1に周方向で所定の位相差を設けかつ対向位置において径方向内側に向かって第一ティース3aが合計4本突設されている。第二積層コア2bは、環状の第二コアバック2b1に周方向で所定の位相差を設けかつ対向位置において径方向内側に向かって第二ティース3bが合計4本突設されている。
【0032】
図5A,5Dに示すように第一積層コア2aと第二積層コア2bは、中間コア2cを介して積層され、かつ第一ティース3aと第二ティース3bは周方向に45度の位相差で重ね合わせて4組設けられる。また、
図5B,Cに示すように、第一ティース3aと第二ティース3bとの間に中間コア2cを設けることで、巻線スペースを設けることで第一ティース3aに巻き付ける第一コイル5a及び第二ティース3bに巻き付ける第二コイル5bの巻数を稼ぐことができ、より多くの磁束を発生させて検出感度を向上させることができる。
【0033】
図6A乃至
図6Cに示すトルク検出センサ1は、
図5の構成と同様であるが、第一積層コア2aに設けられる第一ティース3aの数及び第二積層コア2bに設けられる第二ティース3bの数が異なる。第一積層コア2aは、環状の第一コアバック2a1に周方向で6か所に第一ティース3aが周方向に60度の位相差を設けかつ対向位置に径方向内側に向かって突設されている。第二積層コア2bは、環状の第二コアバック2b1(図示せず)に周方向で6か所に第二ティース3bが周方向に60度の位相差を設けかつ対向位置に径方向内側に向かって突設されている。第一積層コア2aと第二積層コア2bは、中間コア2cを介して積層され、かつ第一ティース3aと第二ティース3bは周方向に45度の位相差で重ね合わせて6組設けられる。
このように、第一積層コア2a、第二積層コア2bの周方向に千鳥配置で突設される第一ティース3a、第二ティース3bの数を増やすことで、よりきめ細かく被検出体に作用するトルク変化を検出することができる。
【0034】
図7A乃至
図7Cに示すトルク検出センサ1は、
図5、
図6の構成と同様であるが、第一積層コア2aに設けられる第一ティース3aの数及び第二積層コア2bに設けられる第二ティース3bの数が異なる。第一積層コア2aは、環状の第一コアバック2a1に周方向で8か所に第一ティース3aが周方向に45度の位相差を設けかつ対向位置に径方向内側に向かって突設されている。第二積層コア2bは、環状の第二コアバック2b1(図示せず)に周方向で8か所に第二ティース3bが周方向に45度の位相差を設けかつ対向位置に径方向内側に向かって突設されている。第一積層コア2aと第二積層コア2bは、中間コア2cを介して積層され、かつ第一ティース3aと第二ティース3bは周方向に45度の位相差で重ね合わせて8組設けられる。
このように、第一積層コア2a、第二積層コア2bの周方向に千鳥配置で突設される第一ティース3a、第二ティース3bの数を増やすことで、さらにきめ細かく被検出体に作用するトルク変化を検出することができる。
【0035】
図8及び
図9は、トルク検出センサ用コアの他の構成を示す。
図5乃至
図8のトルク検出センサ用コアとは、環状の第一コアバック2a1と第一ティース3aが一体ではなく、環状の第二コアバック2b1と第二ティース3bが一体ではない点が異なる。
【0036】
図9A~Cに示すように、第一積層コア2aには、環状の第一コアバック2a1には周方向に所定の位相差を設けかつ対向位置において第一ティース3aが合計4本径方向内側に向かって突設されている。環状の第二コアバック2b1には周方向に所定の位相差を設けかつ対向位置において第二ティース3bが合計4本径方向内側に向かって突設されている。第一積層コア2aと第二積層コア2bは、中間コア2cを介して積層され、かつ第一ティース3aと第二ティース3bは周方向に45度の位相差で重ね合わせて設けられる点は同様である。
【0037】
図8A,Bに示すように第一ティース3aは第一コアバック2a1の内周面に設けられたアリ溝2a2に第一ティース3aの外側端部に設けられた係合部3a1を軸心方向に嵌め合わせて組み付けられる。第一ティース3aは、第一コアバック2a1より取り外された状態で、第一インシュレータ4aが嵌め込まれ、第一インシュレータ4aに第一コイル5aが巻き付けられる。これを第一積層コア2aの第一コアバック2a1に形成されたアリ溝2a2に係合部3a1を軸心方向に嵌め合わせて組み付けられる。第二積層コア2bの第二コアバック2b1に対する第二ティース3bの組み付け構造も第一ティース3aと同様に係合部3b1をアリ溝2b2に軸心方向に嵌め合わせて組み付けられる(
図9参照)。
【0038】
尚、
図8Cに示すように第一コアバック2a1の内周面に凸部2a3が形成され、第一ティース3aの径方向外側端部に凹部3a2が設けられており、凸部2a3
と凹部3a2
を軸心方向に凹凸嵌合させて第一ティース3aが第一コアバック2a1に径方向内側に向かって組み付けられるようにしてもよい。
第二ティース3bの第二コアバック2b1に対する組み付けも第一ティース3aと同様に凸部2b3と凹部3b2を軸心方向に凹凸嵌合させて組み付けられる。このようなコア形態であると、第一ティース3aの第一コアバック2a1に対する組み付け及び第二ティース3bの第二コアバック2b1に対する組み付けの自由度が高いため、組み立て性がよい。
【0039】
図10A~Cは、他例に係るトルク検出センサの組立構成を示す説明図である。
上述した実施例では
図2A乃至
図2Cと同様に同径の環状の第一積層コア2a、中間コア2c、第二積層コア2bが軸心方向に積層されてコア2として一体に組み付けられていたが、例えば中間コア2cの外径が第一積層コア2a及び第二積層コア2bより大きくかつこれらが中間コア2cの両端開口から同心状に嵌め込まれるようになっていてもよい。
【0040】
図10Aは、中間コア2cに対して第一積層コア2a及び第二積層コア2bが挿入前の状態を示す開口端の平面図及び正面分解図である。
図10Bは中間コア2cに第一積層コア2a及び第二積層コア2bが両端開口より嵌め込まれた状態を示す開口端の平面図及び正面図である。
図10Cは、中間コア2cに第一積層コア2a及び第二積層コア2bが挿入前後の状態を示す斜視図である。
図10Cに示すように、中間コア2cの両端開口より挿入された第一積層コア2aと第二積層コア2bは所定間隔を空けて嵌め込まれていてもよい。中間コア2cも磁性体であるため、45度位相が異なる第一ティース3aと第二ティース3bは中間コア2cを介して磁気回路が形成される。
【0041】
以上説明したように、環状の第一コアバック2a1に第一ティース3aが設けられた第一積層コア2a及び環状の第二コアバック2b1に第二ティース3bが設けられた第二積層コア2bは、モータの固定子コアに用いられる積層コアと同様な製造工程を経て製造することができ、第一ティース3a及び第二ティース3bに巻かれる第一コイル5a,第二コイル5bも巻線機を用いて巻くことができるので、径方向に小型化し安価に量産化することができる。例えば、従来の特許第6483778号のトルク検出センサは、φ35mm、軸心方向の長さ25mmであったが、本発明のトルク検出センサ1は、φ16mm、軸心方向の長さ10mmまで小型化できた。
また、これを用いて被検出体の全周にわたって発生した圧縮応力及び引張応力を、検出感度を低下させずに検出することができる小型なトルク検出センサを提供することができる。
【0042】
図11A~Cは、他例に係るトルク検出センサ用コア及びトルク検出センサと被検出体の正面図、右側面図、及び斜視図である。中空軸のトルク検出を行う場合は、トルク検出センサ用コアは、環状の第一コアバック2a1、第二コアバック2b1に設けられる第一ティース3a、第二ティース3bは、径方向外側に向けて形成される。
図11A~Cにおいて、コア2が、環状の第一コア2a、中間コア2c、第二コア2bが一体に積層されている。第一コア2aは、環状のコアバック2a1に周方向に所定の位相差を設けかつ対向位置において径方向外側に向かって第一ティース3a1が例えば合計4本突設されている。第二コア2bは、環状のコアバック2b1に周方向に所定の位相差を設けかつ対向位置において径方向外側に向かって第二ティース3a2が例えば合計4本突設されている。第一ティース3a1には第一インシュレータ4a1を介して第一コイル5aが巻かれており、第二ティース3a2には第二インシュレータ4a2を介して第二コイル5b巻かれている。第一コア2aと第二コア2bは、中間コア2cを介して積層され、かつ第一ティース3a1と第二ティース3a2は周方向に45度の位相差で重ね合わせて例えば4組設けられる。
【0043】
上述のトルク検出センサ1は、
図11B,Cに示すように被検出体S(中空軸)の中空孔に同心状に挿入され、第一ティース3a1及び第二ティース3a2が、被検出体Sの内周面と対峙するように組み付けられる。これにより、
図11Aに示すように千鳥配置された第一ティース3a1と第二ティース3a2の間に被検出体Sを含む磁気回路が形成され、±45度の磁路成分からトルク変化を検出することができる。
このように、被検出体Sが中実な軸に限らず、中空軸のトルク変化も検出できるので、汎用性が向上する。
【0044】
以上説明したように、本実施例に係るトルク検出センサ1は、被検出体Sが、中実状の軸であっても中空状の軸であってもいずれの場合もトルクを検出することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 トルク検出センサ 2 コア 2a 第一積層コア 2a1 第一コアバック 2b1 第二コアバック 2b 第二積層コア 2c 中間コア 3a 第一ティース 3b 第二ティース 4a 第一インシュレータ 4b 第二インシュレータ 5a 第一コイル 5b 第二コイル 6a 第一通電回路 6b 第二通電回路 S 被検出体