(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】薬剤送達システム、及びそれに関連する方法
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20220520BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
(21)【出願番号】P 2020519370
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 US2018054721
(87)【国際公開番号】W WO2019074799
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-09-02
(32)【優先日】2017-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511288061
【氏名又は名称】パール セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ジル・シャーウッド
(72)【発明者】
【氏名】ダン・ディートン
(72)【発明者】
【氏名】デニー・ヒメル
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・フォスター
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・フェリター
(72)【発明者】
【氏名】サルヴァニャ・クマール・ドウィヴェディ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・エル・キング
(72)【発明者】
【氏名】フレッド・ハムリン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ブイ・シーヒー・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ジェラード・リビー
(72)【発明者】
【氏名】ビプル・ネギ
(72)【発明者】
【氏名】カイル・ウッダード
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】特許第2927479(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2003/0051727(US,A1)
【文献】特表2004-510558(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0180785(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/00
A61M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達装置であり、
製剤を収容して、放出バルブと、前記製剤が選択的に放出されるバルブ軸経路を形成するバルブ軸とを有するキャニスターと、
乾燥ハウジングとを備えており、
前記乾燥ハウジングは、前記乾燥ハウジングを通して伸びる前記バルブ軸を有する前記キャニスターに取り付けられており、
前記薬剤送達装置は、前記バルブ軸経路と流体連結している前記乾燥ハウジングに設けられている乾燥物質を備える、ことを特徴とする薬剤送達装置。
【請求項2】
前記薬剤送達装置は、
前記製剤が、吸入時、放出される吸入路を含むベースハウジングと、
前記製剤が、吸入時、前記バルブ軸経路を通過した後、放出する前記吸入路と流体連結している放出オリフィスを含むバルブ軸ブロックとを備えており、
前記キャニスター、前記乾燥ハウジング、及び前記乾燥物質は、カートリッジを形成しており、
前記カートリッジは、取り付けられるとき、
前記キャニスターの前記バルブ軸が前記バルブ軸ブロックと係合して、前記ベースハウジングに取り外しできるように取り付けられている、請求項1の薬剤送達装置。
【請求項3】
前記カートリッジが取り付けられるとき、
前記乾燥物質は、前記バルブ軸ブロックの前記放出オリフィスより上方の位置から、前記放出オリフィスより下方の位置まで伸びる、請求項2の薬剤送達装置。
【請求項4】
前記キャニスターの前記バルブ軸は、前記バルブ軸の側面に開口部を含んでおり、
前記バルブ軸が伸長位置にあるとき、前記バルブ軸経路は、前記バルブ軸の前記側面における前記開口部を通して前記乾燥チャンバーと流体連結している、請求項1~3のいずれかの薬剤送達装置。
【請求項5】
前記キャニスターは、取り外しできるように、前記乾燥ハウジングに
取り付けられて、
キャニスター密閉部が、前記薬剤送達装置の外部環境から前記乾燥チャンバーを
分離するため、前記乾燥ハウジングと前記キャニスターとの間に配置されている
環状の弾性部材である、請求項1~4のいずれかの薬剤送達装置。
【請求項6】
前記乾燥ハウジングは、一体的に形成されている
環状の軸密閉部を含んでおり、
前記バルブ軸は前記軸密閉部を通して伸びており、
前記軸密閉部は、前記薬剤送達装置の外部環境から前記乾燥チャンバーを
分離する、請求項1~5のいずれかの薬剤送達装置。
【請求項7】
前記乾燥物質は、環状又は半環状の構成要素である、請求項1~6のいずれかの薬剤送達装置。
【請求項8】
前記乾燥物質は、前記バルブ軸を部分的に囲み、前記バルブ軸の末端を越えて伸びる半環状の構成要素である、請求項1~7のいずれかの薬剤送達装置。
【請求項9】
前記乾燥ハウジングは、円筒側壁を有するカップ形状構造であり、
前記乾燥物質は、前記バルブ軸を受容するように、前記円筒側壁に対応する形状であり、
前記乾燥ハウジングと前記乾燥物質は、それぞれ、前記バルブ軸の末端を越えて伸びる、請求項1~8のいずれかの薬剤送達装置。
【請求項10】
前記バルブ軸が押圧されるときを除くと、
前記乾燥物質は、前記キャニスターに収容されている前記製剤の耐用期間にわたって、前記バルブ軸により形成されている少なくとも前記バルブ軸経路から、連続的に
水分を取り除く
ため、前記バルブ軸経路と流体連結するように構成されている、請求項1~9のいずれかの薬剤送達装置。
【請求項11】
前記キャニスターの前記バルブ軸が完全に押圧されると、
前記乾燥チャンバーは、
前記乾燥ハウジングと前記キャニスターとの間に配置されている環状の弾性部材として形成されているキャニスター密閉部と、前記乾燥ハウジングと一体的に形成されている環状の軸密閉部により、前記薬剤送達装置の前記バルブ軸経路と外部環境から分離される、請求項1~10のいずれかの薬剤送達装置。
【請求項12】
前記薬剤送達装置は、
前記製剤が、吸入時、放出される吸入路を含むベースハウジングと、
エアロゾル化物質が、吸入時、放出される吸入路と流体連結しているマウスピース開口部と、
乾燥物質が収容されている前記乾燥ハウジング内の乾燥チャンバーとを備えており、
前記乾燥チャンバーは、
前記バルブ軸が押圧されるときを除くと、前記バルブ軸経路と流体連結している、請求項1の薬剤送達装置。
【請求項13】
前記乾燥ハウジングと前記キャニスターは、前記乾燥物質が収容されている前記乾燥チャンバーを形成する、請求項12の薬剤送達装置。
【請求項14】
前記薬剤送達装置は、閉位置と開位置との間で移動し得る
カップ状の密閉部材を備えており、
前記閉位置において、前記密閉部材は、前記吸入路から前記
バルブ軸経路を分離するため、前記
バルブ軸経路の放出口を覆い、
前記開位置において、前記放出口は、前記エアロゾル化物質が、前記マウスピース開口部を通して使用者に送達するため、前記
バルブ軸経路から前記吸入路に向けて通過できるように、前記吸入路と流体連結している、請求項12の薬剤送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、薬剤送達システム、及びそれに関連する方法、特に水蒸気含量を減らすように、薬剤送達装置の薬剤送達管の一部を分離する、及び/又は乾燥させるための薬剤送達システム、及びそれに関連する方法に関する。実施例は、使用者による吸入に対して、投与量のエアロゾル化物質を送達する一方、放出路内における物質の堆積(例えば、吸湿薬剤生成物の蓄積)、又はエアロゾル送達ユニットに対する液体侵入から生じる有害作用を防ぐ、若しくは最小化することに適しているエアロゾル送達ユニットを含む。
【背景技術】
【0002】
例えば、呼吸器疾患の治療において、エアロゾルに含まれている薬剤により患者を治療することが知られている。また、そのような治療、すなわちエアロゾルに含まれ、且つマウスピースと、エアロゾルキャニスターが装着されているハウジングとを備える吸入装置により患者に投与される薬剤を用いることが知られている。そのような吸入装置は、一般的に、定量吸入器(MDI)と呼称されている。そのような吸入装置において用いられるエアロゾルキャニスターは、キャニスターが固定されているとき、バルブ部材を押圧することにより、又はバルブ部材が固定されているとき、キャニスターを押圧することにより開き得る一方の端部の出口バルブ部材(例えば、計測スライドバルブ)によりそれぞれ作動すると、予め決められた投与量の薬剤を送達するように形成されている。そのような装置を用いることにおいて、エアロゾルキャニスターは、マウスピースと連結しているキャニスターの出口バルブ部材を有するハウジングに配置されている。例えば、気管支拡張療法において、薬剤を投薬するために用いられるとき、患者は、およそ直立位置でハウジングを保持する。また、吸入装置のマウスピースは患者の口に配置されている。エアロゾルキャニスターは、患者により吸入されるキャニスターから所定量の薬剤を投薬するように作動する。従来のMDIのような吸入装置を用いる患者への薬剤の効果的な送達は、放出路内における放出された薬剤又は他の物質の堆積と蓄積(例えば、バルブ軸における吸湿薬剤生成物の蓄積)により、又は装置に対する液体侵入から生じる有害作用から妨げられる。同様、又は類似の作用は、例えば、ドライパウダー吸入器(DPI)及び薬剤注入器のような他の薬剤送達装置の薬剤送達管において、生じ得る。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に記載されている実施形態は、水蒸気含量を減らすように、薬剤送達装置の薬剤送達管の一部を分離する、及び/又は乾燥させるためのシステムと方法を提供する。例えば、これは、使用者による吸入に対して効率的且つ信頼性のある方法で投与量のエアロゾル化物質を送達する一方、放出路内における物質の堆積を防ぐ、若しくは最小化する、又は、システムに対する液体侵入から生じる他の有害作用を最小化する、若しくは取り除くことに特に適しているエアロゾル送達システム、及びそれに関連する方法を含む。例えば、実施形態は、エアロゾル送達システムが薬剤を送達するように用いられていないとき、放出路の少なくとも一部を選択的に密閉する、及び/又は、液体を取り除くように乾燥物質に向けて放出路を曝すための装置と技術を特徴とするエアロゾル送達システムを含む。放出路を密閉すること、及び液体を取り除くことは、少なくとも一部の生成物に関連して、放出された薬剤、又は他のエアロゾル化物質の安定した送達(例えば、安定した射出重量)を妨げ得る放出路内の物質の堆積又は蓄積を実質的に取り除く、又は大きく減らし得ることを示す。取り付けられた乾燥物質を有するエアロゾル送達システムの実施形態は、有利になるように、湿度制御のための製品包装を有する従来の乾燥物質の必要性を取り除き得る。また、一部の場合、実施形態は、液体露出に関連している有害作用を十分に最小化して、且つフォイルオーバーラップ、又は製品寿命を強化するために用いられる他の技術の必要性を取り除き得る。さらに、本発明に開示されている湿度管理技術の効果により、使用可能な製品寿命を通して湿度制御機能を与えるため、最初の製品保管部よりも湿気保護を拡げ得る。
【0004】
また、本発明に開示されている、放出路の少なくとも一部を選択的に密閉する装置と技術を特徴とする吸入器の実施形態は、作動力又はキャニスターの復元力に最小限の影響を及ぼすことにより、放出路の解放と密閉ができる。さらに、吸入器の実施形態により、そのようなエアロゾル化物質の流路に影響を及ぼさないように、又は妨げないように、エアロゾル化物質の放出と時間的に協調して、放出路の解放と密閉ができる。このように、本発明に開示されている実施形態の効果は、エアロゾル送達システムの操作と有効性を大きく、又は極度に妨げることなく、実現され得るまた、開示されている実施形態は、放出路を選択的に密閉する、及び/又は乾燥物質に向けて放出路を曝すため、そのような特徴又は機能を欠いている吸入装置と同様に操作し得る。したがって、使用者は、使用時、追加の特徴と機能に気付かないことがある。
【0005】
本明細書に記載されている薬剤送達システムは、所定の実施形態において、1つ以上の感湿要素を含み、大きな固体含量を示すエアロゾルの製剤を送達することに適している。例えば、感湿要素は、定量吸入器から送達される薬剤のエアロゾル化に関連しているような環境湿度又は縮合に対して曝されるとき、エアロゾル送達システムの放出路内における増大した物質の堆積につながる方法で、水を吸収又は吸着し得るいずれかの物質を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、MDIの従来のキャニスターの断面図であり、出口バルブ部材を示す。このバルブ部材は、キャニスターのキャニスターボディから伸びて、可動するバルブ軸を含む。このバルブ軸は、キャニスターボディから、MDI内に設けられている放出オリフィスに向けて伸びる放出路の一部を形成する。
【
図2A】
図2Aは、従来のMDIの放出路のCTスキャン画像であり、装置の反復使用から生じる物質の堆積又は蓄積を示す。
【
図2B】
図2Bは、本発明の所定の態様と技術に係るMDIの放出路のCTスキャン画像であり、薬剤を投薬するためのMDIの反復使用にも関わらず、堆積又は蓄積した物質がない放出路を示す。
【
図3】
図3は、一部の実施形態に記載されている、エアロゾル送達ユニットの斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、断面の部分を有する、
図3のエアロゾル送達ユニットの側面図であり、放出路が外部環境から密閉されており、乾燥物質に向けて曝されている待機形態又は保管形態のユニットを示す。
【
図3B】
図3Bは、断面の部分を有する、
図3のエアロゾル送達ユニットの側面図であり、エアロゾル化物質が、使用者に対する送達のため、キャニスターから吸入路に向けて放出され得るように、放出路が解放されている放出形態のユニットを示す。
【
図3C】
図3Cは、
図3のエアロゾル送達ユニットの一部の構成要素の分解斜視図である。
【
図3D】
図3Dは、受容されている乾燥物質を有する、エアロゾルキャニスターの端部に取り付けられている乾燥ハウジングを含む、
図3のエアロゾル送達ユニットのカートリッジの構成要素を示す斜視図を含む。
【
図4】
図4は、別の実施形態に記載されている、エアロゾル送達ユニットの部分断面図であり、エアロゾル化物質が、使用者に対する送達のため、キャニスターから吸入路に向けて放出され得るように、放出路が解放されている放出形態のユニットを示す。
【
図5】
図5は、別の実施形態に記載されている、エアロゾル送達ユニットの一部の分解斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5のエアロゾル送達ユニットの一部の組立斜視図であり、エアロゾル化物質が、使用時、放出される放出オリフィスより上方の閉位置にある密閉部材を示す。
【
図7】
図7は、
図5及び6に示すエアロゾル送達ユニットの一部の断面図であり、放出オリフィスを通るエアロゾル放出路が密閉部材により妨げられない開位置にある密閉部材を示す。
【
図8】
図8は、別の実施形態に記載されている、密閉部材が開位置にあるエアロゾル送達ユニットの一部の斜視図である。
【
図9A】
図9Aは、閉位置にある密閉部材を有する、
図8のエアロゾル送達ユニットの一部の断面図である。
【
図9B】
図9Bは、開位置にある密閉部材を有する、
図8のエアロゾル送達ユニットの一部の断面図である。
【
図10】
図10は、エアロゾル送達ユニットの放出路を選択的に分離するため、用いられ得る複数の密閉部材構造の概略図を示す。
【
図11】
図11は、可動ボールシールと独立乾燥ハウジングを有するエアロゾル送達ユニットの別の実施形態を示す。
【
図12】
図12は、乾燥チャンバーを選択的に閉じるための可動ゲート要素を有するエアロゾル送達ユニットの別の実施形態を示す。
【
図13】
図13は、ハウジングと一体的に形成されている乾燥チャンバーを有して、且つユニットの放出路を選択的に分離するための密閉部材の移動を制御するように構成されている操作可能なマウスピースキャップを含むエアロゾル送達ユニットの別の実施形態を示す。
【
図14】
図14は、バルブ軸が伸長位置又は非圧縮位置にあるとき、MDIの従来のキャニスターのバルブ軸の側面における開口部を塞ぐために用いられる追加密閉部材を示す。
【
図15】
図15は、別の実施形態に記載されている、乾燥チャンバーを有するマウスピースキャップと、外部環境からエアロゾル放出ユニットの放出路を選択的に分離するための密閉部材とを含むエアロゾル送達ユニットの一部の斜視断面図である。
【
図16】
図16は、乾燥チャンバーを有するマウスピースキャップと、外部環境からエアロゾル放出ユニットの放出路を選択的に分離するための密閉部材との別の構成の概略図である。
【
図17】
図17は、別の実施形態に記載されている、エアロゾル送達ユニットの部分断面図であり、放出路が外部環境から密閉されており、乾燥物質に向けて曝されている待機形態又は保管形態のユニットを示す。
【
図18】
図18は、交互式のバンド形状を弾性バンドの形態で示すと共に、放出路を密閉することを助けるための付勢要素のさらなる詳細を示す、
図17のエアロゾル送達ユニットの一部の上面斜視図である。
【
図19】
図19は、別の実施形態に記載されている、エアロゾル送達ユニットの斜視図である。
【
図21A】
図21Aは、断面の部分を有する、
図19のエアロゾル送達ユニットの側面図であり、放出路が乾燥物質に向けて曝されている待機形態又は保管形態のユニットを示す。
【
図21B】
図21Bは、断面の部分を有する、
図19のエアロゾル送達ユニットの側面図であり、エアロゾル化物質が、使用者に対する送達のため、キャニスターから吸入路に向けて放出され得るように、放出路が乾燥物質から一時的に分離されている放出形態のユニットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の記載において、所定の具体的詳細が、開示されている複数の実施形態を完全に理解することをもたらすように説明される。一方、いずれかの関連する当業者は、実施形態が、1つ以上の具体的詳細を有することなく、実行され得ることを認める。別の場合、MDI、又は他の薬剤送達装置若しくは構成要素に関連している公知の構造と装置は、実施形態の記載を無用に曖昧にすることを防ぐように詳細に説明されなくてもよい。
【0008】
文脈が要求しない限り、以下に説明する明細書と請求項を通して、「備える」という用語は、オープン、すなわち「含む一方、限定されない」ように、開放的意味で解釈される。
【0009】
この明細書を通して、「実施形態」を参照することは、実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを示す。したがって、「実施形態において」という語句が複数の箇所に現れることは、必ずしも、同じ実施形態を参照しない。また、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態における、いずれかの適切な方法で組み合わせられ得る。
【0010】
本明細書と添付されている請求項において用いられるように、「1つの」などの単数表現は、内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。また、「又は」という用語が、内容が明確に指示しない限り、一般的に、「及び/又は」を含む意味で用いられていることを留意すべきである。
【0011】
本明細書に記載されている実施形態は、水蒸気含量を減らすように、薬剤送達装置の薬剤送達管の一部を分離する、及び/又は乾燥させるためのシステムと方法を提供する。例えば、これは、使用者による吸入に対して効率的且つ信頼性のある方法で投与量のエアロゾル化物質を送達する一方、反復使用を通して、送達ユニットの放出路内における物質の堆積を防ぐ、又は最小化することに特に適しているエアロゾル送達システム、及びそれに関連する方法を含む。例えば、実施形態は、エアロゾル化物質を能動的に放出しないとき、装置の放出路の少なくとも一部を選択的に密閉するための密閉部材を備えるエアロゾル送達システムを含む。また、送達システムの実施形態は、液体を引き離すことを助けるように、放出路と流体連結している乾燥物質を含んでもよい。有利になるように、本明細書に記載されているシステムと方法は、エアロゾル化物質の安定した送達(例えば、安定した射出重量)を確実にすることを助け得る。この送達は、放出路の汚染により支障をきたし得る。他の利点は、本発明の詳細な検討から、正当に評価される。
【0012】
本明細書に記載されている薬剤送達システムが、薬剤又は他のエアロゾル化物質を使用者に送達するための定量吸入器(MDI)に関連して説明される一方、このシステムの特徴が、1つ以上の薬剤送達管を有する他の薬剤送達装置を含む他の装置及び他の目的に適用され得ることが、関連する当業者により理解される。
【0013】
背景として、
図1は、MDIの従来のキャニスター10の断面図であり、出口バルブ部材12を示す。このバルブ部材12は、放出される物質を収容するキャニスターボディ16から伸びて、可動するバルブ軸14を含む。このバルブ軸14は、キャニスターボディ16から、MDI内に設けられている放出オリフィス22に向けて伸びる放出路20の一部を形成する。関連する当業者により理解されるように、バルブ軸14がキャニスターボディ16に対して移動するとき、キャニスターボディ16に収容されている定量物質は、放出路20を通過した後、放出オリフィス22を通して放出される。特に、
図1に示す特定の構成によれば、キャニスターボディ16内に収容されている物質は、バルブ軸14がキャニスターボディ16に対して十分移動した後、側面の開口部24を通してバルブ軸14に入り、マウスピース開口部を通して使用者により吸入される吸入路に向けて分散されるように、MDI内の放出オリフィス22に向けてバルブ軸14を通して移動する。吸入器の放出路20と吸入路は、出口バルブ部材12の出口からマウスピース開口部に向けて伸びており、薬剤送達管と呼称され得る。
【0014】
図1を参照して、また従来のMDI装置に従って、キャニスターボディ16から放出オリフィス22に向けてつながる放出路20は、一般的に開いて、且つ放出オリフィス22、及び/又はバルブ軸14の側面の開口部24を通して、MDI装置の外部にある環境に向けて曝され続けている。この方法において、放出路20は、放出路20の汚染、すなわち放出路20内の物質の堆積又は蓄積が促進されることをもたらし得る液体の浸入を受けやすい。
【0015】
本発明に開示されている実施形態は、能動的に物質を放出しないとき、放出路を選択的に密閉すること(i)、及び/又は乾燥物質に向けて放出路を曝すこと(ii)により、定量吸入器又は他の薬剤送達装置の放出路内の物質の堆積又は蓄積を制限する、又は実質的に取り除くように提供されている。
【0016】
実施例として、
図2Aは、装置の反復使用から生じる、従来のMDIの構成の放出路内の物質の蓄積を示すCTスキャン画像を提供する。また、
図2Bは、放出路内の物質の堆積又は蓄積を制限する、又は実質的に取り除くように、本明細書に記載されている特徴と技術に関連して与えられる同等の放出路のCTスキャン画像を提供する。
図2A,2Bに示すそれぞれの装置は、従来のMDI(
図2A)と、本発明に開示されている態様と技術に従って構成されている装置(
図2B)との間における適切な比較をもたらすように、同様の環境条件(例えば、温度、及びそれに関連する湿度)に従って、また同様の操作パラメーターに従って操作される。
図2A,2Bの検討から分かるように、本発明に開示されている態様と技術に従って構成されている装置は、放出路内の物質の堆積又は蓄積を防ぐことにおいて、大きな改善を示しており、有利になるように、所望の投与量のエアロゾル化物質の安定した送達(例えば、安定した射出重量)を確実にすることを助ける。
【0017】
図3,3A,3Bは、(一般的に、定量吸入器又はMDIと呼称される)投与量のエアロゾル化物質を選択的に送達するためのエアロゾル送達ユニット100の実施形態を示す。また、
図3C,3Dは、一部の構成要素のさらなる詳細を示す。
【0018】
エアロゾル送達ユニット100は、ベースハウジング104と、該ベースハウジング104に受容されているキャニスター110とを含む。キャニスター110は、使用者による吸入に対して、投与量のエアロゾル化物質を選択的に放出するため、
図3Aに示す初期位置Iから、
図3Bに示す放出位置Dに向けて移動し得る。キャニスター110は、放出される物質を収容するキャニスターボディ116と、該キャニスターボディ116から伸びて、可動するバルブ軸114を含む出口バルブ部材112とを備える。このバルブ軸114は、キャニスターボディ116から、エアロゾル送達ユニット100内に設けられている放出オリフィス122に向けて伸びる放出路120の一部を形成する。この放出オリフィス122は、吸入路126につながる。エアロゾル化物質は、吸入時、使用者による吸入に対して、マウスピース開口部128を通して放出される前に、吸入路126を通過する。放出路120と吸入路126は、まとめて、薬剤送達管と呼称され得る。関連する当業者により理解されるように、バルブ軸114が、
図3Bに示すキャニスターボディ116に対して移動するとき、キャニスターボディ116に収容されている定量物質は、使用者による吸入路126を用いる吸入に対して、放出オリフィス122を通して放出される。
【0019】
図3を参照して、エアロゾル送達ユニット100はまた、投与量カウントの機能と、キャニスター110を押圧するためのユーザーインターフェースとをもたらすように、キャニスター110の上部に固定されている投与量カウンターアセンブリ107を含んでもよい。エアロゾル送達ユニット100はさらに、エアロゾル送達ユニット100を保管するとき、エアロゾル送達ユニット100のマウスピース開口部128を覆うためのキャップ105を含んでもよい。キャップ105は、ベースハウジング104から分離する、又はテザー106によりベースハウジング104に繋がり得る。このテザー106がベースハウジング104に繋がり続ける一方、カバー105はマウスピース開口部128から取り外され得る。
【0020】
図3A,3Bを参照して、エアロゾル送達ユニット100はまた、閉位置C(
図3A)と開位置O(
図3B)との間で移動し得る密閉部材130を含む。閉位置Cにおいて、密閉部材130は、吸入路126から放出路120を分離するため、放出路120の放出口、すなわち放出オリフィス122を覆う。また、開位置Oにおいて、放出口、すなわち放出オリフィス122は、エアロゾル化物質が、妨げることなく、マウスピース開口部128を通して使用者に送達するため、放出路120から吸入路126に向けて通過できるように、吸入路126と流体連結している。
【0021】
図3A,3Bに示す実施形態を含む一部の場合、密閉部材130は、
図3Aに示す初期位置Iから、
図3Bに示す放出位置Dに向かうキャニスター110の移動との直接的な相関関係で移動するように、キャニスター110に対して配置され得る、又は構成され得る。例えば、
図3A,3Bの実施形態に示すように、密閉アセンブリ129は、(本明細書において、バルブ軸ブロックとも呼称される)固定されているノズルブロック132と密閉部材130とを与える、又は含んでもよい。ノズルブロック132は、キャニスター110のバルブ軸114を受容して、放出路120の一部を形成し得る。密閉部材130は、密閉部材130が、吸入路126から放出路120を分離するため、閉位置Cにあるとき、ノズルブロック132と係合する、又は結合する。密閉部材130は、ノズルブロック132と結合するように、独立した、又は一体的な密閉装置133を含んでもよい。一部の場合、密閉装置133は、マルチショット射出成形を用いて、密閉部材130の一体的な部分として形成され得る。別の場合、密閉装置133は、密閉部材130が閉位置Cにあるとき、ノズルブロック132と係合し得る密閉端部を与えるビード又は突起部のような、単一の密閉部材130の明確な特徴であってもよい。別の場合、ノズルブロック132は、密閉部材130と結合するように、独立した、又は一体的な密閉装置を備えてもよい。この場合、密閉装置は、放出路マルチショット射出成形を用いて、ノズルブロック132の一体的な部分として形成され得る、又は閉位置Cの密閉部材130と係合し得る密閉端部を与えるビード又は突起部のような、単一のノズルブロック132の明確な特徴であってもよい。
図3A,3Bの実施形態に示すように、密閉部材130は、放出オリフィス122を含むノズルブロック132又はノズルブロック132の一部を受けるカップ形状で設けられている。別の場合、密閉部材130は、例えば、平面の密閉要素(例えば、回転フラップ)、ボールシール、又は可動ゲート構造のような異なる形状をとり得る。
【0022】
図3Bに示すように、キャニスターボディ116に繋がる、又は設けられている密閉作動構造136(例えば、プッシュロッド)は、密閉部材130を開位置Oに移すため、密閉部材130に作用するように構成され得る。この方法において、エアロゾル化物質を放出するようにキャニスター110を移動することはまた、放出路120を開けるため、密閉部材130を移動することにつながる。実施形態の密閉部材130は、出口バルブ部材112が、放出オリフィス122を通して吸入路126に向かうエアロゾル化物質の流れを妨げないように、放出路120を通してキャニスター110から物質を放出する前に、放出オリフィス122から生じる放出路の内、ノズルブロック132から離れるように構成されている。一部の場合、例えば、密閉部材130は、放出オリフィス122により決まる中心軸に沿い、放出路120の出口に接する参照シリンダーの完全に外側にある。一部の場合、密閉部材130は、放出オリフィス122により決まる中心軸に沿い、放出オリフィス122の出口に接して、90°の開口角度を有する参照コーンの完全に外側にある。
【0023】
図3A,3Bの実施形態に従って、放出オリフィス122、及び放出路120の一部(例えば、排水部)は、ノズルブロック132に設けられている。
図3A,3Bに示す実施形態によれば、ノズルブロック132は、ベースハウジング104内に固定されて、キャニスター110から伸びるバルブ軸114の放出端部を受容するように構成されている。別の場合、ノズルブロック132は、ベースハウジング104と一体的に形成され得る。また、別の場合、ノズルブロック132と密閉部材130は、密閉部材130がノズルブロック132に対して移動できるように、存続するヒンジ又は他のジョイントを有する単一の構成要素の部分であってもよい。
【0024】
密閉部材130は、伸縮ばね138(例えば、トーションばね、コイルばね、板ばね)又は他の付勢要素(例えば、弾性バンド、特に変形部材)により、軸ブロック132と係合するように、閉位置Cに向けて付勢され得る。この方法において、密閉部材130は、初期位置I(
図3A)から放出位置D(
図3B)に向かうキャニスター110の移動と協調して作用されるまで、閉位置Cに保持され得る。一部の場合、伸縮ばね138は、伸縮ばね138の不具合、又は所定の取り付け位置から伸縮ばね138を除去することにより、エアロゾル送達ユニット100内にとらわれるように、エアロゾル送達ユニット100により取られ得る。
【0025】
実施形態において、放出路120を選択的に密閉するため、密閉部材130と軸ブロック132を、互いに結合するようにヒンジ構造134により接続する2つの独立した構成要素として示す一方、他の密閉構造が、図示する構成の代わりに設けられ得ることが分かる。例えば、上述のように、軸ブロック132と密閉部材130は、密閉部材130がノズルブロック132に対して移動できるように、存続するヒンジ又は他のジョイントを有する単一の構成要素の部分であってもよい。
【0026】
図17,18は、(一般的に、定量吸入器又はMDIと呼称される)投与量のエアロゾル化物質を選択的に送達するためのエアロゾル送達ユニット600の別の実施形態を示す。エアロゾル送達ユニットは、閉位置C(
図17)と開位置O(図示せず)との間で移動し得る密閉部材630を同様に含む。閉位置Cにおいて、密閉部材630は、吸入路626から放出路620を分離するため、放出路620の放出口、すなわち放出オリフィス622を覆う。また、開位置Oにおいて、放出口、すなわち放出オリフィス622は、エアロゾル化物質が、妨げることなく、マウスピース開口部628を通して使用者に送達するため、放出路620から吸入路626に向けて通過できるように、吸入路626と流体連結している。
図17,18に示す実施形態によれば、密閉部材630の少なくとも一部は、例えば、弾性バンドのような付勢要素638により閉位置Cに向けて付勢され得る。この付勢要素638は、その操作を通して、密閉部材630の一部に接触して、密閉部材630を閉位置Cに向けて付勢する。関連する当業者は、付勢要素638が、キャニスター610が作動する間、且つ密閉部材630が開位置に向けて移動する間、弾性変形し得ること、及び付勢する力の大きさが、付勢要素638の移動量とともに増加する密閉部材630の移動を通して変わり得ることを理解する。
図17,18の実施形態に示すように、付勢要素638は、密閉部材630の裏側に広がり、接触する、又は隣接する弾性バンドの形態で設けられ得る。
【0027】
図3A,3Bに戻り、エアロゾル送達ユニット100はまた、乾燥物質152を収容している乾燥チャンバー150を含む。この乾燥物質152は、少なくとも、エアロゾル送達ユニット100が収納形態にあり、エアロゾル化物質を能動的に放出していないとき、放出路120と流体連結している。例えば、
図3A,3Bに示す実施形態に従って、乾燥チャンバー150は、キャニスターボディ116の下端と、独立した乾燥ハウジング154と、キャニスター110の端部に繋がる軸密閉部156との間において、キャニスター110の端部に設けられている。乾燥物質152は、ディスク形状で設けられて、キャニスター110のバルブ軸114が通過する中心開口部を含んでもよい。軸密閉部156は、例えば、マルチショット射出成形を用いて、乾燥ハウジング154と一体的に形成されている環状密閉部であってもよい、又は乾燥ハウジング154に繋がる独立した密閉構成要素として設けられてもよい。一部の場合、軸密閉部156は、吸入時、キャニスター110が移動するとき、軸密閉部156が変形するにつれて変化する容量を有する乾燥チャンバー150を与えるように、バルブ軸114と乾燥ハウジングとの間に固定されているベローズ型密閉部として設けられ得る。別の場合、
図3A,3Bに示す実施形態のように、乾燥チャンバー150は固定された容量を有してもよい。
【0028】
図3Aから分かるように、乾燥チャンバー150内の乾燥物質152は、バルブ軸114の側面における開口部124を通して、放出路120と流体連結している。この開口部124は、吸入時、バルブ軸114が移動するとき、キャニスターボディ116に収容されている物質を放出オリフィス122に向けて通過させるために用いられる。この方法において、放出路120は、キャニスター110が初期位置Iにあるとき、例えば、エアロゾル送達ユニット100を保管するとき、乾燥物質152に向けて曝され続けている。一部の場合、乾燥物質は、放出される物質のキャニスターの実質的な全体製品寿命に対して用いる間、放出路を乾燥した状態(例えば、25%RH未満)に保つために十分であってもよい。
【0029】
有利になるように、乾燥ハウジング154は、ベースハウジング104から容易に取り外され得るカートリッジ160を形成するように、キャニスター110の端部又はカラーに繋がり得る。この方法において、乾燥ハウジング154とキャニスター110は、枯渇したとき、キャニスター110を交換するため、及び/又は要求どおりに乾燥物質152を交換するため、ベースハウジング104から容易に取り外され得る。乾燥ハウジング154は、摩擦かみ合い又は締まりばめ構造を含む、弾性バンド、クリップ、戻り止め、又は他の締結装置若しくは締結技術を用いて、キャニスター110の端部又はカラーに繋がり得る。本明細書に詳細に示すように、
図3A,3Bの実施形態において、キャニスター110の下端又はカラーに繋がるような乾燥チャンバー150を示す一方、別の実施形態において、乾燥チャンバーが、キャニスター110から独立したベースハウジング104に繋がる独立した乾燥ハウジングに設けられ得ること、乾燥チャンバーがベースハウジング自体に一体的に形成され得ること、又は乾燥チャンバーが、マウスピースキャップのように、ベースハウジング104に取り付けられている独立した構成要素に設けられ得ることが分かる。また、乾燥物質は、ゲル形状、粉体形状、粒体形状、又は成形形状のような複数の異なる形状で設けられており、シリカ、活性炭、硫酸カルシウム、又は塩化カルシウムのような異なる物質を備えてもよい。さらに、一部の実施形態において、乾燥チャンバー、及び関連する乾燥剤は共に省かれ得る。
【0030】
上述のように、乾燥ハウジング154は、本明細書に記載されている機能の一部をもたらすように、軸ブロック132に係合して、密閉部材130と共に操作するため、ベースハウジング104に取り付けられているカートリッジ160を形成するように、キャニスター110の端部又はカラーに繋がり得る。
図3C,3Dにおいて、カートリッジ160、軸ブロック132、及び密閉部材130の構成要素のさらなる詳細を示す。
図3C,3Dに示すように、乾燥ハウジング154は、キャニスター110の下端を受容するような大きさと形状である略円筒側壁を有するカップ形状構造を形成し得る。乾燥物質152は、成形形状で設けられており、略環形状を有してもよい。乾燥物質152は乾燥ハウジング154の下端に配置され得る。乾燥ハウジング154は、乾燥ハウジング154内の乾燥物質152を接合すること、又は配置することを助けるため、1つ以上の位置決め又は結合機構155を含んでもよい。
図3C,3Dに示す実施形態によれば、乾燥物質152は、乾燥ハウジング154に設けられているバルブ軸開口部157(
図3D)を妨げないような形状である。キャニスター110のバルブ軸114は、このバルブ軸開口部157を通して受容される。特に、バルブ軸開口部157は、例えば、マルチショット射出成形を用いて、乾燥ハウジング154と一体的に形成され得る軸密閉部156に設けられている。また、乾燥物質152は、乾燥ハウジング154の軸密閉部156のバルブ軸開口部157への妨げられない接続をキャニスター110のバルブ軸114に与えるように、中心開口部153を含む環形状を有する。
【0031】
図3C,3Dを参照して、キャニスター密閉部117は、キャニスター110と乾燥ハウジング154が共に繋がる場合、キャニスターボディ116と乾燥ハウジング154との間において、圧縮され得る弾性部材を与えるように、キャニスターボディ116周りに、例えば、キャニスターボディ116の下方ネック部周りに配置され得る。エアロゾル送達ユニット100が、完全に組み立てられて、放出路120以外における液体の上記乾燥チャンバー150への侵入を妨げている場合、キャニスター密閉部117は、乾燥チャンバー150(
図3A,3B)を分離することを助けるように密閉位置を与えてもよい。同様の方法において、エアロゾル送達ユニット100が、完全に組み立てられて、放出路120以外における液体の上記乾燥チャンバー150への侵入を妨げている場合、軸密閉部156は、乾燥チャンバー150(
図3A,3B)を分離することを助けるように密閉位置を与えてもよい。この方法において、乾燥チャンバー150は、放出路120を除くと、外部環境から効果的に分離されている。この放出路120は、薬剤を放出するとき、又は密閉部材130が省かれているユニットの場合、吸入路126が外部環境に向けて曝されているとき、例えば、マウスピースキャップ105がエアロゾル送達ユニット100のベースハウジング104から取り外されるとき、外部環境に向けて曝され得る。
【0032】
キャニスター100が乾燥ハウジング154に装着されている状態で、バルブ軸114は、ベースハウジング104に設けられているノズルブロック132に受容されるように、乾燥ハウジング154の下端から突出する。また、乾燥ハウジング154は、ラッチ159、すなわちカートリッジ160をベースハウジング104内に取り外しできるように固定するための戻り止め機構、又は他の結合構造を含んでもよい。例えば、乾燥ハウジング154は、ベースハウジング104内にカートリッジ160を保つことを助けるため、ベースハウジング104のラッチ開口部(図示せず)と係合するように構成されている弾性ラッチ159を含んでもよい。ラッチ159は、必要又は要求に応じて、ベースハウジング104からカートリッジ160を選択的に取り外すため、押圧され得る。他の特徴は、ベースハウジング104内にカートリッジ160を配置すること、及びバルブ軸114を作動して、投与量の物質を放出するために使用する間、ラッチ159が押圧されるとき、ベースハウジング104に対してカートリッジ160を案内することを助けるため、乾燥ハウジング154、及び/又はベースハウジング104に含まれてもよい。
【0033】
図3C,3Dを参照して、カートリッジ160は、密閉作動構造136(例えば、プッシュロッド)を与えるように、乾燥ハウジング154の下端に繋がる、又は一体化している密閉作動構成要素135を含んでもよい。
図3Bに示すように、この密閉作動構造136は、密閉部材130を開位置Oに移すために使用する間、密閉部材130に作用する。密閉作動構成要素135は、乾燥ハウジング154の下端に取り外しできるように繋がり、密閉作動構造136が、吸入時、密閉部材130が移動するように、密閉部材130に作用するとき、密閉作動構造136を案内して、且つ支持することを助けるためのノズルブロック132における1つ以上の対応する開口部137を通して伸びるように構成され得る。例えば、
図3~3Dに示す実施形態によれば、密閉作動構造136は、ノズルブロック132における対応する開口部137を通して伸びて、キャニスター110が押圧されるとき、密閉部材130を開位置Oに向けて動かすため、ラグ139を密閉部材130に係合させるように配置されている1対のプッシュロッドを備える。一部の場合、プッシュロッド(又は他の密閉作動構造136)は、移動の終点に達する前に、ラグ139を通過するように構成されている。したがって、プッシュロッドは、この移動の終点において、下向きの力を密閉部材130に与えることなく、密閉部材130を開く。実施形態において、密閉作動構造136を1対のプッシュロッドとして示す一方、結合構造を含む他の構造は、放出路120を曝すため、密閉部材130を移動させることに対して、キャニスター110の投与量の薬剤を放出するとき、キャニスター110の移動を変えるために設けられ得ることが分かる。
【0034】
図4は、(一般的に、定量吸入器又はMDIと呼称される)投与量のエアロゾル化物質を選択的に送達するためのエアロゾル送達ユニット200の別の実施形態を示す。エアロゾル送達ユニット200は、ベースハウジング204と、該ベースハウジング204に受容されるキャニスター210とを含む。キャニスター210は、使用者による吸入に対して、投与量のエアロゾル化物質を選択的に放出するため、初期位置から放出位置に向けて移動し得る。キャニスター210は、放出される物質を収容するキャニスターボディ216と、該キャニスターボディ216から伸びて、可動するバルブ軸214を含む出口バルブ部材212とを備える。このバルブ軸214は、キャニスターボディ216から、エアロゾル送達ユニット200内に設けられている放出オリフィス222に向けて伸びる放出路220の一部を形成する。この放出オリフィス222は、吸入路226につながる。エアロゾル化物質は、吸入時、使用者による吸入に対して、マウスピース開口部228を通して放出される前に、吸入路226を通過する。
【0035】
図4を参照して、エアロゾル送達ユニット200はまた、閉位置(図示せず)と、
図4に示すような開位置Oとの間で移動し得る密閉部材230を含む。閉位置において、密閉部材230は、吸入路226から放出路220を分離するため、放出路220の放出口、すなわち放出オリフィス222を覆う。また、開位置Oにおいて、放出口、すなわち放出オリフィス222は、エアロゾル化物質が、妨げることなく、マウスピース開口部228を通して使用者に送達するため、放出路220から吸入路226に向けて通過できるように、吸入路226と流体連結している。
【0036】
図4に示す実施形態を含む一部の場合、エアロゾル送達ユニット200はマウスピースキャップ260を含んでもよい。また、密閉部材230は、マウスピースキャップ260の移動と協調して動くように、マウスピースキャップ260に対して配置され得る、又は構成され得る。例えば、
図4の実施形態に示すように、密閉部材230は、マウスピースキャップ260のカム部262と動作できるように繋がり得る。したがって、密閉部材230は、マウスピースキャップ260が、マウスピース開口部228を備えるエアロゾル送達ユニット200の端部から離れるように回転するとき、閉位置から離れて、開位置Oに向けて動く。一方、マウスピースキャップ260が、マウスピース開口部228を備えるエアロゾル送達ユニット200の端部に向けて回転するとき、密閉部材230は、放出路220を密閉するように閉位置に向けて移動し得る。この方法において、放出オリフィス222は、使用者が、投与量のエアロゾル化物質を服用するため、マウスピースキャップ260を取り外して、且つマウスピース開口部228を含むエアロゾル送達ユニット200の端部から離れるようにマウスピースキャップ260を回転させることにより、準備するとき、曝され、また使用者が、次回の使用に向けて、エアロゾル送達ユニット200を保管するため、マウスピースキャップ260を交換するとき、再び覆われ得る。
【0037】
図5~7は、投与量のエアロゾル化物質を選択的に送達するためのエアロゾル送達ユニットの別の実施形態のバルブ軸ブロック300を示す。バルブ軸ブロック300は、エアロゾル送達ユニットのベースハウジング内に配置され、定量吸入器に対する従来のキャニスターのバルブ軸を受容するように構成され得る。
図5,6は、それぞれ、バルブ軸ブロック300を分解図と組立図で示す。また、
図7は、バルブ軸ブロック300の断面図を示す。
【0038】
図5~7に示すように、密閉部材330は、
図6に示す閉位置Cと、
図7に示す開位置Oとの間で移動するため、バルブ軸ブロックハウジング304と動作できるように繋がり得る。結合部332は、閉位置C(
図6)と開位置O(
図7)との間で密閉部材330を移動させることを助けるため、バルブ軸ブロックハウジング304及び密閉部材330と動作できるように繋がる。
図5~7のバルブ軸ブロック300の実施形態によれば、密閉部材330は、キャニスターが放出位置に向けて押圧されるとき、バルブ軸ブロックハウジング304から伸びるプッシュ部材334を押し付けるキャニスターに応えて、バルブ軸ブロックハウジング304に形成されている放出オリフィス322を曝すため、回転又は反転するように構成されている。プッシュ部材334は、結合部332が密閉部材330のカム部材331に作用するため、密閉部材330を回転させるように結合部332を押し付ける。キャニスターが初期位置に戻るとき、伸縮ばね338又は他の付勢部材が、密閉部材330を閉位置C(
図6)に戻すように結合部332を付勢する。この方法において、密閉部材330は、通常、閉位置C(
図6)に保持され、キャニスターが投与量のエアロゾル化物質を送達するように押圧されるときのみ、開位置O(
図7)に向けて移動する。
【0039】
有利になるように、結合部332は、キャニスターのストロークに関連している相対的に小さな垂直変位を、密閉部材330の相対的に大きな回転移動に変換する、又は増幅するように構成されている。また、結合部332は、エアロゾル化物質が放出路320の端部における放出オリフィス322を通して放出される前に、エアロゾル化物質の流路を完全に除外して、密閉部材330を動かすように構成されている。この方法において、密閉部材330の少なくとも一部は、キャニスターのストロークの移動距離よりも大きな距離を移動する。
【0040】
図5~7を参照して、バルブ軸ブロック300のバルブ軸ブロックハウジング304はまた、乾燥物質(図示せず)を収容している乾燥チャンバー350を含む、又は形成し得る。この乾燥物質は、バルブ軸ブロックハウジング304を通過する放出路320と流体連結している。したがって、バルブ軸ブロック300は、キャニスターが装着されて、エアロゾル化物質を能動的に放出していないとき、放出路320を選択的に分離して、且つ液体を取り除くために十分な内蔵型アセンブリを備えてもよい。一部の場合、乾燥物質は、放出される物質のキャニスターの実質的な全体製品寿命に対して用いる間、放出路を乾燥した状態(例えば、25%RH未満)に保つために十分であってもよい。実施形態によれば、乾燥物質は、キャニスターのバルブ軸の側面における開口部を通る上流端部よりも下流の放出路320の端部に向けて曝されている。この開口部は、吸入時、バルブ軸が移動するとき、キャニスターボディに収容されている物質を放出オリフィス322に向けて通過させるために用いられる。
【0041】
図8~9Bは、投与量のエアロゾル化物質を選択的に送達するためのエアロゾル送達ユニットの別の実施形態のバルブ軸ブロック400を示す。バルブ軸ブロック400は、エアロゾル送達ユニットのベースハウジング内に配置され、定量吸入器に対する従来のキャニスターのバルブ軸を受容するように構成され得る。
図8は、バルブ軸ブロック400の一部の斜視図を示す。また、
図9A,9Bは、それぞれ、閉位置Cと開位置Oにある密閉部材430を有するバルブ軸ブロック400の断面図を示す。
【0042】
図8~9Bに示すように、密閉部材430は、
図9Aに示す閉位置Cと、
図9Bに示す開位置Oとの間で移動するため、バルブ軸ブロックハウジング404と動作できるように繋がり得る。結合部432は、閉位置C(
図9A)と開位置O(
図9B)との間で密閉部材430を移動させることを助けるため、バルブ軸ブロックハウジング404及び密閉部材430と動作できるように繋がる。
図8~9Bの実施形態によれば、密閉部材430は、キャニスターが放出位置に向けて押圧されるとき、バルブ軸ブロックハウジング404から伸びるプッシュ部材434を押し付けるキャニスター(図示せず)に応えて、バルブ軸ブロックハウジング404に形成されている放出オリフィス422(
図8)を曝すため、回転又は反転するように構成されている。プッシュ部材434は、結合部432が密閉部材430のカム部材431に作用するため、密閉部材430を回転させるように結合部432を押し付ける。キャニスターが初期位置に戻るとき、伸縮ばね(図示せず)又は他の付勢部材が、密閉部材430を閉位置C(
図9A)に戻すように結合部432を付勢する。この方法において、密閉部材430は、通常、閉位置C(
図9A)に保持され、キャニスターが投与量のエアロゾル化物質を送達するように押圧されるときのみ、開位置O(
図9B)に向けて移動する。
図8に示すように、放出オリフィス422は、下流の吸入路から上流の放出路420を分離する密閉部を形成して、保つことを助けるため、閉位置Cにある密閉部材430と結合し得るリッジ423又は他の機構により囲まれ得る。
【0043】
上述の実施形態は、定量吸入器又は他の薬剤送達装置の放出路を選択的に分離すること、及び上記分離した放出路から液体を取り除くことに適している複数の密閉部材構造と乾燥チャンバー構造の一部の実施例を提供する。一方、他の密閉部材構造と乾燥チャンバー構造は、同じ又は類似の機能を提供するため、用いられ得ることが分かる。
【0044】
例えば、
図10は、エアロゾル送達ユニットの放出路を選択的に分離するため、用いられ得る複数の密閉部材構造の概略図を示す。この密閉部材構造は、密閉部材が、エアロゾル送達ユニットの放出オリフィスを覆い、放出路を分離するように、閉位置と開位置との間で回転する、又は摺動し得る構造を含む。
【0045】
乾燥チャンバーはまた、エアロゾル送達ユニットの分離した放出路とつながるため、いずれかの適切な位置に、及び方法で設けられ得る。この乾燥チャンバーは、
図3A,3Bに示す実施形態のように形成されている、又はキャニスターの端部と繋がるチャンバーを含んでもよい。
【0046】
別の場合、乾燥ハウジングは、エアロゾル送達ユニットのベースハウジング内に設けられ、キャニスターが取り外されるとき、例えば、交換キャニスターを取り付けるとき、又はエアロゾル送達ユニットを清掃するとき、ベースハウジング内に残るように構成され得る。例えば、
図11は、キャニスターから独立したエアロゾル送達ユニットのベースハウジングに位置する乾燥ハウジングを有するエアロゾル送達ユニットの実施形態を示す。この乾燥ハウジングは、エアロゾル送達ユニットが薬剤又は他の物質を能動的に放出していないとき、放出路と流体連結している。
図12は、キャニスターから独立したエアロゾル送達ユニットのベースハウジングに位置する乾燥ハウジングを有するエアロゾル送達ユニットの別の実施形態を示す。
図12の実施形態によれば、エアロゾル送達ユニットはまた、キャニスターがエアロゾル送達ユニットから取り外されるとき、放出路から乾燥チャンバーを選択的に分離するための可動ゲート構造を含む。この方法において、キャニスターが取り外されるとき、例えば、エアロゾル送達ユニットを清掃するとき、乾燥チャンバーは密閉され得る。
【0047】
別の実施形態において、ベースハウジング自体が、乾燥チャンバーを形成する乾燥ハウジング部を含んでもよい。
図13は、ハウジングと一体的に形成されている乾燥チャンバーを有するエアロゾル送達ユニットの実施形態を示す。この場合、追加密閉部材が、キャニスターのバルブ軸の側面における開口部を密閉するため、設けられ得る。この開口部は、キャニスターが初期位置にあるとき、外部環境に向けて曝され得る。
図14において、キャニスターボディに隣接しているバルブ軸のベースを囲む、この追加密閉部の実施例を示す。
【0048】
別の実施形態において、乾燥物質は、ホストエアロゾル送達ユニットの別の構成要素内、例えば、使用中でないとき、エアロゾル送達ユニットのマウスピース開口部を覆うために用いられるマウスピースキャップ内に設けられ得る。例えば、
図15は、エアロゾル送達ユニット500の実施形態を示す。このエアロゾル送達ユニット500は、エアロゾル送達ユニット500の操作中、エアロゾル化物質が放出される吸入路526と流体連結しているマウスピース開口部528を有するエアロゾル送達ユニット500のマウスピース504を覆うためのマウスピースキャップ505を含む。乾燥物質(図示せず)を収容している乾燥チャンバー550がマウスピースキャップ505内に設けられている。また、マウスピースキャップ505は、分割密閉バルブ、傘状バルブ、又は他の密閉バルブのような(非変形状態で示す)密閉部材530を含む。この密閉部材530は、マウスピースキャップ505が取り外されるとき、外部環境から乾燥チャンバー550内の乾燥物質を分離するため、エアロゾル送達ユニット500のマウスピース504からマウスピースキャップ505を取り外すと、閉じるように構成されている。密閉部材530はマウスピースキャップ505内に配置されている。また、突出部531が、マウスピースキャップ505が、吸入路526への接続を防ぐようにマウスピース504に取り付けられているとき、放出オリフィス522との流体連結を乾燥チャンバー550にもたらすように密閉部530を移動させるため、吸入路526内に、且つ吸入路526の上流に位置するエアロゾル送達ユニット500の放出路520内に設けられている。この方法において、マウスピースキャップ505がマウスピース504に固定されているとき、放出オリフィス522と放出路520は、乾燥チャンバー550内の乾燥剤に向けて曝されている一方、吸入路526と外部環境から分離されている。一方、マウスピースキャップ505が取り外されるとき、放出路520と放出オリフィス522は、吸入路526との流体連結を与えられる。
【0049】
マウスピースキャップ505は、使用者が投与量のエアロゾル化物質を受容した後、マウスピースキャップ505の紛失を防ぎ、且つマウスピースキャップ505がマウスピース504において交換されることを確実にするように、存続するヒンジ564又は他の接続部を用いて、ハウジング560と接続するテザー部材562により、エアロゾル送達ユニット500のハウジング560に拘束され得る。また、マウスピースキャップ505は、マウスピースキャップ505が、マウスピース開口部528を備えるエアロゾル送達ユニット500の端部から離れるように回転する前に、マウスピースキャップ505をマウスピース504から引き離し得るスライドジョイント566により、テザー部材562と接続し得る。
【0050】
図15の実施形態において、密閉部材530を変形膜として示す一方、変形膜の代わりに、別の種類の密閉構造(例えば、マウスピースキャップを取り外すと、閉じて、マウスピースキャップが取り付けられると、開くように構成されている傘状バルブ又は他のバルブ)が用いられ得ることが分かる。例えば、
図16を参照して、マウスピースキャップが、マウスピースキャップが、乾燥物質に向けて放出路を曝すようにマウスピース開口部を閉じるとき、ばねにより作用する付勢と反対側の方向に作動するばね付勢プランジャー要素を備える密閉部材を有する。
【0051】
また、本明細書に開示されている実施形態は、機械式動力作動吸入器及び電力(すなわち電気機械式)作動吸入器を含む(加圧呼吸式吸入器と呼称されている)手動作動吸入器又は呼吸作動吸入器の形態で提供され得る。したがって、一部の実施形態において、本明細書に記載されているエアロゾル送達ユニットはさらに、特に、(機械的又は電気的な)動力源と、エアロゾル送達ユニットにおける使用者の吸入又は他のトリガーに応えて、投与量のエアロゾル化物質を送達するように初期位置から放出位置に向けてキャニスターを移動させるため、動力源に繋がるアクチュエーターとを備える。また、一部の実施形態において、本明細書に開示されている密閉部材の移動は、電気的に制御され、キャニスターの移動と協調し得る。さらに、本明細書に開示されている実施形態の態様と特徴が組み込まれ、ドライパウダー吸入器(DPI)、又は薬剤送達管を有する他の薬剤送達装置と共に用いることに適してもよいことが分かる。
【0052】
本発明を考慮して、薬剤送達装置を形成して、操作することに関連する方法が提供され得ることが分かる。例えば、薬剤送達装置の薬剤送達管内の環境を制御する方法の実施形態を説明する。この方法は、薬剤送達管を通して投与量の薬剤を放出するステップと、薬剤送達装置内において分離した環境を形成するように、薬剤送達管の少なくとも一部を分離するステップと、水蒸気含量を減らすように、分離した環境を乾燥させるステップとを含む。また、この方法は、薬剤送達管の少なくとも一部を解放するステップと、薬剤送達管を通して追加投与量の薬剤を放出するステップとを含んでもよい。薬剤送達管の少なくとも一部を解放するステップはエアロゾルキャニスターの作動と協調するため、製剤が薬剤送達管を通るとき、薬剤送達管は完全に妨げられない。投与量の薬剤を放出するステップは、薬剤送達管を通して感湿製剤を放出することを含んでもよい。また、分離した環境を乾燥させるステップは、薬剤送達装置の操作を通して薬剤送達管の少なくとも一部における残留薬剤の蓄積を防ぎ得る。一部の場合、投与量の薬剤を放出するステップは、エアロゾルキャニスターの放出バルブを通して薬剤送達管に向けて製剤を放出することを含んでもよい。また、薬剤送達管の少なくとも一部を分離するステップは、放出オリフィスにおいて、又は放出オリフィスの下流において、薬剤送達管の少なくとも一部を密閉することを含んでもよい。さらに、製剤は、エアロゾルキャニスターの放出バルブを通して放出された後、分散する。
【0053】
別の実施例のように、エアロゾル送達ユニットの形態で、薬剤送達装置の操作の実施形態を説明する。この操作は、エアロゾルキャニスター放出バルブの出口から吸入路に向けて伸びる放出路と流体連結している吸入路を通して、少なくとも投与量のエアロゾル化物質を放出するステップと、吸入路、及びエアロゾル送達ユニットの外部にある環境から放出路を分離するため、放出路を密閉するステップとを含む。この方法はまた、吸入路から分離した放出路を有するエアロゾル送達ユニットを一時的に保管するステップと、吸入路を通して少なくとも別の投与量のエアロゾル化物質を放出するステップより前において、放出路と吸入路が流体連結するように、放出路を解放するステップとを含んでもよい。この方法はさらに、少なくとも、エアロゾル送達ユニットを一時的に保管するステップのとき、乾燥物質に向けて放出路を曝すステップを含んでもよい。
【0054】
本明細書において、実施形態が、放出路を一時的に密閉すること、及び乾燥物質に向けて放出路を曝すことの両方に適しているエアロゾル送達ユニットに関連して説明される一方、一部の実施形態が、この機能の一部、すなわち、吸入路の隣接部又は下流から放出路を切り離すことなく、乾燥物質に向けて放出路を曝すこと、又は乾燥物質に向けて密閉された放出路を曝すことなく、放出路を選択的に密閉することだけを含んでもよいことが分かる。上述に関して、乾燥物質は、放出路を密閉するための密閉構造を妨げることなく、キャニスターのバルブ軸の側面における開口部、放出オリフィス、バルブ軸ブロックの放出路、又はその組み合わせを通して、放出路と流体連結するように配置され得る。
【0055】
例えば、
図3A,3Bに示す乾燥構造は、可動密閉部材130を有することなく、用いられ得る。例えば、
図19~21Bは、(一般的に、定量吸入器又はMDIと呼称される)投与量のエアロゾル化物質を選択的に送達するためのエアロゾル送達ユニット700の別の実施形態を示す。このエアロゾル送達ユニット700は、吸入路の隣接部又は下流から放出路を切り離すための密閉部材を有することなく、乾燥物質に向けて放出路を曝すための構造と、関連する機能とを含む。
【0056】
図19~21Bを参照して、エアロゾル送達ユニット700は、ベースハウジング704と、該ベースハウジング704に受容されているキャニスター710とを含む。キャニスター710は、使用者による吸入に対して、投与量のエアロゾル化物質を選択的に放出するため、
図21Aに示す初期位置Iから、
図21Bに示す放出位置Dに向けて移動し得る。キャニスター710は、放出される物質を収容するキャニスターボディ716と、該キャニスターボディ716から伸びて、可動するバルブ軸714を含む出口バルブ部材712とを備える。このバルブ軸714は、キャニスターボディ716から、エアロゾル送達ユニット700内に設けられている放出オリフィス722に向けて伸びる放出路720の一部を形成する。この放出オリフィス722は、吸入路726につながる。エアロゾル化物質は、吸入時、使用者による吸入に対して、マウスピース開口部728を通して放出される前に、吸入路726を通過する。放出路720と吸入路726は、まとめて、薬剤送達管と呼称され得る。関連する当業者により理解されるように、バルブ軸714が、
図21Bに示すようなキャニスターボディ716に対して移動するとき、キャニスターボディ716に収容されている定量物質は、使用者による吸入路726を用いる吸入に対して、放出オリフィス722を通して放出される。
【0057】
図19を参照して、エアロゾル送達ユニット700はまた、投与量カウントの機能と、キャニスター710を押圧するためのユーザーインターフェースとをもたらすように、キャニスター710の上部に固定されている投与量カウンターアセンブリ707を含んでもよい。エアロゾル送達ユニット700はさらに、エアロゾル送達ユニット700を保管するとき、エアロゾル送達ユニット700のマウスピース開口部728を覆うためのキャップ705を含んでもよい。キャップ705は、ベースハウジング704から分離する、又はテザー706によりベースハウジング704に繋がり得る。このテザー706がベースハウジング704に繋がり続ける一方、カバー705はマウスピース開口部728から取り外され得る。
【0058】
図21A,21Bを参照して、エアロゾル送達ユニット700はまた、乾燥物質752を収容している乾燥チャンバー750を含む。この乾燥物質752は、少なくとも、エアロゾル送達ユニット700が収納形態にあり、エアロゾル化物質を能動的に放出していないとき、放出路720と流体連結している。例えば、
図21A,21Bに示す実施形態に従って、乾燥チャンバー750は、キャニスターボディ716の下端と、独立した乾燥ハウジング754と、キャニスター710の端部に繋がる軸密閉部756との間において、キャニスター710の端部に設けられている。乾燥物質752は、(
図20に示すような)半環形状で設けられて、キャニスター710のバルブ軸714が伸びる中心経路753を含んでもよい。軸密閉部756は、例えば、マルチショット射出成形を用いて、乾燥ハウジング754と一体的に形成されている環状密閉部であってもよい、又は乾燥ハウジング754に繋がる独立した密閉構成要素として設けられてもよい。一部の場合、軸密閉部756は、吸入時、キャニスター710が移動するとき、軸密閉部756が変形するにつれて変化する容量を有する乾燥チャンバー750を与えるように、バルブ軸714と乾燥ハウジング754との間に固定されているベローズ型密閉部として設けられ得る。別の場合、
図21A,21Bに示す実施形態のように、乾燥チャンバー750は固定された容量を有してもよい。
【0059】
図21Aから分かるように、乾燥チャンバー750内の乾燥物質752は、バルブ軸714の側面における開口部724を通して、放出路720と流体連結している。この開口部724は、吸入時、バルブ軸714が移動するとき、キャニスターボディ716に収容されている物質を放出オリフィス722に向けて通過させるために用いられる。この方法において、放出路720は、キャニスター710が初期位置Iにあるとき、例えば、エアロゾル送達ユニット700を保管するとき、乾燥物質752に向けて曝され続けている。一部の場合、乾燥物質は、放出される物質のキャニスターの実質的な全体製品寿命に対して用いる間、放出路を乾燥した状態(例えば、25%RH未満)に保つために十分であってもよい。
【0060】
有利になるように、乾燥ハウジング754は、ベースハウジング704から容易に取り外され得るカートリッジ760(
図20)を形成するように、キャニスター710の端部又はカラーに繋がり得る。この方法において、乾燥ハウジング754とキャニスター710は、枯渇したとき、キャニスター710を交換するため、及び/又は要求どおりに乾燥物質752を交換するため、ベースハウジング704から容易に取り外され得る。乾燥ハウジング754は、摩擦かみ合い又は締まりばめ構造を含む、弾性バンド、クリップ、戻り止め、又は他の締結装置若しくは締結技術を用いて、キャニスター710の端部又はカラーに繋がり得る。
図21A,21Bの実施形態において、キャニスター710の下端又はカラーに繋がるような乾燥チャンバー750を示す一方、別の実施形態において、乾燥チャンバーが、キャニスター710から独立したベースハウジング704に繋がる独立した乾燥ハウジングに設けられ得ること、乾燥チャンバーがベースハウジング自体に一体的に形成され得ること、又は乾燥チャンバーが、ベースハウジング704に取り付けられている独立した構成要素に設けられ得ることが分かる。また、乾燥物質は、ゲル形状、粉体形状、粒体形状、又は成形形状のような複数の異なる形状で設けられており、シリカ、活性炭、硫酸カルシウム、又は塩化カルシウムのような異なる物質を備えてもよい。
【0061】
図19~21Bの実施形態によれば、乾燥ハウジング754は、ベースハウジング704に設けられている軸ブロック732に係合するため、ベースハウジング704に取り付けられているカートリッジ760を形成するように、キャニスター710の端部又はカラーに繋がり得る。
図20の分解図において、カートリッジ760と軸ブロック732の構成要素のさらなる詳細を示す。
図20に示すように、乾燥ハウジング754は、キャニスター710の下端を受容するような大きさと形状である略円筒側壁を有するカップ形状構造を形成し得る。乾燥物質752は成形形状で設けられ得る。乾燥物質752は乾燥ハウジング754の下端に配置されるように構成され得る。乾燥ハウジング754は、乾燥ハウジング754内の乾燥物質752を接合すること、又は配置することを助けるため、1つ以上の位置決め又は結合機構を含んでもよい。乾燥物質752は、キャニスター710のバルブ軸714を受容するため、乾燥ハウジング754に設けられている軸密閉部756のバルブ軸開口部を妨げないような形状であってもよい。例えば、乾燥物質752は、バルブ軸714に対する中心経路753又は他の隙間を含む半環形状を有してもよい。一部の場合、例えば、
図19~21Bに示す実施形態において、乾燥物質752は、バルブ軸714を部分的に囲むような形状であり、バルブ軸714の末端を越えて伸び得る。乾燥ハウジング754と乾燥物質752は、対応する形状であり、それぞれ、バルブ軸714の末端を越えて伸び得る。この方法において、乾燥物質752は、乾燥チャンバー750を実質的に満たして、キャニスター710に収容されている物質(例えば、製剤)の耐用期間にわたって、少なくともバルブ軸714の経路から連続的に液体を取り除くことに適している相対的に大きな体積の乾燥物質を与え得る。
【0062】
図21A,21Bを参照して、キャニスター密閉部717は、キャニスター710と乾燥ハウジング754が共に繋がる場合、キャニスターボディ716と乾燥ハウジング754との間において、圧縮され得る弾性部材を与えるように、キャニスターボディ716周りに、例えば、キャニスターボディ716の下方ネック部周りに配置され得る。エアロゾル送達ユニット700が、完全に組み立てられて、放出路720以外における液体の上記乾燥チャンバー750への侵入を妨げている場合、キャニスター密閉部717は、乾燥チャンバー750を分離することを助けるように密閉位置を与えてもよい。同様の方法において、エアロゾル送達ユニット700が、完全に組み立てられて、液体の上記乾燥チャンバー750への侵入を妨げている場合、軸密閉部756は、乾燥チャンバー750を分離することを助けるように密閉位置を与えてもよい。この方法において、乾燥チャンバー750は、放出路720を除くと、外部環境から効果的に分離されている。この放出路720は、マウスピースキャップ705がベースハウジング704から取り外されるとき、吸入路726を通して、外部環境に向けて曝され得る。
【0063】
図21A,21Bの検討から分かるように、バルブ軸714が伸長位置にあるとき、バルブ軸714により形成されている放出路720の一部は、バルブ軸714の側面における開口部724を通して乾燥チャンバー752と流体連結している。一方、キャニスター710のバルブ軸714が完全に押圧されるとき、乾燥チャンバー752は、バルブ軸714により形成されている放出路720から一時的に分離されている。
【0064】
また、キャニスター700が乾燥ハウジング754に装着されている状態で、バルブ軸714は、ベースハウジング704に設けられているノズルブロック732に受容されるように、乾燥ハウジング754の下端から突出する。
図20の実施形態によれば、ノズルブロック732は、ベースハウジング704に繋がり、エアロゾル化物質を使用者に送達するための吸入路726とマウスピース開口部728を含むマウスピースユニット731に設けられ得る。図示するように、カートリッジ760が取り付けられるとき、乾燥物質752は、ノズルブロック732の放出オリフィス722より上方の位置から、放出オリフィス722より下方の位置まで伸びて、キャニスター710に収容されている物質(例えば、製剤)の耐用期間にわたって、少なくともバルブ軸714の経路から連続的に液体を取り除くことに適している相対的に大きな体積の乾燥物質を与えるように、乾燥ハウジング754内の乾燥チャンバー750を実質的に満たす。この方法において、実施形態は、吸入時、物質を放出した後、外部環境から放出路720を完全に分離していなくても、放出路720内の液体を取り除く、減少させる、又は最小化すること、及び液体に関連する汚染を取り除く、減少させる、又は最小化することに特に適している。
【0065】
さらに、上述の複数の実施形態の態様と特徴は、別の実施形態を提供するように組み合わせられ得る。本願が優先権を主要する、2017年10月9日に提出された米国特許仮出願62/569,901号、及び2018年3月7日に提出された米国特許仮出願62/639,911号は、本明細書の一部を構成するものとして援用される。実施形態の態様は、別の実施形態を提供するため、出願のコンセプトを用いることに必要であれば、修正され得る。これらの変更、又は別の変更が、上述の説明を踏まえて、実施形態に行われ得る。以下の請求項において、用語は、一般的に、明細書と請求項に開示されている特定の実施形態に請求項を限定するように解釈され、且つすべての均等の範囲に沿って、すべての考えられる実施形態を含むように解釈される。これらの請求項は、すべての均等の範囲に対して、権利がある。