(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】災害時情報管理システム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/00 20180101AFI20220523BHJP
【FI】
G16H50/00
(21)【出願番号】P 2020103482
(22)【出願日】2020-06-16
(62)【分割の表示】P 2017009155の分割
【原出願日】2017-01-23
【審査請求日】2020-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】319004663
【氏名又は名称】株式会社Smart119
(74)【代理人】
【識別番号】100205084
【氏名又は名称】吉浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】山尾 恭生
(72)【発明者】
【氏名】中田 孝明
(72)【発明者】
【氏名】布施 貴司
【審査官】鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-217449(JP,A)
【文献】特開2012-058962(JP,A)
【文献】特開2014-215640(JP,A)
【文献】高橋祐樹、ほか3名,2次トリアージを用いた傷病者情報管理システムの提案,情報処理学会研究報告 平成22年度(5) [CD-ROM],日本,一般社団法人情報処理学会,2011年02月15日,p.1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアージの現場で利用する災害時情報管理システムであって,
前記災害時情報管理システムは,
トリアージの現場にいる利用者が利用する利用者端末からの要求に応じて,傷病者の傷病者情報,生理学的情報,解剖学的情報,バイタルサイン情報のうちいずれか一以上をその利用者端末に表示させる傷病者情報表示処理部,を備えており,
前記傷病者情報として,トリアージの現場における前記傷病者の所在エリアを示す情報を含み,
前記傷病者情報表示処理部は,
前記トリアージの現場指揮本部にいる利用者が利用する利用者端末からの要求に応じて,前記傷病者の前記所在エリアを示す情報を検索し,
前記検索の結果に基づいて,前記所在エリアごとの傷病者の人数を含む情報を,その利用者端末に表示さ
せ,
前記利用者端末は位置情報検出装置を備えており,
前記トリアージの現場ではエリアに位置情報が設定されており,
前記災害時情報管理システムは,
前記利用者端末の前記位置情報検出装置で検出した位置情報を用いて,その利用者端末の利用者が情報の入力を行う傷病者の所在エリアを示す情報を更新する,
ことを特徴とする災害時情報管理システム。
【請求項2】
前記災害時情報管理システムは,
前記利用者の配置エリアの情報を用いて,前記利用者が情報の入力を行う傷病者の所在エリアを示す情報を更新する,
ことを特徴とする請求項1に記載の災害時情報管理システム。
【請求項3】
コンピュータを,
トリアージの現場にいる利用者が利用する利用者端末からの要求に応じて,傷病者の傷病者情報,生理学的情報,解剖学的情報,バイタルサイン情報のうちいずれか一以上をその利用者端末に表示させる傷病者情報表示処理部,として機能させる災害時情報管理プログラムであって,
前記傷病者情報として,トリアージの現場における前記傷病者の所在エリアを示す情報を含み,
前記傷病者情報表示処理部は,
前記トリアージの現場指揮本部にいる利用者が利用する利用者端末からの要求に応じて,前記傷病者の前記所在エリアを示す情報を検索し,
前記検索の結果に基づいて,前記所在エリアごとの傷病者の人数を含む情報を,その利用者端末に表示さ
せ,
前記利用者端末は位置情報検出装置を備えており,
前記トリアージの現場ではエリアに位置情報が設定されており,
前記災害時情報管理プログラムは,
前記利用者端末の前記位置情報検出装置で検出した位置情報を用いて,その利用者端末の利用者が情報の入力を行う傷病者の所在エリアを示す情報を更新する,
ことを特徴とする災害時情報管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,各種災害が発生した際の医療現場における傷病者情報などを管理するための災害時情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機事故などの大規模事故や大規模な自然災害など(以下,これらを総称して「各種災害」という)が発生した場合には,DMAT(Disaster Medical Assistance Team)と呼ばれる災害時派遣医療チームが,災害現場の傷病者の治療にあたる。この際には,傷病の度合いによって治療の優先度が決定され,優先度が高い傷病者から治療が行われる。このような治療方法は「トリアージ」と一般的に呼ばれている。
【0003】
図38にトリアージの一般的な手順を模式的に示す。トリアージでは,まず運ばれてきた傷病者がトリアージポストとよばれるテントなどで傷病の度合いが判定される(一次トリアージ)。この際に,トリアージタグと呼ばれる傷病の度合いを,「黒」(救命困難群),「赤」(重傷群),「黄」(中等傷群),「緑」(軽傷群)で示し,傷病者に取り付ける。また所定事項をトリアージタグに記入する。そして,各傷病度合いに応じた治療を行うテントに傷病者が搬送される。各テントでは傷病者に対する安定化処置が行われる(二次トリアージ)。この治療では,トリアージタグに記入された情報などを参考にしながら行われる。また,治療の結果,安定化した傷病者については搬送エリアでの取扱いとなり,搬送エリアから各病院に搬送される。さらに,これらの各テントとは別に災害現場の全体を管理する現場指揮本部があり,現場指揮本部は全体を統括している。なお,安定化した傷病者は治療を行うテントから搬送エリアに実際に移動するのではなく,傷病者情報のみが搬送エリアの取扱いとなるものであって,治療テントから搬送エリアへの物理的な移動は行われない。治療テントから搬送エリアへの移動とは,傷病者が搬送可能になり,搬送エリアの取扱いになったことを示す概念的なものである。また,各病院への搬送は,搬送エリアの取扱いとなった傷病者が実際にいる治療テントから行われる。
【0004】
従来の災害時の医療現場では,主に紙のトリアージタグと適宜,紙のカルテなどが用いられており,情報伝達には主に無線が利用されている。また,各傷病者の人数などの管理は,テントなどに設置されたホワイトボードに手書きで逐次,記入され,管理がなされている。
【0005】
このような災害現場では,一次トリアージ,二次トリアージ,搬送エリア,現場指揮本部の各所で情報の連携が正確に行われることが望まれる。しかしながら,従来では手書きおよび無線での情報のやりとりなどが基本なので,誤伝達が発生してしまう。また,トリアージタグに記入された情報は,複数の医師,看護師が記入,確認するが,多忙を極めていることもあり,字が読み取れない,あるいは誤って読み取る,といったことが発生する。そのため,情報の正確性が確保できない場合が発生する。
【0006】
そこで,たとえば特許文献1乃至特許文献7に記載のように,ICタグやデジタルペンなどの特殊な装置を用いたトリアージタグなどを利用することで,誤伝達の発生を防止する発明が開示されている。また特許文献8には,傷病者に救急車が必要か否かなどのトリアージの判断を行うことが可能なシステムが開示されている。さらに,厚生労働省は,災害の状況,各病院の受入可能状況などの情報の共有を行う広域災害救急医療情報システム(EMIS:Emergency Medical Information System)を運用している(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-282218号公報
【文献】国際公開WO2011/024880号
【文献】特開2011-48734号公報
【文献】特開2013-50894号公報
【文献】特開2014-215640号公報
【文献】特開2015-55996号公報
【文献】特開2015-185148号公報
【文献】特開2013-41479号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】厚生労働省,”広域災害救急医療情報システム”,<インターネット:URL:http://www.wds.emis.go.jp/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の特許文献1乃至特許文献7に記載の発明では,ICタグやデジタルペンなどの特殊な装置が必要となり,既存のトリアージタグを利用することができなくなる。また,特許文献8に記載の発明では,傷病者にすぐの治療が必要かのトリアージの判断を行うことはできるが,各テントでの情報の連携や,災害現場での医療活動の際の傷病者の管理までを行うことはできない。さらに,非特許文献1は広域の災害状況の把握には適しているが,実際の災害現場で使用するには不向きである。
【0010】
また,災害現場での医療活動を円滑,的確に遂行するためには,全体の傷病者の人数,各テントの傷病者の人数,隊員の配置状況などが管理されなければならないが,それを管理することは上述の各特許文献,非特許文献では行うことはできない。また,各テントの医師,看護師などは,ほかのテントの傷病者の状況を確認する必要があるが,それを確認することもできない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明者らは上記課題に鑑み,災害時情報管理システムを発明した。
【0012】
第1の発明は,トリアージの現場で利用する災害時情報管理システムであって,前記災害時情報管理システムは,トリアージの現場にいる利用者が利用する利用者端末からの要求に応じて,傷病者の傷病者情報,生理学的情報,解剖学的情報,バイタルサイン情報のうちいずれか一以上をその利用者端末に表示させる傷病者情報表示処理部,を備えており,前記傷病者情報として,トリアージの現場における前記傷病者の所在エリアを示す情報を含み,前記傷病者情報表示処理部は,前記トリアージの現場指揮本部にいる利用者が利用する利用者端末からの要求に応じて,前記傷病者の前記所在エリアを示す情報を検索し,前記検索の結果に基づいて,前記所在エリアごとの傷病者の人数を含む情報を,その利用者端末に表示させ,前記利用者端末は位置情報検出装置を備えており,前記トリアージの現場ではエリアに位置情報が設定されており,前記災害時情報管理システムは,前記利用者端末の前記位置情報検出装置で検出した位置情報を用いて,その利用者端末の利用者が情報の入力を行う傷病者の所在エリアを示す情報を更新する,災害時情報管理システムである。
【0013】
本発明によって,災害医療の現場と現場指揮本部とで情報を共有化することができる。すなわち,災害現場で治療にあたる医療従事者や支援員などは,傷病者の情報を適宜,閲覧することができ,また現場指揮本部で全体の管理を行う者は,傷病者のエリアごとの状況などを適宜、閲覧し,管理することができる。これによって,傷病者が移動等しても,適切な判断を現場,現場指揮本部のいずれでも行うことができる。また情報の誤伝達等も発生しなくなる。
また,傷病者の所在エリアは,本発明を用いることで自動的に更新することができる。
【0014】
上述の発明において,前記災害時情報管理システムは,前記利用者の配置エリアの情報を用いて,前記利用者が情報の入力を行う傷病者の所在エリアを示す情報を更新する,災害時情報管理システムのように構成することができる。
【0017】
第3の発明は,コンピュータを,トリアージの現場にいる利用者が利用する利用者端末からの要求に応じて,傷病者の傷病者情報,生理学的情報,解剖学的情報,バイタルサイン情報のうちいずれか一以上をその利用者端末に表示させる傷病者情報表示処理部,として機能させる災害時情報管理プログラムであって,前記傷病者情報として,トリアージの現場における前記傷病者の所在エリアを示す情報を含み,前記傷病者情報表示処理部は,前記トリアージの現場指揮本部にいる利用者が利用する利用者端末からの要求に応じて,前記傷病者の前記所在エリアを示す情報を検索し,前記検索の結果に基づいて,前記所在エリアごとの傷病者の人数を含む情報を,その利用者端末に表示させ,前記利用者端末は位置情報検出装置を備えており,前記トリアージの現場ではエリアに位置情報が設定されており,前記災害時情報管理プログラムは,前記利用者端末の前記位置情報検出装置で検出した位置情報を用いて,その利用者端末の利用者が情報の入力を行う傷病者の所在エリアを示す情報を更新する,災害時情報管理プログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の災害時情報管理システムを用いることによって,災害現場での医療活動の際に,各テントでの情報の連携を可能とせしめることによって,全体の傷病者の人数,各テントの傷病者の人数などの情報を適切に関することができる。また,それらを管理することで統計データとして自動的に集計することもできる。さらに,従来の,紙のトリアージタグをそのまま利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の災害時情報管理システムの全体の構成の一例を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の災害時情報管理システムで用いるコンピュータのハードウェア構成の一例を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の災害時情報管理システムの全体の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
【
図4】生理学的情報の入力受付処理の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
【
図5】解剖学的情報の入力受付処理の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
【
図6】ログイン画面の一例を模式的に示す図である。
【
図7】メインメニュー画面の一例を模式的に示す図である。
【
図8】傷病者登録画面の一例を模式的に示す図である。
【
図9】重複登録の表示画面の一例を模式的に示す図である。
【
図10】傷病者情報入力画面の一例を模式的に示す図である。
【
図11】傷病者の登録確認画面の一例を模式的に示す図である。
【
図12】傷病者の登録完了画面の一例を模式的に示す図である。
【
図13】気道評価,処置内容の入力画面の一例を模式的に示す図である。
【
図14】呼吸評価,処置内容の入力画面の一例を模式的に示す図である。
【
図15】循環評価,処置内容の入力画面の一例を模式的に示す図である。
【
図16】
図15の入力画面に「FAST施行」に関するポップアップ画面が表示された画面の一例を模式的に示す図である。
【
図17】
図15の入力画面に「FAST施行」の入力欄が設けられた画面の一例を模式的に示す図である。
【
図18】意識評価,処置内容の入力画面の一例を模式的に示す図である。
【
図19】生理学的情報の入力内容の確認画面の一例を模式的に示す図である。
【
図20】生理学的情報入力の完了画面の一例を模式的に示す図である。
【
図21】頭部の評価内容の入力画面の一例を模式的に示す図である。
【
図22】顔面の評価内容の入力画面の一例を模式的に示す図である。
【
図23】頚部の評価内容の入力画面の一例を模式的に示す図である。
【
図24】胸部の評価内容の入力画面の一例を模式的に示す図である。
【
図25】腹部の評価内容の入力画面の一例を模式的に示す図である。
【
図26】四肢の評価内容の入力画面の一例を模式的に示す図である。
【
図27】体表の評価内容の入力画面の一例を模式的に示す図である。
【
図28】
図27の入力画面において,「熱傷深度」と「熱傷面積」に関するポップアップ画面が表示された画面の一例を模式的に示す図である。
【
図29】処置内容の入力画面の一例を模式的に示す図である。
【
図30】解剖学的情報の入力内容の確認画面の一例を模式的に示す図である。
【
図31】解剖学的情報入力の完了画面の一例を模式的に示す図である。
【
図32】バイタルサイン情報の入力画面の一例を模式的に示す図である。
【
図33】傷病者の検索を行う画面の一例を模式的に示す図である。
【
図34】傷病者情報記憶部の一例を模式的に示す図である。
【
図35】実施例2における災害時情報管理システムの全体の構成の一例を模式的に示す図である。
【
図36】利用者情報記憶部の一例を模式的に示す図である。
【
図37】
図13の入力画面において,音声入力を用いる場合の画面の一例を模式的に示す図である。
【
図38】一般的なトリアージの手順を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の災害時情報管理システム1の一例を
図1に模式的に示す。本発明の災害時情報管理システム1は,本システムを利用する企業や組織,団体(以下,「組織等」という)が利用するサーバやパーソナルコンピュータ,可搬型通信端末などの各種のコンピュータで起動する。可搬型通信端末には,タブレット型コンピュータ,スマートフォンなどが含まれる。
図2にコンピュータのハードウェア構成の一例を示す。コンピュータは,プログラムの演算処理を実行するCPUなどの演算装置80と,情報を記憶するRAMやハードディスクなどの記憶装置81と,ディスプレイなどの表示装置82と,キーボードやポインティングデバイス(マウスやテンキーなど)などの入力装置84と,演算装置80の処理結果や記憶装置81に記憶する情報をインターネットやLANなどのネットワークを介して送受信する通信装置83とを有している。表示装置82としてタッチパネルを用いている場合には,表示装置82の機能と入力装置84の機能とを兼ね備えている。
【0021】
災害時情報管理システム1は,災害現場などでトリアージが行われる場合に利用されるコンピュータシステムであって,一次トリアージが行われるトリアージポスト,トリアージポストでの傷病の程度に基づいて振り分けられた傷病度合いに応じ,二次トリアージおよび安定化処置を行う各治療テント,安定化が完了した傷病者の搬送先となる病院,手段,順番を決定するための搬送エリア,トリアージポスト,治療テント,搬送エリアをそれぞれ指揮,管理する現場指揮本部などの各エリアにいる者からアクセスを受け付けて利用される。トリアージポスト,治療テント,搬送エリア,現場指揮本部などに配置された医師や看護師などの医療従事者やその支援員などを総称して利用者という。利用者が利用,操作するコンピュータを利用者端末3という。
【0022】
災害時情報管理システム1は,制御サーバ2と,各エリアで利用されるコンピュータ(利用者端末3)などで構成されており,制御サーバ2と各エリアで利用されるコンピュータは,それぞれ有線または無線によって情報の送受信が可能である。
【0023】
図1の災害時情報管理システム1では制御サーバ2が一台のコンピュータで実現される場合を示したが,複数台のコンピュータにその機能が分散配置され,実現されてもよい。また,本発明における各手段は,その機能が論理的に区別されているのみであって,物理上あるいは事実上は同一の領域を為していてもよい。
【0024】
災害時情報管理システム1は,制御サーバ2と,各エリアで利用されるコンピュータ(利用者端末3)とで構成されている。各エリアで用いるコンピュータ(利用者端末3)としては,トリアージポストで用いられるトリアージポスト端末31,傷病度合いに応じた各治療テントで用いられる治療テント端末32,搬送エリアで用いられる搬送エリア端末33,現場指揮本部で用いられる現場指揮本部端末34がある。これらの各端末は,たとえば可搬型通信端末であり,治療にあたる医師や看護師などの医療従事者のほか,医療従事者を支援する者(支援員)が操作する。また,各エリアで用いるコンピュータとしては,一台ではなく複数台であってもよく,たとえば医療従事者や支援者がそれぞれ利用していてもよく,また,各自の可搬型通信端末を用いてもよい。
【0025】
災害時情報管理システム1の制御サーバ2には,傷病者情報入力受付処理部21と生理学的情報入力受付処理部22と解剖学的情報入力受付処理部23とバイタルサイン情報入力受付処理部24と傷病者情報記憶部25と傷病者情報表示処理部26とを備える。
【0026】
傷病者情報入力受付処理部21は,災害現場から搬送された傷病者に関する情報の入力を利用者端末3から受け付ける。傷病者に関する情報(傷病者情報)としては,当該傷病者に付されたトリアージタグを識別するトリアージタグID(トリアージタグ識別情報),傷病度合い(トリアージタグの色),その傷病者の所在するエリア,ベッドを識別するベッド識別情報,災害弱者(児童,妊婦,高齢者,障害者など)であることを示す情報,氏名,生年月日,年齢または年代,性別,電話番号,住所など,当該傷病者の属性に関する情報の入力を受け付ける。傷病者情報入力受付処理部21で受け付けた傷病者情報は,後述する傷病者情報記憶部25に記憶する。傷病者情報の入力は,たとえば,トリアージポストで行われる場合にはトリアージポストにいる利用者である医師や看護師などの医療従事者やその支援員が利用するトリアージポスト端末31から受け付け,各治療エリアで行われる場合には,各治療テントにいる利用者である医師や看護師などの医療従事者やその支援員が利用する治療テント端末32から受け付ける。
【0027】
生理学的情報入力受付処理部22は,傷病者に対する生理学的評価とその処置の情報の入力を利用者端末3から受け付ける。生理学的評価とは,傷病者の生理的機能や生理学的な評価を行うものであり,たとえば気道,呼吸,循環,意識などについての評価がある。生理学的情報入力受付処理部22で受け付けた評価および処置の情報は,後述する傷病者情報記憶部25に記憶する。生理学的情報の入力は,たとえば,各治療エリアで行われる場合には,各治療テントにいる利用者である医師や看護師などの医療従事者やその支援員が利用する治療テント端末32から受け付ける。
【0028】
解剖学的情報入力受付処理部23は,傷病者に対する解剖学的評価とその処置の情報の入力を利用者端末3から受け付ける。解剖学的評価とは,傷病者に対する解剖学的評価とその処置の情報の入力を受け付ける。解剖学的評価とは,傷病者の解剖学的な評価を行うものであり,たとえば頭部,顔面,頚部,胸部,腹部,四肢,体表などについての評価がある。解剖学的情報入力受付処理部23で受け付けた評価および処置の情報は,後述する傷病者情報記憶部25に記憶する。解剖学的情報の入力は,たとえば,各治療エリアで行われる場合には,各治療テントにいる利用者である医師や看護師などの医療従事者やその支援員が利用する治療テント端末32から受け付ける。
【0029】
なお,二次トリアージにおける生理学的評価,解剖学的評価は,たとえばPAT法による一例を説明したが,他の方法による傷病者の傷病に関する情報の入力を受け付けてもよい。
【0030】
バイタルサイン情報入力受付処理部24は,傷病者のバイタルサインに関する情報の入力を利用者端末3から受け付ける。バイタルサインとは,傷病者の生命に関するもっとも基本的な情報である,心拍数,呼吸数,血圧などに関する情報である。たとえば,酸素マスクの有無,呼吸数,血圧,脈拍数,SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度),瞳孔所見,対光反射,意識レベルなどに関する情報がある。呼吸数,血圧,脈拍数,SpO2など医療機器によって継続的に測定できる数値は,医療従事者や支援員などによる利用者端末3への入力のほか,傷病者に取り付けた医療機器から利用者端末3に有線,無線を通じて自動的に取り込むように構成することもできる。
【0031】
バイタルサイン情報入力受付処理部24で受け付けたバイタルサインに関する情報は,後述する傷病者情報記憶部25に記憶する。バイタルサイン情報の入力は,たとえば,各治療エリアで行われる場合には,各治療テントにいる利用者である医師や看護師などの医療従事者やその支援員が利用する治療テント端末32から受け付ける。
【0032】
生理学的情報,解剖学的情報,バイタルサイン情報の入力は,同一の利用者が入力操作を行ってもよいし,複数の利用者が自らが担当している範囲で入力を行ってもよい。
【0033】
傷病者情報記憶部25は,傷病者情報やその傷病者に対する生理学的情報,解剖学的情報,バイタルサイン情報などを対応付けて記憶する。傷病者情報記憶部25の一例を
図34に示す。
【0034】
傷病者情報表示処理部26は,傷病者情報記憶部25に記憶する傷病者情報,生理学的情報,解剖学的情報,バイタルサイン情報など,の各種情報の表示要求を利用者端末3から受け付け,それに対応する情報を傷病者情報記憶部25から検索して利用者端末3に表示させる。また,利用者端末3から検索条件を受け付け,それに対応する情報を特定し,利用者端末3に表示させる。
【0035】
たとえばトリアージポストにいる医療従事者や支援員である利用者が傷病者に関する各種情報や各エリアの情報を検索する場合には,トリアージポスト端末31を操作して上記表示要求を制御サーバ2に送る。また,各治療テントにいる医療従事者や支援員である利用者が傷病者に関する各種情報や各エリアの情報を検索する場合には,治療テント端末32を操作して上記表示要求を制御サーバ2に送る。さらに,搬送エリアにいる医療従事者や支援員である利用者が傷病者に関する各種情報や各エリアの情報を検索する場合には,搬送エリア端末33を操作して上記表示要求を制御サーバ2に送る。加えて,現場指揮本部にいる医療従事者や支援員である利用者が傷病者に関する各種情報や各エリアの情報を検索する場合には,現場指揮本部端末34を操作して上記表示要求を制御サーバ2に送る。
【0036】
傷病者情報,生理学的情報,解剖学的情報,バイタルサイン情報などについては,同一の医療従事者や支援員である利用者がすべてを入力せずとも,異なる利用者が行ってもよい。また異なるタイミングで情報の入力や更新を行ってもよい。
【実施例1】
【0037】
つぎに本発明の災害時情報管理システム1を用いた処理プロセスの一例を
図3乃至
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0038】
本発明の災害時情報管理システム1を利用する者,たとえば医療従事者やその支援員などの利用者は,トリアージポスト,各治療テント,搬送エリア,現場指揮本部などの各エリアに配置されており,それぞれが利用する可搬型通信端末などの利用者端末3から所定の方法により,制御サーバ2にアクセスをする。そして,
図6に示すログイン画面を表示させ,あらかじめ登録されている電話番号などの利用者を識別する識別情報,パスワードなどの認証情報を利用者端末3で入力し,その情報を制御サーバ2に送り認証処理を実行する。
【0039】
制御サーバ2で認証処理が正常に終了すると,
図7に示すメインメニュー画面を各利用者端末3で表示させる。この認証処理が終了することによって,各利用者は災害時情報管理システム1を利用することが可能となる。
【0040】
たとえば,治療テントに配置された医療従事者や支援員などの利用者は,その操作する利用者端末3である治療テント端末32にメインメニュー画面(
図7)を表示させ,メインメニュー画面における「傷病者登録」のボタンを押下することで,
図8に示す傷病者登録画面を表示させて,傷病者情報の登録処理を開始する(S100)。
【0041】
そして各治療テントに配置された利用者は,トリアージポストから一次トリアージによって搬送されてきた傷病者を受け入れると,当該傷病者に割り当てられたトリアージタグの識別情報(トリアージタグID)を,治療テント端末32に表示する傷病者登録画面に入力し,「確認」ボタンを押下する。これによって,傷病者の登録要求がトリアージタグIDとともに治療テント端末32から制御サーバ2に送られ,制御サーバ2の傷病者情報入力受付処理部21で受け付ける。傷病者情報入力受付処理部21で登録要求とトリアージタグIDとを受け付けると,傷病者情報入力受付処理部21では,トリアージタグIDに基づいて傷病者情報記憶部25を検索し,同一のトリアージタグIDがあるかを判定する。なお,トリアージタグIDとしては,紙媒体のトリアージタグに記載されている識別情報を用いればよい。
【0042】
同一のトリアージタグIDがあると判定した場合には,傷病者情報入力受付処理部21は,当該トリアージタグIDに対応付けられた傷病者に関する情報を抽出して,
図9に示す重複登録の表示画面を治療テント端末32に表示させる。かかる画面が表示されることによって,トリアージタグの重複登録であることを利用者は認識することができる。
【0043】
そして同一のトリアージタグIDが存在しない場合には,傷病者情報入力受付処理部21は,傷病者情報記憶部25にトリアージタグIDを追加して,新規の傷病者情報の項目を追加可能とする。
【0044】
また,傷病者情報入力受付処理部21は,
図10に示す傷病者情報入力画面を治療テント端末32に表示させる。傷病者情報入力画面は,トリアージタグに示された傷病度合いを示すタグの色の情報,その傷病者の所在エリア,ベッド識別情報,災害弱者であるかを示す情報,氏名,生年月日,年齢や年代,性別,住所など当該傷病者属性情報など,傷病者情報の入力が可能な画面であって,医療従事者や支援員などの利用者は分かる範囲で情報の入力を行う。なお,分からない情報については,「不明」を選択することで,「不明」の情報が登録される。また,当該傷病者を識別可能とするため,「写真撮影」のボタンを押下することで,治療テント端末32に備えられた撮像装置が起動し,当該傷病者を撮像可能とする。撮像された傷病者の写真情報(画像情報)は,属性情報の一種として取り扱われる。ここで傷病者を撮像可能とすることによって,傷病の程度がひどくても写真によって傷病者を識別することが可能となる。撮像された傷病者の写真情報(画像情報)は制御サーバ2の傷病者情報記憶部25に記憶され,各利用者端末3から画像検索が可能となる。たとえば,傷病者が意識不明で自らの氏名を伝えることができない場合においても,家族などから提供された傷病者の写真情報(画像情報)を利用者端末3からアップすることによって,AI技術を応用した画像認識プログラムによって,アップされた写真情報(画像情報)と傷病者の写真情報(画像情報)とを比較して,類似度順に表示することが可能となる。また,傷病の程度がひどくても健常時の写真情報(画像情報)との特徴を見いだし,検索可能となる。なお,アップされた写真情報と傷病者の写真情報との比較については,たとえばそれぞれの写真情報に写っている顔の特徴点を抽出し,それらの特徴点の位置や距離などを比較することで類似度の判定を行う方法などを用いることができる。
【0045】
傷病者情報入力画面に入力された画像情報を含む傷病者情報は,「確認」が押下されることで,治療テント端末32から制御サーバ2に送られ,傷病者情報入力受付処理部21は,それらの情報を一時的に記憶する。また
図11に示す傷病者の登録確認画面を治療テント端末32に表示させる。
図11の傷病者の登録確認画面において,「登録」が押下されることで,治療テント端末32から傷病者情報の登録要求が利用者端末3から傷病者情報入力受付処理部21に送られ,それを受け付けた傷病者情報入力受付処理部21は,一時的に記憶した傷病者情報をトリアージタグIDに対応付けて傷病者情報記憶部25に記憶させる。これによって傷病者情報記憶部25に,トリアージタグIDに対応付けて傷病者情報が記憶され,登録処理が実行される。そして登録が完了すると,傷病者情報入力受付処理部21は,
図12に示す登録完了の画面を治療テント端末32で表示させる。
【0046】
なお,傷病者情報の登録処理は,トリアージポストで行われてもよいし,各治療テントで行われてもよい。
【0047】
以上のようにして傷病者情報が登録された後,治療テントに搬送されている傷病者に対して,生理学的情報,解剖学的情報の入力が行われ,それらの情報を治療テント端末32から制御サーバ2の生理学的情報入力受付処理部22,解剖学的情報入力受付処理部23が受け付けて,傷病者情報記憶部25に記憶させる(S200,S300)。生理学的情報の入力受付処理,解剖学的情報の入力受付処理を,以下,説明する。
【0048】
まず生理学的情報の入力受付処理を説明する。生理学的情報の入力を行う医療従事者またはその支援員は,たとえば
図12に示す登録完了の画面から,「プライマリー・サーベイを開始する」を押下することで,生理学的情報の入力処理の開始要求が治療テント端末32から制御サーバ2に送られ,それを受け付けた制御サーバ2の生理学的情報入力受付処理部22は,
図13に示す気道評価,処置内容の入力画面を治療テント端末32において表示させる。すなわち,利用者は治療テント端末32において,気道評価として,「窒息」,「顔面・頚部外傷」,「気道熱傷」,「異常なし」などの傷病者の気道に対する評価のいずれかを選択し,または「その他」としてテキスト入力を行い,また気道処置として,「エアウェイ」,「気管挿管」,「外科的気道確保」などの気道に対する処置内容のいずれかを選択し,または「その他」としてテキスト入力を行う。そして「決定」が押下されるなどの所定の操作がされることで,入力された情報およびトリアージタグIDが治療テント端末32から生理学的情報入力受付処理部22に送られ,それを受け付けた生理学的情報入力受付処理部22では,トリアージタグIDに対応付けて一時的に記憶する(S210)。
【0049】
また生理学的情報入力受付処理部22は,
図14に示す呼吸評価,処置内容の入力画面を治療テント端末32で表示させる。そして,利用者は治療テント端末32において,呼吸評価として,「緊張性気胸」,「開放性気胸」,「フレイルチェスト」,「腹式呼吸」,「異常なし」などの傷病者の呼吸に対する評価のいずれかを選択し,または「その他」としてテキスト入力を行い,また呼吸処置として「気道確保」,「胸腔ドレーン」,「三点テーピング」,「外固定」,「内固定」などの呼吸に対する処置内容のいずれかを選択し,または「その他」としてテキスト入力を行う。そして「決定」が押下されるなどの所定の操作がされることで,入力された情報およびトリアージタグIDが治療テント端末32から生理学的情報入力受付処理部22に送られ,それを受け付けた生理学的情報入力受付処理部22では,トリアージタグIDに対応付けて一時的に記憶する(S220)。
【0050】
つぎに生理学的情報入力受付処理部22は,
図15に示す循環評価,処置内容の入力画面を治療テント端末32で表示させる。そして,利用者は治療テント端末32において,循環評価として,「骨盤骨折」,「四肢外傷」,「穿通性外傷」,「腹腔内出血」,「大量血胸」,「心タンポナーデ」,「異常なし」などの傷病者の循環に対する評価のいずれかを選択し,または「その他」としてテキスト入力を行い,また循環処置として「気管挿管」,「輸液」,「胸腔ドレーン」,「心嚢穿刺」,「心嚢開窓」,「サムスリング」,「異物固定」,「シーネ固定」,「ショックパンツ」などの循環に対する処置内容のいずれかを選択する。
【0051】
なお,「胸腔内出血」,「大量血胸」,「心タンポナーデ」が選択された場合には,
図16に示すようにポップアップ画面を表示し,「FAST施行」をしたかの入力を受け付ける。「はい」の選択がされた場合には,
図17に示すように,
図15に示す画面に「FAST施行」についての入力欄を表示させ,その入力を受け付ける。すなわち,「右胸腔」,「左胸腔」,「心のう液」,「モリソン窩」,「脾周囲」,「ダグラス窩」,「異常なし」などのFAST施行についての選択を受け付ける。
【0052】
そして所定の操作がされることで,入力された情報およびトリアージタグIDが治療テント端末32から生理学的情報入力受付処理部22に送られ,それを受け付けた生理学的情報入力受付処理部22では,トリアージタグIDに対応付けて一時的に記憶する(S230)。
【0053】
つぎに生理学的情報入力受付処理部22は,
図18に示す意識評価,処置内容の入力画面を治療テント端末32で表示させる。そして利用者は治療テント端末32において,意識評価として「頭部外傷」,「異常なし」などの傷病者の意識に対する評価のいずれかを選択し,または「その他」としてテキスト入力を行い,また意識処置として「気管挿管」,「酸素投与」などの処置内容のいずれかを選択し,または「その他」としてテキスト入力を行う。そして「決定」が押下されるなどの所定の操作がされることで,入力された情報およびトリアージタグIDが治療テント端末32から生理学的情報入力受付処理部22に送られ,それを受け付けた生理学的情報入力受付処理部22では,トリアージタグIDに対応付けて一時的に記憶する(S240)。
【0054】
なお,気道,呼吸,循環,意識についてはいずれの順番で入力が行われてもよい。
【0055】
そして気道,呼吸,循環,意識の各生理学的情報の入力が行われると生理学的情報入力受付処理部22は,一時的に記憶した各生理学的情報に基づいて,
図19に示す生理学的情報の入力内容の確認画面を治療テント端末32に表示させ,入力内容の確認を促す(S250)。なお,後述するようにバイタルサイン情報入力受付処理部24でバイタルサイン情報を受け付けている場合には,バイタル情報入力受付処理部で一時的に記憶したバイタルサイン情報も
図19に示す入力内容の確認画面に含めて表示をさせる。
【0056】
もし入力内容に誤りがある場合には,「修正」が押下されることで,生理学的情報入力受付処理部22は,対応する画面を治療テント端末32で表示させて修正する情報の入力を受け付ける。また,入力内容に誤りがなく,そのまま登録をする場合には「完了」が押下されることで,生理学的情報入力受付処理部22で一時的に記憶した生理学的情報の登録要求が治療テント端末32から生理学的情報入力受付処理部22に送られ,それを受け付けた生理学的情報入力受付処理部22では,トリアージタグIDに基づいて,傷病者情報記憶部25に記憶する。
【0057】
生理学的情報入力受付処理部22が生理学的情報を傷病者情報記憶部25に記憶させると,
図20に示すように,生理学的情報入力の完了画面を治療テント端末32に表示させ,次の処理,とくに解剖学的情報の入力を行うよう促す(S260)。そして
図20の完了画面において,「セカンダリー・サーベイを開始する」が押下されると,解剖学的情報の入力処理の開始要求が治療テント端末32から制御サーバ2に送られ,それを受け付けた制御サーバ2の解剖学的情報入力受付処理部23は,解剖学的情報入力受付処理部23における解剖学的情報の入力処理を開始させる(S300)。
【0058】
すなわち,
図20の完了画面において,「セカンダリー・サーベイを開始する」が押下されると,解剖学的情報入力受付処理部23は,
図21に示す頭部の評価内容の入力画面を治療テント端末32に表示させる。そして利用者は治療テント端末32において,頭部評価として,「裂傷」,「挫創」,「頭蓋骨骨折」,「異常なし」などの傷病者の頭部に対する評価のいずれかを選択し,または「その他」としてテキスト入力を行う。そして「決定」が押下されるなどの所定の操作がされることで,入力された情報およびトリアージタグIDが治療テント端末32から解剖学的情報入力受付処理部23に送られ,それを受け付けた解剖学的情報入力受付処理部23では,トリアージタグIDに対応付けて一時的に記憶する(S310)。
【0059】
つぎに,解剖学的情報入力受付処理部23は,
図22に示す顔面の評価内容の入力画面を治療テント端末32で表示させる。そして利用者は治療テント端末32において,顔面評価として「パンダ目徴候」,「バトルサイン」,「高度な損傷」,「髄液漏」,「異常なし」などの傷病者の顔面に対する評価のいずれかを選択し,または「その他」としてテキスト入力を行う。そして「決定」が押下されるなどの所定の操作がされることで,入力された情報およびトリアージタグIDが治療テント端末32から解剖学的情報入力受付処理部23に送られ,それを受け付けた解剖学的情報入力受付処理部23では,トリアージタグIDに対応付けて一時的に記憶する(S320)。
【0060】
S320の処理の後,解剖学的情報入力受付処理部23は,
図23に示す頚部の評価内容の入力画面を治療テント端末32で表示させる。そして利用者は治療テント端末32において,頚部評価として「皮下気腫」,「頸動脈怒張」,「気管変異」,「高度な損傷」,「異常なし」などの傷病者の頚部に対する評価のいずれかを選択し,または「その他」としてテキスト入力を行う。そして「決定」が押下されるなどの所定の操作がされることで,入力された情報およびトリアージタグIDが治療テント端末32から解剖学的情報入力受付処理部23に送られ,それを受け付けた解剖学的情報入力受付処理部23では,トリアージタグIDに対応付けて一時的に記憶する(S330)。
【0061】
S330の処理の後,解剖学的情報入力受付処理部23は,
図24に示す胸部の評価内容の入力画面を治療テント端末32で表示させる。そして利用者は治療テント端末32において,胸部評価として「皮下気腫」,「シーソー呼吸」,「異常なし」などの傷病者の胸部に対する評価のいずれかを選択し,または「その他」としてテキスト入力を行う。そして「決定」が押下されるなどの所定の操作がされることで,入力された情報およびトリアージタグIDが治療テント端末32から解剖学的情報入力受付処理部23に送られ,それを受け付けた解剖学的情報入力受付処理部23では,トリアージタグIDに対応付けて一時的に記憶する(S340)。
【0062】
S340の処理の後,解剖学的情報入力受付処理部23は,
図25に示す腹部の評価内容の入力画面を治療テント端末32で表示させる。そして腹部評価として「圧痛」,「筋性防御」,「反張痛」,「膨隆」,「異常なし」などの傷病者の腹部に対する評価のいずれかを選択し,または「その他」としてテキスト入力を行う。そして「決定」が押下されるなどの所定の操作がされることで,入力された情報およびトリアージタグIDが治療テント端末32から解剖学的情報入力受付処理部23に送られ,それを受け付けた解剖学的情報入力受付処理部23では,トリアージタグIDに対応付けて一時的に記憶する(S350)。
【0063】
S350の処理の後,解剖学的情報入力受付処理部23は,
図26に示す四肢の評価内容の入力画面を治療テント端末32で表示させる。そして四肢評価として「クラッシュ症候群」の有無,骨盤の各部位に対する「骨盤動揺」,左右の脚の「下肢長差」,四肢の各部位に対する「轢断」,四肢の各部位に対する「骨折」,四肢の各部位に対する「麻痺」などの傷病者の四肢に対する評価のいずれかを選択し,または「その他」としてテキスト入力を行う。そして「決定」が押下されるなどの所定の操作がされることで,入力された情報およびトリアージタグIDが治療テント端末32から解剖学的情報入力受付処理部23に送られ,それを受け付けた解剖学的情報入力受付処理部23では,トリアージタグIDに対応付けて一時的に記憶する(S360)。
【0064】
S360の処理の後,解剖学的情報入力受付処理部23は,
図27に示す体表の評価内容の入力画面を治療テント端末32で表示させる。そして体表評価として「長時間の圧挫」がある部位,「熱傷」がある部位とその程度などの傷病者の体表に対する評価のいずれかを選択し,または「その他」としてテキスト入力を行う。とくに,「熱傷」に対する評価を行う場合,熱傷のある箇所として,模式的に表示されている人体の頭部,胸部前,胸部後,陰部,左上肢,右上肢,左下肢,右下肢などの領域の選択を受け付けることで,
図28に示すように,「熱傷深度」と「熱傷面積」の入力を行うポップアップ画面を表示させ,その入力を受け付ける。このようにして,「圧挫」および「熱傷」などの体表評価内容の入力を受け付けて,「決定」が押下されるなどの所定の操作がされることで,入力された情報およびトリアージタグIDが治療テント端末32から解剖学的情報入力受付処理部23に送られ,それを受け付けた解剖学的情報入力受付処理部23では,トリアージタグIDに対応付けて一時的に記憶する(S370)。
【0065】
S310乃至S370の各画面で解剖学的情報の評価の入力を受け付けると,
図29に示す処置内容の入力画面を治療テント端末32で表示させる。そして処置内容として,「全脊柱固定」,「ネックカラー」,「輸液」,「固定」,「圧迫止血」,「熱傷処置」,「NG挿入」,「バルン挿入」などのいずれかを選択し,または「その他」としてテキスト入力を行う。そして「決定」が押下されるなどの所定の操作がされることで,入力された情報およびトリアージタグIDが治療テント端末32から解剖学的情報入力受付処理部23に送られ,それを受け付けた解剖学的情報入力受付処理部23では,トリアージタグIDに対応付けて一時的に記憶する(S380)。
【0066】
なお,頭部,顔面,頚部,胸部,腹部,四肢,体表の各評価および処置内容については,いずれの順番で入力が行われてもよい。
【0067】
そして頭部,顔面,頚部,胸部,腹部,四肢,体表の各評価および処置内容の解剖学的情報の入力が行われると解剖学的情報入力受付処理部23は,一時的に記憶した解剖学的情報に基づいて,
図30に示す解剖学的情報の入力内容の確認画面を治療テント端末32に表示させ,入力内容の確認を促す(S390)。
【0068】
もし入力内容に誤りがある場合には,「修正」が押下されることで,解剖学的情報入力受付処理部23は,対応する画面を治療テント端末32で表示させて修正する情報の入力を受け付ける。また,入力内容に誤りがなく,そのまま登録をする場合には「完了」が押下されることで,解剖学的情報入力受付処理部23で一時的に記憶した解剖学的情報の登録要求が治療テント端末32から解剖学的情報入力受付処理部23に送られ,それを受け付けた解剖学的情報入力受付処理部23では,トリアージタグIDに基づいて,傷病者情報記憶部25に記憶する。
【0069】
解剖学的情報入力受付処理部23が解剖学的情報を傷病者情報記憶部25に記憶させると,
図31に示すように,解剖学的情報入力の完了画面を治療テント端末32に表示させる(S400)。
【0070】
解剖学的情報の入力のあと,または,生理学的情報の入力受付処理,解剖学的情報の入力受付処理の各画面における「バイタルサイン入力」のボタンが押下されることで,治療テント端末32からバイタルサイン情報の入力要求が制御サーバ2に送られる。そして制御サーバ2のバイタルサイン情報入力受付処理部24はバイタルサイン情報の入力要求を受け付けると,
図32に示すバイタルサイン情報の入力画面を治療テント端末32で表示させる。そして利用者は治療テント端末32において,酸素マスクの有無,呼吸数,血圧(最高,最低,測定不能),脈拍数,SpO2,瞳孔所見,対光反射,意識レベルについてのバイタルサイン情報の入力を行う。「保存」が押下されることで,バイタルサイン情報入力受付処理部24は,各バイタルサイン情報の登録要求が治療テント端末32からバイタルサイン情報入力受付処理部24に送られ,それを受け付けたバイタルサイン情報入力受付処理部24では,トリアージタグIDに基づいて,バイタルサイン情報を傷病者情報記憶部25に記憶させる(S500)。
【0071】
以上のような各処理を実行することで,傷病者情報,生理学的情報,解剖学的情報がそれぞれ対応付けられて,傷病者情報記憶部25に記憶されることとなる。なお,各情報の入力の際にはその情報の入力日時,入力者の識別情報(たとえば氏名など)があわせて自動的に記憶されるとよい。
【0072】
傷病者に関する情報の閲覧を所望する利用者,たとえばあらたな傷病者の治療にあたるトリアージポスト,治療テント,搬送エリアにいる医師や看護師などの医療従事者やその支援員などの利用者は,トリアージポスト端末31,治療テント端末32,搬送エリア端末33などを操作して,たとえば
図7に示すメインメニュー画面を表示させる。そして,メインメニュー画面から「傷病者検索」を押下することで,傷病者の検索要求がトリアージポスト端末31,治療テント端末32または搬送エリア端末33などの利用者端末3から制御サーバ2に送られる。制御サーバ2の傷病者情報表示処理部26は,
図33に示す傷病者の検索を行う画面をトリアージポスト端末31,治療テント端末32または搬送エリア端末33に表示させ,そこに,たとえばトリアージタグIDなどを入力する,あるいは傷病者の健常時の写真情報(画像情報)をアップロードすることで,対応する傷病者の各種情報の表示要求をトリアージポスト端末31,治療テント端末32または搬送エリア端末33から制御サーバ2に送る。制御サーバ2の傷病者情報表示処理部26では,傷病者の情報の表示要求を受け付けると,トリアージタグIDに基づいて傷病者情報記憶部25を検索し,該当するトリアージタグIDに対応する傷病者情報,生理学的情報,解剖学的情報,バイタルサイン情報などを抽出し,それらを表示要求を行った利用者端末3に送る。このような操作によって,あらたな傷病者の治療にあたるトリアージポスト,治療テント,搬送エリアにいる医師や看護師などの医療従事者やその支援員などの利用者は,トリアージポスト端末31,治療テント端末32または搬送エリア端末33で,所望の傷病者の各種情報を適宜,閲覧することができる。
【0073】
傷病者情報記憶部25には,当該傷病者が現在,どのエリアにいるかを示す情報を記憶しているとよい。たとえば,エリアを示す情報として,「トリアージポスト」,「治療テント(黒)」,「治療テント(赤)」,「治療テント(黄)」,「治療テント(緑)」,「搬送エリア」,「搬送済」などがある。また搬送済に加え,どの病院に搬送したかを示す,搬送先の病院を識別する病院名などの識別情報を記憶していてもよい。傷病者の所在エリアを示す情報は,当該傷病者のエリア間の搬送を行う者が入力を行う。所在エリアの変更を行った場合,その変更の入力をした入力日時,変更の入力をした利用者の識別情報(たとえば氏名など)が併せて自動的に記憶される。
【0074】
たとえば搬送を行う者は,
図7に示すメインメニュー画面から「傷病者検索」を押下することで,
図33に示す傷病者の情報の検索要求が利用者端末3から制御サーバ2に送られる。制御サーバ2の傷病者情報表示処理部26は,傷病者の情報の検索を行う画面を利用者端末3に表示させる。そして当該傷病者の情報を表示させた後,所定の操作を行うことで,当該傷病者の所在エリアの情報の入力(変更入力)を行う。ここで入力した情報は,利用者端末3から制御サーバ2に送られ,制御サーバ2の傷病者情報表示処理部26で受け付けると,トリアージタグIDに基づいて,傷病者情報記憶部25に記憶する当該傷病者の所在エリアの情報を更新する。たとえば「治療テント(黄)」から「搬送エリア」の取扱いに変更された場合,当該傷病者の所在エリアの情報として「搬送エリア」を選択して入力することで,傷病者情報記憶部25に記憶する当該傷病者の所在を示す情報を「治療テント(黄)」から「搬送エリア」に更新する。この際に,当該傷病者の実際の所在場所を示すため,所在する治療テントの情報が付加されていてもよい。上述の例では,たとえば傷病者の所在を示す情報として「搬送エリア(治療テント(黄))」のようになっていてもよい。なお,上述のように,「治療テント」から「搬送エリア」に取扱いが変更された場合であっても,当該傷病者は,「搬送エリア」に移動するのではなく,当該傷病者の取扱いが搬送エリアの担当になり,傷病者情報が搬送エリアに送られる,という意味である。
【0075】
傷病者の所在を示す情報は,自動的に行ってもよい。たとえば,傷病者の治療や情報入力を行う利用者が利用する利用者端末3に位置情報検出装置(GPSなど)を備えておき,それによって当該利用者の位置情報を検出する。また,あらかじめ災害現場に各エリアを位置情報に基づいて設定しておく。傷病者の所在エリアの情報は,利用者端末3で検出した位置情報を制御サーバ2に送り,それを制御サーバ2の傷病者情報入力受付処理部21で受け付けることで,検出した位置情報(入力を受け付けた位置情報)と各エリアの位置情報とを比較し,当該利用者が治療や情報入力を行ったエリアを特定する。そして特定したエリアを当該傷病者の所在エリアとして,制御サーバ2の傷病者情報記憶部25に反映,記憶させるように構成してもよい。
【0076】
現場指揮本部にいる医師や看護師の医療従事者やその支援員である利用者が,各エリアにいる傷病者の人数などの情報を所望する場合,現場指揮本部端末34に,たとえば
図7に示すメインメニュー画面を表示させる。そしてメインメニュー画面から「赤テント」などを押下することで,傷病者情報記憶部25に傷病者の所在エリアの情報として「治療テント(赤)」が記憶されている傷病者の情報の検索要求が現場指揮本部端末34から制御サーバ2に送られる。制御サーバ2の傷病者情報表示処理部26は,上記検索要求を受け付けると,傷病者情報記憶部25に「治療テント(赤)」の所在エリアの情報が記憶されている傷病者を特定し,特定した傷病者の情報,たとえば傷病者情報,生理学的情報,解剖学的情報,バイタルサイン情報などを抽出する。また傷病者情報表示処理部26は,特定した傷病者の数をカウントする。そして,傷病者情報表示処理部26は,カウントした傷病者の数や,抽出した傷病者の情報を現場指揮本部端末34に送り,現場指揮本部端末34でそれらの情報を表示させる。これによって,現場指揮本部でも,リアルタイムで各所在エリアにいる傷病者の数などの統計情報や,傷病者に関する情報を把握することができ,また情報伝達のミスも発生しない。そのため,各エリアにいる傷病者やトリアージの状況を総合的に管理することができる。
【0077】
また,あらかじめ制御サーバ2に登録しておいたバイタルサイン情報の閾値やトリアージ結果のルールに基づき,AI(コンピュータ)が傷病者の容態が急変したと判断して,現場指揮本部端末34にアラートを通知することができる。これにより,たとえば相対的に症状が軽いとトリアージポスト(一次トリアージ)で判断され,緑テント,黄色テントにいる傷病者の容態が悪化したことを気づくことができるほか,比較的経験が浅い医療従事者や支援員が情報を入力した場合でも,容態の悪化に気づくことができるようになる。
【0078】
現場指揮本部にいる医師や看護師の医療従事者やその支援員である利用者が,統計情報を所望する場合,現場指揮本部端末34に,たとえば
図7に示すメインメニュー画面を表示させる。そしてメインメニュー画面から「クロノロジー」などを押下することで,傷病者情報記憶部25に各所在エリアにいる傷病者の統計情報の検索要求が現場指揮本部端末34から制御サーバ2に送られる。制御サーバ2の傷病者情報表示処理部26は,上記検索要求を受け付けると,傷病者情報記憶部25に記憶する各傷病者の所在を示す情報に基づいて,それぞれの所在場所ごとの傷病者の人数をカウントし,その情報を現場指揮本部端末34に表示させる。さらに,傷病者の人数のほか,必要な統計情報の条件,たとえば,傷病の程度や特定の症状を有する傷病者の人数や傷病者を指定することで,時刻ごとの該当する情報を傷病者情報記憶部25から検索して,その結果を現場指揮本部端末34に返す。このように,時系列情報にしたがって,傷病者の人数の時系列変化を表形式で出力することも可能となる。
【0079】
さらに,クロノロジーとして必要な情報を,テキストや音声によって入力可能となっていてもよい。すなわち,災害現場で発生したさまざまな状況をテキストや音声によって入力する画面を表示させ,そこに入力がなされる。入力する内容としては,情報の発信元,情報の内容などがある。情報の発信元としては,自治体,消防,警察,自衛隊,現場指揮本部などトリアージに関する情報の発信元が該当する。情報の内容としては,災害の発生,患者の搬送計画の決定,患者の搬送開始などがある。クロノロジーに関する情報は,現場指揮本部にいる医師や看護師の医療従事者やその支援員である利用者が利用する現場指揮本部端末34などから入力が行われ,それを制御サーバ2のクロノロジーに関する情報の入力を受け付ける処理部(図示せず)で受け付け,受け付けた情報は,クロノロジーに関する情報を記憶する記憶部(図示せず)に記憶させる。そして,ほかの利用者(現場指揮本部の利用者も含む)が利用する利用者端末3からクロノロジーの情報を表示させる操作を制御サーバ2で受け付けることで,当該記憶部に記憶した情報が当該利用者端末3に送られ,その端末で表示される。なお,音声入力については,後述する。
【実施例2】
【0080】
さらに本発明の別の実施態様として,
図35に示すように,各エリアにおける医師や看護師などの医療従事者,支援員などの利用者の情報を管理していてもよい。
図35に,本実施態様における災害時情報管理システム1の全体の構成の一例を模式的に示す。
【0081】
本実施態様の災害時情報管理システム1の制御サーバ2では,さらに,利用者情報記憶部27と利用者判定処理部28とを有している。
【0082】
利用者情報記憶部27は,医師や看護師などの医療従事者,支援員などの利用者に関する情報を記憶する。たとえば利用者を識別する識別情報(利用者ID),氏名,所属(医療機関名など),地位(医師,看護師,支援員など),配置エリアなどの情報を記憶している。
図36に利用者情報記憶部27の一例を模式的に示す。
【0083】
利用者判定処理部28は,傷病者情報記憶部25と利用者情報記憶部27とを参照し,エリアごとの傷病者数と利用者数(医師,看護師,支援員の数)とを比較し,不足しているまたは超過しているかを判定し,不足又は超過していることを判定した場合に,所定の通知を利用者端末3に行う。エリアごとの傷病者数と利用者数との比較に基づく,利用者の不足,超過の判定条件となる閾値は比率で定められていてもよいし,人数が定められていてもよい。これらの判定条件は,制御サーバ2の所定の記憶装置81において記憶されている。
【0084】
たとえば「治療テント(赤)」の傷病者数と医師数との対応関係が2対1(判定条件となる閾値)と設定されていたとする。利用者判定処理部28は,適宜,傷病者情報記憶部25に記憶する各傷病者の所在エリアの情報に基づいて,エリアごとの傷病者数を算出し,また利用者情報記憶部27におけるエリアごとの利用者数,さらには地位ごとの利用者数を算出する。そして,「治療テント(赤)」の傷病者数が15人であり医師の数7人と判定されたとすると,上記閾値と比較すると医師数が不足していると判定できるので,それを現場指揮本部端末34に通知をする。この通知を閲覧した現場指揮本部端末34の利用者は,
図7のメインメニュー画面における「クロノロジー」を押下することで,エリアごとの医師数を確認した上で,余裕があるエリアにいる医師の利用者端末3に対して,「治療テント(赤)」に移動するようにメッセージでの通知を行う。なお,メッセージでの通知としては,不足しているエリアへの移動の通知のほか,不足しているエリアがあることの通知など,当該不足しているエリアに関する通知であればよい。
【0085】
また,現場指揮本部端末34に通知するほか,利用者判定処理部28は,エリアごとの傷病者数と医師数とを算出し,判定条件となる閾値に基づいて,医師数が不足しているエリアを判定する。また,医師数が不足しておらず,かつ医師数にもっとも余裕があるエリア(判定条件となる閾値を充足しており,かつ閾値からもっとも乖離しているエリア),たとえば「治療テント(緑)」を特定する。そして,特定したエリア(上述の例では治療テント(緑))の医師を利用者情報記憶部27に記憶する配置エリアの情報に基づいて特定し,そのエリアにいる全てまたは一部の医師,あるいは医師が不足するエリアの不足数(上述の例では一人)に対応する数の医師が利用する利用者端末3に対して,不足しているエリア(上述の例では治療テント(赤))に移動するようにメッセージで自動的に通知をする。
【0086】
なお,利用者判定処理部28は,医師数にもっとも余裕があるエリアを特定することに限られず,医師数に余裕があるエリア(判定条件となる閾値を充足しているエリア)を特定するだけであってもよい。
【0087】
利用者判定処理部28は,医師数の判定のみを行うのではなく,看護師や支援員についての,判定条件となる閾値も記憶しておき,それらの利用者に対しても上述と同様の判定処理を行ってもよい。
【0088】
また,医療従事者や支援員などの利用者に対して通知を行う場合,入力を行っている利用者を除外してもよい。すなわち,傷病者情報記憶部25の入力の日時情報と入力を行った氏名などの利用者識別情報とを参照し,判定から所定時間前(たとえば5分以内など)に入力の履歴がある利用者は通知から除外した上で,その入力の履歴がない利用者に対して通知を行ってもよい。
【0089】
医師や看護師などの医療従事者や支援員などの利用者の配置エリアの情報は,各利用者が,担当するエリアを移動した場合に,自らが利用者端末3から所定の操作をすることで,その配置エリアの情報を変更し,利用者情報記憶部27に記憶させることができる。また,治療を担当する傷病者の所在エリアの情報と同一のエリアの情報を利用者情報記憶部27に反映させてもよい。
【0090】
さらに,医療従事者や支援員の配置エリアの情報は,自動的に更新してもよい。たとえば,利用者端末3に位置情報検出装置(GPSなど)を備えておき,それによって位置情報を検出する。また,あらかじめ災害現場に各エリアを位置情報に基づいて設定しておく。そして利用者の配置エリアの情報は,利用者端末3で検出した位置情報を制御サーバ2に送り,それを制御サーバ2において,受け取った位置情報と各エリアの位置情報とを比較することで,当該利用者がいるエリアを特定する。そして,特定したエリアを制御サーバ2の利用者情報記憶部27に反映,記憶させるように構成してもよい。
【実施例3】
【0091】
上述の各実施例においては,トリアージタグに表示されたトリアージタグIDを入力する場合を説明したが,トリアージタグIDをコード化して表示しておき,それを利用者端末3の撮像装置で読み取ってもよい。またトリアージタグに表示されたトリアージタグIDを撮像装置で読み取り,それを利用者端末3に備えたOCR機能で自動的にテキスト認識してもよい。
【実施例4】
【0092】
上述の各実施例における傷病者情報入力受付処理部21,生理学的情報入力受付処理部22,解剖学的情報入力受付処理部23,バイタルサイン情報入力受付処理部24で入力を受け付ける各情報や,クロノロジーで入力を受け付ける情報について,たとえば各利用者端末3において表示されている画面の選択肢を選択する,文字入力を行うなどの入力方法を用いる場合を説明したが,音声入力による入力方法を用いてもよい。
【0093】
またすべてを音声入力で行うのではなく,各画面において選択肢で選択可能な部分は画面に対する操作の入力を受け付け,「その他」の項目などのテキストによる入力(自由文による入力)について音声での入力を受け付けてもよい。
【0094】
図13の入力画面における入力方法として音声入力を用いる場合の入力画面の一例を
図37に示す。
図37の入力画面は気道評価,処置内容の入力画面である。
図13の気道評価,処置内容の入力画面では,気道評価として,「窒息」,「顔面・頚部外傷」,「気道熱傷」,「異常なし」などの傷病者の気道に対する評価のいずれかを選択し,または「その他」としてテキスト入力を行い,また気道処置として,「エアウェイ」,「気管挿管」,「外科的気道確保」などの気道に対する処置内容のいずれかを選択し,または「その他」としてテキスト入力が行われる。しかし,選択肢による選択はすぐに行えるが,テキスト入力については時間を要することとなる。そのため,入力時間の節約のため,テキスト入力を行える項目については,
図37の入力画面では音声入力も行えるように構成している。
【0095】
図37の入力画面では,テキスト入力を行う「その他」の領域に,音声入力が行えることを示すアイコンを表示させている。このアイコンの選択を受け付けると,利用者端末3におけるマイク機能などが起動し,医療従事者や支援員などの利用者は,入力すべき情報を口頭で発話する。この発話音声を利用者端末3におけるマイク機能が集音し,「その他」に入力された情報として利用者端末3から,音声認識を行うAPIを備えたサーバ(クラウドサーバなど)に送られる。そして認識結果が利用者端末3に返されるので,そのテキストを,ほかの選択肢の選択による情報と併せて,利用者端末3が,制御サーバ2の傷病者情報入力受付処理部21,生理学的情報入力受付処理部22,解剖学的情報入力受付処理部23,バイタルサイン情報入力受付処理部24に送るように構成することができる。傷病者情報入力受付処理部21,生理学的情報入力受付処理部22,解剖学的情報入力受付処理部23,バイタルサイン情報入力受付処理部24で情報の入力を受け付けたい後の処理は,実施例1乃至実施例3と同様である。
【0096】
クロノロジーに関する情報を音声で入力する場合も上記と同様に行え,
図7のメインメニューの画面に表示された「クロノロジー」が押下されることで表示される,クロノロジーに関する情報を入力するための画面に備えられた,音声入力が行えることを示すアイコンの選択を受け付けることで,利用者端末3におけるマイク機能などが起動し,医療従事者や支援員などの利用者は,入力すべき情報を口頭で発話して,音声入力が行われる。そして入力された発話音声の情報は利用者端末3から,音声認識を行うAPIを備えたサーバ(クラウドサーバなど)に送られる。そして認識結果が利用者端末3に返されるので,そのテキストを,ほかの選択肢の選択による情報と併せて,利用者端末3が,制御サーバ2に送るように構成する。そして,制御サーバ2のクロノロジーに関する情報の入力を受け付ける処理部は,その情報の入力を受け付け,クロノロジーに関する情報を記憶する記憶部に記憶させる。
【0097】
なお,音声認識を行うAPIとしては,たとえばWeb speech API,Google Cloud Speech API,Microsoft Bing Speech API,Amazon Alexa,LINEなどを用いることができるが,これらに限定されるものではない。
【0098】
APIを用いてテキスト情報に変換した場合,複数の候補が結果として返される場合がある。そのような場合に備えて,利用者端末3において,医療辞書情報を記憶する記憶部(医療辞書情報記憶部(図示せず))を設けておき,返された結果のうち,医療辞書情報記憶部を参照して,医療辞書情報記憶部に記憶されている結果を優先的にテキスト変換の対象とする。なお,医療辞書情報記憶部は制御サーバ2に備えていてもよい。この場合,傷病者情報入力受付処理部21,生理学的情報入力受付処理部22,解剖学的情報入力受付処理部23,バイタルサイン情報入力受付処理部24,クロノロジーに関する情報の入力を受け付ける処理部で利用者端末3から入力を受け付けた選択肢の情報,テキスト情報のうち,テキスト情報について医療辞書情報記憶部を参照することで,医療辞書情報記憶部に記憶する医療用語などに該当する単語などを,変換した上で各処理部において一時記憶してもよい。
【0099】
以上のような構成を備えることで,音声入力を用いることが可能となる。
【0100】
また,本発明の災害時情報管理システム1が用いられる状況は,必ずしも通信状況がよい環境とは限らない。たとえば通信状況がよくない地方や山岳地域なども想定される。そこで,利用者端末3がAPIを備えたクラウドサーバなどと通信ができない,または通信が困難である場合,利用者端末3に音声入力による情報を一時記憶させておき,通信が接続または改善した場合に,音声入力による情報を音声認識を行うAPIを備えたサーバ(クラウドサーバなど)に送るように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の災害時情報管理システム1を用いることによって,災害現場での医療活動の際に,各テントでの情報の連携を可能とせしめることによって,全体の傷病者の人数,各テントの傷病者の人数などの情報を適切に関することができる。また,それらを管理することで統計データとして自動的に集計することもできる。さらに,従来の,紙のトリアージタグをそのまま利用することもできる。
【符号の説明】
【0102】
1:災害時情報管理システム
2:制御サーバ
3:利用者端末
21:傷病者情報入力受付処理部
22:生理学的情報入力受付処理部
23:解剖学的情報入力受付処理部
24:バイタルサイン情報入力受付処理部
25:傷病者情報記憶部
26:傷病者情報表示処理部
27:利用者情報記憶部
28:利用者判定処理部
31:トリアージポスト端末
32:治療テント端末
33:搬送エリア端末
34:現場指揮本部端末
80:演算装置
81:記憶装置
82:表示装置
83:通信装置
84:入力装置