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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】湯水混合水栓装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20220523BHJP
   E03C 1/044 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
E03C1/042 C
E03C1/044
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018032136
(22)【出願日】2018-02-26
(65)【公開番号】P2019148073
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 理紗
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】駒谷 喜一
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特許第5963107(JP,B2)
【文献】特開平11-141730(JP,A)
【文献】特開2002-285595(JP,A)
【文献】特開2013-064261(JP,A)
【文献】実開昭57-184175(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/04- 1/06
F16K 31/44-31/62
F16K 35/00-35/16
G05G 1/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水混合水栓装置であって、
給湯源から供給される湯と給水源から供給される水とを混合して、温度調整を行う温度調整機能部と、
前記温度調整機能部による温度調整のために回転操作される温調ハンドルと、
前記温調ハンドルの回転角度を規制する回転角度規制部材と、
前記温調ハンドルに設けられた安全ボタン用穴と、
通常時には前記安全ボタン用穴から突出し押圧時には前記安全ボタン用穴内に退没可能な安全ボタンと、
前記安全ボタンの出没移動を規制する安全ボタン規制部と、
前記安全ボタン規制部に固定されたバネ支持部と、
前記安全ボタンと前記バネ支持部との間に配置され、押圧時に前記安全ボタン用穴内に退没した前記安全ボタンに対して前記安全ボタン用穴から突出するよう付勢力を提供するバネと、
前記安全ボタンに一体化ないし固定され、通常時には前記回転角度規制部材と協働する位置にあり前記安全ボタンの押圧時には前記回転角度規制部材と協働する位置から退避可能な係止部と、
備え、
前記安全ボタン、前記安全ボタン規制部、前記バネ支持部、前記バネ、及び、前記係止部が、一体化された安全ボタンユニットとして、前記温調ハンドルに取り付けられている
ことを特徴とする湯水混合水栓装置。
【請求項2】
前記安全ボタン規制部は、樹脂で形成されており、
前記安全ボタンは、前記安全ボタン規制部に対して摺動するようになっており、前記温調ハンドルとは接触しない
ことを特徴とする請求項1に記載の湯水混合水栓装置。
【請求項3】
前記安全ボタン用穴は、円形穴である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の湯水混合水栓装置。
【請求項4】
湯水混合水栓装置であって、
給湯源から供給される湯と給水源から供給される水とを混合して、温度調整を行う温度調整機能部と、
前記温度調整機能部による温度調整のために回転操作される温調ハンドルと、
前記温調ハンドルの回転角度を規制する回転角度規制部材と、
前記温調ハンドルに設けられた安全ボタン用穴と、
前記温調ハンドルに取り付けられ、通常時には前記安全ボタン用穴から突出し押圧時には前記安全ボタン用穴内に退没可能な安全ボタンを有する安全ボタンユニットと、
を備え、
前記安全ボタンユニットは、
前記温調ハンドルに取り付けられ、前記安全ボタンの出没移動を規制する安全ボタン規制部と、
前記安全ボタン規制部に固定されたバネ支持部と、
前記安全ボタンと前記バネ支持部との間に配置され、押圧時に前記安全ボタン用穴内に退没した前記安全ボタンに対して前記安全ボタン用穴から突出するよう付勢力を提供するバネと、
前記安全ボタンに一体化ないし固定され、通常時には前記回転角度規制部材と協働する位置にあり前記安全ボタンの押圧時には前記回転角度規制部材と協働する位置から退避可能な係止部と、
を有しており、
前記温調ハンドルは、前記安全ボタンユニットの取り付けをガイドするガイド部を有し、
前記安全ボタンユニットは、前記ガイド部と係合する係合部を有する
ことを特徴とする湯水混合水栓装置
【請求項5】
湯水混合水栓装置であって、
給湯源から供給される湯と給水源から供給される水とを混合して、温度調整を行う温度調整機能部と、
前記温度調整機能部による温度調整のために回転操作される温調ハンドルと、
前記温調ハンドルの回転角度を規制する回転角度規制部材と、
前記温調ハンドルに設けられた安全ボタン用穴と、
前記温調ハンドルに取り付けられ、通常時には前記安全ボタン用穴から突出し押圧時には前記安全ボタン用穴内に退没可能な安全ボタンを有する安全ボタンユニットと、
を備え、
前記安全ボタンユニットは、
前記温調ハンドルに取り付けられ、前記安全ボタンの出没移動を規制する安全ボタン規制部と、
前記安全ボタン規制部に固定されたバネ支持部と、
前記安全ボタンと前記バネ支持部との間に配置され、押圧時に前記安全ボタン用穴内に退没した前記安全ボタンに対して前記安全ボタン用穴から突出するよう付勢力を提供するバネと、
前記安全ボタンに一体化ないし固定され、通常時には前記回転角度規制部材と協働する位置にあり前記安全ボタンの押圧時には前記回転角度規制部材と協働する位置から退避可能な係止部と、
を有しており、
前記安全ボタン規制部は、前記バネ支持部が固定されるバネ支持部固定穴を有する
ことを特徴とする湯水混合水栓装置
【請求項6】
前記バネは、コイルバネである
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の湯水混合水栓装置。
【請求項7】
前記バネは、コイルバネであり、
前記バネ支持部は、前記コイルバネを圧縮させながら前記バネ支持部固定穴に固定されるようになっている
ことを特徴とする請求項5に記載の湯水混合水栓装置。
【請求項8】
前記安全ボタン規制部は、前記バネ支持部を前記バネ支持部固定穴にガイドする第2ガイド部を有する
ことを特徴とする請求項7に記載の湯水混合水栓装置。
【請求項9】
前記バネ支持部は、前記コイルバネを保持する突起部を有する
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の湯水混合水栓装置。
【請求項10】
前記コイルバネは、前記安全ボタンの内側に挿入されている
ことを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の湯水混合水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調整機能部を備えた湯水混合水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、温度調整機能部を備えた湯水混合水栓装置が知られている。温度調整機能部の操作は、一般に、温調ハンドルを回転することによってなされる。
【0003】
従来の湯水混合水栓装置においては、不所望に高温の湯が吐水されてしまう(火傷のおそれがある)ことを防止するために、温調ハンドルに安全ボタンが設けられている。安全ボタンは、高温の湯を吐水する場合に操作されるボタンで、当該安全ボタンを押圧操作しないと温調ハンドルを高温側に回転できないようになっている。
【0004】
特許文献1に、従来の安全ボタンの構成が開示されている。図11は、特許文献1の図1に対応し、従来の湯水混合水栓Aを示す外観斜視図である。湯水混合水栓Aは、温度調整用ハンドル60と、流量調整用ハンドル61と、スパウト62と、を備えている。温度調整用ハンドル60と流量調整用ハンドル61とは、亜鉛ダイキャストより製造されている。また、湯水混合水栓Aは、水供給水路63及び湯供給水路64に接続されており、それらの混合水をスパウト62より吐水する構成となっている。湯水混合水栓Aは、流量調整用ハンドル61を回転することによって吐水量を調整することができ、吐水量をゼロとする、つまり止水を行うことも可能である。
【0005】
また、湯水混合水栓Aは、温度調整用ハンドル60を回転することによって、吐水温度を好みの温度に調整することができる。このとき、一定以上の温度に設定するためには、温度調整用ハンドル60に設けられた安全ボタン52を押しながら、温度調整用ハンドル60を回転する必要がある。
【0006】
図12は、特許文献1の図2に対応し、温度調整用ハンドル60の内部を示す分解斜視図である。図13は、温度調整用ハンドル60の断面図である。温度調整用ハンドル60は、その周囲を覆うカバー部65に組み付ける形で、安全ボタン52と、ブッシュ54と、板バネ55と、を有している。
【0007】
従来の湯水混合水栓Aは、使用者が温度調整用ハンドル60のカバー部65を掴んで回転させることにより、カバー部65と嵌合した基部(不図示)が回転して、湯水混合水栓Aの湯水の混合量が調整されるようになっている。これにより、スパウト62から吐水される吐水温度を、水から湯へ(あるいはその逆へ)自在に調整することができる。
【0008】
ここで、誤って一定温度以上の高温の湯が吐水されることがないように、カバー部65の回転に安全装置が設けられている。具体的には、図12及び図14(特許文献1の図5に対応)に示すように、安全ボタン52に接続された係止部53が設けられており、湯水混合水栓Aに設けられた回転規制ストッパ56と当接することで、カバー部65が回転できないようになっている。
【0009】
一定温度以上の高温の湯を吐水したい場合、係止部53に接続された安全ボタン52が意図的に押される。これによって、係止部53が温度調整用ハンドル60の内部方向へ移動される。これにより、係止部53と回転規制ストッパ56との当接(協働)が解除され、温度調整用ハンドル60を自在に回転することができるようになる(図15(特許文献1の図6に対応)参照)。
【0010】
ここで、図12及び図13に示されているように、安全ボタン52は、板バネ55によって、絶えず温度調整用ハンドル60の外周方向、つまりカバー部65の表面方向に付勢されている。このため、温度調整用ハンドル60を逆方向(低温側)に回転させ、回転規制ストッパ56の位置よりも低温側に戻してしまうと、安全ボタン52は自動的に外周方向へ戻り、すなわち、図14の状態に戻る。
【0011】
図13に最も良く示されているように、温度調整用ハンドル60のカバー部65から突出するように、安全ボタン52が設けられている。より具体的には、 カバー部65の表面の一部に貫通孔が設けられており、これを通るように安全ボタン52がカバー部65の内部から挿入されている。
【0012】
安全ボタン52とカバー部65との間には、樹脂製のブッシュ54が設けられており(図12及び図13参照)、カバー部65の断面と安全ボタン52とが直接接することがないような構造となっている。また、安全ボタン52とブッシュ54との間には、安全ボタン52の摺動のために僅かな隙間が確保された構造となっている。
【0013】
また、ブッシュ54は、図13に示されているように、板バネ55の全体を覆うように構成されている。これによって、板バネ55とカバー部65とが摺動することに伴う不具合の発生をも抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特許5963107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前述した従来構成の温度調整用ハンドル60は、板バネ55の弾性力を利用する構成であり、温度調整用ハンドル60の内部に所定の広さの空間(特に図13の左右方向の寸法)が必要であるため、温度調整用ハンドル60のコンパクト化の実現が困難である。
【0016】
また、前述した従来構成の温度調整用ハンドル60は、板バネ55の支持部として機能する棚部55s(図13参照)を温度調整用ハンドル60の内部に形成しているため、温度調整用ハンドル60の製造工程が複雑であり、また、温度調整用ハンドル60への安全ボタン52、ブッシュ54及び板バネ55の組み付けの作業性も簡便であるとは言い難かった。
【0017】
本件発明者は、安全ボタンに関する鋭意の検討過程において、安全ボタンを付勢するバネの支持部として機能するバネ支持部を安全ボタンと共にユニット化することによって、温調ハンドル本体の製造の簡略化及び安全ボタン関連部品の組み付け作業性の容易化を図ることができるとの知見を得た。
【0018】
本発明は、以上のような知見に基づいてなされたものである。本発明の目的は、温調ハンドル本体の製造の簡略化及び安全ボタン関連部品の組み付け作業性の容易化を実現できる湯水混合水栓装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、湯水混合水栓装置であって、給湯源から供給される湯と給水源から供給される水とを混合して、温度調整を行う温度調整機能部と、前記温度調整機能部による温度調整のために回転操作される温調ハンドルと、前記温調ハンドルの回転角度を規制する回転角度規制部材と、前記温調ハンドルに設けられた安全ボタン用穴と、前記温調ハンドルに取り付けられ、通常時には前記安全ボタン用穴から突出し押圧時には前記安全ボタン用穴内に退没可能な安全ボタンを有する安全ボタンユニットと、を備え、前記安全ボタンユニットは、前記温調ハンドルに取り付けられ、前記安全ボタンの出没移動を規制する安全ボタン規制部と、前記安全ボタン規制部に固定されたバネ支持部と、前記安全ボタンと前記バネ支持部との間に配置され、押圧時に前記安全ボタン用穴内に退没した前記安全ボタンに対して前記安全ボタン用穴から突出するよう付勢力を提供するバネと、前記安全ボタンに一体化ないし固定され、通常時には前記回転角度規制部材と協働する位置にあり前記安全ボタンの押圧時には前記回転角度規制部材と協働する位置から退避可能な係止部と、を有していることを特徴とする湯水混合水栓装置である。
【0020】
本発明によれば、安全ボタンと、安全ボタンの出没移動を規制する安全ボタン規制部と、安全ボタン規制部に固定されたバネ支持部と、安全ボタンとバネ支持部との間に配置されたバネと、安全ボタンに一体化ないし固定された係止部と、が安全ボタンユニットとしてユニット化されているため、温調ハンドルの製造工程を簡略化することができ、且つ、安全ボタン関連部品の組み付け作業性を容易化することができる。
【0021】
前記安全ボタン規制部は、樹脂で形成されており、前記安全ボタンは、前記安全ボタン規制部に対して摺動するようになっており、前記温調ハンドルとは接触しないことが好ましい。
【0022】
この場合、温調ハンドル自体は摺動機能を担わないため、温調ハンドルに白錆や腐食が発生することを効果的に抑制できる。また、もし温調ハンドルに白錆や腐食が発生してしまった場合でも、安全ボタンの動作(移動)に影響が生じることを抑制できる。
【0023】
また、前記安全ボタン用穴は、円形穴であることが好ましい。
【0024】
この場合、安全ボタン用穴をU字状穴等として形成する場合と比較して、安全ボタンの露出を最小限に抑制することができ、デザイン性が向上する。
【0025】
また、前記温調ハンドルは、前記安全ボタンユニットの取り付けをガイドするガイド部を有し、前記安全ボタンユニットは、前記ガイド部と係合する係合部を有することが好ましい。
【0026】
この場合、安全ボタンユニットを温調ハンドルに組み付ける際の組立性が向上し、安全ボタン関連部品の組み付け作業性が顕著に容易化される。
【0027】
また、前記安全ボタン規制部は、前記バネ支持部が固定されるバネ支持部固定穴を有することが好ましい。
【0028】
この場合、バネ支持部を安全ボタン規制部に組み付ける際に、バネ支持部固定穴にバネ支持部を挿入するという比較的単純な作業によって当該バネ支持部を安全ボタン規制部に固定することができる。すなわち、バネ支持部の安全ボタン規制部への組み付け作業性が容易化される。
【0029】
また、前記バネは、コイルバネであることが好ましい。
【0030】
この場合、従来の板バネを用いる場合と比較して、バネの設置ないし動作に必要な空間(特に長さ)が小さくて済むため、ハンドルの厚み(前出)を抑えることができる。これにより、デザイン性を向上させることができる。
【0031】
また、前記バネが、コイルバネである場合、前記バネ支持部は、前記バネを圧縮させながら前記バネ支持部固定穴に固定されるようになっていることが好ましい。
【0032】
これによれば、バネ支持部をバネ支持部固定穴に固定する際において、バネを別途保持した状態で作業する必要がない。これにより、バネ支持部の安全ボタン規制部への組み付け作業性が容易化される。
【0033】
また、前記安全ボタン規制部は、前記バネ支持部を前記バネ支持部固定穴にガイドする第2ガイド部を有することが好ましい。
【0034】
これによれば、バネ支持部をバネ支持部固定穴に固定する際において、第2ガイド部によってバネ支持部の移動がガイドされることにより、バネ支持部の安全ボタン規制部への組み付け作業性が更に容易化される。
【0035】
また、前記バネが、コイルバネである場合、前記バネ支持部は、前記コイルバネを保持する突起部を有することが好ましい。
【0036】
これによれば、突起部によってコイルバネを保持することができ、そのように突起部がバネを保持した状態でバネ支持部の組み付け作業を行うことができる。これにより、バネ支持部の安全ボタン規制部への組み付け作業性が容易化される。
【0037】
また、前記コイルバネは、前記安全ボタンの内側に挿入されていることが好ましい。
【0038】
これによれば、イルバネの配置について省スペースを実現でき、温調ハンドルの小型化が図れる他、安全ボタンに対するコイルバネの付勢動作が安定する。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、温調ハンドル本体の製造の簡略化及び安全ボタン関連部品の組み付け作業性の容易化を実現できる湯水混合水栓装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の一実施形態による湯水混合水栓装置の斜視図である。
図2図1の湯水混合水栓装置の温調ハンドル及び回転角度規制部材の斜視図である。
図3図2の湯水混合水栓装置の温調ハンドル及び回転角度規制部材の断面図である。
図4図2の湯水混合水栓装置の温調ハンドルの分解斜視図である。
図5図2の温調ハンドルのハンドルカバーの斜視図である。
図6図4の安全ボタンユニットの側面図である。
図7図6の安全ボタンユニットの分解側面図である。
図8図7の安全ボタン規制部の斜視図である。
図9図7のバネ支持部の斜視図である。
図10図6の安全ボタンユニットの底面図である。
図11】従来の湯水混合水栓Aを示す外観斜視図である(特許文献1の図1に対応する図である)。
図12】従来の温度調整用ハンドルの内部を示す分解斜視図である(特許文献1の図2に対応する図である)。
図13】従来の温度調整用ハンドルの内部を示す断面図である(特許文献1の図3に対応する図である)。
図14】従来の温度調整用ハンドルの回動規制状態を示す縦断面図である(特許文献1の図5に対応する図である)。
図15】従来の温度調整用ハンドルの回動自在状態を示す縦断面図である(特許文献1の図6に対応する図である)。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に、添付図面を参照して、本発明の一実施形態による湯水混合水栓装置について説明する。
【0042】
図1は、本発明の一実施形態による湯水混合水栓装置1の概略斜視図である。図1に示すように、湯水混合水栓装置1は、水回り設備、例えば浴室、キッチン、洗面台等の壁面に取付けられるカウンター一体型の湯水混合水栓装置である。湯水混合水栓装置1の箱体2の上面は、平坦に形成され、物を置くためのカウンターとして使用することができる。
【0043】
湯水混合水栓装置1には、壁面に設けられた給湯源(図示せず)から延びる湯供給管3aと、壁面に設けられた給水源(図示せず)から延びる水供給管3bと、が接続されている。また、湯水混合水栓装置1の下部にカランが設けられている。また、湯水混合水栓装置1の側部には、シャワーホース4aを介してシャワーヘッド4が接続されている。
【0044】
そして、湯水混合水栓装置1の前面側の上方に、カラン吐水用タッチ操作部5a及びシャワー吐水用タッチ操作部5bが設けられている。また、湯水混合水栓装置1の前面側に温調ハンドル6と、流調ハンドル7と、オーバーヘッドシャワー切替ハンドル8と、が設けられている。
【0045】
本実施形態の湯水混合水栓装置1は、操作者がカラン吐水用タッチ操作部5aをタッチ操作(押込み操作)することにより、止水状態と、カランからの吐水状態と、を切り替えることができる。また、操作者がシャワー吐水用タッチ操作部5bをタッチ操作(押込み操作)することにより、止水状態と、シャワーヘッド4からの吐水状態と、を切り替えることができる。
【0046】
また、湯水混合水栓装置1は、温調ハンドル6を回動操作することにより、温度調整機能部6fの作用により吐水温度を調整することができる。また、流調用ハンドル7を回動操作することにより、流量調整機能部の作用により吐水流量を調整することができる。
【0047】
温度調整機能部6fは、湯供給管3aを介して給湯源から供給される湯と水供給管3bを介して給水源から供給される水とを混合して、温度調整を行うようになっている。そして、前述のように、温調ハンドル6が回転操作されることによって、温度調整機能部6fによる温度調整がなされるようになっている。このとき、従来構成の温調ハンドルと同様、一定温度以上の温度に設定するためには、温調ハンドル6に設けられた安全ボタン11を押しながら、温調ハンドル6を回転する必要がある。
【0048】
次に、図2は、回転角度規制部材20に組み付けられた温調ハンドル6の斜視図であり、図3は、図2の回転角度規制部材20及び温調ハンドル6の断面図であり、図4は、温調ハンドル6の分解斜視図であり、図5は、温調ハンドル6のハンドルカバー6aの斜視図である。
【0049】
図2乃至図4に示す回転角度規制部材20は、例えば、湯水混合水栓装置1の箱体2に組み込まれている。そして、温調ハンドル6は、回転角度規制部材20に対して回転可能に組み付けられ、回転角度規制部材20によって回転角度が規制されている。
【0050】
図3及び図4に示すように、本実施形態の温調ハンドル6は、操作者によって操作されるハンドルカバー6aと、ハンドルカバー6aの内部に設けられてハンドルカバー6aに対する操作力を温度調整機能部6fに伝達するハンドルコア6bと、ハンドルカバー6aとハンドルコア6bとを結合するネジ(またはピン)6cと、を有している。
【0051】
また、図2及び図5に示すように、本実施形態の温調ハンドル6のハンドルカバー6aには、円形の安全ボタン用穴6hが設けられている。そして、円筒状の安全ボタン11が、通常時には安全ボタン用穴6hから突出するようになっており、押圧時には安全ボタン用穴6h内に退没可能(完全に退没する必要はなく、一部のみ退没する態様を含む)となっている。
【0052】
本実施形態の安全ボタン11は、安全ボタンユニット10の一部品として、温調ハンドル6に取り付けられている。
【0053】
本実施形態の安全ボタンユニット10は、図4に示すように、一体化されたユニットとして、ハンドルカバー6aに取り付けられている。
【0054】
図6は、安全ボタンユニット10の側面図であり、図7は、安全ボタンユニット10の分解側面図であり、図8は、安全ボタン規制部12の斜視図であり、図9は、バネ支持部13の斜視図である。
【0055】
図6乃至図8に示すように、安全ホタン規制部12は、安全ボタン11の出没移動の軌道を規制(案内)する部材であり、通常、樹脂から製造され、円筒状の安全ボタン11の外周の一部を環状に覆う規制本体部12mを有しており、当該規制本体部12mが安全ボタン11と安全ボタン用穴6hとの間に介在するように配置されている。これにより、安全ボタン11は、安全ボタン規制部12の規制本体部12mに対してのみ摺動するようになっていて、温調ハンドル6とは接触しないようになっている。
【0056】
また、安全ボタン規制部12は、安全ユニット10の筐体(ハウジング)としての機能も担っている。そして、図5に示すように、温調ハンドル6のハンドルカバー6aの裏側に、平面視で長方形状のスライドガイド片6gが設けられていて、一方、図8に示すように、安全ホタン規制部12の対応する側面に、当該スライドガイド片6gに対して摺動移動可能ないし係合可能な、平面視で長方形状の係合凹部12rが設けられている。これにより、安全ボタンユニット10を温調ハンドル6に組み付ける際の組立性が向上されている。
【0057】
図7及び図8に示すように、安全ボタン規制部12は、規制本体部12mとは反対の側において、バネ支持部13を固定するようになっており、より具体的には、バネ支持部13が固定される一対の対向する長穴状のバネ支持部固定穴12hを有している。
【0058】
図9に示すように、本実施形態のバネ支持部13は、全体的には略正方形の平板状で、一対のバネ支持部固定穴12hに嵌合可能な一対の嵌合片13fを有している。また、当該嵌合片13fの挿入側の面は、挿入作業を容易化するための傾斜面13sとなっており、一方、図8に示すように、安全ボタン規制部12のバネ支持部固定穴12hに隣接する当該バネ支持部固定穴12hへの挿入側の内面には、傾斜面13sと協調して挿入作業を容易化する傾斜ガイド面12s(第2ガイド部)が設けられている。
【0059】
そして、図7に示すように、安全ボタン11とバネ支持部13との間に、コイルバネ14が設けられている。コイルバネ14は、円筒状の安全ボタン11の内側に挿入されており、押圧時に安全ボタン用穴6h内に一部または全部が退没した安全ボタン11に対して安全ボタン用穴6hから再び突出するよう付勢力を提供するようになっている。
【0060】
図7及び図9に示すように、バネ支持部13には、コイルバネ14の内部空間に挿通される突起部13pが突設されており、当該突起部13pによってコイルバネ14を保持できるようになっている。そして、コイルバネ14を圧縮させる方向に挿入作業を行うことで、一対の嵌合片13fを一対のバネ支持部固定穴12hに嵌合できるようになっている。
【0061】
図10は、安全ボタンユニット10の底面図である。図6図7及び図10に示すように、円筒状の安全ボタン11の下方側面部から、平面視で略長方形の平板状の係止片15が延在している。本実施形態では、安全ボタン11及び係止片15は、樹脂によって一体的に成形されているが、別体として形成されてから互いに固定(結合)されてもよい。
【0062】
当該係止片15が、通常時(図3参照)には回転角度規制部材20の係止部21(図4参照)と協働する位置にあって、温調ハンドル6の回動角度を規制するようになっている(図14と類似の状態)。そして、安全ボタン11が押圧された時には、当該安全ボタン11の移動に伴って係止片15も径方向内方へ移動することにより、係止片15は回転角度規制部材20の係止部21から退避して空間部22(図4参照)内を回動可能となる(図15と類似の状態)。
【0063】
以上のような本実施形態の湯水混合水栓装置1によれば、安全ボタン11と、安全ボタン11の出没移動を規制する安全ボタン規制部12と、安全ボタン規制部12に固定されたバネ支持部13と、安全ボタン11とバネ支持部13との間に配置されたバネ14と、安全ボタン11に一体化ないし固定された係止部15と、が安全ボタンユニット10としてユニット化されているため、温調ハンドル6の製造工程を簡略化することができ、且つ、安全ボタン関連部品の組み付け作業性を容易化することができる。
【0064】
また、本実施形態においては、安全ボタン規制部12が樹脂で形成されており、安全ボタン11は安全ボタン規制部12に対してのみ摺動するようになっている。すなわち、安全ボタン11は温調ハンドル6とは接触しないようになっている。従って、温調ハンドル6自体は摺動機能を担わないので、温調ハンドル6に白錆や腐食が発生することが効果的に抑制され得る。また、もし温調ハンドル6に白錆や腐食が発生してしまった場合でも、安全ボタン11の動作(移動)に影響が生じることを抑制できる。
【0065】
また、本実施形態においては、安全ボタン11も樹脂製であるため、安全ボタン11と安全ボタン規制部12との樹脂同士の接触によって、両者間の滑らかな動きが実現できる。
【0066】
また、本実施形態においては、安全ボタン用穴6が円形穴であるため、U字状穴等として形成する場合と比較して、安全ボタン11の露出を最小限に抑制することができる。これにより、デザイン性が向上されている。
【0067】
また、本実施形態の温調ハンドル6には、安全ボタンユニット10の取り付けをガイドするスライドガイド片6gが設けられ、安全ホタン規制部12の対応する側面には、当該スライドガイド片6gに対して摺動移動可能ないし係合可能な係合凹部12rが設けられている。これにより、安全ボタンユニット10を温調ハンドル6に組み付ける際の組立性が向上されており、安全ボタン関連部品の組み付け作業性が顕著に容易化されている。
【0068】
また、本実施形態の安全ボタン規制部12には、バネ支持部13の一対の嵌合片13fが固定される一対のバネ支持部固定穴12hが設けられている。これにより、バネ支持部13を安全ボタン規制部12に組み付ける際に、バネ支持部固定穴12hにバネ支持部13の嵌合片13fを挿入するという比較的単純な作業によって、当該バネ支持部13を安全ボタン規制部12に容易に固定することができる。すなわち、バネ支持部13の安全ボタン規制部12への組み付け作業性が容易化されている。
【0069】
また、本実施形態において、バネ14は、コイルバネである。これにより、従来のように板バネを用いる場合と比較して、バネ14の設置ないし動作に必要な空間(特に長さ)が小さくて済む。従って、温調ハンドル6のサイズ(特に厚み(前出))を抑えることができ、デザイン性が向上されている。
【0070】
また、本実施形態において、バネ支持部13は、コイルバネ14を圧縮させながらバネ支持部固定穴12hに固定されるようになっている。このため、バネ支持部13をバネ支持部固定穴12hに固定する際において、コイルバネ14を別途保持した状態で作業する必要がない。これにより、バネ支持部13の安全ボタン規制部12への組み付け作業性が容易化されている。
【0071】
また、本実施形態の安全ボタン規制部12には、バネ支持部13の嵌合片13fの傾斜面13sをバネ支持部固定穴12hに向けてガイドする傾斜ガイド面12s(第2ガイド部)が設けられている。これにより、バネ支持部13をバネ支持部固定穴12hに固定する際において、傾斜ガイド面12s(第2ガイド部)によってバネ支持部13の移動がガイドされることにより、バネ支持部13の安全ボタン規制部12への組み付け作業性が更に容易化されている。
【0072】
また、本実施形態のバネ支持部13は、コイルバネ14を保持する突起部13pを有している。これにより、突起部13pによってコイルバネ14を保持することができ、そのように突起部13pがコイルバネ14を保持した状態でバネ支持部13の組み付け作業を行うことができる。これによっても、バネ支持部13の安全ボタン規制部12への組み付け作業性が容易化されている。
【0073】
また、本実施形態において、コイルバネ14は、安全ボタン11の内側に挿入されている。これにより、コイルバネ14の配置について省スペースを実現でき、温調ハンドル6の小型化が図れる他、安全ボタン11に対するコイルバネ14の付勢動作が安定する。
【符号の説明】
【0074】
1 湯水混合水栓装置
2 箱体
3a 湯供給管
3b 水供給管
4 シャワーヘッド
4a シャワーホース
5a カラン吐水用タッチ操作部
5b シャワー吐水用タッチ操作部
6 温調ハンドル
6a ハンドルカバー
6b ハンドルコア
6c ネジまたはピン
6g スライドガイド片(ガイド部)
6h 安全ボタン用穴
7 流調ハンドル
8 オーバーヘッドシャワー切替ハンドル
10 安全ボタンユニット
11 安全ボタン
12 安全ボタン規制部
12h バネ支持部固定穴
12m 規制本体部
12r 係合凹部
12s 傾斜ガイド面(第2ガイド部)
13 バネ支持部
13f 嵌合片
13s 傾斜面
14 コイルバネ
15 係止片
20 回転角度規制部材
21 係止部
22 空間部
A 従来の湯水混合水栓
52 安全ボタン
53 係止部
54 ブッシュ
55 板バネ
55s 棚部
56 回転規制ストッパ
60 温度調整用ハンドル
61 流量調整用ハンドル
62 スパウト
63 水供給水路
64 湯供給水路
65 カバー部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15