(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】充填装置
(51)【国際特許分類】
F17C 5/06 20060101AFI20220523BHJP
F17C 13/02 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
F17C5/06
F17C13/02 301A
(21)【出願番号】P 2020010516
(22)【出願日】2020-01-27
【審査請求日】2020-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】特許業務法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】名取 直明
(72)【発明者】
【氏名】関島 律
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0180236(US,A1)
【文献】特開2017-044217(JP,A)
【文献】特開2016-169869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 5/06
F17C 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両
(20)からの情報を受信して充填制御を行う充填装置
(100)において、
制御装置(10)を含み、当該制御装置(10)は、
車両
(20)からの情報に基づいて充填前の車両タンク
(21)内の質量を算出する第1の質量算出手段
(10A)と、
充填後の車両タンク(21)内の水素質量の目標値と第1の質量算出手段
(10A)で算出された質量との差異を
、車両タンク
(21)内に充填するべき質量として算出する第2の質量算出手段
(10D)と、
車両タンク内の質量が目標充填後質量となると充填終了と判断する機能を有する手段
(10F)と、
車両(20)からの情報に含まれる車両タンク容量(V)と、車両タンク容量ごとに定められた目標充填後質量に基づいて、充填対象である燃料電池自動車の目標充填後質量を設定する設定手段(10B)を含み、
前記設定手段(10B)は目標充填後質量判定手段(10B1)及びタンク容量-目標充填後質量記憶部(10B2)を有し、
前記タンク容量-目標充填後質量記憶部(10B2)はタンク容量と目標充填後質量との関係を記憶する機能を有し、
前記目標充填後質量判定手段(10B1)は、充填対象である燃料電池自動車のタンク容量(V)を取得する機能と、前記タンク容量-目標充填後質量記憶部(10B2)に記憶されているタンク容量と目標充填後質量との関係を用いて取得したタンク容量(V)から目標充填後質量を決定する機能を有していることを特徴する充填装置。
【請求項2】
車両(20)からの情報を受信して充填制御を行う充填装置(100)において、
制御装置(10)を含み、当該制御装置(10)は、
車両(20)からの情報に基づいて充填前の車両タンク(21)内の質量を算出する第1の質量算出手段(10A)と、
充填後の車両タンク(21)内の水素質量の目標値と第1の質量算出手段(10A)で算出された質量との差異を、車両タンク(21)内に充填するべき質量として算出する第2の質量算出手段(10D)と、
車両タンク内の質量が目標充填後質量となると充填終了と判断する機能を有する手段(10F)を有しており、
前記充填装置(100)は、作業者が目標充填後質量を設定する態様に切り替える入力装置としての機能を有する目標充填後質量切替部(10B3)を含むことを特徴とする充填装置。
【請求項3】
車両(20)からの情報を受信して充填制御を行う充填装置(100)において、
制御装置(10)を含み、当該制御装置(10)は、
車両(20)からの情報に基づいて充填前の車両タンク(21)内の質量を算出する第1の質量算出手段(10A)と、
充填後の車両タンク(21)内の水素質量の目標値と第1の質量算出手段(10A)で算出された質量との差異を、車両タンク(21)内に充填するべき質量として算出する第2の質量算出手段(10D)と、
車両タンク内の質量が目標充填後質量となると充填終了と判断する機能を有する手段(10F)を有しており、
前記充填装置(100)は、前記充填装置(100)の販売時点情報管理システム或いは後方設備で設定した目標充填後質量の情報を中継する機能を有する目標充填後質量切替部(10B3)を含むことを特徴とする充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素等の気体燃料(圧縮天然ガス等も含む)を、燃料電池自動車(FCV)等に充填するための充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリン等の化石燃料に代えて、例えば水素を用いる燃料電池自動車が注目されている。その様な燃料電池自動車に水素を充填する水素充填装置及び水素充填方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
そして燃料電池自動車の車両タンクへのプリセット水素充填方法には、予め設定された質量の水素を追加する方法と、予め設定した金額分の水素を充填する方法とがある。何れの方法においても、充填前の車両の水素質量に拘らず、決められた質量の水素を追加している。
【0003】
しかし、従来技術に係る水素充填技術では、車両タンク内の水素質量は均一(或いはゼロ)ではない燃料電池自動車に水素を充填して、全ての燃料電池自動車の車両タンク内の水素質量を均一にすることは不可能である。
例えば燃料電池自動車の製造現場では、燃料電池自動車の車両タンク内に充填される水素を均一な状態にして出荷したいという要請が存在する。そして、いわゆる「空」の状態の車両タンクに対して一定質量の水素を充填することは、従来の充填装置でも可能である。しかしながら、燃料電池自動車を製造現場から出荷する場合、出荷前に水素を充填した燃料電池自動車には、製造ラインから水素充填装置に送られて車両タンク内に水素が充填されていない(車両タンク内の水素質量がゼロの)燃料電池自動車と、走行テスト後で車両タンク内に既に水素が充填されている(車両タンク内の水素質量がゼロではない)燃料電池自動車が存在する。すなわち、水素充填装置に送られる燃料電池自動車の車両タンク内の水素質量は均一(或いはゼロ)ではない。
そして、充填されている水素質量が均一でない燃料電池自動車に対して新たに水素を充填して、全ての燃料電池自動車の車両タンク内の水素質量を均一にすることは、決められた質量の水素を追加することしかできない従来の水素充填方法では不可能である。
【0004】
また、均一な状態で出荷したいという要請に応えるため、燃料電池自動車の車両タンク内の水素質量ではなく、圧力を均一にすることも考えられる。
しかし、仮に圧力を均一にしたと仮定しても、圧力は温度変化による影響が大きいため、当該均一な状態を保持することは困難である。
上述した問題は水素のみではなく、CNGその他の気体燃料の場合にも生じ得る問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、充填前の車両タンク内の水素質量が定量ではなく不均一であっても、充填終了後の車両タンク内の気体燃料(例えば水素)の質量を一定にすることが出来る充填装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の充填装置(100)は、車両(20)からの情報を受信して充填制御を行う充填装置(100)において、
制御装置(10)を含み、当該制御装置(10)は、
車両(20)からの情報(例えば、車両タンク容量V、車両タンク圧力P、車両タンク温度T)に基づいて充填前の車両タンク(21)内の質量(例えば、水素質量)を算出する第1の質量算出手段(10A)と、
充填後の車両タンク(21)内の水素質量の目標値(目標充填後質量)と第1の質量算出手段(10A)で算出された質量との差異を、車両タンク(21)内に充填するべき質量として算出する第2の質量算出手段(10D)と、
車両タンク内の質量が目標充填後質量となると充填終了と判断する機能を有する手段(10F:充填制御信号発信手段)と、
車両(20)からの情報に含まれる車両タンク容量(V)と、車両タンク容量ごとに定められた目標充填後質量に基づいて、充填対象である燃料電池自動車(その時点で充填されている燃料電池自動車)の目標充填後質量を設定する設定手段(10B)を含み、
前記設定手段(10B)は目標充填後質量判定手段(10B1)及びタンク容量-目標充填後質量記憶部(10B2)を有し、
前記設定手段(10B)は目標充填後質量判定手段(10B1)及びタンク容量-目標充填後質量記憶部(10B2)を有し、
前記タンク容量-目標充填後質量記憶部(10B2)はタンク容量と目標充填後質量との関係を記憶する機能を有し、
前記目標充填後質量判定手段(10B1)は、充填対象である燃料電池自動車のタンク容量(V)を取得する機能と、前記タンク容量-目標充填後質量記憶部(10B2)に記憶されているタンク容量と目標充填後質量との関係を用いて取得したタンク容量(V)から目標充填後質量を決定する機能を有しているを特徴としている。
本明細書において、「目標充填後質量」は、充填後の車両タンク(21)内の水素質量の目標値であって、例えば出荷された燃料電池自動車の車両タンク(21)内に充填しておきたい水素質量である。
【0008】
或いは、本発明の充填装置(100)は、車両(20)からの情報を受信して充填制御を行う充填装置(100)において、
制御装置(10)を含み、当該制御装置(10)は、
車両(20)からの情報(例えば、車両タンク容量V、車両タンク圧力P、車両タンク温度T)に基づいて充填前の車両タンク(21)内の質量(例えば、水素質量)を算出する第1の質量算出手段(10A)と、
充填後の車両タンク(21)内の水素質量の目標値(目標充填後質量)と第1の質量算出手段(10A)で算出された質量との差異を、車両タンク(21)内に充填するべき質量として算出する第2の質量算出手段(10D)と、
車両タンク内の質量が目標充填後質量となると充填終了と判断する機能を有する手段(10F:充填制御信号発信手段)を有しており、
前記充填装置(100)は、作業者が目標充填後質量を設定する態様に切り替える入力装置としての機能を有する目標充填後質量切替部(10B3)を含むことを特徴としている。
さらに、本発明の充填装置(100)は、車両(20)からの情報を受信して充填制御を行う充填装置(100)において、
制御装置(10)を含み、当該制御装置(10)は、
車両(20)からの情報(例えば、車両タンク容量V、車両タンク圧力P、車両タンク温度T)に基づいて充填前の車両タンク(21)内の質量(例えば、水素質量)を算出する第1の質量算出手段(10A)と、
充填後の車両タンク(21)内の水素質量の目標値(目標充填後質量)と第1の質量算出手段(10A)で算出された質量との差異を、車両タンク(21)内に充填するべき質量として算出する第2の質量算出手段(10D)と、
車両タンク内の質量が目標充填後質量となると充填終了と判断する機能を有する手段(10F:充填制御信号発信手段)を有しており、
前記充填装置(100)は、前記充填装置(100)の販売時点情報管理システム(POS)或いは(制御盤等の)後方設備で設定した目標充填後質量の情報を中継する機能を有する目標充填後質量切替部(10B3)を含むことを特徴としている。
【0009】
本発明の実施に際して、前記充填装置(100)は、充填終了後の車両タンク(21)内の目標充填後質量を表示する部分(7A)と、前記充填装置(100)により充填された質量を表示する部分(7B)と、車両タンク(21)内の温度(℃)を表示する部分(7C1)と、車両タンク(21)内の圧力(MPa)が表示される部分(7C2)と、充填開始からの充填質量(表示部分7Bに表示される)に充填開始時に車両タンク(21)内に存在した水素質量を加えた質量ある車両タンク内質量(kg)が表示される部分(7D)を備えた表示器(7)を含むことが好ましい。
それに加えて、前記表示器(7)には、充填状況を表示する表示手段(7E:例えば、目標充填後質量に対する充填量の割合を棒状グラフで表示する機構:バータイプの表示手段)を設けることが出来る。
【0010】
また本発明の実施に際して、車両情報は燃料電池自動車(20)から直接取得しても良いし、或いは、その他のシステム(例えば車載通信機)を介して取得しても良い。
それに加えて、本発明の充填装置(100)には脱圧弁(6)が設けられているのが好ましい。ここで、充填装置(100)或いは充填装置(100)を具備する設備における構成等に基づいて、脱圧弁(6)は常開であっても常閉であっても良い。
常閉の脱圧弁(6)の場合には、充填開始時に脱圧弁(6)は閉鎖しており、充填終了後に脱圧弁(6)を開放した後、一定時間が経過し且つ圧力が所定値(例えば1MPa)以下になると脱圧弁(6)を閉鎖して、気体燃料の充填を終了する。一方、常開の脱圧弁(6)の場合には、充填時には脱圧弁(6)を閉鎖し、非充填時或いは緊急時には脱圧弁(6)を開放する。
【発明の効果】
【0011】
上述の構成を具備する本発明によれば、充填前に車両タンク(21)内に既に充填されている気体燃料(例えば水素)の質量が充填対象である燃料電池車毎に異なっていても、(制御装置10における)第1の質量算出手段(10A)によって充填前の車両タンク(21)内の気体燃料質量(既に車両タンク21内に充填されている水素質量)を算出することが出来る。例えば、車両情報から車両タンク容量(V)、車両タンク圧力(P)、車両タンク温度(T)が出力されれば、既存の技術により、車両タンク(21)内に実際に充填されている気体燃料の質量が算出或いは演算される。
そして、第1の質量算出手段(10A)で算出された質量と目標充填後質量に基づいて、第2の質量算出手段(10D)により、車両タンク(21)内に充填するべき質量を算出することが出来る。そして算出された充填質量だけ気体燃料を充填することにより、車両タンク(21)内に目標充填後質量を均一に充填し、充填後には車両タンク(21)内の質量を一定にすることが出来る。
【0012】
充填後の車両タンク(21)内の質量が一定なので、燃料電池自動車製造工場からの出荷時には、均一の状態(車両タンク21内に充填されている水素質量が全車両で一定な状態)の燃料電池自動車(20:車両)を提供することが出来る。
その結果、出荷時における車両タンク(21)内への燃料ガスの充填における重大なミスを事前に防止して、燃料電池自動車出荷に関する信用を向上させることが出来る。
【0013】
本発明において、車両(20)からの情報に含まれる車両タンク容量(V)と、車両タンク容量ごとに定められた目標充填後質量に基づいて、充填対象である燃料電池自動車(20:その時点で充填されている燃料電池自動車)の目標充填後質量を(作業員によることなく)自動的に設定する設定手段(10B)を有していれば、燃料電池自動車(20)に充填する度毎に作業員が目標充填後質量を設定しなくても、前記設定手段(10B)により自動的に目標充填後質量を設定することが出来る。そのため、充填作業を行う作業員の労力を軽減することが出来て、作業員による目標充填後質量の設定ミスが防止される。
【0014】
また本発明において、目標充填後質量を表示する表示部分(7A)を設けた表示器(7)を設ければ、充填対象となる燃料電池自動車(20)ごとに異なる目標充填後質量が表示器(7)に表示されるので、表示された目標充填後質量を視認することにより、充填するべき燃料電池自動車(20)の目標充填後質量を容易に確認することが出来る。
ここで表示器(7)に、充填質量を表示する表示部分(7B)と、車両情報を表示する表示部分(7C)を設ければ、表示された車両情報を視認することにより、充填時における車両(20)の状況を確認して、安全に充填されていることを把握出来る。
或いは表示器(7)に、充填状況を表示する表示手段(7E)を設ければ、表示手段(7E)に表示された充填状況を視認して、充填中の経過情報や収量を視覚的に理解することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】実施形態で用いられる制御装置の機能ブロック図である。
【
図3】目標充填後質量を設定する態様を機能ブロック様に示した説明図である。
【
図4】車両情報授受の態様を示すブロック図である。
【
図5】実施形態による目標充填後質量を設定する手順を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態による水素充填における制御を示すフローチャートである。
【
図7】
図6に連続する制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図示の実施形態では、燃料電池自動車に水素を充填する水素充填装置を例示している。
最初に
図1を参照して本発明の実施形態に係る充填装置を説明する。
図1において、全体を符号100で表す充填装置は、水素供給配管1、流量計2、流量調整弁3、ガス管路冷却部4、遮断弁5、脱圧弁6、表示器7、制御装置10を有している。
水素供給配管1の上流側は図示しない水素供給源(例えば蓄圧器)に連通しており、水素供給配管1の下流側は、充填ホース8、図示しない充填ノズルを介して燃料電池自動車の車両タンク21に接続されている。
図1では車両タンク21、充填ホース8のみが模式的に図示され、燃料電池自動車は図示されていない。
水素供給配管1には、流量計2、流量調整弁3、ガス管路冷却部4、遮断弁5、脱圧弁6が介装されている。脱圧弁6は放散管19に連通している。
図示しない水素供給源に貯蔵されている水素は、水素供給配管1を流過し、流量計2、流量調整弁3、ガス管路冷却部4、遮断弁5を経由して充填ホース8を流れ、充填ノズルを介して車両タンク21内に充填、供給される。
【0017】
制御装置10は、入力信号ラインSi1を介して流量計2の計測結果を取得すると共に、制御信号ラインSo1を介して流量調整弁3に制御信号を送信する。ガス管路冷却部4は従来公知の構造を具備しており、車両タンク21に充填される水素の温度を低下させる機能を有している。
制御装置10は、充填を終了或いは中止する際に、流量調整弁3、遮断弁5、脱圧弁6に対して、それぞれ制御信号ラインSo1、So2、So3を介して制御信号を送信し、流量調整弁3、遮断弁5を閉鎖し、脱圧弁6を開放或いは閉鎖する。充填終了時或いは中止時の制御については、
図6、
図7を参照して後述する。
【0018】
車両タンク21の内部には、圧力Pを計測する圧力センサ(図示しない)及び温度Tを計測する温度センサ(図示しない)を備えており、車両タンク21内の圧力P、温度T及び車両タンク21の容量Vの車両情報は、制御装置10に(刻々と)送信されている。車両情報の授受については、
図4を参照して後述する。
充填装置100は、上述の車両情報(車両タンク21内の圧力P、車両タンク21内の温度T、車両タンク21の容量V)に基づいて、充填前の車両タンク21内の水素質量が定量ではなく不均一であっても、目標充填後質量(充填後の車両タンク21内の水素質量の目標値)とする様に充填制御して、充填終了後の車両タンク21内の水素質量が一定値(均一な水素質量)となるように制御している。充填制御については
図6、
図7を参照して後述する。
【0019】
図1で示す様に、表示器7は、表示部分7A、7B、7C1、7C2、7Dと表示手段7Eを備えており、制御装置10から制御信号ラインSo4を介して制御信号を取得し、各種パラメータを表示する機能を有している。
表示器7の表示部分7Aには、充填終了後の車両タンク21内の目標充填後質量(kg)が表示され、
図1では2.0(kg)を例示している。目標充填後質量は、例えば出荷された燃料電池自動車の車両タンク(21)内に充填しておきたい水素質量であり、充填後の車両タンク(21)内の水素質量の目標値である。
表示部分7Bには充填質量(kg:充填機により充填された質量:充填開始からの充填質量)が表示され、
図1では0.6(kg)が例示されている。
【0020】
表示部分7Cは車両情報の表示部分であって、図示の実施形態では、表示部分7C1には車両タンク21内の温度(℃)、表示部分7C2には車両タンク21内の圧力(MPa)が表示される。
図1では、車両タンク21内の温度として16.0℃、車両タンク21内の圧力として60.0MPaが例示されている。
表示部分7Dには車両タンク内質量(kg)が表示される。車両タンク内質量は、充填開始からの充填質量(表示部分7Bに表示される)に、充填開始時に車両タンク21内に存在した水素質量(例えば、0.2kg)を加えた質量である。
表示手段7Eは充填状況を表示している。
図1の例では、車両タンク21内の目標充填後質量に対する車両タンク内質量の割合を表示バーによりアナログに表示している。充填終了後の車両タンク21内の目標充填後質量が2.0kgであり、車両タンク内質量が0.8kgであるので、
図1の例では、車両タンク21内の目標充填後質量に対する車両タンク内質量の割合40%(=0.8kg/2.0kg)である。充填状況としては表示バーのみならず、デジタル表示として「%」を示しても良いし、目標充填後質量とするための残り時間を表示しても良い。
【0021】
図1において、水素充填装置100の水素供給配管1には供給配管入口側圧力センサ11、供給配管出口側圧力センサ12が介装され、それぞれ水素供給配管1内の入口側圧力と出口側圧力を計測し、計測結果は、入力信号ラインSi2、Si3を介して制御装置10に送信する。
また、水素供給配管1には供給配管温度センサ13が介装され、水素供給配管1内の温度を計測し、入力信号ラインSi4を介して計測結果を制御装置10に送信する機能を有している。
【0022】
図1において、水素充填装置100にはスイッチ部14が設けられ、スイッチ部14は、水素充填の開始時に操作される充填開始スイッチ14A、水素充填が終了し充填を停止させる時に操作される充填停止スイッチ14B、緊急停止時に操作される緊急停止スイッチ14Cを備えている。スイッチ14A~14Cが操作されたことを示す操作信号は、入力信号ラインSi5を介して制御装置10に送信される。
また水素充填装置100には、複数個所にガス検知器15が配置されており、水素ガスの漏洩を検知している。ガス検知器15による検知結果は、入力信号ラインSi6を介して制御装置10に送信される。
【0023】
水素充填装置100には報知器16が設けられ、報知器16は、制御装置10から制御信号ラインSo5を介して送信させる制御信号により作動して、例えば警報を発して異常を報知する機能を有している。異常報知については
図7で後述するが、例えば、所定量まで充填することが出来ない充填異常や、ガス検知器15により検知されるガス漏洩等がある。
さらに、水素充填装置100は制御盤9を備えており、制御盤9への入力された情報は、入力信号ラインSi17を介して制御装置10に送信される。
【0024】
次に
図2を参照して、制御装置10について詳細に説明する。
図2において、制御装置10は、第1の質量算出手段10A、目標充填後質量設定手段10B、第2の質量算出手段10D、充填質量算出手段10E、及び充填制御信号発信手段10Fを有している。
第1の質量算出手段10Aは、充填前の車両20から入力信号ラインSi7を介して車両情報を取得し、充填前の車両タンク21内の水素質量を算出する機能を有している。車両情報は、例えば車両タンク21の容量V、車両タンク21内の圧力P、車両タンク21内の温度Tであり、容量V、圧力P、温度Tから既存の技術を用いて、充填前の車両タンク21内に充填されている水素質量が演算・算出される。
第1の質量算出手段10Aの算出結果、すなわち充填前の車両タンク21内の水素質量は、入力信号ラインSi8を介して第2の質量算出手段10Dに送信される。
【0025】
目標充填後質量設定手段10Bは、車両20から、入力信号ラインSi9を介して車両情報として車両タンク21の容量Vを取得し、或いは図示しない入力手段を介して出荷時に車両タンクに充填されているべき水素ガス質量を取得し、目標充填後質量(充填後の車両タンク21内の水素質量の目標値)を設定する機能を有している。
目標充填後質量設定の具体的な手法については、
図3を参照して後述する。
目標充填後質量設定手段10Bで設定した目標充填後質量は、入力信号ラインSi10(Si15)を介して第2の質量算出手段10Dに送信される。
なお、
図3を参照して後述するように、目標充填後質量は目標充填後質量切替部10B3から入力信号ラインSi15を介して第2の質量算出手段10Dに送信される場合もある。
【0026】
第2の質量算出手段10Dでは、第1の質量算出手段10Aから取得した充填前の車両タンク21内の水素質量と、目標充填後質量設定手段10Bから取得した目標充填後質量との差から、車両タンク21内に充填するべき水素質量(設定質量)を算出する機能を有している。換言すると、第2の質量算出手段10Dにおいて、車両タンク21内に充填するべき水素質量(設定質量)は、目標充填後質量から充填前の車両タンク21内の水素質量を減算した値に相当する。
【0027】
第2の質量算出手段10Dの算出結果(設定質量:車両タンク21内に充填するべき水素質量)は、入力信号ラインSi12を介して充填制御信号発信手段10Fに送信される。
なお、図示はされていないが、第1の質量算出手段10Aと第2の質量算出手段10Dとの間に比較手段を配置することも可能である。
【0028】
充填質量算出手段10Eは、充填開始後の流量計2から入力信号ラインSi1を介して流量計測値(質量)を取得し、充填開始後から車両タンク21内に充填された水素質量(の積算値)である充填質量を算出する機能を有している。流量計2の計測結果である充填質量(水素質量)と実際に車両タンク21内に充填される充填質量の誤差(水素供給配管系の容積に起因する誤差)は、充填質量算出手段10Eにおいて、例えば予め経験的に決定されている態様により解消されている。
充填質量算出手段10Eの算出結果(充填質量:充填開始後から車両タンク21内に充填された水素質量)は、入力信号ラインSi13を介して充填制御信号発信手段10Fに送信される。
【0029】
充填制御信号発信手段10Fでは、充填質量算出手段10Eから取得した充填開始後から車両タンク21内に充填された充填質量と、第2の質量算出手段10Dから取得した車両タンク21内に充填するべき設定質量との差異を演算し、演算された差異に基づいて、充填を継続するか或いは終了するかを判断する機能を有している。そして、制御信号ラインSo1を介して流量調整弁3の開度制御を行う機能を有している。それと共に、制御信号ラインSo2を介して遮断弁5を開閉制御する機能と、制御信号ラインSo3を介して脱圧弁6を開閉制御する機能を有している。
図示の実施形態においては、車両タンク21内に充填された充填質量(水素質量)が充填するべき設定質量(水素質量)に到達する以前の過程で、水素流量を段階的に絞っている。
【0030】
図示の実施形態では、設定質量(車両タンク21内に充填するべき水素質量)と充填質量(車両タンク21内に充填された水素質量)との差が第1の所定値w1以下になった時と、設定質量と充填質量との差が第2の所定値w2以下になった時に、それぞれ流量調整弁3の弁開度を充填当初に対して絞り、第1の所定開度割合、第2の所定開度割合に制御して充填している。
図示の実施形態では、第1の所定値w1は150g、第2の所定値w2は50gである。そして、第1の所定開度割合は700g/min、第2の所定開度割合は300g/minである。
充填質量が設定質量に達した時に、充填制御信号発信手段10Fは水素充填を終了する旨を判断して、流量調整弁3を完全に閉鎖し、遮断弁5を閉鎖する。
【0031】
また、充填制御信号発信手段10Fは、流量調整弁3、遮断弁5の閉鎖完了を確認後、制御信号ラインSo3を介して脱圧弁6に制御信号を送信して開放(或いは閉鎖)する機能を有している。流量調整弁3、遮断弁5の閉鎖完了の確認は、例えば流量調整弁3、遮断弁5への制御信号の送信後に一定時間が経過したか否かで判断し、或いはその他の公知技術に基づいて判断しても良い。
流量調整弁3により車両タンク21への供給流量を段階的に絞りながら流量調整弁3、遮断弁5を閉鎖し、さらに脱圧弁6を開放(或いは閉鎖)する制御については、
図6、
図7のフローチャートを参照して後述する。
【0032】
目標充填後質量設定手段10Bについて、
図3を参照して説明する。
図示の実施形態では、目標充填後質量の設定は第1~第3の態様で実行している。
第1の態様では、目標充填後質量設定手段10Bにより車両タンク容量Vに対応して自動的に設定し、第2の態様では作業者の手作業により目標充填後質量を設定し、第3の態様ではPOSや制御盤や後方設備により目標充填後質量を設定する。
図3では、第1~第3の態様が単一の図面において、機能ブロックの様な状態で示されている。
【0033】
図3において、第1の態様では、目標充填後質量設定手段10Bは、目標充填後質量判定手段10B1とタンク容量-目標充填後質量対照記憶部10B2を有する。タンク容量-目標充填後質量記憶部10B2にはタンク容量-目標充填後質量対照表が記憶されており、タンク容量-目標充填後質量対照表には、例えばタンク容量Vが100L(リットル)であれば目標充填後質量は1kg、タンク容量Vが200Lであれば目標充填後質量は2kg、タンク容量Vが400Lであれば目標充填後質量は4kgとなっており、タンク容量Vに対して目標充填後質量が一義的に決定されている。
目標充填後質量判定手段10B1は、入力信号ラインSi9を介して車両タンク21の容量Vを取得し、車両タンク21の容量Vから、信号ラインSi14を介してタンク容量-目標充填後質量記憶部10B2に記憶されるタンク容量-目標充填後質量対照表を参照して、目標充填後質量を決定する。
目標充填後質量判定手段10B1で決定された目標充填後質量は、入力信号ラインSi10を介して制御装置10の第2の質量算出手段10Dに送信される。
【0034】
図3において、第2の態様では、目標充填後質量設定手段10Bは、目標充填後質量切替部10B3を有している。目標充填後質量の設定に際して、作業者は目標充填後質量切替部10B3の図示しない操作ボタンを操作することにより、目標充填後質量を設定する。その際、目標充填後質量切替部10B3は入力装置として機能する。
目標充填後質量切替部10B3の操作ボタンは、例えば目標充填後質量が1kgであれば1番ボタン、目標充填後質量が2kgであれば2番ボタン、目標充填後質量が3kgであれば3番ボタン、・・・・、目標充填後質量が5kgであれば5番ボタン、・・・の様に設定され、作業者の判断により操作すべきボタンを選択し、操作する。
目標充填後質量切替部10B3における作業者のボタン選択(操作)結果は、入力信号ラインSi15を介して第2の質量算出手段10Dに送信される。
【0035】
図3において、第3の態様では、第2の態様と同様に、図示しないPOS(販売時点情報管理システム)や制御盤9(
図1)等の後方設備の操作ボタン等を操作することにより、予め目標充填後質量を設定する。換言すれば、第3の態様において目標充填後質量切替部10B3は、POSや制御盤等の後方設備による目標充填後質量の情報を中継する機能を有している。
第3の態様については、
図5を参照して後述する。
目標充填後質量の設定における第1~第3の態様は、実機においては、何れか1つの態様のみが実行される。
【0036】
車両情報(車両タンク21内の圧力P、車両タンク21内の温度T、車両タンク21の容量V)は、車両20から水素充填装置100の制御装置10における第1の質量算出手段10A及び目標充填後質量設定手段10Bに送信されるが、その送信の第1の態様及び第2の態様が
図4に示されている。
第1の態様では、車両情報を燃料電池自動車20の車両タンク21から、充填ホース8に沿って設けられている信号回線17(有線)を介して、車両タンク21内の圧力P、車両タンク21内の温度T、車両タンク21の容量Vの情報が、車載制御装置22、充填用コネクタ23、充填ホース8に沿設された信号回線17(有線)を経由して水素充填装置100に送信される。
【0037】
図4において、水素充填装置100において、流量計2から制御装置10への入力信号ラインSi1、制御装置10から流量調整弁3、遮断弁5への制御信号ラインSo1、So2が図示されている。ここで、
図4では図示の煩雑を回避するため、流量調整弁3、遮断弁5を1つの弁として示している。
【0038】
図4において、車両情報を車両20から水素充填装置100に送信する第2の態様では、車両情報は無線通信により水素充填装置100に取得される。
第2の態様において、車両情報である車両タンク21内の圧力P、温度T、容量Vのデータは、車載制御装置22を介して車両側送受信装置24から送信され、水素充填装置100側の送受信装置18により受信され、水素充填装置100内の制御装置10の第1の質量算出手段10A及び目標充填後質量設定手段10Bに送信される。
車両情報の送信に際しては、第1及び第2の態様の何れか1つが選択される。
【0039】
図示の実施形態の制御について、主として
図5~
図7を参照して説明する。
図5は、目標充填後質量をPOSや制御盤9(
図1)等により設定する態様(
図3における第3の態様)で実行する場合を示している。
作業者の手作業により目標充填後質量を設定する態様(
図3における第2の態様)の場合には、
図6のフローチャートにおけるステップS3(車両情報が入力されたか否かを判断する論理回路)以前の段階で、作業者の手作業により目標充填後質量が設定される。
また、目標充填後質量設定手段10Bにより、車両タンク容量Vに対応して目標充填後質量を自動的に設定する態様(
図3における第1の態様)であれば、
図6のフローチャートにおけるステップS4以前の段階で、目標充填後質量設定手段10Bにより、車両タンク容量Vに対応して目標充填後質量が自動的に設定される。
【0040】
図5において、ステップS31では、POSや制御盤9等により目標充填後質量の設定が終了したか否かを判断する。
POSや制御盤9等により目標充填後質量の設定が終了した場合(ステップS31が「Yes」)、ステップS32に進み、POSや制御盤9等により目標充填後質量の設定が終了していない場合(ステップS31が「No」)、ステップS31に戻る。
ステップS32では、目標充填後質量を出力する。ステップS32で出力されたPOSや制御盤9等により設定された目標充填後質量は、
図6のフローチャートにおけるステップS4以前の段階で設定される。
目標充填後質量の設定における第1~第3の態様(
図3における第1~第3の態様)は、実機においては、何れか1つの態様のみが実行される。
【0041】
図示の実施形態における水素充填の手順を示す
図6において、ステップS1(車両20側)では、車両タンク21(
図4)の図示しない充填口が開いたか否かを、車載制御装置22(
図4)が判断する。
車両タンク21の充填口が開いていれば(ステップS1が「Yes」)ステップS2に進み、車両タンク21の充填口が開いていなければステップS1に戻る(ステップS1が「No」のループ)。
ステップS2(車両タンク21の充填口が開)では、車載制御装置22により車両情報(車両タンク21内の圧力P、同温度T、車両タンク21の容量V)を水素充填装置100側に出力する。水素充填装置100側に出力された車両情報は、制御装置10の第1の質量算出手段10A、目標充填後質量設定手段10Bに送信される。そしてステップS3に進む。
【0042】
ステップS3(水素充填装置100側)では、車両20側(車両タンク21側)から車両情報が水素充填装置100側の制御装置10に入力されたか否かを、制御装置10が判断する。
車両20側からの車両情報が水素充填装置100側に入力されていれば(ステップS3が「Yes」)ステップS4に進み、車両20側からの車両情報が水素充填装置100側に入力されなければステップS3に戻る(ステップS3が「No」のループ)。
【0043】
ステップS4(車両情報が水素充填装置100側に入力)では、充填前の車両タンク21内の水素質量を算出する。充填前の車両タンク21内の水素質量の算出は、第1の質量算出手段10Aが、車両情報(車両タンク21内圧力P、車両タンク21内温度T、車両タンク21容量V)に基づき実行する。
そしてステップS5に進む。
【0044】
ステップS5では、第2の質量算出手段10Dにより、目標充填後質量から充填前の車両タンク21内の水素質量を減算して、車両タンク21内に充填するべき水素質量(設定質量)を算出する。そしてステップS6に進み、水素充填装置100をリセットし、新たな水素充填を可能にする。そしてステップS7に進む。
ステップS7では、制御装置10が充填開始スイッチ14Aの作動信号を、入力信号ラインSi5を介して取得したか否かにより、水素充填装置100の充填開始スイッチ14Aが操作(押下)されたか否かを判断する。
充填開始スイッチ14Aが操作された場合(ステップS7が「Yes」)ステップS8に進み、充填開始スイッチ14Aが押下されない場合はステップS7に戻る(ステップS7が「No」のループ)。
【0045】
ステップS8(充填開始スイッチ14Aが操作された場合)では、制御装置10から脱圧弁6、遮断弁5、流量調整弁3に制御信号を送信して、脱圧弁6を閉鎖し、遮断弁5を開放し、流量調整弁3を開放する。これにより、水素充填装置100から車両タンク21への水素充填が開始される。当該水素充填に際しては、既存の充填プロトコルに従って実行する。例えば、充填中に温度、圧力が所定のしきい値を超えない様に監視しながら、安全な充填を行う。
【0046】
続くステップS9では、入力信号ラインSi1を介して制御装置10が流量計2からの流量信号(パルス信号)を取得したか否かを確認する。
ステップS9で流量パルスを確認したならば(ステップS9が「Yes」)水素充填が行われたと判断して、
図7のステップS10に進む。
【0047】
図7において、ステップS10では、水素充填装置100の表示部7には目標充填後質量や充填機により充填された質量等の各種数値(計数)が表示される。
当該計数表示は、制御信号ラインSo4を介して制御装置10から表示器7に送信される制御信号に基づき実行される。そしてステップS11に進む。
【0048】
ここで
図6、
図7では、上述した様にステップS8以降に水素充填が実行され、水素充填に際しては、流量調整弁3を調整し、各制御サイクルにおける流量(瞬時の流量)が所定値となる様に制御される。
図示の実施形態では効率的且つ安定した水素充填を行うため、水素充填が進行すると流量調整弁3の弁開度を調節し、段階的に水素供給流量を絞っている。そして、車両タンク21内に充填された水素質量(充填質量)が充填するべき水素質量(設定質量)に達した時、流量調整弁3を完全に閉鎖し、遮断弁5を閉鎖している。
ステップS11では、充填制御信号発信手段10Fにより、設定質量(車両タンク21内に充填するべき水素質量)と充填質量(車両タンク21内に充填された水素質量)との差が第1の所定値w1(例えば150g)以下になったか否かを判断する。
設定質量と充填質量との差が第1の所定値w1以下になった場合(ステップS11が「Yes」)ステップS12に進み、設定質量と充填質量との差が第1の所定値w1以下にならない場合はステップS13に進む(ステップS11が「No」)。
【0049】
ステップS12(設定質量と充填質量との差が第1の所定値w1以下)では、流量調整弁3の弁開度を第1の所定開度割合まで減少する(絞る)。第1の所定開度割合は、例えば充填当初の弁開度の50%(流量が約700g/min)に相当する弁開度である。そして、流量調整弁3の弁開度第1の所定開度割合に相当する弁開度となる。流量調整弁3の弁開度の制限は、充填制御信号発信手段10Fから流量調整弁への制御信号に基づき実行される。そしてステップS15に進む。
ステップS13(設定質量と充填質量との差が第1の所定値w1以下ではない場合)では、充填状態が異常であるか否かを判断する。充填異常としては、例えば、目標充填後質量に達することが見込めない事態である。
ステップS13の判断の結果、充填異常がある場合(ステップS13が「Yes」)はステップS14に進み、充填異常がない場合(ステップS13が「No」)は、ステップS9、S10と同様に、流量計2からの流量信号(パルス信号)を取得したか否かを確認し、流量パルスを確認したならば表示部7に目標充填後質量や充填機により充填された質量等の各種数値(計数)を表示する。そしてステップS11に戻る。
ステップS14(充填異常がある場合)は報知器16により異常報知を行う。そしてステップS22に進む。
【0050】
流量調整弁3の弁開度を第1の所定開度割合まで減少した後、ステップS15において、充填制御信号発信手段10Fにより、設定質量(車両タンク21内に充填するべき水素質量)と充填質量(車両タンク21内に充填された水素質量)との差が第2の所定値w2(例えば50g)以下になったか否かを判断する。
設定質量と充填質量との差が第2の所定値w2以下になった場合(ステップS15が「Yes」)はステップS16に進み、設定質量と充填質量との差が第2の所定値w2以下ではない場合はステップS17(ステップS15が「No」)に進む。
ステップS16(設定質量と充填質量との差が第2の所定値w2以下)では、流量調整弁3の弁開度を第2の所定開度割合まで減少する(絞る)。第2の所定開度割合は、例えば充填当初の弁開度に対して20%(目標瞬時流量が約300g/min)に相当する弁開度である。その後、第2の所定開度割合まで減少された流量調整弁3の弁開度により水素充填を継続し、ステップS19に進む。
【0051】
ステップS17(設定質量と充填質量との差が第2の所定値w2以下ではない場合)では、充填状態が異常であるか否かを判断する。充填異常があれば(ステップS17が「Yes」)ステップS18に進み、充填異常がなければ(ステップS17が「No」)、ステップS9、S10と同様に、流量計2からの流量信号(パルス信号)を取得したか否かを確認し、流量パルスを確認したならば表示部7に目標充填後質量や充填機により充填された質量等の各種数値(計数)を表示する。そしてステップS15に戻る。
ステップS18(充填異常)では報知器16により異常を報知し、そして異常報知後にステップS22に進む。
【0052】
流量調整弁3の弁開度を第2の所定開度割合まで減少した後、ステップS19で、充填制御信号発信手段10Fにより、設定質量(車両タンク21内に充填するべき水素質量)と充填質量(車両タンク21内に充填された水素質量)とが等しくなったか否か判断する。換言すれば、車両タンク21内の水素質量が目標充填後質量に到達したか否かを判断する。
充填質量が設定質量に達した場合(ステップS19が「Yes」)はステップS22に進み、充填質量が設定質量に達しない場合(ステップS19が「No」)はステップS20に進む。
【0053】
ステップS20(充填質量が設定質量に達しない場合)では、充填状態が異常であるか否かを判断する。充填異常がある場合(ステップS20が「Yes」)はステップS21に進み、充填異常がない場合は(ステップS20が「No」)、ステップS9、S10と同様に、流量計2からの流量信号(パルス信号)を取得したか否かを確認し、流量パルスを確認したならば表示部7に目標充填後質量や充填機により充填された質量等の各種数値(計数)を表示する。そしてステップS19に戻る。
ステップS21(充填異常)では報知器16により異常を報知し、その後、ステップS22に進む。
【0054】
ステップS22では、車両タンク21への水素充填が完了したこと或いは充填異常を検知したことを受けて、充填制御信号発信手段10Fからの制御信号に基づき流量調整弁3(
図1)を閉鎖し、遮断弁5(
図1)を閉鎖する。ここで、水素充填が完了した場合は充填終了の報知を行う。そしてステップS23に進む。
ステップS23では、流量調整弁3、遮断弁5の閉鎖確認が完了したか否かを判断する。流量調整弁3、遮断弁5の閉鎖確認が完了した場合(ステップS23が「Yes」)はステップS24に進み、流量調整弁3、遮断弁5の閉鎖確認が完了しない場合はステップS23に戻る(ステップS23が「No」のループ)。
【0055】
ステップS24(流量調整弁3、遮断弁5の閉鎖確認が完了)では、充填制御信号発信手段10Fからの制御信号に基づき、脱圧弁6(
図1)を開放し、脱圧する。
図示の実施形態において、脱圧弁6は常開でも常閉でも良い。図示の実施形態では、脱圧弁6は常開であり、充填の際には脱圧弁6を閉鎖し、充填後、脱圧に際して開放する。図示はされていないが、緊急時にも脱圧弁6を開放する。
それに対して常閉の脱圧弁の場合には、充填開始時に脱圧弁は閉鎖しており、充填終了後に脱圧弁を開放した後、一定時間が経過し且つ圧力が所定値(例えば1MPa)以下になると脱圧弁を閉鎖して、気体燃料の充填を終了する。
図7において、ステップS13が「No」の場合、ステップS17が「No」の場合、ステップS20が「No」の場合に、判断記号とプロセス・処理記号を表示せずに、カッコ内に「ステップS9、S10と同様」と記載している。図示の煩雑化を防止するためである。
【0056】
図示の実施形態によれば、充填前に車両タンク21内に既に充填されている水素(気体燃料)の質量が燃料電池車毎に異なっていても、制御装置10の第1の質量算出手段10Aによって充填前の車両タンク21内の水素質量(既に車両タンク21内に充填されている水素質量)を算出することが出来る。
そして、第1の質量算出手段10Aで算出された充填前の水素質量と目標充填後質量との差に基づいて、第2の質量算出手段10Dによって車両タンク21内に充填するべき質量である設定質量を算出している。算出された設定質量に相当する水素を充填することにより、車両タンク21内に充填された水素の質量を目標充填後質量に等しくして、充填後における車両タンク21内の水素質量を一定にすることが出来る。
【0057】
充填後の車両タンク21内の水素質量を一定に出来るので、燃料電池自動車製造工場からの出荷時に、均一の状態(車両タンク21内に充填されている水素質量が全車両で一定な状態)の燃料電池自動車20(車両)を提供することが出来る。
その結果、出荷時における車両タンク21内への燃料ガスの充填に関する重大なミスが事前に防止されて、燃料電池自動車出荷に関する信用を向上させることが出来る。
【0058】
図示の実施形態では、車両20からの情報に含まれる車両タンク容量Vと、車両タンク容量Vごとに定められた目標充填後質量に基づいて、充填対象である燃料電池自動車20(その時点で充填されている燃料電池自動車)の目標充填後質量を設定する設定手段10Bを有しているので、燃料電池自動車20に充填する度毎に作業員が目標充填後質量を設定しなくても、前記設定手段10Bにより自動的に目標充填後質量を設定することが出来る。そのため、充填作業を行う作業員の労力を軽減することが出来て、作業員による目標充填後質量の設定ミスが防止される。
ただし、目標充填後質量を設定するに際しては、目標充填後質量切替部10B3を設け、作業者の手作業により目標充填後質量を設定することも出来る。或いは、POS(販売時点情報管理システム)や制御盤等の後方設備により、目標充填後質量を設定することも出来る。
【0059】
また図示の実施形態において、目標充填後質量を表示する表示部分7Aを設けたので、燃料電池自動車20ごとに異なる目標充填後質量が表示されて、容易に確認することが出来る。
さらに充填質量を表示する表示部分7Bと、車両情報(車両タンク21内の圧力P、温度T、その他)を表示する表示部分7Cを設けたので、充填時に車両20の状況を視認して、安全に充填されていることを把握出来る。
或いは表示器7に、充填状況を表示する表示手段7Dを設けたので、充填中の経過情報や充填された質量の割合を視覚的に容易に把握することが出来る。
【0060】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、図示の実施形態では、燃料電池自動車に水素を充填する水素充填装置を例示して説明しているが、CNGその他の水素以外の気体燃料を充填する充填装置にも、本発明を適用することが出来る。
【符号の説明】
【0061】
1・・・水素供給配管
2・・・流量計
3・・・流量調整弁
4・・・ガス管路冷却部
5・・・遮断弁
6・・・脱圧弁
7・・・表示器
7A~7E・・・表示部分
10・・・制御装置
10A・・・第1の質量算出手段
10B・・・目標充填後質量設定手段
10D・・・第2の質量算出手段
20・・・車両(水素燃料電池自動車)
21・・・車両タンク
100・・・水素充填装置