IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

<>
  • 特許-偏光子積層体 図1
  • 特許-偏光子積層体 図2
  • 特許-偏光子積層体 図3
  • 特許-偏光子積層体 図4
  • 特許-偏光子積層体 図5
  • 特許-偏光子積層体 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】偏光子積層体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220523BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20220523BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20220523BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
B32B7/023
B32B27/00 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018561538
(86)(22)【出願日】2017-05-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-15
(86)【国際出願番号】 US2017032798
(87)【国際公開番号】W WO2017205106
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-05-15
(31)【優先権主張番号】62/342,021
(32)【優先日】2016-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(72)【発明者】
【氏名】ストバー,カール エー.
(72)【発明者】
【氏名】ダークス,クリストファー ジェイ.
【審査官】沖村 美由
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-085444(JP,A)
【文献】特開2012-081748(JP,A)
【文献】国際公開第2013/137288(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/182639(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/173170(WO,A1)
【文献】特開2008-165199(JP,A)
【文献】特開2002-258052(JP,A)
【文献】特開2014-211609(JP,A)
【文献】特開2009-103817(JP,A)
【文献】特開2011-141408(JP,A)
【文献】特開2004-212762(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0013159(KR,A)
【文献】国際公開第2017/110350(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の遮断軸を有する吸収型偏光子と、前記第1の遮断軸に対して平行な第2の遮断軸を有する多層ポリマー反射型偏光子と、を含み、前記吸収型偏光子及び前記反射型偏光子が互いに結合されている偏光子積層体であって、
前記反射型偏光子は、前記反射型偏光子を95℃で40分間加熱した場合に、前記吸収型偏光子との結合に先立ち、前記第2の遮断軸に沿って0.4パーセント~3パーセントの範囲の収縮率を有し、前記反射型偏光子の前記収縮率は、前記偏光子積層体を95℃で40分間加熱した場合に、前記第1の遮断軸に沿った前記吸収型偏光子の収縮率よりも大きく、その結果、ガラス層に積層された前記偏光子積層体を95℃で100時間加熱した場合に、マイクロリンクルを含まない、偏光子積層体。
【請求項2】
前記吸収型偏光子及び前記反射型偏光子は、接着層を介して互いに結合されている、請求項1に記載の偏光子積層体。
【請求項3】
前記反射型偏光子とは反対側の前記吸収型偏光子上に配置された接着層を更に含み、前記反射型偏光子の前記収縮率は、前記接着層を介してガラスシートに積層された前記偏光子積層体を95℃で100時間加熱した場合に、前記反射型偏光子が、マイクロリンクルを含まないような収縮率である、請求項1に記載の偏光子積層体。
【請求項4】
前記吸収型偏光子は、少なくとも1つの保護層に結合した光学活性配向ポリマー層を含む、請求項1に記載の偏光子積層体。
【請求項5】
前記反射型偏光子は、交互に配置された複数の第1及び第2のポリマー層を含み、前記第1のポリマー層は、前記第2の遮断軸に沿って第1の屈折率を有し、前記第2のポリマー層は、前記第2の遮断軸に沿って第2の屈折率を有し、前記第2の屈折率は、前記第1の屈折率よりも小さく、前記第2のポリマー層は、100℃未満のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の偏光子積層体。
【請求項6】
前記ガラス転移温度は、80℃未満である、請求項5に記載の偏光子積層体。
【請求項7】
バックライトと、ガラス層と、請求項1に記載の偏光子積層体と、を含むディスプレイであって、前記偏光子積層体は、反射型偏光子とは反対側の吸収型偏光子上に配置された接着層を更に含み、前記偏光子積層体は、前記接着層を介して前記ガラス層に接着されており、前記偏光子積層体は、前記ガラス層と前記バックライトとの間に配置されている、ディスプレイ。
【請求項8】
前記反射型偏光子は、前記ガラス層に接着された前記偏光子積層体を100℃で100時間加熱した場合に、マイクロリンクルを含まない、請求項7に記載のディスプレイ。
【請求項9】
前記反射型偏光子は、前記ガラス層に接着された前記偏光子積層体を100℃で1000時間加熱した場合に、マイクロリンクルを含まない、請求項7に記載のディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
米国特許第6,025,897号(Weber et al.)は、反射型偏光子、及び反射型偏光子に直接結合した吸収型偏光子について記載している。
【発明の概要】
【0002】
本明細書の一部の態様では、互いに結合された吸収型偏光子及び多層ポリマー反射型偏光子を含む偏光子積層体が提供される。吸収型偏光子は、第1の遮断軸を有し、反射型偏光子は、第1の遮断軸と実質的に平行な第2の遮断軸を有する。反射型偏光子は、反射型偏光子を95℃で40分間加熱した場合に、第2の遮断軸に沿って0.4パーセント~3パーセントの範囲の収縮率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】偏光子積層体の概略断面図である。
図2】偏光子積層体を含むディスプレイの概略断面図である。
図3】マイクロリンクルを示す多層反射型偏光子の一部の概略断面図である。
図4】様々な偏光子の遮断軸に沿った収縮率の対時間のプロットである。
図5】様々な偏光子の通過軸に沿った収縮率の対時間のプロットである。
図6】様々な温度で1000時間保持された様々な偏光子の粗度の棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0004】
以下の説明では、本明細書の一部を構成し、様々な実施形態が実例として示される、添付図面が参照される。図面は、必ずしも一定の比率の縮尺ではない。本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の実施形態が想定され、実施され得ることを理解されたい。したがって、以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味で解釈されないものとする。
【0005】
反射型偏光子及び吸収型偏光子の両方を含む偏光子積層体は時々、ディスプレイ用途に使用される。例えば、液晶ディスプレイ(liquid crystal display、LCD)内の内部偏光子(観者に向いていない偏光子)は、バックライトに向いている反射型偏光子及びディスプレイパネルに向いている吸収型偏光子を含み得る。液晶ディスプレイ(LCD)内の外部偏光子(観者に向いている偏光子)は、典型的には、吸収型偏光子のみを含み、任意で吸収型偏光子のバックライト側に補償フィルムを含む。偏光子積層体及びディスプレイ用途でのそれらの使用は、一般的には、米国特許第6,025,897号(Weber et al.)に記載されており、これは、本発明の記載と矛盾しない限りにおいて、参照として本明細書に組み込まれる。
【0006】
反射型偏光子は、交互に配置された複数のポリマー層を含むポリマー多層反射型偏光子であってもよい。このようなポリマー多層反射型偏光子は、一般的には、例えば、米国特許第5,882,774号(Jonza et al.)、同第5,962,114号(Jonza et al.)、同第5,965,247号(Jonza et al.)、同第6,939,499号(Merrill et al.)、同第6,916,440号(Jackson et al.)、同第6,949,212号(Merrill et al.)、及び同第6,936,209号(Jackson et al.)に記載されており、これらの各々は、本発明の記載と矛盾しない限りにおいて、参照として本明細書に組み込まれる。要約すれば、ポリマー多層反射型偏光子は、交互に配置された複数のポリマー層(例えば、数百層)を共押出しすることと、この押出加工フィルムを(例えば、ライナーテンター又はパラボリックテンターで)一軸延伸又は実質的に一軸延伸してフィルムを配向することと、米国特許出願公開第2013/0123459号(Merrill et al.)、及び米国特許第6,827,886(Neavin et al.)に記載のとおり(これらの両方は、本発明の記載と矛盾しない限りにおいて、参照として本明細書に組み込まれる)、任意にこの配向フィルムにヒートセットを施すことと、によって製造できる。ポリマー多層反射型偏光子は、輝度上昇フィルム(Dual Brightness Enhancement Film、DBEF)及びAdvanced Polarizing Film(APF)を含み、これらは、どちらも3M Company(ミネソタ州、セントポール)から入手可能である。あるいは、反射型偏光子は、米国特許第5,825,543号(Ouderkirk et al.)に記載のとおり非多層アプローチが利用されている拡散反射偏光子フィルム、又は米国特許第7,738,763号(Ouderkirk et al.)に記載のとおり偏光フィルムの作製に偏光繊維を使用する繊維偏光子フィルムであってもよい。
【0007】
ポリマー多層反射型偏光子では、交互に配置されたポリマー層は、マイクロ層と呼んでもよい。通常、反射型偏光子は、ディスプレイに使用したときに反射型偏光子が収縮しないように、熱による収縮が最小になるように選択されている。これは、ディスプレイに使用されるガラス板が低収縮率であること、及び反射型偏光子がそれに対応して低収縮率であるべきという考えによって動機付けられている。吸収型偏光子及び従来の反射型偏光子をディスプレイ内に有する偏光子積層体の使用上の問題は、多層フィルムの層の波打ち/座屈を意味するマイクロリンクルという現象である。マイクロリンクルは、層間の隣接した境界面又表面層が互いに平行でないことを特徴とする。マイクロリンクルの一例を、多層反射型偏光子320の一部の概略断面図である図3に示す。多層反射型偏光子320は、交互に配置された第1の層322及び第2の層324を含む。第1の層322及び第2の層324は、従来技術で公知なように、異なる屈折率を有する交互に配置されたポリマー層である。例えば、第1の層322及び第2の層324は、y方向に沿って偏光した光が反射型偏光子320から反射され、x方向に沿って偏光した光が反射型偏光子320を通って透過されるように、x方向及びz方向に沿って整合する又は実質的に整合する屈折率を有してもよく、y方向に沿って実質的に異なる屈折率を有してもよい。反射型偏光子320は、少なくともy軸に沿ってマイクロ層の厚さhが変化すること示す。典型的には、厚さの変化は反射型偏光子の遮断軸に沿う方が、通過軸に沿う方よりもより顕著である。
【0008】
図3では、第1の層322及び第2の層325が、位相を異にした厚さを有する。即ち、ある層の最も厚いところは隣の層の最も薄いところである。他の場合、厚さの変化は、図3に示すような位相を異にした変化を示さない。より一般的には、マイクロリンクルフィルムにおいて、マイクロ層間の隣接する境界面(例えば、境界面325及び327)は、互いに平行ではない。場合によっては、境界面形状の変化は、積層体の垂直位置によって変化する(即ち、z方向に変化する)。場合によっては、外側表面(空気表面境界面)は、積層体の中心寄りに位置するマイクロ層間の境界面よりも平坦である。マイクロリンクルは、フィルム内に好ましくないヘイズ又は真珠光として出現し、50~200倍の倍率にて顕微鏡下で検査した際に、光学層の恒久的な変形として観察される。マイクロリンクルと対照的に、マクロリンクルは、多層フィルムの全体的なしわを意味する。図3に示すように、マイクロリンクル多層光学フィルムにおいて、マイクロ層間の隣接する境界面は、平行ではない。マイクロリンクルでもないマクロリンクル多層光学フィルムは、マイクロ層間に平行な境界面を有するはずである。
【0009】
ディスプレイ用途において、偏光子を95℃で1000時間保持した場合に、マイクロリンクルが観測されないことが多くの場合望ましい。95℃で1000時間試験される反射型偏光子/吸収型偏光子ラミネートのマイクロリンクルの長軸方向(図3のx軸)は、典型的には、通過状態方向である。遮断状態方向の反射型偏光子の収縮率は、このようなマイクロリンクルを無効にし、ディスプレイ用途での使用に好適な偏光子積層体を提供するために調整され得る。マイクロリンクルは、米国特許第7,468,204号(Hebrink et al.)に記載されており、これは、本発明の記載と矛盾しない限りにおいて、参照として本明細書に組み込まれる。米国特許第7,468,204号では、多層光学フィルム内のマイクロリンクルは、フィルムが利用又は試験されると見込まれる温度より実質的に高いガラス転移温度を有する低屈折率層を利用することによって低減される。本発明の記載によると、実質的にマイクロリンクルを示さない偏光子積層体が提供され、ここで、低屈折率層は、ディスプレイ用途で発生すると見込まれる温度と同等又はそれよりも低いガラス転移温度を有し得る。例えば、偏光子積層体は、ディスプレイ用途でマイクロリンクルが発生しないことを確認するために95℃又は100℃で試験されてもよく、いくつかの実施形態では、低屈折率層は、100℃未満、又は95℃未満、又は80℃未満、又は60℃未満のガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態では、低屈折率層のガラス転移温度は、25℃超、又は50℃超である。本明細書で使用する場合、ガラス転移温度とは、示差走査熱量計によって決定されるガラス転移温度を意味する。
【0010】
いくつかの実施形態では、本明細書の偏光子積層体に利用される吸収型偏光子は、ヨウ素をドープしたポリビニルアルコール(PVA)偏光子である。このような偏光子は、ヨウ素を浸透させた配向PVA層を含む。このような偏光子の一好適例としては、株式会社サンリッツ(日本、東京)から入手可能なサンリッツHLC2-5618S接着剤付き偏光子フィルムが挙げられる。他の好適な吸収型偏光子としては、有機染料を浸透させた配向ポリマー(PVAなど)偏光子が挙げられる。
【0011】
本発明の記載によると、マイクロリンクルは、熱にさらされた際に吸収型偏光子が反射型偏光子よりも収縮する場合に発生することがあり、このようなマイクロリンクルは、反射型偏光子を変性して熱により所望の範囲の収縮率をもたらすことによって、著しく低減又は実質的に排除することができるということが見出された。吸収型偏光子が、遮断軸に沿って配向されたPVAなどのポリマーを含有する場合、吸収型偏光子の収縮は、主に吸収型偏光子の遮断軸に沿って発生する。理論により制限される意図はないが、マイクロリンクルの低減メカニズムは、反射型偏光子における追加の収縮により、反射型偏光子が高温にある間に圧縮状態に置かれるのが防止されるものと考えられている。これは、反射型偏光子の収縮率を適切に選択することを示唆する実施例にて報告されている反射型偏光子及び吸収型偏光子の収縮率のデータによって裏付けされており、例えば、偏光子積層体が95℃で1000時間置かれた際に、反射型偏光子がフィルム平面内の任意の方向で圧縮状態に置かれない場合、互いに結合された反射型偏光子及び吸収型偏光子を含む偏光子積層体を得ることができる。
【0012】
マイクロリンクルを低減又は排除する、反射型偏光子の変性は、フィルムの配向後にフィルムに施されるヒートセット工程を調整することによって行うことができる。ヒートセットは、以前に参考として組み込まれている米国特許第6,827,886号に記載のとおり、フィルムの配向に使用されるテンターオーブンの最後のゾーンで実施することができる。典型的には、このようなヒートセット工程は、熱をその後にフィルムに加えたときに、フィルムの収縮を低減又は最小化するために使用される。フィルムのその後の収縮率を最小化することが望まれる場合、ヒートセット温度は、テンター内でのフィルム破壊をもたらさないできる限り高い温度に設定することができ、フィルムは、フィルムの張力が下がるヒートセットゾーン付近で横断方向に緩み得る。ヒートセット温度を低減すること、所与のヒートセット温度でのヒートセット処理の継続時間を低減すること、ヒートセットステップを排除すること、及び/又は遮断方向へのフィルムの弛緩を低減することによって、より高い収縮率を実現することができる。いくつかの実施形態では、本明細書の偏光子積層体に所望の収縮率の反射型偏光子を提供するために、所望の収縮率を与えるように選択された低い温度にてヒートセットステップを施すか、及び/又は遮断方向でのフィルムの弛緩を低減させる。本発明の記載によると、反射型偏光子を95℃で40分間加熱した場合に、偏光子積層体内の反射型偏光子の所望の収縮率は、典型的には、反射型偏光子の遮断軸に沿って0.4パーセント~3パーセントの範囲であるということが見出された。いくつかの実施形態では、反射型偏光子は、反射型偏光子を95℃で40分間加熱した場合に、遮断軸に沿って0.5パーセント~2.5パーセントの範囲、又は0.6パーセント~2パーセントの範囲の収縮率を有する。
【0013】
多層反射型偏光子の収縮率は、ASTM D2732-14試験規格に従って決定することができる。反射型偏光子の収縮率は、他の基材に結合又は積層されていないスタンドアロンフィルムとして決定される。例えば、偏光子積層体に含まれる反射型偏光子の収縮率を指定する場合、異なるように指示されない限り、収縮率は、偏光子積層体内に他の層(例えば、吸収型偏光子)が含まれない反射型偏光子のみの収縮率を意味する。
【0014】
図1は、接着層130を介して互いに結合された吸収型偏光子110及び反射型偏光子120を含む偏光子積層体100の概略断面図である。吸収型偏光子110は、第1の保護層114と第2の保護層116との間に配置された光学活性層112を含む。いくつかの実施形態では、保護層の一方又は両方は、除くことができる。いくつかの実施形態では、光学活性層112は、ダイクロイック染料を含み得る又はヨウ素を含み得る配向ポリマー層である。いくつかの実施形態では、配向ポリマーは、配向ポリビニルアルコールである。光学活性層112は、1マイクロメートル、又は2マイクロメートル、又は3マイクロメートル、又は5マイクロメートルから、50マイクロメートル、又は100マイクロメートルの範囲の厚さを有してもよい。例えば、光学活性層112は、1マイクロメートル~50マイクロメートルの範囲の厚さを有してもよい。第1及び第2の保護層114及び116は、例えば、セルローストリアセテート(TAC)又はポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)層であってもよい。
【0015】
反射型偏光子120は、第2のポリマー層124と交互に配置された第1のポリマー層122を含む。簡単に図示するために図1には4層が示されているが、反射型偏光子120は、数十、数百、あるいは数千の層を含んでいてもよい。吸収型偏光子110は、第1の遮断軸118を有し、反射型偏光子は、第2の遮断軸128を有する。第1及び第2の遮断軸118及び128は、図1のx-y-z座標系を参照すると、y軸と実質的に平行であり、図示した実施形態では、平行である。
【0016】
図示した実施形態では、吸収型偏光子110及び反射型偏光子120は、接着層130を介して互いに結合されている。接着層130は、任意の好適な接着剤とすることができ、光学的に透明な又は拡散型の感圧性接着剤であってもよい。好適な接着剤としては、綜研化学株式会社(日本、東京)から入手可能なソーケン(Soken)1885アクリル感圧性接着剤、及び3M Company(ミネソタ州、セントポール)から入手可能な3M 8171アクリル感圧性接着剤が挙げられる。代替の実施形態では、接着層130は省略され、吸収型偏光子110及び反射型偏光子120は、加熱により互いに結合される(例えば、加熱されたロールラミネータを使用して)。
【0017】
反射型偏光子120は、反射型偏光子120を95℃で40分間加熱した場合に、第2の遮断軸128に沿って0.4パーセント~3パーセントの範囲の収縮率を有する。いくつかの実施形態では、この収縮率は、少なくとも0.5パーセント、又は少なくとも0.6パーセントである。いくつかの実施形態では、この収縮率は、2.5パーセント以下、又は2パーセント以下である。いくつかの実施形態では、この収縮率は、偏光子積層体100を95℃で100時間又は1000時間加熱した場合に、反射型偏光子120が、マイクロリンクルを実質的に含まない(及びいくつかの実施形態では、マクロリンクルもまた実質的に含まない)ような収縮率である。いくつかの実施形態では、この収縮率は、偏光子積層体100を100℃で100時間又は1000時間加熱した場合に、反射型偏光子120が、マイクロリンクルを実質的に含まない(及びいくつかの実施形態では、マクロリンクルもまた実質的に含まない)ような収縮率である。いくつかの実施形態では、この収縮率は、偏光子積層体を95℃で40分間加熱した場合に、第1の遮断軸118に沿った吸収型偏光子110の収縮率の0.9~3倍である。反射型偏光子は、200倍の倍率にて光学顕微鏡下で検査した際に、マイクロリンクルが見えない場合に、マイクロリンクルを実質的に含まないと言うことができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、偏光子積層体は、反射型偏光子とは反対側の吸収型偏光子上に配置された接着層を含む。この接着層は、吸収型偏光子の外層として含まれてもよく(例えば、サンリッツHLC2-5618S吸収型偏光子(株式会社サンリッツ、日本、東京)の接着層)、又は吸収型偏光子に付与される個別の接着層であってもよい(例えば、3M 8171光学的に透明な接着剤(3M Company、ミネソタ州、セントポール)などの感圧性接着剤)。接着層により、偏光子積層体がガラス層、例えば、バックライトに向いている液晶ディスプレイパネル内のガラス層に積層されることを可能にする(図2参照)。別に指示しない限り、偏光子積層体内の反射型偏光子のマイクロリンクルは、特定の温度にて特定の時間の間、ガラスと反射型偏光子との間に、吸収型偏光子を有するガラスシートに積層された偏光子積層体を維持することと、ガラス及び偏光子積層体のラミネートを室温まで冷却させることと、次いで、反射型偏光子のマイクロリンクルを検査することと、によって試験される。
【0019】
偏光子積層体100は、液晶ディスプレイ(LCD)内の偏光子として有用である。液晶ディスプレイは、典型的には、交差した偏光子の間にディスプレイパネルを含む。偏光子積層体100は、交差した偏光子の一方又はその両方として使用することが可能である。このようなディスプレイ用途では、偏光子積層体100は、典型的には、吸収型偏光子110が観者に向き、かつ反射型偏光子120がバックライトに向くように配向されている。
【0020】
図2は、2つのガラス層244と245との間に配置された液晶層242、及び接着層235を用いてガラス層244に接着された偏光子積層体200を含む、ディスプレイ240の概略断面図である。ディスプレイ240は、バックライト247を更に含む。輝度向上フィルム(3M Company(ミネソタ州、セントポール)から入手可能)などの追加の層を、偏光子積層体200とバックライト247との間に配置できると理解されるであろう。偏光子積層体200は、本発明の記載の偏光子積層体のいずれかであってもよい。例えば、偏光子積層体200は、偏光子積層体100に対応し得る。偏光子積層体200は、吸収型偏光子210と反射型偏光子220とを含み、吸収型偏光子210はガラス層244に向いており、反射型偏光子220はバックライト247に向いている。吸収型偏光子210及び反射型偏光子220は、接着層(図示せず)により互いに積層されてもよく、又は例えば、加熱により互いに積層されてもよい。いくつかの実施形態では、反射型偏光子220は、ガラスシートに積層された偏光子積層体200を95℃で100時間又は1000時間加熱した場合に、マイクロリンクルを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、反射型偏光子220は、ガラスシートに積層された偏光子積層体200を100℃で100時間又は1000時間加熱した場合に、マイクロリンクルを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、反射型偏光子220は、ガラスシートに積層された偏光子積層体200を上記の温度プロファイルのいずれかに従って加熱した場合に、マイクロリンクル及びマクロリンクルの両方を実質的に含まない。接着層235は、本明細書のいずれかに記載のとおり、光学的に透明な又は拡散型の感圧性接着剤などの任意の好適な接着剤とすることができる。
【実施例
【0021】
米国特許第6,827,886号(Neavin et al.)に記載される方法に従って、5つのバリエーションの多層反射型偏光子を作製した。フィルムは、複屈折性と非複屈折性のマイクロ層を交互に配置したもので、これらの層のうちの153層は複屈折性、152層は非複屈折性であった。複屈折層は、90モル%/10モル%のポリエチレンナフタレート(PEN)及びポリエチレンテレフタレート(PET)のランダムコポリマーから、総押し出し率の42.3重量%で製造された。非複屈折層は、2つのコポリマーのブレンドから製造され、第1のものは、総押し出し率の20.9重量%である90モル%/10モル%のPEN及びPETであり、総押し出し率の28.9重量%であるグリコール変性PET(PETgは、Eastman Chemicals(テネシー州、キングスポート)から入手可能)と共にブレンドされた。フィルムの上部及び底部のスキン層は、非複屈折マイクロ層と同一のPETgから製造した。これらは、同じ厚さで、総押し出し率の7.8重量%である。
【0022】
フィルムは、各々が標準テンターで延伸され、横断方向の延伸比は約6であり、機械方向には延伸しない。5つのバリエーションは、適用される延伸条件に応じてだけ異なった。それらの条件は、フィルムが予熱される温度、フィルムが延伸される温度、テンターのヒートセット部の第1のゾーンでのヒートセット温度、テンターのヒートセット部の第2のゾーンでのヒートセット温度、及びトーイン率であった。トーイン率は、ヒートセット及びその後の冷却ステップ中に、延伸の最後のレール設定と比較してレールを内向きに動かした量である。延伸条件A、B、C、D、及びEを表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
次いで、5つの配向条件及びサンリッツHLC2-5618S吸収型偏光子(株式会社サンリッツ(日本、東京)から入手可能)について収縮率を測定した。収縮率は、ASTM D2732-14試験規格を使用して測定した。収縮率は、95℃に40分間さらした後に、通過軸方向及び遮断軸方法の両方で測定した。値を表2に提示する。
【0025】
【表2】
【0026】
また、5つの多層フィルム偏光子バリエーション及びサンリッツ吸収型偏光子について、95℃での長時間収縮率試験も行った。遮断方向の収縮率のデータを図4に示し、通過方向の収縮率のデータを図5に示す。
【0027】
図4図5のデータは、吸収型偏光子の収縮率が、遮断状態方向及び通過状態方向の両方で同様に4分間の収縮を行った2つの反射型偏光子(条件A及びBは反射型偏光子)よりも速く増加したことを示す。図4及び図5を比較すると、吸収型偏光子における長時間での遮断状態方向の収縮率は、通過状態方向の収縮率よりも大きいこともまた明らかである。
【0028】
マイクロリンクルの試験のため、条件A、B、C、D、及びEの下で製造された反射型偏光子の各々について21個のサンプルを選択し、各サンプルから、約1.25インチ×1.25インチ(3.2cm×3.2cm)のピースを切り出した。次いで、これらのピースを、同様の寸法のサンリッツHLC2-5618S吸収型偏光子のピースの非粘着性側に、感圧性接着剤(3M Company(ミネソタ州、セントポール)製の8171光学的に透明な接着剤)を使用して、反射型偏光子の遮断軸が吸収型偏光子の遮断軸と平行になるように接着した。次いで、吸収型偏光子の接着剤を使用して、偏光子をガラスに接着して、各構成をガラスに積層し、試験サンプルを作製した。次いで、各構成の試験サンプル3つを6つのオーブンのうちの1つに置いた。これらのオーブンを80、85、90、95、100、及び105℃に設定した。3つの試験サンプルは、室温(RT)にて保持した。試験サンプルは、これらそれぞれの温度で1000時間保持した。
【0029】
マイクロリンクルは、試験サンプルの表面テクスチャーを検査することによって決定した。マイクロリンクルが現れると、フィルム内に好ましくないヘイズとして観察される。50~200倍の間の倍率にて顕微鏡下で検査すると、マイクロリンクルが、光学層の恒久的な波形として観察され、反射型偏光子の粗い外側層を観察することができた。
【0030】
Mahr GmbH(米国、ロードアイランド州、プロビデンス)によって製造されたPerthometer M2粗さ測定機を使用して、マイクロリンクル試験に使用される試験サンプル内の反射型偏光子の遮断方向の表面粗さの特性を決定した。表面粗さ測定値Ra(3つのサンプルの平均)によって特徴づけられた結果を図6に示す。この表面粗さ結果は、図4図5と組み合わせて、反射型偏光子の収縮率の上昇によりマイクロリンクルの度合いが減少し得ることを示した。
【0031】
以下は、本明細書の例示的な実施形態の列挙である。
【0032】
実施形態1は、第1の遮断軸を有する吸収型偏光子と、第1の遮断軸と実質的に平行な第2の遮断軸を有する多層ポリマー反射型偏光子と、を含み、吸収型偏光子及び反射型偏光子が互いに結合されている偏光子積層体である。
反射型偏光子は、反射型偏光子を95℃で40分間加熱した場合に、吸収型偏光子との結合に先立ち、第2の遮断軸に沿って0.4パーセント~3パーセントの範囲の収縮率を有する。
【0033】
実施形態2は、実施形態1の偏光子積層体であるが、吸収型偏光子及び反射型偏光子は、接着層を介して互いに結合されている。
【0034】
実施形態3は、実施形態1の偏光子積層体であるが、収縮率は、0.5パーセント~2.5パーセントの範囲である。
【0035】
実施形態4は、実施形態1の偏光子積層体であるが、収縮率は、0.6パーセント~2パーセントの範囲である。
【0036】
実施形態5は、実施形態1の偏光子積層体であるが、反射型偏光子の反対側の吸収型偏光子上に配置された接着層を更に含み、収縮率は、接着層を介してガラスシートに積層された偏光子積層体を95℃で100時間加熱した場合に、反射型偏光子が、マイクロリンクルを実質的に含まないような収縮率である。
【0037】
実施形態6は、実施形態1の偏光子積層体であるが、反射型偏光子の反対側の吸収型偏光子上に配置された接着層を更に含み、収縮率は、接着層を介してガラスシートに積層された偏光子積層体をガラスシートと共に100℃で1000時間加熱した場合に、反射型偏光子が、マイクロリンクルを実質的に含まないような収縮率である。
【0038】
実施形態7は、実施形態1の偏光子積層体であるが、反射型偏光子の収縮率は、偏光子積層体を95℃で40分間加熱した場合に、第1の遮断軸に沿った吸収型偏光子の収縮率の0.9~3倍である。
【0039】
実施形態8は、実施形態1の偏光子積層体であるが、吸収型偏光子は、ポリビニルアルコールを含む。
【0040】
実施形態9は、実施形態8の偏光子積層体であるが、吸収型偏光子は、ヨウ素を更に含む。
【0041】
実施形態10は、実施形態1の偏光子積層体であるが、吸収型偏光子は、少なくとも1つの保護層に結合した光学活性配向ポリマー層を含む。
【0042】
実施形態11は、実施形態10の偏光子積層体であるが、光学活性配向ポリマー層はポリビニルアルコール及びヨウ素を含む。
【0043】
実施形態12は、実施形態10の偏光子積層体であるが、光学活性配向ポリマー層は1~50マイクロメートルの範囲の厚さを有する。
【0044】
実施形態13は、実施形態1の偏光子積層体であるが、反射型偏光子は、複数の交互に配置された第1及び第2のポリマー層を含み、第1及び第2のポリマー層のうちの少なくとも1つが複屈折性である。
【0045】
実施形態14は、実施形態1の偏光子積層体であるが、反射型偏光子は、複数の交互に配置された第1及び第2のポリマー層を含み、第1のポリマー層は、第2の遮断軸に沿って第1の屈折率を有し、第2のポリマー層は、第2の遮断軸に沿って第2の屈折率を有し、第2の屈折率は、第1の屈折率よりも小さく、第2のポリマー層は、100℃未満のガラス転移温度を有する。
【0046】
実施形態15は、実施形態14の偏光子積層体であるが、ガラス転移温度は95℃未満である。
【0047】
実施形態16は、実施形態14の偏光子積層体であるが、ガラス転移温度は80℃未満である。
【0048】
実施形態17は、実施形態14の偏光子積層体であるが、ガラス転移温度は60℃未満である。
【0049】
実施形態18は、バックライトと、ガラス層と、請求項1に記載の偏光子積層体と、を含むディスプレイであるが、偏光子積層体は、反射型偏光子の反対側の吸収型偏光子上に配置された接着層を更に含み、偏光子積層体は、接着層を介してガラス層に接着され、偏光子積層体は、ガラス層とバックライトとの間に配置される。
【0050】
実施形態19は、実施形態18のディスプレイであるが、反射型偏光子は、ガラス層に接着された偏光子積層体を95℃で100時間加熱した場合に、マイクロリンクルを実質的に含まない。
【0051】
実施形態20は、実施形態18のディスプレイであるが、反射型偏光子は、ガラス層に接着された偏光子積層体を95℃で1000時間加熱した場合に、マイクロリンクルを実質的に含まない。
【0052】
実施形態21は、実施形態18のディスプレイであるが、反射型偏光子は、ガラス層に接着された偏光子積層体を100℃で1000時間加熱した場合に、マイクロリンクルを実質的に含まない。
【0053】
図中の要素の説明は、特に指示がない限り、他の図中の対応する要素に等しく適用されるものと理解されたい。具体的な実施形態を本明細書において例示し記述したが、様々な代替及び/又は等価な実施により、図示及び記載した具体的な実施形態を、本開示の範囲を逸脱することなく置き換え可能であることが、当業者により理解されるであろう。本出願は、本明細書において論じた具体的な実施形態のいかなる適合例又は変形例であっても包含することを意図する。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその等価物によってのみ限定されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6